特許第6229817号(P6229817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229817
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】駆動伝達装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20171106BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20171106BHJP
   B41J 11/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B65H3/06 350C
   B65H5/06 L
   B41J11/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-511513(P2017-511513)
(86)(22)【出願日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2016057579
(87)【国際公開番号】WO2016163203
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-77794(P2015-77794)
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】三木 雅文
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140927(JP,A)
【文献】 特開平4−209924(JP,A)
【文献】 特開2001−72284(JP,A)
【文献】 特開2014−61998(JP,A)
【文献】 米国特許第5498123(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0225048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
F16D 25/00−39/00
F16H 1/00− 1/26
F16D 48/00−48/12
F16D 41/00−47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの駆動力を複数の駆動列を介してローラーに伝達する駆動伝達装置であって、
制御部と、
ワンウェイクラッチを有する第1駆動列と、
前記第1駆動列とは別の駆動列であって、電磁クラッチを有する第2駆動列と
を備え、
前記第1駆動列は、前記モーターからの駆動力を受け、前記第2駆動列に前記駆動力を伝達し、
前記第2駆動列は、前記第1駆動列からの前記駆動力を前記ローラーに伝達し、
前記制御部は、前記電磁クラッチのオンオフを切り換えることによって、前記ローラーの回転速度を切り換え、
前記第1駆動列には、
第1の歯数の歯が外周に形成された第1ギアと、
前記第1の歯数とは異なる第2の歯数の歯が外周に形成された第2ギアとが、前記ワンウェイクラッチを介して回転軸に連結され、
前記第2駆動列には、
前記第1ギアと噛み合い、第3の歯数の歯が外周に形成された第3ギアと、
前記第3の歯数とは異なる第4の歯数の歯が外周に形成された第4ギアとが、前記電磁クラッチを介して回転軸に連結される、駆動伝達装置。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチは、
前記第1ギアの回転速度が前記第1駆動列の回転軸の回転速度以上であるときに限って、駆動力を前記第1ギアから前記第1駆動列の回転軸に伝達し、
前記第1駆動列の回転軸の回転速度が前記第2ギアの回転速度以上であるときに限って、駆動力を前記第1駆動列の回転軸から前記第2ギアに伝達する、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチは、
前記第1ギアの所定方向の回転速度が前記第1駆動列の回転軸の前記所定方向の回転速度以上であるときに限って、駆動力を前記第1ギアから前記第1駆動列の回転軸に伝達し、
前記第1駆動列の回転軸の前記所定方向の回転速度が前記第2ギアの前記所定方向の回転速度以上であるときに限って、駆動力を前記第1駆動列の回転軸から前記第2ギアに伝達する、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記モーターの駆動軸は、前記第1ギア又は前記第2ギアと噛み合い、
前記ローラーの回転軸は、前記第3ギア又は前記第4ギアと噛み合う、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記モーターの駆動軸は、前記第1ギア又は前記第2ギアと噛み合い、
前記ローラーの回転軸は、前記第3ギア又は前記第4ギアと少なくとも1つのギアを介して噛み合う、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記モーターの駆動軸は、前記第1ギア及び前記第2ギアの一方のギアと噛み合い、
前記ローラーの回転軸は、前記第1ギア及び前記第2ギアの他方のギアと噛み合う、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記モーターの駆動軸は、前記第1ギア及び前記第2ギアのうち、一方のギアと噛み合い、
前記ローラーの回転軸は、前記第1ギア及び前記第2ギアのうち、他方のギアと少なくとも1つのギアを介して噛み合う、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記第1ギアの前記第3ギアに対するギア比は、前記第4ギアの前記第2ギアに対するギア比と略一致する、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項10】
前記第4の歯数は前記第1の歯数と略一致し、前記第3の歯数は前記第2の歯数と略一致する、請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項11】
記録用紙に画像を形成する画像形成部と、
請求項1に記載の駆動伝達装置と
を備える、画像形成装置。
【請求項12】
前記ローラーは、給紙カセットに積層された最上部の記録用紙を供給するピップアップローラー、記録用紙を搬送する搬送ローラー、感光体ドラム、及び、定着ローラーの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、例えば用紙を搬送する搬送ローラーの搬送速度を変更することが知られている。
【0003】
例えば、2つの中間ローラークラッチの断続動作を互いに逆に行うことで、搬送速度を2段階に切り換える用紙搬送装置が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、第1の中間ローラークラッチは、第1の中間ローラーに対するモーターからの動力の伝達を断続する。第2の中間ローラークラッチは、第2の中間ローラーに対するモーターからの動力の伝達を断続する。そして、2つの中間ローラークラッチの断続動作を互いに逆に行うことで、増速機構を介しない等速駆動と、増速機構を介した増速駆動とを切り換えることができる。
【0004】
特許文献1に記載の用紙搬送装置によれば、ローラーの回転軸の端部近傍に大きな配置スペースを確保する必要がなく、配置自由度を向上することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−132505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の用紙搬送装置では、2つのクラッチを配置する必要があり、且つ、各クラッチに対応する動力伝達機構を設ける必要があるため、コストを低減する余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で出力軸の回転速度を2段階に切り換えることの可能な駆動伝達装置、及び、画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の駆動伝達装置は、モーターの回転を複数の駆動列を介して1つのローラーに伝達する駆動伝達装置であって、制御部、第1駆動列、及び、第2駆動列を備える。前記第1駆動列は、ワンウェイクラッチを有する。前記第2駆動列は、前記第1駆動列とは別の駆動列であって、電動クラッチを有する。前記第1駆動列は、前記モーターからの駆動力を受け、前記第2駆動列に前記駆動力を伝達する。前記第2駆動列は、前記第1駆動列からの前記駆動力を前記ローラーに伝達する。前記制御部は、前記電磁クラッチのオンオフを切り換えることによって、前記ローラーの回転速度を切り換える。
【0009】
本発明の画像形成装置は、画像形成部、及び、前記駆動伝達装置を備える。前記画像形成部は、記録用紙に画像を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の駆動伝達装置、及び、画像形成装置によれば、簡素な構成で出力軸の回転速度を2段階に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。
図2図1に示す給紙カセットの構成を示す側面図である。
図3図2に示すピックアップローラーを駆動する駆動伝達装置を示す斜視図である。
図4図3に示す駆動伝達装置のギア配置を示す側面図である。
図5図3に示す駆動伝達装置において、電磁クラッチがオンのときの動作を示す側面図である。
図6図3に示す駆動伝達装置において、電磁クラッチがオフのときの動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面(図1図6)を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0013】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置100について説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、本実施形態においては、複合機である。画像形成装置100は、スキャナー、複写機、プリンター、及び、ファクシミリの各機能を有する。画像形成装置100は、画像形成ユニット1、画像読取ユニット2、原稿搬送ユニット3、操作パネル4、制御部5、及び、電源スイッチSWを備える。
【0014】
画像形成ユニット1は、記録用紙Pに画像を形成する。画像読取ユニット2は、原稿上に形成された画像を読み取る。原稿搬送ユニット3は、読み取り対象の原稿を搬送する。操作パネル4は、タッチパネル41を備え、画像形成装置100に対するユーザーからの操作を受け付ける。制御部5は、画像形成装置100全体の動作を制御する。電源スイッチSWは、画像形成装置100の電源をオンオフするスイッチである。
【0015】
画像形成ユニット1は、給紙ユニット10、搬送ローラー対13、レジストローラー対14、画像形成部15、定着器16、排出ローラー対17、及び、排出トレイ18を備える。給紙ユニット10は、4個の給紙カセット11、及び、4個のピックアップローラー12を備える。ピックアップローラー12は、給紙カセット11から記録用紙Pを1枚ずつ繰り出す。ピックアップローラー12によって繰り出された記録用紙Pは、搬送ローラー対13及びレジストローラー対14によって画像形成部15まで搬送される。
【0016】
画像形成部15は、給紙カセット11から搬送されてきた記録用紙Pに画像を形成する。画像形成部15は、感光体ドラム151、帯電部152、露光部153、現像部154、転写ローラー155、及び、クリーニング部156を備える。感光体ドラム151は、円筒形の回転体であり、その周面には、静電潜像が形成される。帯電部152は、感光体ドラム151を所定の電位に帯電させる。露光部153は、画像データに基づきレーザー光を照射して感光体ドラム151を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム151上に形成する。なお、画像データとしては、例えば、画像読取ユニット2が原稿を読み取って生成された画像データ、図略の通信ネットワークを介して外部のコンピューターから受信した画像データが用いられる。
【0017】
現像部154は、感光体ドラム151上に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、感光体ドラム151上にトナー像を形成する。転写ローラー155は、感光体ドラム151上のトナー像を記録用紙Pに転写する。クリーニング部156は、転写後に感光体ドラム151に残留している残留トナーを除去する。画像形成部15によって画像が形成された記録用紙Pは、定着器16まで搬送される。
【0018】
定着器16は、記録用紙Pに形成された画像を記録用紙Pに熱定着させる。定着器16は、発熱体を内蔵する加熱ローラーと、加圧ローラーとを備える。加熱ローラー及び加圧ローラーは、双方が圧接されることによって、定着ニップ部を形成する。記録用紙Pが上記定着ニップ部を通過することによって、記録用紙Pの表面に付着したトナーが溶融及び加熱され、トナー像が記録用紙Pに定着される。トナー像が定着された記録用紙Pは、排出ローラー対17によって排出トレイ18へ排出される。
【0019】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及び、RAM(Random Access Memory)を備える。上記ROMには、制御プログラムが格納されている。そして、CPUは、上記ROMに格納された制御プログラムを読み出して実行することによって、画像形成装置100全体の動作を制御する。上記RAMは、上記CPUが、上記制御プログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0020】
次に、図2を参照して、給紙カセット11の構成について説明する。図2は、給紙カセット11の構成を示す側面図である。なお、図2は、給紙カセット11が給紙ユニット10に装着された状態を示す。給紙カセット11は、リフト機構110、後端カーソル113、幅合わせカーソル対114、シート収納部115、搬送ローラー117、及び、捌きローラー122を備えている。リフト機構110は、載置された記録用紙Pを給紙ローラー121に押し当てる機構であって、リフト板111、及び、押し上げ部材112、駆動シャフト116、及び、支持部118を備えている。
【0021】
図2に示すように、給紙カセット11は、シート収納部115の内底面に、複数枚の記録用紙Pを積載するリフト板111を備えている。リフト板111は、給紙方向の上流側端(図2では右側端部)が、支持部118によって回動可能に支持されている。換言すれば、リフト板111は、シート収納部115の内部において、給紙方向の下流端を自由端として支持部118によって垂直面内で回動可能に支持されている。支持部118は、記録用紙Pの幅方向(給紙方向と直交する方向)に対向配置されたシート収納部115の両側壁部に設けられている。
【0022】
幅合わせカーソル対114は、シート収納部115に収納される記録用紙Pの幅方向の位置決めを行い、後端カーソル113は、記録用紙Pの後端を揃える。幅合わせカーソル対114は、図略の案内レールに沿って記録用紙Pの幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられている。ここでは、後端カーソル113はシート搬送方向と平行に(図2の左右方向に)移動可能に設けられている。幅合わせカーソル対114及び後端カーソル113を、積載される記録用紙Pのサイズに合わせて移動させることによって、記録用紙Pを給紙カセット11内の所定位置に収納する。
【0023】
リフト板111の給紙方向の下流部下方には、駆動シャフト116、及び、押し上げ部材112が設けられている。駆動シャフト116と押し上げ部材112とは、リフト板111を給紙位置と退避位置との間で変位させる。給紙カセット11を装着した状態では、図略のリフト駆動モーターの動力を、駆動シャフト116に伝達することができる。上記給紙位置とは、リフト板111が上昇し、リフト板111に載置された記録用紙Pの最上部がピックアップローラー12に当接して給紙可能な状態となる位置(図2に示す位置)である。上記退避位置とは、リフト板111が下降限まで下降した位置である。
【0024】
また、給紙カセット11は、給紙ローラー121の下方に設けられた捌きローラー122を備えている。更に、ピックアップローラー12及び給紙ローラー121の給紙方向下流側(図2では左側)には、搬送ローラー117が設けられている。給紙ローラー121及びピックアップローラー12は、給紙カセット11ではなく、給紙ユニット10の筐体部に配置され、捌きローラー122及び搬送ローラー117は給紙カセット11に配置されている。そして、図2に示すように、給紙カセット11が画像形成ユニット1に装着された状態では、給紙ローラー121と捌きローラー122とが当接する。
【0025】
給紙ローラー121は、ピックアップローラー12によって取り出された記録用紙Pを搬送ローラー117へと給紙する。給紙ローラー121は、記録用紙Pを給紙方向下流側(図2の左側)へ搬送する方向に回転するのに対して、捌きローラー122は、それとは逆に、記録用紙Pを給紙方向上流側(図2の右側)へ送り返す方向に回転する。例え、ピックアップローラー12によって取り出された記録用紙Pが重なっていた場合でも、捌きローラー122によって、最上部の記録用紙P以外の記録用紙Pが搬送ローラー117に給紙されることを抑制することができる。よって、最上部の記録用紙Pのみが給紙ローラー121によって搬送ローラー117へと搬送される。そして、搬送ローラー117は、記録用紙Pを搬送ローラー対13(図1参照)へと搬送する。
【0026】
次に、図3を参照して、駆動伝達装置6の構成について説明する。図3は、ピックアップローラー12を駆動する駆動伝達装置6を示す斜視図である。図3に示すように、駆動伝達装置6は、モーターM、モーター駆動軸61、第1駆動列62、第2駆動列63、第5ギア64、及び、第6ギア65を備えている。第1駆動列62は、第1ギア621、第2ギア622及び回転軸623を備え、第1ギア621及び第2ギア622と回転軸623との間に、それぞれ、ワンウェイクラッチ624a及びワンウェイクラッチ624bが設けられている。第2駆動列63は、第3ギア631、第4ギア632及び回転軸633を備え、第3ギア631及び第4ギア632と回転軸633との間に電磁クラッチ634が設けられている。第6ギア65は、ピックアップローラー12の回転軸に連結されている。
【0027】
第1ギア621と第3ギア631とは噛み合い、第2ギア622と第4ギア632とは噛み合っている。また、第4ギア632は、第5ギア64とも噛み合っている。第5ギア64は、第6ギア65とも噛み合っている。
【0028】
次に、各ギアの回転方向を説明する。モーター駆動軸61が矢印R1で示すように右回り(時計回り)に回転する場合について説明する。第1駆動列62の第1ギア621、第2ギア622及び回転軸623は、矢印R2で示すように左回り(反時計回り)に回転する。第2駆動列63の第3ギア631、第4ギア632及び回転軸633は、矢印R3で示すように右回り(時計回り)に回転する。第5ギア64は、矢印R4で示すように左回り(反時計回り)に回転する。第6ギア65は、矢印R5で示すように右回り(時計回り)に回転する。
【0029】
第1駆動列62のワンウェイクラッチ624a、及び、ワンウェイクラッチ624bは、一方の方向のみに回転力を伝達する。本実施形態では、ワンウェイクラッチ624aは、第1ギア621の左回り(反時計回り)の回転速度が回転軸623の回転速度以上である場合に限って、駆動力を第1ギア621から回転軸623に伝達する。一方、ワンウェイクラッチ624bは、第2ギア622の左回り(反時計回り)の回転速度が回転軸623の回転速度以下である場合に限って、駆動力を回転軸623から第2ギア622に伝達する。また、モーターM及び電磁クラッチ634は、制御部5によって制御される。
【0030】
次に、図4を参照して、各ギアの歯数について説明する。図4は、図3に示す駆動伝達装置6のギア配置を示す側面図である。モーター駆動軸61の周面には、歯数TNM(例えば、TNM=9)の歯が形成されている。第1ギア621の周面には、歯数TN1(例えば、TN1=47)の歯が形成されている。第2ギア622の周面には、歯数TN2(例えば、TN2=35)の歯が形成されている。第3ギア631の周面には、第1ギア621の歯数TN1より小さい歯数TN3(例えば、TN3=35)の歯が形成されている。第4ギア632の周面には、第2ギア622の歯数TN2より大きい歯数TN4(例えば、TN4=47)の歯が形成されている。
【0031】
次に、図5を参照して、電磁クラッチ634がオンの時の、駆動力の伝達経路と、各ギアの回転速度について説明する。図5は、駆動伝達装置6において、電磁クラッチ634がオンのときの動作を示す側面図である。電磁クラッチ634がオンである場合には、回転軸633、第3ギア631及び第4ギア632は一体に回転する。
【0032】
まず、駆動力の伝達経路について説明する。モーターMの駆動力が、矢印Y1で示すように、モーター駆動軸61から第1ギア621に伝達する。そして、矢印Y2で示すように、駆動力が第1ギア621から第3ギア631に伝達する。次に、矢印Y3で示すように、回転軸633を介して、駆動力が第3ギア631から第4ギア632に伝達する。そして、矢印Y4で示すように、駆動力が第4ギア632から第5ギア64に伝達する。
【0033】
次に、回転速度について説明する。第3ギア631は第1ギア621と噛み合っているため、第3ギア631の回転速度N3は、第1ギア621の回転速度N1を用いて次の(1)式で求められる。
N3=(TN1/TN3)×N1 (1)
ここで、歯数TN1は、第1ギア621の歯数であり、歯数TN3は、第3ギア631の歯数である。
【0034】
上述のように、回転軸633と第3ギア631及び第4ギア632とは一体に回転するため、第4ギア632の回転速度N4は、第3ギア631の回転速度N3と同一である。したがって、次の(2)式によって、第4ギア632の回転速度N4が求められる。
N4=(TN1/TN3)×N1 (2)
【0035】
なお、第4ギア632と第2ギア622とは噛み合っているため、第4ギア632の回転に伴って第2ギア622が回転する。第2ギア622の回転速度N2は、次の(3)式で求められる。
N2=(TN4/TN2)×N4 (3)
上記(2)式を上記(3)式に代入すると、次の(4)式が得られる。
N2=(TN4/TN2)×(TN1/TN3)×N1 (4)
ここで、図4を参照して説明したように、第4ギア632の歯数TN4は第2ギア622の歯数TN2より大きく、第1ギア621の歯数TN1は第3ギア631の歯数TN3より大きいため、第2ギア622の回転速度N2は、第1ギア621及び回転軸623の回転速度N1より大きい。よって、ワンウェイクラッチ624bが滑るため、第2ギア622は、回転軸623に対して空回りすることになる。
【0036】
次に、図6を参照して、電磁クラッチ634がオフの時の、駆動力の伝達経路と、各ギアの回転速度について説明する。図6は、駆動伝達装置6において、電磁クラッチ634がオフのときの動作を示す側面図である。電磁クラッチ634がオフである場合には、回転軸633、第3ギア631及び第4ギア632は、それぞれ、別々に回転する。
【0037】
まず、駆動力の伝達経路について説明する。モーターMの駆動力が、矢印Y5で示すように、モーター駆動軸61から第1ギア621に伝達する。電磁クラッチ634がオフであるから、第4ギア632にモーターMの駆動力は伝達されない。よって、第4ギア632から第2ギア622が駆動されることはない。
【0038】
一方、第1ギア621は、モーター駆動軸61によって駆動され、回転軸623はワンウェイクラッチ624aを介して、第1ギア621によって駆動される。また、第2ギア622は、ワンウェイクラッチ624bを介して、回転軸623によって駆動される。よって、第1ギア621、第2ギア622、及び、回転軸623は一体となって回転する。
【0039】
したがって、矢印Y6で示すように、駆動力が第1ギア621から第2ギア622に伝達する。次に、矢印Y7で示すように、駆動力が第2ギア622から第4ギア632に伝達する。そして、矢印Y8で示すように、駆動力が第4ギア632から第5ギア64に伝達する。
【0040】
次に、回転速度について説明する。上述のように、第1ギア621、第2ギア622、及び、回転軸623は一体となって回転するため、第2ギア622の回転速度N2aは、第1ギア621の回転速度N1と同一である。また、第4ギア632は第2ギア622と噛み合っているため、第4ギア632の回転速度N4aは、第1ギア621の回転速度N1を用いて次の(5)式で求められる。
N4a=(TN2/TN4)×N1 (5)
【0041】
上記(2)式と(5)式とから、回転速度N1を消去すると次の(6)式が得られる。
N4=(TN1/TN3)×(TN4/TN2)×N4a (6)
上記(6)式に、歯数の数値を入れると、次の(7)式が得られる。
N4=1.8×N4a (7)
よって、電磁クラッチ634をオフからオンにすることによって、ピックアップローラー12の回転速度を、1.8倍に増速することができる。
【0042】
上述のように、ワンウェイクラッチ624を有する第1駆動列62と、電磁クラッチ634を有する第2駆動列63とを備え、電磁クラッチ634のオンオフを切り換えることによって、ピックアップローラー12の回転速度が切り換えられる。したがって、簡素な構成で出力軸の回転速度を2段階に切り換えることができる。
【0043】
また、第1駆動列62には、第1の歯数TN1の歯が外周に形成された第1ギア621と、第1の歯数TN1とは異なる第2の歯数TN2の歯が外周に形成された第2ギア622とが、ワンウェイクラッチ624を介して回転軸623に連結されている。また、第2駆動列63には、第1ギア621と噛み合い、第3の歯数TN3の歯が外周に形成された第3ギア631と、第3の歯数TN3とは異なる第4の歯数TN4の歯が外周に形成された第4ギア632とが、電磁クラッチ634を介して回転軸633に連結される。よって、電磁クラッチ634のオンオフを切り換えることによって、駆動力の伝達経路を変更することができる。したがって、簡素な構成で出力軸の回転速度を2段階に切り換えることができる。
【0044】
更に、モーターMの駆動軸61は、第1ギア621と噛み合い、ピックアップローラー12の回転軸は、第4ギア632と第5ギア64を介して噛み合う。よって、電磁クラッチ634のオンオフを切り換えることによって、第1ギア621から第4ギア632への駆動力の伝達経路を変更することができる。したがって、簡素な構成で出力軸の回転速度を2段階に切り換えることができる。
【0045】
また、第1ギア621の第3ギア631に対するギア比(TN1/TN3)は、第4ギア632の第2ギア622に対するギア比(TN4/TN2)と一致する。よって、所望する速度比(本実施形態では、1.8)を適正なギア比(47/35)の2組のギアによって実現することができる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(5))。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
(1)本実施形態では、駆動伝達装置6が、ピックアップローラー12を駆動する場合について説明したが、画像形成装置100に配置されたその他のローラーを駆動する形態でもよい。例えば、画像形成装置100の搬送ローラー対13、感光体ドラム151、定着器16の加熱ローラー、及び、加圧ローラーの少なくとも1つのローラーを駆動する形態でもよい。
【0048】
(2)本実施形態では、第1ギア621と第3ギア631とが噛み合い、第2ギア622と第3ギア631とが噛み合う場合について説明したが、その他の形態でもよい。例えば、第1ギア621と第3ギア631とが、プーリーを介して、駆動力を伝達可能に接続され、第2ギア622と第4ギア632とがプーリーを介して、駆動力を伝達可能に接続されている形態でもよい。
【0049】
(3)本実施形態では、モーターMの駆動軸61が第1ギア621と噛み合っている場合について説明したが、モーターMの駆動軸61が第2ギア622と噛み合っている形態でもよい。
【0050】
(4)本実施形態では、ピックアップローラー12の回転軸が第5ギア64を介して第4ギア632と噛み合っている場合について説明したが、その他の形態でもよい。例えば、ピックアップローラー12の回転軸が少なくとも1つのギアを介して第3ギア631と噛み合っている形態でもよい。また、例えば、ピックアップローラー12の回転軸が第3ギア631又は第4ギア632と噛み合っている形態でもよい。
【0051】
(5)本実施形態では、ピックアップローラー12の回転軸が第5ギア64を介して第4ギア632と噛み合っている場合について説明したが、その他の形態でもよい。例えば、ピックアップローラー12の回転軸が少なくとも1つのギアを介して第2ギア622と噛み合っている形態でもよい。また、例えば、ピックアップローラー12の回転軸が第2ギア622と噛み合っている形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、クラッチへの供給電力を制御する駆動伝達装置、及び、画像形成装置に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6