特許第6229654号(P6229654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229654変性共役ジエン系重合体、重合体組成物、架橋体及びタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229654
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体、重合体組成物、架橋体及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/00 20060101AFI20171106BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171106BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C08C19/00
   C08L15/00
   C08K3/36
   B60C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-525860(P2014-525860)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2013069506
(87)【国際公開番号】WO2014014052
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-161858(P2012-161858)
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-164844(P2012-164844)
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】川合 高弘
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 毅
(72)【発明者】
【氏名】谷 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二
(72)【発明者】
【氏名】田中 了司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慈
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057946(JP,A)
【文献】 特開昭63−215701(JP,A)
【文献】 特開昭53−088845(JP,A)
【文献】 特開昭63−186748(JP,A)
【文献】 特開2011−079978(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/004686(WO,A1)
【文献】 特開平08−100034(JP,A)
【文献】 特開2001−278986(JP,A)
【文献】 特開2008−133437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08F8/00−8/50
C08F279/00−279/06
C08G81/02
C08L15/00−15/02
C08K3/36
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して得られる共役ジエン系重合体の変性体である変性共役ジエン系重合体の製造方法であって、
前記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物と、を反応させる主鎖変性工程と、
前記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)とを反応させる末端変性工程と、を含み、
前記特定化合物は前記化合物(A1)と同じであり、
前記末端変性工程による変性と前記主鎖変性工程による変性とを同時に行う、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記特定化合物は、
(I)下記式(1)で表される化合物(a−1)、
(II)分子中に、環状エーテル基及び(チオ)カルボニル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基(x1)と、窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有しかつ活性水素を有していない、前記官能基(x1)とは異なる基(x2)と、を有する化合物(a−2)、及び、
(III)分子中に、イソ(チオ)シアナート基を2つ以上有する化合物(a−3)
からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子又は硫黄原子で結合する1価の官能基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、nは0〜2の整数である。但し、R及びRが複数存在する場合、複数のR及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と、シリカと、架橋剤とを混合する重合体組成物の製造方法
【請求項4】
請求項に記載の重合体組成物を架橋させる橋体の製造方法
【請求項5】
請求項に記載の製造方法により得られる橋体によって、少なくともトレッド又はサイドウォールを形成するタイヤの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体、重合体組成物、架橋体及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤ用ゴムとしては、従来、乳化重合法や溶液重合法によって得られる共役ジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体など)が知られている。また近年、自動車の低燃費性能の更なる向上を図ることが一層求められており、これを実現するべく種々の変性共役ジエン系重合体が提案されている。例えば、自動車タイヤ用ゴムとして、共役ジエン系重合体の末端を、アミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物を用いて変性した変性共役ジエン系重合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、重合体の主鎖を構成する炭素原子にケイ素原子が結合するとともに当該ケイ素原子にアミノ基が結合した変性共役ジエン系重合体、及びアミノ基を有するベンゼン環が結合された変性共役ジエン系重合体が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0003】
また、自動車タイヤの製造に用いる重合体組成物には、タイヤ強度や加工性等の各種性能を向上させることを目的として、重合体成分の他に種々の添加剤が配合される。具体的には、重合体組成物に、タイヤ強度の向上を目的としてシリカやカーボンブラック等が配合され、加工性の向上を目的として鉱物油や相溶化剤などが配合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−171418号公報
【特許文献2】特開2010−77386号公報
【特許文献3】特開2011−195802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今におけるガソリンの価格高騰等の経済事情や、二酸化炭素の排出による地球温暖化等の環境事情の下、自動車タイヤ用ゴムとしては、低燃費性能において従来のものよりも更に優れた材料が望まれている。
【0006】
また、窒素原子やケイ素原子を含有する化合物を用いて共役ジエン系重合体を変性することにより、自動車の低燃費性能を向上できるが、その反面、重合体とシリカとの相互作用が増すことにより、重合体組成物の加工性が低下するといった不都合が生じ得る。また更に、鉱物油や相溶化剤などを重合体組成物に添加することにより、重合体組成物の加工性を改善することが可能であるが、その反面、当該組成物を用いて製造したタイヤにおいて耐摩耗性が低下するといった不都合が生じ得る。タイヤ用の重合体組成物としては、加工性が良好であるとともに、低燃費性能(低ヒステリシスロス特性)及び耐摩耗性が良好なタイヤを製造できることが要求される。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、自動車タイヤ等の用途において、低燃費性能に優れたゴム組成物を得るための変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを一つの目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成すべく鋭意検討した結果、共役ジエン系重合体の末端部分を変性するとともに、該重合体の主鎖部分を特定化合物を用いて変性した変性共役ジエン系重合体によれば、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を解決するに至った。具体的には、本発明により以下の変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、重合体組成物、架橋重合体及びタイヤが提供される。
【0009】
本発明は一つの側面において、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して得られる共役ジエン系重合体の変性体である変性共役ジエン系重合体の製造方法であって、前記共役ジエン系重合体の少なくとも一方の末端にシリカと相互作用する官能基を有する末端変性重合体における、末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物と、を反応させる主鎖変性工程を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0010】
具体的には、第1の構成として、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、前記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)と、を反応させる末端変性工程と、前記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物と、を反応させる主鎖変性工程と、を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0011】
上記第1の構成によれば、自動車タイヤ等の用途において低燃費性能(低ヒステリシスロス特性)に優れた架橋重合体を得ることが可能な変性共役ジエン系重合体を製造することができる。また、当該架橋重合体はウェットスキッド抵抗性にも優れており、自動車タイヤ等の用途に好適に用いることができる。
【0012】
また、第2の構成として、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、前記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)と、を反応させる末端変性工程と、前記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種を繰り返し単位(p)中に含む重合体(P)と、を反応させる主鎖変性工程と、を含む、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0013】
上記第2の構成によれば、自動車タイヤ等の用途において低燃費性能及び耐摩耗性が良好な架橋重合体を得ることができるとともに、加工性が良好な重合体組成物を得るための変性共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0014】
本発明は別の一つの側面において、上記の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体と、シリカと、架橋剤と、を含む重合体組成物を提供する。また、当該重合体組成物を架橋させてなる架橋重合体を提供する。また更に、当該架橋重合体を、少なくともトレッド又はサイドウォールの材料として用いたタイヤを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪第1実施形態≫
[1]変性共役ジエン系重合体の製造方法
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、共役ジエン系重合体の少なくとも一方の末端にシリカと相互作用する官能基を有する末端変性重合体における、末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物と、を反応させる主鎖変性工程を含む。本発明の第1実施形態における具体的な態様としては、下記(1)又は(2);
(1)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、上記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)とを反応させる末端変性工程と、上記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物とを反応させる主鎖変性工程と、を含む態様。
(2)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(但し、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物として金属アミド化合物を含む。)の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、上記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカと相互作用する官能基を有する特定化合物とを反応させる主鎖変性工程と、を含む態様。
等が挙げられる。なお、上記(1)の態様によれば、共役ジエン系重合体の重合終了末端及び側鎖部分に、シリカと相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。また、当該(1)の態様において、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の少なくとも一部を金属アミド化合物とすることにより、共役ジエン系重合体の重合開始末端、重合終了末端及び側鎖部分に、シリカと相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。また、上記(2)の態様によれば、共役ジエン系重合体の重合開始末端及び側鎖部分に、シリカと相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。以下、各工程について詳しく説明する。
【0016】
<重合工程>
本発明における重合工程は、共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程である。
ここで、上記重合に用いる共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンを好ましく使用することができる。なお、共役ジエン化合物としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、t−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレン等が挙げられる。なお、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンとしては、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレンなどが挙げられる。重合に用いる芳香族ビニル化合物としては、これらの中でもスチレンが特に好ましい。なお、芳香族ビニル化合物としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
なお、上記で例示した共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物は、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0019】
本重合工程により得られる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物の単独重合体であってもよいが、ゴムの強度を高める観点から、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であることが好ましい。中でも、アニオン重合におけるリビング性が高い点において、1,3−ブタジエンとスチレンとの共重合体であることが好ましい。
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体において、芳香族ビニル化合物の使用量は、タイヤ用途に適用した場合の低ヒステリシスロス特性とウェットスキッド抵抗性とのバランスを良好にする観点から、重合に使用する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との合計量に対して、3〜55質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0020】
重合に際しては、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物以外の他のモノマーを使用してもよい。他のモノマーとしては、例えばアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。他のモノマーの使用量は、重合に使用するモノマーの全体量に対して、25質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
本発明における共役ジエン系重合体は、上記共役ジエン化合物を少なくとも含むモノマーを用いて製造することができる。ここで、重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれを用いてもよいが、溶液重合法が特に好ましい。また、重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。
溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、共役ジエン化合物を含むモノマーを、重合開始剤及び必要に応じて用いられるランダマイザーの存在下で重合する方法が挙げられる。
【0022】
重合開始剤としては、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうち少なくともいずれかを用いることができる。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、アニオン重合の開始剤として通常用いるものを使用することができ、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、1,4−ジリチオブタン、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ナフチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカリウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。中でも、リチウム化合物が好ましい。
【0023】
また、重合開始剤としてのアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、上記に例示したアルキルリチウム、芳香族リチウム化合物等の少なくともいずれかと2級アミン化合物とを混合して得られる金属アミド化合物(R)を用いることもできる。このような金属アミド化合物(R)の存在下で重合を行うことにより、共役ジエン系重合体の重合開始末端に、シリカと相互作用を有する官能基を導入することができる。
なお、本明細書において「相互作用」とは、分子間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン−双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)を形成することを意味する。また、「シリカと相互作用する官能基」は、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子などのシリカと相互作用する原子を少なくとも1つ有する基を示す。
【0024】
上記金属アミド化合物(R)としては、中でもアルキルリチウム、芳香族リチウムなどのリチウム化合物と2級アミン化合物との反応生成物であることが好ましい。当該2級アミン化合物の具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ドデカメチレンイミン、N,N’−ジメチル−N’−トリメチルシリル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、モルホリン、N−(トリメチルシリル)ピペラジン、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン、1,3−ジトリメチルシリル−1,3,5−トリアジナン等が挙げられる。
【0025】
なお、金属アミド化合物(R)の存在下で重合を行う場合、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と2級アミン化合物とを予め混合することにより金属アミド化合物(R)を調製し、その調製した金属アミド化合物(R)を重合系中に添加してもよい。あるいは、重合系中に、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物と2級アミン化合物とを添加し、重合系中で両者を混合することにより金属アミド化合物(R)を調製してもよい。金属アミド化合物(R)の使用量は、重合に使用するモノマー100gに対して、0.2〜20mmolが好ましい。
【0026】
ランダマイザーは、ビニル結合(1,2−結合及び3,4−結合)の含有率(ビニル含量)の調整等を目的として用いることができる。ランダマイザーの例としては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン、2−(2−エトキシエトキシ)−2−メチルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
重合に使用する有機溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、例えば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などを用いることができる。中でも、炭素数3〜8の炭化水素が好ましく、その具体例としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロヘキセン等を挙げることができる。なお、有機溶媒としては、上記のものを一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
溶液重合を用いる場合、反応溶媒中のモノマー濃度は、生産性と重合コントロールの容易性のバランスを維持する観点から、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。重合反応の温度は、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。また、重合反応は、モノマーを実質的に液相に保つのに十分な圧力の下で行うことが好ましい。このような圧力は、重合反応に対して不活性なガスによって、反応器内を加圧する等の方法によって得ることができる。
【0029】
上記重合反応により得られる共役ジエン系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10〜2.0×10である。Mwが1.0×10未満であると、本発明の変性共役ジエン系重合体を含む重合体組成物を用いて得られる架橋重合体において、低燃費性能及び耐摩耗性が低下しやすい傾向にあり、2.0×10を超えると、重合体組成物の加工性が低下しやすい傾向にある。より好ましくは、1.5×10〜1.5×10であり、更に好ましくは、2.0×10〜1.0×10である。また、ビニル含量は、30〜65%であることが好ましく、33〜62%であることがより好ましく、35〜60%であることが更に好ましい。ビニル含量が30%未満であると、グリップ特性が低くなりすぎる傾向があり、65%を超えると、耐摩耗性が悪化しやすくなる傾向にある。なお、ビニル含量は、H−NMRによって測定した値である。
【0030】
<末端変性工程>
本発明における末端変性工程は、上記重合工程により得られた共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)とを反応させる工程である。同工程により、共役ジエン系重合体の重合終了末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。
【0031】
末端変性工程における変性反応(以下、末端変性反応ともいう。)に用いる共役ジエン系重合体は、活性末端を有している限り、重合開始末端が未変性のものでもよいし、変性されたものでもよい。また、化合物(A1)としては、シリカと相互作用する官能基を有し、かつ重合活性末端と反応し得る化合物を用い、具体的には、下記化合物(a−1)〜(a−3)
(I)下記式(1)で表される化合物(a−1);
【化1】
(式(1)中、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、活性水素を有さず、かつRに対して窒素原子、リン原子又は硫黄原子で結合する1価の官能基である。R及びRはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、nは0〜2の整数である。但し、R及びRが複数存在する場合、複数のR及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
(II)分子中に、環状エーテル基及び(チオ)カルボニル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基(x1)と、窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有しかつ活性水素を有していない、上記官能基(x1)とは異なる基(x2)と、を有する化合物(a−2);
(III)分子中に、イソ(チオ)シアナート基を2つ以上有する化合物(a−3);
よりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用する。なお、本明細書において、(チオ)カルボニル基は、カルボニル基及びチオカルボニル基を示す。また、イソ(チオ)シアナート基は、イソシアナート基及びイソチオシアナート基を示す。
【0032】
[化合物(a−1)]
上記式(1)において、R及びRのヒドロカルビル基としては、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
は、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基であることが好ましい。
nは、共役ジエン系重合体との反応性を高める観点から、0又は1が好ましい。
は、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子(以下、特定原子ともいう。)を有しており、これらの特定原子を介してRに結合している。また、上記特定原子は、活性水素と結合しておらず、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等で保護されていてもよい。なお、ここでいう「活性水素」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、好ましくはポリメチレンの炭素−水素結合よりも結合エネルギが低いものを指す。
【0033】
としては、オニウム塩生成剤によってオニウムイオンになり得る基であることが好ましい。化合物(a−1)がこのような基(A)を有することにより、変性共役ジエン系重合体に対して優れた形状保持性を付与することができる。
の具体例としては、例えば1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、3級アミノ基、イミノ基、ピリジル基、1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、及び、チオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基等が挙げられる。これらの中でも、シリカとの親和性が良好である観点から、窒素原子を有する基であることが好ましい。なお、「保護基」とは、Aを不活性な官能基に変換しておく官能基であり、例えば3置換のヒドロカルビルシリル基等が挙げられる。
【0034】
上記化合物(a−1)の具体例としては、1級アミノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、2級アミノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる窒素含有基、又は3級アミノ基と、アルコキシシリル基とを有する化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(メチルジメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−p−フェニレンジアミン、3−〔3−(トリメチルシリルエチルアミノ)−1−ピロリジニル〕−プロピル−メチルジエトキシシラン、N−〔3−(ジエトキシメチルシリル)−プロピル〕−N−エチル−N’−(2−エトキシエチル)−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチルジメチルアミン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ジエチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、及び上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を炭素数1〜6のアルキル基、アルカンジイル基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
【0035】
中でも、好ましい化合物の例として、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−トリメチルシリル−N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン等が挙げられる。
【0036】
イミノ基又はピリジル基と、アルコキシシリル基とを有する化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、ならびに、上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を炭素数1〜6のアルキル基、アルカンジイル基に置き換えた化合物等が挙げられる。
中でも、好ましい化合物の例として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール等が挙げられる。
【0037】
1級ホスフィノ基の2つの水素原子が2つの保護基によって置換されてなるリン含有基、2級ホスフィノ基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなるリン含有基、3級ホスフィノ基、又はチオール基の1つの水素原子が1つの保護基によって置換されてなる硫黄含有基と、アルコキシシリル基とを有する化合物としては、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及び上記化合物中のアルキル基、アルカンジイル基を炭素数1〜6のアルキル基、アルカンジイル基に置き換えた化合物等を挙げることができる。
中でも、好ましい化合物の例として、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
その他、上記化合物(a−1)としては、例えばイソ(チオ)シアナート基を有する化合物として、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソチオシアナトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0038】
[化合物(a−2)]
上記化合物(a−2)は、上記官能基(x1)と上記基(x2)とを有する。ここで、上記官能基(x1)における環状エーテル基としては、三員環又は四員環であることが好ましく、三員環であることがより好ましい。また、上記基(x2)は、三置換の窒素原子であることが好ましい。
上記化合物(a−2)において、上記基(x2)が有する窒素原子、リン原子、酸素原子及び硫黄原子は、官能基(x1)と直接結合していてもよいし、2価の有機基を介して官能基(x1)結合していてもよい。当該2価の有機基としては、例えば炭素数1〜30のヒドロカルビレン基などが挙げられる。
上記化合物(a−2)の具体例としては、環状エーテル基を有する化合物として、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル(4,4’−メチレンビスアニリン)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等のエポキシアミン化合物などを;
(チオ)カルボニル基を有する化合物として、例えば4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノン;4−N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、α−(1H−イミダゾール−1−イル)アセトフェノン等の4−アミノアセトフェノン;1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等のビス(ジヒドロカルビルアミノアルキル)ケトン:2−ジメチルアミノエチルアクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のジヒドロカルビルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン等のヒドロカルビルイミダゾリジノン;1−フェニル−2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン等のN−ヒドロカルビルピロリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム等のN−ヒロドカルビルカプトラクタム;N,N−ジエチルホルムアミド等のN−ジヒドロカルビルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジヒドロカルビルアセトアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)チオベンゾフェノン等のチオケトンなどを、それぞれ挙げることができる。
【0039】
[化合物(a−3)]
上記化合物(a−3)が有するイソ(チオ)シアナート基の数は、2つ以上であればよく、2〜6つであることが好ましく、2〜4つであることがより好ましい。上記化合物(a−3)において、イソ(チオ)シアナート基以外の構造は、例えば炭素数1〜30の2価のヒドロカルビレン基などが挙げられる。
上記化合物(a−3)の具体例としては、例えば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェート、キシレンジイソシアナート、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、ナフタレン−1,2,5,7−テトライソシアナート、1,4−フェニレンジイソチオシアナートなどを挙げることができる。
なお、上記で例示した化合物(A1)は、シリカと相互作用する官能基を有する化合物によって重合終了末端が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0040】
化合物(A1)としては、シリカの分散性の改善効果が高い点において、化合物(a−1)及び化合物(a−2)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、化合物(a−1)が特に好ましい。なお、化合物(A1)として化合物(a−1)を用いる場合、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度を調整する目的で、化合物(a−1)と共に、四塩化ケイ素、エポキシ含有化合物(例えば、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなど)などを用いてもよい。
【0041】
上記の末端変性反応は、例えば溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記重合工程における重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液を用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる共役ジエン系重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、末端変性反応は、回分式及び連続式のいずれを用いて行ってもよい。このとき、化合物(A1)の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法などが挙げられる。
【0042】
末端変性反応に使用する化合物(A1)の量は、反応に使用する化合物の種類に応じて適宜設定すればよいが、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。0.1モル当量以上とすることにより、変性反応を十分に進行させることができ、シリカの分散性を好適に改良することができる。また、後述する主鎖変性工程の反応阻害とならないようにする点において、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、1.2モル当量以下とすることが好ましい。
末端変性反応の温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。変性反応の温度が低いと、変性共役ジエン系重合体の粘度が上昇する傾向がある。一方、変性反応の温度が高いと、重合活性末端が失活しやすくなる。末端変性反応の反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0043】
<主鎖変性工程>
本発明における主鎖変性工程は、上記重合反応により得られる共役ジエン系重合体を用い、当該重合体末端とは異なる部分に存在する不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれか、より具体的には、不飽和結合部位、アリル位及びベンジル位のうちの少なくともいずれかと、上記特定化合物とを反応させる工程である。この工程により、共役ジエン系重合体の側鎖部に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。
【0044】
[特定化合物]
本実施形態において、主鎖変性工程による変性反応(以下、主鎖変性反応ともいう。)では、上記特定化合物として、上記末端変性工程で用いる変性剤である化合物(A1)を使用し、具体的には、上記の化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)などを挙げることができる。なお、これら化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)の具体例については、上記化合物(A1)において例示した各々の化合物を挙げることができる。特定化合物としては、上記化合物(A1)において例示した化合物の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
特定化合物は、自動車用タイヤの用途に用いる場合の低ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド抵抗性の両者の改善効果が高い点で、特に化合物(a−1)が好ましい。
【0045】
主鎖変性反応で使用する特定化合物は、末端変性反応で使用する化合物(A1)と同じ化合物であっても異なる化合物であってもよい。特定化合物として化合物(A1)と同じ化合物を使用する場合、上記末端変性工程による変性反応と、主鎖変性工程による変性反応とを同時に行ってもよい。
なお、上記で例示した特定化合物は、シリカと相互作用する官能基を有する化合物によって重合体末端とは異なる部分が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることが可能である点において、いずれも同様の作用を有するものである。したがって、後述の実施例に記載されていないものであっても、本発明において使用することが可能である。
【0046】
共役ジエン系重合体の側鎖部に、特定化合物に由来する構造を導入する方法は特に限定せず、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより行うことができる。その一つの方法としては、例えば、上記重合反応により得られた共役ジエン系重合体において、重合体末端とは異なる部分に存在する不飽和結合部位又は官能基部分に活性部位を形成し、次いで、その形成した活性部位と上記特定化合物とを反応させる方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、(i)共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に基づく構造単位中の不飽和二重結合に対してヒドロメタル化を行った後、該共役ジエン系重合体と特定化合物とを反応させる方法、(ii)共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に基づく構造単位中のアリル位及び芳香族ビニル化合物に基づく構造単位中のベンジル位の少なくともいずれかに対してリチオ化を行った後、該共役ジエン系重合体と特定化合物とを反応させる方法、等が挙げられる。
【0047】
上記方法(i)の場合、共役ジエン系重合体のヒドロメタル化は、上記重合反応により得られる共役ジエン系重合体とヒドロメタル化剤とを反応させることにより行うことができる。このヒドロメタル化反応により、共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位、より具体的には、共役ジエン化合物に基づく構成単位中のビニル結合部位に水素原子と金属原子とが付加される。
ここで、ヒドロメタル化剤としては、例えばアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ等の金属原子と水素原子とが結合した金属−水素結合を有する化合物を用いることができる。中でも、アルミニウム−水素結合を有する化合物が好ましく、その具体例としては、例えばアルミニウムリチウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。反応に使用するヒドロメタル化剤の量は、特に制限されるものではないが、共役ジエン系重合体1モル当量に対して、0.1〜20モル当量となる割合が好ましく、1〜10モル当量となる割合がより好ましい。
上記ヒドロメタル化反応は、適当な触媒の存在下、溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記重合反応を終了させた後の未反応モノマーを含む溶液をそのまま用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。
ヒドロメタル化反応の温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが更に好ましい。反応時間は、好ましくは1分〜3時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0048】
上記ヒドロメタル化反応後において、共役ジエン系重合体と特定化合物とを、好ましくは溶液中で反応させることにより、共役ジエン系重合体のビニル結合部位(ヒドロメタル化された部位)と、特定化合物の官能基部分とが結合する。これにより、シリカと相互作用する官能基を側鎖部に有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
当該反応における特定化合物の使用割合は、ヒドロメタル化剤の使用量1モル当量に対して、0.1〜10モル当量であることが好ましく、0.1〜5モル当量であることがより好ましい。このときの反応温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが更に好ましい。反応時間は、好ましくは1分〜5時間であり、より好ましくは2分〜1時間である。
【0049】
上記方法(ii)の場合、共役ジエン系重合体のリチオ化は、上記重合反応により得られる共役ジエン系重合体とリチオ化剤とを、テトラメチルエチレンジアミン等の促進剤の存在下で反応させることにより行うことができる。この反応により、共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に基づく構造単位中のアリル位、又は芳香族ビニル化合物に基づく構造単位中のベンジル位をリチオ化することができる。
【0050】
ここで、反応に使用するリチオ化剤としては、例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等を挙げることができる。反応に使用するリチオ化剤の量は、特に制限されるものではないが、重合体1モル当量に対して、0.1〜20モル当量となる割合が好ましく、1〜10モル当量となる割合がより好ましい。
上記リチオ化反応は、例えば溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、上記重合反応を終了させた後の未反応モノマーを含む溶液をそのまま用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。
リチオ化反応の温度は、通常、上記重合反応の温度と同じであり、−20〜150℃であることが好ましく、0〜120℃であることがより好ましく、20〜100℃であることが特に好ましい。また、反応時間は、好ましくは1分〜3時間であり、より好ましくは2〜30分である。
【0051】
上記リチオ化反応後において、共役ジエン系重合体と特定化合物とを、好ましくは溶液中で反応させることにより、共役ジエン系重合体のリチオ化された部位と、特定化合物の官能基部分とが結合する。これにより、シリカと相互作用する官能基が重合体の主鎖から分岐する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
当該反応における特定化合物の使用割合は、リチオ化剤の使用量1モル当量に対して、0.1〜10モル当量であることが好ましく、0.1〜5モル当量であることがより好ましい。このときの反応温度及び反応時間については、ヒドロメタル化反応についての説明を適用することができる。
【0052】
なお、本発明の製造方法によれば、重合開始末端が変性され、かつ重合終了末端が未変性の共役ジエン系重合体に対して主鎖変性反応を行うか、又は、重合開始末端が未変性であり、かつ重合終了末端が変性された共役ジエン系重合体に対して主鎖変性反応を行うことにより、重合体の一末端及び重合体主鎖が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることができる。また、重合開始末端及び重合終了末端が変性された共役ジエン系重合体に対して主鎖変性反応を行うことにより、重合体の両末端及び重合体の主鎖が変性された変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0053】
上記末端変性工程による末端変性反応と上記主鎖変性工程による主鎖変性反応とを同時に行う場合、まず、上記重合工程により活性末端を有する重合体を得て、次いで、重合体末端とは異なる部分の不飽和結合部位又は官能基部分に活性部位を形成する。その後、当該重合体と、変性剤としての上記化合物(A1)とを反応させる方法が挙げられる。
【0054】
[その他の工程]
本発明の製造方法は、上記末端変性工程により共役ジエン系重合体の変性を行った場合、末端変性工程及び主鎖変性工程の終了後において、変性共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する工程を含んでいてもよい。この工程によって共役ジエン系重合体にオニウム構造が導入されることにより、変性共役ジエン系重合体の形状保持性を高めることができる。
【0055】
上記工程で用いるオニウム塩生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化ガリウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物等のハロゲン化金属化合物;硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル等の無機酸のエステル;弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸;フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の無機酸塩;カルボン酸(例えばマレイン酸)、スルホン酸等の有機酸等が挙げられる。
上記の中でも、オニウム塩生成剤の好ましい具体例としては、例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、塩化亜鉛、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、硫酸ジエチル、リン酸トリメチル、炭酸ジメチル、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。
【0056】
共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する処理は、例えば溶液中で行うことができる。該処理における共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤との使用割合は、共役ジエン系重合体の活性部位に対し、オニウム塩生成剤の量が、0.5モル当量以上であることが好ましく、1.0モル当量以上であることがより好ましい。
共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する際の温度は、通常、共役ジエン系重合体の重合温度と同じであり、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜100℃である。
共役ジエン系重合体におけるオニウム塩構造の形成は、水の存在下で行われる。具体的には、例えば、(i)共役ジエン系重合体を含む溶液中に、水とオニウム塩生成剤とを直接添加して混合する方法、(ii)共役ジエン系重合体を含む溶液中に、水に溶解可能な有機溶剤(例えばアルコール等)に水を溶解させてなるものと、オニウム塩生成剤とを添加して混合する方法、(iii)共役ジエン系重合体を含む溶液とオニウム塩生成剤とを混合した後、スチームストリッピングによる脱溶媒を利用して系内に水を存在させる方法、などが挙げられる。好ましくは、(iii)の方法である。
【0057】
反応溶液に含まれる変性共役ジエン系重合体を単離するには、例えばスチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法及び熱処理等の乾燥の操作によって行うことができる。こうして得られた変性共役ジエン系重合体は、必要に応じて伸展油等を添加することによりムーニー粘度を調整してもよい。この処理により、加工性を良好にすることができる。伸展油としては、例えばアロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。伸展油の配合量は、重合に用いるモノマー等に応じて適宜設定すればよいが、例えば変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、10〜50質量部である。
【0058】
[2]変性共役ジエン系重合体
上述した本発明の製造方法によれば、共役ジエン系重合体の一末端(重合開始末端及び重合終了末端のうちいずれか)又は両末端に、シリカと相互作用する官能基を有するとともに、該重合体の側鎖部に、下記式(2)で表される構造及び下記式(3)で表される構造からなる群より選択される少なくとも一種を有する重合体を製造することができる。
【化2】
(式(2)中、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有し、かつRに対して窒素原子、リン原子又は硫黄原子で結合する1価の官能基である。Rはヒドロカルビル基であり、Rはヒドロカルビレン基であり、Rは水素原子又はヒドロカルビル基である。nは0〜2の整数である。但し、R及びRが複数存在する場合、複数のR及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。「*」は結合手を示す。)
【化3】
(式(3)中、Aは、ヒドロキシル基、チオール基及び(チオ)アミド基からなる群より選択される少なくとも一種を有する2価の基であり、Aは、窒素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種を有する1価の基である。)
【0059】
上記式(2)のAとしては、上記式(1)のAの説明で、少なくとも1つの保護基によって置換された官能基として例示したものの他、これら各基の脱保護によって得られる基(1級アミノ基、2級アミノ基、1級ホスフィノ基、2級ホスフィノ基、チオール基など)等を挙げることができる。また、Rのヒドロカルビル基については、上記Rの説明を適用することができ、R及びRについては、それぞれ、上記式(1)におけるR及びRの説明を適用することができる。このような上記式(2)で表される構造を側鎖に有する変性共役ジエン系重合体は、上述した本発明の製造方法において、特定化合物として化合物(a−1)を用いることにより得ることができる。
【0060】
また、上記式(3)で表される構造を側鎖に有する変性共役ジエン系重合体は、本発明の製造方法において、特定化合物として化合物(a−2)又は化合物(a−3)を用いることにより得ることができる。
ここで、上記式(3)におけるAは、例えば炭素数1〜20のヒドロカルビレン基の水素原子がヒドロキシル基又はチオール基で置換された2価の基、−CO−NH−R−又は−CS−NH−R−(但し、Rは、炭素数1〜20のヒドロカルビレン基を示す。)などを挙げることができる。また、Aは、化合物(a−2)の基(x2)、又は化合物(a−3)のイソ(チオ)シアナート基に由来する構造を有する1価の基であり、例えば炭素数1〜20のヒドロカルビル基の炭素−炭素結合間に、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を含む1価の基、イソ(チオ)シアナート基、アミノ基などを挙げることができる。なお、本明細書において、(チオ)アミド基は、アミド基及びチオアミド基を示す。
【0061】
[3]重合体組成物
(重合体成分)
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、上述した製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体(以下、特定重合体ともいう。)を含む。
本重合体組成物中の重合体成分の含有割合は、組成物全体に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上が好ましく、40質量%以上が特に好ましい。該割合が20質量%以上であることにより、架橋重合体の引張強さや引張伸び等の機械的特性、耐亀裂成長性及び耐摩耗性をより良好なものとすることができる。
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、上記の特定重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。かかるその他の重合体としては、例えば天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、変性ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、変性スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、及び、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
重合体成分として、上記その他の重合体を含有する場合、特定重合体の含有割合は、重合体組成物中に含まれる重合体成分の全体に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。該割合が5質量%以上であることにより、低ヒステリシス特性、耐摩耗性、加工性などの各種特性をより良好なものとすることができる。
【0062】
(補強剤)
本発明の重合体組成物は、補強剤としてシリカを含む。シリカの具体例としては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、耐破壊特性の改良効果や、ウェットグリップ性と低転がり抵抗性との両立効果の観点から、湿式シリカが特に好ましい。また、高分散型(High Dispersible Type)のシリカを使用することも、重合体組成物中における分散性を良好にできるとともに物性及び加工性を向上できる観点から好ましい。なお、シリカは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。シリカの配合量は、重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜95質量部である。
【0063】
また、本発明の重合体組成物は、補強剤として、シリカと共に、必要に応じてカーボンブラックを含んでいてもよい。カーボンブラックの具体例としては、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF−LSに代表されるファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等のほか、グラファイト繊維、フラーレン等の各グレードのカーボンブラックなどを挙げることができる。また、中でも、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上であり、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、架橋重合体のグリップ性能及び耐破壊特性の改良効果が大きくなる。なお、架橋重合体の耐摩耗性を向上させる観点から、上記の中でも、HAF、ISAF、SAFが特に好ましい。なお、カーボンブラックは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
本発明の重合体組成物中におけるシリカ及びカーボンブラックの合計量は、該組成物中に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜110質量部である。補強剤の量が少ないと、耐破壊特性等の向上効果が不十分となる傾向にあり、補強剤の量が多いと、重合体組成物の加工性が低下する傾向にあるためである。
また、本発明の重合体組成物中にカーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラー(Dual Phase Filler)を配合することにより、シリカとカーボンブラックとを併用したときと同様の優れた利点を得ることができる。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーは、カーボンブラックの表面に、シリカを化学結合させた、いわゆるシリカ・コーティング・カーボンブラックであり、キャボット社から商品名CRX2000、CRX2002、CRX2006として販売されている。カーボン−シリカ デュアル・フェイズ・フィラーの配合量は、重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜95質量部である。
【0065】
(シランカップリング剤)
本発明の重合体組成物に、補強剤としてシリカを含有させる場合、補強効果を更に向上させるために、シランカップリッグ剤を配合することが好ましい。このシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物などを挙げることができる。
【0066】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、モメンティブ パーフォーマンス マテリアルズ社製の商品名「NXT シラン」、「NXT Z シラン」、「NXT−Low−V シラン」、「NXT Ultra Low−V シラン」、デグザ社製の商品名「VP Si363」、gelest社製の商品名「11−MERCAPTOUNDECYLTRIMETHOXYSILANE」などを挙げることができる。
これらのうち、補強性の改善効果等の点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、特開2006−249069号公報に例示されているメルカプトシラン化合物が好適である。なお、これらのシランカップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
シランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、重合体組成物に含まれるシリカ100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部である。シランカップリング剤の配向量が1質量部未満であると、カップリング剤としての効果が十分に得られ難い傾向にあり、20質量部を超えると、重合体成分がゲル化し易くなる傾向にあるためである。
【0068】
(相溶化剤)
本発明の重合体組成物の調製に際し、混練り時の加工性の改良や、ウェットスキッド抵抗性と低ヒステリシスロス特性と耐摩耗性とのバランスを更に向上させる目的で、相溶化剤を混練り時に添加することができる。相溶化剤の好ましい例としては、エポキシ基含有化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、水酸基含有化合物及びアミノ基含有化合物から選択される有機化合物、並びに、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物及びアミノシラン化合物から選択されるケイ素化合物等が挙げられる。
相溶化剤のうち、上記有機化合物の具体例としては、エポキシ基含有化合物として、例えばブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、酸化プロピレン、ネオペンチルグリコールシグリシジルエーテル、エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステルなどを;
カルボン酸化合物として、例えばアジピン酸、オクチル酸、メタクリル酸などを;
カルボン酸エステル化合物として、例えばアクリル酸エステル、アクリル酸ジエチレン、メタクリル酸エチル、オルト酢酸エステル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、ジメチルカーボネート、p−ヒドロキシフェニル酢酸、ポリエステル系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤などを;
ケトン化合物として、例えばメチルシクロヘキサノン、アセチルアセトンなどを;
エーテル化合物として、例えばイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどを;
アルデヒド化合物として、例えばウンデシレンアルデヒド、デシルアルデヒド、バニリン、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、クミンアルデヒドなどを;
アミノ基含有化合物として、例えばイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、N−エチルエチレンジアミン、エチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、アミノフェノール、アニリン、3−イソプロポキシアニリン、フェニレンジアミン、アミノピリジン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、塩酸エチルアミン、塩酸−n−ブチルアミンなどを;
水酸基含有化合物として、例えばイソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、オクタンジオール、エチレングリコール、メチルシクロヘキサノール、2−メルカプトエタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1−オクタデカノール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、トリエチレングリコールなどを;それぞれ挙げることができる。
中でも、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、水酸基含有化合物が好ましい。
【0069】
また、ケイ素化合物の具体例としては、アルコキシシラン化合物として、例えばトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを;
シロキサン化合物として、例えばジメチルシロキサンオリゴマー、シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有シリコーンオイルなどを;
アミノシラン化合物として、例えばヘキサメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、アニリトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、トリエチルアミノシランなどを;それぞれ挙げることができる。
中でも、シラザン化合物、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシランが好ましい。
【0070】
(加硫剤)
本発明の重合体組成物は加硫剤(架橋剤)を含む。加硫剤としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。加硫剤としては、通常、硫黄が使用される。硫黄の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0071】
本発明の重合体組成物は、所望により、ゴム工業界で通常用いられている各種の薬品や添加剤等を含んでいてもよい。このような薬品又は添加剤の例としては、加硫助剤、加工助剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を挙げることができる。
ここで、加硫助剤及び加工助剤としては、通常、ステアリン酸が用いられる。加硫助剤及び加工助剤の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、通常、0.5〜5質量部である。
加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えばスルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、チオウレア系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸系、キサントゲン酸系の化合物が挙げられ、好ましくは2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビスグアニジンなどが挙げられる。加硫促進剤の配合量は、重合体組成物に含まれる重合体成分の全体量100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.4〜4質量部である。
【0072】
本発明の重合体組成物は、重合体成分、シリカ及び架橋剤の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練りすることによって製造することができる。また、本発明の重合体組成物は、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として各種ゴム製品に適用可能であり、例えばタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;防振ゴム、防舷材、ベルト、ホース、その他の工業品等の用途に適用できる。中でも、良好な低燃費性能及びウェットスキッド抵抗性を与える観点から、特に、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用できる。
【実施例1】
【0073】
以下、本発明の第1実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、変性共役ジエン系重合体の各種物性値の測定方法は以下のとおりである。
・結合スチレン含量[%]:500MHzのH−NMRによって測定した。
・変性後のビニル含量[%]:500MHzのH−NMRによって測定した。
・変性前の重量平均分子量:以下の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8120GPC」、東ソー社製)を使用して得られたGPC曲線の最大ピークの頂点に相当する保持時間からポリスチレン換算で求めた。
カラム:商品名「GMHHXL」(東ソー社製)2本
カラム温度:40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/分
サンプル濃度;10mg/20ml
・ムーニー粘度(ML1+4,100℃):JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
【0074】
<変性共役ジエン系重合体の合成(1)>
[実施例1A]
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(化合物V1)2.45mmol、スチレン125g、1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム5.20mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で、末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(アミノシランA)4.46mmolを加えて15分間反応を行った。
次いで、上記の重合体溶液に、n−ブチルリチウム4.46mmol及びテトラメチルエチレンジアミン4.46mmolを添加して、80℃で10分間、反応を行った。反応後、得られた重合体溶液に、主鎖変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行い、その後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させた。この一連の操作によって得られた重合体を変性共役ジエン系重合体A−1とした。変性共役ジエン系重合体A−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は10であった。また、その他の各種物性値の測定結果を下記表1に示す。
[実施例2A、4A〜6A]
使用する変性剤(末端変性剤、主鎖変性剤)の種類及び量を下記表1のとおり変更した以外は、実施例1Aと同様の方法により、変性共役ジエン系重合体B−1、D−1〜F−1をそれぞれ合成するとともに、各々の変性共役ジエン系重合体の各種物性値を測定した。なお、変性共役ジエン系重合体B−1、D−1〜F−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、それぞれ12、9、9、12であった。
【0075】
[実施例3A]
実施例1Aと同様にして重合反応及び末端変性反応を行った後、次いで、当該重合体溶液に、チタノセンクロライド2.20mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド4.46mmolを添加して、80℃で10分間、反応を行った。次いで、得られた重合体溶液に、主鎖変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(エポキシアミンB)4.46mmolを加えて30分間反応を行った後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、更に、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させた。この一連の操作によって得られた重合体を変性共役ジエン系重合体C−1とした。変性共役ジエン系重合体C−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は12であった。また、その他の各種物性値の測定結果を下記表1に示す。
【0076】
[実施例7A]
使用する重合モノマーをスチレン110g及びp−メチルスチレン15gに変更した以外は、実施例1Aと同様にして重合反応、末端変性反応及び主鎖変性反応を行うとともに、脱溶媒及び乾燥処理を行った。これにより得られた重合体を変性共役ジエン系重合体G−1とした。変性共役ジエン系重合体G−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は10であった。また、その他の各種物性値の測定結果を下記表1に示す。
[実施例8A]
実施例1Aにおいて主鎖変性剤を加えて15分間反応を行った後、更にオニウム塩生成剤として四塩化ケイ素4.52mmolを添加した以外は、実施例1Aと同様にして変性共役ジエン系重合体H−1を合成した。また、得られた変性共役ジエン系重合体H−1の各種物性値を測定した。なお、変性共役ジエン系重合体H−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は60であった。
【0077】
[実施例9A]
オートクレーブ反応器に、重合モノマー、ビニル含量調整剤及び溶媒とともに、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン(N置換ピペラジン)4.20mmolを仕込んだ以外は、実施例1Aと同様にして変性共役ジエン系重合体I−1を合成した。また、得られた変性共役ジエン系重合体I−1の各種物性値を測定した。なお、変性共役ジエン系重合体I−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は11であった。
[実施例10A〜12A]
実施例10Aについては、使用する主鎖変性剤をテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンに変更し、実施例11Aについては、N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジンをピペリジンに変更し、実施例12Aについては、使用する末端変性剤の種類及び量を下記表2のとおり変更した以外は、実施例9Aと同様の方法により変性共役ジエン系重合体J−1,K−1,L−1をそれぞれ合成した。また、得られた変性共役ジエン系重合体J−1,K−1,L−1の各種物性値を測定した。なお、変性共役ジエン系重合体J−1,K−1,L−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、それぞれ12、10、52であった。
[実施例13A,14A]
実施例9Aにおいて、主鎖変性剤を加えて15分間反応を行った後、更にオニウム塩生成剤として下記表2に示す化合物をそれぞれ添加した以外は、実施例9Aと同様にして変性共役ジエン系重合体M−1,N−1をそれぞれ合成した。また、得られた変性共役ジエン系重合体M−1,N−1の各種物性値を測定した。なお、変性共役ジエン系重合体M−1,N−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、それぞれ47、70であった。
【0078】
[比較例1A〜3A]
重合体の合成に使用する化合物の種類及び量を下記表2のとおり変更した以外は、実施例1Aと同様にして変性共役ジエン系重合体P−1、Q−1、U−1をそれぞれ合成した。なお、比較例1A、2Aでは、末端変性剤の添加後に、n−ブチルリチウム、テトラメチルエチレンジアミン及び主鎖変性剤を添加せずにスチームストリッピングの処理を行った。
[比較例4A]
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン2.45mmol、スチレン50g、1,3−ブタジエン145gを仕込み、n−ブチルリチウム5.20mmolを添加して重合を開始した。重合反応器内温度を65℃とし、スチレン25g及び1,3−ブタジエン75gを45分間かけて追加しながら反応させた。n−ブチルリチウムを添加してから45分経過後に、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン1.5gを添加し、反応を行った。1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレンを添加してから65分経過後に、反応器内にスチレン50g及び1,3−ブタジエン145gを連続的に供給しながら、共重合反応を130分間行った。次いで、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.46mmolを加えて、更に15分間反応を行った。得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体V−1を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1及び表2中、化合物の略称は以下の通りである。
・化合物M1;1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン
・イソシアナートE1;トルエンジイソシアナート
【0082】
<重合体組成物及び架橋重合体の製造、評価(1)>
[実施例1A−1]
上記変性共役ジエン系重合体A−1を用いて、下記表3に示す配合処方により各成分を配合し、これを混練りすることによって重合体組成物を製造した。混練りは以下の方法で行った。温度制御装置を付属したプラストミル(内容量:250ml)を使用し、まず一段目の混練りとして、充填率72%、回転数60rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体A−1、ポリブタジエンゴム、伸展油、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤及び酸化亜鉛を配合して混練りした。次いで、二段目の混練りとして、上記で得た配合物を室温まで冷却後、硫黄及び加硫促進剤を配合し混練りした。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫して、架橋重合体(加硫重合体)を得た。
【0083】
【表3】
【0084】
表3中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。
*1:JSR社製 BR01、*2:ジャパンエナジー社製 JOMOプロセスNC−140、*3:ローディア社製 ZEOSIL 1165MP、*4:三菱化学社製 ダイアブラックN339、*5:エボニック社製 Si75、*6:精工化学社製 オゾノン6C、*7:大内新興化学工業社製 ノクセラーD、*8:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ。
【0085】
[タイヤ性能の評価]
上記で得られた重合体組成物及び架橋重合体について、以下に示す通り、タイヤ性能を表す特性評価を実施した。その評価結果を上記表1及び表2に示す。なお、評価結果は、使用した重合体に対応させて記載した。
(1)0℃tanδ
架橋重合体を測定用試料とし、ARES−RDA(TA Instruments社製)を使用し、剪断歪0.1%、角速度100ラジアン毎秒、0℃の条件で測定した。比較例1A−1を100とした指数で示し、数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好であることを示す。
(2)70℃tanδ
架橋重合体を測定用試料とし、ARES−RDA(TA Instruments社製)を使用し、剪断歪1.0%、角速度100ラジアン毎秒、70℃の条件で測定した。比較例1A−1を100とした指数で示し、数値が大きいほどエネルギーロスが小さく、低ヒステリシスロス特性が良好であることを示す。
【0086】
[実施例2A−1〜14A−1、比較例1A−1〜4A−1]
使用する変性共役ジエン系重合体を、重合体B−1〜N−1、P−1、Q−1、U−1、V−1のそれぞれに変更した以外は上記実施例1A−1と同様にして重合体組成物及び架橋重合体を製造するとともに、タイヤ性能の評価を行った。その結果を上記表1及び表2に示す。
【0087】
表1及び表2に示すように、実施例1A〜14Aの変性共役ジエン系重合体を用いた場合、比較例の重合体に比べていずれも低ヒステリシスロス特性が良好であり、特に実施例9A,10A,13A,14Aの変性共役ジエン系重合体を用いた場合に優れていた。また、実施例1A〜14Aの変性共役ジエン系重合体は、比較例の重合体に比べてウェットスキッド抵抗性にも優れていた。
【0088】
<変性共役ジエン系重合体の合成(2)>
[実施例15A]
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン3500g、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(化合物V1)0.47mmol、1,3−ブタジエン500gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を40℃に調整した後、n−ブチルリチウム5.46mmolを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は90℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で、末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(アミノシランA)5.13mmolを加えて15分間反応を行った。
次いで、上記の重合体溶液に、n−ブチルリチウム5.13mmol及びテトラメチルエチレンジアミン5.13mmolを添加して、80℃で10分間、反応を行った。次いで、得られた重合体溶液に、主鎖変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン5.13mmolを加えて15分間反応を行った後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、更に、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させた。この一連の操作によって得られた重合体を変性共役ジエン系重合体W−1とした。変性共役ジエン系重合体W−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は10であった。
[比較例5A]
末端変性剤の添加後に、n−ブチルリチウム、テトラメチルエチレンジアミン及び主鎖変性剤を添加せず、スチームストリッピングの処理を行った以外は、実施例15Aと同様にして変性共役ジエン系重合体X−1を合成した。変性共役ジエン系重合体X−1のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は10であった。
【0089】
<重合体組成物及び架橋重合体の製造、評価(2)>
[実施例15A−1、比較例5A−1]
使用する変性共役ジエン系重合体を、重合体W−1、X−1のそれぞれに変更した以外は上記実施例1A−1と同様にして重合体組成物及び架橋重合体を製造するとともに、タイヤ性能の評価を行った。その結果を下記表4に示す。なお、70℃tanδ及び10℃tanδの測定結果は比較例5A−1を100とした指数で示した。
【0090】
【表4】
【0091】
表4に示すように、実施例15Aの変性共役ジエン系を用いた場合、比較例5Aの重合体に比べて低ヒステリシスロス特性及びウェットスキッド抵抗性が良好であった。
【0092】
≪第2実施形態≫
[1]変性共役ジエン系重合体及びその製造方法
本発明の第2実施形態における変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物に基づく構成単位を有する重合体の一末端又は両末端において、シリカと相互作用する官能基を有するとともに、該重合体の側鎖部において、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種を繰り返し単位(p)中に含む重合体構造を有する。このような変性共役ジエン系重合体は、上記第1実施形態における主鎖変性工程において、特定化合物として、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種を繰り返し単位(p)中に含む重合体(P)を使用することにより得ることができる。具体的な態様としては、下記(1)又は(2);
(1)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、上記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)とを反応させる末端変性工程と、上記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種を繰り返し単位(p)中に含む重合体(P)と、を反応させる主鎖変性工程と、を含む態様。
(2)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物(但し、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物として金属アミド化合物を含む。)の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る重合工程と、上記共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種を繰り返し単位(p)中に含む重合体(P)と、を反応させる主鎖変性工程と、を含む態様。
などが挙げられる。なお、上記(1)の態様によれば、共役ジエン系重合体の少なくとも終了末端と重合体の側鎖部分とに、シリカと相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。また、上記(2)の態様によれば、共役ジエン系重合体の開始末端及び重合体の側鎖部分に、シリカと相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。以下、各工程について詳しく説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同一である部分については上記第1実施形態の説明を適用する。
【0093】
<重合工程>
本発明における重合工程は、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物を重合して又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを重合して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程である。当該重合に用いるモノマー、重合開始剤、有機溶媒、反応条件については上記第1実施形態の説明を適用することができる。
【0094】
<末端変性工程>
本発明における末端変性工程は、上記共役ジエン系重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物(A1)とを反応させる工程である。当該末端変性工程に用いる化合物(A1)や反応条件については上記第1実施形態と同一であり、上記第1実施形態の説明を適用することができる。
【0095】
<主鎖変性工程>
本発明における主鎖変性工程は、上記重合工程により得られる共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかと、シリカとの親和性が良好な特定の重合体(P)とを反応させる工程である。この工程により、シリカとの親和性が良好なグラフト鎖を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0096】
[重合体(P)]
主鎖変性工程による変性反応(以下、「主鎖変性反応」ともいう。)に用いる重合体(P)は、窒素原子、酸素原子、リン原子及び硫黄原子よりなる群から選択される少なくとも一種を有する繰り返し単位(p)を含む。このような繰り返し単位(p)を有する重合体(P)としては、シリカに対する親和性に優れている観点から、ポリシロキサン構造、ポリエーテル構造及びポリイミン構造からなる群より選択される少なくとも一種を有するものであることが好ましい。ここで、重合体(P)がポリシロキサン構造を有する場合、繰り返し単位(p)は、例えば下記式(p−1)で表される構造であることが好ましい。
【化4】
(式(p−1)中、R11は、水素原子、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、水酸基又はエステル基であり、当該炭素数1〜10のヒドロカルビル基は、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよく、炭素−炭素結合間に「−O−」又は「−COO−」を含んでいてもよい。但し、R11は、繰り返し単位内で同じでも異なっていてもよく、繰り返し単位間で同じでも異なっていてもよい。)
【0097】
上記式(p−1)について、R11における炭素数1〜10のヒドロカルビル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、β−メチルフェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、R11は、上記のヒドロカルビル基において、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基などの置換基を有するものであってもよい。
11における炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。エステル基としては、「*−OCOR」(但し、Rは、炭素数1〜10のヒドロカルビル基であり、「*」はケイ素原子との結合手を示す。)で表される基等が挙げられる。
【0098】
重合体(P)がポリエーテル構造を有する場合の繰り返し単位(p)としては、例えば下記式(p−2)で表される構造であることが好ましい。
【化5】
(式(p−2)中、R12は、水素原子、炭素数1〜10のヒドロカルビル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、水酸基又はエステル基であり、当該炭素数1〜10のヒドロカルビル基は、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよく、炭素−炭素結合間に「−O−」又は「−COO−」を含んでいてもよい。n1は、1〜10の整数である。但し、R12は、繰り返し単位内で同じでも異なっていてもよく、繰り返し単位間で同じでも異なっていてもよい。n1は繰り返し単位間で同じでも異なっていてもよい。)
【0099】
上記式(p−2)において、R12における炭素数1〜10のヒドロカルビル基及び炭素数1〜10のアルコキシ基としては、上記R11における各基の説明を適用することができる。また、R12におけるエステル基としては、「*−OCOR」(但し、Rは、炭素数1〜10のヒドロカルビル基であり、「*」は炭素原子との結合手を示す。)で表される基等が挙げられる。
また、重合体(P)がポリイミン構造を有する場合の繰り返し単位(p)としては、例えば−[(CH−NH]−(但し、mは2〜4の整数)等が挙げられる。好ましくは、−[(CH−NH]−である。
重合体(P)としては、重合体組成物の加工性、自動車用タイヤに適用した場合の低ヒステリシスロス特性及び耐摩耗性の全てをバランスよく改善できる点において、これらの中でも、上記式(p−1)で表される繰り返し単位を含むものであることが好ましい。
【0100】
重合体(P)における繰り返し単位(p)の重合度は、5〜200であることが好ましい。当該重合度が5以上であることにより、重合体組成物中におけるシリカの分散性がより良好になる傾向にあり、200以下であることにより、共役ジエン系重合体の主鎖部分との相容性を適度に保つことができる傾向にある。より好ましくは、重合度が5〜100であり、更に好ましくは、5〜50である。
共役ジエン系重合体との反応に供する重合体(P)としては、共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分の不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかを利用して形成した活性部位と反応し得る官能基を有するものを用いることができる。当該官能基としては、例えばエポキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、酸無水物基、チオール基等を挙げることができる。
【0101】
上記重合体(P)は、有機化学の定法を適宜組み合わせて合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品の具体例としては、ポリシロキサン構造を有する化合物として、例えばKF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、KF−105、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−1821、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−162C、X−22−2290AS、X−22−167B、X−22−167C、X−22−4272、X−22−4952、X−22−6266、X−22−3939A、X−22−1660B−3、X−22−9412、KF−1002、X−22−4741、X−22−2000、X−22−3000T、X−22−1602、X−22−173BX、X−22−173DX、X−22−170BX、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176GX−A、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475、X−21−5841、X−22−3710、KF−857、X−22−9002、KF−865、KF−393、X−22−3939A、X−22−4741、X−22−4015、KF−2001、X−22−3701E(以上、信越化学工業社製)等を;
ポリエーテル構造を有する化合物として、例えばエピオールE−400、同E−1000(以上、日油社製)、SR−8EG、SR−TPG、SR−4PG(以上、阪本薬品工業社製)等を;
ポリイミン構造を有する化合物として、例えばエポミンSP−003、同SP−006、同SP−012、同SP−018(以上、日本触媒社製)、Lupasolシリーズ(BASF社製)等を;挙げることができる。なお、重合体(P)は、上記のものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、特定化合物として上記化合物(A1)と上記重合体(P)とを併用してもよい。
【0102】
共役ジエン系重合体の側鎖部に上記重合体(P)を結合させる方法は特に限定せず、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより行うことができる。具体的な方法としては、上記第1実施形態で例示した方法と同じ方法(ヒドロメタル化、リチオ化)などを挙げることができる。また、ヒドロメタル化及びリチオ化の詳細な説明(ヒドロメタル化剤及びリチオ化剤の種類及び使用量、反応条件など)、ヒドロメタル化又はリチオ化後の共役ジエン系重合体と特定化合物としての重合体(P)との反応条件については、上記第1実施形態の説明を適用することができる。
上記ヒドロメタル化反応による場合において、重合体(P)の使用割合は、ヒドロメタル化剤1モル当量に対して、0.1〜10モル当量となる割合が好ましく、0.1〜5モル当量となる割合がより好ましい。
また、上記リチオ化反応による場合において、重合体(P)の使用割合は、リチオ化剤1モル当量に対して、0.1〜10モル当量となる割合が好ましく、0.1〜5モル当量となる割合がより好ましい。
【0103】
なお、共役ジエン系重合体の末端とは異なる部分と重合体(P)との反応により重合体(P)に由来する構造を共役ジエン系重合体の主鎖又は側鎖に導入する方法は上記に限定しない。例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル発生剤を用い、共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に基づく構造単位中の不飽和二重結合と重合体(P)とを反応させる方法を用いることができる。あるいは、共役ジエン系重合体の主鎖又は側鎖における不飽和結合部位及び官能基部分の少なくともいずれかに活性部位を形成した後、その形成した活性部位と、該活性部位と反応し得る第1の官能基及び重合体(P)が有する官能基と反応し得る第2の官能基を有する多官能性化合物と、を反応させ、次いで、当該多官能性化合物の上記第2の官能基部分と重合体(P)の官能基部分とを反応させる方法等を用いることもできる。
【0104】
<その他の工程>
本発明の第2実施形態の製造方法は、上記第1実施形態と同じく、末端変性後の変性共役ジエン系重合体とオニウム塩生成剤とを混合する工程を含んでいてもよい。当該工程の詳細については、上記第1実施形態の説明を適用することができる。
【0105】
[2]重合体組成物
本発明の重合体組成物は、重合体成分として、本発明の第2実施形態の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体を含む。
本重合体組成物中の重合体成分、重合体成分以外のその他の成分(補強剤、シランカップリング剤、相溶化剤、加硫剤等)については上記第1実施形態の説明を適用することができる。
【0106】
本発明の重合体組成物は、重合体成分、シリカ及び架橋剤の他、必要に応じて配合される成分を、開放式混練機(例えば、ロール)、密閉式混練機(例えば、バンバリーミキサー)等の混練機を用いて混練することによって製造することができる。また、本発明の重合体組成物は、成形加工後に架橋(加硫)することによって、架橋重合体として各種ゴム製品に適用可能であり、例えばタイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤ用途;防振ゴム、防舷材、ベルト、ホース、その他の工業品等の用途に適用できる。中でも、低燃費性能を与える観点から、特に、タイヤトレッド用ゴムとして好適に使用できる。
【実施例2】
【0107】
以下、本発明の第2実施形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、変性共役ジエン系重合体の各種物性値の測定方法は上記第1実施形態と同じである。
【0108】
[実施例1B]
<変性共役ジエン系重合体A−2の合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2,500g、ビニル含量調整剤(ランダマイザー)として2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン2.45mmol、モノマーとしてスチレン125g及び1,3−ブタジエン365gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム5.20mmolを添加して、重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点(重合開始から22分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、さらに3分間重合させた後、末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った。
次いで、得られた重合体溶液に、チタノセンクロライド2.2mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド4.46mmolを添加して80℃で10分間反応を行った後、主鎖変性剤として商品名「X−22−2000」(信越化学工業社製)を5.50g加えて30分間反応を行った。
得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体A−2を得た。
【0109】
[実施例2B]
<変性共役ジエン系重合体B−2の合成>
使用するチタノセンクロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及び「X−22−2000」の量を下記表5のとおり変更した以外は、実施例1Bと同様の方法により変性共役ジエン系重合体B−2を得た。
【0110】
[実施例3B]
<変性共役ジエン系重合体C−2の合成>
反応に使用するモノマーとして、スチレン125g及び1,3−ブタジエン365gと共にp−メチルスチレン8.92mmolを仕込んだ点以外は、実施例1Bと同様にして重合を行った。
重合転化率が99%に達した時点(重合開始から22分経過後)で、1,3−ブタジエン10gを2分間かけて追加し、さらに3分間重合させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った。
次いで、上記の重合体溶液に、s−ブチルリチウム8.92mmol及びテトラメチルエチレンジアミン8.92mmolを添加して80℃で15分間反応を行った後、主鎖変性剤として「X−22−2000」を11.0g加えて30分間反応を行い、変性共役ジエン系重合体を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体C−2を得た。
【0111】
[実施例4B]
<変性共役ジエン系重合体D−2の合成>
上記実施例1Bにおいて、チタノセンクロライド及びジイソブチルアルミニウムハイドライドの代わりにアゾビスイソブチロニトリル0.89mmolを添加した点、及び主鎖変性剤として「X−22−2000」の代わりに商品名「X−22−164A」(信越化学工業社製)15.3gを添加した点以外は、実施例1Bと同様の方法により変性共役ジエン系重合体D−2を得た。
【0112】
[実施例5B]
<変性共役ジエン系重合体E−2の合成>
重合開始剤と共にN−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン4.20mmolを添加した以外は、実施例2Bと同様にして変性共役ジエン系重合体E−2を得た。
[実施例6B]
<変性共役ジエン系重合体F−2の合成>
主鎖変性剤として「X−22−2000」の代わりに、商品名「エピオールE−1000」(日油社製)10.3gを添加した以外は、実施例2Bと同様にして変性共役ジエン系重合体F−2を得た。
[実施例7B]
<変性共役ジエン系重合体G−2の合成>
主鎖変性剤として「X−22−2000」の代わりに、「エピオールE−1000」10.3gを添加した以外は、実施例3Bと同様にして変性共役ジエン系重合体G−2を得た。
[実施例8B]
<変性共役ジエン系重合体H−2の合成>
チタノセンクロライド4.4mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド8.92mmolを添加して80℃で10分間反応を行った後に、主鎖変性剤として「X−22−2000」を添加する代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネート8.92mmolを添加して80℃で15分間反応させ、その後、主鎖変性剤として商品名「エポミンSP−012」(日本触媒社製)10.8gを加えて15分間反応を行った以外は、実施例2Bと同様にして変性共役ジエン系重合体H−2を得た。
【0113】
[実施例9B]
<変性共役ジエン系重合体I−2の合成>
主鎖変性剤として「エポミンSP−012」の代わりに、「X−22−161A」を14.3g添加した以外は、実施例8Bと同様にして変性共役ジエン系重合体I−2を得た。
[実施例10B]
<変性共役ジエン系重合体J−2の合成>
末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりに、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った以外は、実施例2Bと同様にして変性共役ジエン系重合体J−2を得た。
[実施例11B]
<変性共役ジエン系重合体K−2の合成>
末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりに、3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った以外は、実施例2Bと同様にして変性共役ジエン系重合体K−2を得た。
【0114】
[比較例1B]
<変性共役ジエン系重合体L−2の合成>
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを加えた後に、チタノセンクロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及び主鎖変性剤を添加せず、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した以外は、実施例1Bと同様にして変性共役ジエン系重合体L−2を得た。
[比較例2B]
<変性共役ジエン系重合体M−2の合成>
重合開始剤と共にN−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン4.20mmolを添加した以外は、比較例1Bと同様にして変性共役ジエン系重合体M−2を得た。
[比較例3B]
<変性共役ジエン系重合体N−2の合成>
末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりに、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った以外は、比較例1Bと同様にして変性共役ジエン系重合体N−2を得た。
[比較例4B]
<変性共役ジエン系重合体O−2の合成>
末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランの代わりに、3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン4.46mmolを加えて15分間反応を行った以外は、比較例1Bと同様にして変性共役ジエン系重合体O−2を得た。
[比較例5B]
<変性共役ジエン系重合体P−2の合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,500g、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン2.45mmol、スチレン50g、1,3−ブタジエン150gを仕込み、n−ブチルリチウム5.20mmolを添加して、重合を開始した。重合反応器内温度を65℃とし、スチレン25g及び1,3−ブタジエン75gを45分間かけて追加しながら反応させた。n−ブチルリチウムを添加してから45分経過後に、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン4.46mmolを添加し、反応を行った。1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレンを添加してから65分経過後に、反応器内にスチレン50g及び1,3−ブタジエン150gを連続的に供給しながら、共重合反応を130分間行った。次いで、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.46mmolを加えて、更に15分間反応を行った。得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、変性共役ジエン系重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体P−2を得た。
【0115】
上記の重合処方を、得られた変性共役ジエン系重合体の各種物性値の測定結果とともに下記表5及び表6に示す。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
表5及び表6中、化合物の略称は以下の通りである。
化合物V1;2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン
化合物M1;1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン
N置換ピペラジン;N−(tert−ブチルジメチルシリル)ピペラジン
化合物(B2−1);N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン
化合物(B2−2);3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン
化合物(B2−3);3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン
化合物C1;ジイソブチルアルミニウムハイドライド
化合物C2;テトラメチルエチレンジアミン
化合物C3;アゾビスイソブチロニトリル
イソシアネートE2;ヘキサメチレンジイソシアネート
【0119】
<重合体組成物及び架橋重合体の製造>
[実施例1B−1]
上記変性共役ジエン系重合体A−2を用いて、下記表7に示す配合処方により各成分を配合し、これを混練りすることによって重合体組成物を製造した。混練りは以下の方法で行った。温度制御装置を付属したプラストミル(内容量:250ml)を使用し、まず一段目の混練りとして、充填率72%、回転数60rpmの条件で、変性共役ジエン系重合体A−2、ポリブタジエンゴム、伸展油、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤及び酸化亜鉛を配合して混練りした。次いで、二段目の混練りとして、上記で得た配合物を室温まで冷却後、硫黄及び加硫促進剤を配合し混練りした。これを成型し、160℃で所定時間、加硫プレスにて加硫して、架橋重合体(加硫重合体)を得た。
[実施例2B−1〜11B−1]
使用する変性共役ジエン系重合体の種類を下記表7及び表8のとおり変更した以外は、上記実施例1B−1と同様にして重合体組成物及び架橋重合体を得た。
[比較例1B−1〜10B−1]
使用する変性共役ジエン系重合体の種類及び量を下記表7及び表8のとおり変更するとともに、下記表7及び表8に示す種類及び量の添加剤を配合した以外は、上記実施例1B−1と同様にして重合体組成物及び架橋重合体を得た。なお、重合体組成物は、変性共役ジエン系重合体とポリブタジエンゴムと添加剤との合計が100質量部になるように調整した。
【0120】
【表7】
【0121】
【表8】
【0122】
表7及び表8中、各成分について、使用した商品名は以下の通りである。
*1:JSR社製 BR01、*2:ジャパンエナジー社製 JOMOプロセスNC−140、*3:ローディア社製 ZEOSIL 1165MP、*4:三菱化学社製 ダイアブラックN339、*5:エボニック社製 Si75、*6:精工化学社製 オゾノン6C、*7:大内新興化学工業社製 ノクセラーD、*8:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ。
【0123】
[タイヤ性能の評価]
上記実施例1B−1〜11B−1及び比較例1B−1〜10B−1のそれぞれの重合体組成物及び架橋重合体について、以下に示す通り、タイヤ性能を表す特性評価を実施した。その評価結果を上記表7及び表8に示す。
(1)ムーニー粘度(Comp’dMV)
加硫前の重合体組成物を測定用試料とし、JIS K6300−1に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。比較例1B−1を100とした指数で示し、数値が大きいほど加工性が良好であることを示す。
(2)70℃tanδ
架橋重合体を測定用試料とし、ARES−RDA(TA Instruments社製)を使用し、剪断歪1.0%、角速度100ラジアン毎秒、70℃の条件で測定した。比較例1B−1を100とした指数で示し、数値が大きいほどエネルギーロスが小さく、低ヒステリシスロス特性が良好であることを示す。
(3)耐摩耗性
架橋重合体を測定用試料とし、DIN摩耗試験機(東洋精機社製)を使用して、JIS K 6264−2に準拠し、荷重10Nで25℃にてDIN摩耗の測定を行った。測定結果は、比較例1B−1を100とした指数で示し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
【0124】
表7及び表8に示すように、実施例1B−1〜5B−1,8B−1,9B−1では、比較例1B−1に比べて、加工性、低ヒステリシスロス特性及び耐摩耗性がいずれも良好であった。また、実施例6B−1,7B−1,10B−1,11B−1では、耐摩耗性については比較例1B−1と殆ど相違が見られなかったが、加工性及び低ヒステリシスロス特性において比較例1B−1よりも優れていた。これらの結果から、実施例のものは、加工性、低ヒステリシスロス特性及び耐摩耗性の各種特性のバランスが良好であることが分かった。一方、比較例2B−1〜10B−1では、加工性、低ヒステリシスロス特性及び耐摩耗性の少なくともいずれかが実施例に比べて劣っていた。
【0125】
[実施例12B]
<変性共役ジエン系重合体Q−2の合成>
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン3,500g、ビニル含量調整剤として2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(化合物V1)2.45mmol、モノマーとして1,3−ブタジエン500gを仕込んだ。反応器の内容物の温度を40℃に調整した後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム5.46mmolを添加して、重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は90℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で、末端変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(アミノシランA)5.13mmolを加えて15分間反応を行った。
次いで、得られた重合体溶液に、チタノセンクロライド2.20mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド(化合物C1)4.46mmolを添加して80℃で10分間反応を行った後、主鎖変性剤として商品名「X−22−2000」(信越化学工業社製)を5.50g加えて30分間反応を行った。
得られた重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加し、次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、重合体を得た。その後、110℃に調温された熱ロールを用いて、得られた重合体を乾燥させ、変性共役ジエン系重合体Q−2を得た。
【0126】
[比較例6B]
<変性共役ジエン系重合体R−2の合成>
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを加えた後に、チタノセンクロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及び主鎖変性剤を添加せず、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した以外は、実施例12Bと同様にして変性共役ジエン系重合体R−2を得た。
【0127】
<重合体組成物及び架橋重合体の製造、評価>
[実施例12B−1、比較例6B−1]
使用する変性共役ジエン系重合体を、重合体Q−2、R−2のそれぞれに変更した以外は上記実施例1B−1と同じ配合処方で重合体組成物を調製するとともに架橋重合体を製造した。また、得られた重合体組成物及び架橋重合体を用いてタイヤ性能の評価を行った。その結果を下記表9に示す。なお、ムーニー粘度、70℃tanδ及びDIN摩耗の測定結果は比較例6B−1を100とした指数で示した。また、重合体Q−2、R−2の重合処方を下記表9に併せて示した。
【0128】
【表9】
【0129】
表9に示すように、実施例12B−1では、比較例6B−1に比べて、加工性、低ヒステリシスロス特性及び耐摩耗性がいずれも良好であった。