特許第6229738号(P6229738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229738
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】送信装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20171106BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H03F3/217
   H03F3/24
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-559624(P2015-559624)
(86)(22)【出願日】2014年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2014005478
(87)【国際公開番号】WO2015114702
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-15816(P2014-15816)
(32)【優先日】2014年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田和 憲明
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−077741(JP,A)
【文献】 特開2014−003582(JP,A)
【文献】 特表2006−512004(JP,A)
【文献】 特開平06−021991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0164273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45
H04B 1/02− 1/04
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成するベースバンド信号生成手段と、
第1搬送波及び当該第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をそれぞれパルス波形の第1及び第2パルス信号に変換して出力する第1及び第2パルス信号生成手段と、
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号をそれぞれ前記第1及び前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1及び第2ΔΣ変調信号として出力する第1及び第2ΔΣ変調手段と、
前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成する第1乗算手段と、
前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成する第2乗算手段と、
前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を増幅するスイッチング増幅手段と、
前記スイッチング増幅手段に入力される、又は、前記スイッチング増幅手段から出力された、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成する合成手段と、を備えた、送信装置。
【請求項2】
前記スイッチング増幅手段は、
前記第1及び前記第2RFパルス変調信号をそれぞれ増幅する第1及び第2スイッチング増幅手段を有し、
前記合成手段は、前記第1及び前記第2スイッチング増幅手段のそれぞれの出力を合成する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記合成手段は、前記スイッチング増幅手段に入力される前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成し、
前記スイッチング増幅手段は、
前記合成手段により合成された前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を増幅するスイッチング増幅手段を有する、請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成するベースバンド信号生成手段と、
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第1中間周波信号を生成するIF信号生成手段と、
第1搬送波をパルス波形の第1パルス信号に変換して出力する第1パルス信号生成手段と、
前記第1中間周波信号を前記第1パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1ΔΣ変調信号として出力する第1ΔΣ変調手段と、
前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成する第1乗算手段と、
前記第1RFパルス変調信号を増幅する第1スイッチング増幅手段と、を備えた送信装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング増幅手段の出力のうち所望の帯域を通過させるバンドパスフィルタをさらに備えた請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記IF信号生成手段は、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて生成された中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の一方を、前記第1中間周波信号として生成する、請求項4又は5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記IF信号生成手段は、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第2中間周波信号をさらに生成し、
前記送信装置は、
前記第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をパルス波形の第2パルス信号に変換して出力する第2パルス信号生成手段と、
前記第2中間周波信号を前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第2ΔΣ変調信号として出力する第2ΔΣ変調手段と、
前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成する第2乗算手段と、
前記第2RFパルス変調信号を増幅する第2スイッチング増幅手段と、
前記第1及び前記第2スイッチング増幅手段のそれぞれの出力を合成する合成手段と、を備えた、請求項4に記載の送信装置。
【請求項8】
前記IF信号生成手段は、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて生成された中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の一方を、前記第1中間周波信号として生成し、かつ、前記中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の他方を、前記第2中間周波信号として生成する、請求項7に記載の送信装置。
【請求項9】
ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成し、
第1搬送波及び当該第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をそれぞれパルス波形の第1及び第2パルス信号に変換して出力し、
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号をそれぞれ前記第1及び前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1及び第2ΔΣ変調信号として出力し、
前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成し、
前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成し、
スイッチング増幅手段を用いて前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を増幅し、
前記スイッチング増幅手段に入力される、又は、前記スイッチング増幅手段から出力された、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成する、送信装置の制御方法。
【請求項10】
前記スイッチング増幅手段に設けられた第1及び第2スイッチング増幅手段を用いて、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号をそれぞれ増幅し、
前記第1及び前記第2スイッチング増幅手段のそれぞれの出力を合成する、請求項9に記載の送信装置の制御方法。
【請求項11】
前記スイッチング増幅手段に入力される前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成し、
合成された前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を前記スイッチング増幅手段を用いて増幅する、請求項9に記載の送信装置の制御方法。
【請求項12】
ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成し、
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第1中間周波信号を生成し、
第1搬送波をパルス波形の第1パルス信号に変換して出力し、
前記第1中間周波信号を前記第1パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1ΔΣ変調信号として出力し、
前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成し、
第1スイッチング増幅手段を用いて前記第1RFパルス変調信号を増幅する、送信装置の制御方法。
【請求項13】
前記第1スイッチング増幅手段の出力のうち所望の帯域をバンドパスフィルタを用いて通過させる、請求項12に記載の送信装置の制御方法。
【請求項14】
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて生成された中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の一方を、前記第1中間周波信号として生成する、請求項12又は13に記載の送信装置の制御方法。
【請求項15】
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第2中間周波信号を生成し、
前記第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をパルス波形の第2パルス信号に変換して出力し、
前記第2中間周波信号を前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第2ΔΣ変調信号として出力し、
前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成し、
第2スイッチング増幅手段を用いて前記第2RFパルス変調信号を増幅し、
前記第1及び前記第2スイッチング増幅手段のそれぞれの出力を合成する、請求項12に記載の送信装置の制御方法。
【請求項16】
前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて生成された中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の一方を、前記第1中間周波信号として生成し、かつ、前記中間周波信号の同相成分及び直交位相成分の他方を、前記第2中間周波信号として生成する、請求項15に記載の送信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)等の無線通信では、周波数利用効率が高く、かつ、ピーク電力対平均電力比(Peak to Average Ratio;以下、PAPRと称す)の大きいOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)などの変調方式が採用されている。
【0003】
従来の無線送信装置には、信号増幅器として、一般的にAB級増幅器が使用されている。前述のようにPAPRの大きな変調信号をAB級増幅器で増幅するためには、出力信号の線形性を維持するために、十分なバックオフが必要になる。しかしながら、AB級増幅器の電力効率は、出力飽和時に最も高くなり、バックオフが大きくなるほど低下する。そのため、PAPRの大きな変調信号を高い電力効率で増幅することが難しいという課題がある。
【0004】
そこで、高い電力効率が得られる送信装置として、ΔΣ変調器とスイッチング増幅器とを組み合わせた構成を持つ送信装置が注目されている。この送信装置は、例えば、多ビットのベースバンド信号を、ΔΣ変調器を用いて1ビットのパルス波形のΔΣ変調信号に変換する。そして、このΔΣ変調信号と搬送波とを乗算器にて乗ずることにより、RF帯域にアップコンバートされたRFパルス変調信号を生成する。
【0005】
1ビットのRFパルス変調信号の振幅は理想的には2値のみで表されるため、スイッチング増幅器は、非線形特性により歪みを発生させることなく、RFパルス変調信号を増幅することができる。さらに、RFパルス変調信号の振幅はPAPRが大きくても変わらず2値のみで表されるため、スイッチング増幅器は、高い電力効率でRFパルス変調信号を増幅することができる。
【0006】
ΔΣ変調器を用いて多ビットのベースバンド信号を1ビットのΔΣ変調信号に変換した場合、ΔΣ変調信号には1ビット化に伴う量子化雑音が付与される。一般的な信号の量子化では、周波数領域において一様に分布した雑音が付与される。しかし、ΔΣ変調器を用いた場合、その伝達特性に基づくノイズシェーピング効果によって、低周波数側の量子化雑音が高周波側に移動させられるため、送信信号帯域においては一般的な量子化に比べ高い信号対雑音比を実現できる。信号帯域外の雑音成分は、例えば、後段にフィルタを設けることによって除去する。このノイズシェーピング特性は、ΔΣ変調器の次数とオーバーサンプリング比(Over Sampling Ratio;以下、OSRと称す)によって決まる。OSRが低い場合、ノイズシェーピング特性が十分でなくなるため、送信装置に要求される無線特性が満たされない場合がある。
【0007】
例えば、非特許文献1によれば、IEEE 802.11a規格のOFDM変調方式において、必要な信号対雑音比を得るには、ベースバンド信号のサンプリング周波数の32倍や64倍のクロック周波数でΔΣ変調器を動作させる必要がある。具体的には、サンプリング周波数が20MHzの場合、640MHzや1.28GHzのクロック周波数でΔΣ変調器を動作させる必要がある。このようなGHzオーダーの高速なクロック周波数で動作するΔΣ変調器は、FPGAで実現することは困難であるため、デジタルRF回路によって構築される。
【0008】
ΔΣ変調器とスイッチング増幅器とを組み合わせた構成を持つ送信装置が、関連技術として特許文献1乃至4に開示されている。しかし、これら関連技術では、ΔΣ変調器に供給されるクロック信号と搬送波とが非同期である。仮にクロック信号と搬送波との基準信号源が共通であっても、伝達経路の差異や、正弦波か矩形波かなどによるデューティ比の差、により、クロック信号と搬送波とは非同期になる。
【0009】
クロック信号と搬送波とが非同期の場合、ΔΣ変調器の出力(ΔΣ変調信号)と搬送波との信号遷移タイミングのずれにより、所望のパルス幅の信号が得られない問題が発生する。ここでの信号遷移とは、振幅の“H”から“L”への遷移や、“L”から“H”への遷移を言う。搬送波周波数がクロック周波数よりも十分に大きい場合は、搬送波の信号遷移頻度が、ΔΣ変調信号のそれよりも十分に高く、信号遷移タイミングのずれは無視できる。しかし、搬送波周波数とクロック周波数とが同程度の場合、この影響は無視できず、変調精度の低下やスイッチング増幅器の電力効率の低下などを招く。
【0010】
UTRA(Universal Terrestrial Radio Access)や、E−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)における無線周波数は、700MHz〜3.5GHzであり、ΔΣ変調器のクロック周波数と同程度である。そのため、搬送波とクロック信号とを同期させて上記問題を防ぐ必要があった。
【0011】
このような問題に対する解決策が、特許文献5に開示されている。この送信装置は、まず、同相成分と直交位相成分とで表されるベースバンド信号を、振幅信号と、振幅が一定の位相信号と、に変換する。次に、振幅信号をΔΣ変調器を用いてΔΣ変調信号に変換するとともに、位相信号を従来のアナログ直交変調器等を用いてRF信号に変換する。次に、RF信号をパルス位相信号生成器を用いてパルス信号に変換し、当該パルス信号とΔΣ変調信号とを乗ずることによってRFパルス変調信号を生成する。このとき、パルス位相信号生成器にて生成されたパルス信号は、ΔΣ変調器に供給されてクロック信号としても使用される。それにより、当該パルス信号とΔΣ変調信号とを同期させることができるため、同期ずれによる信号品質の劣化を防ぐことができる。
【0012】
しかしながら、このような送信装置を作成するためには、ΔΣ変調器に加え、位相信号をRF信号に変換するため、アナログ直交変調器等が必要となる。アナログ直交変調器は、従来のAB級増幅器を備えた送信装置に一般的に用いられる変調器である。つまり、このような送信装置を作成するためには、従来の送信装置に必要な構成要素に加えて、ΔΣ変調に係る構成要素が必要となるため、装置が複雑化する(換言すると、回路規模が増大する)という問題があった。
【0013】
さらに、位相信号は振幅が一定であるため、FIRフィルタなどによって、送信信号帯域外の信号を抑圧することができない。そのため、アナログ直交変調器には、通常の位相振幅変調された送信信号を生成するよりも広い信号生成帯域幅を持った性能が要求される。これは、上記の装置の複雑さと合わせて、装置全体の消費電力を増加させる。
【0014】
また、ΔΣ変調信号と上記パルス信号とは同期できているが、ΔΣ変調器に入力されるベースバンド信号の振幅信号と上記パルス信号とは同期できていない。そのため、振幅信号の遷移時間中の無効データをサンプリングしてしまい、送信信号歪みが増大するという課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−086983号公報
【特許文献2】特開2011−077741号公報
【特許文献3】特開2011−018994号公報
【特許文献4】特開2002−057732号公報
【特許文献5】国際公開第2011/078120号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】E.M. Umali, Y. Toyama and Y. Yamao, "Power Spectral Analysis of the Envelope Pulse-Width Modulation (EPWM) Transmitter for High Efficiency Amplification of OFDM Signals", Proc. IEEE VTC Spring, May 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、特許文献5に開示された構成では、ΔΣ変調器及び混合器に入力されるパルス信号を得るために、振幅一定のベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号QをRF信号に変調する変調器(IQモジュレータ)が必要である。そのため、特許文献5に開示された構成では、回路規模が増大してしまうという問題があった。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかにする。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、回路規模の増大を抑制することが可能な送信装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一実施の形態によれば、送信装置は、ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成するベースバンド信号生成部と、第1搬送波及び当該第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をそれぞれパルス波形の第1及び第2パルス信号に変換して出力する第1及び第2パルス信号生成部と、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号をそれぞれ前記第1及び前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1及び第2ΔΣ変調信号として出力する第1及び第2ΔΣ変調器と、前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成する第1乗算器と、前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成する第2乗算器と、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を増幅するスイッチング増幅部と、前記スイッチング増幅部に入力される、又は、前記スイッチング増幅部から出力された、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成する合成器と、を備える。
【0020】
他の実施の形態によれば、送信装置は、ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成するベースバンド信号生成部と、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第1中間周波信号を生成するIF信号生成部と、第1搬送波をパルス波形の第1パルス信号に変換して出力する第1パルス信号生成部と、前記第1中間周波信号を前記第1パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1ΔΣ変調信号として出力する第1ΔΣ変調器と、前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成する第1乗算器と、前記第1RFパルス変調信号を増幅する第1スイッチング増幅器と、を備える。
【0021】
一実施の形態によれば、送信装置の制御方法は、ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成し、第1搬送波及び当該第1搬送波と90度位相の異なる第2搬送波をそれぞれパルス波形の第1及び第2パルス信号に変換して出力し、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号をそれぞれ前記第1及び前記第2パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1及び第2ΔΣ変調信号として出力し、前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成し、前記第2ΔΣ変調信号と前記第2パルス信号とを乗算して第2RFパルス変調信号を生成し、スイッチング増幅部を用いて前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を増幅し、前記スイッチング増幅部に入力される、又は、前記スイッチング増幅部から出力された、前記第1及び前記第2RFパルス変調信号を合成する。
【0022】
他の実施の形態によれば、送信装置の制御方法は、ベースバンド信号の同相成分信号及び直交位相成分信号を生成し、前記同相成分信号及び前記直交位相成分信号に基づいて第1中間周波信号を生成し、第1搬送波をパルス波形の第1パルス信号に変換して出力し、前記第1中間周波信号を前記第1パルス信号に同期してΔΣ変調し、第1ΔΣ変調信号として出力し、前記第1ΔΣ変調信号と前記第1パルス信号とを乗算して第1RFパルス変調信号を生成し、第1スイッチング増幅器を用いて前記第1RFパルス変調信号を増幅する。
【発明の効果】
【0023】
前記一実施の形態によれば、回路規模の増大を抑制することが可能な送信装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態1に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る送信装置の具体的構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る送信装置の一部の動作を示すタイミングチャートである。
図4】実施の形態1に係る送信装置の第1変形例を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係る送信装置の第2変形例を示すブロック図である。
図6】実施の形態2に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
図7】実施の形態2に係る送信装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0027】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0028】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。図2は、図1に示す送信装置のより具体的な構成例を示すブロック図である。また、図3は、図2に示す送信装置の一部の動作を示すタイミングチャートである。本実施の形態に係る送信装置は、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号Qをそれぞれ90度位相の異なるパルス信号P1,P2に同期してΔΣ変調した後、それぞれパルス信号P1,P2と乗算してRFパルス変調信号R1,R2を生成する。その後、RFパルス変調信号R1,R2を、スイッチング増幅部により増幅し、かつ、合成器により合成することで送信信号を得る。それにより、本実施の形態に係る送信装置は、ΔΣ変調器及び乗算器に入力されるパルス信号P1,P2を得るために、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号QをRF信号に変調する変調器(IQモジュレータ)を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制するとともに、消費電力を低減することができる。以下、図2及び図3を参照しつつ、具体的に説明する。
【0029】
図2に示す送信装置1は、例えば、携帯電話や無線LAN等の通信機器における送信装置であって、RFパルス変調信号生成部10と、スイッチング増幅部20と、バンドパスフィルタ13,14と、合成器15と、を備える。また、RFパルス変調信号生成部10は、デジタルベースバンド信号生成部(ベースバンド信号生成部)101と、パルス信号生成器(第1パルス信号生成部)102と、パルス信号生成器(第2パルス信号生成部)103、ΔΣ変調器(第1ΔΣ変調器)104と、ΔΣ変調器(第2ΔΣ変調器)105と、乗算器(第1乗算器)106と、乗算器(第2乗算器)107と、発振器108及び移相器109と、を少なくとも備える。
【0030】
(デジタルベースバンド信号生成部101)
デジタルベースバンド信号生成部101は、ベースバンド信号SBBの同相成分信号I及び直交位相成分信号Qを生成する。なお、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号Qは、多値の状態を取るデジタル信号である。
【0031】
(発振器108及び移相器109)
発振器108は、周波数fcの発振信号を生成する。移相器109は、発振器108の発振信号と同相の搬送波CW1を出力するとともに、搬送波CW1と90度位相の異なる搬送波CW2を出力する。
【0032】
(パルス信号生成器102,103)
パルス信号生成器102は、図3にも示すように、周波数fcの搬送波(第1搬送波)CW1をパルス波形のパルス信号(第1パルス信号)P1に変換して出力する。パルス信号生成器103は、搬送波CW1と90度位相の異なる搬送波(第2搬送波)CW2をパルス波形のパルス信号(第2パルス信号)P2に変換して出力する。
【0033】
パルス信号生成器102は、例えば、搬送波CW1が0より大きい場合にHレベル(値“1”)を示し、搬送波CW1が0未満の場合にLレベル(値“−1”)を示す、コンパレータを備える。同じく、パルス信号生成器103は、例えば、搬送波CW2が0より大きい場合にHレベル(値“1”)を示し、搬送波CW2が0未満の場合にLレベル(値“−1”)を示す、コンパレータを備える。
【0034】
(ΔΣ変調器104,105)
ΔΣ変調器104は、ベースバンド信号の同相成分信号Iをパルス信号P1に同期してΔΣ変調し、ΔΣ変調信号(第1ΔΣ変調信号)M1として出力する。ΔΣ変調器105は、ベースバンド信号の直交位相成分信号Qをパルス信号P2に同期してΔΣ変調し、ΔΣ変調信号(第2ΔΣ変調信号)M2として出力する。
【0035】
図3を参照しても分かるように、ΔΣ変調器104は、パルス信号P1の立ち上がりに同期して多値の同相成分信号Iをサンプリングし、1,−1の2値のΔΣ変調信号M1に変換して出力する。同様にして、ΔΣ変調器105は、パルス信号P2の立ち上がりに同期して多値の直交位相成分信号Qをサンプリングし、1,−1の2値のΔΣ変調信号M2に変換して出力する。
【0036】
(乗算器106,107)
乗算器106は、ΔΣ変調器104から出力されたΔΣ変調信号M1とパルス信号P1とを乗算してRF帯にアップコンバートされたRFパルス変調信号(第1RFパルス変調信号)R1を出力する。乗算器107は、ΔΣ変調器105から出力されたΔΣ変調信号M2とパルス信号P2とを乗算してRF帯にアップコンバートされたRFパルス変調信号(第2RFパルス変調信号)R2を出力する。
【0037】
図3を参照しても分かるように、乗算器106は、ΔΣ変調信号M1の値が“1”の場合において、パルス信号P1の値が“1”のときに“1”を、パルス信号P1の値が“−1”のときに“−1”を出力する。また、乗算器106は、ΔΣ変調信号M1の値が“−1”の場合において、パルス信号P1の値が“1”のときに“−1”を、パルス信号P1の値が“−1”の場合に“1”を出力する。乗算器107におけるΔΣ変調信号M2及びパルス信号P2とRFパルス変調信号R2との関係についても、乗算器106におけるΔΣ変調信号M1及びパルス信号P1とRFパルス変調信号R1との関係と同様である。
【0038】
パルス信号P1及びP2は、上記のように、乗算器106,107の搬送波信号として使われるとともに、ΔΣ変調器104,105のクロック信号としても使用される。このように、搬送波信号とクロック信号とを共通にすることで、ΔΣ変調信号M1,M2と搬送波信号との間の同期ずれを防ぐことができる。
【0039】
(スイッチング増幅部20)
スイッチング増幅部20は、スイッチング増幅器(第1スイッチング増幅器)11と、スイッチング増幅器(第2スイッチング増幅器)12と、を有する。
【0040】
スイッチング増幅器11,12は、例えばD級増幅器やE級増幅器等であって、高い電力効率を有する電力増幅器である。スイッチング増幅器11,12は、それぞれRFパルス変調信号R1,R2を、そのパルス波形を維持しつつ電力増幅する。
【0041】
(バンドパスフィルタ13,14)
バンドパスフィルタ13は、スイッチング増幅器11の出力のうち所望の周波数帯域を通過させる。バンドパスフィルタ14は、スイッチング増幅器12の出力のうち所望の周波数帯域を通過させる。
【0042】
バンドパスフィルタ13,14の主な目的は、スイッチング増幅器11,12で増幅されたRFパルス変調信号R1,R2に含まれる、ΔΣ変調器104,105によりノイズシェービングされた量子化雑音、を反射し、信号増幅の電力効率を向上させることである。ノイズシェーピングされた量子化雑音は信号近傍には少ないことから、バンドパスフィルタ13,14を用いて信号帯域近傍まで量子化雑音を除去しなくても良い。無線通信規格などにより、送信信号近傍の雑音成分を除去する必要がある場合は、合成器15の後段に設けたデュプレクサ(不図示)などにより除去することもできる。
【0043】
(合成器15)
合成器15は、バンドパスフィルタ13,14を通過した、スイッチング増幅器11,12のそれぞれの出力を合成して送信信号Doutとして出力する。
【0044】
即ち、送信装置1は、RFパルス変調信号生成部10の送信信号(RFパルス変調信号R1,R2)を増幅し合成した後、送信信号Doutとして出力する。この送信信号Doutは、アンテナ(不図示)を介して外部に無線送信される。
【0045】
(計算式)
続いて、図2に示す送信装置1の送信信号Doutを計算式を用いて説明する。
【0046】
まず、ベースバンド信号SBBは、xを同相成分信号I、yを直交位相成分信号Q、iを虚数単位とすると、以下の式(1)のように表される。
【0047】
【数1】
【0048】
次に、搬送波CW1,CW2は以下の式(2)及び式(3)のように表される。なお、ωは角速度、tは時間を表し、振幅は1とする。
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【0051】
式(1)及び式(2)より、RFパルス変調信号R1はΔΣ変調による2値化を略して以下の式(4)のように表される。また、式(1)及び式(3)より、RFパルス変調信号R2はΔΣ変調による2値化を略して以下の式(5)のように表される。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】
したがって、送信信号Doutは、以下の式(6)のように表される。
【0055】
【数6】
【0056】
計算式を見ても、送信装置1が所望の送信信号を生成していることがわかる。
【0057】
このように、本実施の形態に係る送信装置は、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号Qをそれぞれ90度位相の異なるパルス信号P1,P2に同期してΔΣ変調した後、それぞれパルス信号P1,P2と乗算してRFパルス変調信号R1,R2を生成している。その後、RFパルス変調信号R1,R2を、スイッチング増幅部により増幅し、かつ、合成器により合成することで送信信号を得る。それにより、本実施の形態に係る送信装置は、ΔΣ変調器及び混合器に入力されるパルス位相信号を得るために、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号QをRF信号に変調する変調器(IQモジュレータ)を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力を低減することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る送信装置は、ΔΣ変調器及び乗算器に対して搬送波と同じ周波数のパルス信号(P1,P2)をそれぞれサンプリングクロック及び搬送波パルス信号として入力すればよいため、搬送波の周波数が比較的高い場合でもサンプリングレートを低く保って正常に動作することができる。サンプリングレートを低く保つことができるため、スイッチング増幅器の電力効率を向上させることができる。また、ΔΣ変調器及び乗算器に対して共通のパルス信号(P1,P2)が入力されるため、ΔΣ変調器と乗算器との間で同期をとることができる。
【0059】
なお、特許文献5に開示された構成では、振幅信号と位相信号との同期ズレにより、送信信号の品質が劣化してしまう可能性がある。それに対し、本実施の形態に係る送信装置では、このような問題は、原理的に発生しない。
【0060】
(送信装置1の第1変形例)
図4は、図2に示す送信装置1の第1変形例を送信装置1aとして示すブロック図である。図4に示す送信装置1aは、合成器15の前段にバンドパスフィルタ13,14を備える代わりに、合成器15の後段にバンドパスフィルタ16を備える。図4に示す送信装置1aのその他の構成については、図2に示す送信装置1と同様であるため、その説明を省略する。
【0061】
本構成おいても、図2に示す送信装置1と同等の効果を奏することができる。本構成では、図2に示す送信装置1に比べ、バンドパスフィルタが1つになることから、回路の簡略化や費用の低減が可能である。
【0062】
(送信装置1の第2変形例)
図5は、図2に示す送信装置1の第2変形例を送信装置1bとして示すブロック図である。図5に示す送信装置1bは、合成器15の前段にスイッチング増幅部20を備える代わりに、合成器15の後段にスイッチング増幅部20を備える。また、図5に示す送信装置1bは、合成器15の前段にバンドパスフィルタ13,14を備える代わりに、スイッチング増幅部20の後段にバンドパスフィルタ16を備える。スイッチング増幅部20は、合成器15によって合成されたRFパルス変調信号R1,R2を増幅するスイッチング増幅器17を有する。図5に示す送信装置1bのその他の構成については、図2に示す送信装置1と同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
本構成おいても、図2に示す送信装置1と同等の効果を奏することができる。本構成では、図2に示す送信装置1に比べ、スイッチング増幅器及びバンドパスフィルタがそれぞれ1つになることから、回路の簡略化や費用の低減が可能である。
【0064】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。図6に示す送信装置1cは、RFパルス変調信号生成部10cと、スイッチング増幅器(第1スイッチング増幅器)11と、バンドパスフィルタ13と、を備える。RFパルス変調信号生成部10cは、デジタルベースバンド信号生成部(ベースバンド信号生成部)101と、IF信号生成部110と、パルス信号生成器(第1パルス信号生成部)102と、ΔΣ変調器104と、乗算器(第1乗算器)106と、発振器108と、を少なくとも備える。
【0065】
IF信号生成部110は、デジタルベースバンド信号生成部101により生成されたベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号Qに基づいて、中間周波信号IF1を生成する。中間周波信号IF1としては、ベースバンド信号から求まる中間周波信号の同相成分及び直交位相成分のうち何れか一方が用いられる。ここでは、同相成分が中間周波信号IF1として用いられることとする。このとき、中間周波信号IF1は、以下の式(7)のように表すことができる。
【0066】
【数7】
【0067】
ただし、ωIFを中間周波信号IF1の中心周波数に相当する角速度、tを時間、xを同相成分信号I、yを直交位相成分信号Qとする。
【0068】
パルス信号生成器102は、発振器108により生成された搬送波CW1を、パルス波形のパルス信号(第1パルス信号)P1に変換して出力する。
【0069】
ΔΣ変調器104は、中間周波信号IF1をパルス信号P1に同期してΔΣ変調し、ΔΣ変調信号(第1ΔΣ変調信号)M3として出力する。
【0070】
乗算器106は、ΔΣ変調器104から出力されたΔΣ変調信号M3とパルス信号P1とを乗算して、RF帯にアップコンバートされたRFパルス変調信号(第1RFパルス変調信号)R3を出力する。
【0071】
スイッチング増幅器11は、RFパルス変調信号R3を、そのパルス波形を維持しつつ電力増幅する。
【0072】
バンドパスフィルタ13は、スイッチング増幅器11の出力のうち所望の周波数帯を通過させて、送信信号Doutとして出力する。ここで、スイッチング増幅器11の出力には、目的の信号と搬送波周波数を挟んで反対の周波数に、同程度の電力を持つイメージ信号が存在する。そのため、バンドパスフィルタ13は、当該イメージ信号の周波数帯を除去する必要がある。
【0073】
即ち、送信装置1cは、RFパルス変調信号生成部10cの送信信号(RFパルス変調信号R3)を増幅した後、狭帯域のバンドパスフィルタ13を介して、送信信号Doutとして出力する。この送信信号Doutは、アンテナ(不図示)を介して外部に無線送信される。
【0074】
このように、本実施の形態に係る送信装置は、実施の形態1に係る送信装置の場合と同様に、ΔΣ変調器及び混合器に入力されるパルス位相信号を得るために、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号QをRF信号に変調する変調器(IQモジュレータ)を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力を低減すること等ができる。つまり、本実施の形態に係る送信装置は、実施の形態1の場合と同等の効果を奏することができる。
【0075】
(送信装置1cの変形例)
図7は、図6に示す送信装置1cの変形例を送信装置1dとして示すブロック図である。図7に示す送信装置1dは、RFパルス変調信号生成部10dと、スイッチング増幅器11と、スイッチング増幅器(第2スイッチング増幅器)12と、バンドパスフィルタ13,14と、合成器15と、を備える。RFパルス変調信号生成部10dは、デジタルベースバンド信号生成部(ベースバンド信号生成部)101と、IF信号生成部111と、パルス信号生成器102と、パルス信号生成器(第2パルス信号生成部)103と、ΔΣ変調器104と、ΔΣ変調器105と、乗算器106と、乗算器(第2乗算器)107と、発振器108と、移相器109と、を少なくとも備える。
【0076】
IF信号生成部111は、デジタルベースバンド信号生成部101により生成されたベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号Qに基づいて、中間周波信号IF1及び中間周波信号IF2を生成する。ここでは、ベースバンド信号から求まる中間周波信号の同相成分及び直交位相成分のうち、同相成分が中間周波信号IF1として用いられ、直交位相成分が中間周波信号IF2として用いられることとする。このとき、中間周波信号IF2は、以下の式(8)のように表すことができる。
【0077】
【数8】
【0078】
なお、ベースバンド信号から求まる中間周波信号の同相成分及び直交位相成分のうち、直交位相成分が中間周波信号IF1として用いられる場合、同相成分が中間周波信号IF2として用いられることとなる。
【0079】
パルス信号生成器103は、搬送波CW1と90度位相の異なる搬送波CW2を、パルス波形のパルス信号(第2パルス信号)P2に変換して出力する。
【0080】
ΔΣ変調器105は、中間周波信号IF2をパルス信号P2に同期してΔΣ変調し、ΔΣ変調信号(第2ΔΣ変調信号)M4として出力する。
【0081】
乗算器107は、ΔΣ変調器105から出力されたΔΣ変調信号M4とパルス信号P2とを乗算して、RF帯にアップコンバートされたRFパルス変調信号(第2RFパルス変調信号)R4を出力する。
【0082】
スイッチング増幅器12は、RFパルス変調信号R4を、そのパルス波形を維持しつつ電力増幅する。
【0083】
バンドパスフィルタ14は、スイッチング増幅器12の出力のうち所望の周波数帯を通過させる。
【0084】
合成器15は、バンドパスフィルタ13,14を通過した、スイッチング増幅器11,12のそれぞれの出力を合成して送信信号Doutとして出力する。このとき、上記したイメージ信号は打ち消される。したがって、イメージ信号除去のためにバンドパスフィルタ13,14を狭帯域化する必要はない。
【0085】
図7に示す送信装置1dのその他の構成及び動作については、図6に示す送信装置1cと同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
本構成においても、図6に示す送信装置1cと同等の効果を奏することができる。
【0087】
以上のように、上記実施の形態1,2に係る送信装置は、ΔΣ変調器及び混合器に入力されるパルス位相信号を得るために、ベースバンド信号の同相成分信号I及び直交位相成分信号QをRF信号に変調する変調器(IQモジュレータ)を備える必要がないため、回路規模の増大を抑制することができる。また、消費電力を低減することができる。
【0088】
また、上記実施の形態1,2に係る送信装置は、ΔΣ変調器及び乗算器に対して搬送波と同じ周波数のパルス信号(P1,P2)をそれぞれサンプリングクロック及び搬送波パルス信号として入力すればよいため、搬送波の周波数が比較的高い場合でもサンプリングレートを低く保って正常に動作することができる。また、サンプリングレートを低く保つことができるため、スイッチング増幅器の電力効率を向上させることができる。また、ΔΣ変調器及び乗算器に対して共通のパルス信号(P1,P2)が入力されるため、ΔΣ変調器と乗算器との間で同期をとることができる。
【0089】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0090】
この出願は、2014年1月30日に出願された日本出願特願2014−15816を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0091】
1,1a〜1d 送信装置
10,10c,10d RFパルス変調信号生成部
11,12,17 スイッチング増幅器
13,14,16 バンドパスフィルタ
15 合成器
20 スイッチング増幅部
101 デジタルベースバンド信号生成部
102,103 パルス信号生成器
104 ΔΣ変調器
105 ΔΣ変調器
106,107乗算器
108 発振器
109 移相器
110,111 IF信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7