(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オブジェクト動作ステップでは、前記オブジェクトの回転半径又は回転中心である前記重心位置を変化させ、前記オブジェクトが前記立体映像エリアの全領域に表示させるようにし、
前記認識力測定ステップでは、前記ユーザー操作と前記オブジェクトの表示位置との関係に基づいて、観察者の視野範囲も測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の軽度認知症の早期発見・予防プログラム。
前記オブジェクトの色の彩度を変化させ、前記オブジェクトの彩度と前記ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との関係に基づいて観察者の色別と白濁を測定する白濁測定ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の軽度認知症の早期発見・予防プログラム。
前記オブジェクト動作ステップでは、前記オブジェクトの回転半径又は回転中心である前記重心位置を変化させ、前記オブジェクトが前記立体映像エリアの全領域に表示させるようにし、
前記認識力測定ステップでは、前記ユーザー操作と前記オブジェクトの表示位置との関係に基づいて、観察者の視野範囲も測定する
ことを特徴とする請求項10に記載の軽度認知症の早期発見・予防システム。
前記立体視プログラムは、前記オブジェクトの色の彩度を変化させ、前記オブジェクトの彩度と前記ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との関係に基づいて観察者の色別と白濁を測定する白濁測定ステップをさらに含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の軽度認知症の早期発見・予防システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、視力には眼球視力と脳内視力の2つがあり、認知機能低下による視力障害は、「脳内視力の低下」が原因であるとともに、眼球視力が低下することによる「脳の活動の低下」も原因となっており、認知機能低下による視力障害は、眼と脳が関連しながら進行していくと考えられている。
【0011】
このため、脳を活性化させるための働きかけは、左右の両眼でバランスよく「視る」という刺激が重要である。すなわち、両眼の脳内視力を通じて左脳と右脳をバランスよく刺激して活性化させることによって、記憶力、集中力、想像力などを高め、認知機能低下の進行を和らげるとともに、脳内視力の回復も促すことができる。
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような、単にオブジェクトを見分けるなどの手法であり、左右の両眼でバランスよく視るという要素が含まれていないことから、ゲームに集中するあまり、むしろ「利き目」だけで見つめてしまうようになってしまい、偏った脳内視力で脳を刺激する結果となる惧れがある。
【0013】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、左右の両眼でバランスよく視ることによって、左脳と右脳をバランスよく刺激して活性化させ、容易に認知機能低下の進行を和らげるとともに、脳内視力の回復も促すことのできる軽度認知症の早期発見・予防プログラム及びシステムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)プログラムの発明
(1−1)空間認識能力及び状況判断力テスト
上記課題を解決するために、本発明は、
観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、
アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、
ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスと
を備えた情報処理端末を用いて、軽度認知症の早期発見又は予防するためのプログラムであって、このプログラムは、
情報処理端末に、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、
立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数のオブジェクトを表示し、複数のオブジェクトを、仮想空間内に設置された任意の重心位置を中心として任意の速度で回転させるとともに、任意のタイミング及び時間長でオブジェクトの色を変化させるオブジェクト動作ステップと、
オブジェクトの色が変化したタイミング及び時間長と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との時間差、及びユーザー操作の正確性を、空間認識能力及び状況判断力のテスト結果として記録する認識力測定ステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0015】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内で、複雑な軌道で回転する複数のオブジェクトの色を、任意のタイミング及び時間長で変化させ、その変化を認識した時点で観察者にユーザーインターフェイスを操作させる。オブジェクトの色が変わった時間から、観察者が操作するまでの時間差や正確性を測定することで、観察者の空間認識能力及び状況判断力をチェックすることができる。この時間差や正確性が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0016】
上記発明において、オブジェクト動作ステップでは、オブジェクトの回転半径又は回転中心である重心位置を変化させ、オブジェクトが立体映像エリアの全領域に表示させるようにし、認識力測定ステップでは、ユーザー操作とオブジェクトの表示位置との関係に基づいて、観察者の視野範囲も測定することが好ましい。
【0017】
この場合には、タブレットPCの画面の四隅までオブジェクトを表示させ、それに対する観察者の反応を見ることで、観察者の視野範囲を測定することができ、視野範囲の広狭から認知障害を推定することができる。
【0018】
上記発明において、オブジェクトの色の彩度を変化させ、オブジェクトの彩度とユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との関係に基づいて観察者の色別と白濁を測定する白濁測定ステップをさらに含むことが好ましい。
【0019】
この場合には、例えばスライダーを操作させるなどしてオブジェクトの彩度を変化させ、観察者にとって見やすいように調節させることで、観察者の色別と、眼球の白濁等を発見することができる。
【0020】
(1−2)瞬間視・大小の恒常性テスト
また、他の発明は、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、
アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、
ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備えた情報処理端末を用いて、軽度認知症の早期発見又は予防するためのプログラムであって、プログラムは、情報処理端末に、
左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、
立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトを表示し、複数種のオブジェクトのうち同一物に関するオブジェクトを、仮想空間内における深度を変化させつつ複数同時に表示させるオブジェクト深度変動ステップと、
同一物に関するオブジェクトの表示数と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、瞬間視又は大小の恒常性のテスト結果として記録する恒常性測定ステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0021】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内に、リンゴとミカンといったように複数種類の果物を、深度を変化させつつ同時に表示させ、その表示数を観察者にユーザーインターフェイスを操作させて回答させる。このとき同一物に関する仮想空間内における大きさは等しく設定して、表示する際の深度(仮想空間内における奥行き)のみを変化させる。そして、表示数と観察者によるカウント数を測定することで、観察者の瞬間視、大小の恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0022】
上記発明において、恒常性測定ステップの後に時間差をおいて、同一物に関するオブジェクトの表示数を質問して、観察者からの回答を受け付ける質問ステップと、同一物に関するオブジェクトの表示数と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、記憶力のテスト結果として記録する記憶力測定ステップと、をさらに含むことが好ましい。
【0023】
この場合には、瞬間視、大小の恒常性と合わせて、記憶力のチェックもすることができる。誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0024】
(1−3)色の恒常性テスト
他の発明は、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備えた情報処理端末を用いて、軽度認知症の早期発見又は予防するためのプログラムであって、プログラムは、情報処理端末に、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトを表示し、複数種のオブジェクトのうち同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させるオブジェクト色変動ステップと、同一物に関するオブジェクトの表示と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、色の恒常性のテスト結果として記録する色恒常性測定ステップと、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0025】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内に、同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させ、観察者にユーザーインターフェイスを操作させて同一物の色を回答させる。そして、表示されている色と観察者による回答を比較することで、観察者の色恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0026】
(1−4)視覚野に関する脳の活動状況テスト
他の発明は、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備えた情報処理端末を用いて、軽度認知症の早期発見又は予防するためのプログラムであって、プログラムは、情報処理端末に、左眼用映像及び右眼用映像とで異なる個数のオブジェクトを表示させる左右映像エリアを生成する左右映像生成ステップと、オブジェクトの表示と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、視野闘争による視覚野に関する脳の活動状況のテスト結果として記録する視野闘争測定ステップと、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【0027】
このような本発明によれば、例えば、2Dや3D表示が可能なタブレット型PCなどで、左右映像エリア中に、左眼用映像及び右眼用映像とで異なる個数のオブジェクトを表示させることにより、視野闘争による視覚野の脳の活動状況をテストすることができる。
【0028】
(1−5)脳波連動テスト
上記発明において前記情報処理端末には、前記観察者の脳波を検出し、前記脳波に応じた脳波信号を出力する脳波検出デバイスと、前記脳波検出デバイスから取得した前記脳波信号を記録する脳波信号記録部とがさらに設けられ、前記早期発見・予防プログラムは、前記アプリケーション実行部で実行される前記立体視プログラムにより記録されたテスト結果と、前記脳波信号記録部によって記録された脳波信号とを連携させて解析する脳波相関解析ステップをさらに含む処理を実行させることが好ましい。ここで、脳波とは、脳の神経細胞から出される弱い周期性の電流である。
【0029】
この場合には、各種脳波の強弱やバランスを解析することにより、観察者の緊張状態、リラックス状態、集中状態を測定し、ユーザー操作の正確性との相関を知ることができ、軽度認知症の早期発見・予防の精度を高めることができる。
【0030】
詳述すると、MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)によって低下する認知機能は、「エピソード記憶」、「注意分割機能」、「思考力」及び「視空間認知機能」であることから、機能向上のための働きかけを行って認知機能を刺激することで、認知障害の発症を遅らせたり予防したりすることができることが知られている。解析部111fでは、立体視プログラムによる立体視によって認知機能を刺激するとともに、脳波信号を検出することにより、認知機能に対する刺激による効果を解析することができる。
【0031】
なお、「視空間認知障害」とは、視力が障害されていないにもかかわらず、顔や物品の認識や物品を見つける能力の障害、簡単な道具の操作や着衣の能力の障害があることでありこれらの障害はアルツハイマー型認知症でよく認められる症状である。また、典型的なアルツハイマー型認知症の初期には、図形を描くのが下手になり、運転で道に迷うようになる、車の車庫入れができなくなるといった症状があり、中期では物を探すのが難しくなる、後期では簡単な道具の操作と着衣ができなくなるといった症状がある。
【0032】
これらのような症状を視空間認知障害と呼び、神経基盤アルツハイマー型認知症では頭頂後頭葉の血流低下が視空間認知障害の責任病巣と考えられている。視空間認知障害はMMSEの重なった五角形の模写や立体の模写で検出されることが多い。キツネやハトの手の形の模倣が簡便なスクリーニングといわれている。これは眼前の対象の視空間的な特性をつかんだうえで、それを書き写したり動かしたりするという視空間認知機能の障害に起因し、構成障害とも呼ばれる。このように認知障害と視空間認知機能との間には密接な相関があると考えられ、立体視プログラムによる脳機能への刺激と、それによる脳波を検出することにより、より有効に認知機能に対する刺激による効果を解析することができる。
【0033】
(1−6)サーバー制御プログラム
他の発明は、上記情報処理端末に通信ネットワークを通じて接続可能なコンテンツ管理サーバーを制御するためのサーバー制御プログラムであって、
サーバー制御プログラムは、コンテンツ管理サーバーを、アップロードされた画像を、その画像に映っている被写体に関する年代を含む情報と関連づけて蓄積するコンテンツ蓄積部と、アプリケーション実行部により実行されているプログラムとの間でデータの送受信を行う通信部と、テストの対象となっている観察者の年代を含む配信要求を情報処理端末から通信部を通じて取得し、配信要求に含まれる観察者の年代に適合した画像をコンテンツ蓄積部から選定するコンテンツ選定部と、コンテンツ選定部が選定した画像をアプリケーション実行部により実行されているプログラムに対して配信するコンテンツ配信部として機能させることを特徴とする軽度認知症の早期発見・予防のためのサーバー制御プログラム。
【0034】
この場合には、多数のユーザーから懐かしい写真などを、年代を含む情報とともにアップロードしてもらい、データベース化して蓄積しておき、認知障害の被験者であるユーザーの年代に合わせた画像をオブジェクトして生成し、上述したプログラムによる各種テストで使用する。これにより、上記各種テストに際し、被験者の長期記憶を呼び起こすことができ、脳の活性化を促すことができる。
【0035】
(2)システムの発明
(2−1)空間認識能力及び状況判断力テスト
本発明は、軽度認知症の早期発見又は予防するためのシステムであって、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備え、プログラムは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数のオブジェクトを表示し、複数のオブジェクトを、仮想空間内に設置された任意の重心位置を中心として任意の速度で回転させるとともに、任意のタイミング及び時間長でオブジェクトの色を変化させるオブジェクト動作ステップと、オブジェクトの色が変化したタイミング及び時間長と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との時間差、及びユーザー操作の正確性を、空間認識能力及び状況判断力のテスト結果として記録する認識力測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0036】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内で、複雑な軌道で回転する複数のオブジェクトの色を、任意のタイミング及び時間長で変化させ、その変化を認識した時点で観察者にユーザーインターフェイスを操作させる。オブジェクトの色が変わった時間から、観察者が操作するまでの時間差や正確性を測定することで、観察者の空間認識能力及び状況判断力をチェックすることができる。この時間差や正確性が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0037】
上記発明において、オブジェクト動作ステップでは、オブジェクトの回転半径又は回転中心である重心位置を変化させ、オブジェクトが立体映像エリアの全領域に表示させるようにし、認識力測定ステップでは、ユーザー操作とオブジェクトの表示位置との関係に基づいて、観察者の視野範囲も測定することが好ましい。
【0038】
この場合には、タブレットPCの画面の四隅までオブジェクトを表示させ、それに対する観察者の反応を見ることで、観察者の視野範囲を測定することができ、視野範囲の広狭から認知障害を推定することができる。
【0039】
上記発明において、プログラムは、オブジェクトの色の彩度を変化させ、オブジェクトの彩度とユーザーインターフェイスに対するユーザー操作との関係に基づいて観察者の色別と白濁を測定する白濁測定ステップをさらに含むことが好ましい。
【0040】
この場合には、例えばスライダーを操作させるなどしてオブジェクトの彩度を変化させ、観察者にとって見やすいように調節させることで、観察者の色別と、眼球の白濁等を発見することができる。
【0041】
(2−2)瞬間視・大小の恒常性テスト
また、他の発明は、軽度認知症の早期発見又は予防するためのシステムであって、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備え、プログラムは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトを表示し、複数種のオブジェクトのうち同一物に関するオブジェクトを、仮想空間内における深度を変化させつつ複数同時に表示させるオブジェクト深度変動ステップと、同一物に関するオブジェクトの表示数と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、瞬間視、大小の恒常性のテスト結果として記録する恒常性測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0042】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内に、リンゴとミカンといったように複数種類の果物を、深度を変化させつつ同時に表示させ、その表示数を観察者にユーザーインターフェイスを操作させて回答させる。このとき同一物に関する仮想空間内における大きさは等しく設定して、表示する際の深度(仮想空間内における奥行き)のみを変化させる。そして、表示数と観察者によるカウント数を測定することで、観察者の瞬間視、大小の恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0043】
上記発明において、プログラムは、恒常性測定ステップの後に時間差をおいて、同一物に関するオブジェクトの表示数を質問して、観察者からの回答を受け付ける質問ステップと、同一物に関するオブジェクトの表示数と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、記憶力のテスト結果として記録する記憶力測定ステップと、をさらに含むことが好ましい。
【0044】
この場合には、瞬間視、大小の恒常性と合わせて、記憶力のチェックもすることができる。誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0045】
(2−3)色の恒常性テスト
また、他の発明は、軽度認知症の早期発見又は予防するためのシステムであって、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備え、プログラムは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアを生成する立体映像生成ステップと、立体映像エリア中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトを表示し、複数種のオブジェクトのうち同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させるオブジェクト色変動ステップと、同一物に関するオブジェクトの表示と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、色の恒常性のテスト結果として記録する色恒常性測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0046】
このような本発明によれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内に、同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させ、観察者にユーザーインターフェイスを操作させて同一物の色を回答させる。そして、表示されている色と観察者による回答を比較することで、観察者の色恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0047】
(2−4)視覚野に関する脳の活動状況テスト
また、他の発明は、軽度認知症の早期発見又は予防するためのシステムであって、観察者の左右の眼にそれぞれ対応させた左眼用映像と右眼用映像を生成させるためのプログラムが実行されるアプリケーション実行部と、アプリケーション実行部により実行されたプログラムによって生成された左眼用映像及び右眼用映像を、左右の眼にそれぞれ対応した箇所に表示させる表示部と、ユーザー操作を受け付けるユーザーインターフェイスとを備え、プログラムは、左眼用映像及び右眼用映像とで異なる個数のオブジェクトを表示させる左右映像エリアを生成する左右映像生成ステップと、オブジェクトの表示と、ユーザーインターフェイスに対するユーザー操作の正確性とを、視野闘争による視覚野に関する脳の活動状況のテスト結果として記録する視野闘争測定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0048】
このような本発明によれば、例えば、2Dや3D表示が可能なタブレット型PCなどで、左右映像エリア中に、左眼用映像及び右眼用映像とで異なる個数のオブジェクトを表示させることにより、視野闘争による視覚野の脳の活動状況をテストすることができる。
【0049】
(2−5)脳波連動テスト
上記発明において前記情報処理端末には、前記観察者の脳波を検出し、前記脳波に応じた脳波信号を出力する脳波検出デバイスと、前記脳波検出デバイスから取得した前記脳波信号を記録する脳波信号記録部とがさらに設けられ、前記早期発見・予防プログラムは、前記アプリケーション実行部で実行される前記立体視プログラムにより記録されたテスト結果と、前記脳波信号記録部によって記録された脳波信号とを連携させて解析する脳波相関解析ステップをさらに含む処理を実行させることが好ましい。この場合には、各種脳波の強弱やバランスを解析することにより、観察者の緊張状態、リラックス状態、集中状態を測定し、ユーザー操作の正確性との相関を算出することができ、軽度認知症の早期発見・予防の精度を高めることができる。
【0050】
(2−6)コンテンツ管理サーバー
上記発明において、通信ネットワークに接続可能なコンテンツ管理サーバーをさらに備え、コンテンツ管理サーバーは、アップロードされた画像を、その画像に映っている被写体に関する年代を含む情報と関連づけて蓄積するコンテンツ蓄積部と、アプリケーション実行部により実行されているプログラムとの間でデータの送受信を行う通信部と、テストの対象となっている観察者の年代を含む配信要求をプログラムから通信部を通じて取得し、配信要求に含まれる観察者の年代に適合した画像をコンテンツ蓄積部から選定するコンテンツ選定部と、コンテンツ選定部が選定した画像をアプリケーション実行部により実行されているプログラムに対して配信するコンテンツ配信部とを備え、プログラムは、コンテンツ配信部から配信された画像から、オブジェクトを生成し、テストを実行することが好ましい。
【0051】
この場合には、多数のユーザーから懐かしい写真などを、年代を含む情報とともにアップロードしてもらい、データベース化して蓄積しておき、認知障害の被験者であるユーザーの年代に合わせた画像をオブジェクトして生成し、上述したプログラムによる各種テストで使用する。これにより、上記各種テストに際し、被験者の長期記憶を呼び起こすことができ、脳の活性化を促すことができる。
【発明の効果】
【0052】
以上述べたように、この発明によれば、左右の両眼でバランスよく視ることによって、左脳と右脳をバランスよく刺激して活性化させ、容易に認知機能低下の進行を和らげるとともに、脳内視力の回復も促すことによって、軽度認知症の早期発見・予防を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明に係る軽度認知症の早期発見・予防システム及びプログラムの実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0055】
(システムの全体構成)
図1は、本実施形態に係る軽度認知症早期発見・予防システムの全体構成を示すブロック図である。
図2(a)は、本実施形態に係る情報処理端末のCPU上に仮想的に構築される軽度認知症の早期発見・予防機能に関するモジュールを示すブロック図であり、(b)は、コンテンツ管理サーバーの内部構造を示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0056】
同図に示すように、軽度認知症早期発見・予防システムは、情報処理端末1を用いて軽度認知症早期発見・予防のためのチェック及びトレーニングを実施する仕組みであり、通信ネットワーク2を介してコンテンツ管理サーバー3に接続することにより、必要なコンテンツや情報等を情報処理端末1に取り込むことができるようになっている。通信ネットワーク2上には、コンテンツ管理サーバー3と、ユーザーが使用する情報処理端末1(1a〜1c)とが配置されている。
【0057】
通信ネットワーク2は、通信プロトコルTCP/IPを用いて種々の通信回線(電話回線やISDN回線、ADSL回線、光通信回線などの公衆回線、専用回線、3Gや4Gの無線通信網)を相互に接続して構築される分散型の通信ネットワーク(IP網)であり、この通信ネットワーク2には、インターネットの他、VPNや、10BASE−T、100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANなども含まれる。また、通信ネットワーク2には、有線接続やWifi通信を介しての接続が可能であり、例えば、Wifiルータや無線LANルータなどをアクセスポイントとして、これらと無線通信が可能な情報処理端末1を接続することができ、コンテンツ管理サーバー3と情報処理端末1との双方向通信を行うことができる。
【0058】
(情報処理端末)
情報処理端末1は、
図1に示すように、演算処理を行うCPU11と、データを一時的に記憶するメモリ12と、通信ネットワーク2を介して外部との通信を行う通信I/F13と、データを格納しておく記憶装置14とを有している。なお、本実施形態では、これらのCPU11、メモリ12及び通信I/F13、記憶装置14,出力インターフェース15と、入力インターフェース16等は、CPUバス1aを介して接続されており、相互にデータの受渡しが可能となっている。
【0059】
通信I/F13は、通信ネットワーク2を介してコンテンツ管理サーバー3と通信を行うモジュールであり、公知のデバイスを用いることができる。なお、この通信I/F13にLANケーブルや、外線若しくは内線用の電話回線を接続することにより、有線で通信を行うことができ、また、Wifiや3G回線用の通信チップ、携帯電話等を接続することによって無線で通信を行うこともできる。
【0060】
記憶装置14は、データを記録媒体に蓄積するとともに、これら蓄積されたデータを各デバイスの要求に応じて読み出す記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、メモリカード等により構成することができる。この記憶装置14には、OS(Operating System)や本実施形態に係る、立体映像コンテンツ、軽度認知症の早期発見・予防等の各種プログラム、その他、当該端末に搭載される各種のアプリケーション用のプログラム、ユーザーの個人情報、当該端末の機器識別情報(ID)などが記憶されている。
【0061】
また、CPUバス1aには出力インターフェース15と、入力インターフェース16が接続されており、入力されたユーザー操作信号が入力インターフェース16からCPUバス1aを通してCPUに入力されるとともに、各部に対する操作に関する情報がCPUバス1aを介して出力インターフェース15を介して、各出力デバイスから出力・表示される。
【0062】
出力インターフェース15には、音響を出力するスピーカー5aや、映像を出力するタッチパネル5bの液晶ディスプレイが接続されており、入力インターフェース16には、ポインティング操作やテキスト入力などのユーザー操作を入力するマウス6a、キーボード6b、タッチパネル5bや、音声を入力するマイクロフォン6c、映像を入力するカメラ6d、脳波を検出する脳波検出デバイス61が接続されている。なお、本実施形態では、映像を表示する液晶ディスプレイと、タッチ操作を入力するタッチパネルが重畳された液晶タッチパネルとなっている。この出力インターフェース15は、アプリケーション実行部111によって実行された各種のプログラムに応じた立体映像やGUI等を、このタッチパネル5bに表示させる。
【0063】
脳波検出デバイス61は、観察者の脳波を検出して、脳波に応じた脳波信号を出力するヘッドセットタイプのデバイスであり、観察者の皮膚表面の電位を計測する電極パッド61aと、チップ部61bとを備えている。電極パッド61aは、ヘッドセットが観察者の頭部に装着された状態において、観察者の額に接触するように配設されている。電極パッド61aとチップ部61bとは配線によって接続されている。チップ部61bは、電極パッド61aから出力される脳波信号を、アナログ信号処理回路、AD(Analog−Digital)変換回路、デジタル信号処理回路等により処理し、入力インターフェース16を通じて、CPU11上のアプリケーション実行部111に入力される。
【0064】
そして、CPU11は、各部を制御する際に必要な種々の演算処理を行う装置である。このCPU11は、メモリ12に格納されているアプリケーションプログラム及び設定情報に基づいて、入力インターフェース16から入力される内容に応じて、本発明に係る軽度認知症の早期発見・予防アプリケーションを実行させる。CPU11上で、軽度認知症早期発見・予防アプリケーションが実行されることで、本発明の軽度認知症早期発見・予防システムが機能モジュールとして仮想的に構築される。
【0065】
具体的に、CPU11は、CPUの他にDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行うモジュールである。
【0066】
本実施形態において、CPU11には、アプリケーション実行部111と、機種情報取得部112と、音声認識部113とが構築される。機種情報取得部17は、アプリケーション実行部111に対し情報処理端末1の種別に関する情報を入力するモジュールである。機種情報取得部112は、情報処理端末1の種別に関する情報の入力を受け付けるか、或いは、情報処理端末1のメモリ等から種別に関する情報を読み出して取得するモジュールであり、アプリケーション実行部111は、立体映像を表示する前に、機種情報取得部112から入力された種別に関する情報に基づいて、タッチパネル5bに表示される映像のサイズ、位置及び縦横比を変更するとともに、映像の基準位置を示す基準マークの位置を変更する。また、音声認識部113は、音声を認識し、その認識結果をアプリケーション実行部に入力するモジュールであり、端末に設けられたマイクロフォン6cから音声データを取得し、音声認識処理により分析することで、音声データから音響的な特徴量を取り出してどのような内容かを解析する。
【0067】
本実施形態においては、軽度認知症の早期発見・予防に関するプログラムが実行されると、観察者の操作は、タッチパネル5bで受け付けるようになっているが、例えば、ケーブルや近距離通信等でマウス6aやキーボード6b等の操作デバイスを接続してその操作デバイスに基づいて観察者の操作を受け付けたりしてもよい。
【0068】
アプリケーション実行部111は、一般のOSやブラウザソフト、メディア視聴アプリケーションなどのアプリケーションを実行するモジュールであり、通常はCPU等により実現される。具体的に本実施形態に係るアプリケーション実行部111は、各種アプリケーションを実行することによって、各種機能モジュールがCPU上に仮想的に構築される。本実施形態においてアプリケーション実行部111は、脳波検出デバイス制御部111aは、同期処理部111bと、立体視テスト実行部111cと、脳波信号記録部111dと、テスト結果記録部111eと、解析部111fとがCPU11上に構築される。
【0069】
脳波検出デバイス制御部111aは、脳波検出デバイス61の動作を情報処理端末1側から制御するためのモジュールであり、同期処理部111bを通じて立体視テスト実行部111cと同期するようになっており、立体視テストの実行と連携させて脳波検出デバイス61をどうさせることができる。同期処理部111bは、脳波検出デバイス制御部111aと立体視テスト実行部111cとを連係させて動作させるモジュールであり、この同期処理部111bによって脳波検出デバイス制御部111aにより記録される脳波信号と、立体視テスト実行部111cにより記録される各種テスト結果とを紐付けることができ、これにより解析部111fは、記録された脳波信号と各種テスト結果との相関を解析することができる。
【0070】
立体視テスト実行部111cは、軽度認知症の早期発見・予防に関する各種のプログラムを実行し、立体映像コンテンツやGUIをタッチパネル5bに表示させるとともに、視力測定等の演算処理を行うモジュールである。脳波信号記録部111dは、脳波検出デバイス61から取得される各種脳波信号を時系列にしたがって記憶装置14に記録するモジュールである。なお、同期処理部111bでは、脳波信号の検出値に応じて、立体視テスト実行部111cで実行された立体視プログラムによる刺激のタイミングや強度をリアルタイムに調節して、立体視による認知機能に対する刺激をより効果的に行うようにしてもよい。
【0071】
ここで、記録される脳波としては、デルタ波(4Hz〜0.5Hz)、シータ波(8Hz〜4Hz)、アルファ波(14Hz〜8Hz)、ベータ波(38Hz〜14Hz)及びガンマ波(26Hz〜70Hz)である。デルタ波はヒーリングや睡眠、深い眠りについている状態、又は無意識の状態に検出され、シータ波は瞑想や直感、記憶力と関連性があり、記憶と学習に適している脳波の状態にあるときに検出される。アルファ波はリラクゼーションや視覚化、創造カ、リラックスした状態で精神活動が活発で意識レベルが高まっている状態にあるときに検出され、問題解決、集中力を発揮し得る状態を検知することができ、ベータ波は警戒、集中、認識力、理性的に問題解決を図る時、注意を払う時など、緊張状態にあるときに検出される。ガンマ波は予知、明瞭、見方などに関連性があり、集中力が増加されているときに検出される。
【0072】
一方、テスト結果記録部111eは、立体視テスト実行部111cにより出力される各種テスト結果を記憶装置14に記録するモジュールである。これら脳波信号記録部111d及びテスト結果記録部111eによって記録されるデータは、同期処理部111bによって紐付けられ、テスト結果に含まれるテスト中におけるユーザー操作の履歴や、正確性の変化と脳波信号との関係を記録できるようになっている。
【0073】
解析部111fは、アプリケーション実行部111の立体視テスト実行部111cで実行される立体視プログラムにより記録されたテスト結果と、脳波信号記録部111dによって記録された脳波信号とを連携させて解析するモジュールである。
【0074】
例えば、解析部111fは、上述したチェックアンドトレーニングプログラム1〜5等の立体視プログラムを実行して、各テストにおけるユーザー操作の正確性をテスト結果として記録するとともに、これらのプログラム1〜5の実行中における各種脳波の検出値を時系列で記録し、各テストにおける平均値、最大値・最小値、開始値・終了値、時間的変化、分布などを解析し、各立体視プログラムによる各テスト結果と脳波信号の検出値とを関連づけて、相関を示す一覧表やグラフ、レーダーチャートなどの図形として、表示情報を生成する。これにより、テスト結果と脳波信号の検出値を比較可能に表示することができ、認知症などの障害をより高精度に発見できる。なお、解析部111fによって解析され、算出されたテスト結果及び脳波解析結果として、
図21に示すような、グラフ、レーダーチャートなどの図形が含まれる表示情報として出力インターフェース15を通じて、ディスプレイやプリンター等から出力される。
【0075】
このアプリケーション実行部111において、本発明に係る各種プログラムが実行されると、映像として、観察者の左右の眼に対応させた左眼用映像と右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を画面上に表示させるとともに、立体映像の輻輳角及び視差を変化させて、観測者の眼に対する焦点を、観察者に対して接近及び離隔するように誘導する。これによって右眼には右眼用映像のみ焦点が合うとともに、左眼には左眼用映像のみ焦点が合うようになり、良好な立体映像が観察することができる。
【0076】
なお、アプリケーション実行部111は、タッチパネル5b上に右眼用画像及び左眼用画像を表示させる際、画像の縦横サイズの比率が維持されるように縮小させて、タッチパネル5b上に表示させる。この際、情報処理端末の機種に応じて、右眼用画像及び左眼用画像を縮小させることも可能である。すなわち、アプリケーション実行部111は、立体映像を表示する前に、機種情報取得部112から入力された種別に関する情報に基づいて、タッチパネル5bに表示される映像のサイズ、位置及び縦横比を変更するとともに、映像の基準位置を示す基準マークの位置を変更する。具体的には、記憶装置14に位置調整プログラムが記録されており、アプリケーション実行部111が位置調整プログラムを実行すると、情報処理端末1の機種に応じた適切な位置に立体映像を表示させることができる。また、記憶装置14には、立体映像の表示範囲を拡縮させるプログラムも蓄積されており、ユーザー操作によって表示範囲変更操作が行われると、アプリケーション実行部111は、入力インターフェース16からの操作に応じて、立体映像を拡大又は縮小させ、表示範囲を変更させる。
【0077】
(コンテンツ管理サーバー)
コンテンツ管理サーバー3は、コンテンツの収集及び配信を行うコンテンツサーバー装置であり、登録ユーザーである観察者の認証処理や顧客管理を行ったり、軽度認知症早期発見・予防のための各種プログラムや映像コンテンツを管理する。このコンテンツ管理サーバー3としては、WWW(World Wide Web)等のドキュメントシステムにおいて、HTML(Hyper Text Markup Language)ファイルや画像ファイル、音楽ファイルなどの情報送信を行うサーバーコンピューター或いはその機能を持ったソフトウェアで実現することができ、本実施形態では、画像などのコンテンツを蓄積しておき、クライアントソフトウェアの要求に応じて、インターネットなどのIP網を通じて、これらの情報を送信する。
【0078】
具体的にコンテンツ管理サーバー3は、通信ネットワーク2に接続するための通信部31と、ユーザーアクセスの認証を行う認証部32と、コンテンツデータを送信するコンテンツ配信部35と、データベースへの入出力を管理するコンテンツ管理部37と、各モジュールの動作を逝去する制御部36とを備えている。また、このコンテンツ管理サーバー3には、ユーザーデータベース33と、コンテンツデータベース34とが接続されている。
【0079】
通信部31は、パケットデータを送受信することによりコンテンツデータを送信する通信デバイスであり、情報処理端末1で実行されているプログラムとの間でデータの送受信を行う機能を備えている。コンテンツ配信部35は、認証部32で認証されたユーザーの情報処理端末1に対して、コンテンツ管理部37が読み出した該当するコンテンツデータを、通信部31を通じて、送信するモジュールである。
【0080】
認証部32は、ユーザーに対するアクセス許可を決定するモジュールであり、ユーザーデータベース33に蓄積された認証情報を照合することにより、認証を行う。ユーザーデータベース33には、顧客IDに関連付けられて氏名、電話番号、クレジットカード情報の他、軽度認知症の早期発見・予防プログラム等のチェック及びトレーニング結果の情報や、使用したコンテンツ等の履歴情報等も含まれている。
【0081】
コンテンツデータベース34は、通信ネットワーク2からアクセス可能な情報データ蓄積装置であり、例えば大容量のハードディスク等により構成される。このコンテンツデータベース84に蓄積される情報としては、コンテンツデータそのものの他、各コンテンツデータを識別するデータIDに対して、当該コンテンツデータの種類(音楽、音声、映像、文字列等)、ファイル形式、コンテンツデータの属性(ジャンルや年代等)を関連付けたインデックスデータが含まれる。
【0082】
そして、このコンテンツデータベース84は、コンテンツ管理部37の制御に従って、コンテンツデータの読み出し及び書き込みを行う。このコンテンツデータベース84の制御としては、コンテンツデータを特定する識別子(データベース内のアドレスやファイル名)によりコンテンツデータを呼び出すものや、コンテンツデータの種類、ファイル形式、又は属性、その他のインデックスデータ上の情報によりコンテンツデータを特定し、コンテンツデータの呼び出すもの等が挙げられる。
【0083】
コンテンツ管理部37は、通信ネットワーク2を通じてデータのアップロードを受け付け、アップロードされたデータをコンテンツとして蓄積し、管理する機能を備えている。具体的にコンテンツ管理部37は、アップロードされた画像をその画像に映っている被写体に関する年代を含む情報と関連づけてコンテンツデータベース34に蓄積する。そして、コンテンツ管理部37は、テストの対象となっている観察者の年代を含む配信要求を情報処理端末1から通信部31を通じて取得し、配信要求に含まれる観察者の年代に適合した画像をコンテンツデータベース34から選定するコンテンツ選定部としての機能も備えている。
【0084】
コンテンツ配信部35は、コンテンツ管理部37が選定した画像を情報処理端末1に対して配信するモジュールであり、通信部31が確立した通信経路を通じて、コンテンツデータをユーザー端末に対して配信する。この際、コンテンツ配信部35は、コンテンツデータをパケット化したり、或いはパケットデータをコンテンツデータに復号したりするモジュールである。
【0085】
(立体映像表示装置の構成)
図15は、本実施形態に係るパララックスバリア及びこれを含む立体映像表示装置の各構成要素を概略的に示した図である。なお、本実施形態では、この立体映像表示装置は、タッチパネル5bに組み込まれている。また、この立体映像表示装置は、立体映像表示の手段の一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、裸眼3Dスマートフィンや、他の方式のパララックスバリア、他のレンチキュラーなど、種々の立体映像表示デバイスでも採用可能である。
【0086】
図15(b)に示すように、本実施形態に係る立体映像表示装置は、パララックスバリア方式による左右の二つの目にそれぞれ対応する垂直方向に向かう左側映像(L)と右側映像(R)を水平方向に交互に配置したディスプレイモジュール10と、その前端に設けられたバリア20と呼ばれる垂直方向に向かうバー形状の遮断膜とを含む。このような立体映像表示装置は、左側映像(L)に該当する光が左眼のみに入射され、右側映像(R)に該当する光が右眼のみに入射されるように前記ディスプレイモジュール10及びバリア20を配置し、これを通して分割された2個の左右映像(L、R)が分離・観測されることで、立体感を感じさせる方式である。これにより、
図15(a)に示すように、単一のディスプレイを、特別な装置を装着することなく裸眼で、立体映像を観察することができる。
【0087】
そして、特に、本実施形態に係るパララックスバリア20は、
図16(a)に示すように、下部レイヤー30、液晶レイヤー40a、制御部40b、上部レイヤー60b及び偏光部60aを含む。液晶レイヤー40aは、制御方式によって水平方向又は垂直方向のバリアを形成するように、セル構造のマトリックス形態で配列された各画素を含み、制御部40bは、液晶レイヤー40aの各画素を制御方式によって選択的にオン又はオフにし、水平方向又は垂直方向のバリアパターンを形成するように液晶レイヤー40aの各画素を制御し、液晶レイヤー40aに含まれた各画素のセル構造及び具体的な制御方式は、以下で詳細に説明する。
【0088】
下部レイヤー30は、液晶レイヤー及び制御部をディスプレイモジュールから所定距離だけ離隔した位置に配置するために、液晶レイヤー及びディスプレイモジュールとの間に形成される。上部レイヤー60bは、液晶レイヤー及び制御部を配置するために、液晶レイヤーの上端に形成される。また、偏光部60aは、ディスプレイモジュールから放出されて下部レイヤー、液晶レイヤー及び上部レイヤーを通過した光の偏光角を制御し、液晶レイヤーで形成されたバリアパターンによってバリアを視覚化させる。本実施形態に係るパララックスバリアは、偏光部60aが上部レイヤー60bの上端及び下部レイヤー30の下端に位置する従来のパララックスバリアと異なって、上部レイヤー60bの上端のみに偏光部60aが存在するので、偏光部60aを通過することで生じる光の輝度減少を少なくすることができる。
【0089】
また、本実施形態に係るパララックスバリア20及びこれを含む立体映像表示装置は、TN―LCD又はSTN―LCDなどの液晶パネルを用いてバリアパターンを形成することで、2Dモードでは、バリアをオフにして2D映像を視聴することができ、3Dモードでは、バリアをオンにして立体映像を視聴することができる。垂直方向の画素を駆動させることで、垂直方向のバリアをオンにして垂直方向の画面を視聴することができ、水平方向の画素を駆動させることで、水平方向のバリアをオンにして水平方向の立体映像を視聴することができる。すなわち、本実施形態に係るバリア及びこれを含む立体映像表示装置は、2D/3Dモード転換及び水平方向/垂直方向の転換を可能にする。
【0090】
図16は、本実施形態に係る液晶レイヤー40aのセル単位のバリアパターン構造を示した例示図である。液晶レイヤー40aは、水平方向(X―X')と垂直方向(Y―Y')によってそれぞれ異なる規格のセル単位のバリアを交互に配置し、セル単位のパターン構造を形成する。
図16に示すように、水平方向のバリアを形成する各画素を第1水平方向のセルカラム、第2水平方向のセルカラム、第3水平方向のセルカラム…と称するとき、第1水平方向のセルカラムには横×縦がa×cである第1画素、横×縦がb×cである第2画素を順次配列し、第2水平方向のセルカラムには横×縦がa×dである第3画素、横×縦がb×dである第4画素を順次配列する。ここで、a、b、c及びdの値は、ディスプレイモジュールの規格によって計算される規格値で、バリアの厚さ及び間隔を正確に表示できるように決定される。
【0091】
そして、第3水平方向のセルカラムは、第1水平方向のセルカラムと同一の構造で配列され、第4水平方向のセルカラムは、第2水平方向のセルカラムと同一の構造で配列される。すなわち、本実施形態に係るバリア基板では、互いに異なる構造の2個の水平方向のセルカラムが垂直方向に交互に配列される。
【0092】
(システムの全体動作について)
以上の構成を有する早期発見・予防システムを動作させることによって、本発明の早期発見・予防方法を実施することができる。
図20は、本実施形態に係る早期発見・予防システムの動作を示すフローチャート図である。
【0093】
先ず、立体視テストプログラムを起動すると(S801)、脳波検出デバイス61との同期処理が開始される(S802)。具体的には、脳波検出デバイス制御部111aが、脳波検出デバイス61の動作を情報処理端末1側から制御し(S803)、同期処理部111bを通じて立体視テスト実行部111cと同期させて、後述する各種立体視テストの実行(S805)と連携させて脳波検出デバイス61からの脳波信号を記録する(S804)。
【0094】
詳述すると、立体視テスト実行部111cは、軽度認知症の早期発見・予防に関する各種のプログラムを実行し、立体映像コンテンツやGUIをタッチパネル5bに表示させるとともに、視力測定等の演算処理を行う。これと併せて、脳波信号記録部111dは、脳波検出デバイス61から取得される各種脳波信号を時系列にしたがって記憶装置14に記録する。一方、テスト結果記録部111eは、立体視テスト実行部111cにより出力される各種テスト結果を記憶装置14に記録する(S806)。これら脳波信号記録部111d及びテスト結果記録部111eによって記録されるデータは、同期処理部111bによって紐付けられ、テスト結果に含まれるテスト中におけるユーザー操作の履歴や、正確性の変化と脳波信号との関係を記録するようになっている。
【0095】
なお、上記視力測定等の演算処理に際し、同期処理部111bで脳波信号の検出値に応じて、立体視テスト実行部111cで実行された立体視プログラムによる刺激のタイミングや強度をリアルタイムに調節してもよい。
【0096】
そして、全てのテストが終了するまで、各種テストを継続させた後(S807における「N」)、記録された脳波信号と、立体視テスト実行部111cにより記録される各種テスト結果とを紐付けて収集し(S808)、次いで、解析部111fが、記録された脳波信号と各種テスト結果との相関を解析する(S809)。詳述すると、解析部111fが、アプリケーション実行部111の立体視テスト実行部111cで実行される立体視プログラムにより記録されたテスト結果と、脳波信号記録部111dによって記録された脳波信号とを連携させて解析する。
【0097】
本実施形態では、後述するチェックアンドトレーニングプログラム1〜5等の立体視プログラムを実行して、各テストにおけるユーザー操作の正確性をテスト結果として記録するとともに、これらのプログラム1〜5の実行中における各種脳波の検出値を時系列で記録し、各テストにおける平均値、最大値・最小値、開始値・終了値、時間的変化、分布などを解析し、各立体視プログラムによる各テスト結果と脳波信号の検出値とを関連づけて、相関を示す一覧表やグラフ、レーダーチャートなどの図形として、表示情報を生成する(S810)。なお、解析部111fによって解析され、算出されたテスト結果及び脳波解析結果としては、
図21に示すような、グラフ、レーダーチャートなどの図形が含まれる表示情報として出力インターフェース15を通じて、ディスプレイやプリンター等から出力される。これにより、テスト結果と脳波信号の検出値を比較可能に表示することがでる。
【0098】
(各種立体視プログラムについて)
次いで、上述したアプリケーション実行部111において実行される各種の立体視プログラムについて説明する。
【0099】
(1)チェック&トレーニングプログラム1
図3は、チェック&トレーニングプログラム1の画面構成を示す説明図であり、
図4は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。このチェック&トレーニングプログラム1では、振り子を使い、左右の眼の連携と判断の正確性を測定し、前頭葉の活動状況と眼の動き正しい判断の正確性と行動時間をチェックする。
【0100】
詳述すると、統合失調症では、脳の前頭葉・海馬やその周辺の部位などで、神経細胞の数が減少することから前頭葉の機能が低下しており、特に前頭葉を働かせるようなテストを実施すると、機能の低下を明確に体感させることができる。例えば、眼の動きがぎこちなくなることや、特定の図形を見てもらったときに視点があまり動かず固定させる傾向がある。このことから、本プログラムでは、立体視を使って振り子の往復ポイントP12,P13の判断の正確性を±を含む値で数値化することで左右の眼の連携と判断の正確性を診断する。
【0101】
本プログラムでは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアA1を生成し、立体映像エリアA1中に構築された仮想空間内において揺動する振り子のオブジェクトOb1を表示させる。この立体映像エリアA2の下部には、ユーザーインターフェイスである判定ボタンG1が表示されている。この振り子のオブジェクトOb1は、仮想空間内に設置された任意の中心点P11を中心として、往復ポイントP12及びP13の間を揺動する。
【0102】
そして、テストに際しては、ユーザーに、オブジェクトOb1が往復ポイントP12,P13(いずれか一方、又は両方)に到達した時点で判定ボタンG1を押下させる。オブジェクトOb1が実際に往復ポイントP12又はP13に到達したタイミングと、判定ボタンG1に対するユーザー操作との時間差、及びユーザー操作の正確性をテスト結果として記録する。
【0103】
以上説明したチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。
先ず、プログラムが起動されると、ステップS101において、動作条件の設定を行うとともに、設定された条件に従った動作を実行するオブジェクトを生成する。
【0104】
本実施形態における動作設定は、以下の通りである。
・振り子の振幅Xを、デフォルト45度、奥と手前で90度、角度数値を±5度ずつ入力で変更可能とする。
・振り子の周期は、デフォルト2.5秒で±0.5秒とする。
・珠の直径、色、糸(振り子の揺動半径)の長さ、背景色(画像差し替えサイドバイサイドの静止画)も設定可能となっている。
・測定回数は、デフォルト3回とし、任意の回数設定も可能となっている。
・スタートから終了までのタイムログをデータ化する。
・判定は、A、B、C、D、Eの5段階で設定できる。
・振り幅(手前と奥)は、デフォルトで60度として、±角度入力で変更が可能となっている。
・カメラ設定は、垂直0ポイントとしたクロス法とし、カメラ間隔は、±数値入力が可能となっている。
【0105】
次いで、ステップS102においてオブジェクトの動作が開始される。この動作の開始は、動作条件の設定が完了後自動的に、或いはユーザー操作による開始指示を待って行うことができる。ステップS103では、ループ処理(S103における「N」)によりユーザー操作(若しくはタイムアウト)を待つ。この間、オブジェクトが変化したタイミングからの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、オブジェクトが変化した場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0106】
ステップS103において、ユーザー操作があったとき、若しくは一定時間が経過しタイムアウトが到来したときには(S103における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS104へ移行する。ステップS104では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS103でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。
【0107】
ステップS105において、すべてのオブジェクト動作が終了したかを判断し、次の動作があれば(S105における「N」)、次の動作に移り上記ステップS101〜S104を繰り返し、すべての動作が終了していれば(S103における「N」)、ステップS106に移行する。ステップS106では、測定結果を集計し、左右の眼の連携と判断の正確性を診断し、その結果を出力する。
【0108】
このような本プログラムによれば、例えば、3D表示が可能なタブレット型PCなどで、立体映像エリア中の仮想空間内で、揺動する振り子のオブジェクトOb1表示させ、その往復ポイントP12又はP13を認識した時点で観察者に判定ボタンG1を操作させる。そして、オブジェクトOb1が実際に往復ポイントP12又はP13に到達したタイミングと、判定ボタンG1に対するユーザー操作との時間差、及びユーザー操作の正確性から、左右の眼の連携と判断の正確性をテストすることができる。この時間差や正確性が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0109】
(2)チェック&トレーニングプログラム2
図5は、チェック&トレーニングプログラム2の画面構成を示す説明図であり、
図6は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。このチェック&トレーニングプログラム2では、空間認識能力及び状況判断力を診断するとともに、観察者の視野範囲と、色の調整によって白濁のチェックと空間認識能力と状況判断力のテストを行い、左右のバランスと行動時間をチェックする。
【0110】
本プログラムでは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアA2を生成し、立体映像エリアA2中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数のオブジェクトOb21,Ob22を表示させる。
【0111】
この立体映像エリアA2の下部には、ユーザーインターフェイスである判定ボタンG22又はG23が表示されている。この判定ボタンG22及びG23は、オブジェクトOb21又はOb22が変化する予定の色が表示されている。また、立体映像エリアA2中には、左右にスライド移動させるスライダーG21が配置されており、このスライダーG21を操作することにより、オブジェクトOb21,Ob22、及び判定ボタンG22及びG23の彩度が変化するようになっている。
【0112】
これらオブジェクトOb21,Ob22を仮想空間内に設置された任意の重心位置P2を中心として任意の速度で回転させるとともに、任意のタイミング及び時間長でオブジェクトOb21,Ob22のいずれか一方の色を変化させる。このとき、オブジェクトOb21,Ob22の回転半径や、回転中心である重心位置P2の座標を変化させ、オブジェクトOb21,Ob22が立体映像エリアA1の四隅にまで到達するように表示させる。
【0113】
そして、テストに際しては、ユーザーに、オブジェクトOb21又はOb22の色が変化した時点で判定ボタンG22又はG23を押下させる。オブジェクトOb21,Ob22の色が変化したタイミング及び時間長と、判定ボタンG22又はG23に対するユーザー操作との時間差、及びユーザー操作の正確性を、空間認識能力及び状況判断力のテスト結果として記録する。併せて、ユーザー操作とオブジェクトOb21,Ob22の表示位置との関係に基づいて、観察者の反応が鈍い領域などを算出して、観察者の視野範囲も測定する。また、ユーザーがスライダーG21を操作した場合には、スライダーの移動量に応じて変化されたオブジェクト又はユーザーインターフェイスの彩度の調整量を測定し、観察者の色別と白濁をチェックする。
【0114】
以上説明したチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。先ず、プログラムが起動されると、ステップS201において、動作条件の設定を行うとともに、設定された条件に従った動作を実行するオブジェクトを生成する。
【0115】
本実施形態における動作設定は、以下の通りである。
・2つの球体の色調整としては、色は自由に変更が可能となっている。
・スライドバーを使用して黄色を薄くしたり濃くしたりすることが可能である。
・白と黄色のボールは互いの中心を軸に回転する。
・Z軸の角度調整で画面の上下左右4隅へ表示する。
・回転スピードの調整が可能となっている。
・赤色表示時間の調整が可能となっている。
・判定時間の調整が可能となっている。
・質問数の数が可能となっている。
・判定の対象は、全体の正解数、色別の正解数、エリア別の正回数、表示からの回答時間とする。
・結果表示としては、全体評価5段階とし、個別評価としては、全体の正解数、色別の正解数、エリア別の正回数、表示からの回答時間とする。
【0116】
次いで、ステップS202においてオブジェクトの動作が開始される。この動作の開始は、動作条件の設定が完了後自動的に、或いはユーザー操作による開始指示を待って行うことができる。ステップS203では、ループ処理(S203における「N」)によりユーザー操作(若しくはタイムアウト)を待つ。この間、オブジェクトが変化したタイミングからの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、オブジェクトが変化した場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0117】
ステップS203において、ユーザー操作があったとき、若しくは一定時間が経過しタイムアウトが到来したときには(S203における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS204へ移行する。ステップS204では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS203でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。
【0118】
ステップS205において、すべてのオブジェクト動作が終了したかを判断し、次の動作があれば(S205における「N」)、次の動作に移り上記ステップS201〜S204を繰り返し、すべての動作が終了していれば(S203における「N」)、ステップS206に移行する。ステップS206では、測定結果を集計し、空間認識力及び状況判断力の正確性を診断し、その結果を出力する。
【0119】
なお、本プログラムでは、空間認識能力のチェックと合わせて、観察者の色別と眼球の白濁を測定することができる。この色別・白濁のチェックは、上記ステップS201〜S205のテストの前、或いは最中など、ユーザーの任意のタイミングで逐次行うことができる。具体的には、立体映像エリアA2中に表示されたスライダーG21を操作することにより、イベント処理(割り込み処理)が発生し、ステップS207〜S212の処理が実行される。このイベント処理が実行されると、先ず、チェック&トレーニングプログラム2が停止され(S207)、ユーザーが操作したスライダーの位置が取得され、スライダーの移動量に応じて、オブジェクトの彩度が変更される(S209)。このユーザー操作によるオブジェクトの彩度の調整量によって、観察者の眼球の色別や白濁を診断することができ、その診断結果を記録する(S210)。
【0120】
ユーザーがスライダーG21に対する操作を引き続き行う場合には(ステップS211における「N」)、ユーザーがスライダーG21を操作する度に、上記ステップS208〜S210を繰り返し実行し、色別・白濁の診断結果を更新して記録し、操作を終了した場合には(ステップS211における「Y」)、チェック&トレーニングプログラム2を再開する(S212)。
【0121】
このような本プログラムによれば、複雑な軌道で回転する複数のオブジェクトOb21,Ob22の色を、任意のタイミング及び時間長で変化させ、その変化を認識した時点で観察者に判定ボタンG22又はG23を操作させる。オブジェクトの色が変わった時間から、観察者が操作するまでの時間差や正確性を測定することで、観察者の空間認識能力及び状況判断力をチェックすることができる。この時間差や正確性が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0122】
また、立体映像エリアA1の四隅までオブジェクトOb21,Ob22を表示させ、それに対する観察者の反応を見ることで、観察者の視野範囲を測定することができ、視野範囲の広狭から認知障害を推定することができる。
【0123】
さらに、スライダーG21を操作させるなどしてオブジェクトOb21,Ob22の彩度を変化させ、観察者にとって見やすいように調節させることで、観察者の色別と、眼球の白濁等を発見することができる。
【0124】
(3)チェック&トレーニングプログラム3
図7は、チェック&トレーニングプログラム3の画面構成を示す説明図であり、
図8は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。このチェック&トレーニングプログラム3では、視野闘争による視覚野の脳の活動状況を診断する。具体的には、立体視検査によって、眼位(視線)のズレを眼球筋(運動神経性)や脳の働き(感覚神経性)を自ら正しく矯正して、二重には見えていない状態のテストを行うとともに、異なる図や視差を追加することにより視野闘争による視覚野の脳の活動状況をチェックする。
【0125】
本プログラムでは、左眼用映像A31と右眼用映像A32とで異なる個数のオブジェクトOb31,Ob32を表示させる左右映像エリアA3を生成し、
本実施形態では、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させ、オブジェクトOb31,Ob32を表示している間に、その深度(奥行き方向の座標)を変化させる。なお、本実施形態では、3D表示により深度を変化させる処理を施すが、例えば2D表示により、単に左右で異なる個数のオブジェクトを表示させるのみでもよい。
【0126】
この左右映像エリアA3では、画面タッチなどのユーザーインターフェイスにより、オブジェクトOb31,Ob32を選択させる。そして、オブジェクトOb31,Ob32が表示されている座標と、タッチ操作の座標との一致若しくは乖離の程度を、視野闘争による視覚野の脳の活動状況のテスト結果として記録する。
【0127】
以上説明したチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。
先ず、プログラムが起動されると、ステップS301において、動作条件の設定を行うとともに、設定された条件に従った動作を実行するオブジェクトを生成する。
本実施形態における動作設定は、以下の通りである。
2Dモードでは通常のステレオテストを行い、3Dモードでは深度を、奥、画面、手前とする。このチェックプログラムでは通常の立体視テストに深度を加えて認識力と左右の脳内視力の関係をチェックする。
表示されるマークは、図形、数字、英字、漢字・ひらがな・カタカナ、動物・植物・魚、食べ物・野菜・フルーツ、乗り物などから選択可能とする。
【0128】
次いで、ステップS302においてオブジェクトの動作が開始される。この動作の開始は、動作条件の設定が完了後自動的に、或いはユーザー操作による開始指示を待って行うことができる。ステップS303では、ループ処理(S303における「N」)によりユーザー操作(若しくはタイムアウト)を待つ。この間、オブジェクトが変化したタイミングからの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、オブジェクトが変化した場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0129】
ステップS303において、ユーザー操作があったとき、若しくは一定時間が経過しタイムアウトが到来したときには(S303における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS304へ移行する。ステップS304では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS303でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。
【0130】
ステップS305において、すべてのオブジェクト動作が終了したかを判断し、次の動作があれば(S305における「N」)、次の動作に移り上記ステップS301〜S304を繰り返し、すべての動作が終了していれば(S303における「N」)、ステップS306に移行する。ステップS306では、測定結果を集計し、視野闘争による視覚野の脳の活動状況を診断し、その結果を出力する。
【0131】
このような本プログラムによれば、左右映像エリア中に、左眼用映像及び右眼用映像とで異なる個数のオブジェクトを表示させることにより、視野闘争による視覚野の脳の活動状況をテストすることができる。
【0132】
(4)チェック&トレーニングプログラム4
図9は、チェック&トレーニングプログラム4の画面構成を示す説明図であり、
図10は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。このチェック&トレーニングプログラム4では、瞬間視、大小の恒常性 記憶力を診断する。具体的には、視差情報があるために一般的な瞬間視に加えて大小の恒常性チェックを行い、大脳と視覚野の活動状況をチェックするとともに、瞬間視を使った脳の記憶力をチェックする。
【0133】
本プログラムでは、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアA4を生成し、立体映像エリアA4中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトOb41,Ob42を表示させる。
【0134】
この立体映像エリアA4の下部には、ユーザーインターフェイスである個数カウントボタンG41及びG42が表示されている。この個数カウントボタンG41及びG42は、オブジェクトOb41又はOb42が出現する予定の個数が列記されている。
【0135】
これら複数種のうち同一物に関するオブジェクトを、仮想空間内における深度を変化させつつ複数同時に表示させる。図示した例では、複数種のオブジェクトとして、トマト(オブジェクトOb41)とリンゴ(オブジェクトOb42)が表示されており、トマトもリンゴも、それぞれ同一物として同じ物が映されており、仮想空間において同一の大きさ(仮想空間内で占める体積)となっており、深度が異なることにより、違った大きさに見えるようになっている。
【0136】
そして、リンゴならリンゴ、トマトならトマトというように、同一物に関するオブジェクトの表示数と個数カウントボタンG41及びG42に対するユーザー操作の正確性とを、瞬間視、大小の恒常性のテスト結果として記録する。
【0137】
また、前記恒常性測定の後に時間差をおいて、同一物に関するオブジェクトの表示数を質問して、観察者からの回答を受け付ける記憶力テストも実施する。そして、リンゴならリンゴ、トマトならトマトというように同一物に関するオブジェクトの個数に関する質問と、ユーザーによる回答の正確性とを、記憶力のテスト結果として記録する。
【0138】
以上説明したチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。
先ず、プログラムが起動されると、ステップS401において、動作条件の設定を行うとともに、設定された条件に従った動作を実行するオブジェクトを生成する。
【0139】
本実施形態における動作設定は以下の通りである。
一般的な瞬間視に深度設定をすることで空間認識力と違う質問をした後に回答することで記憶力のテストをする。
大きさを見極める恒常性のテストも行う。
・表示数は、1〜10とし、数字が大きくなるほど難しくなるように設定する。
・表示物数は、1〜5とし、数字が大きくなるほど難しくなるように設定する。
・色の数は、1〜5とし、数字が大きくなるほど難しくなるように設定する。
・深度設定は、奥、中心、手前、標準3〜5段階とし、数値入力が可能となっている。
・表示範囲は、中心から5段階とする。
・質問数は、1〜10とし、設定可能となっている。
・難易度は、「すごくやさしい」、「やさしい」、「ふつう」、「むずかしい」、「すごくむずかしい」の5段階とする。
・表示時間は、「すごくやさしい」、「やさしい」、「ふつう」、「むずかしい」、「すごくむずかしい」の5段階とする。
・評価対象は、正回数、判定時間 質問回答までの時間とする。
・最終問題の記憶力としては、別のテストをした後に覚えている物、表示されていたものの数、正解数とから評価する。
・表示されるマークは、図形、数字、英字、漢字・ひらがな・カタカナ、動物・植物・魚
食べ物・野菜・フルーツ、乗り物等から選択可能とする。
【0140】
次いで、ステップS402においてオブジェクトの動作が開始される。この動作の開始は、動作条件の設定が完了後自動的に、或いはユーザー操作による開始指示を待って行うことができる。ステップS403では、ループ処理(S403における「N」)によりユーザー操作(若しくはタイムアウト)を待つ。この間、オブジェクトが変化したタイミングからの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、オブジェクトが変化した場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0141】
ステップS403において、ユーザー操作があったとき、若しくは一定時間が経過しタイムアウトが到来したときには(S403における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS404へ移行する。ステップS404では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS403でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。
【0142】
ステップS405において、すべてのオブジェクト動作が終了したかを判断し、次の動作があれば(S405における「N」)、次の動作に移り上記ステップS401〜S404を繰り返し、すべての動作が終了していれば(S403における「N」)、ステップS406に移行する。ステップS406では、測定結果を集計し、瞬間視、大小の恒常性 を診断し、その結果を出力する。
【0143】
また、この瞬間視等のテストの終了後に、記憶力テストの出題をする(S407)。これは、所定時間を経過した後に、瞬間視で表示されたオブジェクトの個数などを問うもので、その応答時間や正確性を判断する。ステップS408では、ループ処理(S408における「N」)によりユーザー操作(若しくはタイムアウト)を待つ。この間、出題からの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、次の出題がされた場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0144】
ステップS408において、ユーザー操作があったとき、若しくは一定時間が経過しタイムアウトが到来したときには(S408における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS409へ移行する。ステップS409では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS408でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。その後、ステップS410では、測定結果を集計し、記憶力を診断し、その結果を出力する。
【0145】
このような本プログラムによれば、仮想空間内に、リンゴとミカンといったように複数種類の果物を、深度を変化させつつ同時に表示させ、その表示数を観察者に回答させる。このとき同一物に関する仮想空間内における大きさは等しく設定して、表示する際の深度(仮想空間内における奥行き)のみを変化させることで、観察者の瞬間視、大小の恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。また、本実施形態では、立体視プログラムによるテストと合わせて、各種脳波の強弱やバランスを解析することにより、観察者の緊張状態、リラックス状態、集中状態を測定し、ユーザー操作の正確性との相関を知ることができ、軽度認知症の早期発見・予防の精度を高めることができる。
【0146】
また、瞬間視、大小の恒常性と合わせて、記憶力に関する質問をすることで、誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
【0147】
(5)チェック&トレーニングプログラム5
図11(a)〜(d)は、チェック&トレーニングプログラム5の画面構成を示す説明図であり、
図12は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。このチェック&トレーニングプログラム5では、カラフィルターを使い明暗・ブルー・グリーン・レッド・イエロー・シアン・マゼンダ、光の位置などを調整し、色の恒常性が正しく機能してるかチェックし、大脳と視覚野の活動状況を測定することにより、レビー小体型認知症の疑いをチェックする。
【0148】
本プログラムでは、
図11(a)に示すように、左眼用映像及び右眼用映像との間に輻輳角及び視差を発生させて構成された立体映像を表示させる立体映像エリアA5を生成し、立体映像エリアA5中に構築された仮想空間内における位置、又は向きが変化する複数種のオブジェクトOb51,Ob52を表示させる。これら複数種のオブジェクトOb51,Ob52のうち同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させる。
【0149】
この立体映像エリアでは、画面タッチなどのユーザーインターフェイスにより、オブジェクトOb51,Ob52を選択させる。そして、同一物に関するオブジェクトの表示と、画面タッチの正確性とを、色の恒常性のテスト結果として記録する。
【0150】
以上説明したチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。
先ず、プログラムが起動されると、ステップS501において、動作条件の設定を行うとともに、設定された条件に従った動作を実行するオブジェクトを生成する。
本実施形態に係る動作設定は、
・表示時間は、回答するまで制限は設けない。但し、回答時間については表示されてから回答までの時間を記録する。最初の答えから答えが変わった時はその時間と正解・不正解を記憶する。表示されている物の色が認識されているかいないかで大脳の視覚野V4の活動状況をチェックする。
・表示される写真と動画としては、図形、動物・植物・魚、食べ物・野菜・フルーツ、乗り物、建築物、観光地などが選択可能となっている。
【0151】
次いで、ステップS502においてオブジェクトの動作が開始される。この動作の開始は、動作条件の設定が完了後自動的に、或いはユーザー操作による開始指示を待って行うことができる。ステップS503では、ループ処理(S503における「N」)によりユーザー操作を待つ。この間、オブジェクトが変化したタイミングからの経過時間の測定が開始される。ユーザー操作がなされることなく、オブジェクトが変化した場合には、その都度、経過時間がリセットされ、ユーザーの応答がなかった旨が無応答履歴として記憶される。
【0152】
ステップS503において、ユーザー操作があったときには(S503における「Y」)、ループ処理を抜けて、ステップS504へ移行する。ステップS504では、ユーザーの応答時間及びその操作の正確性を記録する。ステップS503でのループ処理の間に無応答履歴があった場合には、そのときのオブジェクト動作、無応答時間及びリセット回数が記録される。
【0153】
ステップS505において、すべてのオブジェクト動作が終了したかを判断し、次の動作があれば(S505における「N」)、次の動作に移り上記ステップS501〜S504を繰り返し、すべての動作が終了していれば(S503における「N」)、ステップS506に移行する。ステップS506では、測定結果を集計し、色の恒常性を診断し、その結果を出力する。
【0154】
このような本プログラムによれば、仮想空間内に、同一物に関するオブジェクトを、明度、彩度、色彩又は光源位置を変化させて表示させ、観察者に同一物の色を回答させる。そして、表示されている色と観察者による回答を比較することで、観察者の色恒常性をチェックすることができる。この回答までの時間や誤答数が所定の閾値を超える(下回る)ようであれば、認知障害の可能性があり、これにより予防対策を採ることができる。
なお、上述した例では、オブジェクトとして
図11(a)に示した果物を配置した同様の画像を用いて、一方の画像にカラフィルターを使い明暗・ブルー・グリーン・レッド・イエロー・シアン・マゼンダ、光の位置などを調整したものを用いたが、例えば、
図11(b)〜(d)に示すような、色と形の異なる物体の前後関係を変化させた画像を用いることもできる。この画像としては、その難易度に応じて、物体の色や大きさ、配置などを変化させることができ、難易度の低いものとしては同図(b)に示すような赤、青、黄色といったように異なる色彩の物体を用い、難易度が高くなるにつれて同図(c)や(d)のように同系色の物体を用いるようにする。
【0155】
脳では、深視力により、両目の視覚情報から距離と形や長さ前後関係を処理していることから、上記プログラムにより色と空間知覚の訓練を行うことができる。なお、高難易度で同系色の判断をさせることにより、奥行きに伴う色の変化から色の恒常性を認識する知覚情報処理能力を訓練することができる。
【0156】
(6)映像トレーニングプログラム
図13は、チェック&トレーニングプログラム5の画面構成を示す説明図であり、
図14は、このプログラムの動作を示すフローチャート図である。この映像トレーニングプログラムは、見るだけで老眼予防と脳を活性する特殊プログラムである。
【0157】
本実施形態では、コンテンツ管理サーバー3にアップロードされた画像を、その画像に映っている被写体に関する年代を含む情報と関連づけて蓄積しておき、情報処理端末1により実行されているプログラムとの間でデータの送受信を行う。コンテンツ管理サーバー3では、テストの対象となっている観察者の年代を含む配信要求を情報処理端末1から取得し、配信要求に含まれる観察者の年代に適合した画像をコンテンツデータベース34から選定し、情報処理端末1で実行されている前記プログラムに対して配信する。
【0158】
以上のチェック及びトレーニングを行うプログラムは、以下のように動作する。
図14に示すように、本実施形態では、予め、コンテンツ管理サーバー3において、ユーザーからアップロードされた画像を、その画像に映っている被写体に関する年代を含む情報と関連づけて蓄積しておく(S701)。
【0159】
そして、情報処理端末1側では、先ず観察者であるユーザーの年代や、生まれ育った地域、男性、女性、学歴・職歴などの属性を取得し(S601)、コンテンツ配信要求に含めて、コンテンツ管理サーバー3に送信する(S602)。
【0160】
このコンテンツ配信要求を受信(S702)したコンテンツ管理サーバー3では、テストの対象となっている観察者の年代を含む配信要求を解析し、配信要求に含まれる観察者の年代に適合した画像をコンテンツデータベース34から選定し(S704)、情報処理端末1で実行されている前記プログラムに対して配信する(S705)。
【0161】
情報処理端末1側では、受信したコンテンツを格納するとともに(S603,604)、そのコンテンツを利用したオブジェクトを作成し(S605)、本映像トレーニングプログラムや、他の各種トレーニングプログラムにて利用可能とする。
【0162】
このようなプログラムによれば、多数のユーザーから懐かしい写真などを、年代を含む情報とともにアップロードしてもらい、データベース化して蓄積しておき、認知障害の被験者であるユーザーの年代に合わせた画像をオブジェクトして生成し、上述したプログラムによる各種テストで使用する。これにより、上記各種テストに際し、被験者の長期記憶を呼び起こすことができ、脳の活性化を促すことができる。
【0163】
(プログラム記録媒体)
上述した実施形態に係る各プログラムは、
図19に示すように、このプログラムを携帯電話・通信機能を統合したスマートフォン171や、クライアント側が使用するパーソナルコンピュータ172、ネットワーク上に配置されてクライアント側にデータや機能を提供するサーバー装置173、又はタブレットPC174、又はICチップ186にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを容易に構築することができる。これらのプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またスタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。
【0164】
そして、このようなプログラムは、パーソナルコンピュータで読み取り可能な記録媒体181〜85に記録することができる。具体的には、フレキシブルディスク183やカセットテープ182等の磁気記録媒体、若しくはCD−ROMやDVD−ROM等の光ディスク181の他、USBメモリ185やメモリカード184など、種々の記録媒体に記録することができる。
【0165】
(立体映像観察装置)
なお、上述した実施形態では、裸眼で立体視が可能な情報処理端末1を用いたが、一般的な情報処理端末に立体映像観察装置を組み合わせて、立体映像を観察させるようにすることもできる。
図17(a)は、立体映像観察装置の全体構成を示す斜視図であり、同図(b)は、情報処理端末1を筐体内に配置させた状態を側面より示す説明図である。
図18は、情報処理端末に表示される左右の映像を示す説明図である。
【0166】
図17に示すように、映像観察装置は、観察者が所有する情報処理端末1のタッチパネル5bに表示された映像(
図18(b))を観るための装置であって、情報処理端末1と、情報処理端末1を収納する筐体50とから構成される。
【0167】
筐体50は、紙、又はプラステック等で形成され、内部中空な略長方形状をなしている。この筐体50は、観察者の眼前に配置される側面を形成するレンズ部502と、筐体50の底面を形成し、情報処理端末1が設置される台座部503と、レンズ部502と台座部503との間に保持され、情報処理端末1に表示された映像光をレンズ部502側に向けて反射させるミラー部材52を備えるミラー部504とを備える。また、レンズ部502の上部には、レンズ部502の面と交差して、外方に向けて突出する遮光部505とを備える。
【0168】
台座部503の一端には、レンズ部502が連結されるとともに、他端にはミラー部504が連結されている。また、ミラー部504の台座部503が連結された一端の反対側の一端には、遮光部505が連結されている。さらに、レンズ部502の台座部503が連結された一端の反対側の一端には補強部501が連結されている。なお、各部の連結部分には、それぞれ内側に折り曲げやすくなるように、折り目又はミシン目が形成されている。
【0169】
レンズ部502には、左右の眼に対応した箇所が切り抜かれ、当該部分に一対のレンズ部材51,51がそれぞれ形成されている。一対のレンズ部材21,21は、焦点に作られた実像を拡大する凸状の接眼レンズであり、レンズ部202上において、左右の眼に対応した箇所に配置されている。なお、レンズの形状は、限定するものではなく、例えば、通常の凸レンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らして、のこぎり状の断面を持つシート状のフレネルレンズを用いてもよい。
【0170】
また、ミラー部504には、情報処理端末1に表示された右眼用及び左眼用の映像光を、それぞれのレンズ部材51,51に向けて反射させるミラー部材52が貼着されている。なお、このミラー部材52は、組み立て時において、台座部503と向かい合う側の面に形成されている。
【0171】
台座部203には、表示部50aに表示された映像位置に合致させるための基準表示が記されている。また、台座部503の両端付近には、それぞれ折り目が形成されており、その折り目に沿って台座部503を折り曲げることで、情報処理端末1の側面に当接される右側面部503bと、左側面部503aとが形成される。
【0172】
なお、台座部503には、情報処理端末1を台座部503上の適切な位置に保持する保持部53を設けてもよい。保持部53は、情報処理端末1を位置決めする部材であり、例えば、スポンジやウレタン等の可撓性部材で形成された部材を台座部503上に配置して、情報処理端末1の側面に接触させて情報処理端末1を保持する構成としてもよい。また、保持部53としては、例えば、台座部503の一部に略コの字状の切り目を設けて、当該切り目で囲まれた部分を情報処理端末1が設置される側に折り曲げて、情報処理端末1の側面に接触させて保持する構成であってもよい。
【0173】
また、本実施形態では、レンズ部502と補強部501とは、これらの部材を連結する折り目に沿って折りたたみ可能となっており、使用時には、
図16に示すように、レンズ部502と補強部501とを重ね合わすようになっている。ここで、補強部501には、一対のレンズ部材51,51と同一形状の貫通孔501b,501bが設けられている。したがって、補強部501とレンズ部502とを重ね合わせた場合であっても、補強部501がミラー部材52から反射された映像光を遮ることはない。
【0174】
さらに、本実施形態において、レンズ部502と補強部501とが連結された折り目部分には、略コの字状の切れ目が形成されており、当該折り目を折り曲げることで、外方に向けて突出した凸部501aが形成される。一方、遮光部505には、遮光部505を貫通する係合孔505aが形成されている。そして、筐体50の組み立て時には、凸部501aが係合孔505aに挿通されることで、筐体50の立体形状が維持されるようになっている。
【0175】
遮光部505は、外部からの光を遮断する部材であり、本実施形態では、係合孔505aよりもミラー部504側の部分は筐体内部に差し込まれる外光を遮断し、係合孔505aよりも観察者側の部分は観察者の眼に差し込まれる外光を遮断する。また、遮光部505のミラー部504が連結された一端の反対側の一端505bは、係合孔505aに向けて湾曲形状をなしている。
【0176】
このような映像観察装置では、筐体50を組み立てると、
図17に示すように、レンズ部502は、情報処理端末1の表示部50aの表面に対して垂直に起立された状態となり、ミラー部504は、表示部50aの表面に対して略45度の角度で傾いた状態となる。
【0177】
そして、内部に情報処理端末1を収納させた状態で、表示部50aに立体映像(
図18(b))を表示させると、表示部50aから出射された映像光は、ミラー部504に入射される。映像光は、ミラー部504に入射されるとミラー部材52によって反射され、一対のレンズ部材51,51側へ出射される。そして、一対のレンズ部材51,51には、
図18(a)に示すような、それぞれ右眼用画像及び左眼用画像が入射され、観察者の眼EYEには立体映像が見えるようになる。