特許第6229878号(P6229878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000002
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000003
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000004
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000005
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000006
  • 特許6229878-車両用挙動制御装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229878
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両用挙動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/045 20120101AFI20171106BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20171106BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20171106BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B60W30/045
   B60W10/08
   B60L7/14
   B60L15/20 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-226331(P2013-226331)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85820(P2015-85820A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】砂原 修
(72)【発明者】
【氏名】延本 秀寿
(72)【発明者】
【氏名】山下 真一郎
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/142079(WO,A1)
【文献】 特開2000−177617(JP,A)
【文献】 特開2011−101515(JP,A)
【文献】 特開2012−096618(JP,A)
【文献】 特開平09−125999(JP,A)
【文献】 特開2005−145197(JP,A)
【文献】 特開2006−168684(JP,A)
【文献】 特開2003−063265(JP,A)
【文献】 特開平10−038067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 50/16
B60K 6/20 − 6/547
B62D 6/00
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置において、
上記車両のヨーレートに関連するヨーレート関連量を取得するヨーレート関連量取得手段と、
上記ヨーレート関連量取得手段により取得されたヨーレート関連量に応じて上記車両の駆動力を低減させるように制御する駆動力制御手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量が増大するほど、上記車両の駆動力低減量を増大させ且つこの増大量の増加割合を低減させるように上記駆動力低減量を決定する駆動力低減量決定手段と、上記車両に対する要求駆動力が大きくなるほど、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正する駆動力低減量補正手段とを備え
上記駆動力低減量補正手段は、上記要求駆動力が大きくなるほど減少するように設定された係数を、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量に乗ずることにより、上記駆動力低減量を補正する
ことを特徴とする車両用挙動制御装置。
【請求項2】
上記駆動力低減量補正手段は、上記要求駆動力が所定値未満の場合、上記要求駆動力が大きくなるほど、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正し、上記要求駆動力が所定値以上の場合、上記駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を一定の最小値となるように補正する、請求項1に記載の車両用挙動制御装置。
【請求項3】
上記駆動力制御手段は、上記車両の操舵角の絶対値が増大している場合に、上記車両の駆動力を低減させる制御を行う請求項1又は2に記載の車両用挙動制御装置。
【請求項4】
上記車両は、車輪を駆動するモータと、このモータに電力を供給すると共にモータが発生させた回生電力を回収するバッテリと、を有する電動駆動車両であり、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量に応じて、上記モータが発生させる回生電力量を制御することにより、上記車両の駆動力を低減させる、請求項1乃至の何れか1項に記載の車両用挙動制御装置。
【請求項5】
上記電動駆動車両は、さらに、上記バッテリの状態を検出するバッテリ状態検出手段と、上記駆動力制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記バッテリの状態に基づき、上記モータが発生させる回生電力を上記バッテリが回収できないと判定した場合、上記車両の駆動力を低減させず、且つ、上記車両の駆動力を低減させない旨の情報を上記表示手段に表示させる、請求項に記載の車両用挙動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用挙動制御装置に係わり、特に、前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スリップ等により車両の挙動が不安定になった場合に安全方向に車両の挙動を制御するもの(横滑り防止装置等)が知られている。具体的には、車両のコーナリング時等に、車両にアンダーステアやオーバーステアの挙動が生じたことを検出し、それらを抑制するように車輪に適切な減速度を付与するようにしたものが知られている。
【0003】
一方、上述したような車両の挙動が不安定になるような走行状態における安全性向上のための制御とは異なり、通常の走行状態にある車両のコーナリング時におけるドライバによる一連の操作(ブレーキング、ステアリングの切り込み、加速、及び、ステアリングの戻し等)が自然で安定したものとなるように、コーナリング時に減速度を調整して操舵輪である前輪に加わる荷重を調整するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−88576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1の車両運動制御装置においては、コーナリング時の車両の走行状態を検出し、その検出結果に応じて油圧ブレーキシステムを制御することにより車両の減速制御を行っている。この油圧ブレーキシステムは、部品間に遊びを設けた構造を有しているので、油圧ブレーキシステムに制御値が入力されてから車両に減速度が発生するまでにタイムラグが生じる。そのため、従来の装置では、適切なタイミングにより車両の減速制御を行うことが困難である。そこで、特許文献1の装置では、カメラを用いて車両前方のカーブを推定し、カーブ進入前に油圧ブレーキシステムの制御を開始するようにしているので、装置の複雑化やコスト上昇を招いている。
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意研究することにより、コーナリング時におけるドライバの操作の安定化制御は、ブレーキシステムを用いなくても、車両の駆動力の制御により可能であることを見出した。さらに、本発明者らは、この安定化制御は、特に、電動駆動車両においては回生電力を調整することにより減速度の調整が可能であること、また、回生電力を調整することにより、油圧ブレーキシステムを用いた場合に発生するタイムラグを生じることになく、モータトルク低減(=モータ回生)によりダイレクトにより駆動力を調整できることを発見した。
【0007】
これらの発見に基づき、本発明者らは、車両のヨーレートに関連するヨーレート関連量が増大するほど、車両の駆動力低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように車両の駆動力を低減させる車両用挙動制御装置を提案した(特願2013−034266号)。この装置によれば、車両の操舵が開始され、車両のヨーレート関連量が増大し始めると、駆動力低減量を迅速に増大させるので、車両の操舵開始時において減速度を迅速に車両に生じさせ、十分な荷重を操舵輪である前輪に迅速に加えることができる。これにより、操舵輪である前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、カーブ進入初期における車両の回頭性を向上することができ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。
しかしながら、ドライバが車両の駆動力を必要とし、アクセルペダルを大きく踏み込んでいるほど、ドライバは車速変化に敏感になるので、アクセルペダルが大きく踏み込まれているときに操舵が行われた場合(例えば、高速道路入口における合流時や、登坂中のレーンチェンジ、登坂中のS字カーブ等)に、アクセルペダルが大きく踏み込まれていないときに操舵が行なわれた場合(例えば、アクセルペダルに軽く足を載せて平地を定速走行中におけるカーブやレーンチェンジ)と同程度に車両の駆動力を低減させると、ブレーキの引きずりが生じているような違和感を感じる。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ブレーキの引きずりが生じているような違和感をドライバに感じさせることなく、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる、車両用挙動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の車両用挙動制御装置は、前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置において、車両のヨーレートに関連するヨーレート関連量を取得するヨーレート関連量取得手段と、ヨーレート関連量取得手段により取得されたヨーレート関連量に応じて車両の駆動力を低減させるように制御する駆動力制御手段と、を有し、駆動力制御手段は、ヨーレート関連量が増大するほど、車両の駆動力低減量を増大させ且つこの増大量の増加割合を低減させるように駆動力低減量を決定する駆動力低減量決定手段と、車両に対する要求駆動力が大きくなるほど、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正する駆動力低減量補正手段とを備え、駆動力低減量補正手段は、要求駆動力が大きくなるほど減少するように設定された係数を、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量に乗ずることにより、駆動力低減量を補正することを特徴とする。
このように構成された本発明においては、車両の操舵が開始され、車両のヨーレート関連量が増大し始めると、駆動力制御手段は駆動力低減量を迅速に増大させるので、車両の操舵開始時において減速度を迅速に車両に生じさせ、十分な荷重を操舵輪である前輪に迅速に加えることができる。これにより、操舵輪である前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、カーブ進入初期における車両の回頭性を向上することができ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。また、駆動力制御手段は、ヨーレート関連量が増大するほど、車両の駆動力低減量の増大割合を低減させるので、カーブ走行中に車両に発生させる減速度が過大にならず、操舵終了時に減速度を迅速に減少させることができる。従って、カーブ脱出時において、ドライバが駆動力低減の引きずり感を感じることを防止できる。さらに、駆動力低減量補正手段は、車両に対する要求駆動力が大きくなるほど、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正するので、車両に対する要求駆動力が大きくなるほど車両に発生させる減速度を小さくすることができ、これにより、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、車速変化に敏感な場合に、ブレーキを引きずっているような違和感を感じることを防止できる。このように、本発明の車両用挙動制御装置によれば、ドライバに違和感を感じさせることなく、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、駆動力低減量補正手段は、要求駆動力が所定値未満の場合、要求駆動力が大きくなるほど、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を減少させるように補正し、要求駆動力が所定値以上の場合、駆動力低減量決定手段により決定された駆動力低減量を一定の最小値となるように補正する。
このように構成された本発明においては、要求駆動力が所定値以上の場合には、車両のヨーレート関連量に応じて最小限の減速度を車両に発生させるか又は減速度を発生させず、要求駆動力が所定値未満の場合には、要求駆動力が小さくなるほど車両に発生させる減速度を大きくするので、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、車速変化に敏感な場合に、ブレーキを引きずっているような違和感を感じることを防止できると共に、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおらず、車速変化にそれ程敏感ではない場合には、アクセルペダルの踏み込み量が小さいほどステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、駆動力制御手段は、車両の操舵角の絶対値が増大している場合に、車両の駆動力を低減させる制御を行う。
このように構成された本発明においては、ステアリングの切り込み操作が行われることにより車両の操舵角の絶対値が増大している場合に、車両の駆動力を低減させるので、ステアリングの切り込み操作が行われているときに、十分な荷重を操舵輪である前輪に加えることができ、ステアリングの切り込み操作に対する車両の応答性を確実に向上することができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、車両は、車輪を駆動するモータと、このモータに電力を供給すると共にモータが発生させた回生電力を回収するバッテリと、を有する電動駆動車両であり、駆動力制御手段は、ヨーレート関連量に応じて、モータが発生させる回生電力量を制御することにより、車両の駆動力を低減させる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、車両のヨーレート関連量に応じてモータのトルクを低減させるので、直接的に車両の駆動力を低減させることができる。従って、油圧ブレーキユニットを制御することにより車両の駆動力を低減させる場合と比較して、駆動力低減の応答性を高めることができ、よりダイレクトに車両の挙動を制御することができる。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、電動駆動車両は、さらに、バッテリの状態を検出するバッテリ状態検出手段と、駆動力制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段と、を有し、駆動力制御手段は、バッテリの状態に基づき、モータが発生させる回生電力をバッテリが回収できないと判定した場合、車両の駆動力を低減させず、且つ、車両の駆動力を低減させない旨の情報を表示手段に表示させる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、モータが発生させる回生電力をバッテリに回収させるとバッテリが過充電になる場合や、バッテリの温度が許容温度範囲を超えてしまう場合、モータのトルクを低減させず、回生電力を発生させないので、過充電や許容温度範囲逸脱によるバッテリの損傷を防止することができる。また、駆動力制御手段は、車両の駆動力を低減させない旨の情報を表示手段に表示させるので、カーブ進入時に駆動力が低減されないことによりドライバが違和感を感じることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による車両用挙動制御装置によれば、ブレーキの引きずりが生じているような違和感をドライバに感じさせることなく、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による車両用挙動制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態による車両用挙動制御装置が車両の挙動を制御する挙動制御処理のフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による駆動力制御部が目標ヨー加速度に基づいて基本制御介入トルクを決定する際に参照するマップである。
図5】本発明の実施形態による駆動力制御部がアクセル開度に基づいて駆動力低減量の補正係数を決定する際に参照するマップである。
図6】本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載した車両が右旋回を行う場合における、車両用挙動制御装置による挙動制御に関するパラメータの時間変化を示す線図であり、図6(a)は右旋回を行う車両を概略的に示す平面図、図6(b)は図6(a)に示したように右旋回を行う車両の操舵角の変化を示す線図、図6(c)は図6(b)に示した車両の操舵角に基づき算出された目標ヨーレートの変化を示す線図、図6(d)は図6(c)に示した目標ヨーレートに基づき算出された目標ヨー加速度の変化を示す線図、図6(e)は図6(d)に示した目標ヨー加速度に基づいて駆動力制御部が決定したモータのトルク制御量の変化を示す線図、図6(f)は図6(b)に示したように操舵が行われる車両において、図6(e)に示したようにモータのトルク制御を行った場合に車両に発生するヨーレートの変化と、モータのトルク制御を行わなかった場合に車両に発生するヨーレートの変化とを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を説明する。
まず、図1により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両の全体構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両1は、動力源としてバッテリ2(二次電池)を搭載し、前輪が操舵される電気自動車又はハイブリッド自動車である。車両1の車体前部には、駆動輪4(図1の例では左右の前輪)を駆動するモータ6が搭載されている。また、バッテリ2から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ6に供給すると共に、モータ6が発生させる回生電力を直流電力に変換してバッテリ2に供給することによりバッテリ2を充電するインバータ8が、モータ6の近傍に配置されている。
【0019】
また、車両1は、ステアリングホイール10の回転角度を検出する操舵角センサ12、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ14、及び、鉛直軸(ヨー軸)を中心とする車両1の回転角速度(ヨーレート)を検出するヨーレートセンサ16を有する。これらの各センサは、それぞれの検出値を車両用挙動制御装置18に出力する。
さらに、車両1は、車両用挙動制御装置18による車両1の挙動制御に関する情報を表示するインジケータ20を有する。
また、バッテリ2は、このバッテリ2のSOC(State Of Charge)及び温度を検出するバッテリ状態検出部22を備えている。
【0020】
次に、図2により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18の電気的構成を説明する。図2は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18の電気的構成を示すブロック図である。
車両用挙動制御装置18は、車両1の目標ヨー加速度を算出するヨー加速度算出部24と、車両1の目標ヨー加速度に応じて車両1の駆動力を低減させる駆動力制御部26とを備える。
この車両用挙動制御装置18には、操舵角センサ12が検出した操舵角、アクセル開度センサ14が検出したアクセル開度、ヨーレートセンサ16が検出したヨーレート、並びにバッテリ状態検出部22が検出したバッテリ2のSOC及び温度が入力される。
【0021】
ヨー加速度算出部24は、操舵角センサ12から入力された操舵角と、車速とに基づき、車両1の目標ヨーレートを算出し、この目標ヨーレートに基づき、車両1の目標ヨー加速度を算出する。
駆動力制御部26は、算出された目標ヨー加速度、アクセル開度(即ち要求駆動力)、及びバッテリ2の状態に基づき、モータ6のトルク低減量(即ち駆動力低減量)を決定し、そのモータ6のトルク低減量を実現するように、モータ6が発生させる回生電力量を制御する。また、駆動力制御部26は、駆動力制御部26がモータ6の駆動力を制御可能な状態か否かを示す情報をインジケータ20に出力する。
これらのヨー加速度算出部24、及び、駆力動制御部26は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0022】
次に、図3乃至図5により、車両用挙動制御装置18が行う処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18が車両1の挙動を制御する挙動制御処理のフローチャートである。この挙動制御処理は、車両1のイグニッションがオンにされ、車両用挙動制御装置18に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。
【0023】
図3に示すように、挙動制御処理が開始されると、ステップS1において、駆動力制御部26は、操舵角センサ12によって検出された操舵角を取得する。
【0024】
次いで、ステップS2において、駆動力制御部26は、ステップS1において取得した操舵角が所定の閾値以上か否かを判定する。その結果、操舵角が所定の閾値以上ではない(閾値未満である)場合、車両用挙動制御装置18は、操舵が行われていないため車両1の挙動を制御する必要がないものとし、挙動制御処理を終了する。
【0025】
一方、操舵角が所定の閾値以上である場合、ステップS3に進み、駆動力制御部26は、ステップS1において取得した操舵角の絶対値が増大中か否かを判定する。その結果、操舵角の絶対値が増大中ではない(一定又は減少中である)場合、車両用挙動制御装置18は、ステアリング操作が保持又は切り戻し操作中であり、切り込み操作中ではないため、車両1の挙動を制御する必要がないものとし、挙動制御処理を終了する。
【0026】
一方、操舵角の絶対値が増大中である場合、ステップS4に進み、駆動力制御部26は、バッテリ状態検出部22により検出されたバッテリ2のSOC及び温度を取得する。
【0027】
次いで、ステップS5において、駆動力制御部26は、ステップS4において取得したバッテリ2の状態に基づき、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2が回収可能か否か判定する。駆動力制御部26は、バッテリ2のSOCが所定値以下であり、且つバッテリ2の温度が所定温度以下の場合に、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2が回収可能と判定する。
【0028】
その結果、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2が回収可能である場合、ステップS6に進み、ヨー加速度算出部24は、操舵角センサ12から入力された操舵角と、車両1の車速とに基づき、車両1の目標ヨーレートを算出し、この目標ヨーレートに基づき、車両1の目標ヨー加速度を算出する。具体的には、ヨー加速度算出部24は、操舵角センサ12から入力された操舵角に、車両1の車速に応じた係数を乗ずることにより目標ヨーレートを算出し、その目標ヨーレートを時間微分することにより目標ヨー加速度を算出する。
【0029】
次いで、ステップS7において、駆動力制御部26は、ステップS6においてヨー加速度算出部24が算出した目標ヨー加速度に基づき、モータ6のトルク低減量(基本制御介入トルク)を決定する。この基本制御介入トルクは、カーブを走行する車両1に適当な減速度を生じさせるためのトルク低減量であり、アクセル開度やバッテリ2が回収可能な回生電力量を考慮に入れずに決定される基本的な値である。
具体的には、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度と基本制御介入トルクとの関係を示すマップを参照し、ステップS6においてヨー加速度算出部24が算出した目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクを特定する。
図4は、本発明の実施形態による駆動力制御部26が目標ヨー加速度に基づいて基本制御介入トルクを決定する際に参照するマップである。この図4における横軸は目標ヨー加速度を示し、縦軸は基本制御介入トルクを示す。図4に示すように、目標ヨー加速度が増大するに従って、この目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクは、所定の上限値(図4においては12Nm)に漸近する。即ち、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度が増大するほど、基本制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
【0030】
次いで、ステップS8において、駆動力制御部26は、アクセル開度センサ14によって検出されたアクセル開度を取得する。
【0031】
次いで、ステップS9において、駆動力制御部26は、ステップS8において取得したアクセル開度に基づき、基本制御介入トルクを補正するための補正係数Kを決定する。
具体的には、駆動力制御部26は、アクセル開度と補正係数Kとの関係を示すマップを参照し、ステップS8において取得したアクセル開度に対応する補正係数Kを特定する。
図5は、本発明の実施形態による駆動力制御部26がアクセル開度に基づいてトルク低減量の補正係数を決定する際に参照するマップである。この図5における横軸はアクセル開度を示し、縦軸は補正係数Kを示す。図5に示すように、アクセル開度が60%未満の場合、アクセル開度が大きくなるほど補正係数Kが小さくなるように設定されている。アクセル開度が60%以上の場合には、補正係数Kは最小値0.25で一定となっている。また、アクセル開度が0%の場合、補正係数Kは最大値1となっている。
【0032】
次いで、ステップS10において、駆動力制御部26は、ステップS4において取得したバッテリ2の状態に基づき、制御介入受入可能トルクを決定する。この制御介入受入可能トルクは、バッテリ2が回収可能な最大回生電力量に対応するモータ6のトルク低減量である。
具体的には、駆動力制御部26は、バッテリ2のSOC及び温度に基づき、バッテリ2がモータ6から回収可能な回生電力量及びバッテリ2に通電可能な最大電流を特定し、これらの回生電力量及び最大電流に基づき、モータ6に許容する回生電力を算出する。そして、この許容回生電力に対応する回生トルクを、制御介入受入可能トルクとして算出する。
【0033】
次いで、ステップS11において、駆動力制御部26は、ステップS7において駆動力制御部26が決定した基本制御介入トルクを補正した補正制御介入トルクを決定する。具体的には、駆動力制御部26は、ステップS9において決定した補正係数KをステップS7において決定した基本制御介入トルクに乗じたトルク値と、ステップS10において決定した制御介入受入可能トルクの内、小さい方を補正制御介入トルクとして決定する。
【0034】
次いで、ステップS12において、駆動力制御部26は、モータ6のトルク低減量がステップS11において決定した補正制御介入トルクとなるように、モータ6が発生させる回生電力量を制御する。具体的には、駆動力制御部26は、ステップS11において決定した補正制御介入トルクに対応する回生電力をモータ6が発生させるように、インバータ8内の回生回路を制御する。これにより、駆動力制御部26は、補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を減少させる。
【0035】
また、ステップS5において、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2が回収可能ではない場合(即ち、バッテリ2のSOCが所定値より大きい場合、又はバッテリ2の温度が所定温度より高い場合)、ステップS13に進み、駆動力制御部26は、車両用挙動制御装置18が車両1の駆動力を低減させる制御を実行できない旨の情報をインジケータ20に表示させる。
【0036】
ステップS12又はS13の後、車両用挙動制御装置18は挙動制御処理を終了する。
【0037】
次に、図6により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18の作用を説明する。図6は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置18を搭載した車両1が右旋回を行う場合における、車両用挙動制御装置18による挙動制御に関するパラメータの時間変化を示す線図である。
【0038】
図6(a)は、右旋回を行う車両1を概略的に示す平面図である。この図6(a)に示すように、車両1は、位置Aから位置Bを経由して位置Cまで右旋回する。
【0039】
図6(b)は、図6(a)に示したように右旋回を行う車両1の操舵角の変化を示す線図である。図6(b)における横軸は時間を示し、縦軸は操舵角を示す(右向きが正)。
この図6(b)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリングの切り込み操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、ステアリングの切り戻し操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に減少し、位置Cにおいて操舵角が0になる。
【0040】
図6(c)は、図6(b)に示した車両1の操舵角に基づき算出された目標ヨーレートの変化を示す線図である。図6(c)における横軸は時間を示し、縦軸は目標ヨーレートを示す(時計回り(CW)が正)。
この図6(c)に示すように、車両1の目標ヨーレートは、操舵角の変化に比例して変化する。即ち、位置Aにおいて右向きの操舵が開始されると、時計回り(CW)の目標ヨーレートが算出され、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが最大になる。その後、時計回りの目標ヨーレートは徐々に減少し、位置Cにおいて目標ヨーレートは0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26は目標ヨーレートの算出を行わない。
【0041】
図6(d)は、図6(c)に示した目標ヨーレートに基づき算出された目標ヨー加速度の変化を示す線図である。図6(d)における横軸は時間を示し、縦軸は目標ヨー加速度を示す(時計回り(CW)が正)。
車両1の目標ヨー加速度は、車両1の目標ヨーレートの時間微分により表される。即ち、図6(d)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨーレートが算出されると、時計回り(CW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Aと位置Bとの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になる。その後、時計回りの目標ヨー加速度は減少し、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが極大になると、目標ヨー加速度は0になる。更に、位置Bから位置Cまで時計回りの目標ヨーレートが減少すると、反時計回り(CCW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Bと位置Cの間において反時計回りの目標ヨー加速度が極大になった後、位置Cにおいて目標ヨー加速度は0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において、駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26は目標ヨー加速度の算出を行わない。
【0042】
図6(e)は、図6(d)に示した目標ヨー加速度に基づいて駆動力制御部26が決定したモータ6のトルク制御量の変化を示す線図である。図6(e)における横軸は時間を示し、縦軸はトルク制御量を示す(トルク増大が正)。
この図6(e)は、上述した挙動制御処理のステップS11において駆動力制御部26が決定した補正制御介入トルクが、ステップS9において決定した補正係数KをステップS7において決定した基本制御介入トルクに乗じたトルク値であるケース(即ち、補正係数Kを基本制御介入トルクに乗じたトルク値が、制御介入受入可能トルクよりも小さいケース)を示している。
上述したように、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度が増大するほど、基本制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。従って、図6(e)に示すように、位置Aにおいて時計回りの目標ヨー加速度が算出されると、目標ヨー加速度の増大に伴ってトルク低減量が増大し、位置Aと位置Bとの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になると、トルク低減量も極大になる。その後、時計回りの目標ヨー加速度の減少に伴ってトルク低減量も減少し、位置Bにおいて目標ヨー加速度が0になると、トルク低減量も0になる。位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、上述した挙動制御処理のステップS3において、駆動力制御部26は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部26はトルク低減を行なわない(即ち、トルク低減量=0)。
また、駆動力制御部26は、上述した挙動制御処理のステップS9において決定した補正係数KをステップS7において決定した基本制御介入トルクに乗じることにより補正制御介入トルクを決定し、その補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を減少させる。上述したように、補正係数Kは、アクセル開度が大きくなるほど小さくなるように設定されている。従って、アクセル開度が大きくなるほど、補正制御介入トルクは小さくなり、図6(e)に示すように、トルク低減量は小さくなる。
【0043】
図6(f)は、図6(b)に示したように操舵が行われる車両1において、図6(e)に示したようにモータ6のトルク制御を行った場合に車両1に発生するヨーレート(実ヨーレート)の変化と、モータ6のトルク制御を行わなかった場合の実ヨーレートの変化とを示す線図である。図6(f)における横軸は時間を示し、縦軸はヨーレートを示す(時計回り(CW)が正)。また、図6(f)における実線は、モータ6のトルク制御を行った場合の実ヨーレートの変化を示し、破線は、モータ6のトルク制御を行わなかった場合の実ヨーレートの変化を示す。
位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨー加速度が増大するにつれて図6(e)に示したようにトルク低減量が増大すると、車両1の操舵輪である前輪の荷重が増加する。その結果、前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するため、車両1の回頭性が向上する。即ち、図6(f)に示すように、位置Aと位置Bとの間において、モータ6のトルク制御を行わなかった場合よりも、モータ6のトルク制御を行った場合の方が車両1に発生する時計回りのヨーレートが大きくなる。また、図6(e)に示したように、アクセル開度が大きくなるほどトルク低減量は小さくなるので、アクセル開度が大きくなるほど、モータ6のトルク制御を行わなかった場合の実ヨーレートと、トルク制御を行った場合の実ヨーレートとの差が小さくなる。
【0044】
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、車両用挙動制御装置18を搭載する車両1は、動力源としてバッテリ2を搭載すると説明したが、動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載する車両1に車両用挙動制御装置18を搭載してもよい。この場合、駆動力制御部26は、ヨー加速度に応じて燃料噴射量やトランスミッションを制御し、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンによる駆動力を低減させる。
【0045】
また、上述した実施形態においては、駆動力制御部26は、ヨー加速度算出部24が算出した目標ヨー加速度及びアクセル開度に基づき、モータ6のトルク低減量を決定すると説明したが、車両1のヨーレートに関連する他のパラメータに基づいてモータ6のトルク低減量を決定するようにしてもよい。
例えば、ヨー加速度算出部24は、ヨーレートセンサ16から入力されたヨーレートに基づき、車両1に発生するヨー加速度を算出し、駆動力制御部26は、このように算出されたヨー加速度及びアクセル開度に基づき、モータ6のトルク低減量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部26は、車両1に発生するヨー加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御し、車両1のアクセル開度が大きくなるほどトルク低減量を減少させるように補正する。
あるいは、車両1に搭載された加速度センサにより、車両1の旋回に伴って発生する横加速度を検出し、この横加速度に基づき、駆動力制御部26がモータ6のトルク低減量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部26は、車両1に発生する横加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御し、車両1のアクセル開度が大きくなるほどトルク低減量を減少させるように補正する。
【0046】
また、上述した実施形態においては、図5に示したマップにおいて、アクセル開度が60%以上の場合には、補正係数Kは最小値0.25で一定となっている場合を例示したが、アクセル開度が60%以上においてもアクセル開度が大きくなるほど補正係数Kが小さくなるようにしてもよい(最小値0)。
【0047】
次に、上述した本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例による車両用挙動制御装置18の効果を説明する。
【0048】
まず、車両用挙動制御装置18の駆動力制御部26は、車両1の目標ヨー加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。即ち、車両1の操舵が開始され、車両1の目標ヨー加速度が増大し始めると、駆動力制御部26はモータ6のトルク低減量を迅速に増大させるので、車両1の操舵開始時において減速度を迅速に車両1に生じさせ、十分な荷重を操舵輪である前輪に迅速に加えることができる。これにより、操舵輪である前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、カーブ進入初期における車両1の回頭性を向上することができ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。また、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度が増大するほど、車両1のトルク低減量の増大割合を低減させるので、カーブ走行中に車両1に発生させる減速度が過大にならず、操舵終了時に減速度を迅速に減少させることができる。従って、カーブ脱出時において、ドライバが駆動力低減の引きずり感を感じることを防止できる。さらに、駆動力制御部26は、車両1のアクセル開度が大きくなるほど、決定したトルク低減量を減少させるように補正するので、車両に対する要求駆動力が大きくなるほど車両1に発生させる減速度を小さくすることができ、これにより、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、車速変化に敏感な場合に、ブレーキを引きずっているような違和感を感じることを防止できる。このように、車両用挙動制御装置18によれば、ドライバに違和感を感じさせることなく、車両1のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両1の挙動を制御することができる。
【0049】
また、駆動力制御部26は、アクセル開度が所定値(60%)以上の場合には、車両1の目標ヨー加速度に応じて最小限の減速度を車両1に発生させるか又は減速度を発生させず、アクセル開度が所定値(60%)未満の場合には、要求駆動力が小さくなるほど車両1に発生させる減速度を大きくするので、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、車速変化に敏感な場合に、ブレーキを引きずっているような違和感を感じることを防止できると共に、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおらず、車速変化にそれ程敏感ではない場合には、アクセルペダルの踏み込み量が小さいほどステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。
【0050】
また、駆動力制御部26は、車両1の操舵角の絶対値が増大している場合に、車両1のモータ6のトルクを低減させる制御を行う。即ち、ステアリングの切り込み操作が行われることにより車両1の操舵角の絶対値が増大している場合に、モータ6のトルクを低減させるので、ステアリングの切り込み操作が行われているときに、十分な荷重を操舵輪である前輪に加えて前輪のコーナリングフォースを増大させることができ、ステアリングの切り込み操作に対する車両1の応答性を確実に向上することができる。
【0051】
駆動力制御部26は、車両1のアクセル開度が大きくなるほど、駆動力制御部26により決定されたトルク低減量を減少させるように補正するので、アクセル開度が大きくなるほど車両1に発生させる減速度を小さくすることができ、これにより、ドライバがアクセルペダルを大きく踏み込んでおり、車速変化に敏感な場合に、ドライバがブレーキを引きずっているような違和感を感じることを防止できる。
【0052】
特に、車両1は、車輪を駆動するモータ6と、このモータ6に電力を供給すると共にモータ6が発生させた回生電力を回収するバッテリ2とを有する電動駆動車両であり、駆動力制御部26は、目標ヨー加速度に応じて、モータ6が発生させる回生電力量を制御することにより、車両1の駆動力を低減させる。即ち、駆動力制御部26は、車両1の目標ヨー加速度に応じてモータ6のトルクを低減させるので、直接的に車両1の駆動力を低減させることができる。従って、油圧ブレーキユニットを制御することにより車両1の駆動力を低減させる場合と比較して、駆動力低減の応答性を高めることができ、よりダイレクトに車両1の挙動を制御することができる。
【0053】
さらに、駆動力制御部26は、バッテリ2の状態に基づき、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2が回収できないと判定した場合、車両1の駆動力を低減させず、且つ、車両1の駆動力を低減させない旨の情報をインジケータ20に表示させる。即ち、駆動力制御部26は、モータ6が発生させる回生電力をバッテリ2に回収させるとバッテリ2が過充電になる場合や、バッテリ2の温度が許容温度範囲を超えてしまう場合、モータ6のトルクを低減させず、回生電力を発生させないので、バッテリ2の損傷を防止することができる。また、駆動力制御部26は、車両1の駆動力を低減させない旨の情報をインジケータ20に表示させるので、カーブ進入時に駆動力が低減されないことによりドライバが違和感を感じることを防止できる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
2 バッテリ
4 駆動輪
6 モータ
8 インバータ
10 ステアリングホイール
12 操舵角センサ
14 アクセル開度センサ
16 ヨーレートセンサ
18 車両用挙動制御装置
20 インジケータ
22 バッテリ状態検出部
24 ヨー加速度算出部
26 駆動力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6