特許第6229831号(P6229831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229831電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229831
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/02 20060101AFI20171106BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G08C19/02 A
   G08C19/00 U
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-191738(P2013-191738)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-60267(P2015-60267A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩野 陽一
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−329380(JP,A)
【文献】 特開昭56−88596(JP,A)
【文献】 特開昭61−39199(JP,A)
【文献】 実開平3−86489(JP,U)
【文献】 米国特許第4250490(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 19/02
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受け、センサにより測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力しながら内部電源を生成する2線式伝送器の電流出力回路であって、
前記信号処理回路から出力される制御電圧によって制御される第1の電流を出力する第1の電流源回路と、
前記第1の電流によって制御される第2の電流を出力する第2の電流源回路と、
前記第2の電流により前記内部電源を生成する第1のシャント電圧源回路と、
所定の電圧源により制御される第3の電流と前記第2の電流源回路により制御される第4の電流を生成する第3の電流源回路と、
前記第3の電流により前記第2の電流源回路の電源を生成する第2のシャント電圧源回路と、を有し、
前記第2の電流と前記第3の電流と前記第4の電流を前記内部電源で消費するとともに、前記第1の電流と前記第2の電流と前記第3の電流と前記第4の電流により、前記外部回路に前記伝送線を介して前記制御電圧によって制御される前記所定の電流を出力することを特徴とする電流出力回路。
【請求項2】
前記第3の電流源回路は、
非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方の負極電源端子間に所定の電圧が印加される演算増幅器と、
ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端を介して前記第3の電流を出力する第2の極性を有する電圧電流変換素子と、
前記電圧電流変換素子のソース端と前記負極電源端子との間に前記第1のシャント電圧源を介して接続され、前記電圧電流変換素子のソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される第1の電流検出抵抗と、
前記第2の電流源回路が有する第2の電流検出抵抗に接続され、前記第4の電流を流して前記演算増幅器と前記電圧源とを駆動する定電流ダイオードまたは駆動抵抗とを含み、
前記演算増幅器は、
前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記第1の電流検出抵抗に印加される電圧と前記所定の電圧源の電圧とが同じになるように制御して第1の電圧電流変換素子のドレイン端に前記第3の電流を出力することを特徴とする請求項1記載の電流出力回路。
【請求項3】
センサと、
信号処理回路と、
外部回路から2本の伝送線がそれぞれ接続される正極電源端子と負極電源端子を介して電源の供給を受け、前記センサにより測定される物理量を電気信号に変換して前記信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する請求項1または請求項2記載の電流出力回路と、
を有することを特徴とする広帯域2線式伝送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部回路と2本の伝送線を介して接続され、外部回路を電源として用いながら外部回路へ所定の電流信号を出力する電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器に関する。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は、DCS(分散制御システム)等の外部回路と2本の伝送線を介して接続され、外部回路を電源として用いながら、センサ等から取得した物理量を電流信号に変換して外部回路へ出力する、例えば、フィールド機器である。2線式伝送器は、専用の電源配線が不要であり、安価に設置できることから、プラントにおける差圧・圧力伝送機器や温度伝送器等のフィールド機器として広く利用されている。このフィールド機器は、物理量をフィールド機器の信号として世界標準である4[mA]〜20[mA]の直流電流に変換して外部回路へ送信する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ツェナーダイオードによらず、シャントレギュレータ(シャント電圧源回路)により任意に内部電圧の設定が可能であり、かつ安定した回路電源を確保することができる2線式伝送器についての発明が開示されている。
【0004】
図3には、上記した2線式伝送器において使用される従来の電流出力回路50の構成例が示されている。図3によれば、電流出力回路50は、電圧源回路51と、演算増幅器52(オペアンプ)と、電圧電流変換素子53(NPNトランジスタ)と、カレントミラー回路54と、シャント電圧源回路55と、電流検出抵抗R11と、帰還抵抗R12と、帯域制限抵抗R13および帯域制限容量C11と、を含み構成される。上記構成により、電流出力回路50は、シャント電圧源回路55により電流I1を出力しながら2線式伝送器の内部電源#1(不図示のセンサや信号処理回路の駆動電源)を生成し、正極電源端子VPと負極電源端子VN間に、Iout=(1+R12/R11)*I1になる電流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−81883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図3に示す電流出力回路50によれば、演算増幅器52の出力端子から非反転入力端子(+)に至る負帰還ループ(図3の点線矢印)の中にカレントミラー回路54が挿入されている。このカレントミラー回路54の挿入による不都合を解消するために、演算増幅器52の出力端子と演算増幅器52の反転入力端子(−)間に帯域制限容量C11を接続し、この帯域制限容量C11により、演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保している。
【0007】
上記した帯域制限容量C11を接続して演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保する理由は、カレントミラー回路54の持つ極が演算増幅器52の帯域近傍にあり、ループゲインが1倍になる周波数近傍で位相が回り、位相余裕(マージン)が確保できなくなることに基づく。このように、従来の2線式伝送器の電流出力回路50は、図3中、点線矢印で示す演算増幅器52の負帰還ループの中にカレントミラー回路54のような低い極を持つ回路要素が挿入されることにより狭帯域化され、かつ交流的な入力インピーダンスが低くなって耐ノイズ性が悪化するといった課題があった。
【0008】
このため、出願人は、平成24年11月12日に、図4図5に一例を示す「電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器」を特許出願した(特願2012−248042号:以下、先願という)。以下に、その内容について説明する。
【0009】
図4は、先願の広帯域2線式伝送器の基本構成を示す図である。図4によれば、広帯域2線式伝送器1は、センサ60と、信号処理回路20と、電流出力回路30とから構成され、2本の伝送線L1,L2にそれぞれ接続される、正極電源端子VPと負極電源端子VNを介してDCS等の外部回路40に接続される。
【0010】
2線式伝送器1は、例えば、フィールド機器であり、外部回路40から2本の伝送線L1,L2を介して電源の供給を受け、センサ60により測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路20で信号処理し、電流出力回路30により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に、例えば、4[mA]〜20[mA]の所定の電流を出力する。
【0011】
電流出力回路30は、電流源回路31(第1の電流源回路),32(第2の電流源回路),33(第3の電流源回路)と、シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路),35(第2のシャント電圧源回路)とを含む。電流源回路31は、信号処理回路20から出力される制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1(第1の電流)を生成して電流源回路32へ出力する。電流源回路32(第2の電流源回路)は、電流I1によって制御される電流I2(第2の電流)を生成してシャント電圧源回路34へ出力する。
【0012】
シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路)は、電流源回路32から出力される電流I2から2線式伝送器1(センサ60と信号処理回路20)の内部電源#1を生成する。電流源回路33は、基準電圧Vrefによって制御される電流I3(第3の電流)を生成する。シャント電圧源回路35は、電流源回路33から出力される電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0013】
電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1,電流源回路32により生成される電流I2,電流源回路33により生成される電流I3により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に対し、制御電圧(制御信号x)によって制御される、4〜20[mA]の所定の電流Ioutを出力する。
【0014】
図5に電流出力回路30を構成する各電流源回路31,32,33の詳細な回路構成が示されている。図5において、電流源回路31は、演算増幅器OP1と、N型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M1(第1の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R1とを含み構成される。
【0015】
演算増幅器OP1は、非反転入力端子(+)と伝送線L2に接続される負極電源端子VNとの間に信号処理回路20により生成される制御電圧(制御信号x)が印加される。電圧電流変換素子M1は、ゲート端が演算増幅器OP1の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に、ドレイン端が電流源回路32(後述する演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と電圧電流変換抵抗R7の一端)にそれぞれ接続され、ここで(電流源回路31)生成される電流I1を、ドレイン端を介して電流源回路32に出力する。なお、電流検出抵抗R1は、一端が電圧電流変換素子M1のソース端に、他端が負極電源端子VNに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に接続される。
【0016】
電流源回路32は、演算増幅器OP2と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M2(第2の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R3と、電圧電流変換抵抗R7とを含み構成される。
【0017】
演算増幅器OP2は、非反転入力端子(+)に電流源回路31(電圧電流変換素子M1のドレイン端)の出力が、反転入力端子(−)に電流検出抵抗R3を介して伝送線L1が接続される正極電源端子VPがそれぞれ接続される。電圧電流変換素子M2は、ゲート端が演算増幅器OP2の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路34にそれぞれ接続され、ドレイン端を介し、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成してシャント電圧源回路34に出力する。なお、電流検出抵抗R3は、一端が電圧電流変換素子M2のソース端に、他端が負極電源端子VNに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に接続される。また、電圧電流変換抵抗R7は、正極電源端子VPと演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)との間に接続される。
【0018】
電流源回路33は、演算増幅器OP3と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M3と、電流検出抵抗R5とを含み構成される。
【0019】
演算増幅器OP3は、非反転入力端子(+)と負極電源端子VN間に基準電圧が印加される。電圧電流変換素子M3は、ゲート端が演算増幅器OP3の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路35にそれぞれ接続され、ドレイン端を介して電流I3を生成してシャント電圧源回路35に出力する。なお、電流検出抵抗R5は、電圧電流変換素子M3のソース端と負極電源端子VNとの間に接続され、電圧電流変換素子M3のソース端との接続点が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に接続される。
【0020】
以下、電流出力回路30の動作を説明する。まず、センサ60は、圧力や温度等の物理量を電気信号に変換して信号処理回路20へ出力する。信号処理回路20は、センサ60から出力される電気信号に対して、例えば、歪み補正やノイズ除去等の所定の処理を施して制御信号x(制御電圧)を生成し、電流源回路31を構成する演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)と負極電源端子VN端子間に印加する。
【0021】
電流源回路31は、この制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1を生成する。すなわち、演算増幅器OP1は、電圧電流変換素子M1のゲート・ソース間の電圧を制御して、電流検出抵抗R1の両端に印加される電圧と制御電圧xとが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、制御電圧(制御信号x)が電流I1に変換され、その電流I1は、電圧電流変換素子M1のドレイン端を介し、電流源回路32(演算増幅器OP2の非反転端子および電圧電流変換抵抗R7の一端)へ出力される。
【0022】
次に、電流源回路32は、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成する。すなわち、電圧電流変換抵抗R7に電流I1が流れることにより電圧降下が発生して電流I1が再度電圧に変換され、その電圧は、演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に印加される。そして、このVP基準の電圧により、演算増幅器OP2は、電圧電流変換素子M2のゲート・ソース間電圧を制御し、電流検出抵抗R3の両端に印加される電圧とVP基準の電圧とが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、ドレイン端を介して生成した電流I2をシャント電圧源回路34に出力する。シャント電圧源回路34は、この電流I2を利用し、センサ60と信号処理回路20を駆動する内部電源#1を生成する。
【0023】
なお、電流源回路32を構成する電圧電流変換素子(P型MOS−FET)の主要なキャリアはホール(正孔)であり、ゲート端に入力される電圧がソース端より低い場合(ゲート・ソース間電圧)、ソースからドレインへ電流が流れるが、その電流は、入力電圧が−側であるほど大きくなり、+側であるほど小さくなり、所定の値で0になる。
【0024】
次に、電流源回路33とシャント電圧源回路35は、電流源回路32の電源を生成する。すなわち、電流源回路33では、演算増幅器OP3の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に基準電圧Vrefが印加されており、演算増幅器OP3は、電圧電流変換素子M3のゲート・ソース間電圧を制御することによって、電流検出抵抗R5の両端に印加される電圧が基準電圧と同じ値になるように制御する。結果的に基準電圧Vrefが電流I3に変換され、電圧電流変換素子M3のドレイン端を介してシャント電圧源回路35に出力される。シャント電圧源回路35は、この電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0025】
最終的に、電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1と、電流源回路32により生成される電流I2と、電流源回路33により生成される電流I3とにより、制御電圧(制御信号x)によって制御される4〜20[mA]の電流Ioutを生成し、2本の伝送線L1,L2を介してDCS等の外部回路40へ出力するとともに、センサ60と信号処理回路20とを駆動する内部電源#1を生成する。ここで、電流源回路31の伝達関数をf(x),電流源回路32の伝達関数をg(I2)とすれば、I1=f(x),I2=g(f(x)),Iout=f(x)+g(f(x))+13になる。
【0026】
上記した電流出力回路30によれば、図中、実線矢印で示した電流源回路31,32を構成する演算増幅器(それぞれOP1,OP2)の負帰環ループの内部に、カレントミラー回路のような低い局を持つ要素が含まれない(応答の遅い要素を除外した)ため、帯域制限の必要がなくなり、したがって広帯域化が可能な2線式伝送器1を提供することができる。具体的に、2線式伝送器1は、外部回路40に対し、4〜20[mA]の直流アナログ信号に交流デジタル信号を重畳して伝送するが、例えば、HART(Highway Addressable Remote Transducer)のようなキャリア周波数の低い通信波形から、Foundation Field BUSのようなキャリア周波数の高い通信波形を一つの2線式伝送器1(フィールド機器)内で、定数を変更することなく出力が可能になる。
【0027】
また、広帯域化により、交流的な入力インピーダンスが向上し、入力インピーダンスが向上することでノイズ耐性が向上するといった派生的効果も得られる。なお、電流を出力しながら内部電源を生成することも可能である。
【0028】
ところで、図5の電流出力回路30の定電流源回路32に注目すれば、安定制御のためには演算増幅器OP2の周波数帯域を大きくする必要があり、この場合、他の回路ブロック31,33に比較して相対的に消費電力も大きくなる。また、定電流源回路32で使用される電流は定電流源回路33により決定され、定電流源回路32の中で閉じて使用されるが、定電流源回路32で使用される電流を、電流出力回路30を構成する他の回路ブロック31,33でも使用できれば電力効率が高まるため好ましい。
【0029】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、周波数帯域を大きくすることなく安定制御が可能であり、電力効率の向上をはかった電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記した課題を解決するために本発明は、外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受け、センサにより測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力しながら内部電源を生成する2線式伝送器の電流出力回路であって、前記信号処理回路から出力される制御電圧によって制御される第1の電流を出力する第1の電流源回路と、前記第1の電流によって制御される第2の電流を出力する第2の電流源回路と、前記第2の電流により前記内部電源を生成する第1のシャント電圧源回路と、所定の電圧源により制御される第3の電流と前記第2の電流源回路により制御される第4の電流を生成する第3の電流源回路と、前記第3の電流により前記第2の電流源回路の電源を生成する第2のシャント電圧源回路と、を有し、前記第2の電流と前記第3の電流と前記第4の電流を前記内部電源で消費するとともに、前記第1の電流と前記第2の電流と前記第3の電流と前記第4の電流により、前記外部回路に前記伝送線を介して前記制御電圧によって制御される前記所定の電流を出力することを特徴とする。
【0031】
本発明において、前記第3の電流源回路は、非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方の負極電源端子間に所定の電圧が印加される演算増幅器と、ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端を介して前記第3の電流を出力する第2の極性を有する電圧電流変換素子と、前記電圧電流変換素子のソース端と前記負極電源端子との間に前記第1のシャント電圧源を介して接続され、前記電圧電流変換素子のソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される第1の電流検出抵抗と、前記第2の電流源回路が有する第2の電流検出抵抗に接続され、前記第4の電流を流して前記演算増幅器と前記電圧源とを駆動する定電流ダイオードまたは駆動抵抗とを含み、前記演算増幅器は、前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記第1の電流検出抵抗に印加される電圧と前記所定の電圧源の電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第3の電流を出力することを特徴とする。
【0032】
本発明の電流出力回路を有する広帯域2線式電送器は、センサと、信号処理回路と、外部回路から2本の伝送線がそれぞれ接続される正極電源端子と負極電源端子を介して電源の供給を受け、前記センサにより測定される物理量を電気信号に変換して前記信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する電流出力回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、周波数帯域を大きくすることなく安定制御が可能であり、電力効率の向上をはかった電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態にかかる電流出力回路の回路構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる電流出力回路の変形例の回路構成を示す図である。
図3】従来の電流出力回路の構成を示す図である。
図4】先願の広帯域2線式伝送器の基本構成を示す図である。
図5】先願の電流出力回路の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に実施形態という)について詳細に説明する。
【0036】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態にかかる電流出力回路の回路構成を示す図である。本実施形態の電流出力回路10は、外部回路(図4の符号40)から2本の伝送線(図4の符号L1,L2)を介して電源の供給を受け、センサ(図4の符号60)により測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路(図4の符号20)で信号処理し、伝送線L1,L2を介して外部回路40に所定の電流を出力しながら内部電源(内部電源#1)を生成する広帯域2線式伝送器(図4の符号1)に使用される。
【0037】
図1によれば、電流出力回路10は、電流源回路11(第1の電流源回路)と,電流源回路12(第2の電流源回路)と,電流源回路13(第3の電流源回路)と、シャント電圧源回路14(第1のシャント電圧源回路),シャント電圧源回路15(第2のシャント電圧源回路)とを含み構成される。
【0038】
電流源回路11は、信号処理回路20から出力される制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1(第1の電流)を生成して電流源回路12へ出力する。電流源回路12(第2の電流源回路)は、電流I1によって制御される電流I2(第2の電流)を生成してシャント電圧源回路14へ出力する。
【0039】
電流源回路13(第3の電流源回路)は、所定の電圧源により制御される電流I3(第3の電流)と電流源回路12により制御される電流I4(第4の電流)を生成して第1の電流源回路11へ出力する。シャント電圧源回路14(第1のシャント電圧源回路)は、電流I2により内部電源#1を生成し、電流I3と電流I4を消費する。また、シャント電圧源回路15(第2のシャント電圧源回路)は、電流I3により電流源回路12の電源を生成する。
【0040】
電流出力回路10は、電流源回路11により生成される電流I1と電流源回路12により生成される電流I2とにより、伝送線L1,L2を介して外部回路(図4の符号40)に対し、制御電圧(制御信号x)によって制御される、4〜20[mA]の所定の電流Ioutを出力する。
【0041】
図1において、図5に示す先願の電流出力回路30との構成上の差異は、電流源回路13の構成と内部電源#1への接続形態にあり、特徴的には、電流源回路12により生成される電流I3と電流I4が内部電源#1の電流として消費されることにある。他の構成は、図5と同様である。このため、以下に、説明の重複を回避する意味で電流源回路13の構成に着目して説明する。
【0042】
電流源回路13は、演算増幅器OP3と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M3と、電圧源になるツェナーダイオード16と、分圧抵抗R2,R4と、定電流ダイオードD1と、電流検出抵抗R5と、を含み構成される。
【0043】
演算増幅器OP3には、非反転入力端子(+)と負極電源端子VN間にツェナーダイオード16による電圧源が印加される。電圧電流変換素子M3は、ゲート端が演算増幅器OP3の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路15にそれぞれ接続され、ドレイン端を介して電流I3を生成してシャント電圧源回路15に出力する。なお、電流検出抵抗R5は、電圧電流変換素子M3のソース端と負極電源端子VNとの間にシャント電圧源回路14を介して接続され、電圧電流変換素子M3のソース端との接続点が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に接続される。
【0044】
演算増幅器OP3は、電流検出抵抗R5の両端の電圧をツェナーダイオード16等の電圧源を抵抗R1,R2で分圧して得られる電圧Yになるように、電圧電流変換素子M3のゲート電圧を制御する。この動作により、電圧Y/電流検出抵抗R5で求まる電流I3が流れ、電流源回路12の演算増幅器OP2とツェナーダイオード14とを駆動することができる。
【0045】
このとき、定電流ダイオードD1は、演算増幅器OP3や電圧源であるツェナーダイオード16を駆動する電流I4を流す。この定電流ダイオードD1を電流源回路12の電流検出抵抗R3に接続することにより、電流I4は、電流源回路12により制御される電流I2の一部となる。したがって、定電流ダイオードD1の電流精度や電流変動は、演算増幅器OP3によって吸収され、したがって出力電流Ioutの誤差にはならない。このように、電流I3,I4を内部電源#1の電流として消費できるため、2線式伝送器1の回路全体としての電力効率が向上する。
【0046】
(実施形態の動作)
以下、本実施形態にかかる電流出力回路10の動作について詳細に説明する。まず、センサ60は、圧力や温度等の物理量を電気信号に変換して信号処理回路20へ出力する。信号処理回路20は、センサ60から出力される電気信号に対して、例えば、歪み補正やノイズ除去等の所定の処理を施して制御信号x(制御電圧)を生成し、電流源回路11を構成する演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)と負極電源端子VN端子間に印加する。
【0047】
電流源回路11は、この制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1を生成する。すなわち、演算増幅器OP1は、電圧電流変換素子M1のゲート・ソース間の電圧を制御して、電流検出抵抗R1の両端に印加される電圧と制御電圧xとが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、制御電圧(制御信号x)が電流I1に変換され、その電流I1は、電圧電流変換素子M1のドレイン端を介し、電流源回路12(演算増幅器OP2の非反転端子および電圧電流変換抵抗R7の一端)へ出力される。
【0048】
次に、電流源回路12は、電流源回路11により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成する。すなわち、電圧電流変換抵抗R7に電流I1が流れることにより電圧降下が発生して電流I1が再度電圧に変換され、その電圧は、演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に印加される。そして、このVP基準の電圧により、演算増幅器OP2は、電圧電流変換素子M2のゲート・ソース間電圧を制御し、電流検出抵抗R3の両端に印加される電圧とVP基準の電圧とが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、ドレイン端を介して生成した電流I2をシャント電圧源回路14に出力する。シャント電圧源回路14は、この電流I2によりセンサ60と信号処理回路20を駆動する内部電源#1を生成する。
【0049】
なお、電流源回路12を構成する電圧電流変換素子(P型MOS−FET)の主要なキャリアはホール(正孔)であり、ゲート端に入力される電圧がソース端より低い場合(ゲート・ソース間電圧)、ソースからドレインへ電流が流れるが、その電流は、入力電圧が−側であるほど大きくなり、+側であるほど小さくなり、所定の値で0になる。
【0050】
次に、電流源回路13を構成する演算増幅器OP3は、電流検出抵抗R5の両端の電圧をツェナーダイオード16等の電圧源を抵抗R1,R2で分圧して得られる電圧Yになるように、電圧電流変換素子M3のゲート電圧を制御する。この動作により、電圧Y/抵抗R5で求まる電流I3が流れ、電流源回路12の演算増幅器OP2とツェナーダイオード14とを駆動する。このとき、定電流ダイオードD1は、演算増幅器OP3や電圧源であるツェナーダイオード16を駆動する電流I4を流す。この定電流ダイオードD1を電流源回路12の電流検出抵抗R3に接続することにより、電流I4は、電流源回路12により制御される電流I2の一部となる。したがって、定電流ダイオードD1の電流変動は演算増幅器OP3により吸収され、したがって、定電流ダイオードD1の精度や電流変動が出力電流Ioutの誤差になることはない。
【0051】
なお、電流源回路13とシャント電圧源回路15は、電流源回路12の電源を生成する。すなわち、電流源回路13では、演算増幅器OP3の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に電圧源となるツェナーダイオード16による電圧が印加されており、演算増幅器OP3は、電圧電流変換素子M3のゲート・ソース間電圧を制御することによって、電流検出抵抗R5の両端に印加される電圧が基準電圧と同じ値になるように制御する。結果的に電流I3に変換され、電圧電流変換素子M3のドレイン端を介してシャント電圧源回路15に出力される。シャント電圧源回路15は、この電流I3により電流源回路13の電源を生成する。
【0052】
最終的に、電流出力回路10は、電流源回路11により生成される電流I1と、電流源回路12により生成される電流I2と、電流源回路13により生成される電流I3とにより、制御電圧(制御信号x)によって制御される4〜20[mA]の電流Ioutを生成し、2本の伝送線L1,L2を介してDCS等の外部回路40へ出力するとともに、センサ60と信号処理回路20とを駆動する内部電源#1を生成する。
【0053】
図2に変形例の構成が示されている。図1に示す実施形態との差異は、定電流回路13を構成する定電流ダイオードD1を、演算増幅器OP3と電圧源であるツェナーダイオード16とを駆動する駆動抵抗R6で代替したことにある。この場合も電流I4の変動は、演算増幅器OP3により吸収されるため、出力電流Ioutの誤差になることはない。
【0054】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態にかかる電流出力回路10によれば、電流源回路13により生成される電流I3と、電流源回路12により生成される電流I2の一部であるI4を内部電源#1で消費する構成とすることで、電力効率の向上をはかった電流出力回路10、及び同回路を有する2線式伝送器1を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態にかかる電流出力回路10によれば、電流源回路11,12を構成する演算増幅器(それぞれOP1,OP2)の負帰環ループの内部に、カレントミラー回路のような低い局を持つ要素が含まれない(応答の遅い要素を除外した)ため、帯域制限の必要がなくなり、したがって広帯域化が可能な2線式伝送器1を提供することができる。また、広帯域化により、交流的な入力インピーダンスが向上し、入力インピーダンスが向上することでノイズ耐性が向上するといった派生的効果も得られる。なお、電流を出力しながら内部電源を生成することも可能である。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0057】
1…広帯域2線式伝送器、10…電流出力回路、11…第1の電流源回路、12…第2の電流源回路、13…第3の電流源回路、14…第1のシャント電圧源回路、15…第2のシャント電圧源回路、16…ツェナーダイオード、20…信号処理回路、40…外部回路、60…センサ、OP1,OP2,OP3…演算増幅回路、R2,R4…分圧抵抗、R1,R3,R5…電流検出抵抗、R6…駆動抵抗、R7…電圧電流変換抵抗、D1…定電流ダイオード、M1,M2,M3…電圧電流変換素子(MOS−FET)
図1
図2
図3
図4
図5