特許第6229852号(P6229852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229852
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】電磁流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/60 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   G01F1/60
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-207289(P2015-207289)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-166854(P2016-166854A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-43039(P2015-43039)
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】李 万冬
(72)【発明者】
【氏名】石川 郁光
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅和
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−083572(JP,A)
【文献】 特開2006−234840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58−1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定管内を流れる被測定流体に励磁電流により生じる磁界を与え、前記測定管内に設けられた電極に発生する検出信号に基づいて前記被測定流体の流量を測定する電磁流量計であって、
正励磁期間と負励磁期間と無励磁期間とを有する励磁電流を生成する励磁回路と、
前記無励磁期間に発生する検出信号のうち、微分ノイズが収束した期間である無励磁安定期間における検出信号のレベルに基づいて、前記電極の電位を変動させる異常を検出する診断部と、
を備えたことを特徴とする電磁流量計。
【請求項2】
前記診断部は、連続する無励磁安定期間における前記検出信号の絶対値を平均化、あるいは検出信号のピーク値を平均化して得られる値を前記検出信号のレベルとすること特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
前記診断部は、前記検出信号のレベルが所定の基準値以上の場合に、前記電極の電位を変動させる異常が発生したと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記診断部は、前記電極の電位を変動させる異常が発生したと判定した場合に、あらかじめ定めた基準にしたがって、異常原因の示唆を行なうことを特徴とする請求項3に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記被測定流体の導電率を測定する導電率測定回路をさらに備え、
前記診断部は、前記導電率測定回路で測定された導電率を利用して前記異常原因の示唆を行なうことを特徴とする請求項4に記載の電磁流量計。
【請求項6】
前記励磁回路は、短周期のパルスと長周期のパルスとを重畳した2周波励磁波形の励磁電流を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【請求項7】
前記診断部は、連続する無励磁安定期間における前記検出信号について、係数の合計値が0となる加重平均を算出して得られる値を前記検出信号のレベルとすること特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【請求項8】
前記係数の合計値が0となる加重平均は、3つ連続する連続する無励磁安定期間における前記検出信号に対して、(1、−2、1)あるいは(−1、2、−1)の係数を用いることを特徴とする請求項7に記載の電磁流量計。
【請求項9】
前記診断部は、前記検出信号のレベルを算出する際の平均化に用いる期間よりも長い期間で前記検出信号の平均化をさらに行ない、2つの平均値の差に基づいて恒常的な異常であるか単発的な異常であるかを判定することを特徴とする請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項10】
前記診断部が検出する前記電極の電位を変動させる異常は、気泡発生、低導電率、スラリー流体、被測定流体による電極腐食、電極への絶縁性の異物付着のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【請求項11】
前記診断部は、
前記被測定流体の流量測定の際に得られる流速の変動と、前記検出信号のレベルの変動との相関関係を判定することで前記異常原因の示唆を行なうことを特徴とする請求項4に記載の電磁流量計。
【請求項12】
前記診断部は、
前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが正の相関関係であると判定すると、前記異常原因が低導電率または電極腐食であることを示唆することを特徴とする請求項11に記載の電磁流量計。
【請求項13】
前記診断部は、
前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが負の相関関係であると判定すると、前記異常原因が気泡であることを示唆することを特徴とする請求項11または12に記載の電磁流量計。
【請求項14】
前記診断部は、
前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが相関関係を有さないと判定すると、前記異常原因が電気的ノイズであることを示唆することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁流量計に係り、特に、被測定流体の特性に基づく異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用して導電性の流体の流量を計測する電磁流量計は、堅牢で精度もよいことから工業的用途に広く用いられている。電磁流量計は、直交方向に磁界がかけられた測定管内に導電性の被測定流体を流し、発生した起電力を計測する。この起電力は、被測定流体の流速に比例するため、計測された起電力に基づいて被測定流体の体積流量を得ることができる。
【0003】
発生した起電力は、例えば、図14に示すように、測定管501に取り付けられた一対の電極(電極A503a、電極B503b)で計測することができる。また、直交方向の磁界は、測定管501近傍に配置された励磁コイル502に励磁回路505から励磁電流を流すことで発生させることができる。
【0004】
一般に、励磁電流Iexは、正励磁期間と負励磁期間とが交互に入れ替わる交番電流が用いられるが、特許文献1には、正励磁期間と負励磁期間との間に無励磁期間を挟んだ励磁電流Iexを励磁コイル502に流すことが開示されている。
【0005】
正励磁期間と負励磁期間との間に無励磁期間を挟んだ電磁流量計に関して、特許文献2には、図15に示すように、無励磁期間に切り替わる際に電極A503aと電極B503bとで発生する微分ノイズを合計し、合計値に基づいて測定管501の中が空になったり、電極A503a、電極B503bに絶縁性の異物が付着した場合等に生じる異常を検出することが開示されている。
【0006】
特許文献2に記載された発明では、異常の判定基準として微分ノイズを用いているため、無励磁期間に切り替わってから所定時間内の期間T1、期間T2…に両電極で生じる電圧を取得するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−144314号公報
【特許文献2】特開2011−209231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電磁流量計において発生する異常は、測定管の中が空になったり、電極に絶縁性の異物が付着した場合以外にも起こりうる。例えば、被測定流体(プロセス流体)自体の特性に基づく異常である。
【0009】
被測定流体の特性に基づく異常としては、被測定流体に気泡が発生したり、被測定流体が低導電率になったり、スラリー(泥漿)流体等が挙げられる。また、被測定流体に対応した材質の電極が選定されていなかったり、酸・アルカリの被測定流体による電極腐食も被測定流体の特性に基づく異常に起因する。さらには、電極への絶縁性の異物付着も被測定流体の特性に基づく異常に含めてもよい。
【0010】
被測定流体の特性に基づく異常は、必ずしも微分ノイズの大きさとして表面化するとは限らないため、特許文献2に記載されているような微分ノイズを用いた異常判定手法は、被測定流体の特性に基づく異常の検出には適していない。このため、被測定流体の特性に基づく異常を簡易に検出できる技術の開発が望まれている。
【0011】
そこで、本発明は、電磁流量計において、被測定流体の特性に基づく異常を簡易に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の電磁流量計は、測定管内を流れる被測定流体に励磁電流により生じる磁界を与え、前記測定管内に設けられた電極に発生する検出信号に基づいて前記被測定流体の流量を測定する電磁流量計であって、正励磁期間と負励磁期間と無励磁期間とを有する励磁電流を生成する励磁回路と、前記無励磁期間に発生する検出信号のうち、微分ノイズが収束する期間である無励磁安定期間における検出信号のレベルに基づいて、前記被測定流体の特性に基づく異常を検出する診断部と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記診断部は、連続する無励磁安定期間における前記検出信号の絶対値を平均化、あるいは検出信号のピーク値を平均化して得られる値を前記検出信号のレベルとすることができる。
また、前記診断部は、前記検出信号のレベルが所定の基準値以上の場合に、前記被測定流体の特性に基づく異常が発生したと判定することができる。
この場合、前記診断部は、前記被測定流体の特性に基づく異常が発生したと判定した場合に、あらかじめ定めた基準にしたがって、異常原因の示唆を行なうようにしてもよい。
前記被測定流体の導電率を測定する導電率測定回路をさらに備え、前記診断部は、前記導電率測定回路で測定された導電率を利用して前記異常原因の示唆を行なうようにしてもよい。
また、前記励磁回路は、短周期のパルスと長周期のパルスとを重畳した2周波励磁波形の励磁電流を生成してもよい。
前記診断部は、連続する無励磁安定期間における前記検出信号について、係数の合計値が0となる加重平均を算出して得られる値を前記検出信号のレベルとしてもよい。
この場合、前記係数の合計値が0となる加重平均は、3つ連続する連続する無励磁安定期間における前記検出信号に対して、(1、−2、1)あるいは(−1、2、−1)の係数を用いることができる。
前記診断部は、前記検出信号のレベルを算出する際の平均化に用いる期間よりも長い期間で前記検出信号の平均化をさらに行ない、2つの平均値の差に基づいて恒常的な異常であるか単発的な異常であるかを判定してもよい。
いずれの場合も、前記診断部が検出する前記被測定流体の特性に基づく異常は、気泡発生、低導電率、スラリー流体、被測定流体による電極腐食、電極への絶縁性の異物付着のいずれかを含むことができる。
また、前記診断部は、前記被測定流体の流量測定の際に得られる流速の変動と、前記検出信号のレベルの変動との相関関係を判定することで前記異常原因の示唆を行なうようにしてもよい。
このとき、前記診断部は、前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが正の相関関係であると判定すると、前記異常原因が低導電率または電極腐食であることを示唆することができる。
あるいは、前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが負の相関関係であると判定すると、前記異常原因が気泡であることを示唆するようにしてもよい。
あるいは、前記流速の変動と前記検出信号のレベルの変動とが相関関係を有さないと判定すると、前記異常原因が電気的ノイズであることを示唆するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電磁流量計において、被測定流体の特性に基づく異常を簡易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電磁流量計の基本的な構成を示すブロック図である。
図2】励磁回路の具体例を示す図である。
図3】励磁電流の波形について説明する図である。
図4】本実施形態に係る電磁流量計の動作を説明するフローチャートである。
図5】ノイズレベルを取得するサンプリング期間を示す図である。
図6】サンプリング期間におけるサンプリングを示す図である。
図7】被測定流体の特性に基づく異常診断処理を説明するフローチャートである。
図8】検出対象外のノイズの除去について説明する図である。
図9】2周波励磁波形と無励磁サンプリング期間を説明する図である。
図10】被測定流体の特性に基づく異常診断処理の別例を説明するフローチャートである。
図11】異常診断処理の第2別例を説明するフローチャートである。
図12】ノイズレベルと流速の相関関係を説明する図である。
図13】ノイズレベルと流速の時間的変化を示す図である。
図14】電磁流量計による流量測定を説明する図である。
図15】無励磁期間を含む励磁電流と起電力とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電磁流量計100の基本的な構成を示すブロック図である。本図に示すように、電磁流量計100は、測定管101、励磁コイル102、電極A103a、電極B103b、アース電極104、バッファ105、差動増幅回路106、サンプリング部107、サンプリング部108、導電率測定回路109、制御部110、励磁回路120、表示部131、操作受付部132、電流出力部133、パルス出力部134、ステータス出力部135、通信部136を備えている。
【0016】
制御部110は、CPU、メモリ等で構成することができ、回路制御部111、演算部112、診断部113を備えている。
【0017】
回路制御部111は、サンプリング部107、サンプリング部108、励磁回路120、表示部131、電流出力部133、パルス出力部134、ステータス出力部135、通信部136の制御を行なうとともに、操作受付部132を介してユーザからの各種指示を受け付ける。
【0018】
演算部112は、電極A103a、電極B103bで測定した起電力に基づいて測定管101を流れる被測定流体の流速および体積流量を算出する。診断部113は、電極A103a、電極B103bで測定した起電力に基づいて測定管101を流れる被測定流体の特性に基づく異常を診断する。
【0019】
電磁流量計100において、励磁回路120が制御部110の制御の下で励磁コイル102に励磁電流Iexを流すと、電極A103a、電極B103bで被測定流体の流速に比例した起電力が検出される。この検出信号はバッファ105を介して差動増幅回路106に入力され、コモンモードで発生する外来ノイズが除去されるとともに、信号が所望の振幅レベルに増幅される。
【0020】
差動増幅回路106が出力する検出信号はサンプリング部107でデジタルデータに変換されて制御部110に入力される。また、励磁回路120が出力する励磁電流Iexに対応する値もサンプリング部108でデジタルデータに変換されて制御部110に入力される。
【0021】
導電率測定回路109は、電極A103a、電極B103bを介して被測定流体に所定の電流を流し、この電流によって電極A103a、電極B103b間に発生する電圧に基づいて被測定流体の抵抗を計測することで被測定流体の導電率を測定する。測定に用いる電流は、例えば、励磁電流に重畳させることができる。この場合、電極A103a、電極B103bで検出された電圧から導電率測定に用いた電流による影響を排除する。
【0022】
表示部131は、液晶表示装置等で構成することができ、測定値や診断結果等を表示する。操作受付部132は、複数個のキー等で構成することができ、ユーザから操作を受け付ける。電流出力部133は、測定値や診断結果等を4―20mA等の所定レンジの電流値にスケーリングして出力する。パルス出力部134は、測定値や診断結果等を所定レンジの周波数パルスにスケーリングして出力する。ステータス出力部135は、電磁流量計100の内部状態を接点のオン/オフで外部に出力する。通信部136は、種々の通信プロトコルで外部装置と各種情報の通信を行なう。ただし、各出力部は例示であり、本例に限られるものではない。
【0023】
図2は、励磁コイル102に励磁電流Iexを流す励磁回路120の構成例である。励磁回路120は、直流電源E1と、定電流源CCSと、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4とを備えている。スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4は、回路制御部111からの信号T1、T2、T3、T4によりオンオフが制御される。なお、励磁コイル102に直列に接続された抵抗Riに生じる電圧Viexは、励磁電流Iexに対応する値を示し、サンプリング部108でサンプリングされて制御部110に入力される。
【0024】
図3に示すように、回路制御部111は、励磁の1サイクルを4つの期間に区分する。そして、Q1とQ3は最初の期間のみオンとなるように信号T1、T3を出力し、Q2とQ4は3番目の期間のみオンとなるように信号T2、T4を出力する。これにより、励磁電流Iexは、正励磁期間、無励磁期間、負励磁期間、無励磁期間から構成されるサイクルを繰り返すことになる。
【0025】
図4は、本実施形態の電磁流量計100の動作を示すフローチャートである。電磁流量計100は、被測定流体の流量の測定と、被測定流体の特性に基づく異常の検出処理を並行して行なうことができる。まず、測定開始に先立ち、ユーザから測定条件の設定を受け付ける(S101)。測定条件の設定では、例えば、流量スパン、単位等のパラメータ設定を受け付ける。
【0026】
そして、励磁電流Iexを生成して被測定流体の流量の測定を開始すると(S102)、正負励磁安定期間の検出信号Eezをサンプリングするとともに(S103)、無励磁安定期間の検出信号Eezをサンプリングする(S104)。
【0027】
図5に示すように、正負励磁安定期間は、正励磁期間、負励磁期間において微分ノイズが収まって波形が安定した期間であり、この期間を対象にサンプリング期間EPn(正励磁期間)およびサンプリング期間ENn(負励磁期間)を設定する。
【0028】
また、無励磁安定期間は、無励磁期間において微分ノイズが収まって波形が安定した期間であり、この期間を対象に無励磁サンプリング期間EZnを設定する。
【0029】
サンプリング期間中は、図6に示すように所定のサンプリングレートでサンプルデータの取得を繰り返す。繰り返し取得されたサンプルデータの平均値をその期間の検出信号とする。本実施形態では、無励磁サンプリング期間EZnに取得した検出信号Eex(EZn)に基づいてノイズレベルを検出する。被測定流体に磁界がかからないため、流速に比例する起電力は発生しないので、この期間のノイズレベルは、流速に依存しない。
【0030】
無励磁安定期間に得られる検出信号Eex(EZn)には、電極電位が変動することで発生するノイズが含まれており、このノイズの要因としては、気泡発生、低伝導率、スラリー流体、電極腐食、流体導電率変化、電極への絶縁性の異物付着等が挙げられる。すなわち、無励磁安定期間に発生するノイズレベルを取得することで、被測定流体の特性に基づく異常を検出することができるようになる。
【0031】
なお、被測定流体の特性に基づく異常により生じるノイズのスペクトラムは、一般に、10Hzから数10Hz程度をコーナー周波数として1/fで減少する特性を持っている。したがって、直流ノイズ成分や長周期のノイズ成分は、検出対象から除くことが望ましい。
【0032】
図4のフローチャートの説明に戻って、制御部110の演算部112が、正負励磁サンプリング期間(EPn、ENn)に取得した検出信号に基づいて被測定流体の流量演算を行なう(S105)。被測定流体の流量演算については従来と同様である。
【0033】
また、制御部110の診断部113が、無励磁サンプリング期間EZnに取得した検出信号Eex(EZn)に基づいて被測定流体の特性に基づく異常の診断を行なう(S106)。この処理の詳細については後述する。
【0034】
そして、演算部112が算出した流量を測定結果として、電流出力部133等から出力する(S107)。電磁流量計100は、以上の処理(S103〜S107)を測定が終了するまで(S108:Yes)繰り返す。
【0035】
次に、被測定流体の特性に基づく異常診断処理(S106)の詳細について図7のフローチャートを参照して説明する。本処理では、無励磁安定期間を対象とした無励磁サンプリング期間EZnに取得した検出信号Eex(EZn)から異常診断用ノイズレベルを算出する(S201)。
【0036】
異常診断用ノイズレベルの算出法としては、種々の手法を適用することができる。例えば、各無励磁サンプリング期間の検出信号の絶対値を算出することで、それぞれの無励磁サンプリング期間におけるノイズレベルを算出し、さらに連続する複数個の無励磁サンプリング期間のノイズレベルの平均値を算出すること(ダンピング演算)で異常診断用ノイズレベルとしたり、連続する複数個の無励磁サンプリング期間のノイズレベルの最大値を抽出してその平均値を算出することで異常診断用ノイズレベルとすることができる。
【0037】
あるいは、直流ノイズ成分や励磁周期に対して十分長い長周期のノイズ成分を検出対象から積極的に除くような異常診断用ノイズレベルの算出を行なってもよい。例えば、連続する無励磁サンプリング期間EZ1、EZ2、EZ3、…における検出信号Eex(EZ1)、Eex(EZ2)、Eex(EZ3)、…について、
Va1=Eex(EZ1)−2Eex(EZ2)+Eex(EZ3)
Va2=−Eex(EZ2)+2Eex(EZ3)−Eex(EZ4)
Va3=Eex(EZ3)−2Eex(EZ4)+Eex(EZ5)
Va4=−Eex(EZ4)+2Eex(EZ5)−Eex(EZ6)

というような係数の合計が0となる加重平均演算を行ない、Vanの絶対値を算出した後に、連続する複数個のVan、Va(n+1)、…の平均値を算出すること(ダンピング演算)で異常診断用ノイズレベルとしてもよい。本例では、連続する3つの無励磁サンプリング期間について、合計が0となる3つの係数(1、−2、1)あるいは(−1、2、−1)を乗じる加重平均演算を行なっている。連続する複数個のVan、Va(n+1)、…の最大値を抽出してその平均値を算出することで異常診断用ノイズレベルとしてもよい。
【0038】
このような加重平均処理(1−2−1演算)によれば、図8に示すような本実施形態では検出対象外とした方が望ましい直流ノイズ1、漸増ノイズ2、励磁周期に対して十分長い長周期ノイズ3等の影響を除くことができる。
【0039】
そして、算出された診断用ノイズレベルがあらかじめ定めた基準値以上であれば(S202:Yes)、表示部131に警告を表示したり、パルス出力部134、ステータス出力部135等から警告情報等を出力する(S203)。これにより、ユーザは、被測定流体の特性に基づく異常が発生したことを知ることができ、メインテナンス等の対応を行なうことができる。ただし、診断用ノイズレベルの値にかかわらず、算出された診断用ノイズレベルの値を出力するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、警告を出力する際に、ユーザに対して異常の原因の示唆を行なってもよい。異常の原因の示唆を行なう場合には(S204)、所定の判断基準にしたがって原因推定を行ない(S205)、その推定結果に基づくメッセージを表示部131、パルス出力部134、ステータス出力部135等から出力する(S206)。
【0041】
例えば、導電率測定回路109の測定結果により、被測定流体の導電率が所定の第1基準値を超えている場合には、ノイズレベルが上昇している異常の原因として、電極腐食、固形物スラリーあるいはキャビテーション等の気泡発生が考えられる。この場合、例えば「電極が被測定流体に対して適切に選定されていれば、被測定流体が固形スラリーであるか、そうでなければキャビテーション等の気泡が発生している可能性がある」という旨のメッセージを出力する。
【0042】
さらに、「スラリー流体の場合、ライニング材の損傷・摩耗が生じた可能性がある」という旨のメッセージを出力してもよい。これは、スラリー流体により電極周辺のライニング材が損傷・摩耗した場合に、電極の接液面積が増加し、ノイズレベルが上昇することを考慮したものである。
【0043】
また、導電率測定回路109の測定結果により、被測定流体の導電率が所定の第2基準値を下回っている場合には、例えば「流体粘度が低い場合は、被測定導電率が低い可能性がある」という旨のメッセージを出力する。
【0044】
また、被測定流体の導電率が所定範囲内に収まっている場合には、例えば「被測定流体が酸・アルカリであれば、電極腐食の可能性がある」という旨のメッセージを出力する。
【0045】
ところで、上述の実施形態では、励磁コイル102に正励磁期間と負励磁期間との間に無励磁期間を挟んだ励磁電流Iexを流す場合を例に説明した。近年では、図9(a)に示すような短周期のパルスと、図9(b)に示すような長周期のパルスとを重畳した2周波励磁波形(図9(c))の励磁電流Iexを励磁コイル102に流すことも行なわれている。周波励磁波形の励磁電流Iexを用いることで、ゼロ点を安定させるとともに、耐ノイズ性、高速応答性を高めることができる。
【0046】
例えば、図9(c)に示すように、正励磁期間と無励磁期間との組合せを6回繰り返し、負励磁期間と無励磁期間との組合せを6回繰り返す波形を1サイクルとした励磁電流Iexを用いた場合、図9(d)に示すように、無励磁サンプリング期間は、各無励磁安定期間であるEZ1〜EZ12となる。
【0047】
このときの異常診断用ノイズレベルは、例えば、EZ1〜EZ12における検出信号Eex(EZ1)〜Eex(EZ12)の各絶対値を算出することで、それぞれの無励磁サンプリング期間におけるノイズレベルを算出し、さらに各無励磁サンプリング期間のノイズレベルの平均値を算出すること(ダンピング演算)で算出することができる。
【0048】
あるいは、1−2−1演算による加重平均処理を採用して、
Va1=Eex(2周期前のEZ1)−2Eex(1周期前のEZ1)+Eex(現周期のEZ1)
Va2=Eex(2周期前のEZ2)−2Eex(1周期前のEZ2)+Eex(現周期のEZ2)

Va12=Eex(2周期前のEZ12)−2Eex(1周期前のEZ12)+Eex(現周期のEZ12)
を算出し、Va1〜Va12それぞれの絶対値を算出した後に、Va1〜Va12の平均値を算出すること(ダンピング演算)で異常診断用ノイズレベルとしてもよい。
【0049】
1−2−1演算による加重平均処理の別例として、
Va1=Eex(1周期前のEZ1)−2Eex(現周期のEZ7)+Eex(現周期のEZ1)
Va2=Eex(1周期前のEZ2)−2Eex(現周期のEZ8)+Eex(現周期のEZ2)

Va6=Eex(1周期前のEZ6)−2Eex(現周期のEZ12)+Eex(現周期のEZ6)
Va7=−Eex(1周期前のEZ7)+2Eex(1周期前のEZ1)−Eex(現周期のEZ7)
Va8=−Eex(1周期前のEZ8)+2Eex(1周期前のEZ2)−Eex(現周期のEZ8)

Va12=−Eex(1周期前のEZ12)+2Eex(1周期前のEZ6)−Eex(現周期のEZ12)
を算出し、Va1〜Va12それぞれの絶対値を算出した後に、Va1〜Va12の平均値を算出すること(ダンピング演算)で異常診断用ノイズレベルとしてもよい。
【0050】
次に、被測定流体の特性に基づく異常診断処理(S106)の別例について図10のフローチャートを参照して説明する。本別例でも、無励磁安定期間を対象とした無励磁サンプリング期間EZnに取得した検出信号Eex(EZn)から異常診断用ノイズレベルを算出する(S301)。
【0051】
異常診断用ノイズレベルの算出法は上述の例と同様とすることができる。そして、算出された異常診断用ノイズレベルがあらかじめ定めた基準値以上であれば(S302:Yes)、さらに長期間ノイズレベルを算出する(S303)。
【0052】
ここで、長期間ノイズレベルは、異常診断用ノイズレベルを算出した時の平均値算出(ダンピング演算)において、より長いダンピング時定数を用いて算出する。例えば、異常診断用ノイズレベルが1〜3秒程度の平均値であれば、長期間ノイズレベルは数十秒程度の平均値とする。
【0053】
ここで、恒常的に発生するノイズであれば、短いダンピング時定数で算出された異常診断用ノイズレベルと、長いダンピング時定数で算出された長期間ノイズレベルとは、ほぼ同じ値を示すことになる。
【0054】
一方、単発的に発生する短期発生ノイズであれば、短いダンピング時定数で算出された異常診断用ノイズレベルと、長いダンピング時定数で算出された長期間ノイズレベルとは、異なる値を示すことになる。なお、単発的に発生する短期発生ノイズとしては、配管から一部離脱した破片物等が電極に衝突した場合、上流側で薬品が混入し、電極の化学的電位が変化した場合等が挙げられる。
【0055】
このため、異常診断用ノイズと長期間ノイズとの差が基準値以上であれば(S304:Yes)、単発性の短期発生ノイズが発生した旨の警告を出力し(S305)、異常診断用ノイズと長期間ノイズとの差が基準値以上でなければ(S304:No)、恒常的なノイズが発生した旨の警告を出力する(S306)。なお、(S304)における異常診断用ノイズと長期間ノイズとの差の判定は、同じような差の状態が複数回連続した場合に判定を下すようにしてもよい。
【0056】
次に、異常診断処理(S106)の第2別例について図11のフローチャートを参照して説明する。第2別例では、異常の原因として低導電率と気泡と腐食とを分別したり、電気的ノイズ(例えば、EMCノイズ)の可能性を考慮したりすることで、異常診断警告出力時の原因示唆の精度をより高めるようにする。
【0057】
第2別例でも、無励磁安定期間を対象とした無励磁サンプリング期間EZnに取得した検出信号Eex(EZn)から異常診断用ノイズレベルを算出する(S401)。異常診断用ノイズレベルの算出法は、上記の各例と同様とすることができる。
【0058】
また、診断部113は、演算部112が流量演算の過程で算出した被測定流体の流速を取得する(S402)。すなわち、第2別例では異常の原因推定に流体流速を利用する。
【0059】
診断部113は、算出した異常診断用ノイズレベルと取得した流速とを履歴として保存する(S403)。保存は、例えば、制御部110が備えるメモリ上に形成されたバッファ領域に行なう。履歴は異常の原因推定のために一時的に保存すれば足りる。ここでは、一例として、リングバッファを用いて、60秒間の履歴を保持するものとする。
【0060】
次に、診断用ノイズレベルが所定の警告条件を満たすかどうかを判定する(S404)。所定の警告条件は、任意に定めることができるが、ここでは、一例として、リングバッファに履歴として記録されている診断用ノイズレベルのうち、10%以上が所定の基準値を超えていることを警告条件とする。なお、10%以上としたのは、警告判定を安定させるためであり、適宜調整することができる。例えば、より小さな値とすることで警告判定の感度を上げることができる。あるいは、診断用ノイズレベルの平均値や変動傾向等に基づいて警告条件を定めるようにしてもよい。
【0061】
この結果、警告条件を満たしていない場合は(S404:No)、警告非出力とする(S405)。すなわち、警告を出力していたときは、警告状態を解除し、警告を出力していないときは、非警告状態を維持する。
【0062】
一方、警告条件を満たしている場合は(S404:Yes)、警告を出力する(S406)。警告出力は、表示部131に警告を表示したり、パルス出力部134、ステータス出力部135等から警告情報等を出力したりすることで行なうことができる。
【0063】
そして、異常の原因の示唆を行なう。異常の原因示唆では、まず、診断用ノイズレベルの履歴と流体流速の履歴とを参照して。診断用ノイズレベルの変動と流速の変動との間に相関関係が認められるかどうかを判定する(S407)。
【0064】
ここで、第2別例の異常の原因示唆は、診断用ノイズレベルと流体流速との関連性に着目したものであり、以下に示すような特性に基づくものである。
1)導電率が一定の低導電率流体では、流速が高くなるについて診断用ノイズレベルが増加する。
2)電極材質を腐食させる流体では、電極表面を通過する流速が高いほど腐食の進行が進むため、診断用ノイズレベルが増加する。
3)気泡・流体体積比が一定の流体では、流速が高くなるにつれて診断用ノイズレベルが減少する。
4)EMC(Electro-Magnetic Compatibility)は、流量計測に依存しない伝導性ノイズ、放射電磁界ノイズ等の設置場所アプリケーション要因によって影響を受けるものであり、流速と診断用ノイズレベルとの相関関係とは無関係である。
【0065】
このため、1)低導電率流体、2)電極腐食を原因とする異常では、診断用ノイズレベルと流体流速との関係が、図12(a)に示すような正の相関関係となる。また、3)気泡を原因とする異常では、診断用ノイズレベルと流体流速との関係が、図12(b)に示すような負の相関関係となる。さらには、4)EMCを原因とする異常では、診断用ノイズレベルと流体流速との間に相関関係は認められないことになる。
【0066】
このことから、第2別例の異常の原因示唆処理では、診断用ノイズレベルの履歴と流体流速の履歴とを参照して、診断用ノイズレベルの変動と流速の変動との間に相関関係が認められるかどうかを判定するようにしている。
【0067】
図11のフローチャートの説明に戻って、診断用ノイズレベルの変動と流速の変動との間に相関関係が認められ(S407:Yes)、それが正の相関であれば(S409:Yes)、異常の原因は、低導電率流体、電極腐食のいずれかであると推定される。
【0068】
そこで、導電率測定回路109の導電率測定結果により、被測定流体が高導電率であれば(S410:Yes)、異常の原因が電極腐食であると示唆し(S411)、被測定流体が高導電率でなければ(S410:No)、異常の原因が低導電率であると示唆する(S412)。高導電率であるかどうかは、被測定流体の導電率が所定の基準値、例えば、2000μS/cm以上であるかどうかで判定することができる。なお、導電率測定回路109を備えない電磁流量計であれば、異常の原因が電極腐食あるいは低導電率であると示唆するようにしてもよい。
【0069】
一方、診断用ノイズレベルの変動と流速の変動との間に相関関係が認められ(S407:Yes)、それが負の相関であれば(S409:No)、異常の原因が気泡であると示唆する(S413)。
【0070】
また、診断用ノイズレベルの変動と流速の変動との間に相関関係が認められない場合(S407:No)は、異常の原因が電気的ノイズ(例えば、EMCノイズの伝導性ノイズ、放射電磁界ノイズ)であると示唆する(S408)。
【0071】
第2別例では、診断用ノイズレベルの履歴と流速の履歴とを記録している。これにより、長期間にわたる診断用ノイズレベルと流速の変動関係を把握することができるようになる。
【0072】
実際の現場では、プロセス流体の流速は常に一体ではなく、頻繁に変動することが多い。このような場合であっても、図13に示すように、流速の変動と診断用ノイズレベルの変動との相関関係を複数回チェック(図13(a)(b)の例では、それぞれ3回チェック)できるようになるため、相関関係の判定が正確になり、異常診断警告出力時の原因示唆の精度をより高めることができる。
【符号の説明】
【0073】
100…電磁流量計、101…測定管、102…励磁コイル、103…電極、104…アース電極、105…バッファ、106…差動増幅回路、107…サンプリング部、108…サンプリング部、109…導電率測定回路、110…制御部、111…回路制御部、112…演算部、113…診断部、120…励磁回路、131…表示部、132…操作受付部、133…電流出力部、134…パルス出力部、135…ステータス出力部、136…通信部
図1
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