【実施例】
【0020】
以下、実施例を例示して本発明の効果を明瞭にするが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお例中%及び部は重量基準を意味する。
実施例1
ヤシ油57部、パーム分別ステアリン30部、高エルシン酸菜種極度硬化油10部、中鎖脂肪酸油脂(不二製油株式会社 商品名:MCT−64)を3部混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い実施例1の油脂組成物とした。沃素価は9.6であり、トランス酸は2.0重量%以下であった。
【0021】
実施例2
ヤシ油30部、硬化ヤシ油25部、パーム分別ステアリン27部、高エルシン酸菜種極度硬化油15部、中鎖脂肪酸油脂3部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い実施例2の油脂組成物とした。沃素価は11.3であり、トランス酸は2.0重量%以下であった。
【0022】
実施例3
ヤシ油55部、パーム分別ステアリン30部、高エルシン酸菜種極度硬化油10部、中鎖脂肪酸油脂5部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い実施例3の油脂組成物とした。沃素価は8.4であり、トランス酸は2.0重量%以下であった。
【0023】
実施例4
ヤシ油57部、パーム分別ステアリン30部、極度硬化パーム油5部、高エルシン酸菜種極度硬化油8部、中鎖脂肪酸油脂5部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い実施例4の油脂組成物とした。沃素価は8.5であり、トランス酸は2.0重量%以下であった。
【0024】
実施例5
実施例1の油脂組成物100部に対してソルビタン脂肪酸エステル(ポエムS−65V/理研ビタミン株式会社製:HLB3.0)を2.0部配合し実施例5の油脂組成物とした。
【0025】
実施例6
実施例1の油脂組成物100部に対してアセチル化ショ糖脂肪酸エステル(DKエステルFA10E/第一工業製薬株式会社製)を2.0部配合し実施例6の油脂組成物とした。
【0026】
以下実施例1〜4の油脂組成物の脂肪酸組成(%)を表1にまとめた。
基準油脂分析試験法に準じて測定を行った。
【0027】
比較例1
パーム核油51部、パーム分別ステアリン39部、高エルシン酸菜種極度硬化油10部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い比較例1の油脂組成物とした。得られた油脂の沃素価は14.4で、トランス酸は2.0重量%以下であった。
【0028】
比較例2
ヤシ油40部、パーム分別ステアリン40部、高エルシン酸菜種極度硬化油20部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い比較例2の油脂組成物とした。
【0029】
比較例3
ヤシ油50部、パーム分別ステアリン30部、高エルシン酸菜種極度硬化油20部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い比較例3の油脂組成物とした。
【0030】
比較例4
硬化ヤシ油40部、パーム分別ステアリン30部、高エルシン酸菜種極度硬化油15部、中鎖脂肪酸油脂15部を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い比較例4の油脂組成物とした。
【0031】
比較例5
ヤシ油50部、パーム分別ステアリン40部、高エルシン酸菜種極度硬化油10部、を混合した油脂を原料にエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行い比較例5の油脂組成物とした。
【0032】
以下比較例1〜5の油脂組成物の脂肪酸組成(%)を表2にまとめた。
基準油脂分析試験法に準じて測定を行った。
【0033】
実施例1〜4および比較例1〜5の油脂組成物について、炭素数10以下の脂肪酸の合計量(重量%)、炭素数14以下の脂肪酸の合計量(重量%)、炭素数20以上の脂肪酸の合計量(重量%)、沃素価、トランス酸含量(重量%)を表3にまとめた。また参考例として、ラウリン系ノーテンパー型油脂である「パルケナH」(不二製油株式会社製)、トランス酸型ノーテンパー型油脂である「メラノH1000」(不二製油株式会社製)も同様に表3にまとめた。
【0034】
実施例1〜4および比較例1〜5の油脂組成物について測定したSFCを表4に示した。基準油脂分析試験法に準じて測定を行った。
【0035】
(チョコレートの作製)
実施例1〜6および比較例1〜5の油脂組成物を原材料として、定法に従い実施例1A 〜6Aおよび比較例1A〜5Aのチョコレートを作製した。その配合を表5に示す。
【0036】
(チョコレートの官能評価と保存テスト)
作製したチョコレートを型に流し込み冷却固化した。官能評価として口どけ、およびスナップ性の評価を行った。また各実施例と比較例のチョコレートを20℃の一定温度、17〜28℃サイクル温度のインキュベーターに置き、保存テストを行った。なお17〜28℃のサイクル温度は17℃を10時間、17〜28℃に昇温に2時間、28℃を10時間、28℃〜17℃へ降温が2時間の24時間で1サイクルの温度変化とした。保存テストにおける評価は、1ヶ月経過後のブルームの発生を確認した。結果を表6にまとめた。
【0037】
評価基準 口どけ: ◎非常に良好 ○ 良好 × 口どけ不良
スナップ性: ◎非常に良好 ○良好 × スナップ性乏しい
ブルーム: ◎ブルーム発生なし ○ツヤがない × ブルーム発生あり
【0038】
結果は実施例1A〜6Aはいずれも良好な口どけ、スナップ性を有し、保存テストにおけるブルーム発生のないものであった。しかし、比較例1A〜5Aでは、口どけ、スナップ性、ブルーム発生のいずれかで劣る物であった。すなわち実施例1〜6の油脂組成物は、トランス酸を含まず、ココアバターを多く配合でき、さらに口どけとスナップ性が良好なチョコレート用油脂であった。
【0039】
(ココアバター含量別保存テスト)
実施例1および比較例1の油脂組成物を使用し、ココアバター含量別に上記方法同様にチョコレートを作製し、官能試験と20℃で保存テストを行った。結果は下記表7、表8に示す。評価基準は表6に準じる。
【0040】
結果は実施例1使用チョコレートではいずれのココアバター含量でも良好な口どけとスナップ性を両立するものであったが、比較例1使用品ではスナップ性を有するものの、口どけの悪いものであった。
保存テスト結果は比較例1使用チョコレートではココアバター含量が増えるほどブルームの発生が明らかに早くなったが、実施例1使用品では比較例1使用品と比べて明らかにブルームの発生が遅くなり、ココアバター含量11重量%では4ヶ月保存してもブルームの発生は認められなかった。
さらに4ヶ月経過においてブルームの発生がみられなかった、実施例1使用のココアバター含量11重量%のチョコレートでは、比較例1使用のココアバター含量11重量%品に比べて格段に口どけが良くなっていた。