(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229875
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】拡張型フタロシアニン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 47/06 20060101AFI20171106BHJP
C09B 47/067 20060101ALI20171106BHJP
C09B 47/073 20060101ALI20171106BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20171106BHJP
C07F 11/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
C09B47/06
C09B47/067
C09B47/073
C07D487/22
C07F11/00 B
C07F11/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-165951(P2013-165951)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34147(P2015-34147A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業における委託研究「次世代有機薄膜太陽電池創出のための近赤外色素の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(72)【発明者】
【氏名】村中 厚哉
(72)【発明者】
【氏名】内山 真伸
(72)【発明者】
【氏名】王 軒
(72)【発明者】
【氏名】田中 理恵子
【審査官】
東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−056873(JP,A)
【文献】
特開平11−080573(JP,A)
【文献】
Matsushita, Osamu et al,Rectangular-Shaped Expanded Phthalocyanines with Two Central Metal Atoms,Journal of the American Chemical Society ,2012年,134(7),3411-3418
【文献】
Cabezon, Beatriz; Rodriguez-Morgade, Salome; Torres, Tomas,Stepwise Synthesis of Soluble Substituted Triazolephthalocyanines,Journal of Organic Chemistry,1995年,60(6),1872-4
【文献】
Kobayashi, Nagao et al,Synthesis and characterization of phthalocyanines with direct Si-Si linkages,Chemistry - A European Journal,2002年,8(6),1474-1484
【文献】
Kameyama, Kazuya; Morisue, Mitsuhiko; Satake, Akiharu; Kobuke, Yoshiaki,Highly fluorescent self-coordinated phthalocyanine dimers,Angewandte Chemie, International Edition ,2005年,44(30),4763-4766
【文献】
Nicolau, Monica; Esperanza, Sagrario; Torres, Tomas,Synthesis of the First Non-Metalated Triazolephthalocyanine Derivatives,Journal of Organic Chemistry ,2002年,67(4),1392-1395
【文献】
Nemykin, Victor N. 他,Unexpected formation of the nickel seco-tribenzoporphyrazine with a tribenzotetraazachlorin-type absorption spectrum,Chemical Communications (Cambridge, United Kingdom),2012年,48(30),3650-3652
【文献】
Plenzig, Felicitas; Lyubimtsev, Alexey; Hanack, Michael,Synthesis of acetylene bridged germanium phthalocyanines,Natural Product Communications,2012年,7(3),363-367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C07F
C07D
CAPlus/REGSITRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4):
【化1】
[一般式(A−1)〜(A−4)中、R
1及びR
2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を示す。また、複数のR
1は同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は同一でも異なっていてもよい。また、R
1、R
2はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。]
で表される化合物、
(B)モリブデン若しくはタングステンの金属酸塩又はそのオキシハロゲン化物、及び
(C)グアニジン塩酸塩
を、150〜320℃で反応させることを特徴とする、下記一般式(1):
【化2】
[上記一般式(1)中、R
1及びR
2は式(A−1)〜(A−4)と同じものを示し、互いに同一でも異なっていてもよい。Mはモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を示す。]
で表される拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(A−1)〜(A−4)及び(1)において、R1及びR2は水素原子、炭素原子数1〜20の1価のアルキル基、炭素原子数6〜20の1価のアリール基、炭素原子数1〜20の1価のアルコキシ基、炭素原子数6〜20の1価のアリールオキシ基、炭素原子数1〜20の1価のアルキルチオ基又は炭素原子数6〜20の1価のアリールチオ基を示し、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、複数のR2は同一でも異なっていてもよく、同一のベンゼン環に存在するR1及びR2から選択される2つの置換基同士はそれぞれ結合して環を形成してもよい、
請求項1に記載の拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(A−1)〜(A−4)及び(1)において、R1の全てが水素原子であり、R2の一方が水素原子であり、他方が炭素原子数1〜20の1価のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項4】
一般式(A−1)〜(A−4)及び(1)において、R1が水素原子であり、R2が炭素原子数1〜20の1価のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【請求項5】
(B)モリブデン若しくはタングステンの金属酸塩又はそのオキシハロゲン化物が、
モリブデン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム又は二塩化二酸化モリブデンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張型フタロシアニン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニンは化学的及び物理的に安定でかつ可視光領域に強い吸収をもつため、有機顔料としてのみならず、近年、記録媒体、有機半導体、レーザープリンター、光線力学的療法の光増感剤、非線形光学材料、及び脱臭剤といった様々な分野へ応用されている。
【0003】
そこで、本発明者は下記式:
【化1】
【0004】
で表される二核金属イオンが含まれる拡張型フタロシアニン化合物を見出した。このものは通常のフタロシアニンよりも4電子多い22π電子構造を有し、近赤外領域に吸収を持つという特徴を有する。また、この二核金属イオンが含まれる拡張型フタロシアニン化合物の合成法を見出した。(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Osamu Matsushita et al.、“Rectangular-Shaped Expanded Phthalocyanines with Two Central Metal Atoms”、Journal of the American Chemical Society、2012年、134、p.3411-3418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に開示される方法によれば、目的化合物である拡張型二核金属フタロシアニン化合物の収率が低く、また副生成物である金属あるいは無金属フタロシアニンが混在するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、近赤外領域に吸収を有する拡張型フタロシアニン化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、拡張型フタロシアニン化合物の合成にグアニジン塩酸塩を用いることで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、次の発明を提供するものである。
【0010】
〈1〉(A)下記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)又は(A−4):
【化2】
[一般式(A−1)〜(A−4)中、R
1及びR
2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を示す。また、複数のR
1は同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は同一でも異なっていてもよい。また、R
1、R
2はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。]
で表される化合物、
(B)モリブデン若しくはタングステンの金属酸塩又はそのオキシハロゲン化物、及び
(C)グアニジン塩酸塩
を、150〜320℃で反応させることを特徴とする、下記一般式(1):
【化3】
[上記一般式(1)中、R
1及びR
2は式(A−1)〜(A−4)と同じものを示し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mはモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を示す。]
で表される拡張型フタロシアニン化合物の製造方法。
【0011】
〈2〉一般式(1−1):
【化4】
[一般式(1−1)中、R
21は互いに独立に炭素原子数1〜20の1価のアルコキシ基を示し、Mはモリブデン(Mo)又はタングステン(W)を示す。]
で表される拡張型フタロシアニン化合物。
【0012】
〈3〉上記方法により製造された拡張型フタロシアニン化合物を含むことを特徴と
する近赤外光吸収材。
【0013】
〈4〉上記方法により製造された拡張型フタロシアニン化合物を含むことを特徴とする太陽電池素子。
【0014】
〈5〉上記方法により製造された拡張型フタロシアニン化合物を含むことを特徴とする有機半導体素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高収率で拡張型フタロシアニン化合物を得ることできる。また、本発明により製造された拡張型フタロシアニン化合物は近赤外領域の光を吸収するため、近赤外光吸収材、太陽電池素子、有機半導体素子として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例で得られた化合物のクロロホルム溶液中の光の吸収スペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[化合物(A)]
本発明の製造方法で用いられる化合物(A)は、下記一般式(A−1)〜(A−4)で表されるものである。
【化5】
【0019】
一般式(A−1)〜(A−4)中、R
1及びR
2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を示す。また、複数のR
1は同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は同一でも異なっていてもよい。また、R
1、R
2はそれぞれ互いに連結して環を形成してもよい。
R
1及びR
2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
【0020】
アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基も含まれる。アルキル基の炭素原子数は通常1〜20であり、4〜12が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。アルキル基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0021】
アリール基は、単環式であっても多環式であってもよい。また、ベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の有機基、例えば、ビニレン基等のアルケニレン基を介して結合した基及びヘテロアリール基も含まれる。アリール基の炭素原子数は通常6〜20であり、6〜14であることが好ましい。具体的には、フェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、チエニル基、ピリジル基、インドリル基等が挙げられる。アリール基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0022】
前記アリール基のうち、アルキルフェニル基としては、フェニル基の水素原子が上述したアルキル基で置換されたものが挙げられる。具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0023】
前記アリール基のうち、アルコキシフェニル基としては、フェニル基の水素原子が後述するアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0024】
アルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素原子数は通常1〜20であり、4〜12が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0025】
アリールオキシ基の炭素原子数は通常6〜20であり、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
前記アリールオキシ基のうち、アルキルフェノキシ基としては、フェノキシ基の水素原子が上述したアルキル基で置換されたものが挙げられる。
前記アリールオキシ基のうち、アルコキシフェノキシ基としては、フェノキシ基の水素原子が上述したアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0026】
アルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよい。アルキルチオ基の炭素原子数は通常1〜20であり、4〜12が好ましい。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基等が挙げられる。アルキルチオ基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0027】
アリールチオ基の炭素原子数は通常6〜20であり、フェニルチオ基、アルキルフェニルチオ基、アルコキシフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基等が挙げられる。アリールチオ基の水素原子はハロゲン原子等で置換されていてもよい。
前記アリールチオ基のうち、アルキルフェニルチオ基としては、フェニルチオ基の水素原子が上述したアルキル基で置換されたものが挙げられる。
前記アリールチオ基のうち、アルコキシフェニルチオ基としては、フェニルチオ基の水素原子が上述したアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0028】
上記一般式(A−1)〜(A−4)において、同一のベンゼン環に存在するR
1及びR
2から選択される2つの置換基同士はそれぞれ結合して環を形成してもよい。
具体的には、下記一般式で表される化合物等が挙げられる。
【化6】
【0029】
一般式(1)で表される化合物の溶媒に対する溶解性を高めるため、一般式(A−1)〜(A−4)において、R
1及びR
2のいずれか一つは炭素原子数4〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数4〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数4〜20のアルキルチオ基、炭素原子数6〜20のアリールチオ基であることが好ましい。
さらに、原料の入手しやすさの点から、R
1の全てが水素原子であり、R
2の一方が水素原子であり、他方が炭素原子数1〜20、好ましくは4〜12の1価のアルキル基、より好ましくはt−ブチル基、である場合;R
1が水素原子であり、R
2が炭素原子数1〜20、好ましくは4〜12のアルコキシ基の1価のアルコキシ基、より好ましくはn−ヘキシルオキシ基、である場合が特に好ましい。
【0030】
一般式(A−1)〜(A−4)で表される化合物は、市販されているものを使用してもよく、既報(例えば、Journal of Organic Chemistry、1991年、56、p.82-90)に従い合成したものを用いてもよい。
具体的には、置換基R
1及びR
2を有する(A−4)で表される化合物とアンモニウムガスを反応させることで、一般式(A−1)で表される化合物を合成することができる。
【0031】
[(B)モリブデン若しくはタングステンの金属酸塩又はそのオキシハロゲン化物]
本発明の製造方法で用いられる化合物(B)モリブデン若しくはタングステンの金属酸塩又はそのオキシハロゲン化物としては、具体的に下記の化合物が挙げられる。
【0032】
モリブデンの金属酸塩としては、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム等が挙げられる。
タングステンの金属酸塩としては、タングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム等が挙げられる。
モリブデンのオキシハロゲン化物としては、二塩化二酸化モリブデン、オキシ塩化モリブデン等が挙げられる。
タングステンのオキシハロゲン化物としては、二塩化二酸化タングステン、オキシ塩化タングステン等が挙げられる。
【0033】
化合物(B)としては、モリブデン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、二塩化二酸化モリブデンが好ましい。
化合物(B)は、化合物(A)に対し通常0.05〜4当量、さらに0.1〜2当量用いるのが好ましく、さらに0.2〜1.0当量用いるのがより好ましい。
【0034】
[(C)グアニジン塩酸塩]
本発明の製造方法で用いる化合物(C)は、下記式(C−1)のグアニジン塩酸塩である。
【化7】
化合物(C)は、化合物(A)に対し通常1〜48当量、さらに2〜24当量用いるのが好ましく、さらに4〜12当量用いるのがより好ましい。
【0035】
[溶媒]
本発明の製造方法は、原則として溶媒は必要としないが、必要に応じて溶媒中で行ってもよい。その場合の溶媒としては、(A)、(B)及び(C)各化合物と反応しないものを適宜選択することができる。例えば、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、アルコール、芳香族エーテル類等から選択できる。具体的には、クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、オクタノール、キノリン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。またこれらを併用することもできる。
【0036】
[反応条件]
本発明における反応温度は、通常150℃〜320℃、好ましくは160〜320℃、より好ましくは260〜320℃である。150℃未満だと反応系が均一系にならず、320℃を超えると生成物が分解する恐れがある。
本発明における反応時間は、通常30分〜2.5時間である。
本発明における反応は、空気中でも進行するが、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0037】
[用途]
本発明に係る拡張型フタロシアニン化合物は、近赤外領域(750〜1400nm)の光を吸収するため、近赤外光吸収材、太陽電池素子、有機半導体素子として利用可能である。例えば、太陽電池に用いられる光吸収色素、光線力学的療法に用いられる光増感剤等に利用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本願発明を更に詳細に説明するが、本願発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0039】
実施例及び比較例で得られた化合物について、NMR、吸収スペクトル、MSスペクトル等により構造解析を行った。
1H−NMR、
13C−NMRは、JNM-AL400(日本電子社製)又はJNM-AL300(日本電子社製)を用いて測定した。吸収スペクトルは、JASCO V-670(日本分光社製)を用いて測定した。MSスペクトルは、Ultraflex(Bruker Daltonics社製)を用いて測定した。
【0040】
[実施例1]
十分にアルゴン置換した耐圧試験管に、下記の化合物a(0.5mmol)、モリブデン酸アンモニウムb(0.1mmol)およびグアニジン塩酸塩c(6.0mmol)を入れ、300℃で30分間撹拌、反応させた。反応液を室温に戻し、乳鉢で固体物質を粉砕し、クロロホルムを加え、生成物を抽出した。シリカゲルカラムおよびリサイクル分取高速液体クロマトグラフ(日本分析工業株式会社製LC-9210 NEXT、充填カラム:JAIGEL H1、H2)にて精製を行い、本発明に係る化合物dを異性体の混合物として得た。化合物dの収率は32%であった。反応式を以下に示す。
【0041】
【化8】
【0042】
化合物dのデータ;
400 MHz
1H-NMR (CDCl
3/TMS) δ(ppm): 10.05-9.67 (m, 8H), 8.57 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 1.86 (m, 36H).
UV/Vis/NIR (CHCl
3): λ
max = 1159, 1019, 929, 499, 409, 393 nm.
MS (MALDI) m/z calcd for C
50H
48Mo
2N
12O
2 : 1044.2131, found : 1044.2.
【0043】
図1(a)に化合物dの吸収スペクトルを示す。化合物dは、クロロホルム中における極大波長が929nmであり、近赤外光を吸収することがわかった。
【0044】
なお、化合物dの異性体の混合物は、下記式で示される10種類の異性体が混在しているものと考えられる。
【化9】
【0045】
また、化合物dは、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン等の種々の有機溶媒に可溶であった。
【0046】
[比較例1]
実施例1におけるグアニジン塩酸塩cの代わりに尿素c’を用い、反応温度を220℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明に係る化合物dを得た。化合物dの収率は5%であった。反応式を以下に示す。
【0047】
【化10】
【0048】
拡張型フタロシアニンの合成にグアニジン塩酸塩を用いることで、尿素を用いた場合よりも収率が飛躍的に向上することが分かる。
【0049】
[実施例2]
実施例1におけるモリブデン酸アンモニウムbの代わりに二塩化二酸化モリブデンeを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明に係る化合物dを異性体の混合物として得た。化合物dの収率は27%であった。反応式を以下に示す。
【0050】
【化11】
【0051】
[実施例3]
実施例1におけるモリブデン酸アンモニウムbの代わりにパラタングステン酸アンモニウムfを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明に係る化合物gを異性体の混合物として得た。化合物gの収率は10%であった。反応式を以下に示す。
【0052】
【化12】
【0053】
化合物gのデータ;
MS (MALDI) m/z calcd for C
50H
48N
12O
2W
2 : 1216.3042, found : 1216.3.
UV/Vis/NIR (CHCl
3): λ
max = 1403, 1194, 1091, 998, 919, 386 nm.
【0054】
図1(b)に化合物gの吸収スペクトルを示す。化合物gは、クロロホルム中における極大波長が998nmであり、近赤外光を吸収することがわかった。
【0055】
[実施例4]
実施例1における化合物aの代わりに化合物hを用い、反応温度を280℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明に係る化合物iを得た。化合物iの収率は3%であった。(C
6H
13はn-ヘキシル基を示す)。反応式を以下に示す。
【0056】
【化13】
【0057】
化合物iのデータ;
MS (MALDI) m/z calcd for C
82H
112Mo
2N
12O
10 : 1620.6733, found : 1620.7.
UV/Vis/NIR (CHCl
3): λ
max = 1398, 1165, 1021, 937, 467, 390 nm.
【0058】
図1(c)に化合物iの吸収スペクトルを示す。化合物iは、クロロホルム中における極大波長が937nmであり、近赤外光を吸収することがわかった。
【0059】
[実施例5]
実施例1における化合物aの代わりに化合物jを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明に係る化合物dを異性体の混合物として得た。化合物dの収率は24%であった。反応式を以下に示す。
【0060】
【化14】
【0061】
[実施例6]
実施例1における化合物aの代わりに化合物kを用いた以外は、実施例1と同様の操作で反応を行った。反応液を室温に戻し、反応混合物を円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて水で3時間、メタノールで1時間抽出した後に、溶媒をクロロホルムに変えて48時間で生成物を抽出した。クロロホルム溶液を濃縮後、本発明に係る化合物lを得た。化合物lの収率は7%であった。反応式を以下に示す。
【0062】
【化15】
【0063】
化合物lのデータ;
MS (MALDI) m/z calcd for C
34H
16Mo
2N
12O
2 : 819.9627, found : 819.9.
UV/Vis/NIR (CHCl
3): λ
max = 1011, 918, 495, 407, 387 nm.
【0064】
図1(d)に化合物lの吸収スペクトルを示す。化合物lは、クロロホルム中における極大波長が918nmであり、近赤外光を吸収することがわかった。