【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図3に示す電流出力回路50によれば、演算増幅器52の出力端子から非反転入力端子(+)に至る負帰還ループ(
図3の点線矢印)の中にカレントミラー回路54が挿入されている。このカレントミラー回路54の挿入による不都合を解消するために、演算増幅器52の出力端子と演算増幅器52の反転入力端子(−)間に帯域制限容量C11を接続し、この帯域制限容量C11により、演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保している。
【0007】
上記した帯域制限容量C11を接続して演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保する理由は、カレントミラー回路54の持つ極が演算増幅器52の帯域近傍にあり、ループゲインが1倍になる周波数近傍で位相が回り、位相余裕(マージン)が確保できなくなることに基づく。このように、従来の2線式伝送器の電流出力回路50は、
図3中、点線矢印で示す演算増幅器52の負帰還ループの中にカレントミラー回路54のような低い極を持つ回路要素が挿入されることにより狭帯域化され、かつ交流的な入力インピーダンスが低くなって耐ノイズ性が悪化するといった課題があった。
【0008】
このため、出願人は、平成24年11月12日に、
図4,
図5に一例を示す「電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器」を特許出願した(特願2012−248042号:以下、先願という)。以下に、その内容について説明する。
【0009】
図4は、先願の広帯域2線式伝送器の基本構成を示す図である。
図4によれば、広帯域2線式伝送器1は、センサ60と、信号処理回路20と、電流出力回路30とから構成され、2本の伝送線L1,L2にそれぞれ接続される、正極電源端子VPと負極電源端子VNを介してDCS等の外部回路40に接続される。
【0010】
2線式伝送器1は、例えば、フィールド機器であり、外部回路40から2本の伝送線L1,L2を介して電源の供給を受け、センサ60により測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路20で信号処理し、電流出力回路30により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に、例えば、4[mA]〜20[mA]の所定の電流を出力する。
【0011】
電流出力回路30は、電流源回路31(第1の電流源回路),32(第2の電流源回路),33(第3の電流源回路)と、シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路),35(第2のシャント電圧源回路)とを含む。電流源回路31は、信号処理回路20から出力される制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1(第1の電流)を生成して電流源回路32へ出力する。電流源回路32(第2の電流源回路)は、電流I1によって制御される電流I2(第2の電流)を生成してシャント電圧源回路34へ出力する。
【0012】
シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路)は、電流源回路32から出力される電流I2から2線式伝送器1(センサ60と信号処理回路20)の内部電源#1を生成する。電流源回路33は、基準電圧Vrefによって制御される電流I3(第3の電流)を生成する。シャント電圧源回路35は、電流源回路33から出力される電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0013】
電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1,電流源回路32により生成される電流I2,電流源回路33により生成される電流I3により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に対し、制御電圧(制御信号x)によって制御される、4〜20[mA]の所定の電流Ioutを出力する。
【0014】
図5に電流出力回路30を構成する各電流源回路31,32,33の詳細な回路構成が示されている。
図5において、電流源回路31は、演算増幅器OP1と、N型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M1(第1の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R1とを含み構成される。
【0015】
演算増幅器OP1は、非反転入力端子(+)と伝送線L2に接続される負極電源端子VNとの間に信号処理回路20により生成される制御電圧(制御信号x)が印加される。電圧電流変換素子M1は、ゲート端が演算増幅器OP1の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に、ドレイン端が電流源回路32(後述する演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と電圧電流変換抵抗R7の一端)にそれぞれ接続され、ここで(電流源回路31)生成される電流I1を、ドレイン端を介して電流源回路32に出力する。なお、電流検出抵抗R1は、一端が電圧電流変換素子M1のソース端に、他端が負極電源端子VNに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に接続される。
【0016】
電流源回路32は、演算増幅器OP2と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M2(第2の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R3と、電圧電流変換抵抗R7とを含み構成される。
【0017】
演算増幅器OP2は、非反転入力端子(+)に電流源回路31(電圧電流変換素子M1のドレイン端)の出力が、反転入力端子(−)に電流検出抵抗R3を介して伝送線L1が接続される正極電源端子VPがそれぞれ接続される。電圧電流変換素子M2は、ゲート端が演算増幅器OP2の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路34にそれぞれ接続され、ドレイン端を介し、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成してシャント電圧源回路34に出力する。なお、電流検出抵抗R3は、一端が電圧電流変換素子M2のソース端に、他端が負極電源端子VNに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に接続される。また、電圧電流変換抵抗R7は、正極電源端子VPと演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)との間に接続される。
【0018】
電流源回路33は、演算増幅器OP3と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M3と、電流検出抵抗R5とを含み構成される。
【0019】
演算増幅器OP3は、非反転入力端子(+)と負極電源端子VN間に基準電圧が印加される。電圧電流変換素子M3は、ゲート端が演算増幅器OP3の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路35にそれぞれ接続され、ドレイン端を介して電流I3を生成してシャント電圧源回路35に出力する。なお、電流検出抵抗R5は、電圧電流変換素子M3のソース端と負極電源端子VNとの間に接続され、電圧電流変換素子M3のソース端との接続点が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に接続される。
【0020】
以下、電流出力回路30の動作を説明する。まず、センサ60は、圧力や温度等の物理量を電気信号に変換して信号処理回路20へ出力する。信号処理回路20は、センサ60から出力される電気信号に対して、例えば、歪み補正やノイズ除去等の所定の処理を施して制御信号x(制御電圧)を生成し、電流源回路31を構成する演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)と負極電源端子VN端子間に印加する。
【0021】
電流源回路31は、この制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1を生成する。すなわち、演算増幅器OP1は、電圧電流変換素子M1のゲート・ソース間の電圧を制御して、電流検出抵抗R1の両端に印加される電圧と制御電圧xとが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、制御電圧(制御信号x)が電流I1に変換され、その電流I1は、電圧電流変換素子M1のドレイン端を介し、電流源回路32(演算増幅器OP2の非反転端子および電圧電流変換抵抗R7の一端)へ出力される。
【0022】
次に、電流源回路32は、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成する。すなわち、電圧電流変換抵抗R7に電流I1が流れることにより電圧降下が発生して電流I1が再度電圧に変換され、その電圧は、演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に印加される。そして、このVP基準の電圧により、演算増幅器OP2は、電圧電流変換素子M2のゲート・ソース間電圧を制御し、電流検出抵抗R3の両端に印加される電圧とVP基準の電圧とが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、ドレイン端を介して生成した電流I2をシャント電圧源回路34に出力する。シャント電圧源回路34は、この電流I2を利用し、センサ60と信号処理回路20を駆動する内部電源#1を生成する。
【0023】
なお、電流源回路32を構成する電圧電流変換素子(P型MOS−FET)の主要なキャリアはホール(正孔)であり、ゲート端に入力される電圧がソース端より低い場合(ゲート・ソース間電圧)、ソースからドレインへ電流が流れるが、その電流は、入力電圧が−側であるほど大きくなり、+側であるほど小さくなり、所定の値で0になる。
【0024】
次に、電流源回路33とシャント電圧源回路35は、電流源回路32の電源を生成する。すなわち、電流源回路33では、演算増幅器OP3の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に基準電圧Vrefが印加されており、演算増幅器OP3は、電圧電流変換素子M3のゲート・ソース間電圧を制御することによって、電流検出抵抗R5の両端に印加される電圧が基準電圧と同じ値になるように制御する。結果的に基準電圧Vrefが電流I3に変換され、電圧電流変換素子M3のドレイン端を介してシャント電圧源回路35に出力される。シャント電圧源回路35は、この電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0025】
最終的に、電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1と、電流源回路32により生成される電流I2と、電流源回路33により生成される電流I3とにより、制御電圧(制御信号x)によって制御される4〜20[mA]の電流Ioutを生成し、2本の伝送線L1,L2を介してDCS等の外部回路40へ出力するとともに、センサ60と信号処理回路20とを駆動する内部電源#1を生成する。ここで、電流源回路31の伝達関数をf(x),電流源回路32の伝達関数をg(I2)とすれば、I1=f(x),I2=g(f(x)),Iout=f(x)+g(f(x))+13になる。
【0026】
上記した電流出力回路30によれば、図中、実線矢印で示した電流源回路31,32を構成する演算増幅器(それぞれOP1,OP2)の負帰環ループの内部に、カレントミラー回路のような低い局を持つ要素が含まれない(応答の遅い要素を除外した)ため、帯域制限の必要がなくなり、したがって広帯域化が可能な2線式伝送器1を提供することができる。具体的に、2線式伝送器1は、外部回路40に対し、4〜20[mA]の直流アナログ信号に交流デジタル信号を重畳して伝送するが、例えば、HART(Highway Addressable Remote Transducer)のようなキャリア周波数の低い通信波形から、Foundation Field BUSのようなキャリア周波数の高い通信波形を一つの2線式伝送器1(フィールド機器)内で、定数を変更することなく出力が可能になる。
【0027】
また、広帯域化により、交流的な入力インピーダンスが向上し、入力インピーダンスが向上することでノイズ耐性が向上するといった派生的効果も得られる。なお、電流を出力しながら内部電源を生成することも可能である。
【0028】
ところで、
図5の電流出力回路30の定電流源回路32に注目すれば、安定制御のためには演算増幅器OP2の周波数帯域を大きくする必要があり、この場合、他の回路ブロック31,33に比較して相対的に消費電力も大きくなる。また、定電流源回路32で使用される電流は定電流源回路33により決定され、定電流源回路32の中で閉じて使用されるが、定電流源回路32で使用される電流を、電流出力回路30を構成する他の回路ブロック31,33でも使用できれば電力効率が高まるため好ましい。
【0029】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、周波数帯域を大きくすることなく安定制御が可能であり、電力効率の向上をはかった電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器を提供することを目的とする。