(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る石炭火力発電設備10を示す概略構成図である。石炭火力発電設備10は、
図1に示すように、石炭バンカ20と、給炭機25と、微粉炭機30と、ボイラ40と、ボイラ40の下流側に設けられた排気通路50と、この排気通路50に設けられた脱硝装置60、空気予熱器70、電気集塵装置90、熱回収用ガスヒータ80、誘引通風機210、脱硫装置220、再加熱用ガスヒータ230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0016】
石炭バンカ20は、石炭サイロ(図示しない)から運炭設備によって供給された第1の石炭と、第2の石炭とを含む石炭を貯蔵する。給炭機25は、石炭バンカ20から供給された石炭を所定の供給スピードで微粉炭機30に供給する。第1の石炭は、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が少ない瀝青炭である。第2の石炭は、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が多い亜瀝青炭である。
【0017】
なお、本明細書において、「第1の石炭、第2の石炭」には、瀝青炭や亜瀝青炭等の単味の石炭だけでなく、石炭と石灰石等の微量物質溶出抑制剤とが混合された状態のものも含まれる。また、本明細書において、「アルカリ金属及びアルカリ土類金属」は、周期表の第1族元素の一部と、第2族元素全体をいい、具体的には、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムをいう。
【0018】
また、本明細書において、「アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量」とは石炭の質量に対する、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物換算での質量の割合をいう。例えば、カルシウムの含有量とは、石炭の質量に対する、石炭中のカルシウムを酸化カルシウムに換算した場合の質量の割合をいう。
【0019】
微粉炭機30は、給炭機25から供給された石炭を粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機30として、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0020】
ボイラ40は、微粉炭機30から供給された微粉炭となった石炭を、強制的に供給された空気と共に燃焼する。また、ボイラ40には、押込通風機75から燃焼用空気が送り込まれる。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュ等の石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。本実施形態においては、ボイラ40は、微粉炭となった第1の石炭と、第2の石炭とを含む石炭を、空気と共に燃焼する。
石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法及び第1実施形態におけるボイラ40の内部の状態については後述する。
【0021】
排気通路50は、ボイラ40の下流側に配置され、ボイラ40で発生した排ガス及び生成された石炭灰(ボイラ40から排出された石炭灰)を流通させる。この排気通路50には、上述のように、脱硝装置60、空気予熱器70、熱回収用ガスヒータ80、電気集塵装置90、誘引通風機210、脱硫装置220と、再加熱用ガスヒータ230、脱硫通風機240、及び煙突250がこの順で配置される。
【0022】
脱硝装置60は、排ガス中の窒素酸化物を除去する。本実施形態においては、脱硝装置60は、比較的高温(300℃〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。
【0023】
空気予熱器70は、排気通路50における脱硝装置60の下流側に配置される。空気予熱器70は、脱硝装置60を通過した排ガスと燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。加熱された燃焼用空気は、押込通風機75によりボイラ40に供給される。
【0024】
熱回収用ガスヒータ80は、排気通路50における空気予熱器70の下流側に配置される。熱回収用ガスヒータ80には、空気予熱器70において熱回収された排ガスが供給される。熱回収用ガスヒータ80は、排ガスから更に熱回収する。
【0025】
電気集塵装置90は、排気通路50における熱回収用ガスヒータ80の下流側に配置される。電気集塵装置90には、熱回収用ガスヒータ80において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置90は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集(捕捉)する装置である。電気集塵装置90において収集(捕捉)されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置120に回収される。
【0026】
誘引通風機210は、排気通路50における電気集塵装置90の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置90においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0027】
脱硫装置220は、排気通路50における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、この脱硫石膏スラリーを脱水処理することで脱硫石膏を生成する。脱硫装置220において生成された脱硫石膏は、この装置に接続された脱硫石膏回収装置222に回収される。
【0028】
再加熱用ガスヒータ230は、排気通路50における脱硫装置220の下流側に配置される。再加熱用ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。再加熱用ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。熱回収用ガスヒータ80及び再加熱用ガスヒータ230は、排気通路50における、空気予熱器70と電気集塵装置90との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスヒータとして構成してもよい。
【0029】
脱硫通風機240は、排気通路50における再加熱用ガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、再加熱用ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0030】
煙突250は、排気通路50における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、再加熱用ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0031】
次に、石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法について、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るボイラの運用方法の一例を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態においては、石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、
図2に示すように、第1燃焼工程としてのステップST11と、第2燃焼工程としてのステップST12と、を含む。
【0033】
ステップST11は、カルシウム(CaO)やマグネシウム(MgO)等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物を合わせたアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量(質量比)が第1の範囲にある第1の石炭を燃焼させる工程である。ステップST12は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が第1の範囲よりも高い含有量の範囲である第2の範囲にある第2の石炭を燃焼させる工程である。
【0034】
本実施形態においては、第1の範囲は、2%〜6%の範囲である。また、第2の範囲は、2.5%〜50%の範囲である。また、第2の石炭は、第1の石炭よりもアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が多く、本実施形態においては0.5%以上多い。
【0035】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量がこのような範囲となり、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量に0.5%以上の差が生じると、第1の石炭と第2の石炭との灰融点の差が大きくなる。なお、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量がこのような範囲となるように、第1の石炭及び第2の石炭が選定、又は混合される。
【0036】
また、カルシウムの含有量に関して言えば、第1の石炭のカルシウムの含有量が0.1%〜0.5%の範囲である。また、第2の石炭のカルシウムの含有量が0.2%〜40%の範囲である。また、第2の石炭は、第1の石炭よりもカルシウムの含有量が多く、本実施形態においては0.1%以上多い。
【0037】
カルシウムの含有量がこのような範囲となり、カルシウムの含有量に0.1%以上の差が生じると、第1の石炭と第2の石炭との灰融点の差が大きくなる。なお、カルシウムの含有量がこのような範囲となるように、第1の石炭及び第2の石炭が選定、又は混合されてもよい。
【0038】
一般に、シリカ(SiO
2)を主成分とする石炭灰の灰融点は、1500℃程度であり、石炭中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が多くなるほど灰融点は低くなる。本実施形態においては、第1の石炭灰の灰融点は、1500℃程度である。これに対して、第2の石炭灰の灰融点は、1300℃程度である。このように、第2の石炭灰は、第1の石炭灰よりも灰融点が200℃程度低い。
【0039】
また、本実施形態においては、ステップST12の時間を、ステップST11の時間よりも長く行う。具体的には、ステップST11を12時間以上行い、ステップST12をステップST11の時間よりも長い時間行う。石炭の燃焼に伴って、ボイラ40の内部で石炭灰が生じる。
【0040】
クリンカ44(
図3を参照)は、石炭灰がボイラ40の内部の壁面に付着し、付着した石炭灰が残存することにより形成される。本実施形態においては、ステップST11により、灰融点が高い石炭灰がボイラ40の内部の壁面に付着し、この石炭灰が残存することでクリンカが形成される。また、ステップST12により、灰融点が低い石炭灰がボイラ40の内部の壁面に付着し、この石炭灰が残存することでクリンカが形成される。
【0041】
このようなボイラ40の運用方法が行われたボイラ40の内部の状態について
図3を用いて説明する。
図3は、第1実施形態におけるボイラ40の内部の状態を示す模式図である。
【0042】
図3に示すように、ボイラ40の内部においてボイラ40の対向する壁面に、石炭を燃焼させる複数のバーナ41(バーナ41a、バーナ41b)が上下方向に複数段配置される。この複数のバーナ41は、各燃焼工程(ステップST11、ステップST12)において、微粉炭となった石炭を燃焼させる。すると、ボイラ40の内面には、ボイラ40に対して下向きに厚みhのクリンカ44(クリンカ層)が形成される。詳細には、ステップST11に伴い、灰融点が高い石炭灰に起因する厚みh1の第1クリンカ層44aがボイラ40の内面に形成される。また、ステップST12に伴い、第1クリンカ層44a上に(
図3において下向きに)、灰融点が低い石炭灰に起因する厚みh2の第2クリンカ層44bがボイラ40の内面に形成される。
灰融点が低い石炭灰に起因する第2クリンカ層44bの成長速度は、第1クリンカ層44aの成長速度よりも早く、しかも本実施形態においては、ステップST12を、ステップST11よりも長い時間行うため、第2クリンカ層44bの層の厚みh2は、第1クリンカ層44aの層の厚みh1よりも厚く(h2≧h1)なる。
【0043】
なお、ボイラ40の内部で形成されたクリンカ44が、ボイラ40の内部で破壊(例えば、自然落下)せずに増大することにより、ボイラ40の内部を閉塞する場合がある。また、増大したクリンカ44が、ボイラ40の内部で破壊(例えば、自然落下)することにより、ボイラ40を損傷する場合がある。
第1クリンカ層44aは、嵩密度が低いため脆く壊れやすいが、軽いため、単層ではボイラ40の内部で破壊(例えば、自然落下)しにくい。また、第2クリンカ層44bは、嵩密度が高い(重い)が、緻密で固く壊れにくいため、ボイラ40の内部で破壊(例えば、自然落下)しにくい。このように、単層のクリンカ44が形成され、ボイラ40の内部で破壊せずに増大することが問題となる。
【0044】
ここで、以上の第1実施形態によれば、石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が第1の範囲にある第1の石炭を燃焼させるステップST11と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が第1の範囲よりも高い含有量の範囲である第2の範囲にある第2の石炭を燃焼させるステップST12と、を含む。
クリンカ44は、脆く壊れやすい(嵩密度が低い)第1クリンカ層44aと、重い(嵩密度が高い)第2クリンカ層44bを含んで形成される。そのため、第2クリンカ層44b単層のクリンカ44は固く壊れにくいのに対し、脆く壊れやすい第1クリンカ層44aを含むクリンカ44の強度は、第1クリンカ層44aの厚みh1に応じて低下する。また、第1クリンカ層44a単層のクリンカ44は軽いため破壊(例えば、自然落下)しにくいのに対し、重い(嵩密度が高い)第2クリンカ層44bを含むクリンカ44の嵩密度は、第2クリンカ層44bの厚みh2に応じて増加する。そのため、第1クリンカ層44aと、第2クリンカ層44bとを含んで形成されたクリンカ44は、第1クリンカ層44a単層又は第2クリンカ層44b単層のクリンカよりも、大きく増大することなく破壊(例えば、自然落下)すると考えられる。これにより、クリンカの増大を抑制できる。
また、これにより、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロム等の微量物質の溶出を抑制することもできる。
【0045】
また、ステップST11が燃焼工程の初めに行われることにより、脆く壊れやすい第1クリンカ層44aがボイラ40の内部の一層目に形成される。そのため、クリンカ44が破壊(例えば、自然落下)する場合、クリンカ44は、一層目の第1クリンカ層44aを起点として破壊(例えば、自然落下)する。これにより、クリンカ44をボイラ40に残存させずに、クリンカの増大を効率よく抑制できる。
【0046】
また、第2の石炭におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量と、第1の石炭におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量との差は、0.5%以上である。そのため、それぞれの灰融点の差を大きく(例えば、200℃以上)できる。灰融点に差が生じることにより、第1クリンカ層44aと第2クリンカ層44bとの成長速度及び嵩密度に大きな差が生じる。これにより、クリンカの増大を効果的に抑制できる。
また、これにより、微量物質の溶出をより効果的に抑制することもできる。
【0047】
また、第2の石炭におけるカルシウムの含有量と、第1の石炭におけるカルシウムの含有量との差は、0.1%以上である。そのため、それぞれの灰融点の差を大きく(例えば、200℃以上)できる。灰融点に差が生じることにより、第1クリンカ層44aと第2クリンカ層44bとの成長速度及び嵩密度に大きな差が生じる。特にカルシウムの含有量は灰融点に大きく影響する。これにより、クリンカの増大を効果的に抑制できる。
また、これにより、微量物質の溶出をより効果的に抑制することもできる。
【0048】
また、石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、ステップST12の時間を、ステップST11の時間よりも長く行い、ステップST11を12時間以上行う。これにより、破壊の起点となるために十分な厚みh1の第1クリンカ層44aと、クリンカ44の全体の重量を重くするために十分な厚みh2の第2クリンカ層44bと、を形成できる。これにより、クリンカの増大を更に効果的に抑制できる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の石炭火力発電設備10について説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。第2実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適用される。
【0050】
第2実施形態の石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、
図2に示す第1燃焼工程としてのステップST11と、第2燃焼工程としてのステップST12と、を交互に繰り返して2回以上(例えば3回)行う。
【0051】
第2実施形態における石炭火力発電設備10のボイラ40の内部について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態におけるボイラ40の内部の模式図である。
図4に示すように、ボイラ40の内面には、ボイラ40に対して下向きに厚みHのクリンカ44が形成される。厚みH1の第1クリンカ層44aが形成され、第1クリンカ層44a上に(
図4においては下向きに)、厚みH2の第2クリンカ層44bが形成される。また、第1クリンカ層44aと、第2クリンカ層44bとが2層以上ずつ(例えば3層)交互に形成される。
【0052】
以上、説明したように構成された第2実施形態によれば、石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、ステップST11と、ステップST12とを交互に2回以上繰り返して行う。
そのため、脆く壊れやすい2層以上(例えば3層)の第1クリンカ層44aのいずれか1つの第1クリンカ層44aに破壊をきたす要因が生じた場合(例えば、自重に耐えられなくなった場合)であっても、クリンカ44は、破壊(例えば、自然落下)する。第1クリンカ層44aと、第2クリンカ層44bとが2層以上ずつ(例えば3層)交互に形成されたクリンカ44は、第1クリンカ層44a単層又は第2クリンカ層44b単層のクリンカよりも、大きく増大することなく破壊(例えば、自然落下)すると考えられる。これにより、クリンカの増大を抑制できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0054】
例えば、
図3及び
図4に示すように、ステップST11はバーナ41aで行われ、ステップ12はバーナ41bで行われるといったように、2つの燃焼工程は異なるバーナで行われてもよい。
石炭火力発電設備10におけるボイラ40の運用方法は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が第1の範囲にある第1の石炭を燃焼させる第1燃焼工程ST11と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が第1の範囲よりも高い含有量の範囲である第2の範囲にある第2の石炭を燃焼させる第2燃焼工程ST12と、を含む。第1燃焼工程と、第2燃焼工程とは、交互に2回以上繰り返して行うことが好ましい。