特許第6229823号(P6229823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6229823
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】壁面緑化ユニット
(51)【国際特許分類】
   A01G 1/00 20060101AFI20171106BHJP
   A01G 9/12 20060101ALI20171106BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20171106BHJP
   A01G 27/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A01G1/00 301C
   A01G9/12 A
   A01G27/00 502L
   A01G27/00 502W
   A01G27/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-535852(P2017-535852)
(86)(22)【出願日】2017年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2017000490
【審査請求日】2017年7月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】江木 和泉
(72)【発明者】
【氏名】柳川 敏治
(72)【発明者】
【氏名】引野 健治
(72)【発明者】
【氏名】小畠 正至
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−188960(JP,A)
【文献】 特開2001−269064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00
A01G 9/00 − 9/10
A01G 9/12
A01G 27/00
A01G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器、及び、前記外装容器に取り付けられ且つ前記外装容器の上方を延びる延在部を有する懸架フレーム、を含む固設部と、
培土が収納され且つ前記外装容器の内部に配置可能な培土収容容器、前記培土収容容器から延びる登攀材、及び、前記登攀材の上端に取り付けられ且つ前記延在部に着脱可能な取付部、を含む植栽部と、を備え、
前記植栽部が、前記固設部に対して着脱可能である壁面緑化ユニット。
【請求項2】
前記登攀材は、湾曲可能な部材で製造されている
請求項1に記載の壁面緑化ユニット。
【請求項3】
前記外装容器は、
前記培土収容容器を配置する容器配置部と、
前記容器配置部の下部に設けられた培養液貯留部と、を備え、
前記培養液貯留部から前記容器配置部に延びるとともに、前記容器配置部に配置された前記培土収容容器に養液を散布する送液ラインと、
前記送液ラインに前記養液を送液する送液ポンプと、
を備える請求項1又は2に記載の壁面緑化ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、壁面緑化は、都市部で問題になっているヒートアイランド現象の緩和策、省エネ対策の他にも多くの効果が期待できる。
従来、土壌収納部、潅水装置、及び植栽された植物を誘引し支持する装置としての登攀材を揃えた壁面緑化装置が存在する。土壌収納部は主としてつる性植物の成長に適した根の部分の環境を整えるものである。雨水を主として潅水する潅水装置は、給水を制御できる弁装置を備える。登攀材は両端が取付け具により他の物へ取り付け可能とされている。
また、従来より、観葉植物のリース事業が行われている。リース事業では,定期的に植物を交換し、環境条件の整った温室で再生(活性化)して再度、顧客に戻すことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−24502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の壁面緑化装置における植物は、所定の場所に固定設置されるものであり、リース事業等の業者が植物を交換することを前提としていない。
また、壁面緑化以外において、植物のリース事業は行われているが、この場合、植物の交換の際、鉢やプランタの土が重く、多大な労力が必要となっていた。
【0005】
本発明は、植物の交換が容易に可能な壁面緑化ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、外装容器、及び、前記外装容器に取り付けられ且つ前記外装容器の上方を延びる延在部を有する懸架フレーム、を含む固設部と、培土が収納され且つ前記外装容器の内部に配置可能な培土収容容器、前記培土収容容器から延びる登攀材、及び、前記登攀材の上端に取り付けられ且つ前記延在部に着脱可能な取付部、を含む植栽部と、を備え、前記植栽部が、前記固設部に対して着脱可能である壁面緑化ユニットである。
【0007】
(2)前記登攀材は、湾曲可能な部材で製造されていることが好ましい。
【0008】
(3)前記外装容器は、前記培土収容容器を配置する容器配置部と、前記容器配置部の下部に設けられた培養液貯留部と、を備え、前記培養液貯留部から前記容器配置部に延びるとともに、前記容器配置部に配置された前記培土収容容器に養液を散布する送液ラインと、前記送液ラインに前記養液を送液する送液ポンプと、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、植物の交換が容易に可能な壁面緑化ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の壁面緑化ユニット1を長手方向からみた概略図である。
図2】外装容器14の幅方向の断面図である。
図3】外装容器14の変形例を示した図であり、(a)は第1変形例の外装容器14A、(b)は第2変形例の外装容器14Bを示す。
図4】植栽部50を説明する図であり、(a)は、植栽部50のフック53が、延在部13bに取り付けられている状態、(b)は登攀材52を渦巻き状に巻いた状態、(c)は登攀材52が巻かれた状態の植栽部50を箱60に入れた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の壁面緑化ユニット1について説明する。図1は、本発明の実施形態の壁面緑化ユニット1を長手方向からみた概略図である。図示するように、壁面緑化ユニット1は、固設部10と、培土収容容器51及び登攀材52を含むと植栽部50と、を備える。
【0012】
(固設部10)
固設部10は、所望の場所に固定設置される部分である。固設部10は、複数の植栽部50を収納可能な外装容器14と、外装容器14の前後(図1における左右)において外装容器14から上方に延びる2本の支柱部13a及び2本の支柱部13aの上端の間に架け渡された延在部13bを含む懸架フレーム13と、を備える。
【0013】
図2は、外装容器14の幅方向の断面図である。外装容器14は、上面が開口した箱型であり、互いに対向するとともに長手方向に延びる一対の横壁部11と、互いに対向するとともに幅方向に延びる一対の端壁部12(図1に示す)と、底部19とを有する、上部が開口した箱型部材である。実施形態で横壁部11は、端壁部12より長尺となっている。以下、横壁部11が延びる方向を長手方向、端壁部12が延びる方向を幅方向という。
【0014】
図2に示すように、外装容器14の横壁部11は、内側領域11aと外側領域11bとを有する。内側領域11aの高さは外側領域11bよりも低く、内側領域11aの上端には、段部11cが形成されている。
なお、図示しないが、端壁部12も内側領域と外側領域とを有する。端壁部12の内側領域と外側領域の高さは、横壁部11の内側領域11aと外側領域11bとの高さと同じであり、同位置に段部が形成されている。
【0015】
横壁部11の段部11cと端壁部12の段部とに縁部が保持される形で、板状のメッシュ部材17が配置されている。メッシュ部材17は、横壁部11の外側領域11bと端壁部12の外側領域との内壁で画される矩形形状と略同形である。メッシュ部材17によって、外装容器14の内部空間が、下部空間と上部空間との2つの空間とに分離されている。ただし、メッシュ状であるため上部空間から下部空間へ後述の養液は流れ出ることができる。上部空間は、植栽部50の後述の培土収容容器51を配置する容器配置部40であり、下部空間は、植物に散布される養液を貯留する培養液貯留部20である。
【0016】
本実施形態では、このように横壁部11に設けた段部にメッシュ部材17を配置することより外装容器14の内部空間を分離している。ただし、これに限定されない。図3は、外装容器14の変形例を示した図である。図3(a)は第1変形例の外装容器14A、図3(b)は第2変形例の外装容器14Bを示す。内部空間の分離方法としては、図3(a)に示すように外装容器14を2つの上容器10Aと下容器10Bとに分離可能としてもよい。また、図3(b)に示すように、外装容器14の内部に設ける段部11cを上方に設け、培土収容容器51に縁部を設けて、その縁部をその段部11cに懸けるものであってもよい。
【0017】
(容器配置部40)
図1及び図2の本実施形態に戻り、容器配置部40について説明する。容器配置部40は、上部が開放しており、メッシュ部材17上に、培土収容容器51を配置することができる。
【0018】
(培養液貯留部20)
培養液貯留部20は、容器配置部40の下部に位置する。培養液貯留部20の底部19には、水抜き用の穴15が設けられ、その穴15には開閉可能な栓16が取り付けられている。培養液貯留部20には、養分を含む水が貯留されている。
【0019】
(送液ポンプ30)
外装容器14は、さらに、図1に示すように容器配置部40の内部に配置された送液ポンプ30と、送液ポンプ30により送り出される養液を、容器配置部40に散水する散水ラインである散水パイプ31と、を備える。送液ポンプ30は、例えば水陸両用のポンプで低騒音のものが好ましい。
なお、本実施形態では、送液ポンプ30は培養液貯留部20の内部に配置されているが、これに限らず、培養液貯留部20の外部に配置してもよい。
【0020】
(散水パイプ31)
送液ポンプ30から、送液ラインとして散水パイプ31が延びている。散水パイプ31は、外装容器14の側面を上方に延び、さらに、容器配置部40の上部を水平に延びる。散水パイプ31の容器配置部40の上を通る部分の下部には、複数の散水穴31aが設けられている。
【0021】
(懸架フレーム13)
外装容器14には、懸架フレーム13が取り付けられている。懸架フレーム13は、後述の登攀材52の上端を保持するためのものである。懸架フレーム13は、外装容器14の長手方向(前後)の端部に配置され、外装容器14より上方に延びる2本の支柱部13aと、その2本の支柱部13aの上端の間に架け渡された延在部13bと、を備える。
【0022】
(植栽部50)
図4は植栽部50を説明する図である。図示するように植栽部50は、培土54が収納された培土収容容器51と、培土54に下端が挿入されて保持された登攀材52と、登攀材52の上端に取り付けられた取付部であるフック53と、を備える。
【0023】
(培土収容容器51)
図4(a)は、植栽部50のフック53が、延在部13bに取り付けられている状態を示す。培土収容容器51は、培土を収容し、その培土には植物が植え込まれている。本実施形態で培土は、水耕栽培用の、例えば無機物のバーミキュライト、パーライト、ロックウール、ハイドロボール、スポンジ等であり、土に比べて軽量である。また、植え込まれた植物は、つる性の植物である。
【0024】
(登攀材52)
登攀材52は、ワイヤーで製造され、その先端に、懸架フレーム13の延在部13bに着脱可能に引っ掛けることが可能なフック状の取付部53が設けられている。取付部53を懸架フレーム13に引っ掛けることにより、登攀材52の上端が懸架フレーム13に保持され、登攀材52を懸架フレーム13に懸架することができる。
なお、取付部53はフック状に限らず、クリップ状でもよい。クリップ状の場合、延在部13bの所定の部位を把持することにより、より固定された状態で登攀材52を延在部13bに取り付けることができる。
【0025】
登攀材52は、湾曲可能であり、渦巻き状、とぐろ状、円形状又はらせん状等に巻くことができる。図4(b)は、登攀材52を渦巻き状に巻いた状態を示す図であり、(c)は登攀材52が渦巻き状に巻かれた状態の植栽部50を、段ボール等の箱60に収納した状態である。
また登攀材52は、例えば、部分的又は全体をバネで製造し、又は弾性部材で製造することもでき、その場合、長さ調節が可能となり、バネがわずかに引っ張られた状態で懸架フレーム13に装着されるようにすると、登攀材52を撓ませることなく、懸架フレーム13に取り付けることができる。
【0026】
(使用方法)
培養液貯留部20の内部に、植物の育成に必要な養液を入れ、メッシュ部材17を配置する。
容器配置部40に、培土及びその培土につる性の植物が植え込まれた複数の植栽部50を配置する。植栽部50の登攀材52の取付部53を、それぞれ懸架フレーム13の延在部13bに引っ掛けることにより、登攀材52を懸架フレーム13に懸架する。
【0027】
送液ポンプ30を作動させる。送液ポンプ30を作動させる時間は、季節等によって異なるが、例えば1日1回、5分程度とし、その時間はタイマー等で管理可能である。
送液ポンプ30が作動されると、養液は、散水パイプ31を伝わって上部へと送出され、散水穴31aより培土へ散水される。
【0028】
容器配置部40に供給された養液は、培土によって吸収される。吸収されなかった養液は培養液貯留部20に流出する。
植栽部50の培土収容容器51に植え込まれた植物が育っていくと、登攀材52に巻き付いて、上方に延びていく。
【0029】
本実施形態では、例えば壁面緑化ユニットの複数の植栽部50のうちのいくつかの植栽部50に植え込まれた植物の発育状態が良好でない場合、発育不良の植栽部50を交換することができる。
【0030】
交換は、まず、発育不良の植物が植えられている植栽部50の登攀材52の上部に取り付けられた取付部53を固設部10の懸架フレーム13の延在部13bから外す。このとき、取付部53はフック状であるので取り外しが容易である。
【0031】
登攀材52は、ワイヤーで製造されており、湾曲可能であるので、図4(b)に示すように、渦巻き状に巻いてコンパクトにすることができる。例えば、植物がリース業者からのリースされているものである場合、(c)に示すように、登攀材52が渦巻き状に巻かれた状態の植栽部50はコンパクトであるので、交換に出向いたリース業者は、段ボール等の箱に収納して持ち帰ることができ、輸送が容易になる。この際、コンパクトになるので、宅配便輸送も可能となる。
【0032】
さらに、本実施形態では、培土収容容器51内において根のはる培土は、水はけのよい水耕栽培用の培土であり、例えば無機物のバーミキュライト、パーライト、ロックウール、ハイドロボール、スポンジ等の、土に比べて軽量なものである。したがって、従来のような、天然の土ごとの交換と比較すると大幅な軽量化が可能となり、運搬が容易になる。
【0033】
そして、同様にコンパクト且な状態で運び込まれた発育のよい状態の植物が植えこまれた植栽部50を、発育不良の植物が植えこまれた植栽部50が配置されていた位置に配置する。そして、その植栽部50の登攀材52の取付部53を懸架フレーム13の延在部13bに取り付ける。
以上、本実施形態によると、植栽部50を容易に交換することができる。
【0034】
また、本実施形態では、複数の植栽部50を個々に交換可能としたので連作障害が発生する植物の交換の場合、培養液を全取替することにより対応が可能となる。
【0035】
外装容器14に懸架フレーム13が装着されているので、外装容器14と懸架フレーム13とが一体となった壁面緑化ユニット1を提供することができる。
【0036】
養液は送液ポンプ30により自動で送られるので、使用者の散水及び養液の供給の手間を省くことができる。また、養液の供給忘れによる乾燥や発育不全が生じることがない。
【0037】
養液は、かけ流しでなく、培土により吸収されなかった養液は、培養液貯留部20に流れ出る。培養液貯留部20に貯留された養液は、再度、送液ポンプ30で培土へと送られるので、養液が無駄になることがない。ゆえに、環境汚染等の可能性が少ない。
【0038】
リース事業以外にも,固設部10のみをまず顧客に低価格で販売し、カートリッジ状に成形した各種植物を別途販売する手法が考えられる。この場合、各種植物は軽量且つコンパクトであるので、宅配便により提供可能である。
【0039】
環境条件等により生育が悪化した場合は新規カートリッジの購入時に回収(買取)し、温室など環境条件の良好な場所で再生した上で、再度販売することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 壁面緑化ユニット
2 支柱部
10 固設部
11 横壁部
11a 内側領域
11b 外側領域
11c 段部
12 端壁部
13 懸架フレーム
13a 支柱部
13b 延在部
14 外装容器
17 メッシュ部材
20 培養液貯留部
30 送液ポンプ
31 散水パイプ
31a 散水穴
40 容器配置部
50 植栽部
51 培土収容容器
52 登攀材
53 取付部
54 培土
【要約】
植物の交換が容易に可能な壁面緑化ユニットを提供する。
本発明の壁面緑化ユニット1は、外装容器14、及び、前記外装容器14に取り付けられ且つ前記外装容器14の上方を延びる延在部13bを有する懸架フレーム13、を含む固設部10と、培土54が収納され且つ前記外装容器14の内部に配置可能な培土収容容器51、前記培土収容容器51から延びる登攀材52、及び、前記登攀材52の上端に取り付けられ且つ前記延在部13bに着脱可能な取付部、を含む植栽部50と、を備え、前記植栽部50が、前記固設部10に対して着脱可能である。
図1
図2
図3
図4