特許第6229855号(P6229855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229855
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】生体組織切断装置およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/08 20060101AFI20171106BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C12M3/08
   C12M1/00 A
   G01N33/48 S
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-559952(P2015-559952)
(86)(22)【出願日】2015年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2015052225
(87)【国際公開番号】WO2015115439
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-14859(P2014-14859)
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和博
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 典孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康二
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−077848(JP,U)
【文献】 特開2009−288169(JP,A)
【文献】 国際公開第01/027586(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/077337(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102636370(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
B26D 3/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を切断して組織片を製造するための生体組織切断装置であって、
生体組織を固定するステージを有するステージユニット、
前記ステージ上の生体組織を切断して第1方向の切断面を形成する第1切断ユニット、および、
前記ステージ上の生体組織を切断して第2方向の切断面および第3方向の切断面を形成する第2切断ユニットを備え、
前記第2方向の切断面が、前記第1方向の切断面と交差する面方向であり、
前記第3方向の切断面が、前記第1方向の切断面および前記第2方向の切断面と交差する面方向であり、
前記生体試料の前記第1方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略垂直であり、
前記生体試料の前記第2方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略垂直であり、
前記第1方向の切断面と前記第2方向の切断面とが、略垂直であり、
前記生体試料の前記第3方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略平行であることを特徴とする生体組織切断装置。
【請求項2】
前記第1切断ユニットが、前記生体組織を切断して前記第1方向の切断面を形成する第1切断手段と、前記第1切断手段を移動させる第1移動制御手段とを有し、
前記第1移動制御手段は、前記第1切断手段を、前記生体組織の切断開始位置から切断終了位置まで移動させた後、新たな切断開始位置まで移動させる、請求項1記載の生体組織切断装置。
【請求項3】
前記第1移動制御手段は、前記第1切断手段を、前記切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、前記生体組織から離して、前記新たな切断開始位置まで移動させる、請求項2記載の生体組織切断装置。
【請求項4】
前記第2切断ユニットが、前記生体組織を切断して前記第2方向の切断面を形成する第2切断手段と、前記生体組織を切断して前記第3方向の切断面を形成する第3切断手段と、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを同時に移動させる第2移動制御手段とを有し、
前記第2切断手段と前記第3切断手段とは、形成される前記第2方向の切断面と前記第3方向の切断面とが一定の角度を維持するように一体化されており、
前記第2移動制御手段は、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを、同時に、前記生体組織の切断開始位置から切断終了位置まで移動させた後、新たな切断開始位置まで移動させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項5】
前記第2移動制御手段は、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを、前記生体組織の切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、その移動経路に沿って、前記切断終了位置から前記切断開始位置まで移動させ、さらに新たな切断開始位置まで移動させる、請求項4記載の生体組織切断装置。
【請求項6】
さらに、ステージ移動制御手段を有し、
前記ステージ移動制御手段は、前記ステージを、前記生体試料を固定する前記ステージの表面に対して、上下方向および面方向の少なくとも一つの方向に移動させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項7】
前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとが、独立した装置であり、
前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットが、それぞれ、前記ステージを取り付ける取り付け部を備え、
前記第1切断ユニットにおいて、前記ステージの取り付け部に前記ステージが取り付けられ、前記生体試料の切断が行われた後、前記第1切断ユニットから前記ステージが取り外され、前記ステージを前記第2切断ユニットに取り付けられ、前記生体試料の切断が行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項8】
前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットが、一つの装置内部に配置され、
前記ステージ、前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットの少なくとも1つが着脱可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項9】
切断対象の前記生体組織が、軟骨、膜組織、皮膚組織、血管組織、ホルモン産生組織、神経、腱、肝臓組織、脂肪および筋肉からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項10】
前記ステージに固定化される生体組織の大きさが、厚み0.1〜10mmおよび面積50〜10,000mmである、請求項1から9のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項11】
前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットにより切断された前記生体組織の切片が、一辺の長さが0.05mm〜3mmの範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の生体組織切断装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の生体組織切断装置を使用し、
ステージ上に生体組織を固定する工程、
前記第1切断ユニットにより、前記生体組織を切断して第1方向の切断面を形成する第1切断工程、および、
前記第2切断ユニットにより、前記生体組織を切断して第2方向の切断面および第3方向の切断面を形成する第2切断工程を有し、
前記第2方向の切断面は、前記第1方向の切断面と交差する面方向であり、
前記第3方向の切断面は、前記第方向の切断面および前記第方向の切断面と交差する面方向であり、
前記生体試料の前記第1方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略垂直であり、
前記生体試料の前記第2方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略垂直であり、
前記第1方向の切断面と前記第2方向の切断面とが、略垂直であり、
前記生体試料の前記第3方向の切断面が、前記ステージの表面に対して略平行であることを特徴とする生体組織の切断方法。
【請求項13】
前記第1切断工程と前記第2切断工程とを繰り返す、請求項12記載の切断方法。
【請求項14】
生体組織を請求項12および13記載の切断方法により切断することを特徴とする組織片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を切断して組織片を製造するための生体組織切断装置およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野の中でも再生医療への注目度は、極めて高く、研究も盛んに行われている。再生医療では、自家または他家由来の組織から細胞を採取し、これを再生用足場に播種し、培養を行い、得られた培養細胞を使用する方法が一般的である。しかしながら、この方法では、採取した細胞と再生用足場との接着性が重要であるため、培養条件等の設定が重要であり、手間や時間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−512914号公報
【特許文献2】特開2007−527731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、近年、培養を不要とする新たな再生医療の方法が提案されている。具体的には、生体組織の損傷部あるいは欠損部に、幹細胞や成熟細胞を移植することで、移植細胞の増殖分化能によって組織の再生修復を行う方法である。しかしながら、この方法では、移植細胞の生体内での生存率が低く、それに伴い機能発現の効率が悪く、期待した再生修復効果が得られない場合がある。そこで、この問題点を解決する一つの方法として、細胞の機能的集合体である組織の移植が考えられている。例えば、軟骨の場合、軟骨から軟骨細胞を採取して培養するのではなく、軟骨から微細な組織片を切り出し、生体に移植する方法があげられる。この場合、手術の術場において、患者から軟骨を取り出し、その軟骨から組織片を切り出し、患者の生体に移植することができるため、手術室内完結型の再生医療が実現できる。この方法によれば、手術後の培養はもちろんのこと、培養後の再手術も不要なため、低コストで、患者や医師の負担も少ない治療が可能となる。
【0005】
しかしながら、組織片のサイズが大きいと、移植した組織片の内部へ栄養の供給が悪く、前記組織片の生体内での生着が十分ではない。このため、移植した組織片の内部への栄養の供給が可能である、微細且つサイズが揃った大量の組織片の作製が求められている。また、再生医療の現場では、効率よく安全に再生を促すためにも、限られた生体組織から再生の元となる組織片をより多く得ることが重要であり、細かく大量の組織片を確実に切り出す技術が求められている。
【0006】
他方、生体組織を切断加工する装置としては、例えば、レーザーを利用する装置等が報告されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかしながら、前述のような再生医療用の生体組織は、非常に柔らかく壊れやすいうえに、体液または培養液に満たされて湿った状態にある。このため、前述のような装置では、再生医療用の微細な組織片への切断が困難である。また、前述のような再生医療用の組織片の製造に特化した切断装置も報告されていない。このため、再生医療の現場では、熟練者の手作業によって組織片への切断が行われている。しかし、未熟者では作業を行うことができず、且つ、たとえ熟練者であっても、作業効率が悪く、短時間に大量の組織片を得ることが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、生体組織から微細な組織片を簡便且つ効率良く製造することができる生体組織切断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の生体組織切断装置は、生体組織を切断し組織片を製造するための生体組織切断装置であって、
生体組織を固定するステージを有するステージユニット、
前記ステージ上の生体組織を切断して第1方向の切断面を形成する第1切断ユニット、および、
前記ステージ上の生体組織を切断して第2方向の切断面および第3方向の切断面を形成する第2切断ユニットを備え、
前記第2方向の切断面が、前記第1方向の切断面と交差する面方向であり、
前記第3方向の切断面が、前記第1方向の切断面および前記第2方向の切断面と交差する面方向であることを特徴とする。
【0009】
本発明の生体組織の切断方法は、前記本発明の生体組織切断装置を使用し、
ステージ上に生体組織を固定する工程、
前記第1切断ユニットにより、前記生体組織を切断して第1方向の切断面を形成する第1切断工程、および、
前記第2切断ユニットにより、前記生体組織を切断して第2方向の切断面および第3方向の切断面を形成する第2切断工程を有し、
前記第2方向の切断面は、前記第1方向の切断面と交差する面方向であり、
前記第3方向の切断面は、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面と交差する面方向であることを特徴とする。
【0010】
本発明の組織片の製造方法は、生体組織を前記本発明の切断方法により切断することを特徴とする。
【0011】
本発明の生体組織の再生方法は、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【0012】
本発明の手術方法は、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【0013】
本発明の治療方法は、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生体組織切断装置によれば、前記第1方向の切断面の形成と、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面の形成とを行うことで、簡便且つ効率良く、大量の微細な組織片を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における生体試料の切断面の概略を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態における第1切断ユニット(X平面切断ユニット)の第1切断手段の平面図である。
図3】(A)は、本発明の実施形態における第2切断ユニット(YZ平面切断ユニット)の概略を示す斜視図であり、(B)は、前記第2切断ユニットにおける第2切断手段の平面図であり、(C)は、前記第2切断ユニットにおける第3切断手段の平面図である。
図4】本発明の実施形態における生体組織の概略図であり、(A)は、第1切断ユニットによる切断方向である第1方向を示す図であり、(B)は、生体組織の第1方向の切断状態を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態における生体組織の概略図であり、(A)は、第2切断ユニットによる切断方向である第2方向および第3方向を示す図であり、(B)は、生体組織の第2方向および第3方向の切断状態を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態における第1切断ユニット(X平面切断ユニット)の概略を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態における第2切断ユニット(YZ平面切断ユニット)の概略を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態における第1切断ユニットと第2切断ユニットとを備える一体型装置の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)生体組織切断装置
本発明の生体組織切断装置は、前述のように、生体組織を切断して組織片を製造するための生体組織切断装置であって、
生体組織を固定するステージを有するステージユニット、
前記ステージ上の生体組織を切断して第1方向の切断面を形成する第1切断ユニット、および、
前記ステージ上の生体組織を切断して第2方向の切断面および第3方向の切断面を形成する第2切断ユニットを備え、
前記第2方向の切断面が、前記第1方向の切断面と交差する面方向であり、
前記第3方向の切断面が、前記第1方向の切断面および前記第2方向の切断面と交差する面方向であることを特徴とする。
【0017】
本発明の生体組織切断装置は、例えば、前記第1切断ユニットにより、前記生体組織を切断して前記第1方向の切断面を形成した後、前記第2切断ユニットによる一回あたりの処理で、前記第2方向の切断面の形成と前記第3方向の切断面の形成とを行うことができ、それによって、微細な組織片を得ることができる。例えば、別々の処理を行うことで、前記生体組織を切断して前記第2方向の切断面を形成した後に前記第3方向の切断面を形成する場合、前記第3方向の切断面の形成時に、前記生体組織が倒れてしまう(崩れてしまう)ため、切断が困難である。しかしながら、本発明の生体組織切断装置によれば、前記生体組織を、前記第2切断ユニットによる一回の処理で、前記第2方向の切断面と前記3方向の切断面とを形成できるため、例えば、前述のような問題を回避でき、歩留まりを向上できる。本発明において、各種「手段」は、例えば、「機構」と読み替え可能である。
【0018】
前記第2切断ユニットは、前述のように、一回あたりの処理で、前記第2方向の切断面の形成と前記第3方向の切断面の形成とを行うことができる。このため、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面は、例えば、同時の切断により同時に形成されるということもできる。なお、本発明において、前記第2方向の切断面と前記第3方向の切断面に関する「同時」とは、例えば、前記第2切断ユニットの一回あたりの処理によることを意味し、切断および切断面の形成自体は、例えば、完全に同時に開始されてもよいし、時間差をもって開始されてもよく、これは、例えば、後述するような、第2切断手段および第3切断手段の構造等によって適宜設定できる。
【0019】
本発明において、前記第1方向の切断面、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面は、それぞれ前述の関係を満たしていればよい。前記各切断面の面方向は、前記生体組織を固定する前記ステージの表面に対して、例えば、以下のように規定できる。すなわち、前記生体試料の前記第1方向の切断面および前記第2方向の切断面は、それぞれ、前記ステージの表面に対して略垂直であり、前記第1方向の切断面と前記第2方向の切断面とが、略垂直であり、前記生体試料の前記第3方向の切断面は、前記ステージの表面に対して略平行である。
【0020】
具体例として、図1に、ステージ上に固定した状態の生体組織の概略を示す。図1において、矢印Aの矢先は、ステージ上に生体組織60を固定した際の上方向を示す。図1において、ステージの表面(図示せず)に対して、前記第1方向の切断面および前記第2方向の切断面は、略垂直方向であり、前記第3方向の切断面は、略平行方向である。前記第1方向の切断面は、例えば、上方向から生体組織60を見て、X軸方向に切断することで形成される切断面であり、X面ともいう。前記第2方向の切断面は、例えば、上方向から生体組織60を見て、Y軸方向に切断することで形成される切断面であり、Y面ともいう。前記第3方向の切断面は、例えば、横方向(生体組織の側面方向)から見て、Z軸に対して垂直方向に切断することで形成される切断面であり、Z面ともいう。
【0021】
本発明において、前記第1方向の切断面、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面は、それぞれの面方向が交差していればよく、その交差角度は、例えば、90±30度、90±20度、90±10度、90±1度であり、略直交または直交が好ましい。以下、前記各切断面の面方向は、特に示さない限り、直交には限定されず、本段落の記載を援用できる。
【0022】
本発明の生体組織切断装置において、切断対象の前記生体組織は、特に制限されず、例えば、前記組織片の製造に使用される生体組織があげられる。具体的に、前記切断対象の前記生体組織は、例えば、再生医療に使用される生体組織、細胞調製に使用される生体組織等があげられる。具体例としては、例えば、軟骨、皮膚組織、血管組織、肝臓組織、骨膜、滑膜、粘膜、歯根膜等の膜組織、甲状腺、副腎、前立腺等のホルモン産生組織、さらに神経、腱、脂肪、筋肉等があげられる。前記再生医療に使用される生体組織から前記組織片を製造した場合、前記組織片は、例えば、再生医療用の組織片ということもできる。また、前記細胞調製に使用される生体組織に使用される生体組織から前記組織片を製造した場合、前記組織片は、例えば、細胞調製用の組織片ということもできる。
【0023】
本発明の生体組織切断装置において、前記ステージに固定化される生体組織の形状は、特に制限されず、例えば、シート状、ブロック状等があげられる。前記生体組織の大きさは、特に制限されない。前記固定化される生体組織は、厚みの下限が、例えば、0.05mm、0.5mm、1mmであり、厚みの上限が、例えば、3mm、5mm、10mmであり、厚みの範囲が、例えば、0.05〜10mm、0.5〜5mm、0.5〜3mm、1〜3mmであり、面積の下限が、例えば、50mm、100mm、200mmであり、面積の上限が、例えば、2,500mm、5,000mm、10,000mmであり、面積の範囲が、例えば、50〜10,000mm、100〜5,000mm、200〜2,500mmである。
【0024】
前記ステージへの前記生体組織の固定化方法は、特に制限されず、例えば、接着剤による固定があげられる。前記接着剤は、特に制限されず、例えば、医療用であることが好ましく、例えば、α−シアノアクリレート系接着剤等が例示できる。また、前記生体組織を固定化するステージの表面の材質は、特に制限されず、例えば、ポリカーボネート等のポリマー、ガラス等が例示できる。前記ステージは、例えば、スライド等でもよい。
【0025】
本発明の生体組織切断装置の前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットにより切断される前記組織片の形状は、特に制限されず、例えば、立法体である。前記組織片の大きさは、特に制限されず、一辺の長さの下限が、例えば、0.03mm、0.05mm、0.1mm、0.2mmであり、一辺の長さの上限が、例えば、1mm、2mm、3mmであり、一辺の長さの範囲が、例えば、0.03〜3mm、0.05〜3mm、0.1〜2mm、0.2〜1mmである。
【0026】
本発明の生体組織切断装置において、例えば、前記第1切断ユニットは、前記生体組織を切断して前記第1方向の切断面を形成する第1切断手段を有し、前記第2切断ユニットは、前記生体組織を切断して前記第2方向の切断面を形成する第2切断手段と、前記生体組織を切断して前記第3方向の切断面を形成する第3切断手段とを備える。前記第2切断ユニットにおいて、前記第2切断手段と前記第3切断手段は、例えば、形成される前記第2方向の切断面と前記第3方向の切断面とが一定の角度を維持するように一体化されている。前記第1切断手段、前記第2切断手段および前記第3切断手段において、それぞれ、切断手段の種類は、特に制限されず、生体組織を切断できればよく、具体例としては、カッター、ナイフ等の刃があげられる。
【0027】
前記第1切断ユニットにおける前記第1切断手段、ならびに前記第2切断ユニットにおける前記第2切断手段および前記第3切断手段の例について、図2および図3を用いて説明する。
【0028】
図2は、第1切断ユニットにおける第1切断手段10の一例を示す側面の概略図である。図2において、第1切断手段10は、本体101の下方の先端に、刃102が形成されている。第1切断手段10により生体試料を切断する際、矢印方向の先に生体試料を配置し、矢印方向に第1切断手段10を進めることで、刃102により生体試料が切断され、前記第1方向の切断面が形成される。刃102は、生体試料の表面を水平と仮定した場合、前記表面に対して所定の角度θxで傾斜していることが好ましい。前記角度は、移動方向に対する角度ともいえる。前記角度θxは、例えば、sinθxで表した場合、下限が、例えば、1/200、3/200、5/200であり、上限が、例えば、30/200、50/200、80/200であり、範囲が、例えば、1/200〜80/200、3/200〜50/200、5/200〜30/200となる角度が好ましい。また、刃102の厚みは、下限が、例えば、10μm、20μm、30μmであり、上限が、例えば、500μm、600μm、850μm、であり、範囲が、例えば、10〜850μm、20〜600μm、30〜500μmである。
【0029】
図3(A)は、第2切断ユニット40の一例を示す斜視図であり、図3(B)は、第2切断ユニット40の第2切断手段20の平面図、図3(C)は、第2切断ユニット40の第3切断手段30の平面図である。図3に示すように、第2切断ユニット40は、支持体401と、第2切断手段20および第3切断手段30とを有し、支持体401に、第2切断手段20および第3切断手段30が配置され、全体として一体化されている。第2切断手段20は、本体201の下方の先端に、刃202が形成され、第3切断手段30は、本体301の端部(図3(A)において左側端部)に、刃302が形成されている。第2切断手段20の刃202と第3切断手段30の刃302とは、例えば、それぞれの面方向が略垂直方向である。具体的に、前記第2切断手段20と前記第3切断手段30は、それぞれの刃が、例えば、作用点を境にして互いに直交する関係ともいえる。第2切断ユニット40により生体試料を切断する際、矢印方向の先に生体試料を配置し、矢印方向に第2切断ユニット40を進めることで、刃202により前記第2方向の切断面が形成され、刃302により前記第3方向の切断面が形成される。
【0030】
第2切断手段20の刃202は、生体試料の表面を水平と仮定した場合、前記表面に対して所定の角度θyで傾斜していることが好ましい。前記角度は、移動方向に対する角度ともいえる。また、第3切断手段30の刃302は、生体試料の表面を水平と仮定した場合、前記表面と平行方向に移動し、その移動方向に対して所定の角度θzで傾斜していることが好ましい。前記角度θyまたはθzは、例えば、sinθyまたはsinθzで表した場合、それぞれ、下限が、例えば、1/200、3/200、5/200であり、上限が、例えば、30/200、50/200、80/200であり、範囲が、例えば、1/200〜80/200、3/200〜50/200、5/200〜30/200となる角度が好ましい。
【0031】
第2切断手段の刃202の厚みは、下限が、例えば、10μm、20μm、30μmであり、上限が、例えば、500μm、600μm、850μmであり、範囲が、例えば、10〜850μm、20〜600μm、30〜500μmである。また、第3切断手段の刃302の厚みは、下限が、例えば、10μm、20μm、30μmであり、上限が、例えば、1500μm、2000μm、3000μmであり、範囲が、例えば、10〜3000μm、20〜2000μm、30〜1500μmである。
【0032】
前記第1切断手段の刃および前記第2切断手段の刃は、例えば、生体組織に挿入し易く、切断後の前記生体組織の全体を元の形状に維持し易いため、前記第3切断手段の刃と比較して、相対的に薄いことが好ましい。特に、前記第1切断手段の刃は、例えば、前記第3切断手段の刃と比較して相対的に薄いことにより、切断面の筋(例えば、図5(A)に示す切れ目)がよりきれいに整列し、第2切断工程および第3切断工程が、より操作しやすくなる。前記第3切断手段の刃は、例えば、Z面を形成するように、前記生体組織を上方向から下方向に向かって、順に層をこそぎ取るように切断し、前記層を回収する。このため、前記第3切断手段の刃の厚みは、特に制限されない。また、前記第3切断手段の刃は、例えば、研磨して、より切れ易くするため、刃が、前記第1切断手段の刃および前記第2切断手段の刃と比較して、相対的に厚くてもよい。
【0033】
図2および図3においては、前記第1切断手段、前記第2切断手段および前記第3切断手段として、片刃を例示した。本発明は、これには限定されず、例えば、両刃でもよい。また、前記第1切断手段は、例えば、片刃または両刃の丸刃でもよい。
【0034】
本発明の生体組織切断装置は、例えば、前記第1切断ユニットにおける前記第1切断手段を移動させる第1移動制御手段、前記第2切断ユニットにおける前記第2切断手段および前記第3切断手段を移動させる第2移動制御手段、または、前記生体組織を固定化した前記ステージを移動させるステージ移動制御手段を備えてもよい。これらの各種制御手段は、例えば、いずれか一種類でも、いずれか二種類でも、全てを備えてもよい。前記各種制御手段は、特に制限されず、例えば、ラチェット機構を利用した手段、カム機構を利用した手段等があげられる。
【0035】
本発明の生体組織切断装置は、例えば、前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットによる前記生体組織の切断を繰り返し行うことによって、前記ステージに固定した一つの生体組織から、複数の組織片を製造できる。この場合、例えば、前記第1移動制御手段、前記第2移動制御手段および前記ステージ移動制御手段のいずれか、またはそれらの組合せによって、前述のような切断の繰り返しを制御できる。また、前記切断手段は、例えば、後述するような手動によるものでも良いし、電動(自動)によるものであっても良く、駆動方法によって、特に限定されない。
【0036】
第1の例として、前記第1移動制御手段を有する形態があげられる。この形態の生体組織切断装置は、例えば、前記第1切断ユニットが、前記生体組織を切断して前記第1方向の切断面を形成する第1切断手段と、前記第1切断手段を移動させる第1移動制御手段とを有する。この場合、前記第1移動制御手段は、例えば、前記第1切断手段を、前記生体組織の切断開始位置から切断終了位置まで移動させた後、新たな切断開始位置まで移動させる。ここで、切断開始位置から切断終了位置までの移動とは、前記生体組織に対する一方向への移動による一回の切断を意味する(以下同様)。これによって、前記第1切断手段は、新たな切断開始位置にセットされることになる。そして、前記第1移動制御手段は、引き続き、前記第1切断手段を、前記新たな切断開始位置から切断終了位置まで移動させることで、前記生体組織を切断できる。
【0037】
前記第1移動制御手段は、例えば、前記第1切断手段を、前記切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、前記生体組織から離して、前記新たな切断開始位置まで移動させることが好ましい。前記第1切断手段を前記生体組織から離して、新たな切断開始位置まで移動させると、例えば、前記第1切断手段による切断面を、よりきれいな状態に維持することができる。前記生体組織から前記第1切断手段を離す方法は、特に制限されない。前記切断開始位置から前記切断終了位置への前記第1切断手段の移動が、前記生体組織の手前から向こう側に向かう移動の場合、前記第1移動制御手段は、例えば、前記第1切断手段を、前記切断終了位置に移動させた後、前記生体組織から押し出すことで、前記生体組織から離すことができる。また、前記切断開始位置から前記切断終了位置への前記第1切断手段の移動が、前記生体組織の向こう側から手前に向かう移動の場合、前記第1移動制御手段は、例えば、前記第1切断手段を、前記切断終了位置に移動させた後、前記生体組織から引き抜くことで、前記生体組織から離すことができる。
【0038】
そして、前記第1移動制御手段は、前記第1切断手段を前記新たな切断開始位置に移動させる際、例えば、前記切断終了位置から、直接、前記新たな切断開始位置に移動させてもよいし、前記切断終了位置から前記切断開始位置まで戻した後、前記新たな切断開始位置に移動させてもよい。
【0039】
具体例として、図4(A)および(B)に、ステージ上に固定した状態の生体組織の概略を示す。図4(A)に示すように、ステージ上の生体組織60に対して、前記第1切断手段を1回目の切断開始位置にセットする。そして、上方向から生体組織60を見て、X軸方向への1回目の切断を行う。そして、前記第1切断手段を前記1回目の切断終了位置まで移動させた後、前記第1切断手段を2回目の新たな切断開始位置に移動させ、X軸方向への2回目の切断を行う。この工程を、n回目(nは正の整数)まで繰り返し行うことで、図4(B)に示すように、X軸方向への複数回の切断が行われ、複数の第1方向の切断面(X面)が形成される。本発明において、前記X面を形成できることから、前記第1切断ユニットは、「X平面切断ユニット」ともいい、前記第1切断手段は、「X平面切断手段」ともいう。
【0040】
前記X軸方向への切断は、前記第1切断手段を前記X軸方向に移動することにより複数回行うことができ、この一連の切断は、略同じ深さに設定することが好ましい。前記深さは、特に制限されず、例えば、最終的に調製したい組織片の一辺の長さがあげられ、後述の条件を援用できる。
【0041】
第2の例として、前記第2移動制御手段を有する形態があげられる。この形態の生体組織切断装置は、例えば、前記第2切断ユニットが、前記生体組織を切断して前記第2方向の切断面を形成する第2切断手段と、前記生体組織を切断して前記第3方向の切断面を形成する第3切断手段と、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを同時に移動させる第2移動制御手段とを有し、前記第2切断手段と前記第3切断手段とは、形成される前記第2方向の切断面と前記第3方向の切断面とが一定の角度を維持するように一体化されている。この場合、前記第2移動制御手段は、例えば、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを、同時に、前記生体組織の切断開始位置から切断終了位置まで移動させる。この際、例えば、前記第2切断手段の刃の切断方向と前記第2方向の切断面の面方向とが揃い且つ前記第3切断手段の刃の切断方向と前記第3方向の切断面の面方向とが揃っていることが好ましい。これにより、例えば、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを、Y軸方向に平行であり且つZ軸方向に垂直である方向に向かって移動させれば、前記生体組織を切断して前記第2方向の切断面と前記第3方向の切断面とに同時に切断できる。
【0042】
そして、前記第2移動制御手段は、前記第2切断手段と前記第3切断手段とを、前記切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、新たな切断開始位置まで移動させることが好ましい。これによって、前記第2切断手段は、新たな切断開始位置にセットされることになる。そして、前記第2移動制御手段は、引き続き、前記第2切断手段を、前記新たな切断開始位置から切断終了位置まで移動させることで、前記生体組織を切断できる。
【0043】
前記第2移動制御手段は、例えば、前記第2切断手段および前記第3切断手段を、前記切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、前記生体組織から離して、前記新たな切断開始位置まで移動させてもよい。前記第2切断手段および前記第3切断手段を前記生体組織から離して、前記切断開始位置まで移動させると、例えば、前記第2切断手段による切断面および前記第3切断手段による切断面を、よりきれいな状態に維持することができる。前記生体組織から前記第2切断手段を離す方法は、特に制限されない。前記切断開始位置から前記切断終了位置への前記第2切断手段の移動が、前記生体組織の手前から向こう側に向かう移動の場合、前記第2移動制御手段は、例えば、前記第2切断手段および前記第3切断手段を、前記切断終了位置に移動させた後、前記生体組織から押し出すことで、前記生体組織から離すことができる。また、前記切断開始位置から前記切断終了位置への前記第2切断手段の移動が、前記生体組織の向こう側から手前に向かう移動の場合、前記第2移動制御手段は、例えば、前記第2切断手段および前記第3切断手段を、前記切断終了位置に移動させた後、前記生体組織から引き抜くことで、前記生体組織から離すことができる。
【0044】
また、前記第2移動制御手段は、例えば、前記第2切断手段および前記第3切断手段を、前記切断開始位置から前記切断終了位置まで移動させた後、その移動経路に沿って、前記切断終了位置から前記切断開始位置まで移動させ、前記生体組織から前記第2切断手段および前記第3切断手段を離してから、前記新たな切断開始位置まで移動させてもよい。
【0045】
そして、前記第2移動制御手段は、引き続き、前記第2切断手段および前記第3切断手段を、前記新たな切断開始位置に移動させる際、例えば、前記切断終了位置から、直接、前記新たな切断開始位置に移動させてもよいし、前記切断終了位置から前記切断開始位置まで戻した後、前記新たな切断開始位置に移動させてもよい。そして、前記新たな切断開始位置から切断終了位置まで移動させることで、前記生体組織を切断することができる。
【0046】
具体例として、図5(A)および(B)に、ステージ上に固定した状態の生体組織の概略を示す。図5(A)に示すように、ステージ上の生体組織60に対して、前記第2切断手段および前記第3切断手段を1回目の切断開始位置にセットする。そして、上方向から生体試料60を見て、Y軸方向(Z軸に対する垂直方向)への1回目の切断を行う。そして、前記第2切断手段および前記第3切断手段を前記1回目の切断終了位置まで移動させた後、前記第2切断手段および前記第3切断手段を2回目の切断開始位置に移動させ、Y軸方向への2回目の切断を行う。この工程を、n回目(nは正の整数)まで繰り返し行うことで、図5(B)に示すように、Y軸方向への複数回の切断が行われる。これによって、前記第2方向の切断面(Y面)および前記第3方向の切断面(Z面)が形成され、前記第1方向の切断面(X面)、前記第2方向の切断面(Y面)および前記第3方向の切断面(Z面)により形成された複数個の組織片が製造できる。本発明において、前記Y面および前記Z面を形成できることから、前記第2切断ユニットは、「YZ平面切断ユニット」ともいい、前記第2切断手段は、「Y平面切断手段」ともいい、前記第3切断手段は、「Z平面切断手段」ともいう。
【0047】
このように、生体組織の高さ方向(Z軸方向)において、所定の層について、前記第1方向の切断面、前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面の形成が行われた際、切断された層における組織片は、例えば、前記第2切断ユニットにおける前記第2切断手段の面と前記第3切断手段の面との間に堆積される。このため、前記ステージ上の生体組織は、例えば、切断された前記組織片が除去されて、新たな表面が露出する。そこで、例えば、前記第1切断ユニットにおける前記第1切断手段と、前記第2切断ユニットにおける前記第2切断手段および前記第3切断手段とを、例えば、前記除去された層よりも低い位置に設定し、新たな層に対する切断を同様にして行うことで、引き続き組織片を製造できる。
【0048】
第3の例として、前記ステージ移動制御手段を有する形態があげられる。この形態の生体組織切断装置は、例えば、前記ステージユニットが、さらに、ステージ移動制御手段を有する。具体的には、前記ステージ移動制御手段は、前記ステージを、例えば、前記生体試料を固定する前記ステージの表面に対して、上下方向および面方向の少なくとも一つの方向に移動させる。前記ステージ移動制御手段は、例えば、前記ステージを、いずれか一方向のみに移動させてもよいし、いずれか二方向に移動させもよいし、三方向全てに移動させてもよい。
【0049】
前記第1の例では、前記第1切断手段を前記第1方向の切断面を形成するように移動させたが、本例の場合、前記第1切断手段に代えて、前記ステージを移動させて、前記ステージ上の生体組織を前記第1切断手段により切断してもよい。また、前記第2切断手段および前記第3切断手段に代えて、前記ステージを移動させて、前記ステージ上の生体組織を前記第2切断手段および前記第3切断手段により切断してもよい。
【0050】
本発明の生体組織切断装置において、例えば、前記第1切断ユニット、前記第2切断ユニット、切断組織を載置するステージを除く各構成要素は、滅菌可能な材質で構成されていることが好ましく、具体例として、オートクレーブ滅菌が可能な高温高圧に耐性を有するサニタリー(衛生)仕様があげられる。前記第1切断ユニット、前記第2切断ユニットおよび前記ステージは、例えば、個体間の汚染・感染の可能性をより軽減できることから、患者毎に取り換えるディスポーザブルとするのが望ましい。
【0051】
本発明の生体組織切断装置は、例えば、前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとが独立した分離型の装置でもよいし、前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとが一つの装置内部に配置された一体型の装置でもよい。
【0052】
前者の分離型装置は、前述のように、前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットとが、独立した装置であり、例えば、前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットが、それぞれ、前記ステージを取り付ける取り付け部を備える。この場合、例えば、前記第1切断ユニットにおいて、前記ステージの取り付け部に前記ステージが取り付けられ、前記生体試料が切断されて前記第1方向の切断面が形成された後、前記第1切断ユニットから前記ステージが取り外され、前記ステージが前記第2切断ユニットに取り付けられ、前記生体試料が切断された前記第2方向の切断面および前記第3方向の切断面の形成が行われる。
【0053】
後者の一体型装置は、前述のように、前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットが一つの装置内部に配置され、前記ステージ、前記第1切断ユニットおよび前記第2切断ユニットの少なくとも1つが着脱可能である。
【0054】
以下に、本発明の生体組織切断装置として、前記分離型装置と前記一体型装置を例示する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されない。また、特に示さない限り、各実施形態の記載は、他の実施形態に援用できる。以下、図において、同一箇所には同一符号を付している。
【0055】
(実施形態1)
実施形態1として、本発明における分離型装置の一例をあげ、図6−7を用いて説明する。本実施形態の分離型装置は、第1切断ユニットと第2切断ユニットとが、独立した装置である。特に示さない限り、第1切断ユニットと第2切断ユニットの説明は、互いに援用できる。
【0056】
図6は、第1切断ユニット(X平面切断ユニット)50の概略を示す斜視図である。図6に示すように、第1切断ユニット50は、基板501と、第1切断手段10、およびステージユニットを有する。第1切断ユニット50において、第1切断手段10は、その刃102の向きとX軸方向との関係が、前述した図2に示すような関係となるようにセットされる。
【0057】
ステージユニットは、生体組織が固定されるステージ503とステージ503を取り付けるステージ取付け部502とを有し、ステージ503は、基板501上に配置されたステージ取付け部502の上に、着脱可能に取り付けられている。ステージ503は、例えば、ネジ、プランジャ等の係止具を用いて、ステージ取付け部502に固定してもよい。前記係止具を使用することで、例えば、切断時における生体組織の位置決めをより確実に行うことができる。
【0058】
第1切断ユニット50は、例えば、さらに、ステージ503の高さ調節手段を備えてもよい。ステージ503に固定された生体組織は、例えば、前述のように、上側の表面層から切断され、さらに除去される。このため、新たな表面層を切断できるように、前記高さ調節手段により、ステージ503の高さを調節可能であることが好ましい。また、ステージ503の高さにより、ステージ503上に固定化される生体組織と第1切断手段10の刃102との位置関係を調節することで、例えば、前記生体組織の切り込みの深さ(切り込み寸法)を調節できる。このような調節によって、例えば、生体試料に対する第1切断手段10による切り込みを十分な深さに設定でき、十分な歩留りを実現できる。また、前記生体組織を前記接着剤等により固定化している場合、例えば、前記調節によって、接着剤層までを切断して、得られる組織片に前記接着剤層を混入させること、また、前記接着剤層の切断による、固定化した前記生体組織の崩れも十分に防止できる。
【0059】
前記高さ調節手段は、特に制限されず、例えば、ボルト式、ダイヤル式、ネジ式、ラチェット式等のアジャスターがあげられ、前記高さ調節手段は、例えば、ステージ取付け部502が備えてもよい。
【0060】
第1切断手段10は、基板501上に配置された第1移動制御手段に連結している。前記第1移動制御手段は、第1切断手段10をX軸方向に移動する手段と、第1切断手段10をY軸方向に移動する手段とを有する。このように、前記第1移動制御手段を備え、第1切断手段10について、X軸方向への移動とY軸方向への移動を行うことで、例えば、ステージ503に固定化された生体組織について、X面の形成を、並行に複数回繰り返し行うことが可能である。
【0061】
前者のX軸方向への移動手段について説明する。第1切断手段10は、摺動する取付けプレート508に配置されており、取付けプレート508には、ハンドル504が固定されており、ハンドル504が、前記X軸方向の移動手段となる。
【0062】
後者のY軸方向への移動手段について説明する。前記移動手段は、ラチェット歯車505aおよびラチェット爪505bを含むラチェット505、送りネジ506および送りナット507を有する。ラチェット爪505bは、X軸方向への移動手段で説明した取付けプレート508に固定され、ラチェット歯車505aと送りナット507は、それぞれ、送りネジ506に螺合されている。
【0063】
そして、前記第1移動制御手段によると、例えば、以下のように、X軸方向およびY軸方向への移動が行われる。まず、ハンドル504をX軸方向に移動させることにより、取付けプレート508に取り付けられた第1切断手段10をX軸方向に移動できる。これによって、ステージ503上に固定された生体試料が切断され、X面が形成される。具体的には、ハンドル504を、X軸方向において、ラチェット505側から反対側(図において左側から右側)に向かって移動させることで、第1切断手段10が、切断開始位置から切断終了位置まで移動し、X軸方向に向かって生体試料に切り込みが入る。これによって、前記生体組織においてX面が形成される。つぎに、ハンドル504を、X軸方向に押して、前記反対側からラチェット505側(図において右側から左側)に戻すように移動させると、取付けプレート508に固定したラチェット爪505bが、ラチェット歯車505aを押す。これにより、ラチェット歯車505aと螺合した送りネジ506が、1ピッチ分周り、これに伴い、送りネジ506と螺合した送りナット507がY軸方向に一定間隔で移動する(図において手前側)。送りナット507は、取付けプレート508と連動しているため、これらの動きによって、取付けプレート508に配置された第1切断手段10を、Y軸方向に移動できる。このように、第1切断手段10を前記X軸方向に一往復移動させることにより、前記生体組織を1回切断し、且つ、第1切断手段10の位置を、次の切断のためにY軸方向に移動させることができる。
【0064】
前記ピッチは、特に制限されず、例えば、前記送りネジの溝構造によって調節できる。前記第1切断手段10のY軸方向の移動間隔は、例えば、前記第1切断手段によるX面形成の切り込み間隔であり、例えば、45度刻みで送りネジ506のピッチを利用して、任意の幅を決定できる。
【0065】
また、前記第1移動制御手段により、第1切断手段10をX軸方向に往復させる際、第1切断手段10は、前述のように、切断開始位置から切断終了位置まで移動した後、生体組織から刃102の先を離した状態で、新たな切断開始位置まで移動することが好ましい。この場合、第1切断ユニット50は、例えば、さらに、第1切断手段10が切断終了位置に到達した際、第1切断手段を前記生体組織から離す手段を有してもよい。前記手段は、特に制限されず、例えば、溝カム等のカム機構があげられる。具体例としては、例えば、前記カムと、第1切断手段10とを連動させ、第1切断手段が切断終了位置に到達すると、前記カムに沿って、第1切断手段10を生体組織の上方向に上げ、反対に、第1切断手段が新たな切断開始位置に到達すると、前記カムに沿って、第1切断手段10を生体組織のある下方向に下げる機構とする。
【0066】
図7は、第2切断ユニット(YZ平面切断ユニット)70の概略を示す斜視図である。図7に示すように、第2切断ユニット70は、基板701と、第2切断手段20および第3切断手段30を有するユニット40、およびステージユニットを有する。第2切断ユニット70において、第2切断手段20および第3切断手段30は、それぞれの刃202、302の向きとY軸方向との関係が、前述した図3に示すような関係となるようにセットされる。
【0067】
ステージユニットは、生体組織が固定されるステージ503とステージ503を取り付けるステージ取付け部702とを有し、ステージ503は、基板701上に配置されたステージ取付け部702の上に、着脱可能に取り付けられる。前述した、図6に示す第1切断ユニット50で、生体組織を処理した後、第1切断ユニット50から、ステージ503ごと処理後の生体組織を取り外し、取り外したステージ503を、第2切断ユニット70におけるステージ取付け部702に、処理後の生体組織が固定化されたステージ503として、取り付ける。この際、第2切断手段20と第3切断手段30のそれぞれの刃202、302と、生体組織の各軸方向が、前述した図3および図5に示す関係となるように、ステージ503をセットする。
【0068】
第2切断ユニット70は、前述した第1切断ユニット50と同様に、例えば、さらに、ステージ503の高さ調節手段を備えてもよい。ステージ503に固定された生体組織は、例えば、前述のように、上側の表面層から切断され、さらに除去される。このため、新たな表面層を切断できるように、前記高さ調節手段により、ステージ503の高さを調節可能であることが好ましい。また、ステージ503の高さにより、ステージ503上に固定化される生体組織と第2切断手段20の刃202および第3切断手段30の刃302との位置関係を調節することで、例えば、前記生体組織の切り込みの深さ(切り込み寸法)を調節できる。このような調節によって、例えば、生体試料に対する第2切断手段20および第3切断手段30による切り込みを十分な深さに設定でき、十分な歩留りを実現できる。また、前記生体組織を前記接着剤等により固定化している場合、例えば、前記調節によって、接着剤層までを切断して、得られる組織片に前記接着剤層を混入させること、また、前記接着剤層の切断による、固定化した前記生体組織の崩れも十分に防止できる。
【0069】
第2切断手段20および第3切断手段30を備えるユニット40は、基板701上に配置された第2移動制御手段に連結している。前記第2移動制御手段は、第2切断手段20および第3切断手段30をY軸方向に移動する手段と、第2切断手段20および第3切断手段30をX軸方向に移動する手段とを有する。このように、前記第2移動制御手段を備え、第2切断手段20および第3切断手段30について、Y軸方向への移動とX軸方向への移動を行うことで、例えば、ステージ503に固定化された生体組織について、Y面およびZ面の形成を、並行に複数回繰り返し行うことが可能である。
【0070】
前者のY軸方向への移動手段について説明する。第2切断手段20(例えば、図7においては、第2切断ユニット40)は、摺動する取付けプレート708に配置されており、取付けプレート708には、ハンドル704が固定されており、ハンドル704が、前記Y軸方向の移動手段となる。
【0071】
後者のX軸方向への移動手段について説明する。前記移動手段は、ラチェット歯車705aおよびラチェット爪705bを含むラチェット705、送りネジ706および送りナット707を有する。ラチェット爪705bは、Y軸方向への移動手段で説明した取付けプレート708に固定され、ラチェット歯車705aと送りナット707は、それぞれ、送りネジ706に螺合されている。
【0072】
そして、前記第2移動制御手段によると、例えば、以下のように、Y軸方向およびX軸方向への移動が行われる。まず、ハンドル704をX軸方向に移動させることにより、取付けプレート708に取り付けられた第2切断手段20および第3切断手段30をY軸方向に移動できる。これによって、ステージ503上に固定された生体試料が切断され、Y面およびZ面が形成される。具体的には、ハンドル704を、Y軸方向に押して、ラチェット705側から反対側(図において紙面手前側から奥側)に向かって移動させることで、第2切断手段20および第3切断手段30が、切断開始位置から切断終了位置まで移動し、前記生体組織においてY面およびZ面がそれぞれ形成される。つぎに、ハンドル704を、Y軸方向において、前記反対側から前記ラチェット705側(図において紙面奥側から手前側)に戻すように移動させると、取付けプレート708に固定したラチェット爪705bが、ラチェット歯車705aを押す。これにより、ラチェット歯車705aと螺合した送りネジ706が、1ピッチ分周り、これに伴い、送りネジ706と螺合した送りナット707がX軸方向に一定間隔で移動する(図において右側)。送りナット707は、取付けプレート708と連動しているため、これらの動きによって、取付けプレート708に配置された第2切断手段20および第3切断手段30を、X軸方向に移動できる。このように、第2切断手段20および第3切断手段30を前記Y軸方向に一往復移動させることにより、前記生体組織を1回切断し、且つ、第2切断手段20および第3切断手段30の位置を、次の切断のためにX軸方向に移動させることができる。
【0073】
生体組織が第2切断ユニット70で切断されると、前述のように、複数個の組織片が製造される。切断された組織片は、例えば、第2切断ユニット70において、第3切断手段30の背(上面)に順次滞留させてもよい。
【0074】
実施形態1の分離型装置を用いて、生体組織から組織片を切断する方法について、一例を説明するが、本発明は、この例には限定されない。
【0075】
(第1工程)
まず、生体組織を、ステージ503にセットする。具体例として、ステージとしてスライドを使用し、前記スライドのサンプル受け中央に吸着固定させ、前記スライドを、ステージ取付け部502にセットする。前記スライドは、例えば、ステージ取付け部502に、位置固定用のプランジャを挿入して固定する。
【0076】
(第2工程)
そして、第1切断ユニット50によるX軸方向の切断の際、Z軸方向に対する切り込み寸法(切り込み深さ)を設定する。前記切り込み寸法は、例えば、前記ステージの高さ調節手段によって、ステージ503をZ軸方向に移動させることで調節できる。
【0077】
(第3工程)
つぎに、第1切断ユニット50のハンドル504を、ラチェット側からステージユニット側(図6において左方向から右方向)に、右移動ストロークさせる。これにより、第1切断手段10によって、前記生体組織にX軸方向の切り込みがはいり、X面が形成される。ハンドル504の前記ステージユニット側への右移動ストロークが、ストロークエンド(第1切断手段10の稼働範囲の一方の最終点)に近づくと、溝カムに沿って移動している第1切断手段10が、上方向にあがり、前記生体組織から離れ、一列目の切断を完了すると同時に、ストロークエンドに到達する。
【0078】
(第4工程)
第1切断ユニット50のハンドル504を、元の位置方向(図6において右方向から左方向)に戻す。この際、第1切断手段10は、前記溝カムに沿って、前述した上方向にあがった状態のまま移動する。ハンドル504の前記ラチェット側への左移動ストロークが、ストロークエンド(第1切断手段10の稼働範囲の他方の最終点)に近づくと、ラチェット爪505bが、ラチェット歯車505aを押して、送りネジ506を1ピッチ分回す。この動きが完了して、ハンドル504が前記左移動のストロークエンドに近づくと、第1切断手段10は、前記溝カムに沿って、生体組織がある下方向に下がり、次の列の切断開始位置にセットされ、新たな切断開始の状態となる。
【0079】
(第5工程)
前記第1工程から第4工程を繰り返し、X軸方向の切断が完了すると、ステージ取付け部502から前記位置固定用のプランジャを抜き、生体組織を固定したままステージ503を、第1切断ユニット50から取り出す。そして、取り出したステージ503を、第2切断ユニット70のステージ取付け部702に、同様にして取り付ける。この際、生体組織におけるX軸、Y軸およびZ軸と、第2切断ユニット70における第2切断手段20および第3切断手段30による切断方向とが揃うように、ステージ503を取り付ける。
【0080】
(第6工程)
つぎに、第2切断ユニット70のハンドル704を、Y軸方向において、ラチェット側からその反対側(図7において手前側から紙面奥側)の前進方向に動かすことで、第2切断手段20および第3切断手段30を同時に移動させる。これにより、前記生体組織が、さらに切断され、組織片が製造される。
【0081】
(第7工程)
第2切断ユニット70のハンドル704が、前記前進方向のストロークエンド(第2切断手段20および第3切断手段30の稼働範囲の一方の最終点)に近づくと、ハンドル704を、前記前進方向とは逆方向に動かす。そして、ハンドル704が、前記逆方向のストロークエンド(第2切断手段20および第3切断手段30の稼働範囲の他方の最終点)に近づくと、ラチェット爪705bが、ラチェット歯車705aを押して、送りネジ706を1ピッチ分回す。この動作を繰り返して、第2切断手段20および第3切断手段30による切断を行うことで、組織片が製造される。この際、サイズを設定することで、所望の寸法の組織片を製造できる。
【0082】
(第8工程)
切断された組織片は、例えば、第2切断手段20の側面および第3切断手段30の上面等に付着するように堆積する。このため、第2切断手段20および第3切断手段30を、例えば、生理食塩水等の溶媒で洗い流し、サンプル受けバケットに前記組織片を回収することもできる。
【0083】
第1切断手段10、第2切断手段20および第3切断手段30は、切断が完了した後、例えば、取り外して、新たなものに付け替えてもよい。
【0084】
(実施形態2)
実施形態2として、本発明における一体型の生体組織切断装置の一例をあげ、図面を用いて説明する。
【0085】
本実施形態2は、前記実施形態1において分離された前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットが、一つの装置内に収容されており、且つ、前記第1切断ユニットと前記第2切断ユニットに対する前記ステージが、共通している。本実施形態2において、その他の構成は、例えば、前記実施形態1を援用できる。
【0086】
本実施形態の生体組織切断装置は、例えば、前記ステージ上に固定される生体試料を基準として、前記生体試料の第1方向を切断するように前記第1切断ユニットが配置され、前記生体試料の第2方向および第3方向を切断するように前記第2切断ユニットが配置されていることが好ましい。具体的には、本実施形態の装置において、前記第1切断ユニットにおける前記第1切断手段と前記第2切断ユニットにおける第2切断手段および第3切断手段は、前記生体試料に対して、前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向となっていることが好ましい。
【0087】
本実施形態の生体組織切断装置の一例を、図8に示す。図8は、本実施形態の生体組織切断装置の概略を示す斜視図である。図8において、図6および図7と同一箇所には同一符号を付しており、前記実施形態1の記載を援用できる。
【0088】
本実施形態の生体組織装置は、ステージユニット、第1切断ユニットおよび第2切断ユニットを有し、これらが基板801上に配置されることで、一つの装置内に収容されている。本実施形態において、方向は、ステージ上に固定化した生体組織の第1方向、第2方向および第3方向を基準として説明する。
【0089】
前記ステージユニットは、前記生体組織を固定化するステージと、前記ステージを取り付ける取り付け部と、前記ステージの移動を制御するステージ移動制御手段とを有する。前記ステージは、前記取付け部に取り付けられる。前記取付け部は、前記ステージ移動制御手段により、例えば、第1方向(X軸方向)、第2方向(Y軸方向)、および第3方向(Z軸方向)への移動が可能である。前記ステージ移動制御手段は、特に制限されず、レール(例えば、リニアガイド)803とスライダー802との組合せがあげられ、前記スライダー上に前記取付け部を配置し、前記スライダーを前記レールに沿って移動させることで、前記第1方向への移動が可能である。前記ステージユニットにおける前記ステージは、前記生体組織の切断時、例えば、位置決めを確実にするために、例えば、ねじ、プランジャ等の係止具で固定することが好ましい。
【0090】
前記第1切断ユニットは、前記第1切断手段と、前記第1切断手段の移動を制御する第1移動制御手段とを有する。前記第1切断手段は、例えば、カッターの刃であり、刃が前記第1方向に向かって配置されている。前記第1切断手段は、前記第1移動制御手段により、第1方向(X軸方向)、第2方向(Y軸方向)、第3方向(Z軸方向)への移動が可能である。第1方向への移動は、例えば、切断開始位置と切断終了位置との間の移動であり、第2方向への移動は、例えば、生体組織からの前記第1切断手段の引き抜きと、高さ方向における同一の層に対する新たな切断開始位置を設定するための第2方向(Y軸方向)への移動であり、第3方向への移動は、例えば、高さ方向における新たな層に対する新たな切断開始位置を設定するための第3方向(Z軸方向)への移動である。前記第1移動制御手段は、特に制限されず、これらの移動を制御できればよく、例えば、前記実施形態1の例示が援用できる。
【0091】
前記第2切断ユニットは、前記第2切断手段および前記第3切断手段と、前記第2切断手段および前記第3切断手段の移動を制御する第2移動制御手段とを有する。前記第2切断手段および前記第3切断手段は、例えば、それぞれ、カッターの刃であり、前記第2切断手段は、前記刃が前記第2方向に向かって配置され、前記第3切断手段は、前記刃が前記第3方向に向かって配置され、両者は、それらの方向を維持するように固定化されている。前記第2切断手段および前記第3切断手段は、前記第2移動制御手段により、例えば、第1方向(X軸方向)、第2方向(Y軸方向)、第3方向(Z軸方向)への移動が可能である。第2方向への移動は、例えば、切断開始位置と切断終了位置との間の移動であり、第1方向への移動は、例えば、高さ方向における同一の層に対する新たな切断開始位置を設定するための移動であり、第3方向への移動は、例えば、高さ方向における新たな層に対する新たな切断開始位置を設定するための移動である。前記第2移動制御手段は、特に制限されず、これらの移動を制御できればよく、例えば、前記実施形態1の例示が援用できる。
【0092】
本実施形態の一体型装置においては、第1切断ユニットから第2切断ユニットに生体組織を固定化したステージ503を移動させる以外は、前記実施形態1の記載を援用できる。本実施形態の一体型装置においては、第1切断ユニットの第1切断手段10で生体組織を切断した後、スライダー802上のステージユニット(ステージ取付け部502およびステージ503)を、レールに沿って、第2切断ユニット側に移動させ、第2切断ユニットの第2切断手段20および第3切断手段30で前記生体組織の切断を行うことができる。
【0093】
本実施形態の一体型装置は、ステージユニットが、例えば、平面方向において回転機能を有してもよい。ステージユニットが回転することによって、例えば、第1切断ユニットにおける第1切断手段10の刃の切断方向と、第2切断ユニットにおける第2切断手段20および第3切断手段30の刃の切断方向とが、X軸およびY軸において揃っていなくても、前記ステージユニットの回転によって、各ユニットでの切断時に、方向を調節することが可能である。
【0094】
(2)生体組織切断方法
本発明の生体組織の切断方法は、前述のように、前記本発明の生体組織切断装置を使用し、
ステージ上に生体組織を固定する工程、
前記第1切断ユニットにより、前記生体組織を、第1方向に切断する第1切断工程、および、
前記第2切断ユニットにより、前記生体組織を、第2方向および第3方向に同時に切断する第2切断工程を有し、
前記第2方向は、前記第1方向と交差する方向であり、
前記第3方向は、前記第1方向および前記第2方向と交差する方向であることを特徴とする。
【0095】
本発明の切断方法は、前記本発明の生体組織切断装置を使用することが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の切断方法は、前記本発明の生体組織切断装置における記載を援用できる。
【0096】
本発明の切断方法は、前記第1切断工程および前記第2切断工程を繰り返すことが好ましい。これによって、例えば、前記生体組織切断装置に固定化した生体組織から、複数の組織片を簡便に調製できる。
【0097】
(3)組織片の製造方法
本発明の組織片の製造方法は、前述のように、生体組織を前記本発明の切断方法により切断することを特徴とする。
【0098】
本発明の製造方法は、前記本発明の生体組織切断装置を使用することが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の製造方法は、前記本発明の生体組織切断装置における記載および本発明の切断方法における記載を援用できる。
【0099】
(4)再生方法、手術方法および治療方法
本発明の生体組織の再生方法は、前述のように、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【0100】
本発明の手術方法は、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【0101】
本発明の治療方法は、前記本発明の製造方法により得られた組織片を使用することを特徴とする。
【0102】
本発明のこれらの方法は、前記本発明の生体組織切断装置を使用して得られた組織片を使用することが特徴であって、その他の構成および条件は、特に制限されない。
【0103】
本発明のこれらの方法において、対象は、特に制限されず、ヒト、または、非ヒト動物があげられる。また、前記再生方法は、例えば、in vitroでもよいし、in vivoでの適用でもよい。
【0104】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0105】
この出願は、2014年1月29日に出願された日本出願特願2014−014859を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明の生体組織切断装置によれば、前記第1方向への切断と、前記第2方向および前記第3方向への同時の切断とを行うことで、簡便且つ正確に、大量の微細な組織片を製造することができる。
【符号の説明】
【0107】
10 第1切断手段
101、201、301、401 本体
102、202、302 刃
20 第2切断手段
30 第3切断手段
40、70 第2切断ユニット(YZ平面切断ユニット)
50 第1切断ユニット(X平面切断ユニット)
501、701、801 基板
502、702 ステージ取付け部
503 ステージ
504、704 ハンドル
505、705 ラチェット
505a、705a ラチェット歯車
505b、705b ラチェット爪
506、706 送りネジ
507、707 送りナット
508、708 取付けプレート
60 生体組織
80 一体型装置
802 スライダー
803 レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8