特許第6229675号(P6229675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229675
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両の上部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B62D25/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-29798(P2015-29798)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-150700(P2016-150700A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 敬三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02122444(US,A)
【文献】 国際公開第2014/034586(WO,A1)
【文献】 特表2009−537373(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0082484(US,A1)
【文献】 特開平05−069856(JP,A)
【文献】 特表2013−542121(JP,A)
【文献】 実開昭61−134490(JP,U)
【文献】 特開2011−195105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、
前記左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、
前記ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、
上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるフロントピラーと、
前記フロントピラーの後方において、上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、
前記一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインと、
前記フロントヘッダと該フロントヘッダの車幅方向両外側の前記フロントピラーとの間に配設されたフロントウインドウと、を備えた車両の上部車体構造であって、
前記車幅方向ルーフレインは、車両前後方向において前記センタピラーに重なる位置に配設され、
前部が前記フロントヘッダに結合されると共に、後部が前記車幅方向ルーフレインに結合した前後方向ルーフレインが配設され
前記前後方向ルーフレインが、前記フロントヘッダの車幅方向の略中央に結合され、前記フロントヘッダ内の車幅方向の略中央に節部材が配設された
車両の上部車体構造。
【請求項2】
前記車幅方向ルーフレインと前記ルーフレールとの結合部近傍で、前記車幅方向ルーフレインの形状が車両平面視で車幅方向外側ほど前後に拡幅されたもの、または、前記車幅方向ルーフレインと前記ルーフレールとの結合部近傍で、両者を連結する傾斜メンバを配設したものであることを特徴とする
請求項1に記載の車両の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、フロントヘッダと該フロントヘッダの車幅方向両外側のフロントピラーとの間に配設されたフロントウインドウと、を備えた上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の上部車体構造には、特許文献1,2に開示の上部車体構造に例示されるように、車体のルーフ部を形成するルーフパネルの下部において車幅方向に延びるように配設されたルーフレインフォースメントを備えたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、車両前後両端部及び車両前後方向中央部にルーフパネルの下面に接合する接合面を設けるとともに、該接合面以外の部位がルーフパネルの下面から所定長さ以上、下方に離間するように側面視略W形状に形成したルーフレインフォースメントをルーフパネルの下面に接合した車両の上部車体構造が開示され、この構成により、ルーフパネルの張り剛性の向上を図っている(特許文献1中の段落[0038]、[0049]参照)。
【0004】
下記特許文献2に開示には、ルーフレインフォースメントとしての第1クロスメンバと第2クロスメンバを、平面視X字状に配置した車両の上部車体構造としての車両用サンルーフ構造が開示され、平面視X字状に配置した第1・第2クロスメンバにより、ルーフの剛性を高めることができるとされている(特許文献2中の段落[0027]参照)。
【0005】
ところで、本願発明者は、乗心地性能の向上を図る研究を行っているが、そのためには、振動減衰性能を向上させる必要がある。ここで、振動減衰性能とは、対象とする周波数帯(モード)が20〜50Hz帯域の振動(搭乗者が足元等でビリビリ感を感じる程度の振動)を低減させることを目的とした性能を示す。本願発明者は、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動が、その要因の1つであることを見出した。
【0006】
特許文献1,2の構造でも、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動抑制に一定の効果が期待できると考えられるが、乗心地性能の向上を図るために、さらなる検討の必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−58224号公報
【特許文献2】特開2002−248943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制し、乗心地性能(振動減衰性能)の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の上部車体構造は、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、前記左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、前記ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるフロントピラーと、前記フロントピラーの後方において、上部が前記ルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、前記一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインと、前記フロントヘッダと該フロントヘッダの車幅方向両外側の前記フロントピラーとの間に配設されたフロントウインドウと、を備えた車両の上部車体構造であって、前記車幅方向ルーフレインは、車両前後方向において前記センタピラーに重なる位置に配設され、前部が前記フロントヘッダに結合されると共に、後部が前記車幅方向ルーフレインに結合した前後方向ルーフレインが配設され、前記前後方向ルーフレインが、前記フロントヘッダの車幅方向の略中央に結合され、前記フロントヘッダ内の車幅方向の略中央に節部材が配設されたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することで、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0011】
また、前記前後方向ルーフレインは、例えば、車幅方向の中央位置に配設するに限らず、外側位置に配設するなど、車幅方向の任意の位置に任意の数で配設することができる。
【0012】
しかも、前記前後方向ルーフレインが、前記フロントヘッダの車幅方向の略中央に結合され、前記フロントヘッダ内の車幅方向の略中央に節部材が配設されたものであって、この構成により、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することで、乗心地性能を向上させることが可能となるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0013】
の発明の態様として、前記車幅方向ルーフレインと前記ルーフレールとの結合部近傍で、前記車幅方向ルーフレインの形状が車両平面視で車幅方向外側ほど前後に拡幅されたもの、または、前記車幅方向ルーフレインと前記ルーフレールとの結合部近傍で、両者を連結する傾斜メンバを配設したものであることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、前記車幅方向ルーフレインと前記ルーフレールとの結合部の変形を抑制することで、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、軽量な構造で、フロントウインドウの上下振動に伴うフロントヘッダの上下振動を抑制することで、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る車両を一部省略して示した斜視図。
図2】第1実施形態に係る車両のフレーム構造を示す斜視図。
図3】第1実施形態に係る車両の上部車体構造の底面図。
図4】第1実施形態に係る車両の上部車体構造の前側部分の斜視図。
図5】第2実施形態に係る車両の上部車体構造の底面図。
図6】第3実施形態に係る車両の上部車体構造の底面図。
図7】第4実施形態に係る車両の上部車体構造の底面図。
図8】第4実施形態に係るフロントヘッダの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1は第1実施形態に係る車両を一部省略して前側左斜め上方から見た斜視図であり、図2は第1実施形態に係る車両のフレーム構造を前側左斜め上方から見た斜視図である。図3は第1実施形態に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視断面図を示す。図4図2中の領域Zにおける車両の上部車体構造の前側部分の拡大図である。図5は第2実施形態に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視に対応する断面図を示す。図6は第3実施形態に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視に対応する断面図を示す。図7は第4実施形態に係る車両の上部車体構造を底面から視た図であり、図1中のA−A線矢視に対応する断面図を示す。図8図7中のB−B線矢視端面図を示す。なお、図中、矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方、矢印(U)は車体上方を示す。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る車両Vの上部には、図1および図2に示すように、車幅方向の両側において前側下部から後側上部に向けて延びるフロントピラー1,1が設けられ、これらフロントピラー1,1の下部は上下方向に延びるヒンジピラー2,2に連結されている。
【0019】
フロントピラー1はフロントピラーインナとフロントピラーアウタとを接合して、ヒンジピラー2はヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとを接合して、何れも閉断面を備えた車体剛性部材である。
【0020】
上述の左右のフロントピラー1,1の後端には、図1図3に示すように、車両前後方向に延びる左右一対のルーフレール3,3(ルーフサイドレール)が連続して形成され、左右のフロントピラー1,1の上端部相互間には、車幅方向に延びるフロントヘッダ11(図2図3参照)が架設されるとともに、左右のルーフレール3,3の後端部相互間には、車幅方向に延びるリヤヘッダ12が架設されている。
【0021】
フロントヘッダ11の車幅方向両端部には、図2図3および図4に示すように接合フランジ11aが接合されており、この接合フランジ11aを介してルーフレール3に結合(接合固定)されている。
なお、この接合フランジ11aは、車幅方向の内端がフロントヘッダ11と略同じ幅(車両前後方向長さ)で形成され、車幅方向外側程、後方へ幅広に形成している(図3図4参照)。
【0022】
そして、上述の左右一対のルーフレール3,3、フロントヘッダ11、およびリヤヘッダ12に囲まれた領域は、車両上部において車両前後方向および車幅方向に広がるように配設された鋼板製のルーフパネル13によって覆われている(図1図3参照)。
【0023】
このルーフパネル13は、上記領域に加えてフロントヘッダ11、およびリヤヘッダ12の少なくとも一部を覆うように上方から配置されているため、フロントヘッダ11とリヤヘッダ12とは、何れも上方に配置したルーフパネル13とで略閉断面構造を構成し、それぞれルーフパネル13の前部、後部において車幅方向に延びる車体剛性部材としている。
【0024】
フロントヘッダ11の閉断面構造について詳述すると、フロントヘッダ11は、車幅方向の直交断面視で上方に開口した上方開口を有する略ハット形状に形成しており(図4参照)、フロントヘッダ11の内部には該上方開口を覆うルーフパネル13との間に閉断面空間11Aを構成している(図3図4参照)。
また、図1図3に示すように、車両前後方向に延びるルーフレール3の前後方向中央部(図3中の二点鎖線で示す円形部位3C)よりも前側には、上下方向に延びるセンタピラー31が連続して形成され、ルーフレール3の後端部には、上下方向に延びるリヤピラー32が連続して形成されている。
【0025】
一方、車両下部には、図1及び図2に示すように、ヒンジピラー2の下部から車両後方に向かって延びるサイドシル33が配設され、サイドシル33の車両前後方向中央部には、上下方向に延びる上記センタピラー31の下部が接合されている。
【0026】
さらにまた、車両前部には、フロアパネル7の前端から立ち上がるとともに車幅方向の略全幅に亘って延びて、エンジンルームEと車室Cとを仕切るダッシュパネル21を備え、ダッシュパネル21の上方には、車幅方向に延び、その略全幅に亘ってフロントウインドウ22の下端を支持するカウルパネル23が配設されている(同図参照)。
なお、図1および図2中の符号24は、ダッシュパネル21の前部におけるエンジンルームEの側方にて夫々車両前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームであり、符号25は、フロントサイドフレーム24に対して車幅方向外方、かつ上方に離間した位置にヒンジピラー2の上端部から車両前方へ延びる左右一対のエプロンレインフォースメントであり、符号26はエンジンルームEの車幅方向両側に配設されたサスペンションタワー部である。
【0027】
そして、車両Vには、図2に示すように、上述のフロントヘッダ11と、左右のフロントピラー1,1とカウルパネル23とで囲繞されたフロントウインドウ開口部22Aが形成され、ヒンジピラー2と、フロントピラー1と、ルーフレール3の前部と、センタピラー31と、サイドシル33とで囲繞されたフロント側のサイドドア開口34Aが形成され、センタピラー31と、ルーフレール3の後部と、リヤピラー32と、リアフェンダを含む後部ボディサイド部37と、サイドシル33とで囲繞されたリヤ側のサイドドア開口35Aとが形成されている。フロントウインドウ開口部22Aには、フロントウインドウ22が配設され(図1図3参照)、また、フロント側のドア開口34Aには図示省略するフロントサイドドアが配設され、リヤ側のドア開口35Aには図示省略するリヤサイドドアがそれぞれ開閉可能に配設されている。
【0028】
一方、車両後部には、車室C後方に有する後部荷室Crから後方に向けて開口する後部荷室開口CrAが形成され(図2図3参照)、図1および図3に示すように、リフトゲート41(バックドア)によってルーフパネル13の後端部(リヤヘッダ12部分)を開閉支点として後部荷室開口CrAを覆うように形成して、ハッチバック型の車両を構成している。このリフトゲート41には、リフトゲート開口部41Aが設けられ、該リフトゲート開口部41Aを閉塞するリヤウインドウ42を備えている(図1図3参照)。
【0029】
さらに、図2および図3に示すように、ルーフパネル13の下方側(車室C側)には、上述したフロントヘッダ11とリヤヘッダ12との間に、複数のルーフレインフォースメント15〜18が設けられ、上述したルーフパネル13と、フロントヘッダ11、リヤヘッダ12、および複数のルーフレインフォースメント15〜18によりルーフ部10が構成されている(図1図3参照)。
【0030】
ところで上述したフロントヘッダ11、リヤヘッダ12、各ルーフレインフォースメント15〜18の上面には、接着剤8(例えば、図8参照)が塗布されており、この接着剤8により、ルーフパネル13の下面に接着されている。
【0031】
また、図2および図3に示すように、上述した複数のルーフレインフォースメント15〜18は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17、および前後方向ルーフレインフォースメント18で構成している。
【0032】
前側車幅方向ルーフレインフォースメント15は、左右一対のルーフレール3,3間において車幅方向に直線状に延び、その車幅方向両外端部の夫々には、図3に示すように、接合フランジ15aが接合されており、この接合フランジ15aを介して車両前後方向においてセンタピラー31に少なくとも一部が重なる位置でルーフレール3に結合されている。
【0033】
また、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、および後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17は、図2および図3に示すように、それぞれの両端部に接合片16a,17aが一体または一体的に形成されている。そして、該接合片16a,17aが、ルーフレール3,3の前後方向各部にスポット溶接等によって接合されることで、ルーフレール3,3に結合されている。
【0034】
これにより、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16は、ルーフレール3,3の車両前後方向の略中央部3Cよりも若干後方において、ルーフレール3,3を相互に連結するように配設され、後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17は、後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16とリヤヘッダ12との車両前後方向の略中央位置に配設されている。
【0035】
また、上述した前後方向ルーフレインフォースメント18は、図2および図3に示すように、フロントヘッダ11の車幅方向の略中央位置11Cにおいて、フロントヘッダ11と前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とを相互に連結するように直線状に配設されている。すなわち、前後方向ルーフレインフォースメント18は、車幅方向の略中央位置において、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両平面視略直角を成すように配設されている。
【0036】
詳しくは、前後方向ルーフレインフォースメント18の前後各端部には、図3に示すように、接合フランジ18af,18ar(前端接合フランジ18af、および後端接合フランジ18ar)が形成されている。そして、図3および図4に示すように、前側傾斜ルーフレインフォースメント18の前部が前端接合フランジ18afを介してフロントヘッダ11の車幅方向の中央部11Cに結合され、前側傾斜ルーフレインフォースメント18の後部が後端接合フランジ18arを介して前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の中央部に結合されている。
【0037】
ところで、上述したフロントヘッダ11の閉断面空間11Aには、図2および図4に示すように、該フロントヘッダ11の車幅方向において節部材51,52が配設されている。
【0038】
詳しくは、図4に示すように、節部材51,52は、フロントヘッダ11の閉断面空間11Aにおいて1つの中央節部材51と2つの外側節部材52とを備え、中央節部材51はフロントヘッダ11の車幅方向の中央部11C、すなわち、前後方向ルーフレインフォースメント18と車幅方向において同位置に配設されている(図3図4参照)。一方、外側節部材52は、フロントヘッダ11の車幅方向両外側、すなわちフロントヘッダ11の付け根部分に1つずつ配設されている(図3図4参照)。
【0039】
これら中央節部材51と外側節部材52は、互いに略同一形状に形成しているが、フロントヘッダ11の車幅方向における夫々の配置箇所のスペース、形状に応じた形状で夫々形成している。
以上、詳述した第1実施形態の車両Vの上部車体構造は、車体のルーフ部10の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレール3,3と、左右一対の両ルーフレール3,3間に配設されたルーフパネル13と、ルーフパネル13の前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダ11と、上部がルーフレール3に結合されると共に、下方へ延びるフロントピラー1と、フロントピラー1の後方において、上部がルーフレール3に結合されると共に、下方へ延びるセンタピラー31と、一対のルーフレール3,3間に車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインフォースメントとしての前側車幅方向ルーフレインフォースメント15と、フロントヘッダ11と該フロントヘッダ11の車幅方向両外側のフロントピラー1との間に配設されたフロントウインドウ22と、を備えた車両の上部車体構造であって、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15は、車両前後方向において前記センタピラー31に重なる位置に配設され、前部(前端接合フランジ18af)がフロントヘッダ11に結合されると共に、後部(後端接合フランジ18ar)が前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に結合した前後方向ルーフレインフォースメント18が配設されたものである(図2図3参照)。
【0040】
上記構成によれば、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することで、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0041】
具体的には、フロントウインドウ22は、一般にフロントウインドウ開口部22Aを覆うことが可能な大きさを有した重量物であるため、車両走行中にフロントウインドウ22が振動した場合、それに伴って該フロントウインドウ22の上端に配設したフロントヘッダ11も振動し易くなる。そうすると、その影響でドライバは、例えば、足元から、或いはシート取り付け部を介して伝わる低周波の振動(ビリビリ感)を感じ、乗り心地性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0042】
これに対して、第1実施形態の車両Vの上部車体構造によれば、上述したように、車幅方向に延びる前側車幅方向ルーフレインフォースメント15を、車両前後方向においてセンタピラー31に重なる位置で一対のルーフレール3,3間に配設することで、ルーフレール3を介してセンタピラー31と連続性をもって結合することができるため、単にルーフパネル13の面剛性を向上させるだけでなく、センタピラー31も含めた三次元的な骨格全体で車両Vの上部車体構造の剛性を確保することができる。
【0043】
そして、前後方向ルーフレインフォースメント18は、後部がこのような前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に結合される共に、前部がフロントヘッダ11に結合されることで、該前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とセンタピラー31とルーフレール3と前後方向ルーフレインフォースメント18とを含めた三次元的な骨格全体でフロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することができ、乗心地性能(振動減衰性能)を向上させることが可能となる。
【0044】
この発明の態様によれば、前後方向ルーフレインフォースメント18が、フロントヘッダ11の車幅方向の略中央に結合され、フロントヘッダ11内の車幅方向の略中央部11Cに節部材としての中央節部材51が配設されたものである(図3図4参照)。
【0045】
上記構成によれば、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することで、乗心地性能を向上させることが可能となるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0046】
その他にも、第1実施形態の車両Vの上部車体構造は、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15を備えることで、側突安全性能の向上を図ることができる。
【0047】
また、第1実施形態の車両Vの上部車体構造は、車両前後方向における前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とリヤヘッダ12との間に、車幅方向に延びる後側第1車幅方向ルーフレインフォースメント16、および後側第2車幅方向ルーフレインフォースメント17を備えることでルーフパネル13の後側部分の張り剛性の向上を図ることができる(図3図4参照)。
【0048】
続いて第2実施形態について説明する。但し、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
(第2実施形態)
第2実施形態の車両Vaは、図5に示すように、車幅方向の両側において、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1近傍(角部近傍)で、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15を、車両平面視で車幅方向外側ほど前後に徐々に拡幅された形状としている。
【0049】
すなわち、本実施形態においては、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両外端部に備えた接合フランジを、車両平面視で車幅方向外側ほど前後に徐々に拡幅された拡幅接合フランジ15Wとして形成している。
【0050】
拡幅接合フランジ15Wは、車両前後方向においてセンタピラー31に重なる位置に加えて、車両前後方向においてセンタピラー31に重なる位置よりも車両前後両側に至る広範囲に亘ってルーフレール3に結合している。
【0051】
上述したように、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15は、車幅方向の両外端部を、拡幅接合フランジ15Wを介してルーフレール3に結合することで(図5参照)、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1の変形を抑制することができる。
よって、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0052】
さらに、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両外端部に拡幅接合フランジ15Wを備えることで、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1を補強するためのルーフレインフォースメントを別途、備えることなくシンプルな構成で振動減衰性能の向上を図ることができる。
【0053】
なお、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両外端部は、上述したように、拡幅接合フランジ15Wを有して形成するに限らず、車幅方向の両外端部に車幅方向内側部分と一体又は一体的に形成した拡幅部を有した形状であってもよい(図示省略)。また、拡幅接合フランジ15Wや拡幅部(図示省略)は、車両前後方向の両側に拡幅した形状に限らず、車両前後方向の何れか一方に拡幅した形状であってもよい。
【0054】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両Vbは、図6に示すように、車幅方向の両側において、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1近傍(角部近傍)で、両者を直線的に連結する傾斜メンバ19を配設している。
【0055】
この傾斜メンバ19は、上記結合部T1近傍における、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両前側部位(車両前側角部近傍)において前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3とを架け渡すように配設されている。
【0056】
詳しくは、該車両前側に有する結合部T1位近傍において、傾斜メンバ19の車幅方向の外端(前端)は、接合フランジ19afを介してルーフレール3に結合され、傾斜メンバ19の車幅方向の内端(後端)は、接合フランジ19arを介して前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に結合されている。
【0057】
上記構成によれば、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1近傍(角部近傍)に両者を連結する傾斜メンバ19を配設したため(図6参照)、第2実施形態の車両Vaと同様に、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1の変形を抑制することで、フロントウインドウ22の上下振動に伴うフロントヘッダ11の上下振動を抑制することができ、乗心地性能を向上させることが可能となるという上述した効果をさらに高めることが可能となる。
【0058】
なお、傾斜メンバ19は、ルーフレール3や前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して接合フランジ15af,15arを介して結合するに限らず、傾斜メンバ19は、車幅方向の両外端部を車幅方向内側部分と一体または一体的に形成し、直接、ルーフレール3や前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に結合してもよい。また、傾斜メンバ19は、上記結合部T1近傍における、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両前側部位(車両前側角部近傍)に配設するに限らず、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対して車両後側部位(車両後側角部近傍)に配設する、或いは車両前側部位と車両後側部位との双方に配設することができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両Vcは、図7に示すように、ルーフパネル13の下方側(車室C側)、かつ上述したフロントヘッダ11とリヤヘッダ12との間において、上述した複数のルーフレインフォースメント15〜18に加えて、前側傾斜ルーフレインフォースメント20を配設したものである。
【0060】
前側傾斜ルーフレインフォースメント20は、車幅方向に並ぶように左右一対設けられ、前部がフロントヘッダ11に結合されるとともに、後方側程車幅方向外方に傾斜しながら延びており、本実施例においては、左右一対の前側傾斜ルーフレインフォースメント20,20は、後方程徐々に拡幅して平面視略ハの字形状に延びている(図7参照)。そして、前側傾斜ルーフレインフォースメント20の後部は、センタピラー31とルーフレール3との結合部T1近傍に位置に結合されている(同図参照)。
【0061】
詳しくは、左右一対の前側傾斜ルーフレインフォースメント20,20の前後各端部には、図7に示すように、接合フランジ20af,20ar(前端接合フランジ20af、および後端接合フランジ20ar)が一体または一体的に形成されている。そして、図7に示すように、車幅方向左側の前側傾斜ルーフレインフォースメント20の前端接合フランジ20afは、フロントヘッダ11の中央部11Cと車幅方向左側の外側端部(左側の接合フランジ11a)との間に結合され(図7図8参照)、車幅方向右側の前側傾斜ルーフレインフォースメント20の前端接合フランジ20afは、フロントヘッダ11の中央部11Cと車幅方向右側の外側端部(右側の接合フランジ11a)との間に結合されている(図7参照)。
なお、図8中の符号9はシール部材である。
【0062】
さらに、車幅方向の左右各側において、前側傾斜ルーフレインフォースメント20の後端接合フランジ20arは、図7に示すように、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の外側端部における接合フランジ15aと略同位置、或いは該接合フランジ15aよりも車幅方向の内側に結合されている。
【0063】
なお、フロントヘッダ11の閉断面空間11Aの車幅方向両外側に配設された上述した外側節部材52は、図7に示すように、該フロントヘッダ11の車幅方向において前側傾斜ルーフレインフォースメント20とフロントヘッダ11との結合部位Tbと車幅方向に重ならない位置に配設されている。
【0064】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、車幅方向ルーフレインは、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15に対応し、以下、同様に、
前後方向ルーフレインは、前後方向ルーフレインフォースメント18に対応し、
節部材は、中央節部材51、および外側節部材52に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0065】
例えば、本発明の上述した実施形態においては、フロントヘッダ11の閉断面空間11Aには、節部材51,52を配設したが(図4参照)、本発明は、これら中央節部材51と外側節部材52とのうち、少なくとも1つを配設した構成であってもよい。また、節部材51,52を備えることで、フロントウインドウ22の上下振動をさらに抑制することができ、軽量な構造で乗心地性能(振動減衰性能)をさらに向上させることができるため有効である。
【0066】
また、例えば、中央節部材51は、フロントヘッダ11の閉断面空間Aの車幅方向の中央部に配設することで、前後方向ルーフレインフォースメント18と共にフロントヘッダ11の上下振動を効果的に抑制することができる点で好ましいが、節部材51,52は、フロントヘッダ11の閉断面空間Aの車幅方向の中央部や、前側傾斜ルーフレインフォースメント18の前部に重ならない位置に配設するに限らず、フロントヘッダ11の閉断面空間Aの車幅方向の任意の位置に任意の数で配設することができる。
【0067】
また本発明は、第1〜4実施形態の構成に限定せず、例えば、図示省略するが、前側傾斜ルーフレインフォースメント20を備えた第4実施形態の車両Vcにおいて、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両外端部に、第2実施形態の車両Vaに備えた拡幅接合フランジ15Wを備えてもよく、また、前側傾斜ルーフレインフォースメント20を備えた第4実施形態の車両Vcにおける、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15とルーフレール3との結合部T1近傍(角部近傍)に、第2実施形態の車両Vbに備えた傾斜メンバ19を備えた構成であってよい。
【0068】
さらにまた、本発明は、拡幅接合フランジ15Wと傾斜メンバ19との双方を備えた車両の上部車体構造であってもよい。
具体的には、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の一方の外側に拡幅接合フランジ15Wを備えるとともに、車幅方向の他方の外側に傾斜メンバ19を備えてもよく(図示省略)、或いは、前側車幅方向ルーフレインフォースメント15の車幅方向の両側のうち、少なくとも一方に、拡幅接合フランジ15Wと傾斜メンバ19との双方を備えてもよい(図示省略)。
【0069】
また本発明は、第4実施形態の車両Vcに備えた前側傾斜ルーフレインフォースメント20を、上述したように、車両平面視でハの字形状など車両後方程幅広に傾斜する方向に配設するに限定せず、車両平面視で逆ハの字形状など車両後方程幅狭に傾斜する方向、或いは平行などに配設してもよく、前側傾斜ルーフレインフォースメント20の延びる方向については限定しない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、例えば、車体のルーフ部の左右両端部に車両前後方向に延びるように設けられた左右一対のルーフレールと、左右一対の両ルーフレール間に配設されたルーフパネルと、ルーフパネルの前部に車幅方向に配設されたフロントヘッダと、上部がルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるフロントピラーと、フロントピラーの後方において、上部がルーフレールに結合されると共に、下方へ延びるセンタピラーと、一対のルーフレール間で車幅方向に延びる車幅方向ルーフレインフォースメントと、フロントヘッダと該フロントヘッダの車幅方向両外側のフロントピラーとの間に配設されたフロントウインドウと、を備えた車両の上部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0071】
V,Va,Vb,Vc…車両
1…フロントピラー
3…ルーフレール
10…ルーフ部
11…フロントヘッダ
13…ルーフパネル
15…前側車幅方向ルーフレインフォースメント(車幅方向ルーフレイン)
18…前後方向ルーフレインフォースメント(前後方向ルーフレイン)
19…傾斜メンバ
22…フロントウインドウ
31…センタピラー
51…中央節部材(節部材)
52…外側節部材(節部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8