(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ラグ溝曲がり部は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲する第1溝曲がり部と、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲する第2溝曲がり部と、を含み、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端部と前記第2接続端部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きい、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にある、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記副溝曲がり部は、第3溝曲がり部と第4溝曲がり部を備え、前記第3溝曲がり部と前記第4溝曲がり部の位置と、前記周方向副溝と前記センターラグ溝の1つとの接続部との間を連結する連結溝部を有し、前記連結溝部の、タイヤ周方向に対する傾斜角は0〜5度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記センターラグ溝それぞれから延びる前記周方向副溝のタイヤ幅方向の2つの開始位置は、お互いに位置ずれしている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
波形状の前記周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に凸状を成して曲がる主溝曲がり部に対応して形成される前記センターブロックの頂部は、いずれも鈍角の角部である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記重荷重用空気入りタイヤでは、摩耗末期におけるトラクション性を向上させることができる反面、摩耗末期にいたる前に、トレッドセンター領域におけるヒールアンドトウ摩耗が発生し易くなる。ヒールアンドトウ摩耗は、ラグ溝を挟んで、ラグ溝のタイヤ周方向の両側に位置するブロックのエッジ部分における摩耗量が異なって、段差を形成する異常摩耗の1つである。
特に、バスやトラック等に装着されるタイヤにおいて、あるいは鉱山等で用いられるダンプトラックに装着される、例えば49インチ以上の大型タイヤにおいて、トラクション性能を向上しつつ、ヒールアンドトウ摩耗を抑えることが、タイヤを効果的に使用する点から好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、トレッドパターン付き空気入りタイヤであって、ヒールアンドトウ摩耗を抑える重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の一態様は、トレッドパターン付き空気入りタイヤである。
前記トレッドパターンは、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道線を横切るようにタイヤ赤道線を基準としたタイヤ幅方向の第1の側及び第2の側の半トレッド領域のそれぞれに延びて両端を有するセンターラグ溝と、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端がタイヤ幅方向の両側にある接地端に開口するショルダーラグ溝であって、タイヤ周方向において、前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝の端の間に1つずつ設けられたショルダーラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、前記センターラグ溝の端と、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続するようにタイヤ周上全周にわたって波形状に形成され、前記ショルダーラグ溝より溝幅が狭く、前記半トレッド領域に設けられた一対の周方向主溝と、
前記センターラグ溝と前記一対の周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、
前記センターブロックの領域に形成され、前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝間を接続する周方向副溝と、を備える。
前記センターラグ溝のそれぞれは、屈曲形状あるいは湾曲形状のラグ溝曲がり部を少なくとも1つ以上有し、
前記周方向副溝のそれぞれは、屈曲形状あるいは湾曲形状の副溝曲がり部を少なくとも1つ以上有し、前記ラグ溝曲がり部において前記センターラグ溝と接続し、
前記センターラグ溝の最大溝深さD3の、前記センターブロックのタイヤ周方向における最大幅LBに対する比D3/LBは、0.1〜0.3である。
【0008】
前記ラグ溝曲がり部は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲する第1溝曲がり部と、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲する第2溝曲がり部と、を含み、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端部と前記第2接続端部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きい、ことが好ましい。
【0009】
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にある、ことが好ましい。
【0010】
前記一対の周方向主溝それぞれにおいて、溝深さが部分的に浅くなった底上げ部を備える、ことが好ましい。
【0011】
前記底上げ部における溝深さD2及び前記
トレッドパターンが設けられたトレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅Tに関して、比D2/Tは、0.05未満である、ことが好ましい。
【0012】
前記周方向主溝の最大溝深さD1の、前記
トレッドパターンが設けられたトレッド部のトレッド幅Tに対する比D1/Tは、0.03〜0.09である、ことが好ましい。
【0013】
前記副溝曲がり部は、第3溝曲がり部と第4溝曲がり部を備え、前記第3溝曲がり部と前記第4溝曲がり部の位置と、前記周方向副溝と前記センターラグ溝の1つとの接続部との間を連結する連結溝部を有し、前記連結溝部の、タイヤ周方向に対する傾斜角は0〜5度である、ことが好ましい。
【0014】
前記連結溝部の最大溝深さD5は、前記センターラグ溝の最大溝深さD3に比べて浅い、ことが好ましい。このとき、前記最大溝深さD5の、前記最大溝深さD3に対する比D5/D3は、0.3〜0.75である、ことが好ましい。
【0015】
前記第3溝曲がり部と前記第4溝曲がり部の位置を結ぶ中間溝部をタイヤ赤道線が横切る、ことが好ましい。
【0016】
前記中間溝部の最大溝幅P6は、前記連結溝部の最大溝幅P5と同等か、前記最大溝幅P5に比べて大きい、ことが好ましい。このとき、前記最大溝幅P6の、前記最大溝幅P5に対する比P6/P5は、1〜2.5である、ことが好ましい。
【0017】
前記センターラグ溝それぞれから延びる前記周方向副溝のタイヤ幅方向の2つの開始位置は、お互いに位置ずれしている、ことが好ましい。このとき、タイヤ幅方向における前記2つの開始位置は、タイヤ赤道線を基準としてタイヤ幅方向のお互いに異なる側に位置する、ことが好ましい。
【0018】
波形状の前記周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に凸状を成して曲がる主溝曲がり部に対応して形成される前記センターブロックの頂部は、いずれも鈍角の角部である、ことが好ましい。
【0019】
前記一対の周方向主溝及び前記センターラグ溝の溝幅は、いずれも7〜20mmである、ことが好ましい。
【0020】
前記重荷重用空気入りタイヤは、建設用車両または産業用車両に装着される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上述の重荷重用空気入りタイヤによれば、トラクション性能を低下させることなく、ヒールアンドトウ摩耗を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の空気入りタイヤについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
本明細書においてタイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転中心軸方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転中心軸を中心にタイヤを回転させたときにできるトレッド表面の回転面の回転方向をいう。タイヤ径方向とは、タイヤ回転中心軸から放射状に向く方向をいう。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転中心軸から遠ざかる側をいい、タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転中心軸に近づく側をいう。また、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道線からタイヤ幅方向において遠ざかる側をいい、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に近づく側をいう。
また、本明細書でいう重荷重用タイヤとは、JATMA(日本自動車タイヤ協会規格)YEAR BOOK 2014のC章に記載されるタイヤの他に、D章に記載される1種(ダンプトラック、スクレーバ)用タイヤ、2種(グレーダ)用タイヤ、3種(ショベルローダ等)用タイヤ、4種(タイヤローラ)用タイヤ、モビールクレーン(トラッククレーン、ホイールクレーン)用タイヤ、あるいはTRA 2013 YEAR BOOKのSECTION 4 あるいは、section 6に記載される車両用タイヤをいう。
【0024】
図1は本実施形態の空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)の断面図である。
図1は、後述する
図2中のX−X’線を通り、タイヤ回転軸を通る平面で切断した断面図である。
図1中、タイヤ径方向はR(異なる側に向いた2つの矢印)で、タイヤ幅方向はW(異なる側に向いた2つの矢印)で方向を示している。
図1に示すタイヤ1は、トレッド部2、サイドウォール部3、ビード部4を有する。ビード部4は、タイヤ幅方向の両側に、一対のビードコア4aを有する。一対のビードコア4aの間には、カーカス層5が装架されている。カーカス層5の両端部は、ビードコア4aの廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層5は、一枚のカーカスプライで構成されてもよいし、複数枚のカーカスプライで構成されてもよい。
【0025】
トレッド部2におけるカーカス層5の外周側にはベルト層6が設けられている。ベルト層6は、タイヤ径方向の内側から外側に向かう方向に沿って、第1の交差ベルト層6aと、第2の交差ベルト層6bと、第3の交差ベルト層6cと、がその順番で設けられている。第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6c、のそれぞれは、2つのベルトで構成されている。第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6cのそれぞれの一対のベルトでは、補強コードがタイヤ周方向に対して互いに異なる側に傾斜している。
図1に示すベルト層6の形態では、第1の交差ベルト層6aの2つのベルトのうち、タイヤ径方向の内側に位置するベルトは、タイヤ径方向の外側に位置するベルトに比べてタイヤ幅方向のベルト幅が狭い。第2の交差ベルト層6bの2つのベルトのうち、タイヤ径方向の内側に位置するベルトは、タイヤ径方向の外側に位置するベルトに比べてタイヤ幅方向のベルト幅が広い。第3の交差ベルト層6cの2つのベルトのうち、タイヤ径方向の内側に位置するベルトは、タイヤ径方向の外側に位置するベルトに比べてタイヤ幅方向のベルト幅が広い。ベルト幅は、特に制限されず、
図1に示すベルト幅の形態は一例である。また、ベルト層6は、3つの交差ベルト層により構成されているが、2層の交差ベルト層で構成されてもよく、ベルト構成について特に制限はない。また、第2の交差ベルト層6bのベルト層間に、シート状のゴム層を部分的に設けてもよい。
【0026】
第1の交差ベルト層6aの各ベルトの補強コードの中でタイヤ周方向に対して最も低い角度のベルトコードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、20〜24度であることが、タイヤがタイヤ径方向に膨張しようとする変形をベルトが抑制する、いわゆるタガ効果を効果的に得ることができる点から好ましい。第2の交差ベルト層6bの各ベルトの補強コードの中でタイヤ周方向に対して最も低い角度のベルトコードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、16〜20度であることがタガ効果を効果的に得ることができる点から好ましい。また、第3の交差ベルト層
6cの各ベルトの補強コードの中でタイヤ周方向に対して最も低い角度のベルトコードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、22〜26度であることが好ましい。第1の交差ベルト層
6aの各ベルトの補強コードにおける上記傾斜角度は、第2の交差ベルト層6bにおける上記傾斜角度に比べて大きいことが好ましい。
【0027】
このようなタイヤ1の構成は、一例であり、タイヤ1は、これ以外の公知の構成を備えてもよい。
【0028】
(トレッドパターン)
図2は、タイヤ1のトレッド部2に設けられたトレッドパターンを平面展開したパターン図である。
図2中、タイヤ周方向はCで、タイヤ幅方向はWで方向を示している。
トレッド部2は、ショルダーラグ溝10と、一対の周方向主溝12と、センターラグ溝14と、センターブロック16と、周方向副溝20と、をトレッドパターンとして備える。
【0029】
ショルダーラグ溝10は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域のそれぞれに、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。ショルダーラグ溝10は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端が、タイヤ幅方向の両側にあるトレッド端(接地端)18に開口する。トレッド端18は、
図1に示すように、トレッド部2とサイド部3の外形形状が接続する部分であり、この接続する部分が丸まっている場合は、トレッド部2の外形形状をこの形状に沿って延長した延長線と、サイド部3の外形形状をこの形状に沿って延長した延長線との交点をいう。
タイヤ幅方向の両側に位置するショルダーラグ溝10において、一方の半トレッド領域における1つのショルダーラグ溝10のタイヤ周方向の位置は、他方の半トレッド領域にある隣接する2つのショルダーラグ溝のタイヤ周方向の位置の間にある。
さらに、ショルダーラグ溝10は、半トレッド領域のそれぞれにおいて、ショルダーラグ溝10が有するタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、後述するセンターラグ溝14の端のタイヤ幅方向の位置に比べてタイヤ幅方向外側にあり、かつ、ショルダーラグ溝10は、タイヤ周方向において、センターラグ溝14のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝14の間のショルダー領域に1つずつ設けられている。これにより、後述する周方向主溝12は、センターラグ溝14の端とショルダーラグ溝10のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続して波形状を成す。
【0030】
一対の周方向主溝12は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側(第1の側及び第2の側)の半トレッド領域に設けられている。周方向主溝12のそれぞれは、半トレッド領域のそれぞれにおいて、後述するセンターラグ溝14の端と、ショルダーラグ溝10のタイヤ幅方向内側の端を交互に接続してタイヤ周上全周にわたって波形状に形成されている。一対の周方向主溝12の溝幅は、ショルダーラグ溝10の溝幅より狭い。溝が波形状であるとは、溝が蛇行する形状をいい、溝の波形状を成すタイヤ幅方向外側あるいは内側に凸状を成して曲がる主溝曲がり部は、角形状であってもよく、丸まった湾曲形状であってもよい。湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。また、上記主溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。主溝曲がり部と主溝曲がり部以外の部分を湾曲形状にする場合、2つの湾曲形状を同じ曲率半径の湾曲形状にしてもよい。また、タイヤ周方向に隣り合う2つの主溝曲がり部のうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の主溝曲がり部とし、他方を、湾曲形状の主溝曲がり部としてもよい。
具体的には、周方向主溝12は、タイヤ幅方向の外側及び内側に凸状を成して曲がる主溝曲がり部11をタイヤ周上に複数有し、タイヤ幅方向に波形状に蛇行しながらタイヤ周方向に延びる。一対の周方向主溝12それぞれは、主溝曲がり部11のうちタイヤ幅方向外側に凸状を成して曲がる第5溝曲がり部11aでショルダーラグ溝10と接続する。また、一対の周方向主溝12それぞれは、主溝曲がり部11のうちタイヤ幅方向内側に凸状を成して曲がる第6溝曲がり部11bでセンターラグ溝14と接続する。第6溝曲がり部11bのタイヤ周方向の位置は、反対側の半トレッド領域の
第6溝曲がり部11bに対して位置ずれしている。したがって、センターラグ溝14は、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びている。さらに、一対の周方向主溝12の溝幅は、ショルダーラグ溝10の溝幅よりも狭い。
【0031】
センターブロック16は、後述するセンターラグ溝14と一対の周方向主溝12によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されている。センターブロック16には、タイヤ赤道線(タイヤセンターライン)CLが通過している。
【0032】
センターラグ溝14は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。センターラグ溝14は、タイヤ赤道線CLを横切るように、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側(第1の側及び第2の側)の半トレッド領域に延びて両端を有する。センターラグ溝14の両端は、主溝曲がり部11のうちのタイヤ幅方向内側に凸状を成して曲がる第6溝曲がり部11bと接続する。したがってセンターラグ溝14は、第6溝曲がり部11b同士を接続した溝である。センターラグ溝14は、タイヤ赤道線CLと交差する。なお、一対の周方向主溝12の波形状は、いずれも所定の波長を有する波形状であり、この2つの波形状のタイヤ周方向における位相はお互いに略半ピッチずれている。すなわち、一対の周方向主溝12のうち一方の周方向主溝12の第5溝曲がり部11aのタイヤ周方向の位置は、他方の周方向主溝12の、タイヤ周方向に隣り合う第5溝曲がり部11aのタイヤ周方向における位置の間にある。一対の周方向主溝12のうち一方の周方向主溝12の第5溝曲がり部11aと、他方の周方向主溝12の第5溝曲がり部11bとがタイヤ周方向の略同じ位置に設けられている。
【0033】
センターラグ溝14には、屈曲形状の2つのラグ溝曲がり部である第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bが設けられている。
図3は、センターラグ溝14の屈曲形状の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを拡大して示す図である。なお、本実施形態では、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bは屈曲形状であるが、湾曲形状であってもよい。湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。
センターラグ溝14は、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを有することで、タイヤ周方向に波形状に変位する。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bの形状は、例えばこの第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bによりつくられるセンターラグ溝14の曲がる角度θ(
図3参照)が鈍角になる形状であることが好ましい。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bは、タイヤ赤道線CLのタイヤ幅方向両側に、タイヤ赤道線CLから同じ距離離間した位置に設けられることが好ましい。センターラグ溝14のうち、第1溝曲がり部14aと第2溝曲がり部14bとの間の部分にタイヤ赤道線CLが通過するように設けられことが好ましい。また、この部分において、タイヤ幅方向に対するセンターラグ溝14の傾斜の向きが、この部分以外の部分の傾斜の向きと異なっていることが好ましい。センターラグ溝14には、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bが設けられているが、少なくとも1つ設けられているとよい。
【0034】
本実施形態のセンターラグ溝14は、一対の周方向主溝12の間を、直線状に延びる直線部と第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを含む構成を有するが、上記直線部に代えて湾曲状の溝を用いてもよい。また、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bの一方を、屈曲形状、他方を湾曲形状としてもよい。また、湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りした湾曲形状も含まれる。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを湾曲形状にし、上記直線部を湾曲形状にする場合、2つの湾曲形状は、同じ曲率半径の湾曲形状にしてもよい。また、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bのうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の溝曲がり部とし、他方を、湾曲形状の溝曲がり部としてもよい。センターラグ溝14の形状は、波形状にタイヤ周方向に変位しながらタイヤ幅方向に延びる溝形状であるとよい。
【0035】
図4は、センターブロック
16の形状を定めるセンターラグ溝14の好ましい形状の例を説明する図である。
図4では、センターラグ溝14に接続する周方向副溝20の図示は省略されている。
図4に示すように、センターラグ溝14の第1溝曲がり部14aは、タイヤ赤道線CLを基準として第1の側(
図4中の紙面左側)においてタイヤ周方向の第3の側(図
4中の紙面上方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲する。センターラグ溝14の第2溝曲がり部14bは、タイヤ赤道線CLを基準として第2の側(
図4中の紙面右側)においてタイヤ周方向の第4の側(図
4中の紙面下方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲する。第4の側は、第3の側に対して反対側である。ここで、センターラグ溝14が周方向主溝12と接続する第1の側の第1接続端部14c及びセンターラグ溝14が周方向主溝12と接続する第2の側の第2接続端部14dは、
周方向主溝12のタイヤ幅方向の内側の先端、すなわち第6溝曲がり部11b,11bに該当する。センターラグ溝14がタイヤ幅方向に対して傾斜しているため、センターラグ溝14の第2接続端部14dは、第1接続端部14cよりもタイヤ周方向の第3の側(図
4中の紙面上方向の側)にある。
このとき、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第1溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側(図
4中の上方向の側)に突出する突出端と第1接続端部14cとを結ぶ第1直線14eのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度
より小さい傾斜角度)、および、第2溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとを結ぶ第2直線14fのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度
より小さい傾斜角度)は、センターラグ溝14の第1接続端部14cと第2接続端部14dを結ぶ第3直線14gのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度
より小さい傾斜角度)よりも大きいことが好ましい。
【0036】
本実施形態のより好ましい形態では、
図2,4に示すように、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第1溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側に突出する突出端と第1接続端部14cとの間のセンターラグ溝14の部分は、第1直線14e上、あるいは第1直線14eに対して第3の側にあり、第2溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとの間のセンターラグ溝14の部分は、第2直線14f上、あるいは第2直線14fに対して第4の側にある。
【0037】
このようなセンターブロック16が形成されることにより、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。すなわち、センターブロック16は、タイヤ幅方向に対して一方向に傾斜したセンターラグ溝14によって形状が規定された異方性形状であるので、タイヤ接地面からセンターブロック16が路面から離れて蹴りだされるとき、センターブロック16は、異方性形状によって時計回転あるいは反時計回転にねじれて変形する。このとき、周方向主溝12の溝幅が狭いので、センターブロック16は、
周方向主溝12を挟んでタイヤ幅方向に隣り合うショルダーブロックと、第5溝曲がり部11a、第6溝曲がり部11bにおいて噛み合って一体として機能する他、センターラグ溝14を挟んでタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック16同士が、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bにおいて噛み合って一体として機能するので、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック16のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック16のねじれを抑制でき、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック16の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
【0038】
さらに、センターブロック16が路面からはなれて蹴りだされるとき、センターブロック16の各部分が路面から受けるタイヤ周方向のせん断力によって上記各部分が変形し倒れ込もうとする。このとき、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bがセンターラグ溝14に設けられているので、センターブロック16の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14b周りの陸部が互いに噛み合ってタイヤ周方向に隣接する2つのブロックが1つのブロックとして機能して反力を発生する。したがって、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bをセンターラグ溝14に設けることにより、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック16のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック16の倒れこみを抑制できるので、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック16の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
【0039】
周方向副溝20は、センターラグ溝14のうち、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝14間を接続する溝である。周方向副溝20の溝深さは、周方向主溝12の最大溝深さに比べて浅くてもよい。その際、周方向副溝20は、屈曲形状あるいは湾曲形状の溝曲がり部を少なくとも1つ以上有する。本実施形態の周方向副溝20は、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bを有する。
【0040】
周方向副溝20は、
図2に示すように、センターラグ溝14からタイヤ周方向に平行に延びる連結溝部(直線部)と、連結溝部(直線部)と接続した第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bと、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの間を延びるタイヤ周方向に傾斜した中間溝部と、を有する。第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの形状が湾曲形状である場合、湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの一方を屈曲形状、他方を湾曲形状としてもよい。また、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bのうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の溝曲がり部とし、他方を、湾曲形状の溝曲がり部としてもよい。
図2に示される例では、周方向副溝20に設けられる第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの形状は、屈曲形状であり、この第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bによりつくられる周方向副溝20の曲がる角度φ(
図2参照)が鈍角になる形状であることが好ましい。周方向副溝20は、例えば、センターラグ溝14の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bの先端の位置(具体的には、センターラグ溝14の両端を結んだ仮想直線からタイヤ周方向に最も突出した位置)で、センターラグ溝14に接続されていることが好ましい。周方向副溝20における上記連結溝部(直線部)は、タイヤ周方向に平行に延びなくてもよい。また、
図2に示すように、周方向副溝20のうち、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの間を結ぶ中間溝部において、タイヤ赤道線CLが横切ることが好ましい。
【0041】
図3に示すように、周方向副溝20の上記連結溝部(直線部)はタイヤ周方向に平行に延びる直線形状を有するが、この直線形状に替えて、上記連結溝部が湾曲した湾曲形状であってもよい。また、周方向副溝20は、上述したように、連結溝部と、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bと、中間溝部とを有するが、この形状に替えて、波形状にタイヤ周方向に変位しながらタイヤ周方向に延びる溝形状であってもよい。上記連結溝部を湾曲形状にし、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bを湾曲形状にする場合、2つの湾曲形状は、同じ曲率半径を有する湾曲形状にしてもよい。
【0042】
このように周方向副溝20を設けることにより、センターブロック16のブロック剛性の過度な高さを緩和できる。これにより、空気圧充填時のトレッド部2の外形を示すプロファイル形状の曲率半径がセンター領域(センターブロック16のある領域)で大きく、ショルダー領域(ショルダーラグ溝10のある領域)で急激に小さくなる、いびつな形状を防止でき、上記センター領域から上記ショルダー領域にかけてトレッド部2のプロファイル形状を曲率半径の変化が穏かなプロファイル形状にすることができる。これにより、上記曲率が大きく変化する周方向主溝12周りで発生しやすい局部的な摩耗を抑制することができる。
【0043】
さらに、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bを周方向副溝20に設けることにより、タイヤ1が路面上を走行中、センターブロック16が路面からはなれて蹴りだされるとき、周方向副溝20により2つの領域に分けられたセンターブロック16の各部分に路面から受けるタイヤ周方向のせん断力によって上記各部分が変形し倒れ込もうとするとき、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21b周りの、センターブロック16の陸部が第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bによって互いに噛み合ってあたかも1つのブロックとして機能して反力を発生するので、周方向副溝20が形成されたセンターブロック16であってもトレッド剛性の過度な低下を抑制することができる。センターブロック16のトレッド剛性の過度な低下を抑制することができ、センターブロック16の倒れこみを抑制できるので、センターブロック16のヒールアンドトウ摩耗を抑えることができる。
【0044】
さらに、センターラグ溝14の最大溝深さD3(
図1参照)の、センターブロックのタイヤ周方向における最大幅LB(
図2参照)に対する比D3/LBは、0.1〜0.3である。比D3/LBを上記範囲にすることにより、センターブロック16のブロック剛性の低下を抑制し、センターブロック16内の路面に対する滑りが場所に拠らず一定に近づくので、ヒールアンドトウを抑えることができる。
図1では、センターラグ溝14の溝底を点線で示している。
【0045】
トレッドパターンの好ましい形態として、一対の周方向主溝12それぞれにおいて、溝深さが部分的に浅くなった底上げ部12aを備えることが好ましい。
図5は、底上げ部12aの一例を示す図である。底上げ部12aを周方向主溝12に設けることにより、センターブロック16のトレッド剛性を所定の範囲になるように確保してトラクション性能に有効なセンターブロック16の倒れこみを抑えることができる。さらにセンターブロック16の倒れこみが抑えられるので、センターブロック16のヒールアンドトウ摩耗を抑えることができる。
底上げ部12aは、
図5に示すように、第5溝曲がり部11a及び第6溝曲がり部11bとの間をタイヤ周方向に対して傾斜して延びる部分に設けられているが、周方向主溝12における第5溝曲がり部11a及び第6溝曲がり部11bの領域に設けられてもよい。周方向主溝12には、溝深さが最も深い一定の最大深さ領域があり、この領域から、溝深さが浅くなった部分が底上げ部12aである。なお、周方向主溝12の最も深い溝深さは、ショルダーラグ溝10の溝深さと同じであることが好ましい。
【0046】
底上げ部12aの形態は、上記最大深さ領域から段差をもって不連続に溝深さが浅くなる形態でもよいし、上記最大深さ領域から徐々に溝深さが浅くなる形態でもよく、一度溝深さが浅くなった後、最大深さ領域の溝深さよりも浅い範囲内で溝深さが深くなる形態でもよい。このように、底上げ部12aは、一定の浅い溝深さであってもよいが、一定の浅い溝深さである必要はなく、溝深さは変動してもよい。
このとき、底上げ部12aにおける最も浅い溝深さD2(
図5参照)及びトレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅T(
図2参照)に関して、比D2/Tは、0.05未満であることが好ましい。比D2/Tが0.05以上である場合、底上げ部の溝深さがトレッド幅T対比深くなるので、センターブロック16のブロックの倒れこみを抑えることは難しくなる。比D2/Tはより好ましくは0.04以下であり、例えば0.03である。比D2/Tの下限は特に制限されないが、例えば0.01である。また、比D2/Tが0.05以上である場合、底上げ部の溝深さがトレッド幅T対比深くなるので、センターブロック16の底上げ部周りのブロック剛性と、センターブロック16の中央部(底上げ部を有する溝のエッジから離れた内側部分)のブロック剛性との間の差が大きくなり、偏摩耗が発生しやすくなる。
【0047】
また、周方向主溝12の最大溝深さD1(
図5参照)の、トレッド部2のトレッド幅Tに対する比D1/Tは、0.03〜0.09であることが好ましい。周方向主溝12の最大溝深さD1が深く、比D1/Tが0.09を超える場合、センターブロック16のブロック剛性が過度に低下し、ヒールアンドトウ摩耗が大きくなり易い。周方向主溝12の最大溝深さD1が浅く、比D1/Tが0.03未満である場合、センターラグ溝14が消滅し易くなり、摩耗寿命が極端に短くなる。
【0048】
また、上述した周方向副溝20の上記連結溝部は、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bのそれぞれと、周方向副溝20とセンターラグ溝14の1つとの接続点との間を連結する部分であって、この連結溝部の、タイヤ周方向に対する傾斜角は0〜5度であることが好ましい。上記連結溝部に湾曲形状の溝が用いられる場合においても、上記傾斜角は0〜5度であることが好ましい。センターブロック16が路面からはなれて蹴りだされるときのせん断力によりセンターブロック16がタイヤ周方向へ倒れ込もうとする変形を受けたとき、上記傾斜角度を5度以下とするので、倒れ込もうとする変形を第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21b近傍に伝えることができる。第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bはこの倒れ込みを上述したように抑えることができる。したがって、センターブロック16のヒールアンドトウ摩耗を抑えることができる。
【0049】
また、周方向副溝20の上記連結溝部の最大溝深さD5(
図1参照)は、センターラグ溝14の最大溝深さD3(
図1参照)に比べて浅いことが、ヒールアンドトウ摩耗に対して影響を与えるセンターブロック16のトレッド剛性が過度に低下することを抑制することができる点で、好ましい。より具合的には、最大溝深さD5の、最大溝深さD3に対する比D5/D3は、0.3〜0.75であることが好ましい。比D5/D3が上記範囲にあることにより、センターブロック16におけるヒールアンドトウ摩耗を効率よく抑制することができる。
【0050】
周方向副溝20の第3溝曲がり部21aと第4溝曲がり部21bとの間を結ぶ中間溝部の最大溝幅P6(
図2参照)は、周方向副溝20とセンターラグ溝14の1つとの接続点との間を連結する上記連結溝部の最大溝幅P5(
図2参照)と同等か、最大溝幅P5に比べて広いことが好ましい。これにより、センターブロック16の外縁のエッジ近傍の局所的なブロック剛性と、上記中間溝部近傍の局所的なブロック剛性との差を小さくすることができ、センターブロック16の領域内における摩耗を均一にすることができる。具体的には、比P6/P5を1以上2.5以下とすることで、センターブロック16の領域内における摩耗を均一にすることを効率よくできる。
【0051】
センターラグ溝14それぞれから延びる周方向副溝20のタイヤ幅方向の2つの開始位置は、
図4に示すように、お互いに位置ずれしていることが、局部的に摩耗の核となり易い周方向副溝20の開始位置を分散させることができる点で好ましい。
また、センターラグ溝14における、タイヤ幅方向における周方向副溝20の2つの開始位置を、タイヤ赤道線CLを基準としてタイヤ幅方向のお互いに異なる側に位置することが、タイヤ幅方向の両側に上記開始位置を振り分けて摩耗を抑制することができる点で好ましい。
【0052】
センターブロック16における、波形状の周方向主溝12のうちタイヤ幅方向外側に凸状を成して曲がる部分である第5溝曲がり部11aに対応して形成されるセンターブロック16の頂部は、いずれも鈍角の角部であることが、角部が制動力、駆動力あるいは横力を受けてセンターブロック16が倒れこむことを抑制し、角部が摩耗の発生の核にならないようにする点から好ましい。
また、一対の周方向主溝12及びセンターラグ溝14の溝幅は、いずれも7〜20mmであることが、トラクション性能に必要なセンターブロック16のエッジ成分を持つことができ、周方向主溝12及びセンターラグ溝14の周りで発生しやすい局部的な摩耗を抑制できる点から好ましい。
なお、タイヤ1は、建設用車両または産業用車両に装着されることが好ましい。建設用車両または産業用車両は、ダンプトラック、スクレーバ、グレーダ、ショベルローダ、タイヤローラ、ホイールクレーン、トラッククレーン、あるいは、COMPACTOR、 EARTHMOVER、GREADER、LOADER AND DOZER等の車両を含む。
【0053】
このように、本実施形態のタイヤ1のトレッドパターンでは、センターブロック16の領域に、センターラグ溝14のうちタイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝14間を接続する周方向副溝20を形成し、周方向副溝20のそれぞれに、少なくとも1つ以上の溝曲がり部を設けている。このため、トレッド部2の外形のプロファイル形状は曲率の変化が穏かなプロファイル形状にすることができる。これにより局部的な摩耗を抑制することができる。一方、周方向副溝20を設けたことにより、センターブロック16のトレッド剛性の低下が懸念されるが、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bにより、センターブロック16のトレッド剛性の低下を抑制できる。これにより、転動するタイヤ1において、センターブロック16が路面から離れて蹴り出されるとき、路面から受けるタイヤ周方向のせん断力により発生するセンターブロック16の倒れ込みを抑えることができる。したがって、センターブロック16におけるヒールアンドトウ摩耗を抑制することができる。
【0054】
(実施例、従来例、比較例)
本実施形態のタイヤの効果を調べるために、トレッドパターンの異なるタイヤを種々試作し、ヒールアンドトウ摩耗を調べた。試作したタイヤは、46/90R57である。リムサイズ29.00−6.0(TRA規定リム)に装着し、700kPa(TRA規定空気圧)、負荷荷重617.81kN(TRA規格荷重)を試験条件として、200トン用ダンプトラックを用いて、同じオフロード路面の走行を行ない、5000時間走行後のセンターブロックにおけるヒールアンドトウ摩耗によるブロック段差量を求め、その逆数によって指数化した。指数は従来例を基準(指数100)とした。指数が高いほどヒールアンドトウ摩耗は小さいことを意味する。
【0055】
試作したタイヤは、従来例と、実施例1〜28と、比較例1〜4である。
図6は、従来例のトレッドパターンを示す図である。
図6に示すトレッドパターンは、ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116と、を備える。ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116は、それぞれ、ショルダーラグ溝10と、一対の周方向主溝12と、センターラグ溝14と、センターブロック16と同様な構成を有するが、ショルダーラグ溝110の溝幅と周方向主溝112の溝幅は、ショルダーラグ溝
10の溝幅と同じである。周方向主溝112の溝幅がショルダーラグ溝110と同じであることから、
図2に示す周方向主溝12のように、ショルダーラグ溝10の溝幅より狭い周方向主溝ではないので、下記表1では、波形状の周方向主溝は無い、としている。
実施例1〜28及び比較例1〜4は、
図2または
図6に示すトレッドパターンを用いた。
下記表1〜6については、トレッドパターンの各要素とそのときのヒールアンドトウ摩耗の評価結果を示す。
【0056】
表1では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、波形状の周方向主溝の有無、センターラグ溝のラグ溝曲がり部(第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14b)と周方向副溝の有無、周方向副溝の第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bの有無、比D3/LB、を種々変更したトレッドパターン(実施例1〜3,比較例1〜4)の評価結果を示す。
また、表2では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、比D2/Tを種々変更したトレッドパターン(実施例4〜8)の評価結果を示す。
表3では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、比D3/LBを0.2に固定し、比D2/Tを0.03に固定して、比D1/Tを種々変更したトレッドパターン(実施例9〜13)の評価結果を示す。
表4では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、比D3/LBを0.2に固定し、比D2/Tを0.03に固定し、比D1/Tを0.06に固定して、周方向副溝20の、センターラグ溝14からタイヤ周方向に平行に延びる連結溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度を種々変更したトレッドパターン(実施例14〜17)の評価結果を示す。
表5では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、比D3/LBを0.2に固定し、比D2/Tを0.03に固定し、比D1/Tを0.06に固定し、連結溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度を3度に固定して、比D5/D3を種々変更したトレッドパターン(実施例18〜22)の評価結果を示す。
表6では、
図2に示すトレッドパターンを基準として、比D3/LBを0.2に固定し、比D2/Tを0.03に固定し、比D1/Tを0.06に固定し、連結溝部のタイヤ周方向に対する傾斜角度を3度に固定し、比D5/D3を0.5に固定して、比P6/P5を種々変更したトレッドパターン(実施例23〜28)の評価結果を示す。
また、表1〜6の中で、「センターラグ溝における、周方向副溝のタイヤ幅方向2つの開始位置の位置ずれの有無」とは、
図2に示すように、1つのセンターラグ溝14を挟んでタイヤ周方向の両側の方向に向かって延びる2つの周方向副溝20の開始位置がタイヤ幅方向において位置ずれしているか否かを示す。上記位置ずれが有る場合、位置ずれは、トレッド幅Tの8%の距離とした。
【0057】
表1より、周方向主溝が有り、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bと、周方向副溝20と、第3溝曲がり部21a及び第4溝曲がり部21bと、が有り、比D3/LBを0.1〜0.3とすることにより、ヒールアンドトウ摩耗が改善されることがわかる。
表2の実施例4と表1の実施例1の比較より、周方向副溝の底上げ部があることにより、ヒールアンドトウ摩耗を改善することがわかる。また、表2の実施例4〜8より、比D2/Tは、0.05未満であることがヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。
表3の実施例9〜13より、比D1/Tは、0.03〜0.09であることがヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。
表4の実施例14〜17より、連結溝部の傾斜角度は、0〜5度であることが、ヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。
表5の実施例18〜22より、比D5/D3は、0.3〜0.7であることが、ヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。
表6の実施例23〜27より、比P6/P5は1.0〜2.5であることが、ヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。また、表6の実施例25と実施例28の比較より、周方向副溝の開始位置がタイヤ幅方向で位置ずれしていることが、ヒールアンドトウ摩耗を改善する上で好ましいことがわかる。
【0064】
以上より、本実施形態のタイヤの効果は明らかである。
【0065】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。