(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[燃料電池スタック]
図1は本実施形態の燃料電池スタック1を第1エンドプレート4側から見た斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池スタック1は、図示しない車両の前部に画成されたモータルームやフロア下に搭載されている。燃料電池スタック1は、例えば駆動用モータに電力を供給するのに用いられる。なお、本実施形態の燃料電池スタック1は、例えば図中のA方向(第1方向)が車両の幅方向、B方向が車両の前後方向、C方向が車両の上下方向となるようにして車両に搭載される。
【0016】
燃料電池スタック1は、積層体(燃料電池積層体)3と、エンドプレート(第1エンドプレート4及び第2エンドプレート5)と、梁部材(第1梁部材6及び第2梁部材7)と、荷重計測部8(
図3参照)と、制御部9(
図3参照)と、を主に備えている。
積層体3は、複数の単位セル(燃料電池セル)2がA方向に積層されて構成されている。なお、以下の説明では、上述したA方向、B方向及びC方向において、積層体3の中央部に近づく向きを内側といい、積層体3の中央部から離間する向きを外側という場合がある。
【0017】
<単位セル>
図2は単位セル2の分解斜視図である。
図2に示すように、単位セル2は、例えば一対のセパレータ21,22と、各セパレータ21,22間に挟持されたMEA23と、を備えている。MEA23は、固体高分子電解質膜31と、固体高分子電解質膜31をA方向の両側から挟持するアノード電極32及びカソード電極33と、を備えている。
アノード電極32及びカソード電極33は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子をガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層と、を有している。
固体高分子電解質膜31は、例えばペルフルオロスルホン酸ポリマーに水を含浸させた素材により形成されている。固体高分子電解質膜31は、A方向から見た正面視外形がアノード電極32及びカソード電極33よりも大きくなっている。
図2の例において、固体高分子電解質膜31は、中央部にアノード電極32及びカソード電極33が重ね合わされ、外周部がアノード電極32及びカソード電極33に対して額縁状にはみ出している。すなわち、上述したMEA23の中央部は、固体高分子電解質膜31、アノード電極32及びカソード電極33が積層された発電面として機能する。
【0018】
図2に示すように、各セパレータ21,22は、MEA23のアノード電極32側に配置された第1セパレータ21と、MEA23のカソード電極33側に配置された第2セパレータ22と、を有している。なお、以下の説明では、各セパレータ21,22において、同一の構成については同様の符号を付してまとめて説明する。
【0019】
各セパレータ21,22は、セパレータプレート35と、セパレータプレート35の外周部を被覆するシール部材36と、を有している。
セパレータプレート35は、B方向を長手方向とする長方形状の金属板、又はカーボン板により構成されている。なお、
図2の例において、セパレータプレート35は、A方向から見た正面視外形が固体高分子電解質膜31と同等に形成されている。セパレータプレート35は、A方向から見てMEA23に重なり合っている。
【0020】
図3は
図1のIII−III線に相当する断面図である。
図3に示すように、シール部材36は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。シール部材36は、A方向に突出する突起部36aを有している。突起部36aは、MEA23の外周部において固体高分子電解質膜31にA方向で密接している。すなわち、MEA23の外周部は、シール部材36に密接するシール面23aとして機能する。
【0021】
図2に示すように、単位セル2(固体高分子電解質膜31及び各セパレータ21,22)におけるB方向の一端部(
図2における右側)には、酸化剤ガス入口連通孔41i、冷媒入口連通孔42i及び燃料ガス出口連通孔43oがC方向に並設されている。酸化剤ガス入口連通孔41i、冷媒入口連通孔42i及び燃料ガス出口連通孔43oは、単位セル2をA方向に貫通している。
図2に示す例では、酸化剤ガス入口連通孔41i、冷媒入口連通孔42i及び燃料ガス出口連通孔43oが上方から下方に順番に並んでいる。
【0022】
酸化剤ガス入口連通孔41iは、カソード電極33に供給される酸化剤ガス(空気等)が流通する。
冷媒入口連通孔42iは、純水やエチレングリコール等の冷媒が流通する。
燃料ガス出口連通孔43oは、アノード電極32を通過した使用済みの燃料ガス(例えば、水素等)が流通する。
【0023】
単位セル2におけるB方向の他端部(
図2における左側)には、燃料ガス入口連通孔43i、冷媒出口連通孔42o及び酸化剤ガス出口連通孔41oがC方向に並設されている。燃料ガス入口連通孔43i、冷媒出口連通孔42o及び酸化剤ガス出口連通孔41oは、単位セル2をA方向に貫通している。
図2に示す例では、燃料ガス入口連通孔43i、冷媒出口連通孔42o及び酸化剤ガス出口連通孔41oが上方から下方に順番に並んでいる。
【0024】
燃料ガス入口連通孔43iは、アノード電極32に供給される燃料ガスが流通する。
冷媒出口連通孔42oは、単位セル2との間で熱交換され、温度が上昇した冷媒が流通する。
酸化剤ガス出口連通孔41oは、カソード電極33を通過した使用済みの酸化剤ガスが流通する。
【0025】
図示の例では、単位セル2において、酸化剤ガス入口連通孔41i及び酸化剤ガス出口連通孔41o同士、並びに燃料ガス入口連通孔43i及び燃料ガス出口連通孔43o同士は、それぞれ対角の位置に形成されている。単位セル2において、冷媒入口連通孔42iは、酸化剤ガス入口連通孔41iと燃料ガス出口連通孔43oとの間に位置している。また、単位セル2において、冷媒出口連通孔42oは、酸化剤ガス出口連通孔41oと燃料ガス入口連通孔43iとの間に位置している。
【0026】
各セパレータ21,22(セパレータプレート35)の中央部は、プレス成形等によって凹凸形状とされている。セパレータ21,22のうち、MEA23と対向する面は、MEA23との間にそれぞれガス流路45,46(
図2中では矢印で示す。)を形成している。
具体的に、第1セパレータ21のうち、アノード電極32に対向する面側には、MEA23のアノード電極32との間に燃料ガス流路45が形成されている。燃料ガス流路45は、燃料ガス入口連通孔43i及び燃料ガス出口連通孔43oにそれぞれ連通している。
【0027】
第2セパレータ22のうち、カソード電極33に対向する面側には、MEA23のカソード電極33との間に酸化剤ガス流路46が形成されている。酸化剤ガス流路46は、酸化剤ガス入口連通孔41i及び酸化剤ガス出口連通孔41oにそれぞれ連通している。
【0028】
図3に示すように、積層体3は、一の単位セル2の第1セパレータ21と、一の単位セル2に隣接する他の単位セル2の第2セパレータ22と、が重ね合わされた状態で、A方向に積層されて構成される。そして、一の単位セル2の第1セパレータ21と、他の単位セル2の第2セパレータ22と、の間には、冷媒流路55が形成されている。
図2に示すように、冷媒流路55は、冷媒入口連通孔42i及び冷媒出口連通孔42oにそれぞれ連通している。
【0029】
なお、単位セル2の積層構造は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、3枚のセパレータと、各セパレータ間に挟持された2枚のMEAと、により単位セルを構成しても構わない。また、各連通孔のレイアウトについても適宜設計変更が可能である。
【0030】
<ターミナルプレート及びインシュレータ>
図4は、燃料電池スタック1の分解斜視図である。
図4に示すように、積層体3に対してA方向の両側には、ターミナルプレート(第1ターミナルプレート61及び第2ターミナルプレート62)がそれぞれ配置されている。各ターミナルプレート61,62は、A方向から見た正面視外形がセパレータ21,22よりも小さくなっている。各ターミナルプレート61,62には、A方向の外側に向けて突出する出力端子63,64が各別に形成されている。なお、各出力端子63,64には、絶縁性を有する筒体65a,65bが外挿されている。
【0031】
各ターミナルプレート61,62に対してA方向の外側には、インシュレータ(第1インシュレータ66及び第2インシュレータ67)が配置されている。
第1インシュレータ66は、A方向から見た正面視外形が第1ターミナルプレート61よりも大きくなっている。また、第1インシュレータ66は、A方向の厚さが第1ターミナルプレート61よりも厚くなっている。第1インシュレータ66の中央部には、A方向の外側に向けて窪む収容部70が形成されている。収容部70内には、上述した第1ターミナルプレート61が収容されている。
【0032】
第1インシュレータ66の外周部66a(収容部70の外側に位置する部分)は、各単位セル2のうち、A方向の一方側に位置する単位セル(以下、第1端部セル2aという。)の第1セパレータ21(シール部材36)にA方向の外側から密接している。第1インシュレータ66の外周部66aには、上述した各ガス入口連通孔41i,43i、ガス出口連通孔41o,43o及び冷媒連通孔42i,42oに各別に連通するガス入口接続孔(酸化剤ガス入口接続孔72i及び燃料ガス入口接続孔73i)、ガス出口接続孔(酸化剤ガス出口接続孔72o及び燃料ガス出口接続孔73o)及び冷媒接続孔(冷媒入口接続孔74i及び冷媒出口接続孔74o)が形成されている。
【0033】
第2インシュレータ67の中央部には、A方向の外側に向けて窪む収容部71が形成されている。収容部71内には、上述した第2ターミナルプレート62が収容されている。
図3に示すように、第2インシュレータ67の外周部67a(収容部71の外側に位置する部分)は、各単位セル2のうち、A方向の他方側に位置する単位セル(以下、第2端部セル2bという。)における第2セパレータ22(シール部材36)にA方向の外側から密接している。
【0034】
<エンドプレート>
図4に示すように、エンドプレート4,5は、A方向から見た正面視外形が単位セル2よりも大きい長方形状に形成されている。第1エンドプレート4は、積層体3との間に第1ターミナルプレート61及び第1インシュレータ66を挟み込んだ状態で、積層体3に対してA方向の一方側に配置されている。第1エンドプレート4には、上述したガス入口接続孔72i,73i、ガス出口接続孔72o,73o及び冷媒接続孔74i,74oに各別に連通するガス入口孔(酸化剤ガス入口孔75i及び燃料ガス入口孔76i)、ガス出口孔(酸化剤ガス出口孔75o及び燃料ガス出口孔76o)、冷媒入口孔77i及び冷媒出口孔77oが形成されている。
第1エンドプレート4及び第1インシュレータ66の中央部には、これらをA方向に貫通する引出孔81,82がそれぞれ形成されている。上述した第1ターミナルプレート61の出力端子63は、引出孔81,82を通して第1エンドプレート4に対してA方向の外側に引き出されている。
【0035】
第2エンドプレート5は、積層体3との間に第2ターミナルプレート62及び第2インシュレータ67を挟み込んだ状態で、積層体3に対してA方向の他方側に配置されている。
第2エンドプレート5及び第2インシュレータ67の中央部には、これらをA方向に貫通する引出孔83,84が形成されている。上述した第2ターミナルプレート62の出力端子64は、引出孔83,84を通して第2エンドプレート5に対してA方向の外側に引き出されている。
【0036】
図1に示すように、第1梁部材6及び第2梁部材7は、A方向に沿って延在する板状に形成されている。各梁部材6,7のうち、A方向の両端面は、各エンドプレート4,5におけるA方向の内側端面に突き合わされた状態でエンドプレート4,5に締結されている。具体的に、第1梁部材6は、積層体3のうち、C方向の両側において各エンドプレート4,5の長辺部分同士を連結している。第2梁部材7は、B方向の両側において、各エンドプレート4,5の短辺部分同士を連結している。なお、各梁部材6,7には、各梁部材6,7のA方向のひずみ量を検出する図示しないひずみゲージがそれぞれ取り付けられている。ひずみゲージは、各梁部材6,7のひずみ量に基づく電気信号(ひずみ信号)を制御部9に出力する。
【0037】
<荷重計測部>
図3に示すように、荷重計測部8は第2インシュレータ67の上述した収容部71内に収容されている。すなわち、荷重計測部8は、積層体3と第2ターミナルプレート62との間にA方向で挟持されている。なお、荷重計測部8は、各エンドプレート4,5と各インシュレータ66,67との間のうち、少なくとも一方に配置されていれば構わない。
【0038】
荷重計測部8は、カーボンプレート(第1導電材)91及び金属プレート(第2導電材)92,93がA方向に交互に積層されて構成されている。
図3の例において、2枚の金属プレート92,93の間にカーボンプレート91が挟持されている。但し、カーボンプレート91及び金属プレート92,93の積層枚数は、適宜変更が可能である。
【0039】
カーボンプレート91は、A方向を厚さ方向とする多孔質の薄板である。カーボンプレート91は、A方向から見た正面視の外形が収容部71の内形と同等に形成されている。すなわち、カーボンプレート91は、MEA23の発電面にA方向から見て重なり合い、MEA23の外周部におけるシール面23aにA方向で重なり合わない大きさに形成されている。
【0040】
金属プレート92,93は、第1金属プレート92及び第2金属プレート93を有している。なお、以下の説明では、各金属プレート92,93において、同様の構成については同一の符号を付してまとめて説明する。
【0041】
各金属プレート92,93は、B方向から見た断面視で波形に形成されている。具体的に、各金属プレート92,93は、A方向の内側に屈曲された山部94と、A方向の外側に屈曲された谷部95と、をそれぞれ有している。各金属プレート92,93は、第1金属プレート92の谷部95と、第2金属プレート93の山部94と、をA方向で対向させた状態で積層されている。
【0042】
第1金属プレート92は、山部94が第2端部セル2bの第2セパレータ22に接触し、谷部(接触部)95がカーボンプレート91に接触している。
第2金属プレート93は、山部(接触部)94カーボンプレート91に接触し、谷部95が第2ターミナルプレート62に接触している。
【0043】
各金属プレート92,93は、A方向から見た正面視の外形が収容部71の内形と同等に形成されている。すなわち、金属プレート92,93は、MEA23の発電面にA方向から見て重なり合い、MEA23の外周部におけるシール面23aにA方向で重なり合わない大きさに形成されている。なお、金属プレート92,93は、上述したセパレータプレート35の外周部をそれぞれ切除することで、作成することができる。但し、金属プレート92,93は、導電性を有する薄板を用いてセパレータプレート35とは別に作成しても構わない。
【0044】
上述した荷重計測部8には、各金属プレート92,93間の電圧降下を検出する検出部87が接続されている。検出部87は、第1検出端子97及び第2検出端子98と、電圧計99と、を備えている。
第1検出端子97は、その一端部が第1金属プレート92に電気的に接続されている。
第2検出端子98は、その一端部が第2金属プレート93に電気的に接続されている。
電圧計99は、各検出端子97,98の他端部が接続されている。
【0045】
<制御部>
制御部9は、締結荷重設定部100と、電極荷重設定部101と、シール荷重設定部102と、メンテナンス時期判定部103と、を主に有している。
締結荷重設定部100は、上述したひずみゲージから出力されるひずみ信号に基づいて締結荷重F1を設定する。なお、締結荷重とは、エンドプレート4,5から積層体3(各単位セル2)に付与されるA方向の荷重である。
【0046】
電極荷重設定部101は、上述した電圧計99から出力される電圧信号に基づき、電極荷重F2を算出する。具体的に、電極荷重設定部101は、電圧計99から出力される電圧信号に基づき、各金属プレート92,93及びカーボンプレート91間での接触抵抗を算出する。続いて、電極荷重設定部101は、算出された接触抵抗に基づき、電極荷重を算出する。電極荷重は、例えば
図5のような接触抵抗に関連付けられたマップ等に基づいて算出する。すなわち、各金属プレート92,93間での電圧降下は、各金属プレート92,93及びカーボンプレート91間での接触抵抗に応じて変化する。この場合、仮に電極荷重が低下すると、各金属プレート92,93及びカーボンプレート91間での接触抵抗が増加することで、各金属プレート92,93間での電圧降下が大きくなる。なお、電極荷重とは、単位セル2の発電面に対してA方向に作用する荷重である。
【0047】
シール荷重設定部102は、締結荷重設定部100で算出された締結荷重F1と、電極荷重設定部101で算出された電極荷重F2と、の差分をシール荷重F3として設定する(F3=F1−F2)。なお、シール荷重F3とは、単位セル2のシール面に対してA方向に作用する荷重である。
【0048】
メンテナンス時期判定部103は、シール荷重設定部102で算出されたシール荷重F3に基づいて燃料電池スタック1のメンテナンスが必要か否かを判定する。例えば、メンテナンス時期判定部103は、シール荷重F3が所定のシール荷重閾値Fa以下になった場合にメンテナンスが必要であると判定する。
【0049】
このように構成された燃料電池スタック1において、積層体3内に供給される酸化剤ガスは、各単位セル2の酸化剤ガス入口連通孔41iを、A方向における第2エンドプレート5側に向けて流通する。酸化剤ガス入口連通孔41iを流通する酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路46に導入されることで、MEA23のカソード電極33に供給される。
一方、積層体3内に供給される燃料ガスは、各単位セル2の燃料ガス入口連通孔43iを、A方向における第2エンドプレート5側に向けて流通する。燃料ガス入口連通孔43iを流通する燃料ガスは、燃料ガス流路45に導入されることで、MEA23のアノード電極32に供給される。
その結果、アノード電極32で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜31を透過してカソード電極33まで移動し、カソード電極33で酸化剤ガスと電気化学反応を起こして発電する。
【0050】
その後、カソード電極33で発電に供された使用済みの酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔41o内に流入する。酸化剤ガス出口連通孔41oに流入した使用済みの酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔41oをA方向における第1エンドプレート4側に向けて流通する。その後、使用済みの酸化剤ガスは、図示しない排出路を通って車外に排出される。
一方、アノード電極32で発電に供された使用済みの燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔43oに流入する。燃料ガス出口連通孔43oに流入した使用済みの燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔43o内をA方向における第1エンドプレート4側に向けて流通する。その後、使用済みの燃料ガスは、図示しない循環路を通って燃料ガス入口連通孔43iに戻される。また、循環路から定期的に排出された燃料ガスは、希釈器で使用済みの酸化剤ガスと混合して希釈された後、車外へ排出される。
【0051】
また、積層体3内に供給される冷媒は、冷媒入口連通孔42i内をA方向における第2エンドプレート5側に向けて流通する。冷媒入口連通孔42iを流通する冷媒は、各単位セル2間に位置する冷媒流路55に供給されることで、各単位セル2との間で熱交換が行われる。その後、冷媒は冷媒出口連通孔42o内に流入し、冷媒出口連通孔42o内をA方向における第1エンドプレート4側に向けて流通した後、積層体3から排出される。積層体3から排出された冷媒は、図示しない冷媒循環流路内を通ってラジエータや駆動用モータ等を流通した後、再び積層体3内に供給される。
【0052】
<メンテナンス時期の判定方法>
次に、上述した燃料電池スタック1におけるメンテナンス時期の判定方法を説明する。
図6は、メンテナンス時期の判定方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下の各ルーチンは、制御部9によって主に行われる。
図6に示すように、ステップS1において、締結荷重設定部100は、上述したひずみゲージから出力されるひずみ信号に基づいて締結荷重F1を設定する。
次に、ステップS2において、電極荷重設定部101は、電圧計99から出力される電圧信号に基づいて
図5に示すマップから電極荷重F2を設定する。
ステップS3において、シール荷重設定部102は、締結荷重設定部100で算出された締結荷重F1と、電極荷重設定部101で算出された電極荷重F2と、の差分をシール荷重F3として設定する。
【0053】
ステップS4において、メンテナンス時期判定部103は、シール荷重設定部102で設定されたシール荷重F3が、シール荷重閾値Fa以下であるか否かを判定する(判定工程)。
ステップS4における判定結果が「NO」の場合、所望のシール荷重F3が作用しており、メンテナンスの必要はないと判定する。この場合には、ステップS1に戻り、上述したルーチンを繰り返す。
一方、ステップS4の判定結果が「YES」の場合、シール荷重F3が低下しており、メンテナンスが必要であると判定する。
【0054】
図7は、時間と、発電性能、シール性、電極荷重F2及びシール荷重F3と、の関係を示すグラフである。
図7に示すように、燃料電池スタック1では、時間経過に伴い、電極荷重F2やシール荷重F3が低下していることが分かる。電極荷重F2の低下は、時間経過に伴うMEA23の機械劣化や化学劣化等が要因として考えられる。電極荷重F2が低下すると、各金属プレート92,93及びカーボンプレート91間での接触抵抗の増加により抵抗過電圧が増加する。これにより、単位セル2で発生した電力の取出し効率が低下し、発電性能が低下することになる。
また、シール荷重F3の低下は、時間経過に伴うシール部材36の劣化等が要因として考えられる。シール荷重F3が低下すると、隣り合う単位セル2間でシール性が低下して、反応ガスのリーク等に繋がるおそれがある。
【0055】
図8は、メンテナンス方法を説明するための説明図であって、
図3に相当する燃料電池スタック1の断面図である。
図8に示すように、上述したようにステップS4において、メンテナンスが必要であると判定された場合には、燃料電池スタック1のメンテナンスを行う。メンテナンス方法としては、例えば第2エンドプレート5と第2インシュレータ67の間に、着脱可能なシム部材110を介在させることが考えられる。シム部材110は、A方向から見た正面視外形が例えば第2インシュレータ67と同等に形成されている。
【0056】
そして、第2エンドプレート5と第2インシュレータ67の間にシム部材110を介在させることで、積層体3に作用するA方向の締結荷重F1を増加させることができる。なお、初期状態でシム部材110を介在させておき、メンテナンス時にシム部材110の枚数を増加させたり、厚さの異なるシム部材110に交換したりしても構わない。また、第1エンドプレート4と第1インシュレータ66との間にシム部材110を介在させても構わない。
【0057】
図9は、メンテナンス方法を説明するための説明図であって、
図3に相当する燃料電池スタック1の断面図である。
図9に示すように、第2インシュレータ67の収容部71内において、第2ターミナルプレート62と荷重計測部8との間にシム部材111を介在させても構わない。シム部材111は、A方向から見た正面視外形が単位セル2の発電面と同等に形成されている。
【0058】
そして、第2ターミナルプレート62と荷重計測部8の間にシム部材111を介在させることで、単位セル2の発電面に作用するA方向の電極荷重F2を増加させることができる。なお、初期状態でシム部材111を介在させておき、メンテナンス時にシム部材111の枚数を増加させたり、厚さの異なるシム部材111に交換したりしても構わない。また、第1ターミナルプレート61と積層体3との間にシム部材111を介在させても構わない。
【0059】
このように、本実施形態では、第2エンドプレート5と積層体3との間に、単位セル2の発電面に作用するA方向の電極荷重F2を検出する荷重計測部8を備える構成とした。
この構成によれば、荷重計測部8における金属プレート92,93間の電圧降下を検出することで、接触抵抗の増加に伴う電極荷重F2の低下を検出できる。この場合、例えば発電面及びシール面(例えば、シール面23a)を含む単位セル2の全面にA方向に作用する締結荷重F1を検出する構成に比べ、単位セル2の発電面に作用する電極荷重F2を正確かつ簡単に検出できる。また、締結荷重F1を検出した場合には、締結荷重F1と電極荷重F2とに基づいて単位セル2のシール面(例えば、シール面23a)に作用するシール荷重F3を検出できる。その結果、単位セル2の各所に作用する荷重を検出することができるので、荷重低下のメンテナンス時期や、荷重低下の要因が特定し易くなり、メンテナンス性を向上させることができる。
また、燃料電池スタック1の端部に荷重計測部8が設けられているので、積層体3の中間に荷重計測部を設ける場合等に比べて荷重計測部8に安定して荷重が作用することになり、計測精度を高めることができる。
しかも、荷重計測部8において、各金属プレート92,93間にカーボンプレート91を介在させることで、各金属プレート92,93を直接接触させる場合に比べて荷重低下時の電圧降下を大きくすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、第2インシュレータ67のうち、第2端部セル2bの発電面にA方向で対向する位置に、荷重計測部8を収容する収容部71が形成されている構成とした。
この構成によれば、単位セル2の面内方向(B方向及びC方向)において、単位セル2に対する荷重計測部8の位置ずれを抑制し、単位セル2の発電面と荷重計測部8との導通を確保できる。また、荷重計測部8の追加に伴う燃料電池スタック1のA方向への拡大を抑制できる。
【0061】
さらに、第2インシュレータ67と荷重計測部8との間にシム部材110,111が設けられるため、シム部材110,111の厚さや枚数を調整するだけで、締結荷重F1や電極荷重F2をより簡単に調整できる。その結果、更なるメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0062】
本実施形態では、シール荷重F3がシール荷重閾値Fa以下であるか否かに基づいてメンテナンス時期を判定することで、その後の発電性能やシール性の低下を未然に防止し、動作信頼性を確保できる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1導電材及び第2導電材としてカーボンプレート91及び金属プレート92,93を用いる構成について説明したが、これに限らず、導電性を有する異種材料であれば適宜設計変更が可能である。
上述した実施形態では、波形に形成された各金属プレート92,93のうち、第1金属プレート92の谷部95と、第2金属プレート93の山部94と、を接触部として構成した場合について説明したが、これに限られない。金属プレート92,93の接触部は、カーボンプレート91に接触可能な構成であれば、適宜変更が可能である。
【0064】
上述した実施形態では、メンテナンス時において、シム部材110,111を介在させて荷重を調整する構成について説明したが、これに限らず、ねじ機構等、種々の方法でメンテナンスを行うことが可能である。
上述した実施形態では、シール荷重に基づいてメンテナンス時期を判定する構成について説明したが、これに限られない。例えば、電極荷重F2のみに基づいてメンテナンス時期を判定しても構わない。この場合には、各金属プレート92,93間の電圧降下が閾値以上の場合に電極荷重F2が所望の値よりも低下し、メンテナンスが必要であると判定することが可能である。また、電極荷重F2及びシール荷重F3の少なくとも一方に基づいてメンテナンス時期を判定しても構わない。
【0065】
上述した実施形態では、メンテナンス時期の判定を制御部9により判定する構成について説明したが、これに限られない。検出部87で検出された電圧降下に基づいて手動で判定しても構わない。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。