(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センターラグ溝の第3溝曲がり部は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲し、前記センターラグ溝の第4溝曲がり部は、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲し、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記第2溝曲がり部のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第3溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第4溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端部と前記第2接続端部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きい、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第3溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第4溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にある、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
さらに、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが互いに傾斜した一対の第1の交差ベルト層と、前記第1の交差ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが互いに傾斜した一対の第2の交差ベルト層と、を含むベルト部を備え、
前記ベルト部は、さらに、前記第2の交差ベルト層のベルト層間に配されたシート状ゴムを含み、
前記シート状ゴムのタイヤ幅方向の幅W4および前記センターブロックの最大幅WBに関して、比W4/WBが0.70〜1.00である、請求項1から10のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
波形状の前記周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に凸状をなして曲がる第1溝曲がり部に対応して形成される前記センターブロックの頂部は、いずれも鈍角の角部である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のタイヤでは、耐チッピング性および耐熱性は十分でない。
本発明は、耐チッピング性および耐熱性を両立できる重荷重用空気入りタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、トレッドパターン付き重荷重用空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道線を横切るようにタイヤ赤道線を基準としたタイヤ幅方向の第1の側および第2の側の半トレッド領域に延びて両端を有するセンターラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端がタイヤ幅方向の両側にある接地端に開口するショルダーラグ溝であって、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、前記センターラグ溝の端のタイヤ幅方向の位置よりも外側にあり、かつ、タイヤ周方向において、前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝の間に1つずつ設けられたショルダーラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれに設けられ、前記センターラグ溝の端と、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続するように、タイヤ幅方向の外側に湾曲あるいは屈曲した第1溝曲がり部とタイヤ幅方向の内側に湾曲あるいは屈曲した第2溝曲がり部とが配置され、タイヤ周方向にわたって波形状に形成され、前記ショルダーラグ溝より溝幅が狭い一対の周方向主溝と、
前記センターラグ溝と前記一対の周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、
前記センターブロックの領域を延びて、前記センターブロックに接する前記センターラグ溝に開口する周方向副溝と、
を前記トレッドパターンに含むトレッド部を備え、
前記センターラグ溝は、屈曲形状あるいは湾曲形状をなして曲がる2つの溝曲がり部を有し、
前記周方向副溝は、前記センターブロックに接する一方のセンターラグ溝の前記溝曲がり部のうちの第3溝曲がり部と、他方のセンターラグ溝の前記溝曲がり部のうちの第4溝曲がり部とを結ぶよう、タイヤ周方向に対し傾斜して延びており、
前記周方向主溝および前記周方向副溝がタイヤ周方向に対して傾斜する傾きに関して、前記周方向主溝は、前記周方向副溝と同じタイヤ幅方向の側に傾斜する部分を有し、当該部分のタイヤ周方向に対する傾斜角θ
1と前記周方向副溝のタイヤ周方向に対する傾斜角θ
4とは異なっていることを特徴とする。
【0007】
前記センターラグ溝の第3溝曲がり部は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲し、前記センターラグ溝の第4溝曲がり部は、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲し、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記第2溝曲がり部のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第3溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第4溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第
4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端
部と前記第2接続端
部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。
【0008】
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第3溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第4溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にあることが好ましい。
【0009】
前記傾斜角θ
4および前記傾斜角θ
1に関して、|θ
1−θ
4|が10°〜25°である、ことが好ましい。
【0010】
前記一対の周方向主溝それぞれにおいて、溝が部分的に浅くなった底上げ部を備えることが好ましい。
【0011】
前記底上げ部において最も浅い溝深さD
2及び前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅Tに関して、比D
2/Tは0.05未満であることが好ましい。
【0012】
前記トレッド部は、トレッド表面に、前記トレッドパターンが形成されたトレッドゴムを有し、
前記タイヤ赤道線での前記トレッドゴムの厚みG
1、および前記周方向主溝の溝深さが最大となる部分での前記トレッドゴムの厚みG
2に関して、比G
1/G
2が4.0〜7.0であることが好ましい。
【0013】
前記トレッドゴムは、トレッド表面をなすキャップゴムを含み、
前記キャップゴムは、JIS K6253に準拠するデュロメータ硬度が60〜75であることが好ましい。
【0014】
前記周方向副溝の溝幅P
4および前記周方向主溝の溝幅P
1に関して、比P
4/P
1が0.85〜1.15であることが好ましい。
【0015】
前記周方向副溝の最も深い溝深さD
4および前記センターラグ溝の最も深い溝深さD
3に関して比D
4/D
3が0.20〜0.80であることが好ましい。
【0016】
さらに、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが互いに傾斜した一対の第1の交差ベルト層と、前記第1の交差ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが互いに傾斜した一対の第2の交差ベルト層と、を含むベルト部を備え、
前記ベルト部は、さらに、前記第2の交差ベルト層のベルト層間に配されたシート状ゴムを含み、
前記シート状ゴムのタイヤ幅方向の幅W
4および前記センターブロックの最大幅W
Bに関して、比W
4/W
Bが0.70〜1.00であることが好ましい。
【0017】
前記ベルト部の最外層のベルト層のベルト幅W
5、および前記センターブロックの最大幅W
Bに関して、比W
B/W
5が0.50〜0.90であることが好ましい。
【0018】
波形状の前記周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に凸状をなして曲がる前記第1溝曲がり部に対応して形成される前記センターブロックの頂部は、いずれも鈍角の角部であることが好ましい。
【0019】
前記周方向主溝および前記センターラグ溝の溝幅はそれぞれ7〜20mmであることが好ましい。
【0020】
前記重荷重用空気入りタイヤは、建設用車両または産業用車両に装着される場合に好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のタイヤによれば、耐チッピング性および耐熱性を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の重荷重用空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以降、タイヤともいう)1のタイヤ回転軸を含み、後述する
図2中のX−X’線を通る平面でタイヤ1を切断したときのタイヤ1のプロファイルを示す。
本明細書でいう重荷重用空気入りタイヤとは、JATMA(日本自動車タイヤ協会規格) YEAR BOOK 2014のC章に記載されるタイヤの他に、D章に記載される1種(ダンプトラック、スクレーバ)用タイヤ、2種(グレーダ)用タイヤ、3種(ショベルローダ等)用タイヤ、4種(タイヤローラ)用タイヤ、モビールクレーン(トラッククレーン、ホイールクレーン)用タイヤ、あるいはTRA 2013 YEAR BOOKのSECTION 4 あるいは、SECTION 6に記載される車両用タイヤをいう。
タイヤ1は、骨格材として、カーカスプライ3と、ベルト部4と、一対のビードコア5とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッド部6、サイド部7、ビードフィラー8、インナーライナ9等の各ゴム層を有する。
【0024】
トレッド部6は、
図2に示されるトレッドパターンを備えている。
図2は、タイヤ1のトレッドパターンを平面展開した図である。なお、
図2において、上下方向はタイヤ周方向であり、左右方向はタイヤ幅方向である。ここで、タイヤ周方向は、タイヤ回転中心軸を中心にタイヤ1を回転させたときにできるトレッド表面の回転面の回転方向である。タイヤ幅方向は、タイヤ1の回転中心軸方向である。トレッドパターンのタイヤの回転方向および車両装着時のタイヤ幅方向の向きは、特に指定されない。
【0025】
トレッドパターンは、ショルダーラグ溝11,13と、一対の周方向主溝15,17と、センターラグ溝14と、センターブロック21と、を含んでいる。
ショルダーラグ溝11,13は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側(第1の側および第2の側)の半トレッド領域のそれぞれに、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。ショルダーラグ溝11,13は、半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向の両側の接地端10a,10bのうち近接する方の接地端に開口する。
ここで、接地端10a,10bは以下のように定められる。接地端10a,10bは、タイヤ1を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重の88%を負荷荷重とした条件において水平面に接地させたときの接地面のタイヤ幅方向端部である。なお、ここでいう正規リムとは、JATMAに規定される「測定リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0026】
タイヤ幅方向の両側に位置するショルダーラグ溝11,13において、一方の半トレッド領域における1つのショルダーラグ溝11またはショルダーラグ溝13のタイヤ周方向の位置は、他方の半トレッド領域にある隣接する2つのショルダーラグ溝13またはショルダーラグ溝11のタイヤ周方向の位置の間にある。
さらに、ショルダーラグ溝11,13は、半トレッド領域のそれぞれにおいて、ショルダーラグ溝11,13が有するタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、後述するセンターラグ溝14の端のタイヤ幅方向の位置よりもタイヤ幅方向外側にあり、かつ、ショルダーラグ溝11,13は、タイヤ周方向において、センターラグ溝14のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝14の間のショルダー領域に1つずつ設けられている。これにより、後述する周方向主溝15,17は、半トレッド部のそれぞれにおいて、センターラグ溝14の端とショルダーラグ溝11,13のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続して波形状を成す。
なお、ショルダーラグ溝11,13は、
図2において、溝が延びる方向に溝幅が変化しているが、変化していなくてもよい。
【0027】
一対の周方向主溝15,17は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域に設けられている。周方向主溝15,17のそれぞれは、半トレッド領域において、後述するセンターラグ溝14の端と、ショルダーラグ溝11,13のタイヤ幅方向内側の端を交互に接続するように、タイヤ幅方向の外側に湾曲あるいは屈曲した第1溝曲がり部15a,17aとタイヤ幅方向の内側に湾曲あるいは屈曲した第2溝曲がり部15b,17bとが配置され、タイヤ周方向の全周にわたって波形状に形成されている。周方向主溝15,17の溝幅は、ショルダーラグ溝11,13の溝幅より狭い。溝が波形状であるとは、溝が蛇行する形状をいう。具体的には、周方向主溝15,17は、タイヤ幅方向の外側に凸状をなして曲がる第1溝曲がり部15a,17aおよびタイヤ幅方向の内側に凸状をなして曲がる第2溝曲がり部15b,17bをタイヤ周上に複数有し、波形状をなすよう蛇行しながらタイヤ周方向に延びる。周方向主溝15,17が波形状であることで溝壁の表面積が増しており、放熱性が向上する。このため、耐熱性が向上している。
【0028】
溝曲がり部は、屈曲形状であってもよく、丸まった湾曲形状であってもよく、屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものであってもよい。湾曲形状には、屈曲形状の頂部を例えば曲率半径を定めて丸めた形状も含まれる。屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものとは、溝曲がり部の頂部の一方の側が直線状に延びるとともに、頂部から他方の側が湾曲して延びたものをいう。周方向主溝15,17、センターラグ溝14のそれぞれに含まれる溝曲がり部には、屈曲形状、湾曲形状、これらの組み合わせの各種類のうち、互いに同じまたは異なる種類の形状が用いられてもよい。
また、周方向主溝15,17、センターラグ溝14のうち溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。溝曲がり部と溝曲がり部以外の部分がともに湾曲形状である場合、2つの湾曲形状は同じ曲率半径の湾曲形状であってもよい。
【0029】
周方向主溝15,17は、タイヤ幅方向外側に突出した第1溝曲がり部15a,17aでショルダーラグ溝11,13と接続する。また、周方向主溝15,17は、タイヤ幅方向内側に突出した第2溝曲がり部15b,17bでセンターラグ溝14と接続する。第2溝曲がり部15bのタイヤ周方向の位置は、反対側の半トレッド領域の第2溝曲がり部17bに対して位置ずれしている。周方向主溝15,17は、
図2において、互いに同じ周期でかつ位相がずれて波形状に延びている。なお、周方向主溝15,17の形態は、これに制限されず、互いに同じ周期でかつ位相が一致して波形状に延びていてもよく、また、互いに異なる周期で波形状に延びていてもよい。
周方向主溝15,17は、ショルダーラグ溝11,13よりも溝幅が狭い細溝である。このため、走行時のセンターブロック21の接地圧が緩和され、タイヤ1の摩耗寿命が延びる。
【0030】
センターラグ溝14は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。センターラグ溝14は、タイヤ赤道線CLを横切るように、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域に延びて両端を有する。センターラグ溝14は、その両端である、周方向主溝15の第2溝曲がり部15bと周方向主溝17の第2溝曲がり部17bとを接続した溝である。センターラグ溝14は、周方向主溝15,17の位相が異なって波形状に延びていることから、タイヤ幅方向に対し傾斜して延びている。
【0031】
センターブロック21は、センターラグ溝14と周方向主溝15,17によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成され、タイヤセンターラインCLが通過する。
トレッドパターンは、さらに、ショルダーブロック25、27を含んでいる。ショルダーブロック25、27は、ショルダーラグ溝11,13と周方向主溝15,17によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されている。
【0032】
本実施形態のトレッドパターンは、以上の基本的な形態に加え、センターラグ溝14が、2つの溝曲がり部として、第3溝曲がり部14aおよび第4溝曲がり部14bを有しているとともに、さらに、後述する形態を有する周方向副溝23を含むことを特徴とする。
【0033】
センターラグ溝14の第3溝曲がり部14aおよび第4溝曲がり部14bは、トレッド表面において溝の向きが変わることで曲がった部分であり、互いにタイヤ周方向の反対側に突出している。センターラグ溝14が複数の溝曲がり部14a,14bを有していることで、センターラグ溝14の溝壁の表面積が増しており、放熱性が向上し、耐熱性が向上している。また、センターラグ溝14は、溝曲がり部14a,14bを有することで、タイヤ周方向に波状に変位している。溝曲がり部が0または1つだけの場合は、放熱性が十分でない。センターラグ溝14の溝曲がり部の数は、3つ以上あってもよく、例えば3つ、4つ等あってもよい。
【0034】
溝曲がり部14a,14bは、
図2において屈曲形状であるが、湾曲形状であってもよく、屈曲形状と湾曲形状の組み合わせであってもよい。湾曲形状には、屈曲形状の頂部を例えば曲率半径を定めて丸めた形状も含まれる。屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものとは、溝曲がり部の頂部の一方の側が直線状に延びるとともに、頂部から他方の側が湾曲して延びたものをいう。センターラグ溝14に含まれる溝曲がり部には、屈曲形状、湾曲形状、これらの組み合わせの各種類のうち、互いに同じまたは異なる種類の形状が用いられてもよい。
また、センターラグ溝14のうち溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。溝曲がり部と溝曲がり部以外の部分がともに湾曲形状である場合、2つの湾曲形状は同じ曲率半径の湾曲形状であってもよい。
溝曲がり部14a,14bは、タイヤセンターラインCLのタイヤ幅方向両側に、タイヤセンターラインCLから同じ距離離間した位置に設けられることが好ましい。センターラグ溝14のうち、溝曲がり部14aと溝曲がり部14bとの間の部分にタイヤセンターラインCLが通過するように設けられていることが好ましい。
【0035】
センターラグ溝14は、より具体的に、下記説明する形態を有していることが好ましい。
図3は、
図2に示すセンターラグ溝14の形状を具体的に説明する図である。なお、
図3では、説明の便宜のため、周方向副溝23の図示を省略する。
図3に示すように、センターラグ溝14の第3溝曲がり部14aは、タイヤ赤道線CLを基準として第1の側(
図3中の
左側)においてタイヤ周方向の第3の側(
図3中の上方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲していることが好ましい。
センターラグ溝14の第4溝曲がり部14bは、タイヤ赤道線CLを基準として第2の側(
図3中の
右側)においてタイヤ周方向の第3の側の反対側である第4の側(
図3中の下方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲していることが好ましい。ここで、センターラグ溝14が周方向主溝17と接続する第1の側の第1接続端部14c、及び、センターラグ溝14が周方向主溝
15と接続する第2の側の第2接続端部14dは、周方向主溝15、17のタイヤ幅方向の内側の先端、すなわち第2溝曲がり部15b、17bである。そして、センターラグ溝14の第2接続端部14dは、第1接続端部14cよりもタイヤ周方向の第3の側(
図3中の上方向の側)にある。
このとき、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第3溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側(
図3中の上方向の側)に突出する突出端と第1接続端部14cとを結ぶ第1直線14eのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)、および、第4溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとを結ぶ第2直線14fのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)は、センターラグ溝14の第1接続端部14cと第2接続端部14dを結ぶ第3直線14gのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)よりも大きくなっていることが好ましい。
本実施形態の好ましい形態では、
図2および
図3に示すように、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第3溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側に突出する突出端と第1接続端部14cとの間のセンターラグ溝14の部分は、第1直線14e上、あるいは第1直線14eに対して第3の側にあり、第4溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとの間のセンターラグ溝14の部分は、第2直線14f上、あるいは第2直線14fに対して第4の側にある。
【0036】
このようなセンターブロック21が形成されることにより、センターブロック21のトレッド剛性を高くすることができる。すなわち、センターブロック21は、タイヤ幅方向に対して一方向に傾斜したセンターラグ溝14によって形状が規定された異方性形状であるので、タイヤ接地面からセンターブロック21が路面から離れて蹴りだされるとき、センターブロック21は、異方性形状によって時計回転あるいは反時計回転にねじれて変形する。このとき、周方向主溝15,17の溝幅が狭いので、センターブロック21は、周方向主溝15,17を挟んでタイヤ幅方向に隣り合うショルダーブロック
25,27と第1、第2溝曲がり部15a、17a、15b、17bにおいて噛み合って一体として機能するので、センターブロック21のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック21のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック21のねじれを抑制でき、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック21の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
さらに、第3、第4溝曲がり部14a、14bが設けられることにより、センターブロック21のトレッド剛性をより高くすることができる。すなわち、センターブロック21が路面から離れて蹴りだされるとき、センターブロック21に路面から受けるタイヤ周方向のせん断力によってセンターブロック21が変形し倒れ込もうとするとき、周方向に隣接するセンターブロック21同士がセンターラグ溝14の第3、第4溝曲がり部14a、14bにおいて互いに噛み合って一体として機能して反力を発生するので、センターブロック21のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック21のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック21の倒れこみを抑制でき、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック21の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
【0037】
また、上記したようにセンターブロック21のねじれを抑制できることで、センターブロック21の変形が抑制され、センターブロック21の発熱が抑えられ、耐熱性が向上する。さらに、センターラグ溝14は、第3、第4溝曲がり部14a、14bを有していることに加え、タイヤ幅方向に対し傾斜して溝長さが長くなっていることにより、溝壁の表面積が増しており、放熱性が向上する。この点でも、耐熱性が向上する。
【0038】
また、上記したようにセンターブロック21とショルダーブロック
25,27とが噛み合って一体として機能し、センターブロック21同士が噛み合って一体として機能することで、トレッド表面において、チッピングの起点となるブロックの角部が少なくなり、耐チッピング性が向上する。なお、第3、第4溝曲がり部14a,14bのなす角は、
図2および
図3に示されるように、鈍角であることが好ましい。第3、第4溝曲がり部14a,14bのなす角
は周方向副溝23が延びる側(
図2において、第3曲がり部14aの下側および第4溝曲がり部14bの上側)の角をいう。第3、第4溝曲がり部14a,14bの屈曲する角は、例えば100°〜140°である。なお、センターブロック21の頂部が湾曲形状である場合、曲率半径の大きな湾曲形状にすることができる。
【0039】
周方向副溝23は、センターブロック21の領域を延びて、センターブロック21に接するセンターラグ溝14に開口している。言い換えると、周方向副溝23は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝14同士を結ぶよう、センターブロック21の領域を延びており、具体的には、タイヤ周方向の一方の側のセンターラグ溝14の溝曲がり部のうちの第3溝曲がり部14aと、他方の側のセンターラグ溝14の溝曲がり部のうちの第4溝曲がり部14bとを結ぶよう、タイヤ周方向に対して傾斜して延びている。周方向副溝23は、センターラグ溝14の溝曲がり部14a,14bに開口していることで、放熱性が向上しており、耐熱性が向上している。周方向副溝23は、例えば、センターラグ溝14の溝曲がり部14a,14bの先端の位置(具体的には、センターラグ溝14の両端を結んだ第3直線14gからタイヤ周方向に最も突出した位置(突出端))で、センターラグ溝14に接続されていることが好ましい。なお、周方向副溝23は、複数のセンターブロック21のそれぞれに形成されており、タイヤ周方向に隣接する2つの周方向副溝23は、センターラグ溝14を介して連通している。
【0040】
周方向副溝23のタイヤ周方向に対する傾斜角θ
4は、周方向副溝23が傾斜するタイヤ幅方向の側と同じ側に向かって延びる周方向主溝15,17の部分15X,17Xのタイヤ周方向に対する傾斜角θ
1と異なっている。言い換えると、周方向主溝15,17および周方向副溝23がタイヤ周方向に対して傾斜する傾きに関して、周方向主溝15,17は、周方向副溝23と同じタイヤ幅方向の側に傾斜する部分15X,17Xを有し、当該部分15X,17Xのタイヤ周方向に対する傾斜角θ
1と周方向副溝23のタイヤ周方向に対する傾斜角θ
4とは異なっている。上記した周方向主溝15、17の部分15X,17Xは、
図2において、第1溝曲がり部15a,17aから第2溝曲がり部15b、17bまで延びる部分である。上記部分15X,17Xは、タイヤ周方向に対して、周方向副溝23が傾斜するタイヤ幅方向の側(
図2の
左方)と同じ側に傾斜しているとともに、その傾斜角θ
1は、周方向副溝23の傾斜角θ
4と異なっている。言い換えると、上記部分15X,17Xが延びる方向は、周方向副溝23が延びる方向と非平行である。このように周方向副溝23および上記部分15X,17Xの傾斜角が異なっていることで、周方向副溝23によって2分されるセンターブロック21のタイヤ幅方向長さ(タイヤ幅方向の接地長)が、タイヤ周方向に徐々に変化する。このため、走行時の接地圧が変化し、タイヤ周方向に分散されるため、悪路走行時にチッピングが生じにくくなり、耐チッピング性が向上する。なお、
図2において、傾斜角θ
1は、傾斜角θ
4より大きいが、傾斜角θ
4より小さくてもよい。また、
図2において、周方向主溝15と周方向主溝17で、傾斜角θ
1の大きさは等しいが、異なっていてもよい。
【0041】
周方向副溝23は、耐チッピング性の観点から、周方向主溝15,17よりも溝深さが浅い浅溝であることが好ましいが、耐熱性の観点からは、周方向主溝15,17の溝深さと同一または深くてもよい。なお、ここでいう周方向主溝15,17の溝深さは、周方向主溝15,17の溝深さが一定でない場合は、最大深さを意味する。
周方向副溝23は、チッピングの起点となる箇所が少ない点で、
図2に示されるように直線状に延びていることが好ましいが、屈曲形状または湾曲形状に曲がる溝曲がり部を有していてもよい。溝曲がり部は、トレッド表面において溝の向きが変わることで曲がった部分である。溝曲がり部は、センターラグ溝の溝曲がり部と同様の形態であってもよい。具体的に、溝曲がり部は、屈曲形状であってもよく、丸まった湾曲形状であってもよく、屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものであってもよい。湾曲形状には、屈曲形状の頂部を例えば曲率半径を定めて丸めた形状も含まれる。屈曲形状と湾曲形状を組み合わせたものとは、溝曲がり部の頂部の一方の側が直線状に延びるとともに、頂部から他方の側が湾曲して延びたものをいう。周方向副溝23に含まれる溝曲がり部には、屈曲形状、湾曲形状、これらの組み合わせの各種類のうち、互いに同じまたは異なる種類の形状が用いられてもよい。
また、周方向副溝23のうち溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。溝曲がり部と溝曲がり部以外の部分がともに湾曲形状である場合、2つの湾曲形状は同じ曲率半径の湾曲形状であってもよい。
図2において、周方向副溝23は、タイヤセンターラインCLと交差しているが、タイヤセンターラインCLと交差していなくてもよく、タイヤセンターラインCLに対してタイヤ幅方向の片側に形成されてもよい。
【0042】
本実施形態のタイヤ1では、周方向副溝23の傾斜角θ
4、および、周方向主溝15,17の傾斜角θ
1に関して、|θ
1−θ
4|が10°〜25°であることが好ましい。これにより、接地圧が変化して耐チッピング性が向上する効果が増す。|θ
1−θ
4|は、より好ましくは15°〜20°であり、例えば18°である。
【0043】
本実施形態のタイヤ1は、
図4に示されるように、周方向主溝15,17それぞれにおいて、溝が部分的に浅くなった底上げ部15c,17cを備えることが好ましい。
図4は、底上げ部15c,17cを、溝が延びる方向に沿って切断して示す断面図である。
図4において、周方向主溝15に関する部位の符号を括弧の外に示し、周方向主溝17に関する部位の符号を括弧の中に示す。底上げ部15c,17cは、周方向主溝15,17の波形状をなす直線状部分のそれぞれに形成されている。
底上げ部15c,17cは、周方向主溝15,17が延びる方向の中央領域において底上げされている。これにより、センターブロック21とショルダーブロック25が支えあって、ブロックの倒れこみが抑制されるので、センターブロック21の剛性が向上する。これにより、耐チッピング性が向上する。一方、周方向主溝15,17がショルダーラグ溝11,13と接続する部分(第2溝曲がり部)15a,15b,17a,17bでは、溝深さが深いため、放熱性が良好で、耐熱性に優れる。底上げ部15c,17cは、図示されるように一定の溝深さを有していてもよく、異なる溝深さを有していてもよい。異なる溝深さを有する場合としては、例えば、段差を介して2以上の異なる溝深さを有している場合、溝深さが徐々に変化している場合が挙げられる。底上げ部15c,17cは、特に制限されないが、第1溝曲がり部15a,17aと第2溝曲がり部15b,17bの間の長さの、例えば30〜70%の長さの領域に形成される。また、底上げ部は、
図4に示される形態とは異なって、溝が延びる方向の中央領域には形成されずに、片側または両側の端部領域に形成されてもよい。
【0044】
さらに、底上げ部15c,17cにおける最も浅い溝深さD
2及びトレッド部6のタイヤ幅方向のトレッド幅Tに関して、比D
2/Tは0.05未満であることが好ましい。溝深さD
2は、
図4においてトレッド表面から底上げ部15c,17cまでの長さである。トレッド幅Tは、接地端10a,10b間のタイヤ幅方向の長さである。比D
2/Tが0.05未満であることにより、センターブロック21とショルダーブロック25が支えあうことで耐チッピング性が向上する効果が増す。比D
2/Tは、より好ましくは0.04以下であり、例えば0.03である。比D
2/Tの下限値は、特に制限されないが、例えば0.01である。
【0045】
本実施形態のタイヤ1では、トレッド部6が、トレッド表面にトレッドパターンが形成されたトレッドゴムを有するとともに、
図5に示される、タイヤセンターラインCLでのトレッドゴムの厚みG
1、および周方向主溝15,17の溝深さが最大となる部分でのトレッドゴムの厚みG
2に関して、比G
1/G
2が4.0〜7.0であることが好ましい。
図5は、
図2を一部拡大して、厚みG
1および厚みG
2を説明する図である。トレッドゴムは、ベルト部4のタイヤ径方向外側に配されるゴムである。厚みG
1は、言い換えると、トレッド表面とベルト部4との距離であり、厚みG
2は、言い換えると、周方向主溝15,17とベルト部4との最短距離をいう。なお、周方向副溝23がタイヤセンターラインCLと交差する場合は、厚みG
1は、当該交差位置を除く部分での厚みである。比G
1/G
2が上記範囲にあることで、耐チッピング性および耐熱性を両立することができる。このような比G
1/G
2の範囲は、タイヤ1がオフロードタイヤとして用いられる場合に好適である。本明細書において、オフロードタイヤは、後述する建設用車両または産業用車両に装着されるタイヤをいう。比G
1/G
2が4.0以上であると、センターブロック21の接地圧が緩和され、耐チッピング性が良好になる。比G
1/G
2が7.0以下であると、センターブロック21の倒れこみ変形による発熱が抑えられ、耐熱性が良好になる。比G
1/G
2は、より好ましくは5.0〜6.0であり、例えば5.5である。
【0046】
さらに、本実施形態のタイヤ1において、トレッドゴムは、トレッド表面をなすキャップゴムを含むとともに、キャップゴムのJIS K6253に準拠するデュロメータ硬度が60〜75であることが好ましい。この場合、トレッドゴムは、さらに、キャップゴムのタイヤ径方向内側に配されたベースゴムを含んでいる。ベースゴムは、キャップゴムとベルト部4との間に配されたゴム層である。キャップゴムのデュロメータ硬度が上記範囲にあり、比較的軟らかいものであることで、悪路走行時のチッピングの発生が抑制される。キャップゴムの厚みは、特に制限されないが、例えば80〜140mmである。
【0047】
本実施形態のタイヤ1では、周方向副溝23の溝幅P
4および周方向主溝15,17の溝幅P
1に関して、比P
4/P
1が0.85〜1.15であることが好ましい。P
4およびP
1を
図2に示す。このように周方向副溝23の溝幅P
4および周方向主溝15,17の溝幅P
1が同等な長さであることで、周方向副溝23において周方向主溝15,17と同等の放熱性を確保できるとともに、センターブロック21のタイヤ幅方向の中央領域での接地圧が緩和されて、耐チッピング性を向上させることができる。なお、溝幅P
4および溝幅P
1はいずれも、各溝が延びる方向と直交する方向のトレッド表面での長さをいう。比P
4/P
1はより好ましくは、0.90〜1.10であり、例えば1.0である。
【0048】
本実施形態のタイヤ1では、周方向副溝23の最も深い溝深さD
4およびセンターラグ溝14の最も深い溝深さD
3に関して、比D
4/D
3が0.20〜0.80であることが好ましい。D
3およびD
4を
図1に示す。なお、
図1にセンターラグ溝14は表れないが、センターラグ溝14の溝底の最大深さ位置を水平方向の破線によって示す。比D
4/D
3がこの範囲を満たしていることで、耐チッピング性および耐熱性を両立することができる。比D
4/D
3が0.20以上であると、周方向副溝23の溝壁の面積が増加し、放熱性が増して、耐熱性が良好になる。比D
4/D
3が0.80以下であると、センターブロック21での接地圧が緩和されて、耐チッピング性が良好になる。なお、溝深さD
4および溝深さD
3は、溝が延びる方向に一定である場合はその溝深さをいい、溝が延びる方向に異なっている場合は最大の溝深さをいう。比D
4/D
3はより好ましくは0.35〜0.65であり、例えば0.50である。
【0049】
本実施形態のタイヤ1において、ベルト部4は、
図1に示されるように、さらに、一対の第1の交差ベルト層31および一対の第2の交差ベルト層33と、第2の交差ベルト層33のベルト層間に配されたシート状ゴム37とを含むとともに、
図6に示される、シート状ゴム37のタイヤ幅方向の幅W
4およびセンターブロック21の最大幅W
Bに関して、比W
4/W
Bが0.70〜1.00であることが好ましい。
図6は、
図2の一部を用いて、幅W
4および、後述する幅W
B、幅W
5を説明する図である。このように第2の交差ベルト層33のベルト層間にシート状ゴム37を配して、第2の交差ベルト層33によるタガ効果を緩和させることで、エンベロープ特性が向上し、タイヤ幅方向の中央領域における耐チッピング性が向上する。上記比W
4/W
Bは、より好ましくは0.80〜0.90であり、例えば0.85である。なお、第1の交差ベルト層のタイヤ径方向外側に第2の交差ベルト層が配されていることは、タイヤ1がオフロードタイヤとして用いられる場合に好適である。
【0050】
センターブロック21の最大幅W
Bは、タイヤ幅方向と平行な方向の最大長さであり、第1溝曲がり部15a,17aと第2溝曲がり部15b,17bの距離をタイヤ幅方向に投影した長さに等しい。なお、
図6では、最大幅W
Bの説明の便宜上、センターブロック21を、第2溝曲がり部15b,17bを結ぶ方向の断面によって示す。
ベルト部4は、さらに、
図1に示されるように、第2の交差ベルト層33のタイヤ径方向外側に第3の交差ベルト層35を含むことが好ましい。第1の交差ベルト層31、第2の交差ベルト層33、第3の交差ベルト層35はそれぞれ、タイヤ周方向に対してベルトコードの向きが逆向きに傾斜した一対のベルト層であり、タイヤ径方向内側から外側にこの順で配されている。
シート状ゴム37の厚みは特に制限されないが、耐チッピング性を向上させつつ、第2の交差ベルト層33によるタガ効果を確保する点で、例えば、3〜5mmであることが好ましい。
【0051】
さらに、本実施形態のタイヤ1では、ベルト部4の最外層のベルト層のベルト幅W
5、およびセンターブロック21の最大幅W
Bに関して、比W
B/W
5が0.50〜0.90であることが好ましい。ベルト部4の最外層のベルト層は、
図1において、第3の交差ベルト層35のベルト層のうちタイヤ径方向外側のベルト層であるが、ベルト部4が第3の交差ベルト層を含んでいない場合は、第2の交差ベルト層33のベルト層のうちタイヤ径方向外側のベルト層である。センターブロック21に隣接するベルト部4の最外層のベルト層を、センターブロック21に対して幅広にすることで、センターブロック全体が補強され、センターブロック21の剛性を確保できる。これにより、耐チッピング性および耐熱性が向上する。
比WB/W5はより好ましくは0.60〜0.80であり、例えば0.70である。
【0052】
本実施形態のタイヤ1において、第1溝曲がり部15a,17aに対応して形成されるセンターブロック21の頂部が角形状である場合、
図2に示されるように、この角部を鈍角にすることが好ましい。これにより、センターブロック21およびショルダーブロック25,27のブロックエッジへの応力集中が抑えられて、第2溝曲がり部15b,17bがチッピングの起点となることが抑制される。これにより、耐チッピング性が向上する。第2溝曲がり部15b,17bの屈曲する角は、例えば100°〜140°である。なお、センターブロック21の頂部が湾曲形状である場合、曲率半径の大きな湾曲形状にすることができる。
【0053】
本実施形態のタイヤ1において、周方向主溝15,17およびセンターラグ溝14の溝幅はそれぞれ7〜20mmであることが好ましい。これにより、耐チッピング性および耐熱性を両立することができる。周方向主溝15,17およびセンターラグ溝14の溝幅の大きさは、例えば18mmである。なお、周方向主溝15,17およびセンターラグ溝14の溝幅が上記範囲にあることは、タイヤ1がオフロードタイヤとして用いられる場合に好適である。
【0054】
前記重荷重用空気入りタイヤは、建設用車両または産業用車両に装着される場合に好適である。建設用車両または産業用車両は、例えば、JATMAに記載されるダンプトラック、スクレーバ、グレーダ、ショベルローダ、タイヤローラ、ホイールクレーン、トラッククレーン、または、TRAに規定される「COMPACTOR」、「
EARTHMOVER」、「
GRADER」、「LOADER AND DOZER」等の車両を含む。
【0055】
本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ1によれば、センターラグ溝14が複数の溝曲がり部を有していることで、センターラグ溝14の溝壁の表面積が増し、放熱性が向上するため、耐熱性が向上する。また、センターラグ溝14の溝曲がり部14a、14b同士を結ぶ周方向副溝23が形成されていることで、放熱性が向上し、耐熱性が向上する。また、周方向副溝23の傾斜角θ
4と周方向主溝の上記部分15X,17Xの傾斜角θ
1が異なっていることで、接地時の接地圧をタイヤ周方向に分散させることができ、耐チッピング性が向上する。特に、|θ
1−θ
4|が10°〜25°であることで、耐チッピング性がより向上する。
【0056】
本実施形態のトレッドパターンとして、
図2、
図3に示すように、センターラグ溝14の第3直線14gがタイヤ幅方向に対して傾斜した好ましい形態を用いて説明したが、このセンターラグ溝14の代わりに、第3直線14gがタイヤ幅方向に対して傾斜せずに延びるセンターラグ溝14を用いることもできる。
【0057】
(実施例)
本実施形態のタイヤの効果を調べるために、表1〜10に示されるようにトレッドパターンの異なるタイヤを種々試作し(実施例1〜41、従来例、比較例1〜3)、トレッドセンター領域の耐チッピング性と、耐熱性とを調べた。なお、表1〜10に示した仕様以外のタイヤの仕様は、従来例を除いて
図2のトレッドパターンの仕様を用いた。なお、実施例41は、センターラグ溝14の第3直線14gをタイヤ幅方向に傾斜させなかった点を除いて、実施例1と同じ仕様とした。
従来例のトレッドパターンは、
図7に示したトレッドパターンを用いた。
図7は、従来例のトレッドパターンを示す図である。
図7に示すトレッドパターンは、ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116と、を備える。ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116は、それぞれ、ショルダーラグ溝11,13と、一対の周方向主溝15,17と、センターラグ溝14と、センターブロック21と同様な構成を有するが、ショルダーラグ溝110の溝幅と周方向主溝112の溝幅は、ショルダーラグ溝11,13の溝幅と同じである。
試作したタイヤはいずれも、46/90R57である。リムサイズ29.00−6.0(TRA規定リム)に装着し、700kPa(TRA規定空気圧)を試験条件として、耐チッピング性試験及び耐熱性試験を行なった。
【0058】
(耐チッピング性)
試作したタイヤを実車に装着して、負荷荷重617.82kN(TRA規格荷重)の試験条件でオフロード路面の走行試験を行い、トレッド表面に発生したチッピングの数および大きさを目視により観察し、従来例を100とする指数で表した。チッピングは、目視により確認できるトレッド表面に生じた欠損または溝状の傷とした。指数の値が大きいほど耐チッピング性に優れる。
【0059】
(耐熱性)
試作したタイヤを室内ドラム試験機に取り付け、TRAに準拠する規格最大荷重(617.82kN)の110%の負荷荷重の条件で、速度5km/時にて走行し、12時間ごとに速度を1km/時ずつ増加させ、タイヤが破壊するまでの走行時間を測定した。その結果を、従来例を100とする指数で表した。指数の値が大きいほど耐熱性に優れている。
以上の結果、耐チッピング性および耐熱性の指数値がいずれも100以上であって、かつ、指数値の合計が202以上である場合を、耐チッピング性および耐熱性を両立することができたと評価した。このように、耐チッピング性および耐熱性を両立することには、耐チッピング性および耐熱性の両方が向上することだけでなく、耐チッピング性および耐熱性のうちいずれか一方を従来と同等に維持しつつ他方が向上することも含まれる。従来と同等に維持するとは、従来よりも低下しないこと(例えば、耐チッピング性、耐熱性を表す指数が従来例を下回らないこと)をいう。
【0062】
表1および表2から分かるように、センターブロックの領域に周方向副溝が形成されていない場合は(比較例1)は、耐熱性が悪化した。また、周方向副溝の傾斜角θ
4と、周方向主溝の上記部分の傾斜角θ
1が等しい場合は(比較例2,3)、耐チッピング性が悪化した。この場合に、センターラグ溝が溝曲がり部を有していない場合は(比較例2)は、さらに、耐熱性が悪化した。
これに対し、周方向副溝の傾斜角θ
4と、周方向主溝の上記部分の傾斜角θ
1が異なっている場合は(実施例1〜7)、耐チッピング性および耐熱性を両立することができた。
なお、表1において、センターラグ溝の溝曲がり部に関して「無」は、ストレート状のセンターラグ溝であることを意味する。
【0064】
表3から分かるように、上記D
2/Tが0.05未満である場合は(実施例10)、上記比D
2/Tが0.05以上である場合(実施例8,9)と比べ、耐チッピング性が向上した。なお、実施例8〜10において、|θ
1-θ
4|は、実施例4と同様とした。
【0066】
表4から分かるように、上記比G
1/G
2が4.0〜7.0である場合は(実施例12〜14)、上記比G
1/G
2が4.0未満である場合(実施例15)と比べ、耐チッピング性が向上するとともに、上記比G
1/G
2が7.0を超える場合(実施例11)と比べ、耐熱性が向上した。なお、実施例11〜25において、周方向主溝の底上げ部の有無、およびD
2/Tの値は、実施例10と同様とした。
【0068】
表5から分かるように、比P
4/P
1が0.85〜1.15である場合は(実施例17〜19)、比P
4/P
1が0.85未満である場合(実施例16)と比べ、耐熱性が向上するとともに、比P
4/P
1が1.15を超える場合(実施例20)と比べ、耐チッピング性が向上した。
【0070】
表6から分かるように、比D
4/D
3が0.20〜0.80である場合は(実施例22〜24)、比D
4/D
3が0.20未満である場合(実施例21)と比べ、耐熱性が向上するとともに、比D
4/D
3が0.80を超える場合(実施例25)と比べ、耐チッピング性が向上した。
【0072】
表7から分かるように、比W
4/W
Bが0.70〜1.00である場合は(実施例27〜29)、比W
4/W
Bが0.70〜1.00の範囲外である場合(実施例26,30)と比べ、耐チッピング性および耐熱性のバランスに優れていた。なお、耐チッピング性および耐熱性の指数がそれぞれ100以上であって、かつ、合計値が232以上である場合を、耐チッピング性および耐熱性のバランスに優れていると評価した。実施例26〜30において、G
1/G
2、P
4/P
1、D
4/D
3の各値は、実施例23と同様とした。
【0074】
表8から分かるように、比W
B/W
5が0.50〜0.90である場合は(実施例32〜34)、比W
B/W
5が0.90を超える場合(実施例31)と比べ、耐熱性が向上するとともに、比W
B/W
5が0.50未満である場合(実施例35)と比べ、耐チッピング性が向上した。なお、実施例31〜35において、第1交差ベルト層および第2交差ベルト層の有無、シート状ゴムの有無、およびW
4/W
Bの値は、実施例28と同様とした。
【0076】
表9から分かるように、キャップゴムの20℃におけるデュロメータ硬度が60〜75である場合(実施例37〜39)は、60未満である場合と比べ(実施例36)、耐チッピング性および耐熱性がいずれも向上した。なお、75を超える場合は(実施例40)、耐チッピング性が悪化した。実施例36〜40において、W
B/W
5の値は、実施例33と同様とした。
【0078】
表10からわかるように、トレッドパターンにおけるセンターラグ溝14の第3直線14gがタイヤ幅方向に対し傾斜していなくても(実施例41)、本実施形態の効果は生じるが、実施例41の評価結果と、表2の実施例1の評価結果との比較より、トレッドパターンにおけるセンターラグ溝14は、タイヤ幅方向に対し傾斜していることが、耐熱性の向上の点で好ましいことがわかる。
【0079】
以上、本発明の重荷重用空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。