(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底上げ部における溝深さをD2、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、D2/T<0.05である、請求項2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記周方向副溝は、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝間の領域において、溝の延在方向を変える溝曲がり部を少なくとも2つ備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記ベルト層の各対のうち、ベルト幅が広いベルト層の補強コードの配向方向は、いずれも、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の同じ側に向かって傾斜した方向である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記ベルト部に含まれるベルトのうち隣接するいずれのベルト同士においても、ベルトの補強コードが、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の異なる側に向かって傾斜した交差層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記ベルト層の各対のうち、ベルト幅が広いベルト層のベルト幅に関して、タイヤ径方向外側に位置するベルト層ほど、ベルト幅が広い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記ベルト部は、タイヤ径方向の最も内側の第1の対、前記第1の対のタイヤ径方向外側に積層した第2の対、及び前記第2の対のタイヤ径方向外側に積層した第3の対を含み、
前記第3の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W3に対する、前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大幅WBの比WB/W3は0.5以上0.8以下であり、ベルト幅W3は、前記第2の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W2より広い、請求項1〜7のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記ベルト部は、タイヤ径方向の最も内側の第1の対、前記第1の対のタイヤ径方向外側に積層した第2の対、及び前記第2の対のタイヤ径方向外側に積層した第3の対を含み、
前記第1の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W1は、前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大幅WBに比べて狭い、請求項1〜8のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記センターラグ溝は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲する第1溝曲がり部と、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲する第2溝曲がり部と、を備え、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端部と前記第2接続端部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きい、請求項1〜12のいずれか1項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にある、請求項13に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記周方向副溝には、タイヤ周方向の前記第3の側にすすむとき、タイヤ径方向外側からタイヤ径方向内側に向かって前記トレッドパターンを見たとき、時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲した第5溝曲がり部と、反時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲した第6溝曲がり部がタイヤ周上に設けられ、前記センターラグ溝のうち隣接するセンターラグ溝間にある前記周方向副溝の部分は、前記第5溝曲がり部の1つと前記第6溝曲がり部の1つが配置されている、請求項15に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記周方向副溝には、前記第5溝曲がり部および前記第6溝曲がり部のそれぞれがタイヤ周方向に沿って2つ連続して設けられ、連続して設けられる2つの第5溝曲がり部および2つの第6溝曲がり部のぞれぞれの間で、前記センターラグ溝が横切る、請求項16に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
前記周方向副溝には、前記第5溝曲がり部の1つ、前記第5溝曲がり部の1つ、前記第6溝曲がり部の1つ、及び前記第6溝曲がり部の1つを、タイヤ周方向に沿って順番に配置した組を1組として、複数組がタイヤ周上に設けられ、
前記周方向副溝のうち、前記第5溝曲がり部の1つと前記第5溝曲がり部の1つの間の部分、及び前記第6溝曲がり部の1つと前記第6溝曲がり部の1つの間の部分は、タイヤ赤道線に平行に延びる直線溝である、請求項16または17に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記重荷重用空気入りタイヤでは、摩耗末期におけるトラクション性を向上させることができる。このような重荷重用空気入りタイヤにおいて、よりトラクション性を向上させるために、トレッドパターンにおけるブロックのタイヤ幅方向の幅を広げる場合もある。この場合、トレッドセンター領域のブロックの幅を広げると、ブロックのエッジ近傍の接地圧力が局所的に高くなり易い。この結果、ブロックのエッジのタイヤ幅方向の略同じ位置にベルトのタイヤ幅方向の端が存在する場合、上記接地圧力の局所的増大によりベルトの両端に大きなタイヤ径方向の力が作用してベルト層間歪が大きくなる。この結果、ベルトエッジ部のセパレーションが発生し易くなる、といった問題がある。
特に、鉱山等のオフロード上を走行するダンプトラックに装着される、例えば49インチ以上の大型タイヤにおいて、トラクション性能を向上しつつ、ベルトエッジ部のセパレーションを抑えてベルト耐久性を向上させることが、タイヤを効果的に使用する点から好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、トレッドパターン付き空気入りタイヤであって、トラクション性能を向上させつつ、ベルト耐久性を向上させることができる重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の種々の形態を含む。
(形態1)
トレッドパターン付き重荷重用空気入りタイヤであって、
前記トレッドパターンは、
タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、タイヤ赤道線を横切るようにタイヤ赤道線を基準としたタイヤ幅方向の第1の側及び第2の側の半トレッド領域に延びて両端を有するセンターラグ溝と、
複数の前記センターラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝の間のタイヤ周方向の位置に設けられるラグ溝であって、前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端がタイヤ幅方向の両側にある接地端に開口し、タイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、前記センターラグ溝の端のタイヤ幅方向の位置に比べてタイヤ幅方向外側にあるショルダーラグ溝と、
前記半トレッド領域のそれぞれにおいて、前記センターラグ溝の端と、前記ショルダーラグ溝のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続してタイヤ周上全周にわたって波形状に形成され、前記ショルダーラグ溝より溝幅が狭い一対の周方向主溝と、
前記センターラグ溝と前記一対の周方向主溝によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されたセンターブロックと、
前記センターブロックの領域を分割するようにタイヤ赤道線に沿ってタイヤ周方向に延びる周方向副溝と、
を有し、
前記ベルト部は、
タイヤ径方向の最も内側に位置する第1ベルトからタイヤ径方向外側に向かって順番に、前記第1ベルトのベルト幅と異なるベルト幅を有する第2ベルト、第3ベルト、及び前記第3ベルトのベルト幅と異なるベルト幅を有する第4ベルトを少なくとも含み、前記第1ベルトと前記第2ベルト、及び前記第3ベルトと前記第4ベルトをそれぞれ対として、少なくとも2対以上を有する、ベルト層の積層構造を有し、
ベルト層の各対は、ベルト幅が広いベルト層のベルト幅W7に対する、ベルト幅が狭いベルト層のベルト幅W8の比W8/W7は、0.75以上0.90以下であり、
前記ベルト部の前記積層構造におけるタイヤ径方向最内側のベルトからタイヤ径方向外側向かって4番目以降のベルトのべルト幅は、いずれも、前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大幅WBと同じか、最大幅WBに比べて広い、ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【0008】
(形態2)
前記一対の周方向主溝それぞれにおいて、溝深さが部分的に浅くなった底上げ部を備える、形態1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0009】
(形態3)
前記底上げ部における溝深さをD2、前記トレッド部のタイヤ幅方向のトレッド幅をTとしたとき、D2/T<0.05である、形態2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0010】
(形態4)
前記周方向副溝は、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝間の領域において、溝の延在方向を変える溝曲がり部を少なくとも2つ備える、形態1〜3のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0011】
(形態5)
前記ベルト層の各対のうち、ベルト幅が広いベルト層の補強コードの配向方向は、いずれも、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の同じ側に向かって傾斜した方向である、形態1〜4のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0012】
(形態6)
前記ベルト部に含まれるベルトのうち隣接するいずれのベルト同士においても、ベルトの補強コードが、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の異なる側に向かって傾斜した交差層である、形態1〜5のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0013】
(形態7)
前記ベルト層の各対のうち、ベルト幅が広いベルト層のベルト幅に関して、タイヤ径方向外側に位置するベルト層ほど、ベルト幅が広い、形態1〜6のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0014】
(形態8)
前記ベルト部は、タイヤ径方向の最も内側の第1の対、前記第1の対のタイヤ径方向外側に積層した第2の対、及び前記第2の対のタイヤ径方向外側に積層した第3の対を含み、
前記第3の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W3に対する、前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大幅WBの比WB/W3は0.5以上0.8以下であり、ベルト幅W3は、前記第2の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W2より広い、形態1〜7のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0015】
(形態9)
前記ベルト部は、タイヤ径方向の最も内側の第1の対、前記第1の対のタイヤ径方向外側に積層した第2の対、及び前記第2の対のタイヤ径方向外側に積層した第3の対を含み、
前記第1の対のうちベルト幅の狭いベルト層のベルト幅W1は、前記センターブロックのタイヤ幅方向の最大幅WBに比べて狭い、形態1〜8のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0016】
(形態10)
前記周方向主溝に対応して前記センターブロックに角部が形成され、前記角部のなす角は、鈍角である、形態1〜9のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0017】
(形態11)
前記周方向主溝の溝幅および前記センターラグ溝の溝幅は7mm以上20mm以下の範囲にある、形態1〜10のいずれか一つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0018】
(形態12)
建設用車両または産業用車両に装着される、形態1〜11のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0019】
(形態13)
前記センターラグ溝は、前記第1の側においてタイヤ周方向の第3の側に突出するように屈曲又は湾曲する第1溝曲がり部と、前記第2の側においてタイヤ周方向の前記第3の側の反対側である第4の側に突出するように屈曲又は湾曲する第2溝曲がり部と、を備え、
前記センターラグ溝が前記周方向主溝と接続する前記第1の側の第1接続端部及び前記第2の側の第2接続端部は、前記周方向主溝のタイヤ幅方向の内側の先端と接続し、前記センターラグ溝の前記第2接続端部は、前記第1接続端部よりもタイヤ周方向の第3の側にあり、
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1接続端部と前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端とを結ぶ第1直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度、および、前記第2接続端部と前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端とを結ぶ第2直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、前記センターラグ溝の前記第1接続端部と前記第2接続端部を結ぶ第3直線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度よりも大きい、形態1〜12のいずれか1つに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0020】
(形態14)
前記センターラグ溝の溝幅方向の中心位置に関し、前記第1溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第3の側に突出する突出端と前記第1接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第1直線上、あるいは前記第1直線に対して前記第3の側にあり、前記第2溝曲がり部がタイヤ周方向の前記第4の側に突出する突出端と前記第2接続端部との間の前記センターラグ溝の部分は、前記第2直線上、あるいは前記第2直線に対して前記第4の側にある、形態13に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0021】
(形態15)
前記周方向副溝は、前記周方向主溝よりも溝深さが浅く、前記周方向副溝は、タイヤ赤道線に沿ってタイヤ周上全周にわたって形成され、
前記周方向副溝は、前記第1溝曲がり部と前記第2溝曲がり部を含む、前記第1溝曲がり部と前記第2溝曲がり部の間に挟まれたタイヤ幅方向の領域内で前記センターラグ溝を突き抜けて横切るように交差する、形態13または14に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0022】
(形態16)
前記周方向副溝には、タイヤ周方向の前記第3の側にすすむとき、タイヤ径方向外側からタイヤ径方向内側に向かって前記トレッドパターンを見たとき、時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲した第5溝曲がり部と、反時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲した第6溝曲がり部がタイヤ周上に設けられ、前記センターラグ溝のうち隣接するセンターラグ溝間にある前記周方向副溝の部分は、前記第5溝曲がり部の1つと前記第6溝曲がり部の1つが配置されている、形態15に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0023】
(形態17)
前記周方向副溝には、前記第5溝曲がり部および前記第6溝曲がり部のそれぞれがタイヤ周方向に沿って2つ連続して設けられ、連続して設けられる2つの第5溝曲がり部および2つの第6溝曲がり部のぞれぞれの間で、前記センターラグ溝が横切る、形態16に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【0024】
(形態18)
前記周方向副溝には、前記第5溝曲がり部の1つ、前記第5溝曲がり部の1つ、前記第6溝曲がり部の1つ、及び前記第6溝曲がり部の1つを、タイヤ周方向に沿って順番に配置した組を1組として、複数組がタイヤ周上に設けられ、
前記周方向副溝のうち、前記第5溝曲がり部の1つと前記第5溝曲がり部の1つの間の部分、及び前記第6溝曲がり部の1つと前記第6溝曲がり部の1つの間の部分は、タイヤ赤道線に平行に延びる直線溝である、形態16または17に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0025】
上述の重荷重用空気入りタイヤによれば、トラクション性能を向上させつつ、ベルト耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の重荷重用空気入りタイヤについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
本明細書においてタイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転中心軸方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転中心軸を中心にタイヤを回転させたときにできるトレッド表面の回転方向をいう。タイヤ径方向とは、タイヤ回転中心軸から放射状に向く方向をいう。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転中心軸から遠ざかる側をいい、タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転中心軸に近づく側をいう。また、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道線からタイヤ幅方向において遠ざかる側をいい、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に近づく側をいう。
また、本明細書でいう重荷重用タイヤとは、JATMA(日本自動車タイヤ協会規格) YEAR BOOK 2014のC章に記載されるタイヤの他に、D章に記載される1種(ダンプトラック、スクレーバ)用タイヤ、2種(グレーダ)用タイヤ、3種(ショベルローダ等)用タイヤ、4種(タイヤローラ)用タイヤ、モビールクレーン(トラッククレーン、ホイールクレーン)用タイヤ、あるいはTRA 2013 YEAR BOOKのSECTION 4 あるいは、section 6に記載される車両用タイヤをいう。
【0028】
図1は本実施形態の空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)の、タイヤ回転軸を通る平面で切断した断面図である。
図1中、タイヤ径方向はRで、タイヤ幅方向はWで方向を示している。
図2は、本実施形態のベルト部の各ベルトのベルト幅と、補強コードの配向方向を説明する図である。
【0029】
図1に示すタイヤ1は、トレッド部2、サイドウォール部3、ビード部4を有する。ビード部4は、タイヤ幅方向の両側に、一対のビードコア4aを有する。一対のビードコア4aの間には、カーカス層5が装架されている。カーカス層5の両端部は、ビードコア4aの周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層5は、一枚のカーカスプライで構成されてもよいし、複数枚のカーカスプライで構成されてもよい。
【0030】
トレッド部2におけるカーカス層5のタイヤ径方向外側にはベルト部6が設けられている。ベルト部6は、タイヤ径方向内側から外側に向かう方向に沿って、6枚のベルトが積層した積層構造を有している。タイヤ径方向内側から外側に向かって、第1の交差ベルト層6aと、第2の交差ベルト層6bと、第3の交差ベルト層6cと、がその順番で設けられている。第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6c、のそれぞれは、一対のベルトで構成されている。
図2に示すように、第1の交差ベルト層6aは、タイヤ径方向内側から外側に向かって第1ベルト61及び第2ベルト62を有し、第2の交差ベルト層6bは、タイヤ径方向内側から外側に向かって第3ベルト63及び第4ベルト64を有し、第3の交差ベルト層6cは、タイヤ径方向内側から外側に向かって第5ベルト65及び第6ベルト66を有する。第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6cのそれぞれにおける一対のベルトでは、補強コードがタイヤ周方向に対して、タイヤ幅方向の互いに異なる側に傾斜している。このように、ベルト部6は、第1ベルト61と第2ベルト62を対とし、第3ベルト63と第4ベルトを対として、2対以上有する。すなわち、ベルト部6は、タイヤ径方向の最も内側の第1ベルト61からタイヤ径方向外側に向かって順番に見て、タイヤ径方向に隣接したベルト幅の異なる2つのベルトを一対として、複数対(2対以上)の交差ベルト層を含み、交差ベルト層の積層構造を有している。
交差ベルト層の各対は、ベルト幅が広いベルトのベルト幅W7に対する、ベルト幅の狭いベルトのベルト幅W8の比W8/W7は、0.75以上0.90以下である。例えば、
図2に示すように、第1の交差ベルト層6aの例で説明すると、第1ベルト61のベルト幅がW7であり、第2ベルト62のベルト幅がW8に対応する。図示されないが、第2の交差ベルト層6bの場合、第3ベルト63のベルト幅がW7であり、第4ベルト64のベルト幅がW8に対応する。同様に、第3の交差ベルト層6cの場合、第5ベルト65のベルト幅がW7であり、第6ベルト66のベルト幅がW8に対応する。
【0031】
本実施形態の第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6cのそれぞれでは、タイヤ径方向内側に位置するベルトのベルト幅が、タイヤ径方向外側に位置するベルトのベルト幅に比べて広い。すなわち、第1ベルト61のベルト幅は第2ベルトのベルト幅62よりも広く、第3ベルト63のベルト幅は第4ベルト64のベルト幅よりも広く、第5ベルト65のベルト幅は第6ベルト66のベルト幅よりも広い。
しかし、本実施形態では、第1の交差ベルト層6a、第2の交差ベルト層6b、第3の交差ベルト層6cのそれぞれにおいて、タイヤ径方向内側に位置するベルトのベルト幅は、タイヤ径方向外側に位置するベルトのベルト幅に比べて必ずしも広くなくてもよい。交差ベルト層の各対における上記比W8/W7が、0.75以上0.90以下である限りにおいて、交差ベルト層の各対におけるベルト幅の広い、あるいは狭いについては特に制限されない。
また、複数対の交差ベルト層のうち、ベルト幅が広いベルトのベルト幅に関して、タイヤ径方向外側に位置するベルトほど、ベルト幅が広くなっている。第1の交差ベルト層6aのうちベルト幅の広い第1ベルト61のベルト幅と、第2の交差ベルト層6bのうちベルト幅の広い第3ベルト63のベルト幅と、第3の交差ベルト層6cのうちベルト幅の広い第5ベルト65のベルト幅に関して、第1ベルト61のベルト幅、第3ベルト63のベルト幅、第5ベルト65のベルト幅の順に広くなっている。本実施形態のベルト部6はこのようなベルト幅のベルトを有するが、必ずしも、第1ベルト61のベルト幅、第3ベルト63のベルト幅、第5ベルト65のベルト幅の順に広くなっていなくてもよい。
【0032】
第1の交差ベルト層6aの各ベルトの補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度(絶対値)について、最も低角度の補強コードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、8〜11度であることが、あるいは、9〜11度であることが、タイヤがタイヤ径方向に膨張しようとする変形をベルトが抑制する、いわゆるタガ効果を効果的に得ることができる点から好ましい。第2の交差ベルト層6bの各ベルトの補強コードの中で最も低角度の補強コードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、16〜19度であることが、あるいは、6〜8度であることが、タガ効果を効果的に得ることができる点から好ましい。また、第3の交差ベルト層16cの各ベルトの補強コードの中で最も低角度の補強コードの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、26〜29度であることが、あるいは17〜19度であることが好ましい。第2の交差ベルト層6bの各ベルトの補強コードにおける最も低い傾斜角度は、第3の交差ベルト層6cの各ベルトの補強コードにおける最も低い傾斜角度に比べて小さいことが好ましい。より具体的には、ベルト部6の各ベルトの補強コードの上記傾斜角度については、例えば第1ベルト61では8〜11度であることが好ましい。第2ベルト62では8〜11度であることが好ましい。第3ベルト63では25〜35度であることが好ましい。第4ベルト64では16〜19度であることが好ましい。第5ベルト65では29〜35度であることが好ましい。第6ベルト66では26〜29度であることが好ましい。
【0033】
(トレッドパターン)
図3は、タイヤ1のトレッド部2に設けられたトレッドパターンを平面展開したパターン図である。
図3中、タイヤ周方向はCで、タイヤ幅方向はWで方向を示している。
トレッド部2は、ショルダーラグ溝10と、一対の周方向主溝12と、センターラグ溝14と、センターブロック16と、周方向副溝20と、をトレッドパターンとして主に備える。
【0034】
ショルダーラグ溝10は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の第1の側(
図3中の紙面左側)と第2の側(
図3中の紙面右側)の半トレッド領域のそれぞれに、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。ショルダーラグ溝10は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の両側の半トレッド領域のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に延びて、タイヤ幅方向外側の端が、タイヤ幅方向の両側にあるトレッド端(接地端)18に開口する。トレッド端18は、
図1に示すように、トレッド部2とサイド部3の外形形状が接続する部分である。なお、上記接続する部分が丸まっている場合は、トレッド部2の外形形状をこの形状に沿って延長した延長線と、サイド部3の外形形状をこの形状に沿って延長した延長線との交点をいう。
タイヤ幅方向の両側に位置するショルダーラグ溝10において、一方の半トレッド領域における1つのショルダーラグ溝10のタイヤ周方向の位置は、他方の半トレッド領域にある隣接する2つのショルダーラグ溝のタイヤ周方向の位置の間にある。
さらに、ショルダーラグ溝10は、半トレッド領域のそれぞれにおいて、ショルダーラグ溝10が有するタイヤ幅方向内側の端のタイヤ幅方向の位置が、後述するセンターラグ溝14の端のタイヤ幅方向の位置に比べてタイヤ幅方向外側にあり、かつ、ショルダーラグ溝10は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。ショルダーラグ溝10は、タイヤ周方向において、センターラグ溝14のうちタイヤ周方向に隣りあう隣接センターラグ溝14の間のショルダー領域に1つずつ設けられている。これにより、後述する周方向主溝12は、センターラグ溝14の端とショルダーラグ溝10のタイヤ幅方向の内側の端を交互に接続して波形状を成す。
【0035】
一対の周方向主溝12は、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の第1の側及び第2の側の半トレッド領域に設けられている。周方向主溝12のそれぞれは、半トレッド領域のそれぞれにおいて、後述するセンターラグ溝14の端と、ショルダーラグ溝10のタイヤ幅方向内側の端を交互に接続してタイヤ周上全周にわたって波形状に形成されている。一対の周方向主溝12の溝幅は、ショルダーラグ溝10の溝幅より狭い。溝が波形状であるとは、溝がタイヤ幅方向に蛇行する形状をいい、溝の波形状を成すタイヤ幅方向外側あるいは内側に対して凸状に曲がる主溝曲がり部は、角形状であってもよく、丸まった湾曲形状であってもよい。湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。また、上記主溝曲がり部以外の部分は、直線形状であっても湾曲形状であってもよい。主溝曲がり部と主溝曲がり部以外の部分を湾曲形状にする場合、2つの湾曲形状は同じ曲率半径の湾曲形状にしてもよい。また、タイヤ周方向に隣り合う2つの主溝曲がり部のうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の主溝曲がり部とし、他方を、湾曲形状の主溝がり部としてもよい。
【0036】
具体的には、周方向主溝12は、タイヤ幅方向外側及び内側に凸状を成して曲がる主溝曲がり部11をタイヤ周上に複数有し、タイヤ幅方向に波形状に蛇行しながらタイヤ周方向に延びる。一対の周方向主溝12それぞれは、主溝曲がり部11のうちタイヤ幅方向外側に凸状を成して曲がる第3溝曲がり部11aでショルダーラグ溝10と接続する。また、一対の周方向主溝12それぞれは、主溝曲がり部11のうちタイヤ幅方向内側に凸状を成して曲がる第4溝曲がり部11bでセンターラグ溝14と接続する。第4溝曲がり部11bのタイヤ周方向の位置は、反対側の半トレッド領域の第4溝曲がり部11bに対して位置ずれしている。したがって、半トレッド領域のそれぞれの第4溝曲がり部11b間を接続するセンターラグ溝14は、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びている
なお、一対の周方向主溝12の波形状は、いずれも所定の波長を有する波形状であり、この2つの波形状のタイヤ周方向における位相はお互いに略半ピッチずれている。すなわち、一対の周方向主溝12のうち一方の周方向主溝12の第3溝曲がり部11aのタイヤ周方向の位置は、他方の周方向主溝12の、タイヤ周方向に隣り合う第3溝曲がり部11aのタイヤ周方向における位置の間にある。一対の周方向主溝12のうち一方の周方向主溝12の第3溝曲がり部11aと、他方の周方向主溝12の第4溝曲がり部11bとがタイヤ周方向の略同じ位置に設けられている。
【0037】
センターラグ溝14は、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。センターラグ溝14は、タイヤ赤道線CLを横切るようにタイヤ幅方向に延び、かつ、タイヤ赤道線CLを基準としたタイヤ幅方向の第1の側及び第2の側の半トレッド領域に延びて両端を有する。センターラグ溝14の両端は、一対の周方向主溝12それぞれにおける主溝曲がり部11のうちのタイヤ幅方向の内側に凸状を成して曲がる第4溝曲がり部11bと接続している。センターラグ溝14は、タイヤ赤道線CLと交差する。
【0038】
センターラグ溝14には、屈曲形状の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bが設けられている。本実施形態では、センターラグ溝14に第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bが設けられるが、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bは設けられなくてもよい。
図4は、センターラグ溝14の屈曲形状の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを拡大して示す図である。第1溝曲がり部14aは、一方の半トレッド領域に設けられ、第2溝曲がり部14bは、他方の半トレッド領域に設けられている。なお、本実施形態では、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bは屈曲形状であるが、湾曲形状であってもよい。湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。
センターラグ溝14は、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを有することで、タイヤ周方向に波形状に変位する。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bの形状は、例えばこの第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bによりつくられるセンターラグ溝14の曲がる角度θ(
図4参照)が鈍角になる形状である。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bは、タイヤ赤道線CLのタイヤ幅方向両側に、タイヤ赤道線CLから同じ距離離間した位置に設けられることが好ましい。センターラグ溝14のうち、第1溝曲がり部14aと第2溝曲がり部14bとの間の部分にタイヤ赤道線CLが通過するように設けられ、また、この部分において、タイヤ幅方向に対するセンターラグ溝14の傾斜の向きが、上記部分以外の部分における傾斜の向きと異なっている。
【0039】
本実施形態のセンターラグ溝14は、一対の周方向主溝12の間を、直線状に延びる直線部と第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを含む構成を有するが、上記直線部に代えて湾曲形状の溝を用いてもよい。また、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bの一方を、屈曲形状、他方を湾曲形状としてもよい。第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bを湾曲形状とし、上記直線部に代えて湾曲形状の溝を用いる場合、2つの湾曲形状は、同じ曲率半径の湾曲形状であってもよい。また、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bのうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の溝曲がり部とし、他方を湾曲形状の溝曲がり部としてもよい。センターラグ溝14の形状は、波形状にタイヤ周方向に変位しながらタイヤ幅方向に延びる溝形状であるとよい。
【0040】
図5は、センターブロック14の形状を定めるセンターラグ溝14の好ましい形状の例を説明する図である。
図5に示すように、センターラグ溝14の第1溝曲がり部14aは、タイヤ赤道線CLを基準として第1の側(
図4中の紙面左側)においてタイヤ周方向の第3の側(
図3中の紙面上方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲する。センターラグ溝14の第2溝曲がり部14bは、タイヤ赤道線CLを基準として第2の側(
図4中の紙面右側)においてタイヤ周方向の第4の側(
図3中の紙面下方向の側)に突出するように屈曲又は湾曲する。第4の側は、第3の側に対して反対側である。ここで、センターラグ溝14が周方向主溝12と接続する第1の側の第1接続端部14c及びセンターラグ溝14が周方向主溝12と接続する第2の側の第2接続端部14dは、周方向主溝12のタイヤ幅方向の内側の先端、すなわち第4溝曲がり部11b,11bに該当する。センターラグ溝14がタイヤ幅方向に対して傾斜しているため、センターラグ溝14の第2接続端部14dは、第1接続端部14cよりもタイヤ周方向の第3の側(
図3中の紙面上方向の側)にある。
このとき、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第1溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側(
図3中の上方向の側)に突出する突出端と第1接続端部14cとを結ぶ第1直線14eのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)、および、第2溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとを結ぶ第2直線14fのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)は、センターラグ溝14の第1接続端部14cと第2接続端部14dを結ぶ第3直線14gのタイヤ幅方向に対する傾斜角度(0度より大きく90度より小さい傾斜角度)よりも大きいことが好ましい。
【0041】
本実施形態のより好ましい形態では、
図3,5に示すように、センターラグ溝14の溝幅方向の中心位置に関し、第1溝曲がり部14aがタイヤ周方向の第3の側に突出する突出端と第1接続端部14cとの間のセンターラグ溝14の部分は、第1直線14e上、あるいは第1直線14eに対して第3の側にあり、第2溝曲がり部14bがタイヤ周方向の第4の側に突出する突出端と第2接続端部14dとの間のセンターラグ溝14の部分は、第2直線14f上、あるいは第2直線14fに対して第4の側にある。
【0042】
このようなセンターブロック16が形成されることにより、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。すなわち、センターブロック16は、タイヤ幅方向に対して一方向に傾斜したセンターラグ溝14によって形状が規定された異方性形状であるので、タイヤ接地面からセンターブロック16が路面から離れて蹴りだされるとき、センターブロック16は、異方性形状によって時計回転あるいは反時計回転にねじれて変形する。このとき、周方向主溝12の溝幅が狭いので、センターブロック16は、周方向周溝12を挟んでタイヤ幅方向に隣り合うショルダーブロックと、第3溝曲がり部11aと第4溝曲がり部11bにおいて噛み合って一体として機能する他、センターラグ溝14を挟んでタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック16同士が、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bにおいて噛み合って一体として機能するので、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック16のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック16のねじれを抑制でき、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック16の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
【0043】
さらに、センターブロック16が路面からはなれて蹴りだされるとき、センターブロック16の各部分が路面から受けるタイヤ周方向のせん断力によって上記各部分が変形し倒れ込もうとする。このとき、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bがセンターラグ溝14に設けられているので、センターブロック16の第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14b周りの陸部が互いに噛み合ってタイヤ周方向に隣接する2つのブロックが1つのブロックとして機能して反力を発生する。したがって、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bをセンターラグ溝14に設けることにより、センターブロック16のトレッド剛性を高くすることができる。センターブロック16のトレッド剛性を高くすることにより、センターブロック16の倒れこみを抑制できるので、センターラグ溝14のタイヤ周方向の両側におけるセンターブロック16の局部的な領域の摩耗を抑えることができる。
【0044】
センターブロック16は、センターラグ溝14と一対の周方向主溝12によって画されてタイヤ周方向に一列に複数形成されている。センターブロック16には、タイヤ赤道線(タイヤセンターライン)CLが通過している。
【0045】
周方向副溝20は、センターブロック16の領域を分割するようにタイヤ赤道線CLに沿ってタイヤ周方向に延びる溝である。周方向副溝20は、タイヤ周方向に隣接する2つのセンターラグ溝14に接続される。周方向副溝20は、周方向主溝12の最大溝深さに比べて溝深さが浅い。
【0046】
周方向副溝20は、
図3に示すように、センターラグ溝14からタイヤ周方向に平行に延びる直線部と、直線部と接続した、溝の延びる方向を変える屈曲形状の第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bと、第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bの間を延びるタイヤ周方向に傾斜した傾斜部と、を有する。
図4に示されるように、周方向副溝20に設けられる第6溝曲がり部21bの形状は、第6溝曲がり部21bによりつくられる周方向副溝20の曲がる角度φ(
図4参照)が鈍角になる形状である。第5溝曲がり部21aによりつくられる周方向副溝20の曲がる角度も鈍角になる形状である。
周方向副溝20には第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bが設けられているが、第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bは必ずしも設けられなくてもよい。
【0047】
図4に示す周方向副溝20には、第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bが設けられているが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。この場合、周方向副溝20における上記直線部は、タイヤ周方向に平行に延びなくてもよい。また、
図4に示すように、周方向副溝20のうち、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bの間を結ぶ部分において、タイヤ赤道線CLが通過することが好ましい。
【0048】
また、周方向副溝20は、センターラグ溝14の第1溝曲がり部14aと、このセンターラグ溝14に対してタイヤ周方向に隣接したセンターラグ溝14の第2溝曲がり部14bとの間を接続するように設けられることが好ましい。第2溝曲がり部14bは、第1溝曲がり部14aが設けられる半トレッド領域と異なる半トレッド領域に設けられた溝曲がり部である。しかも、センターラグ溝14に接続する周方向副溝20は、第1溝曲がり部14a及び第2溝曲がり部14bのいずれか一方において、タイヤ周方向の両側(
図4中の紙面の下側及び上側)から接続されることが好ましい。このような周方向副溝20の接続形態にするためには、タイヤ周方向に隣接する2つのセンターラグ溝14間を接続する周方向副溝20における第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bにおいて、周方向副溝20の延在方向が、タイヤ周方向に沿って進むとき、時計回りあるいは反時計回りのように異なる方向に曲がることが好ましい。
【0049】
すなわち、周方向副溝20の好ましい形態は、タイヤ赤道線CLに沿ってタイヤ周上全周にわたって形成され、周方向副溝20は、第1溝曲がり部14aと第2溝曲がり部14bを含む、第1溝曲がり部14aと第2溝曲がり部14bの間に挟まれたタイヤ幅方向の領域内でセンターラグ溝14を突き抜けて横切るように交差する。
このとき、第5溝曲がり21aは、タイヤ周方向の第3の側にすすむとき、タイヤ径方向外側からタイヤ径方向内側に向かってトレッドパターンを見たとき、時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲している。第6溝曲がり部21bは、タイヤ周方向の第3の側にすすむとき、タイヤ径方向外側からタイヤ径方向内側に向かってトレッドパターンを見たとき、反時計回転方向に向きを変えるように、湾曲あるいは屈曲している。この第5溝曲がり部21aと第6溝曲がり部21bが、タイヤ周上に設けられ、センターラグ溝14のうち隣接するセンターラグ溝14間にある周方向副溝20の部分は、第5溝曲がり部21aの1つと第6溝曲がり部21bの1つが配置されている。
このとき、
図3に示すように、周方向副溝20には、第5溝曲がり部21aおよび第6溝曲がり部21bのそれぞれがタイヤ周方向に沿って2つ連続して設けられ、連続して設けられる2つの第5溝曲がり部21aおよび2つの第6溝曲がり部21bのぞれぞれの間で、センターラグ溝14が横切ることが好ましい。
【0050】
さらに、周方向副溝14には、第5溝曲がり部21aの1つ、第5溝曲がり部21aの1つ、第6溝曲がり部21bの1つ、及び第6溝曲がり部21bの1つを、タイヤ周方向に沿って順番に配置した組を1組として、複数組がタイヤ周上に設けられる。このとき、周方向副溝20のうち、第5溝曲がり部21aの1つと第5溝曲がり部21aの1つの間の部分、及び第6溝曲がり部21bの1つと第6溝曲がり部21bの1つの間の部分は、タイヤ赤道線CLに平行に延びる直線溝であることが好ましい。
【0051】
なお、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bの形状は、屈曲形状のほかに、湾曲形状であってもよい。湾曲形状には、曲率半径を定めて溝の角部に接するゴムブロックの角部を丸くした形状、すなわち、ゴムブロックの角部を面取りしてつくられる溝の湾曲形状も含まれる。2つの第2の溝曲がり部21の一方を、屈曲形状、他方を湾曲形状としてもよい。
周方向副溝20の上記直線部はタイヤ周方向に平行に延びる溝形状を有するが、この溝形状に替えて、上記直線部を湾曲形状にしてもよい。第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bを湾曲形状にし、上記直線部を湾曲形状にする場合、2つの湾曲形状は、同じ曲率半径を有する湾曲形状にしてもよい。また、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bのうち、一方を、直線形状と湾曲形状の溝が接続して形成される屈曲形状の溝曲がり部とし、他方を、湾曲形状の溝曲がり部としてもよい。また、周方向副溝20は、上述したように、直線部と、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bと、傾斜部とを有するが、この形状に替えて、波形状にタイヤ周方向に変位しながらタイヤ周方向に延びる溝形状であってもよい。
【0052】
上述したように、一対の周方向主溝12の溝幅は、ショルダーラグ溝10の溝幅より狭い。このため、従来に比べて、センターブロック16のタイヤ幅方向の最大幅WB(
図3参照)を大きくすることができ、この結果、従来に比べてトラクション性能を向上できる。一方、センターブロック16の最大幅WBを大きくすることにより、センターブロック16のエッジ近傍には、大きな接地圧力が作用する。このため、センターブロック16のタイヤ幅方向のエッジとタイヤ幅方向の同じ位置に存在するベルト部6のベルトの端近傍は、タイヤ径方向内側に向かう大きな力を受け易く、ベルトの端近傍ではベルトエッジ歪が大きくなり、その結果、ベルトエッジ部でセパレーションが生じ易くなる。このため、本実施形態では、ベルト部6の構成を以下のように定める。
【0053】
すなわち、上述したベルト部6の積層構造におけるタイヤ径方向最内側のベルトからタイヤ径方向外側向かって4番目以降のベルト、
図2に示すベルト構造の場合、第4ベルト64、第5ベルト65、第6ベルト66のべルト幅は、いずれも、センターブロック16のタイヤ幅方向の最大幅WBと同じか、最大幅WBに比べて広くなっている。このようなベルトの構成と、ベルトに関する上述した比W8/W7を、0.75以上0.90以下とする構成により、後述する実施例からわかるように、ベルトエッジ部のセパレーションを抑えることができる。比W8/W7が0.9を超えて1に近づく場合、ベルト部6における各ベルトのエッジが近づき過ぎて、隣接するベルトエッジ歪が大きくなる。一方、比W8/W7が0.75未満の場合、タイヤ周方向のベルト剛性が低く、ベルトエッジ歪が大きくなる。
【0054】
タイヤ1のトレッドパターンでは、周方向主溝12を波形状としたので、センターブロック16のエッジに路面の凹凸に起因して発生する応力を分散させることができ、また上記エッジの部分がカットの起点となり難い。
また、センターブロック16の領域に、周方向副溝20を設けることにより、従来に比べて広い最大幅WBを持つセンターブロック16のエンベロープ性、すなわち路面の凹凸をトレッドゴムの変形で吸収する能力を向上させることができる。これより、センターブロック16の領域のタイヤ径方向内側に位置するベルトのセンター部分にかかる力を抑制することができる。
【0055】
また、トレッドパターンの好ましい形態として、一対の周方向主溝12それぞれにおいて、溝深さが部分的に浅くなった底上げ部12aを備えることが好ましい。
図6は、底上げ部12aの一例を示す図である。底上げ部12aを周方向主溝12に設けることにより、センターブロック16のトレッド剛性を適正にしてトラクション性能に有効なセンターブロック16の倒れこみの変形を抑えることができる。さらにセンターブロック16の倒れこみの変形を抑えることができるので、ベルト部6に過度な力が作用せず、ベルト部6の端近傍のベルトエッジ歪を抑えることができる。底上げ部12aは、
図6に示すように、第3溝曲がり部11a、第4溝曲がり部11bとの間をタイヤ周方向に対して傾斜して延びる部分に設けられているが、周方向主溝12における第3溝曲がり部11a、第4溝曲がり部11bを含む領域に設けられてもよい。周方向主溝12には、溝深さが最も深い一定の最大深さ領域があり、この領域から、溝深さが浅くなった部分が底上げ部12aである。なお、周方向主溝12の最も深い溝深さは、ショルダーラグ溝10の溝深さと同じであることが好ましい。
【0056】
底上げ部12aの形態は、上記最大深さ領域から段差をもって不連続に溝深さが浅くなる形態でもよいし、上記最大深さ領域から徐々に溝深さが浅くなる形態でもよく、一度溝深さが浅くなった後、最大深さ領域の溝深さよりも浅い範囲内で溝深さが深くなる形態でもよい。このように、底上げ部12aは、一定の浅い溝深さであってもよいが、一定の浅い溝深さである必要はなく、溝深さは変動してもよい。
【0057】
このとき、底上げ部12aにおける最も浅い部分の溝深さD2(
図6参照)及びトレッド部2のトレッド幅T(
図3参照)に関して、比D2/Tは、0.05未満であることが好ましい。これにより、センターブロック16の倒れこみの変形を大きく抑えることができるので、ベルトに過度な力が作用せず、ベルトの端近傍のベルトエッジ歪を大きく抑えることができる。比D2/Tが0.05以上である場合、底上げ部12aの溝深さがトレッド幅T対比深くなるので、センターブロック16のブロックの倒れこみの変形を抑えることは難しくなり、ベルトの端近傍のベルトエッジ歪を十分に抑えることは難しくなる。比D2/Tはより好ましくは0.04以下であり、例えば0.03である。比D2/Tの下限は特に制限はないが、例えば0.01である。また、比D2/Tが0.05以上である場合、底上げ部12aの溝深さがトレッド幅T対比深くなるので、センターブロック16の底上げ部周りのブロック剛性と、センターブロック16の中央部(底上げ部を有する溝のエッジから離れた内側部分)のブロック剛性との間の差が大きくなり、偏摩耗が発生しやすくなる。トレッド幅Tは、タイヤ幅方向の両側のトレッド端18間の湾曲するトレッド部2の外形形状に沿ったペリフェリ長をいう。
【0058】
また、本実施形態では、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bを周方向副溝20に設けることにより、第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bがなく周方向副溝20がタイヤ周方向に直線状に延びる場合に比べて、センターブロック16が路面から受ける力が、タイヤ幅方向の同じ位置に集中することを抑制できる。その結果、センターブロック16の領域のタイヤ径方向内側に位置するベルト部6のセンター部分にかかる力を分散させることができる。
【0059】
本実施形態では、
図2に示す補強コードの配向方向を示す矢印のように、ベルト部6の複数対のベルトのうち、ベルト幅が広いベルトの補強コードの配向方向は、いずれも、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の同じ側に向かって傾斜した方向であることが好ましい。この補強コードの配向方向の設定によって、第1ベルト61と第3ベルト63の端近傍の間で、及び第3ベルト63と第5ベルト65の端近傍の間で、タイヤ径方向に隣接しても、補強コード同士は、タイヤ幅方向の同じ側に向かって傾斜しているので、ベルト層間歪は生じ難い。その結果、第1ベルト61と第3ベルト63間、及び第3ベルト63と第5ベルト65間のベルト端近傍におけるセパレーションを抑制することができる。
【0060】
さらに、
図2に示すように、ベルト部6に含まれるベルトのうち隣接するいずれのベルト同士においても、ベルトの補強コードが、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の異なる側に向かって傾斜した交差層であることが好ましい。このような補強コードの設定により、タイヤ周方向のベルト剛性を高めることができる。この結果、すべての隣接するベルトに、ベルトがタイヤ周方向に延びてタイヤ径方向にタイヤが膨張しようとする変形を抑制する、ベルトのタガ効果を高めることができる。
【0061】
また、
図2に示すように、ベルト部6の複数対のベルトのうち、ベルト幅が広いベルトのベルト幅に関して、タイヤ径方向外側に位置するベルトほど、ベルト幅が広いことが好ましい。
図2に示す例では、第1ベルト61、第3ベルト63、及び第5ベルト65の順番で、ベルト幅が広くなっていることが好ましい。これにより、タイヤ周方向のベルト剛性がタイヤ径方向外側に行くほど、徐々に大きくなるので、ベルト層間歪を分散させることができ、ベルトの層間セパレーションを抑制できる。
【0062】
図2に示す例のように、ベルト部6が、タイヤ径方向の最も内側の第1の対である第1の交差ベルト層6a、第1の交差ベルト層6aのタイヤ径方向外側に積層した第2の対である第2の交差ベルト層6b、及び第2の交差ベルト層6bのタイヤ径方向外側に積層した第3の対である第3の交差ベルト層6cを含む場合、第3の交差ベルト層6cのうちベルト幅の狭い第6ベルト66のベルト幅W3(
図2参照)に対する、センターブロック16の最大幅WBの比WB/W3は0.5以上0.8以下であり、ベルト幅W3は、第2の交差ベルト層6bのうちベルト幅の狭いベルト64のベルト幅W2(
図2参照)より広い、ことが好ましい。比WB/W3は0.5以上0.8以下とし、ベルト幅W3をベルト幅W2より広くすることにより、トレッド部2の路面と接地する接地面の領域において、タイヤのベルトに掛かるタイヤ径方向の力を均一にすることができ、ベルトエッジ歪を低下させることができ、ベルトエッジ部のセパレーションを抑制することができる。比WB/W3は0.55以上0.75以下にすることがより好ましい。
【0063】
さらに、タイヤ径方向の最も内側の第1の対である第1の交差ベルト層6aのうちベルト幅の狭い第2ベルト62のベルト幅W1は、センターブロック16の最大幅WBに比べて狭いことが好ましい。
【0064】
本実施形態で、周方向主溝12に対応してセンターブロック16に角部が形成される場合、センターブロック16における、周方向主溝12に接する頂部はすべて鈍角の角部であることが好ましい。上記角部を鈍角にすることにより、路面から受ける力が角部に集中することを抑えることができ、トレッド部2の磨耗のみならず、タイヤの耐久性を向上させることができる。
また、一対の周方向主溝12及びセンターラグ溝14の溝幅は、いずれも7〜20mmであることが好ましい。このような溝幅を用いることにより、トレッド部2のエンベロープ性を向上させ、ベルトのセンター部分にかかる力を抑制することができる。
なお、タイヤ1は、建設用車両または産業用車両に装着されることが好ましい。建設用車両または産業用車両は、ダンプトラック、スクレーバ、グレーダ、ショベルローダ、タイヤローラ、ホイールクレーン、トラッククレーン、あるいは、COMPACTOR、 EARTHMOVER、GRADER、LOADER AND DOZER等の車両を含む。
【0065】
(実施例、従来例、比較例)
本実施形態のタイヤの効果を調べるために、
図1に示す構造を有するが、ベルト幅及びトレッドパターンの異なるタイヤを種々試作し、ベルトのエッジのセパレーションを調べた。試作したタイヤは、46/90R57である。リムサイズ29.00−6.0(TRA規定リム)に装着し、700kPa(TRA規定空気圧)、負荷荷重617.81kN(TRA規格荷重)を試験条件として、セパレーション試験を行った。
セパレーション試験は、室内ドラムで速度15km/時とし、ベルトのセパレーションが発生するまでタイヤを連続して走行させる試験である。セパレーションは、ベルトエッジのセパレーションが発生するまでのタイヤの走行時間で評価した。下記表では、上記走行時間を、従来例の走行時間を基準(指数100)とする指数として、ベルトの層間セパレーションの評価結果を表した。指数が高いほど、タイヤ走行時間が長く、セパレーションが生じ難いタイヤであることを意味する。
【0066】
試作したタイヤは、従来例と、比較例1〜6と、実施例1〜19である。
図7は、従来例のトレッドパターンを示す図である。
図7に示すトレッドパターンは、ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116と、を備える。ショルダーラグ溝110と、一対の周方向主溝112と、センターラグ溝114と、センターブロック116は、それぞれ、ショルダーラグ溝10と、一対の周方向主溝12と、センターラグ溝14と、センターブロック16と同様な構成を有するが、ショルダーラグ溝110の溝幅と周方向主溝112の溝幅は同じである。周方向主溝112の溝幅がショルダーラグ溝110と同じであることから、周方向主溝12のように、ショルダーラグ溝10の溝幅より狭い周方向主溝ではないので、下記表2では、波形状の周方向主溝は「無し」、としている。
比較例1〜6及び実施例1〜19は、
図2に示すトレッドパターンを用いた。
下記表1は、従来例、比較例1〜6、及び実施例1〜19のベルトの補強コードの配向方向のタイヤ周方向に対する傾斜角度、及びベルト幅を示している。補強コードの配向方向の傾斜角度における「+」は、タイヤ周方向を上下方向にみて、タイヤ周方向に対して、右上方向に補強コードが傾斜(配向)することを意味し、傾斜角度における「−」は、タイヤ周方向に対して、左上方向に補強コードが傾斜(配向)することを意味する。ベルト幅は、実施例1に用いたトレッドパターンのセンターブロック16の最大幅WBに対する%表示で示している。
比較例1〜6及び実施例1〜19では、
図2に示すトレッドパターンを用い、トレッド幅T及びセンターブロック16の最大幅WBのそれぞれを同じ寸法に固定した。
実施例1〜19のうちいくつかについての比W8/W7の値は、厳密には0.75〜0.90の範囲から僅かにはずれる例があるが、小数点3桁目を四捨五入することにより、比W8/W7の値は、0.75〜0.90の範囲に含まれる。例えば、実施例1の比W8/W7の値は、0.748(=140%/187%)であり、厳密には0.75未満であるが、小数3桁目を四捨五入して0.75となる。実施例3の比W8/W7の値は、0.903(=130%/144%)であり、厳密には0.90より大きいが、小数3桁目を四捨五入して0.90となる。
【0068】
このようなベルト構造の仕様において、下記表2〜5に示すようにトレッドパターンを種々変更してベルトのセパレーションの評価をした。
【0073】
比較例1〜6及び実施例1〜4より、周方向主溝及び周方向副溝があり、ベルト枚数が4枚以上、すなわち、2対以上あって、比W8/W7が0.75〜0.9であり、かつ、タイヤ径方向内側から4番目以降のベルトのバルト幅が最大幅WBと同じか、最大幅WBに比べて広いことが、ベルトの層間セパレーションを抑える上で有効であることがわかる。
また、実施例5〜8より、周方向主溝12に底上げ部12aを設けることがベルトの層間セパレーションを抑える点から好ましく、さらに、そのとき、D2/Tは0.5未満、好ましくは0.48以下あることが好ましいことがわかる。
また、実施例8,9より、周方向副溝20に第5溝曲がり部21a及び第6溝曲がり部21bを設けることが、ベルトの層間セパレーションを抑える点から好ましいことがわかる。
さらに、実施例9,10より、複数のベルト対のうち、ベルト幅の広いベルトの補強コードの配向方向がいずれも同じであること、さらに、タイヤ径方向に隣接するベルトと交差層を成すこと(ベルトの補強コードの配向方向が、タイヤ周方向からタイヤ幅方向の異なる向きに向かって傾斜していること)が、ベルトの層間セパレーションを抑える点から好ましいことがわかる。
また、実施例11〜14より、比WB/W3は0.5〜0.8であり、ベルト幅W3がベルト幅W2より広いことが、ベルトの層間セパレーションを抑える点から好ましいことがわかる。
さらに、実施例15〜19より、周方向主溝12及びセンターラグ溝14の溝幅は、7〜20mmであることがベルトの層間セパレーションを抑える点から好ましいことがわかる。
以上より、本実施形態の効果は明らかである。
【0074】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。