特許第6229836号(P6229836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229836
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ガス濃度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   G01N27/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-258283(P2013-258283)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-114274(P2015-114274A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】本多 泰介
(72)【発明者】
【氏名】望月 計
(72)【発明者】
【氏名】佐川 清志
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4613184(JP,B2)
【文献】 特開2008−281514(JP,A)
【文献】 特開2009−058502(JP,A)
【文献】 特開昭53−019888(JP,A)
【文献】 特開2005−077144(JP,A)
【文献】 特開平11−142360(JP,A)
【文献】 特開2004−093203(JP,A)
【文献】 特表2003−524149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G01N 1/00− 1/30
G01N 1/32− 1/38
G01N 33/48−33/98
B60K 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気流路に吹き込まれた呼気における計測対象ガスの濃度の計測を行うガス濃度計測装置であって、
前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号を出力するガスセンサと、
前記吹き込まれた呼気に基づいて生じた前記呼気流路内の圧力を出力する圧力センサと、
前記圧力センサから出力された前記呼気流路内の圧力が閾値以上である場合に、前記呼気流路内に呼気が吹き込まれていると判定する曝露指示部と、
前記ガスセンサから出力された前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号に基づいて、前記計測対象のガスの濃度を計測するガス濃度計測部と、
前記曝露指示部が前記呼気流路内に呼気が吹き込まれていると判定した時刻から、前記ガス濃度計測部が計測した前記計測対象のガスの濃度に対して単調非減少となる時間である復帰時間が経過した時刻までの経過時間を計時する計時部と、
前記計時部が計時した経過時間を加算して延べ使用時間を更新する履歴更新部と、
前記履歴更新部により更新された延べ使用時間が、所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記ガスセンサの交換をすべきであると判定する交換判定部と、
前記交換判定部が前記ガスセンサの交換をすべきであると判定すると、前記ガスセンサの交換の通知を行う通知部と
を備えることを特徴とするガス濃度計測装置。
【請求項2】
前記ガスセンサが出力した前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号におけるピーク値及び信号積算値を記憶する記憶装置を備え、
前記ガス濃度計測部は、前記ガスセンサが出力した前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号の値が、前記記憶装置に記憶するピーク値の所定の閾値以下である場合に、前記記憶装置に記憶するピーク値及び前記ガスセンサが出力した前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号の値に基づいて前記計測対象のガスの濃度計測する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス濃度計測装置。
【請求項3】
前記履歴更新部で更新された延べ使用時間であるところの前記ガスセンサが外気に曝露された時間に応じた値の総和を、前記ガスセンサの交換の通知を行う所定の値で除算して得られる割合を、劣化の度合いとして算出する劣化度表示制御部を備え、
前記通知部は、前記劣化度表示制御部により算出された前記劣化の度合いを表示する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス濃度計測装置。
【請求項4】
使用開始日時を記憶する記憶装置を備え、
前記交換判定部は、前記記憶装置に記憶する使用開始日時と前記履歴更新部により更新された延べ使用時間とに基づいて、前記ガスセンサの使用期間が所定の値を超えたと判定した場合に、前記ガスセンサの交換をすべきであると判定し、
前記通知部は、前記交換判定部が前記ガスセンサの交換をすべきであると判定すると、前記ガスセンサの交換の通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のガス濃度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール濃度計測装置などのガス濃度計測装置が備えるガスセンサは、化学反応によりガスの濃度に応じた電気信号を出力する。そのため、ガスセンサは、長期間継続して使用すると、劣化により反応速度が低下する。つまり、ガスセンサが劣化すると、ガスの検知精度が低下する。そのため、ガス濃度計測装置の利用者は、ガスの検知精度が低下する前に、ガス濃度計測装置が備えるガスセンサを交換する必要がある。
【0003】
特許文献1には、アルコールセンサの使用回数が所定の値を超えた場合に交換時期の案内を出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4613184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスセンサの劣化の度合いは、ガス濃度計測装置の使用態様によって異なる。そのため、特許文献1に記載の技術のように、使用回数に基づいて交換時期の案内を出す場合、ガスセンサがまだ使用可能であるにも関わらず交換時期の案内を出したり、ガスセンサが使用できなくなっているにも関わらず交換時期の案内が出ない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、呼気流路に吹き込まれた呼気における計測対象ガスの濃度の計測を行うガス濃度計測装置であって、前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号を出力するガスセンサと、前記吹き込まれた呼気に基づいて生じた前記呼気流路内の圧力を出力する圧力センサと、前記圧力センサから出力された前記呼気流路内の圧力が閾値以上である場合に、前記呼気流路内に呼気が吹き込まれていると判定する曝露指示部と、前記ガスセンサから出力された前記計測対象のガスの濃度に応じた電気信号に基づいて、前記計測対象のガスの濃度を計測するガス濃度計測部と、前記曝露指示部が前記呼気流路内に呼気が吹き込まれていると判定した時刻から、前記ガス濃度計測部が計測した前記計測対象のガスの濃度に対して単調非減少となる時間である復帰時間が経過した時刻までの経過時間を計時する計時部と、前記計時部が計時した経過時間を加算して延べ使用時間を更新する履歴更新部と、前記履歴更新部により更新された延べ使用時間が、所定の閾値を超えたと判定した場合に、前記ガスセンサの交換をすべきであると判定する交換判定部と、前記交換判定部が前記ガスセンサの交換をすべきであると判定すると、前記ガスセンサの交換の通知を行う通知部とを備えることを特徴とするガス濃度計測装置である。
【発明の効果】
【0010】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、ガス濃度計測装置は、ガスセンサの曝露時間や検知したガス濃度などに基づいて、実際のガスセンサの劣化に応じたガスセンサの交換の通知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるアルコール濃度計測装置の外観図である。
図2】一実施形態によるアルコール濃度計測装置の内部構成を示す概略図である。
図3】一実施形態によるアルコール濃度計測装置のソフトウェア構成を示す概略ブロック図である。
図4】一実施形態によるアルコール濃度計測装置の動作を示す第1のフローチャートである。
図5】一実施形態によるアルコール濃度計測装置の動作を示す第2のフローチャートである。
図6】アルコールセンサの劣化の度合いの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、一実施形態によるアルコール濃度計測装置1の外観図である。
アルコール濃度計測装置1は、筐体101、ディスプレイ102、操作ボタン103、マウスピース104、ソケット105を備える。本実施形態において、アルコール濃度計測装置1は、ガス濃度計測装置の一例である。また、本実施形態において計測対象となるガスは、アルコールである。
筐体101は、アルコール濃度計測装置1の外殻をなす。
ディスプレイ102は、アルコール濃度計測装置1によるアルコールの濃度の計測結果等を表示する。
操作ボタン103は、アルコール濃度計測装置1を操作するための入力装置である。
マウスピース104は、被験者の呼気の吹き込み口である。
ソケット105は、アルコール濃度計測装置1と外部装置とを接続するプラグの受け口である。
【0013】
被験者が操作ボタン103を操作してアルコール濃度計測装置1を起動させた後、被験者がマウスピース104を介して呼気をアルコール濃度計測装置1に吹き込むと、アルコール濃度計測装置1は、呼気のアルコール濃度の計測を行う。アルコール濃度計測装置1は、アルコール濃度の計測を終えると、計測結果をディスプレイ102またはソケット105を介して接続された外部機器に表示させる。また、アルコール濃度計測装置1は、アルコールセンサ204の交換の通知を、ディスプレイ102に表示させる。つまり、本実施形態においてディスプレイ102は、通知部の一例である。
【0014】
図2は、一実施形態によるアルコール濃度計測装置1の内部構成を示す概略図である。
アルコール濃度計測装置1は、呼気流路201、圧力センサ202、電磁弁203、アルコールセンサ204、CPU205、主記憶装置206(main memory)、補助記憶装置207(storage)、インタフェース208(I/F)を備える。
【0015】
呼気流路201は、マウスピース104を介して吹き込まれた呼気を圧力センサ202及びアルコールセンサ204へ案内する管である。
圧力センサ202は、呼気流路201内の圧力を電気信号に変換してインタフェース208に出力する。
【0016】
電磁弁203は、アルコールセンサ204とマウスピース104との間の呼気流路201を開閉可能に設けられる。電磁弁203が閉じることにより、アルコールセンサ204は外気から遮断される。電磁弁203が開くことにより、アルコールセンサ204は呼気流路201を介して外気に曝露される。本実施形態において、電磁弁203は、曝露機構の一例である。
【0017】
アルコールセンサ204は、呼気流路201に流れる呼気のアルコールの濃度を電気信号に変換してインタフェース208に出力する。本実施形態において、アルコールセンサ204は、ガスセンサの一例である。本実施形態におけるアルコールセンサ204は、燃料電池方式のアルコールセンサである。具体的には、アルコールセンサ204は、水素イオンを透過する高分子膜と白金触媒とを備える。白金触媒が呼気のアルコールから水素イオンを分離し、当該水素イオンが高分子膜を介して空気中の酸素と反応することで、アルコールセンサ204は、電気を発生させる。そのため、呼気のアルコールの濃度が高いほど、白金触媒によって分離される水素イオンの量が増えるため、アルコールセンサ204が発生させる電流が多くなる。
【0018】
他方、アルコールセンサ204を継続的に使用し、アルコールセンサ204が外気に曝露される延べ時間が長くなると、白金触媒の活性が徐々に低下する。これにより、アルコールセンサ204における酸素と水素の活性が低くなる。つまり、アルコールセンサ204が劣化する。また、アルコールセンサ204がアルコールを含む呼気に曝露されると、水素と酸素の反応により水が発生する。そのため、アルコールセンサ204がアルコールの濃度が高い呼気に曝露されると、アルコールの濃度が高い呼気に曝露される場合と比較して、反応速度が遅くなる。つまり、アルコールセンサ204が劣化する。
【0019】
CPU205は、操作ボタン103の操作により起動する。CPU205は、補助記憶装置207からプログラムを読み出して主記憶装置206に展開し、当該プログラムに従って所定の処理を実行する。具体的には、CPU205は、プログラムに従って、呼気のアルコール濃度の計測処理と、アルコールセンサ204の交換の判定処理とを行う。つまり、本実施形態においてCPU205は、計測部の一例である。
主記憶装置206は、CPU205が直接アクセスする記憶装置である。
補助記憶装置207は、CPU205にアルコール計測処理及びアルコールセンサ204の交換判定処理を実行させるためのプログラムを記憶する。また、補助記憶装置207には、アルコールセンサ204の使用開始日時と、アルコールセンサ204の延べ使用時間とを記憶する。アルコールセンサ204の使用開始日時は、アルコール濃度計測装置1が出荷された日時であって、アルコール濃度計測装置1の販売者によって補助記憶装置207に記録される。
インタフェース208は、周辺機器が出力する信号をCPU205に出力し、またCPU205による命令を周辺機器に出力する。本実施形態における周辺機器は、圧力センサ202、電磁弁203、アルコールセンサ204、ディスプレイ102、及びソケット105を介して接続される外部機器である。
本実施形態において、CPU205、主記憶装置206、補助記憶装置207、インタフェース208は、コンピュータの一例である。
【0020】
図3は、一実施形態によるアルコール濃度計測装置1のソフトウェア構成を示す概略ブロック図である。
CPU205は、補助記憶装置207が記憶するプログラムを実行することで、交換判定部301、曝露指示部302、アルコール濃度計測部303、遮断指示部304、計時部305、履歴更新部306、劣化度表示制御部307を備える。
【0021】
交換判定部301は、補助記憶装置207が記憶するアルコールセンサ204の使用開始日時と、アルコールセンサ204の延べ使用時間とに基づいて、アルコールセンサ204を交換すべきか否かを判定する。具体的には、交換判定部301は、アルコールセンサ204の使用開始日時から現在時刻までの期間、すなわちアルコールセンサ204の使用期間が所定の閾値(例えば、1年)を超える場合に、アルコールセンサ204を交換すべきであると判定する。また、交換判定部301は、アルコールセンサ204の延べ使用時間、すなわちアルコールセンサ204が外気に曝露された時間に応じた値の総和が所定の閾値を超える場合に、アルコールセンサ204を交換すべきであると判定する。
【0022】
曝露指示部302は、インタフェース208を介して圧力センサ202から呼気流路201内の圧力を読み出す。曝露指示部302は、呼気流路201内の圧力に基づいて、呼気流路201内に呼気が吹き込まれているか否かを判定する。曝露指示部302は、呼気流路201内に呼気が所定時間(例えば、5秒間)吹き込まれたときに、インタフェース208を介して電磁弁203に呼気流路201を開く指示を出力する。曝露指示部302による指示に従って電磁弁203が開くことで、アルコールセンサ204は外気に曝露される。
【0023】
アルコール濃度計測部303は、インタフェース208を介してアルコールセンサ204からアルコールの濃度に応じた信号を取得する。アルコール濃度計測部303は、アルコールセンサ204から取得した信号のピーク値を特定する。アルコール濃度計測部303は、アルコールセンサ204から取得した信号の値が所定の閾値(例えば、ピーク値の20%)以下になるまで、信号が示す値を積算する。アルコール濃度計測部303は、信号のピーク値及び積算値に基づいて、呼気のアルコールの濃度を計測する。
本実施形態では、閾値としてピーク値の20%を用いることで、アルコールの濃度の計測に係る時間を5秒程度に抑えることができる。他方、閾値としてピーク値に対する相対的な値を用いず、絶対的な値を閾値として適用しても良い。この場合、アルコールセンサ204から取得した信号の値が閾値以下になるまでにかかる時間は、アルコールの濃度に対して単調増加する。
【0024】
遮断指示部304は、アルコール濃度計測部303がアルコールの濃度の計測を終えると、当該計測結果に応じた復帰時間の経過後に、インタフェース208を介して電磁弁203に呼気流路201を閉じる指示を出力する。これは、アルコールセンサ204の白金触媒からアルコールが抜けるまで、アルコールセンサ204を外気に曝露するためである。復帰時間は、検出されたアルコールの濃度に対して単調非減少となる時間である。これは、アルコールの濃度が高いほど、アルコールセンサ204からアルコールが抜けるまでにかかる時間が長くなるためである。遮断指示部304による指示に従って電磁弁203が閉じることで、アルコールセンサ204は外気から遮断される。
【0025】
計時部305は、アルコールセンサ204の使用時間を計時する。アルコールセンサ204の使用時間とは、曝露指示部302が呼気流路201内に呼気が吹き込まれていると判定した時刻から、遮断指示部304が電磁弁203に呼気流路201を閉じる指示を出力する時刻までの時間である。
履歴更新部306は、計時部305が計時した時間を、補助記憶装置207が記憶するアルコールセンサ204の延べ使用時間に加算する。
劣化度表示制御部307は、補助記憶装置207から使用開始日時及び延べ使用時間を読み出し、これに基づいて算出したアルコールセンサ204の劣化の度合いを、ディスプレイ102に表示させる。
【0026】
次に、本実施形態に係るアルコール濃度計測装置1の動作について説明する。
図4は、一実施形態によるアルコール濃度計測装置1の動作を示す第1のフローチャートである。
図5は、一実施形態によるアルコール濃度計測装置1の動作を示す第2のフローチャートである。
被験者による操作ボタン103の押下により、CPU205が起動する(ステップS1)。CPU205は、起動すると、補助記憶装置207が記憶するプログラムを実行する。
CPU205がプログラムを実行すると、交換判定部301は、補助記憶装置207が記憶するアルコールセンサ204の使用開始日時と、アルコールセンサ204の延べ使用時間を読み出す(ステップS2)。交換判定部301は、読み出した使用開始日時及び延べ使用時間に基づいて、アルコールセンサ204の使用期間が所定の閾値を超えたか、またはアルコールセンサ204の延べ使用時間が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS3)。
【0027】
交換判定部301は、アルコールセンサ204の使用期間が所定の閾値を超えたと判定した場合、またはアルコールセンサ204の延べ使用時間が所定の閾値を超えたと判定した場合(ステップS3:YES)、アルコールセンサ204を交換すべきであると判定する。交換判定部301は、アルコールセンサ204を交換すべきであると判定すると、インタフェース208を介してディスプレイ102にアルコールセンサ204の交換の通知を表示させる(ステップS4)。他方、交換判定部301は、アルコールセンサ204の使用期間が所定の閾値を超えていないと判定し、かつアルコールセンサ204の延べ使用時間が所定の閾値を超えていないと判定した場合(ステップS3:NO)、アルコールセンサ204の交換を要しないと判定する。
【0028】
ディスプレイ102が交換の通知を表示し、またはディスプレイ102交換判定部301がアルコールセンサ204の交換を要しないと判定すると、曝露指示部302は、インタフェース208を介して圧力センサ202から呼気流路201内の圧力を読み出す(ステップS5)。次に、曝露指示部302は、呼気流路201内の圧力が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0029】
曝露指示部302は、呼気流路201内の圧力が閾値以上であると判定した場合(ステップS6:YES)、マウスピース104を介して呼気流路201内に呼気が吹き込まれていると判定する。曝露指示部302が、呼気流路201内に呼気が吹き込まれていると判定すると、計時部305は、現在時刻からの経過時間の計時を開始する(ステップS7)。計時部305が既に経過時間を計時している場合は、計時を継続する。
【0030】
次に、曝露指示部302は、計時部305が計時している経過時間が所定の閾値に達したか否かを判定する(ステップS8)。曝露指示部302は、経過時間が閾値に達していないと判定した場合(ステップS8:NO)、ステップS5に戻り、呼気流路201内の圧力の判定を継続する。
【0031】
他方、ステップS6において曝露指示部302が、呼気流路201内の圧力が閾値未満であると判定した場合(ステップS6:NO)、曝露指示部302は、計時部305が経過時間の計時を行っているか否かを判定する(ステップS9)。曝露指示部302は、呼気流路201内の圧力が閾値未満であり、かつ計時部305が経過時間の計時を行っていない場合(ステップS9:NO)、被験者による呼気の吹き込みがなされていないと判定する。曝露指示部302は、呼気の吹き込みがなされていないと判定すると、ステップS5に戻り、呼気の吹き込みの判定を継続する。
【0032】
他方、曝露指示部302は、呼気流路201内の圧力が閾値未満であり、かつ計時部305が経過時間の計時を行っている場合(ステップS9:YES)、被験者による呼気の吹き込みが中断されたと判定する。曝露指示部302は、呼気の吹き込みが中断されたと判定すると、インタフェース208を介してディスプレイ102に呼気の吹き込みが中断されたことによるエラーの通知を表示させる(ステップS10)。また、計時部305は、経過時間の計時を終了し、経過時間をリセットする(ステップS11)。
【0033】
ステップS8において、曝露指示部302が、経過時間が閾値に達したと判定した場合(ステップS8:YES)、曝露指示部302は、計測に十分な量の呼気が呼気流路201内に吹き込まれたと判定する。曝露指示部302は、計測に十分な量の呼気が吹き込まれたと判定すると、インタフェース208を介して電磁弁203に呼気流路201を開く指示を出力する(ステップS12)。
【0034】
曝露指示部302が指示を出力すると、アルコール濃度計測部303は、インタフェース208を介してアルコールセンサ204からアルコールの濃度に応じた信号を取得する(ステップS13)。アルコール濃度計測部303は、アルコールセンサ204から取得した信号の値が、主記憶装置206が記憶する信号のピーク値より大きいか否かを判定する(ステップS14)。アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値が、主記憶装置206が記憶するピーク値より大きいと判定した場合(ステップS14:YES)、主記憶装置206が記憶するピーク値を更新する(ステップS15)。他方、アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値が主記憶装置206が記憶する最大値以下であると判定した場合(ステップS14:NO)、主記憶装置206が記憶する最大値を更新しない。次に、アルコール濃度計測部303は、アルコールセンサ204から取得した信号の値を、主記憶装置206が記憶する信号積算値に加算する(ステップS16)。
【0035】
次に、アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値が、主記憶装置206が記憶するピーク値の20%以下であるか否かを判定する(ステップS17)。アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値が、ピーク値の20%より大きいと判定した場合(ステップS17:NO)、信号の取得開始からの所定時間(例えば、1秒)の間に計測されたピーク値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0036】
アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値がピーク値の20%より大きく、かつピーク値が閾値より大きいと判定した場合(ステップS18:NO)、ステップS13に戻り、アルコールセンサ204からの信号の取得を継続する。他方、アルコール濃度計測部303は、取得した信号の値がピーク値の20%より大きく、かつピーク値が閾値より大きいと判定した場合(ステップS18:YES)、呼気にアルコールが含まれていないと判定する(ステップS19)。つまり、アルコール濃度計測部303は、呼気に含まれるアルコールの濃度が0%であると判定する。
【0037】
他方、ステップS17においてアルコール濃度計測部303が、取得した信号の値が所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS17:YES)、アルコール濃度計測部303は、主記憶装置206が記憶するピーク値及び信号積算値に基づいて、呼気に含まれるアルコールの濃度を計測する(ステップS20)。
【0038】
アルコール濃度計測部303は、ステップS19またはステップS20でアルコールの濃度を計測すると、インタフェース208を介してディスプレイ102にアルコールの濃度を表示させる(ステップS21)。
【0039】
次に、遮断指示部304は、アルコール濃度計測部303が計測した濃度に基づいて、復帰時間を特定する(ステップS22)。本実施形態では、遮断指示部304は、濃度と復帰時間とを関連付けたテーブルに従って、復帰時間を特定する。当該テーブルにおいて、復帰時間は、検出されたアルコールの濃度に対して単調非減少となる時間である。遮断指示部304は、復帰時間を特定すると、当該復帰時間の経過後に、インタフェース208を介して電磁弁203に呼気流路201を閉じる指示を出力する(ステップS23)。
【0040】
遮断指示部304が指示を出力すると、計時部305は、経過時間の計時を終了する(ステップS24)。次に、履歴更新部306は、計時部305が計時した時間を、補助記憶装置207が記憶するアルコールセンサ204の延べ使用時間に加算する(ステップS25)。履歴更新部306が延べ使用時間を更新すると、計時部305は、計時した経過時間をリセットする。これにより、アルコール濃度計測装置1は、処理を終了し、CPU205への電力供給を終了する。
【0041】
上述した処理により、交換判定部301は、アルコールセンサ204の使用期間及びアルコールセンサ204の延べ使用時間に基づいて、アルコールセンサ204を交換すべきか否かの判定を行う。アルコールセンサ204の延べ使用時間は、アルコールセンサ204が外気に曝露された時間に応じた値の総和である。したがって、アルコール濃度計測装置1は、アルコールセンサ204が外気に曝露されることによって白金触媒の活性が低下したときに、交換の通知を行うことができる。
【0042】
また、アルコールセンサ204が出力する電気信号の値が所定の閾値以下になるまでの時間及び待機時間は、呼気に含まれるアルコールの濃度に対して単調非減少となる時間である。つまり、アルコールセンサ204の延べ使用時間は、アルコールの濃度に応じた値の総和でもある。したがって、アルコール濃度計測装置1は、アルコールから分離された水素の反応により生じる水や、呼気に含まれるS(硫黄)等の成分によりアルコールセンサ204が劣化したときに、交換の通知を行うことができる。
【0043】
なお、アルコール濃度計測装置1は、起動している間、ディスプレイ102にアルコールセンサ204の劣化の度合いを表示する。
図6は、アルコールセンサの劣化の度合いの表示例を示す図である。
劣化度表示制御部307は、補助記憶装置207から使用開始日時及び延べ使用時間を読み出し、これに基づいてアルコールセンサ204の劣化の度合いを算出する。具体的には、劣化度表示制御部307は、延べ使用時間を使用時間の閾値で除算して得られる割合(アルコールセンサが外気に曝露された時間に応じた値の総和をアルコールセンサの交換の通知を行う所定の値で除算して得られる割合)と、使用開始日時からの経過時間を経過時間の閾値で除算して得られる割合とを、劣化の度合いとして算出する。なお、延べ使用時間を使用時間の閾値で除算して得られる割合は、アルコール濃度計測部303が計測したアルコールの濃度に応じた値の総和を、アルコールセンサ204の交換の通知を行う所定の値で除算して得られる割合と等価である。そして、劣化度表示制御部307は、算出した劣化の度合いをインタフェース208を介してディスプレイ102に表示させる。
【0044】
劣化の度合いの表示例の1つとしては、図6(A)、(B)に示すように、使用開始日時からの経過時間の閾値に対する割合と延べ使用時間の閾値に対する割合とをそれぞれバーによって表す方法が挙げられる。図6(A)に示す例では、アルコールセンサ204の劣化が無いときにバーの長さが最長となり、アルコールセンサ204を交換すべきときにバーの長さが最短となる。図6(B)に示す例では、アルコールセンサ204の劣化が無いときにバーの長さが最短となり、アルコールセンサ204を交換すべきときにバーの長さが最長となる。
このとき、アルコールセンサ204の劣化の度合いによってバーの色を変化させても良い。例えば、アルコールセンサ204の延べ使用時間を使用時間の閾値で除算して得られる割合が25%未満である場合に緑色、当該割合が25%〜75%である場合に黄色、当該割合が75%以上である場合に赤色と、バーの色を変化させても良い。使用開始日時からの経過時間についても同様である。
また、バーの長さは経過時間や延べ使用時間に対して線形の値としても良いし、対数の値をとっても良い。なお、バーの長さとして対数の値をとることで、交換の必要性を強調させることができる。
【0045】
他の表示例としては、図6(C)に示すように、使用開始日時からの経過時間と延べ使用時間とをそれぞれ記号やアイコンの数によって表す方法が挙げられる。図6(C)に示す例では、アルコールセンサ204の劣化が無いときに記号またはアイコンの数が最多となり、アルコールセンサ204を交換すべきときに記号またはアイコンの数が最少(0個)となる。
また、劣化度表示制御部307は、単に使用開始日時からの経過時間の閾値に対する割合と延べ使用時間の閾値に対する割合を示す数値をディスプレイ102に表示させても良い。
【0046】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、ガス濃度計測装置を、アルコール濃度計測装置1に実装する場合について説明したが、これに限られない。例えば、本発明に係るガス濃度計測装置の機能を、他のガス濃度計測装置に適用しても良い。他のガス濃度計測装置の例としては、呼気中のアセトン濃度を検出することで、体脂肪の燃焼度合いを計測する体脂肪燃焼量測定装置や、メチルメルカプタンなどの口臭要因ガスの濃度を計測する口臭検査装置などが挙げられる。また、本実施形態では、アルコールセンサ204が燃料電池方式のアルコールセンサである場合について説明したが、これに限られない。例えば、アルコール濃度計測装置1は、半導体方式のアルコールセンサを備えていても良い。
また、本実施形態では、計時部305が、呼気流路201内に呼気が吹き込まれた時刻からアルコール濃度の計測後、復帰時間が経過した時刻までの時間を計時し、その総和に基づいて交換の判定をする場合について説明したが、これに限られない。例えば、履歴更新部306は、曝露指示部302が呼気流路201を開く指示を出力してから遮断指示部304が呼気流路201を閉じる指示を出力するまでの時間を計測しても良い。
【0047】
また、計時部305が計時する使用時間は、アルコール濃度計測部303が計測したアルコールの濃度に応じた値の一例でもある。他方、計時部305は、遮断判定部が特定した復帰時間や、アルコールセンサ204が出力する信号値が所定の閾値以下になるまでの時間を、アルコール濃度計測部303が計測したアルコールの濃度に応じた値として、計時しても良い。
【0048】
また、履歴更新部306は、呼気流路201内に呼気が吹き込まれた時刻からエラーによって計時を終了する時刻までの時間を、アルコールセンサ204の延べ使用時間に加算しても良い。
【0049】
また、本実施形態では、交換判定部301が、アルコールセンサ204が外気に曝露された時間に応じた値の一例として、アルコールセンサ204の使用時間に基づいて交換の判定を行う場合について説明したが、これに限られない。例えば、交換判定部301は、アルコールセンサ204が外気に曝露された時間に対して単調非減少する所定のパラメータを用いて交換の判定を行っても良い。
【0050】
また、本実施形態では、アルコールセンサ204として燃料電池方式のものを用いる場合について説明したが、これに限られず、半導体方式や他の方式のアルコールセンサを用いても良い。
【0051】
また、本実施形態では、ディスプレイ102にアルコールセンサ204の劣化の度合いを表示する場合について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、アルコール濃度計測装置1に接続された外部機器に、アルコールセンサ204の劣化の度合いを表示させても良い。この場合、アルコール濃度計測装置1がインタフェース208を介して外部機器であるPC(Personal Computer)に接続されると、アルコール濃度計測装置1は、補助記憶装置207が記憶する使用開始日時及び延べ使用時間をPCに転送する。そして、PCは、転送された使用開始日時及び延べ使用時間に基づいてアルコールセンサ204の劣化の度合いを表示する。また、アルコール濃度計測装置1が、劣化度表示制御部307が生成した劣化の度合いの表示画像をPCに転送し、PCが当該表示画像を表示しても良い。
【0052】
また、本実施形態では、使用開始日時に基づくアルコールセンサ204の劣化の度合いと延べ使用時間に基づく劣化の度合いとをディスプレイ102に表示する場合について説明したが、これに限られず、いずれか一方のみを表示させるものであっても良い。
【0053】
なお、本実施形態において、主記憶装置206及び補助記憶装置207は、一時的でない有形の媒体の一例である。また、本実施形態では、プログラムが補助記憶装置207に記録されている場合について説明したが、これに限られない。例えば、プログラムは、補助記憶装置207以外の一時的でない有形の媒体に記録されていても良い。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース208を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、プログラムは、通信回線によってコンピュータに配信されるものであっても良い。この場合、配信を受けたコンピュータが当該プログラムを主記憶装置206に展開し、上記処理を実行する。
【0054】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置207に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1…アルコール濃度計測装置 101…筐体 102…ディスプレイ 103…操作ボタン 104…マウスピース 105…ソケット 201…呼気流路 202…圧力センサ 203…電磁弁 204…アルコールセンサ 205…CPU 206…主記憶装置 207…補助記憶装置 208…インタフェース 301…交換判定部 302…曝露指示部 303…アルコール濃度計測部 304…遮断指示部 305…計時部 306…履歴更新部
図1
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図6