(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Hブリッジ回路を用いた駆動回路では、一方の側のハイサイド側FETトランジスタおよび一方の側のローサイド側FETトランジスタと、他方の側のハイサイド側FETトランジスタおよび他方の側のローサイド側FETトランジスタとのいずれかの組のFETトランジスタのオン期間をデューティ制御する。デューティ制御によりFETトランジスタの接続点から得られる電源電圧を波高値とするパルス信号は、平滑用回路で平滑される。これにより、デューティ比に略比例した平滑電圧が生成されペルチェ素子への印加電圧を制御する。
【0006】
しかしながら、ゲートに入力される制御信号に対するFETトランジスタの応答特性やハイサイドとローサイドFETトランジスタのデッドタイム期間により、制御できる最少デューティには限界がある。すなわち、Hブリッジ回路において所定の周波数でスイッチング動作をさせる場合、小さいデューティ比に対しては短いパルス幅でFETトランジスタをオンしなければならない。この場合、FETトランジスタの制御信号に対する応答遅れなどの応答特性により、短いパルス幅を精度よく制御することができないおそれがある。その結果、平滑電圧として得られる略直流の電圧には、下限電圧の制限が存在することとなる。Hブリッジ回路を用いた駆動回路では、ペルチェ素子に印加できる電圧には下限電圧があり、下限電圧以下では印加電圧を制御できないおそれがある。ペルチェ素子により微小な温度差の制御を精度良く制御できない虞がある。
【0007】
一方、正負の2電源を備え、接地電圧に代えて負電源電圧を供給してやれば、Hブリッジ回路から出力され平滑された電圧として0Vを中心とした低い電圧とすることは可能ではある。しかしながら、この場合には、正側の電源電圧に加えて負側の電源電圧も必要となり、回路構成として複雑にならざるを得ないという問題を有している。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、精度良くペルチェ素子の温度を
制御できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る温度制御装置は、ペルチェ素子、電圧印加部、温度検出部、および制御部を備えている。対象機器の温度はペルチェ素子を利用して目標温度に制御される。電圧印加部はペルチェ素子の端子間に極性の切り替えが可能な電圧を印加する。温度検出部は対象機器の温度を検出する。制御部は、第1周期の所定周期ごとに、高低判定処理、温度差検出処理、通電制御処理、電圧制御処理、および周期制御処理を実行する。高低判定処理において、制御部は、温度検出部により検出された検出温度と目標温度との温度の高低を判定する。温度差検出処理において、制御部は、検出温度の目標温度からの温度差を検出する。通電制御処理において、制御部は、高低判定処理により検出温度が目標温度に対して高温であると判断されることに応じて、第1の極性の電圧をペルチェ素子に印加してペルチェ素子の対象機器側の電極面を吸熱させる。また、検出温度が目標温度に対して低温であると判断されることに応じて、第2の極性の電圧をペルチェ素子に印加してペルチェ素子の対象機器側の電極面を発熱させる。ここで、第2の極性とは第1の極性とは逆極性である。電圧制御処理において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差に応じて、第1の極性の電圧および第2の極性の電圧を制御する。周期制御処理において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差が所定値より小さいことに応じて、所定周期を第1周期より短周期の第2周期に短縮する。ここで、温度差の所定値とは、電圧制御処理により第1の極性の電圧および第2の極性の電圧が制限される下限電圧を第2周期の間、ペルチェ素子に印加した場合に変動する温度差より大きい値である。
【0010】
ペルチェ素子に印加される第1の極性の電圧および第2の極性の電圧が下限電圧である場合、第1周期の所定周期の制御では、更に細かい温度制御を行うことはできない。この場合でも、周期制御処理により温度差に応じて所定周期を第1周期より短周期の第2周期に短縮することにより、温度制御を更に細かく行うことができる。温度差が所定値より小さく検出温度が目標温度に近づいている場合に、細かい温度差を制御でき精細な温度制御を的確に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る温度制御装置において、対象機器としてレーザ加工装置である。制御部は、温度判定処理、および加工判定処理を実行する。温度判定処理において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差が所定値より小さいか否かを判定する。加工判定処理において、制御部は、レーザ加工装置が加工中であるか否かを判定する。温度判定処理により温度差が所定値より小さいと判断し、加工判定処理によりレーザ加工装置が加工中であると判断することに応じて、レーザ加工装置が加工中でない場合に比して所定周期を第2周期に短縮する
【0012】
これにより、温度差が所定値より小さく更にレーザ加工装置が加工中である場合、所定周期を第2周期に短縮することにより精細な温度制御を行うことができ、検出温度を効率よく目標温度に制御することができる。
【0013】
また、対象機器としてレーザ加工装置を備える温度制御装置は、励起用レーザおよび固体レーザを備える。励起用レーザは励起光を出射する。固体レーザは励起用レーザから出射された励起光を受光することにより励起されるレーザ媒質を有する。また、固体レーザはレーザ媒質が励起光を受光して励起すると、パルスレーザを出射する。温度差検出処理において検出される温度差とは励起用レーザにおける検出温度と目標温度との温度差である。
【0014】
これにより、励起用レーザから出射されるレーザ光の波長帯域が精度よく制御され、固体レーザを効率良く励起することができる。これにより、固体レーザは所望の波長帯域で
レーザ光を出射することができる。
【0015】
また、本発明に係る温度制御装置において、電圧印加部は、第1DC/DCコンバータと、第1DC/DCコンバータの第1出力端子と接地電位との間に電気的に接続される第1トランジスタと、第2DC/DCコンバータと、第2DC/DCコンバータの第2出力端子と接地電位との間に電気的に接続される第2トランジスタとを備える。ペルチェ素子の第1の端子は第1出力端子に電気的に接続され、第2の端子は第2出力端子に電気的に接続される。
【0016】
これにより、DC/DCコンバータにより直流の出力電圧が供給されるので、DC/DCコンバータの出力電圧を直接ペルチェ素子に印加することができる。また、2組のDC/DCコンバータにより出力電圧が供給されるので、正逆2方向の極性の電圧を直接にペルチェ素子に印加することができる。
【0017】
また、本発明に係る温度制御装置において、第1DC/DCコンバータおよび第2DC/DCコンバータは、単電源で駆動される。これにより、温度制御の精度を確保するために、正電源と負電源との二電源を必要とせず、簡易な単電源により精度よく温度制御をすることができる。また、低コストで温度制御装置を構成することができる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ発振器、ペルチェ素子、温度検出部、電圧印加部、および制御部を備えている。加工対象物はレーザ発振器から出射されるレーザ光により印字される。ペルチェ素子は、レーザ発振器の温度を制御する。温度検出部は、レーザ発振器の温度を検出する。電圧印加部は、ペルチェ素子の端子間に極性の切り替えが可能な電圧を印加する。制御部は、第1周期の所定周期ごとに、高低判定処理、温度差検出処理、通電制御処理、電圧制御処理、および周期制御処理を実行する。高低判定処理において、制御部は、温度検出部により検出された検出温度と
レーザ発振器の目標温度との温度の高低を判定する。温度差検出処理において、制御部は、検出温度の目標温度からの温度差を検出する。通電制御処理において、制御部は、高低判定処理により検出温度が目標温度に対して高温であると判断されることに応じて、第1の極性の電圧をペルチェ素子に印加してペルチェ素子のレーザ発振器側の電極面を吸熱させる。また、検出温度が目標温度に対して低温であると判断されることに応じて、第2の極性の電圧をペルチェ素子に印加してペルチェ素子のレーザ発振器側の電極面を発熱させる。ここで、第2の極性とは第1の極性とは逆極性である。電圧制御処理において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差に応じて、第1の極性の電圧および第2の極性の電圧を制御する。周期制御処理において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差が所定値より小さいことに応じて、所定期間を第1周期より短周期の第2周期に短縮する。
【0019】
これにより、レーザ加工装置におけるレーザ発振器の温度を、ペルチェ素子を利用して制御する際、温度差が所定値より小さく検出温度が目標温度に近づいている場合にも、周期制御処理により温度差に応じて所定周期を第1周期より短周期の第2周期に短縮して、細かい温度差を制御でき精細な温度制御を的確に行うことができる。第1の極性の電圧および第2の極性の電圧が下限電圧であっても精細な温度制御が必要なレーザ発振器の温度制御をきめ細かく行うことができ、良好な印字品質を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係るレーザ加工装置において、制御部は、温度差検出処理により検出された温度差が所定値より小さくレーザ加工動作中であることに応じて、レーザ発振器の停止中の場合に比して所定周期を第2周期に短縮する。さらに、レーザ加工動作において、レーザ発振器が出射中であることに応じて、通電制御処理において、第2の極性の電圧をペルチェ素子に印加して該ペルチェ素子のレーザ発振器側の電極面を吸熱させる。
【0021】
温度差検出処理により検出された温度差が所定値より小さく検出温度が目標温度に近づいており、更にレーザ加工動作中である場合、所定周期を第2周期に短縮することにより精細な温度制御を行うことができる。更に、レーザ発振器が出射中である場合、通電制御処理において、検出温度と目標温度との高低に関わらず、ペルチェ素子のレーザ発振器側の電極面に吸熱させレーザ発振器の冷却が行われる。レーザ発振器がレーザ光を出射中である場合には、出射動作に伴い発熱するので、温度差に関わらずペルチェ素子によりレーザ発振器を冷却することで、レーザ発振器が発熱して目標温度から離れて高温となってしまうことを防止することができる。
【0022】
また、本発明に係るレーザ加工装置において、電圧印加部は、第1DC/DCコンバータと、第1DC/DCコンバータの第1出力端子と接地電位との間に電気的に接続される第1トランジスタと、第2DC/DCコンバータと、第2DC/DCコンバータの第2出力端子と接地電位との間に電気的に接続される第2トランジスタとを備える。ペルチェ素子の第1の端子は第1出力端子に電気的に接続され、第2の端子は第2出力端子に電気的に接続される。
【0023】
DC/DCコンバータにより直流の出力電圧が供給されるので、DC/DCコンバータの出力電圧を直接ペルチェ素子に印加することができる。2組のDC/DCコンバータにより出力電圧が供給されるので、正逆2方向の極性の駆応答特性動電圧を直接にペルチェ素子に印加することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による温度制御装置およびレーザ加工装置によれば、精度良くペルチェ素子の温度を制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態に係るレーザ加工装置1の概略構成について
図1に基づいて説明する。レーザ加工装置1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ3と、電源部5とから構成されている。レーザ加工装置本体部2は、レーザ光Lを加工対象物6の加工面6A上を2次元走査して文字、記号、図形等をマーキングする加工を行う。
【0027】
レーザコントローラ3は、コンピュータで構成されて、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)7と双方向通信可能に電気的に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源部5と電気的に接続されている。そして、レーザコントローラ3は、PC7から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源部5を制御する。つまり、レーザコントローラ3は、レーザ加工装置1の全体を制御する。
【0028】
レーザ加工装置本体部2の概略構成について
図1に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、加工用レーザ発振器11からレーザ光Lを出射する方向が、レーザ加工装置本体部2の前方向である。その反対側が後方向であり、後方向に向かう方向をX方向とする。また、加工用レーザ発振器11が取り付けられた本体ベース12の取付面に対して垂直方向が、レーザ加工装置本体部2の上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。左右方向は前方向に向かって定義される。左方向に向かう方向がY方向であるとする。
【0029】
図1に示すように、レーザ加工装置本体部2は、本体ベース12と、レーザ光Lを出射するレーザ発振ユニット13と、ガルバノスキャナ18と、fθレンズ19等から構成され、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0030】
レーザ発振ユニット13は、加工用レーザ発振器11等から構成されている。
【0031】
ガルバノスキャナ18は、本体ベース12の前側端部に形成された貫通孔(不図示)の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット13から出射されたレーザ光Lを貫通孔を介して下方へ2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されてガルバノスキャナ18の本体部25に取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、各モータ22、23の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、レーザ光Lを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
【0032】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザ光Lを下方に配置された加工対象物6の加工面6Aに集光する。従って、各モータ22、23の回転を制御することによって、レーザ光Lが、加工対象物6の加工面6A上において、所望の印字パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
【0033】
次に、電源部5の概略構成について
図1に基づいて説明する。電源部5は、ケーシング27内に、励起用半導体レーザ28と、レーザドライバ29と、電源31と、温度検出制御部34aとが配置されている。レーザドライバ29を介して、電源31は駆動電流を励起用半導体レーザ28に供給する。レーザドライバ29は、レーザコントローラ3から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ28を直流駆動する。温度検出制御部34aは、後述するように、励起用半導体レーザ28の温度検出および温度制御を行う。
【0034】
加工用レーザ発振器11は光ファイバ33によって励起用半導体レーザ28に光学的に接続されている。励起用半導体レーザ28は、レーザドライバ29から入力されるパルス状の駆動電流に対して励起用のレーザ光を光ファイバ33内に出射する。従って、加工用レーザ発振器11は、励起用半導体レーザ28のレーザ光(以下、励起光と記載)が光ファイバ33を介して入射される。励起用半導体レーザ28は、例えば、GaAsを用いて構成されている。
【0035】
加工用レーザ発振器11は、YAGレーザ35(
図2参照)を有する。光ファイバ33を介して、励起用半導体レーザ28から出射された励起光がYAGレーザ35に入射される。YAGレーザ35は、不図示のレーザ媒質を有しており、励起光によって励起されて加工用のレーザ光であるパルスレーザを発振する。また、YAGレーザ35には温度検出制御部34bが配設される。温度検出制御部34bはYAGレーザ35の温度検出および温度制御を行う。詳細は後述する。
【0036】
次に、レーザ加工装置1の回路構成について
図2に基づいて説明する。レーザコントローラ3には、ガルバノコントローラ45、レーザドライバ29、ペルチェドライバ48、A/Dコンバータ47等が電気的に接続されている。
【0037】
また、レーザコントローラ3には、PC7が双方向通信可能に電気的に接続され、PC7から送信された印字情報、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。また、PC7には、不図示の入出力インターフェースを介してマウス73、及びキーボード74等から構成される入力操作部71、及び各種指示情報等の表示用のLCD(液晶ディスプレイ)72等が電気的に接続されている。
【0038】
レーザコントローラ3は、CPU51、RAM52、ROM53、タイマ54等を備えている。また、CPU51、RAM52、ROM53、タイマ54は、不図示のバス線により電気的に接続されて、データのやり取りが相互に行われる。CPU51はROM53に記憶されている各種のプログラムを実行することによって、電気的に接続されているレーザ加工装置1の各部を制御する。ここで、各部とは、ガルバノコントローラ45、レーザドライバ29、ペルチェドライバ48等である。RAM52はCPU51が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。また、タイマ54は後述する温度制御処理において所定時間を計測する。
【0039】
CPU51は、PC7から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ45に出力する。また、CPU51は、PC7から入力された印字情報に基づいて設定した励起用半導体レーザ28の励起光出力、励起光の出力期間等の励起用半導体レーザ28の駆動パターンをレーザドライバ29に出力する。
【0040】
ガルバノコントローラ45は、レーザコントローラ3から入力された印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ46へ出力する。ガルバノドライバ46は、ガルバノコントローラ45から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23を駆動して、レーザ光Lを2次元走査する。
【0041】
レーザドライバ29は、レーザコントローラ3から入力された励起用半導体レーザ28の励起光の出力強度、励起光の出力期間等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ28を駆動する。また、励起用半導体レーザ28から出射された励起光は、YAGレーザ35を駆動する。
【0042】
例えば、ユーザにより入力操作部71が操作され、印字情報等を含む加工命令がPC7へ入力される。すると、CPU51はPC7より加工命令を受付け、ガルバノコントローラ45へ印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等を出力する。また、CPU51はレーザドライバ29へ駆動パターンを出力する。そして、ガルバノドライバ46およびレーザドライバ29が駆動される。更に、レーザドライバ29の励起光によりYAGレーザ35が駆動される。そして、YAGレーザ35から出射されるレーザ光Lは加工対象物6の加工面6A上を2次元走査され、加工対象物が加工される。
【0043】
また、温度検出制御部34aは温度センサ36およびペルチェ素子38を有する。温度センサ36により、励起用半導体レーザ28の温度が測定される。そして、ペルチェ素子38により励起用半導体レーザ28の加熱および冷却が行われる。また、温度検出制御部34bは温度センサ37およびペルチェ素子39を有する。温度センサ37により、YA
Gレーザ35の温度が測定される。そして、ペルチェ素子39によりYAGレーザ35の加熱および冷却が行われる。CPU51は、温度センサ36、37が測定した温度情報をA/Dコンバータ47を介して取得する。そして、目標温度と検出温度とを比較し、ペルチェ駆動情報を算出する。ここで、ペルチェ駆動情報とはペルチェ素子38、39に印加する電圧の極性、および電圧値を決定する。なお、電圧値については、後述のデジタルポテンショメータ62、63による抵抗値を設定することにより決定される。そして、算出したペルチェ駆動情報をペルチェドライバ48へ送信する。ペルチェドライバ48はペルチェ駆動情報に基づき、ペルチェ素子38、39を駆動する。即ち、温度センサ36、37、およびペルチェ素子38、39を用いて、CPU51は励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35の温度制御を行う。これにより、励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35の発振波長が調整される。
【0044】
ここで、励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35の温度特性および加工精度に基づき、温度制御の目標温度は予め設定される。例えば、励起用半導体レーザ28の目標温度は40〜45℃程度であり、要求精度は±0.3℃程度である。また、YAGレーザ35の設定温度は25℃程度であり、要求精度は±2℃程度である。
【0045】
続いて、励起用半導体レーザ28を例に、温度制御について詳細に説明する。尚、YAGレーザ35の温度制御も同様であるので、以下での説明は省略する。まず、温度センサ36からCPU51への温度情報伝達について
図3に基づいて説明する。温度センサ36はサーミスタ36aと抵抗R1とを有する。そして、電源Vccと接地電圧間に抵抗R1およびサーミスタ36aが電気的に直列接続される。抵抗分圧により、サーミスタ36aにかかる電圧がA/Dコンバータ47へ入力される。サーミスタ36aは周辺温度により抵抗値が変化するため、周辺温度に応じた電圧値がA/Dコンバータ47へ入力される。そして、A/Dコンバータ47でデジタル値に変換され、CPU51へ出力される。
【0046】
次に、ペルチェドライバ48によるペルチェ素子38の駆動方法について説明する。
図4はペルチェドライバ48の回路図である。ペルチェドライバ48は極性切替え制御部61、デジタルポテンショメータ(以下DPMと記載)62およびDPM63、DC/DCコンバータ(以下DDCと記載)64およびDDC65、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1およびNFET2を有する。CPU51から極性切替え制御部61にペルチェ制御イネーブル信号SENおよび極性信号SPが出力される。そして、極性切替え制御部61からDDC64にイネーブル信号EN1が出力される。また、極性切替え制御部61からDDC65にイネーブル信号EN2が出力される。さらに、極性切替え制御部61からNチャネルMOSFETトランジスタNFET1およびNFET2にゲート信号Sg1およびSg2がそれぞれ出力される。ここで、極性切替え制御部61は、例えば、CPLD(Complex Programmable Logic Device)で構成される。
【0047】
DPM62は可変抵抗RBを有している。そして、CPU51から入力される抵抗信号Sr1により、DPM62の可変抵抗RBの抵抗値は可変に制御される。DDC64はハイサイドNFETとローサイドNFETを用いる同期整流型降圧チョッパ方式のDC/DCコンバータである。DDC64は、電圧制御部66、平滑用コイルL1、および平滑用コンデンサC1を有する。電圧制御部66は、Vfb端子、EN端子、およびOUT端子を有する。電圧制御部66のOUT端子とDDC64の出力端子O1間に平滑用コイルL1が電気的に接続される。そして、DDC64の出力端子O1と接地電圧間に平滑用コンデンサC1が電気的に接続される。また、DDC64の出力端子O1と接地電圧間にDPM62の可変抵抗RBと抵抗RA1とが電気的に直列接続される。そして、可変抵抗RBと抵抗RA1との接続点が電圧制御部66のVfb端子に電気的に接続される。電圧制御部66のEN端子にイネーブル信号EN1が入力される。NチャネルMOSFETトラン
ジスタNFET1のゲート端子にゲート信号Sg1が入力される。NチャネルMOSFETトランジスタNFET1のソース端子は接地電圧に、ドレイン端子はDDC64の出力端子O1に電気的に接続される。DDC64の出力端子O1はペルチェ素子38の第1端子T1に電気的に接続される。
【0048】
DPM63はDPM62と同一の構成である。また、DDC65はDDC64と同一の構成である。DPM63は可変抵抗RBを有している。そして、CPU51から入力される抵抗信号Sr2により、可変抵抗RBの抵抗値は可変に制御される。DDC65は電圧制御部67、平滑用コイルL2、および平滑用コンデンサC2を有する。電圧制御部67のOUT端子とDDC65の出力端子O2間に平滑用コイルL2が電気的に接続される。そして、DDC65の出力端子O2と接地電圧間に平滑用コンデンサC2が電気的に接続される。また、DDC65の出力端子O2と接地電圧間にDPM63の可変抵抗RBと抵抗RA2とが電気的に直列接続される。そして、可変抵抗RBと抵抗RA2との接続点が電圧制御部67のVfb端子に電気的に接続される。電圧制御部67のEN端子にイネーブル信号EN2が入力される。NチャネルMOSFETトランジスタNFET2のゲート端子にゲート信号Sg2が入力される。NチャネルMOSFETトランジスタNFET2のソース端子は接地電圧に、ドレイン端子はDDC65の出力端子O2に電気的に接続される。DDC65の出力端子O2はペルチェ素子の第2端子T2に電気的に接続される。尚、CPU51からDPM62および63への抵抗信号Sr1およびSr2の伝達にはSPIあるいはI2Cなどの通信方法が用いられる。
【0049】
電圧制御部66および67は正電源VCCにより駆動される。そして、電圧制御部66は、EN端子にハイレベルのイネーブル信号EN1が入力されている期間、Vfb端子に入力される電圧を正電源VCCから供給される基準電圧と略同電圧に制御し、出力端子O1より所定の出力電圧VO1を出力する。ここで、DPM62の可変抵抗RBの抵抗値および抵抗RA1の抵抗値により、DDC64の出力電圧VO1は次式により決まる。
VO1=Vref(1+RB/RA1)・・・式(1)
【0050】
また、DDC65はDDC64と同様に動作する。すなわち、EN端子にハイレベルのイネーブル信号EN2が入力されている期間、Vfb端子に入力される電圧を不図示の基準電圧と略同電圧に制御し、出力端子O2より所定の出力電圧VO2を出力する。DPM63の可変抵抗RBの抵抗値および抵抗RA2の抵抗値により、DDC65の出力電圧VO2は次式により決まる。
VO2=Vref(1+RB/RA2)・・・式(2)
【0051】
尚、式(1)および(2)において、RB、RA1、RA2はそれぞれ可変抵抗RB、抵抗RA1、抵抗RA2の抵抗値である。また、Vrefは、DDC64、65に内蔵されている基準電圧の電圧値であり、例えば0.8である。また、出力電圧VO1およびVO2の電圧範囲は、例えば0.8Vから20Vであり、更に20V以上も可能である。可変抵抗RBの抵抗値を設定することで、出力電圧VO1およびVO2を上記の電圧範囲でリニアに変化させることができる。出力電圧VO1およびVO2の電圧範囲の下限値は制限され、実施形態では0.8Vである。
【0052】
例えば、冷却の場合には、極性切替え制御部61はハイレベルのイネーブル信号EN1を電圧制御部66へ出力し、ローレベルのイネーブル信号EN2を電圧制御部67へ出力する。これにより、電圧制御部66は動作し、DDC64は抵抗信号Sr1に応じた出力電圧VO1を出力する。また、電圧制御部67は動作を停止してDDC65からの出力電圧VO1はオープン状態またはハイインピーダンス状態となる。極性切替え制御部61はハイレベルのゲート信号Sg2をNチャネルMOSFETトランジスタNFET2へ出力し、ローレベルのゲート信号Sg1をNチャネルMOSFETトランジスタNFET1へ
出力する。これにより、NチャネルMOSFETトランジスタNFET2はオンし、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1はオフする。DDC64の出力端子O1、ペルチェ素子38の第1端子T1、第2端子T2、NチャネルMOSFETトランジスタNFET2のドレイン端子、ソース端子、接地電圧の経路で電流が流れる。即ち、ペルチェ素子38の第1端子T1から第2端子T2に電流が流れペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面は吸熱する。これにより励起用半導体レーザ28は冷却される。一方、励起用半導体レーザ28を加熱する場合には、極性切替え制御部61はハイレベルのイネーブル信号EN2を電圧制御部67へ出力し、ローレベルのイネーブル信号EN1を電圧制御部66へ出力する。また、ハイレベルのゲート信号Sg1をNチャネルMOSFETトランジスタNFET1へ出力し、ローレベルのゲート信号Sg2をNチャネルMOSFETトランジスタNFET2へ出力する。これにより、DDC65は出力電圧VO2を出力し、電圧制御部66は停止する。NチャネルMOSFETトランジスタNFET1はオンし、NチャネルMOSFETトランジスタNFET2はオフする。これにより、DDC65の出力端子O2、ペルチェ素子38の第2端子T2、第1端子T1、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1のドレイン端子、ソース端子、接地電圧の経路で電流が流れる。即ち、ペルチェ素子38の第2端子T2から第1端子T1に電流が流れ、ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面は発熱し、励起用半導体レーザ28は加熱される。
【0053】
温度制御処理について
図5乃至7を用いて説明する。レーザ加工装置1の電源が投入されると温度制御処理が開始され、励起用半導体レーザ28とYAGレーザ35の両者の温度制御が開始される。以下の説明では、励起用半導体レーザ28の温度制御について説明するが、YAGレーザ35の温度制御についても同様に行われる。尚、温度制御処理が開始されると、CPU51は所定周期T(後述)を通常の期間TC1(後述)に設定する。期間TC1(後述)は例えばROM53に記憶される。
【0054】
まず、CPU51は温度制御を開始するかどうかを判断する(S2)。例えば、レーザドライバ29により励起用半導体レーザ28の駆動が開始されると、CPU51は温度制御開始の判断をする(S2:YES)。温度制御を開始すると判断することに応じて、CPU51は温度センサ36からA/Dコンバータ47を介して検出温度を取得する(S4)。ここで、検出温度とは、A/Dコンバータ47でデジタル値に変換された電圧値である。一方、CPU51は温度制御が開始されないと判断することに応じて(S2:NO)、ステップS2へ戻り、温度制御が開始されるまで待機する。
【0055】
温度制御が開始されると、CPU51は、検出温度が目標温度より低いか否かを判断する(S6)。検出温度が目標温度より低いと判断することに応じて(S6:YES)、極性信号SPを加熱に設定する(S8)。一方、検出温度が目標温度以上であると判断することに応じて(S6:NO)、極性信号SPを冷却に設定する(S10)。例えば、加熱であれば極性信号SPはローレベルと設定され、冷却であればハイレベルに設定される。
【0056】
次に、CPU51はDDC64の出力電圧VO1、あるいはDDC65の出力電圧VO2を最小値に設定する(S12)。温度制御の開始時には、DDC64、65は出力可能な最小電圧をペルチェ素子38に印加するためである。これにより、制御開始時、ペルチェ素子38に急激に大きな電圧が印加されることを防止することができ、ペルチェ素子38の劣化を防ぐことができる。以下の説明では、検出温度が目標温度以上であり(S6:NO)、極性信号SPがハイレベルに設定され冷却に設定された場合(S10)について説明を行う。
【0057】
CPU51はDPM62に対して可変抵抗RBの抵抗値を0Ωとする抵抗信号Sr1を送信する(S14)。次に、ペルチェ制御イネーブル信号SENをイネーブルに設定する
(S16)。これにより、極性切替え制御部61は動作を開始する。この時、極性切替え制御部61には冷却の設定であるハイレベルの極性信号SPが入力される。これにより、ペルチェ素子38の第1端子T1にはDDC64から出力される出力電圧VO1の最小電圧が印加され、第2端子T2にはNチャネルMOSFETトランジスタNFET2が導通することに応じて接地電圧が印加される。これにより、ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面に下限の吸熱量で吸熱する電流が流れる。
【0058】
次に、所定周期毎に温度センサ36による温度検出およびペルチェ素子38への設定電圧印加を繰り返してペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面を吸熱あるいは発熱をさせることにより、励起用半導体レーザ28を冷却あるいは加熱して、温度を目標温度に制御する処理に移行する。
図6に示すように、タイマ54は前回の温度検出からの経過時間を計測しており、所定周期が経過すると(S18)、CPU51は温度センサ36からA/Dコンバータ47を介して検出温度を取得する(S20)。次に抵抗値温度算出処理を行う(S40)。
【0059】
抵抗値温度算出処理(S40)については
図7に示す。CPU51はレーザ加工装置1が加工中であるか否かを判断する(S42)ここで、加工中には以下の期間が含まれる。まず、印字情報に基づいて、CPU51がガルバノコントローラ45にXY座標データを出力している期間である。また、励起用半導体レーザ28からのレーザの出射の有無に関わらず、加工のためにガルバノコントローラ45がガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23を駆動している期間である。また、ガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23の初期位置から、印字情報に基づくXY座標へ移動させるためガルバノコントローラ45がガルバノX軸モータ22とガルバノY軸モータ23を駆動している期間である。具体的には、PC7は、ユーザの操作によって加工開始の指示を受け付けた場合、レーザコントローラ3に印字情報を送信する。CPU51は、印字情報を受信した場合、印字情報に基づいて算出したXY座標データを一定周期毎にガルバノコントローラ45に出力する。従って、CPU51はXY座標データをガルバノコントローラ45に出力している期間、加工中であると判断する。次に、加工中であると判断することに応じて(S42:YES)、励起用半導体レーザ28は精度の高い温度制御を行う必要があるか否かを判断するため、検出温度と目標温度との差分の絶対値が0.3℃より小さいか否かを判断する(S44)。加工中であれば、励起用半導体レーザ28の温度制御を精度よく実行し、発振波長を精度よく調整する必要があるためである。検出温度と目標温度との差分の絶対値が0.3℃より小さいと判断することに応じて(S44:YES)、より精度の良い温度制御を行うために、所定周期Tを期間TC1より短期間である期間TC2に設定する(S46)。検出温度と目標温度との差分の絶対値が0.3℃より小さい場合には、すでに出力電圧VO1またはVO2は下限電圧値に設定されていると考えられるためである。一方、加工中でないと判断することに応じて(S42:NO)、また、検出温度と目標温度との差分の絶対値が0.3℃以上であると判断することに応じて(S44:NO)、精度の良い温度制御を行う必要がないため、所定周期Tを通常の期間TC1に設定する(S48)。ここで、期間TC1は例えば100msecであり、期間TC2は例えば50msecである。ここで、期間TC2を50msecとする理由について説明する。1つは、所定周期Tを50msecとすれば、出力電圧VO1またはVO2を下限電圧値に設定した場合の励起用半導体レーザ28の温度変化量を要求精度である±0.3℃より小さくすることができるためである。具体的には、出力電圧VO1またはVO2を下限電圧値に設定し、所定周期Tを100msecとした場合の、励起用半導体レーザ28、YAGレーザ35の温度変化量は0.8℃である。これに対し、出力電圧VO1またはVO2を下限電圧値に設定し、所定周期Tを50msecとした場合の、励起用半導体レーザ28、YAGレーザ35の温度変化量は0.4℃である。従って、所定周期Tを50msecとすれば、励起用半導体レーザ28、YAGレーザ35の温度変化量を要求精度である±0.3℃、すなわち0.6℃より小さく納めることができる。また、タイマ54が計測する所
定周期は、具体的にはクロック信号の周波数を分周して生成している。このため、期間TC1の半分とすれば簡易に所定周期を生成することができる。また、後述するデッドタイム以上の期間とすることが必要である。デッドタイムは実測値では10ms程度である。
【0060】
次に、周知のPID制御により、目標温度と検出温度との比較結果から、ペルチェ素子38へ印加する電圧の極性および電圧値を算出する(S50)。そして、算出された電圧値に応じて、冷却の場合は式(1)より加熱の場合は式(2)より、抵抗信号Sr1あるいはSr2を出力してDPM62あるいはDPM63の可変抵抗RBの抵抗値を設定する(S52)。
【0061】
目標温度と検出温度との温度差が大きい程、ペルチェ素子38に印加される電圧値を大きくするため、設定される可変抵抗RBの抵抗値は大きな値に設定される。尚、可変抵抗RBの抵抗値は、例えば0〜100kΩの範囲において、8bit諧調で256段階に可変される。また、取得された検出温度と目標温度との温度の高低を判定して、検出温度が目標温度より高温であるか低温であるかの極性を判断して極性信号SPを設定する(S54)。
【0062】
例えば、検出温度が目標温度より高温であり、冷却の設定であるハイレベルの極性信号SPが極性切替え制御部61へ入力されると(S54)、極性切替え制御部61では、イネーブル信号EN1、およびゲート信号Sg2が選択され、DDC64が駆動しNチャネルMOSFETトランジスタNFET2が導通する。これにより、ペルチェ素子38の第1端子T1にDDC64の出力電圧VO1が印加され、第2端子T2は接地電圧とされる。ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面は吸熱し励起用半導体レーザ28が冷却される。
【0063】
一方、検出温度が目標温度より低温であり、加熱の設定であるローレベルの極性信号SPが極性切替え制御部61へ入力されると(S54)、極性切替え制御部61では、イネーブル信号EN2、およびゲート信号Sg1が選択され、DDC65が駆動しNチャネルMOSFETトランジスタNFET1が導通する。これにより、ペルチェ素子38の第2端子T2にDDC65の出力電圧VO2が印加され、第1端子T1は接地電圧とされる。ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面は発熱し励起用半導体レーザ28は加熱される。
【0064】
その後、
図6のフローに戻る。CPU51は温度制御が終了したか否かを判断し(S22)、温度制御が終了したと判断することに応じて(S22:YES)、ペルチェ制御イネーブル信号SENをディセーブルに設定する(S24)。これにより、極性切替え制御部61は停止し、CPU51は温度検出を停止して(S26)、処理は終了する。一方、温度制御が終了しないと判断することに応じて(S22:NO)、ステップS18に戻り、所定周期が経過するまで待機する。なお、この間は、ペルチェ素子38への電圧印加は継続される。
【0065】
ここで、抵抗値温度算出処理(S40)について詳細に説明する。ペルチェ素子38に印加される電圧VPは次式で算出される。
VP=VT1−VT2・・・式(3)
ここで、電圧VT1はペルチェ素子38の第1端子T1の電圧値である。また、電圧VT2はペルチェ素子38の第2端子T2の電圧値である。ステップS50において、CPU51が冷却と設定した場合、ペルチェ素子38の第1端子T1にDDC64の出力電圧VO1が印加され、第2端子T2には接地電圧が印加される。従って、電圧VT1は出力電圧VO1であり(VT1=VO1)、電圧VT2は0Vである(VT2=0)。よって、VP=VO1である。一方、CPU51が加熱と設定した場合、ペルチェ素子38の第2
端子T2にDDC65の出力電圧VO2が印加され、第1端子T1には接地電圧が印加される。従って、電圧VT2は出力電圧VO2であり(VT2=VO2)、電圧VT1は0Vである(VT1=0)。よって、VP=−VO2である。すなわち、電圧VPの絶対値の最小値はDDC64およびDDC65の出力電圧VO1およびVO2の下限電圧値となる。実施形態において、出力電圧VO1およびVO2の下限電圧値は0.8Vである。
【0066】
ところで、単位時間あたりの電圧VPに対するペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面の吸熱量および発熱量は略一定であり、単位時間あたりの電圧VPに対する励起用半導体レーザ28の温度変化量は略一定である。つまり、励起用半導体レーザ28の温度変化量は所定周期Tと電圧VPに依存する。所定周期Tが短いほど、励起用半導体レーザ28の温度変化量は小さくなる。また、電圧VPの電圧値が小さいほど、励起用半導体レーザ28の温度変化量は小さくなる。そこで、励起用半導体レーザ28の温度変化量を小さくしたい場合には、所定周期Tおよび電圧VPを小さくすればよい。しかし、電圧VPの最小値は0.8Vであり、これより小さくすることができない。その一方で、所定周期Tは短縮することができる。
【0067】
さて、温度制御処理において、所定周期毎にペルチェ素子38への設定電圧印加を繰り返すことによって、検出温度は目標温度に近づいていく。また、励起用半導体レーザ28の要求精度は高く、±0.3℃程度である。これは、励起用半導体レーザ28の出射するレーザ光の波長をYAGレーザ35が吸収する極大吸収波長帯域に制御するためである。YAGレーザ35が励起する波長帯域は狭く、YAGレーザ35が有効にレーザ光を出射するためには励起用半導体レーザ28から出射するレーザ光の波長を精度よく制御する必要がある。特に、励起用半導体レーザ28の出射するレーザ光の波長は温度により変化するため、励起用半導体レーザ28の温度変動を±0.3℃程度に抑制することにより、YAGレーザ35において所望の波長帯域のレーザ光を得ることができる。YAGレーザ35により出射されるレーザ光が極大吸収波長帯域の波長を得ることで、YAGレーザ35は、所望のパワー、周波数のパルスレーザを出力することができる。
【0068】
従って、検出温度が目標温度に近づいた場合、励起用半導体レーザ28の温度変化量を小さくし、目標温度±0.3℃の精度で励起用半導体レーザ28の温度変化を制御する必要がある。即ち、励起用半導体レーザ28の所定周期Tでの温度変化量は0.6℃以内にする必要がある。しかし、実施形態では、所定周期Tが期間TC1である場合には電圧VPが最小値の0.8Vであっても、励起用半導体レーザ28の所定周期T(=TC1)での温度変化量は0.6℃に収めることができない。そこで、ステップS46において、所定周期Tを期間TC2と短縮することによって、電圧VPが最小値の0.8Vであっても励起用半導体レーザ28の温度変化量を0.6℃以内に制御することができる。
【0069】
図8は所定周期Tが期間TC1から期間TC2へ短縮される場合の励起用半導体レーザ28の温度の推移を示す図である。
図9は所定周期Tが期間TC1から期間TC2へ短縮される場合の励起用半導体レーザ28の電圧VPの推移を示す図である。
図8および
図9の横軸は同じ時間軸である。ここで、目標温度Ttに対して、要求精度は±0.3℃である。目標温度Ttは例えば43℃である。検出温度がTt+0.3℃より小さく、Tt−0.3℃より大きい場合、検出温度と目標温度の差分の絶対値が0.3℃より小さいと判断する(S44:YES)。また、時刻t1から時刻t4に至るまで、レーザ加工装置1は加工中であるとする。
【0070】
時刻t1において、CPU51は温度検出する(S20)。検出温度は判定値Tt+0.3℃よりも大きいため、検出温度と目標温度との差の絶対値は0.3℃以上であると判断する(S44:NO)。検出温度と目標温度との差の絶対値は0.3℃以上であると判断することに応じて(S44:NO)、所定周期Tを期間TC1とし(S48)、ステッ
プS50へ進む。ステップS50では、PID制御にて極性および出力電圧値が算出される。検出温度は目標温度よりも高温であるため、冷却に設定される。また、算出の結果、印加電圧は0.8Vであるとする。次に、DPM64の可変抵抗RBの抵抗値は0Ωに設定される(S52)。次に、極性信号SPは冷却であるハイレベルに設定される(S54)。これにより、時刻t1から時刻t2に至るまでの間、ペルチェ素子38には0.8Vが印加された状態で励起用半導体レーザ28は冷却され、温度は低下する。
【0071】
時刻t1から期間TC1の所定周期Tが経過した時刻t2で、CPU51は再度温度検出する(S20)。時刻t2では、検出温度は判定値Tt−0.3℃とTt+0.3℃との間にあるため、検出温度と目標温度との差の絶対値は0.3℃より小さいと判断する(S44:YES)。これにより、所定周期Tを期間TC2と短縮し(S46)、ステップS50へ進む。ステップS50では、PID制御にて極性および出力電圧値が算出される。検出温度は目標温度よりも低温であるため、加熱に設定される。また、算出の結果、印加電圧は0.8Vであるとする。次に、DPM64の可変抵抗RBの抵抗値は0Ωに設定される(S52)。次に、極性信号SPは加熱であるローレベルに設定される(S54)。これにより、時刻t2から時刻t3に至るまでの間、ペルチェ素子38には0.8Vが印加された状態で期間TC2に短縮された所定周期Tの間、励起用半導体レーザ28は加熱され温度は上昇する。
【0072】
時刻t1から時刻t2までの所定周期T(=TC1)と、時刻t2から時刻t3までの所定周期T(=TC2)では、電圧VPはともに最小値であるので、単位時間あたりの温度の変化率の絶対値は共に同値の最小値である。しかし、時刻t2から時刻t3までの所定周期T(=TC2)は時刻t1から時刻t2までの所定周期T(=TC1)よりも短いため、所定周期Tでの温度変化量は小さくなる。これにより、要求精度の温度差内で制御することができる。
【0073】
時刻t3から開始される所定周期T(=TC2)では、検出温度は目標温度Ttよりも高温であるため時刻t4に至るまでの間は冷却される。このように目標温度Ttに近づいた状態では、期間TC1より短縮された所定周期T(=TC2)で冷却と加熱とを交互に繰り返すことで、期間TC1の所定周期Tの場合より狭い温度範囲に制御することができる。
【0074】
尚、
図8では、ペルチェ素子38に印加される電圧の極性が切り替わる際の電圧印加のシーケンスについては省略した。実際には、隣接する所定周期Tの間で冷却から加熱、あるいは加熱から冷却に切り替えられる場合には、放電時間およびデッドタイムが必要となる。放電時間とは平滑用コンデンサC1またはC2に充電されていた電荷を放電するための期間である。デッドタイムとは、イネーブル信号EN1、EN2、およびゲート信号Sg1、Sg2が、共にローレベルに維持される期間である。例えば、冷却から加熱へ切り替える場合には、まず、イネーブル信号EN1はハイレベルからローレベルへ切り替えられる。次に、放電時間が経過する期間、ゲート信号Sg2はハイレベルに維持される。次に、ゲート信号Sg2がハイレベルからローレベルに切り替えられる。所定時間において、それ以前に駆動していたDDC64により平滑用コンデンサC1に充電されていた電荷が放電される。これにより、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1の破壊を防止することができる。平滑用コンデンサC1に電荷が充電されたままであると、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1はオンされた時に、平滑用コンデンサC1に残留する電荷がNチャネルMOSFETトランジスタNFET1を介して接地電圧に流れ、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1が破壊される虞があるからである。次に、ゲート信号Sg2をハイレベルからローレベルに切り替えてからデッドタイムが経過するまでの間、イネーブル信号EN1、EN2、およびゲート信号Sg1、Sg2は、共にローレベルに維持される。デッドタイムを設けることにより、出力電圧VO2と接地電圧と
がNチャネルMOSFETトランジスタNFET2を介して短絡するのを防ぐことができる。加熱から冷却へ切り替える場合にも同様に、平滑用コンデンサC2を放電する放電時間と、冷却の電圧が印加される前のデッドタイムが設けられる。
【0075】
ところで、所定周期Tを制御開始時から短周期である期間TC2に設定することもできる。しかし、所定周期Tが短いとCPU51への負荷が増大する。また、検出温度と目標温度との温度差が大きい場合には、所定周期Tが長い方が効率良く励起用半導体レーザ28の加熱/冷却を行うことができる。
【0076】
ここで、励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35は対象機器、およびレーザ加工装置の一例である。レーザ加工装置1は温度制御装置の一例である。また、ペルチェドライバ48は電圧印加部の一例である。温度センサ36、37は温度検出部の一例である。また、レーザコントローラ3は制御部の一例である。また、励起用半導体レーザ28は励起用レーザの一例である。また、YAGレーザ35は固体レーザの一例である。また、励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35はレーザ発振器の一例である。また、DDC64は第1DC/DCコンバータの一例であり、DDC65は第2DC/DCコンバータの一例である。また、NチャネルMOSFETトランジスタNFET1は第1トランジスタの一例であり、NチャネルMOSFETトランジスタNFET2は第2トランジスタの一例である。
【0077】
また、
図6および7のフローチャートにおいて、ステップS20およびS50は高低判断処理および温度差検出処理の一例である。ステップS54は通電制御処理の一例である。ステップS52は電圧制御処理の一例である。ステップS46は周期制御処理の一例である。ステップS44は温度判定処理の一例である。ステップS42は加工判定処理の一例である。
【0078】
以上、上記した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
レーザ加工装置1では、ペルチェ素子38、39、励起用半導体レーザ28、YAGレーザ35、ペルチェドライバ48、温度センサ36、37を備えている。励起用半導体レーザ28の温度はペルチェ素子38を利用して目標温度に制御される。また、YAGレーザ35の温度はペルチェ素子39を利用して目標温度に制御される。ペルチェドライバ48はペルチェ素子38および39の端子間に極性の切り替えが可能な電圧を印加する。温度センサ36は励起用半導体レーザ28の温度を検出する。また、温度センサ37はYAGレーザ35の温度を検出する。また、所定周期毎に、CPU51は、ステップS50にて、検出温度と目標温度との高低を判定し、温度差を検出する。そして、検出温度が目標温度に対して高温であると判断すると、極性信号SPを冷却に設定し(S54)、極性切替え制御部61へ出力する。極性切替え制御部61はDDC64へハイレベルのイネーブル信号EN1を出力し、NチャネルMOSFETトランジスタNFET2へハイレベルのゲート信号Sg2を出力する。これにより、DDC64は動作しNチャネルMOSFETトランジスタNFET2はオンする。そして、ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面、ペルチェ素子39のYAGレーザ35側の電極面は吸熱する。また、極性信号SPが加熱に設定されると(S54)、ハイレベルのイネーブル信号EN2とゲート信号Sg1とを出力して、DDC65は動作しNチャネルMOSFETトランジスタNFET1はオンする。そして、ペルチェ素子38の励起用半導体レーザ28側の電極面、ペルチェ素子39のYAGレーザ35側の電極面は発熱する。また、ステップS52にて、CPU51は抵抗信号Sr1あるいはSr2を出力し、出力電圧VO1、VO2をDDC64、65から出力する。ステップS44において、検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さいと判断することに応じて、所定周期Tを期間TC1より短期間である期間TC2へ変更する。
【0079】
ペルチェ素子38、39に印加される出力電圧VO1、VO2が下限電圧である0.8Vである場合、所定周期Tを期間TC1とした制御では、更に細かい温度制御を行うことはできない。この場合でも、ステップS44、S46において、検出温度と目標温度との温度差に応じて所定周期Tを期間TC2へと短縮することにより、温度制御を更に細かく行うことができる。検出温度と目標温度との温度差が0.3℃以下であって検出温度が目標温度に近づいている場合、出力電圧VO1、VO2の電圧が下限電圧である0.8Vであっても、細かい温度差を制御でき精細な温度制御を的確に行うことができる。
【0080】
また、レーザ加工装置1は、励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35を備える。励起用半導体レーザ28はYAGレーザ35を励起する。ステップS44において、温度センサ36により検出された検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さいことに応じて、所定周期Tを期間TC2へと短縮する。
【0081】
これにより、励起用半導体レーザ28の検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さく、検出温度が目標温度に近づいており、更にレーザ加工装置1が加工中である場合、所定周期Tを期間TC2に設定することにより精細な温度制御を行うことができ、検出温度を効率よく目標温度に制御することができる。これにより、励起用半導体レーザ28から出射されるレーザ光の波長帯域はYAGレーザ35が効率良く励起される波長帯域に制御される。YAGレーザ35は所望の波長帯域でレーザ光を出射することができる。
【0082】
また、ペルチェドライバ48は、DDC64と、DDC64の出力端子O1と接地電位との間に電気的に接続されるNチャネルMOSFETトランジスタNFET1と、DDC65と、DDC65の出力端子O2と接地電位との間に電気的に接続されるNチャネルMOSFETトランジスタNFET2とを備える。ペルチェ素子38の第1端子T1は出力端子O1に電気的に接続され、第2端子T2は出力端子O2に電気的に接続される。
【0083】
これにより、DDC64、65により直流の出力電圧が供給されるので、DDC64、65の出力電圧を直接ペルチェ素子38に印加することができる。また、DDC64、65により出力電圧が供給されるので、正逆2方向の極性の電圧を直接にペルチェ素子38に印加することができる。
【0084】
また、本発明に係る温度制御装置において、DDC64、65は単電源で駆動される。これにより、温度制御の精度を確保するために、正電源と負電源との二電源を必要とせず、簡易な単電源により精度良く温度制御をすることができる。また、低コストでペルチェドライバ48を構成することができる。
【0085】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、
図5および6に示す温度制御のフローチャートにおいて、抵抗値温度算出処理(S40)に代えて、
図9に示す抵抗値温度算出処理2を行う。
【0086】
抵抗値温度検出処理2について説明する。CPU51はDPM62の可変抵抗RBの抵抗値が0Ωに設定されているか否かを判断する。可変抵抗RBの抵抗値が0Ωに設定されている場合は、出力電圧VO1またはVO2が下限電圧値であると判断することができる。次に、可変抵抗RBの抵抗値が0Ωに設定されていると判断することに応じて(S62:YES)、出力電圧VO1またはVO2が下限電圧値であると判断されるため、CPU51はレーザ加工装置1が加工中であるか否かを判断する(S64)。次に、加工中であると判断することに応じて(S64:YES)、励起用半導体レーザ28は精度の高い温度制御を行う必要があるか否かを判断するため、検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さいか否かを判断する。次に、検出温度と目標温度の温度差の絶対値が
0.3℃より小さいと判断することに応じて(S66:YES)、精度の高い温度制御を行うために、所定周期Tを期間TC1より短期間である期間TC2に設定する(S68)。次に、励起用半導体レーザ28は出射中であるか否かを判断する(S70)具体的には、CPU51は、PC7から入力された印字情報に基づいて励起用半導体レーザ28から励起光を出力する駆動パターンを出力中の期間であるか否かを判断する。励起光の出力期間である場合には出射中であると判断し、励起光を出力する駆動パターンをレーザドライバ29に出力するタイミングで、極性信号SPを冷却に設定する。励起用半導体レーザ28は出射中であると判断することに応じて(S70:YES)、極性を冷却に確定し、DPM62の可変抵抗RBの抵抗値を0Ωに維持する(S72)。励起用半導体レーザ28が出射中である期間、励起用半導体レーザ28の発熱により、励起用半導体レーザ28の温度は上昇する。そこで、励起用半導体レーザ28が出射中である場合には、励起用半導体レーザ28を冷却することにより出射動作に伴う発熱による温度上昇を抑制するためである。
【0087】
一方、励起用半導体レーザ28は出射中でないと判断することに応じて(S70:NO)、PID制御により、目標温度と検出温度との比較結果から、ペルチェ素子38へ印加する電圧の極性および電圧値を算出する(S76)。そして、算出された電圧値に応じて、抵抗信号Sr1あるいはSr2を出力してDPM62あるいはDPM63の可変抵抗RBの抵抗値を設定し(S78)、極性信号SPを設定し、抵抗値温度算出処理2は終了する。レーザ加工装置1は加工中であり、かつ、検出温度と目標温度の温度差の絶対値が0.3℃より小さいので、所定周期Tは期間TC2で動作する。また、レーザ出射中でないため、PID制御によって極性および出力電圧値を算出して加熱または冷却の制御が行われる。
【0088】
一方、DPM62の可変抵抗RBの抵抗値が0Ωに設定されていないと判断することに応じて(S62:NO)、また、レーザ加工装置1が加工中でないと判断することに応じて(S64:NO)、また、検出温度と目標温度の差分の絶対値が0.3℃以上であると判断することに応じて(S66:NO)、所定周期Tを通常の期間TC1に設定する(S74)。次に、PID制御により、目標温度と検出温度との比較結果から、ペルチェ素子38へ印加する電圧の極性および電圧値を算出する(S76)。そして、算出された電圧値に応じて、抵抗信号Sr1あるいはSr2を出力してDPM62あるいはDPM63の可変抵抗RBの抵抗値を設定し(S78)、極性信号SPを設定し、抵抗値温度算出処理2は終了する。
【0089】
ここで、
図6および9のフローチャートにおいて、ステップS20およびS76は高低判断処理および温度差検出処理の一例である。ステップS80は通電制御処理の一例である。ステップS78は電圧制御処理の一例である。ステップS68は周期制御処理の一例である。ステップS66は温度判定処理の一例である。ステップS64は加工判定処理の一例である。
【0090】
以上、上記した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
ステップS66において、CPU51は検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さいか否かを判定する。また、ステップS64において、レーザ加工装置1が加工中であるか否かを判定する。ステップS64において、レーザ加工装置1が加工中であると判断することに応じて、さらに、ステップS66において、検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さいと判断することに応じて、ステップS68において、所定周期Tを期間TC2に設定する。さらに、ステップS70において、励起用半導体レーザ28がレーザ出射中であるかを判定する。ステップS70において、励起用半導体レーザ28がレーザ出射中であると判断することに応じて、ステップS72において、極性を冷却に確定する。
【0091】
これにより、検出温度と目標温度との温度差の絶対値が0.3℃より小さく、検出温度が目標温度に近づいており、更にレーザ加工装置1が加工中である場合、所定周期Tを短縮することにより精細な温度制御を行うことができ、検出温度を効率良く目標温度に制御することができる。また、励起用半導体レーザ28がレーザ光を出射中である場合には、出射動作に伴い発熱するので、温度差に関わらずペルチェ素子38により励起用半導体レーザ28を冷却することで、励起用半導体レーザ28が発熱して目標温度から離れて高温となってしまうことを防止することができる。
【0092】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、実施形態のペルチェドライバ48は2つのDPMを有する構成であると説明したが、DPMを1つだけ有する構成としてもよい。この場合、例えば、DPMの出力端子を2つのDDCの入力端子の何れかに切替えるスイッチをDPMの後段に備える構成とすればよい。また、追加したスイッチはCPU51が出力する極性信号SPに応じて、DPMとDDCとの電気的に接続に切替え可能な構成とする。これにより、回路を簡略化することができる。
【0093】
また、DDC64およびDDC65は同期整流型降圧チョッパ方式のDC/DCコンバータであると説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ダイオード整流型降圧チョッパ方式、あるいは絶縁型のDC/DCコンバータを用いることができる。
【0094】
また、実施形態では、DDC64とNチャネルMOSFETトランジスタNFET2、およびDDC65とNチャネルMOSFETトランジスタNFET1との組み合わせで、ペルチェ素子38に印加する電圧の極性を正逆の各々の方向に制御する場合を説明した。しかしながら、本願はこれに限定されるものではない。Hブリッジ回路を使用する場合にも本発明を適用することができることは言うまでもない。また、実施形態では、励起用半導体レーザ28の温度制御について説明したが、YAGレーザ35の温度制御についても本発明を同様に適用することができる。
【0095】
また、ペルチェ素子38、39に印加する電圧の極性が反転する場合に、切り替えられた電圧を印加するにあたって、先ず最小電圧を印加する処理を挿入しても良い。これにより、ペルチェ素子38、39に印加される電圧の極性が反転される場合には、最小電圧が印加された後に、設定された電圧が印加される。ペルチェ素子38、39の劣化を防止することができる。尚、この場合は、DPM62、63において、可変抵抗RBの抵抗変化を2段階で変化されるように制御すれば良い。具体的には、可変抵抗RBの抵抗値を0とした後、抵抗信号Sr1、Sr2に応じた抵抗値に切替える。
【0096】
また、実施形態では、レーザコントローラ3がCPU51を備える場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数のCPUを備えてもよいし、CPLDによって構成されてもよいし、ASICによって構成されてもよい。さらに、CPU51、CPLD、およびASICの種々の組み合わせによって構成されてもよい。
【0097】
また、第1実施形態では、所定周期Tを期間TC1よりも短期間のTC2へ変更する場合を説明したが、これに限定されず、所定周期Tを期間TC1よりも長期間の期間TC3へ変更することもできる。例えば、レーザ加工装置1に電源が投入されている状態で、加工が行われていない場合には、期間TC3で温度制御処理を行うと良い。この場合、温度制御の精度は悪くなるが、所定周期Tを長くすることにより消費電力を低減しながら、スタンバイ中の励起用半導体レーザ28およびYAGレーザ35の温度を目標温度付近に維持しておくことができる。これにより、再度加工を行う場合に短時間で励起用半導体レー
ザ28およびYAGレーザ35目標温度にすることができ、短時間で加工を開始することができる。