特許第6229834号(P6229834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特許62298341パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法
<>
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000002
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000003
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000004
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000005
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000006
  • 特許6229834-1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229834
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20171106BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-213351(P2013-213351)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-77035(P2015-77035A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 賢彦
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−17062(JP,A)
【文献】 特開2008−187794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続されたサイリスタ整流器と、前記サイリスタ整流器に直流中間回路を介して接続され、かつ複数の自己消弧型半導体スイッチング素子からなるインバータ部と、を備えたインバータ装置であって、前記インバータ部の出力電圧と同一周期のパルスにより前記半導体スイッチング素子をスイッチングする1パルスインバータ装置の制御回路において、
前記インバータ部の出力電流検出値が出力電流指令値に一致するように動作して前記インバータ部の出力電圧のパルス幅目標値を出力する第1の調節手段と、
前記パルス幅目標値が前記出力電圧の一定のパルス幅指令値に一致するように動作して前記サイリスタ整流器の点弧位相角を出力する第2の調節手段と、
を備え
前記一定のパルス幅指令値が、
前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]相当の指令値であることを特徴とする1パルスインバータ装置の制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載した1パルスインバータ装置の制御回路において、
前記出力電流検出値が前記出力電流指令値に一致する定常時には、前記第2の調節手段から出力される前記点弧位相角により前記サイリスタ整流器を制御して前記直流中間回路の電圧を調整しつつ前記パルス幅目標値を前記一定のパルス幅指令値に一致させ、
前記出力電流検出値が前記出力電流指令値に一致しない過渡時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を零から前記一定のパルス幅指令値に相当する値まで変化させて前記インバータ部を制御すると共に、前記第2の調節手段から出力される前記点弧位相角により前記サイリスタ整流器を制御して前記直流中間回路の電圧を調整することを特徴とする1パルスインバータ装置の制御回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路において、
前記一定のパルス幅指令値が、電気角で120度に相当する指令値であることを特徴とする1パルスインバータ装置の制御回路。
【請求項4】
請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路を用いた制御方法であって、
停止状態にある前記インバータ部を起動する前に、前記第2の調節手段の動作により前記点弧位相角を制御して前記直流中間回路の電圧を一定値に維持しておき、
前記インバータ部の起動時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を零から一定のパルス幅まで変化させ、その後、前記一定のパルス幅を維持し、
前記一定のパルス幅が、
前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]であることを特徴とする1パルスインバータ装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路を用いた制御方法であって、
運転状態にある前記インバータ部の停止動作を開始する前に、前記第2の調節手段の動作により前記点弧位相角を制御して前記直流中間回路の電圧を一定値に維持しておき、
前記インバータ部の停止時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を一定のパルス幅から零まで変化させ、その後、前記パルス幅を零にて維持し、
前記一定のパルス幅が、
前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]であることを特徴とする1パルスインバータ装置の制御方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載した1パルスインバータ装置の制御方法において、
前記一定のパルス幅が、電気角で120度であることを特徴とする1パルスインバータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスタ整流器及びインバータ部を備えた1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波インバータ装置等では、半導体スイッチング素子の損失を低減するため、出力周波数と同一周期のパルスによりスイッチングする、いわゆる1パルスインバータ装置が用いられることがある。
1パルスインバータ装置の出力電圧制御方式としてパルス振幅変調(PAM)制御方式等が知られているが、インバータ装置から出力されるパルス状の電圧波形には多くの高調波成分が含まれている。例えば、非特許文献1によれば、単相インバータの出力電圧のn次高調波成分V(実効値)は数式1のように表される。
[数式1]
=(2√2/nπ)E・sin(nθ/2) (rms)
なお、数式1において、nは高調波の次数、Eはインバータの直流電圧(直流中間電圧)、θ[度]は出力電圧のパルス幅であり、1パルスインバータ装置ではスイッチングパルスのパルス幅に等しい。
【0003】
数式1から明らかなように、n次高調波成分Vはパルス幅θに依存しており、このパルス幅θと、基本波成分に対するn次高調波成分(奇数調波成分)の含有率との関係を示すと、図6に示すようになる。
このため、n次高調波成分Vを低減させたい場合には、数式2を満たすようにパルス幅θを調整すれば良い。
[数式2]
sin(nθ/2)=0
図6から明らかなように、含有率が最も大きいのは3次高調波成分であり、この3次高調波成分Vを低減させるためには、θ=2π/3[rad]、つまり、出力電圧のパルス幅、言い換えればスイッチングパルスのパルス幅θを120度に固定すれば良いことになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「半導体電力変換回路」,第5版,p.91−p.99,社団法人電気学会,1990年4月10日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パルス幅を固定した状態でPAM制御を行うためには、インバータ装置の直流中間電圧の大きさを可変にする必要がある。
大容量のインバータ装置では、直流中間電圧の大きさを可変にするための順変換部として一般的にサイリスタ整流器が用いられており、このサイリスタ整流器に直流中間回路を介してインバータ部が接続されている。サイリスタ整流器は、その動作上、遅れ電流を流さなくてはならないため、直流中間回路にインダクタンスの大きい直流リアクトルを設ける必要がある。また、上記直流中間回路に接続される平滑用の直流コンデンサも、インバータ部のスイッチングに伴うリプル電流を吸収するために大きな容量が必要になるので、結果として、直流リアクトル及び直流コンデンサからなるLCフィルタの時定数は大きな値となる。
【0006】
このため、順変換部にサイリスタ整流器を用いた1パルスインバータ装置では、直流中間電圧を可変とするために必要な時間(すなわち、制御応答時間)が長くなり、急激な負荷変動に追従することが困難であるという問題があった。また、制御応答が遅いため、インバータ装置の起動・停止に多くの時間がかかるという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、急激な負荷変動への追従性を高めると共に応答性を向上させた1パルスインバータ装置の制御回路及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る制御回路は、交流電源に接続されたサイリスタ整流器と、前記サイリスタ整流器に直流中間回路を介して接続され、かつ複数の自己消弧型半導体スイッチング素子からなるインバータ部と、を備えたインバータ装置であって、前記インバータ部の出力電圧と同一周期のパルスにより前記半導体スイッチング素子をスイッチングする1パルスインバータ装置の制御回路において、
前記インバータ部の出力電流検出値が出力電流指令値に一致するように動作して前記インバータ部の出力電圧のパルス幅目標値を出力する第1の調節手段と、
前記パルス幅目標値が前記出力電圧の一定のパルス幅指令値に一致するように動作して前記サイリスタ整流器の点弧位相角を出力する第2の調節手段と、
を備え
前記一定のパルス幅指令値が、前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]相当の指令値であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る制御回路は、請求項1に記載した1パルスインバータ装置の制御回路において、
前記出力電流検出値が前記出力電流指令値に一致する定常時には、前記第2の調節手段から出力される前記点弧位相角により前記サイリスタ整流器を制御して前記直流中間回路の電圧を調整しつつ前記パルス幅目標値を前記一定のパルス幅指令値に一致させ、
前記出力電流検出値が前記出力電流指令値に一致しない過渡時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を零から前記一定のパルス幅指令値に相当する値まで変化させて前記インバータ部を制御すると共に、前記第2の調節手段から出力される前記点弧位相角により前記サイリスタ整流器を制御して前記直流中間回路の電圧を調整することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る制御回路は、請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路において、前記一定のパルス幅指令値が、電気角で120度に相当する指令値であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る制御方法は、請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路を用いた制御方法であって、
停止状態にある前記インバータ部を起動する前に、前記第2の調節手段の動作により前記点弧位相角を制御して前記直流中間回路の電圧を一定値に維持しておき、
前記インバータ部の起動時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を零から一定のパルス幅まで変化させ、その後、前記一定のパルス幅を維持し、
前記一定のパルス幅が、前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る制御方法は、請求項1または2に記載した1パルスインバータ装置の制御回路を用いた制御方法であって、
運転状態にある前記インバータ部の停止動作を開始する前に、前記第2の調節手段の動作により前記点弧位相角を制御して前記直流中間回路の電圧を一定値に維持しておき、
前記インバータ部の停止時には、前記第1の調節手段の動作により前記パルス幅目標値を一定のパルス幅から零まで変化させ、その後、前記パルス幅を零にて維持し、
前記一定のパルス幅が、前記出力電圧に含まれる高調波成分のうちn(nは奇数)次高調波成分を低減させたい時に、sin(nθ/2)=0を満足するパルス幅θ[rad]であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る制御方法は、請求項4または5に記載した1パルスインバータ装置の制御方法において、前記一定のパルス幅が、電気角で120度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、定常時には、出力電圧のパルス幅が所定値に固定されるようにサイリスタ整流器の点弧位相角を制御して出力電圧に含まれる高調波成分を低減すると共に、負荷が変動する過渡時には、出力電圧のパルス幅を変化させるように前記点弧位相角を制御することで制御応答の高速化が可能になる。これらの運転切替えは、装置の構成を変えずに実現可能であるため、装置の高価格化を招くことなく負荷変動への追従性や応答性を向上させることができる。
更に、インバータ装置の起動・停止時間の短縮による利便性の向上、及び、故障時や異常時における速やかな保護動作による信頼性の向上も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態が適用される1パルスインバータ装置の主回路構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御回路の主要部を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態が適用される1パルスインバータ装置の定常転時の出力電圧及び出力電流を示す波形図である。
図4】本発明の実施形態が適用される1パルスインバータ装置の起動時の動作を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の実施形態が適用される1パルスインバータ装置の停止時の動作を示すタイミングチャートである。
図6】1パルスインバータ装置における出力電圧のパルス幅θと基本波成分に対するn次高調波成分の含有率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、この実施形態に係る1パルスインバータ装置の主回路構成図である。図1において、三相の交流電源Vには、連系インダクタンスACLを介して、サイリスタTHYからなる順変換部としてのサイリスタ整流器RECが接続されている。このサイリスタ整流器RECは、サイリスタTHYの点弧位相角を制御することにより交流電源Vから電圧可変の直流電源を生成するためのものである。
【0017】
サイリスタ整流器RECの直流出力端子間には、サイリスタ整流器RECの入力交流電流を遅れ電流とし、かつ、サイリスタ整流器RECの出力直流電流を平滑化する直流リアクトルDCLと、サイリスタ整流器RECの出力直流電圧を平滑化し、かつ、後述する半導体スイッチング素子Q〜Qのスイッチングに伴うリプル電流を吸収する直流コンデンサDCCとの直列回路が接続されている。
直流コンデンサDCCの両端には、IGBT等の自己消弧型半導体スイッチング素子Q〜Qからなるインバータ部INVの直流端子が接続され、インバータ部INVの交流端子間には負荷Lが接続されている。なお、インバータ部INVは、例えば非接触給電などの用途において、負荷Lに一定の電流Iinvを供給するものである。
【0018】
図2は、この実施形態に係る制御回路の主要部を示すブロック図である。このブロック図は、図1に示したサイリスタ整流器RECに対する点弧位相角と、インバータ部INVの出力電圧Vinvのパルス幅目標値(半導体スイッチング素子Q〜Qに対するスイッチングパルス幅目標値)と、を生成する機能を備えている。
【0019】
図2において、インバータ部INVの出力電流指令値Iinvと出力電流検出値Iinvとの偏差が減算手段11により算出され、この偏差を零にするように第1の調節手段としての調節器REGが動作することにより、インバータ部INVの出力電圧Vinvのパルス幅目標値(以下、単にパルス幅目標値ともいう)が生成される。また、インバータ部INVの固定パルス幅指令値として設定された120度相当の信号と前記パルス幅目標値との偏差が減算手段12により算出され、この偏差を零にするように第2の調節手段としての調節器REGが動作することにより、サイリスタ整流器RECの点弧位相角が生成される。
なお、パルス幅目標値に基づいてインバータ部INVの半導体スイッチング素子Q〜Qを駆動するためのゲートパルス発生回路、及び、点弧位相角に基づいてサイリスタ整流器RECのサイリスタTHYを点弧するための点弧パルス発生回路については、何れも周知であるため説明を省略する。
【0020】
次に、この実施形態の動作を説明する。
まず、負荷(出力電流Iinv)が一定である定常時の動作について、図3を参照しつつ説明する。定常時には、インバータの出力電圧Vinvに含まれる高調波成分、例えば含有率が最大である3次高調波成分を低減するために、前述した原理によって出力電圧Vinvのパルス幅が120度となるように運転する。なお、定常時には、図2における出力電流指令値Iinvと出力電流検出値Iinvとの偏差は零であり、調節器REGから出力されるパルス幅目標値は一定値である。
【0021】
ここで、同一の出力電流Iinvに対して、負荷Lのインピーダンスが小さい場合には、図3(a)に示すごとく、インバータ部INVの出力電圧Vinvの振幅(直流中間電圧Edc)を小さくし、また、負荷Lのインピーダンスが大きい場合には、図3(b)に示すごとく、インバータ部INVの出力電圧Vinvの振幅を大きくするように、調節器REGによりサイリスタ整流器RECの点弧位相角を制御して直流中間電圧Edcの大きさを調整する。すなわち、図2における減算手段12の出力が零になるように調節器REGが動作してサイリスタ整流器RECの点弧位相角を制御することにより、調節器REGの出力(パルス幅目標値)はパルス幅指令値である120度に調整される。
【0022】
つまり、定常運転時には、図3(a),(b)に示すように、負荷Lのインピーダンスに応じてサイリスタ整流器RECの点弧位相角を制御して直流中間電圧Edcを変化させることにより、インバータ部INVの出力パルス幅を120度に固定して運転し、出力電圧Vinvに含まれる3次高調波成分を低減する。
このようにパルス幅目標値を一定値に固定して運転するモードを、便宜的にパルス幅固定運転モードという。
【0023】
次に、負荷が変化する過渡時の動作、例えば、負荷Lのインピーダンスが小から大へ急変して出力電流Iinvが急減した場合の動作を説明する。
出力電流Iinvが急減した場合には、出力電流指令値Iinvと出力電流検出値Iinvとの偏差が零になるように図2の調節器REGが動作し、パルス幅目標値が増大する。このようにパルス幅目標値を変化させて運転するモードを、便宜的にパルス幅可変運転モードという。
パルス幅目標値が大きくなれば出力電圧Vinvが大きくなり、出力電流Iinvが増加する。ここで、インバータ部INVの半導体スイッチング素子Q〜Qは高周波でスイッチングを行っているため、パルス幅目標値の変化に対して実際の出力電圧Vinvは高速に追従可能である。
【0024】
一方、サイリスタ整流器RECは、インバータ部INVの出力電圧Vinvのパルス幅がパルス幅指令値の120度に一致するように調節器REGが動作して点弧位相角を制御し、直流中間電圧Edcを変化させる。ここで、直流中間電圧Edcが変化する時間は、図1における直流リアクトルDCL及び直流コンデンサDCCからなるLCフィルタの時定数に依存する。この時定数を、パルス幅目標値が変化する応答時間より十分大きく設定し、かつ、調節器REGの制御時定数を調節器REGの制御時定数より十分大きく設定することにより、パルス幅の可変制御と点弧位相角の可変制御との相互干渉を防止することができる。
そして、サイリスタ整流器RECの点弧位相角の制御により直流中間電圧Edcが所望の値に調整され、パルス幅目標値が120度になった時点以後、定常時と同様にパルス幅を120度に維持するパルス幅固定運転モードに復帰する。
【0025】
次いで、図4は、インバータ装置の起動時の動作を示すタイミングチャートである。
インバータ装置の起動時には、インバータ部INVが停止している状態で、サイリスタ整流器RECを予め運転することにより直流中間電圧Edcを一定値に維持しておく。そして、図4の時刻t〜tのパルス幅可変運転モードに示すように、出力電圧Vinvのパルス幅目標値を0度から120度まで短時間で増大させる。これにより、出力電流Iinvの立上がり時間、すなわち装置の起動時間を短縮する。そして、時刻tにおいてパルス幅目標値が120度に達した時点で、パルス幅固定運転モードに切り替える。
【0026】
図5は、インバータ装置の停止時の動作を示すタイミングチャートである。
インバータ装置の停止時には、サイリスタ整流器RECの運転を継続して直流中間電圧Edcを一定値に維持したまま、図5の時刻t〜tに示すパルス幅可変運転モードのように、パルス幅目標値を120度から0度まで短時間で減少させる。これにより、負荷電流Iinvの立下り時間、すなわち装置の停止時間を短縮する。そして、時刻tにおいてパルス幅目標値が0度に達した時点で、インバータ部INVの運転を完全に停止する。
また、装置の故障時や負荷Lの異常時などに出力電流を短時間で制限する必要がある場合にも、上記の停止動作と同様に、インバータ部INVをパルス幅可変運転モードに切り替えてパルス幅目標値を短時間で0度まで小さくすることにより、高速な保護動作を行うことができる。
【0027】
なお、図4及び図5と異なり、出力電圧Vinvのパルス幅を120度に固定したままでインバータ装置を起動・停止するためには、サイリスタ整流器RECの動作によって直流中間電圧Edcの大きさを変化させなくてはならず、これに要する時間(応答時間)は直流リアクトルDCL及び直流コンデンサDCCによる時定数に依存して長くなるため、高速な起動・停止には適さないものである。
【0028】
上述した実施形態では、インバータ部INVの出力電圧に含まれる3次高調波成分を低減する場合の動作を説明したが、本発明は、他の高調波成分を低減させる際にも有効であり、例えば、5次高調波成分を低減するためにパルス幅目標値を144度に調整するような場合にも適用可能である。
また、インバータ部INVは単相に限らず、三相などの多相構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば、電気自動車等における交流電動機の可変速駆動システムのように、インバータ装置の起動・停止を頻繁に繰り返す用途や、起動・停止時間の短縮が求められる各種の運転システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
:交流電源
ACL:連系インダクタンス
REC:サイリスタ整流器
THY:サイリスタ
DCL:直流リアクトル
DCC:直流コンデンサ
〜Q:半導体スイッチング素子
INV:インバータ部
L:負荷
REG,REG:調節器
11,12:減算手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6