特許第6229891号(P6229891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229891
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】現像剤カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20171106BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G03G15/08 340
   C09J7/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-41031(P2014-41031)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-166778(P2015-166778A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100191112
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】松元 春樹
【審査官】 平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/165019(WO,A1)
【文献】 特開2000−035695(JP,A)
【文献】 特開平08−286454(JP,A)
【文献】 特開2004−264583(JP,A)
【文献】 特開2001−334758(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146616(WO,A1)
【文献】 特開2009−035600(JP,A)
【文献】 特開2009−029916(JP,A)
【文献】 特開2014−070090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
C09J 7/02
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字粘着テープに画像を形成する印刷装置の、前記被印字粘着テープの搬送経路に位置する所定の装着部位に対し、着脱可能に装着される現像剤カートリッジであって、
6以上11未満である溶解度パラメータの値を備えたバインダー成分を含む、現像剤を貯留する貯留手段と、
表面に静電潜像が形成される静電潜像坦持体と、
前記貯留手段に貯留された前記現像剤を供給する供給手段と、
前記静電潜像が形成された前記静電潜像坦持体の表面に、前記供給手段から供給された前記現像剤を帯電させて搬送し、前記静電潜像を現像する現像手段と、
前記静電潜像が現像された前記現像剤を、前記被印字粘着テープに転写することによって画像を形成する転写手段と、
を、外郭を構成するカートリッジ筐体内に有することを特徴とする、現像剤カートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載の現像剤カートリッジにおいて、
前記被印字粘着テープは、
テープ基材層と、前記テープ基材層の厚さ方向の一方側に設けられ所定の粘着剤により構成された粘着層と、前記テープ基材層の前記厚さ方向の他方側に設けられた剥離層と、を備えており、
前記転写手段は、
前記静電潜像が現像された前記現像剤を、前記被印字粘着テープの前記剥離層に転写する
ことを特徴とする現像剤カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ印刷装置に装着して用いられる現像剤カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ印刷により印字を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この印刷装置では、感光ドラムの表面に形成されたトナー像を転写器により印刷用紙に転写した後、加熱ローラと加圧ローラで記録用紙を熱圧着することでトナーが記録用紙に定着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−241520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、粘着テープに印字を行う印刷装置があり、近年ではこの印刷装置に上記レーザ印刷を適用する提案がある。この印刷装置では、印字済みの粘着テープが、所定の軸心まわりに巻回したロールとして生成される場合があり得る。通常、粘着テープには裏面側に粘着層が備えられることから、上記ロールにおいては、トナー(現像剤)が転写されている転写層では、転写層と粘着層とがロールの径方向に接する状態となる可能性がある。このとき、トナーの転写層への密着性が小さいと、ロールから印字済み粘着テープが繰り出されて使用されるとき、転写層に転写して形成されたトナーが再び粘着層側へと引き剥がされ、印字(画像)に悪影響を与える恐れがある。しかしながら上記従来技術は、印刷後の印刷用紙を折り畳んでスタッカへ積載する構成であり、上述した印字済み粘着テープのロール巻き取りにおける問題点は解決し得なかった。
【0005】
本発明の目的は、ロールからの繰り出し時に印字に悪影響が生じるのを防止しつつ、トナーの転写性を向上できる、最適な特性の印字済み粘着テープを実現する現像剤カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印字粘着テープに画像を形成する印刷装置の、前記被印字粘着テープの搬送経路に位置する所定の装着部位に対し、着脱可能に装着される現像剤カートリッジであって、6以上11未満である溶解度パラメータの値を備えたバインダー成分を含む、現像剤を貯留する貯留手段と、表面に静電潜像が形成される静電潜像坦持体と、前記貯留手段に貯留された前記現像剤を供給する供給手段と、前記静電潜像が形成された前記静電潜像坦持体の表面に、前記供給手段から供給された前記現像剤を帯電させて搬送し、前記静電潜像を現像する現像手段と、前記静電潜像が現像された前記現像剤を、前記被印字粘着テープに転写することによって画像を形成する転写手段と、を、外郭を構成するカートリッジ筐体内に有することを特徴とする。
【0007】
本願発明の現像剤カートリッジは、静電潜像坦持体、貯留手段、供給手段、現像手段、及び転写手段を備えており、印刷装置(いわゆるレーザ印刷装置)の所定部位に装着されて用いられる。すなわち、帯電した静電潜像坦持体の表面に、印刷装置から出力されたレーザービームによって静電潜像が形成される。そして、静電潜像が形成された静電潜像坦持体の表面に対し、(貯留手段から供給手段を経て供給された)現像剤が、現像手段によって帯電しつつ搬送され、これによって静電潜像が現像される。そして、現像された現像剤が転写手段によって転写されることで、所望の画像が形成され、印字済み粘着テープが生成される。ユーザは、所望の長さのこの印字済み粘着テープを適宜の被着体に対し貼り付けることで、例えばラベルや梱包用の封止材として使用する。
【0008】
このとき、上記印字済み粘着テープが、所定の軸心まわりに巻回したロールとして生成される場合があり得る。通常、粘着テープには裏面側に粘着層が備えられることから、上記ロールにおいては、転写層が転写されている部分(以下適宜、「転写層」という)では、転写層と粘着層とがロールの径方向に接する状態となる可能性がある。このとき、転写層の粘着テープへの密着性が小さいと、ロールから印字済み粘着テープが繰り出されて使用されるとき、粘着テープに転写して形成された上記転写層が再び粘着層側へと引き剥がされ、印字(画像)に悪影響を与える恐れがある。
【0009】
また、上記のようにしてロールから粘着テープを繰り出すときの便宜を図るために、粘着テープの表面側に剥離層が設けられる場合がある。このとき、より軽い負荷で粘着層を引き剥がせるようにするために、剥離層は、比較的溶解度パラメータの値が低い材料(例えばオレフィン樹脂系剥離剤若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤等)によって構成される場合がある。本願発明では、上記転写層が上記剥離層へ転写することとなる。このときの転写性を良好にするためには、隣接する上記転写層と剥離層との密着性を増大させる必要があり、そのためには、剥離層の溶解度パラメータの値と転写層の溶解度パラメータの値との差が比較的低いことが好ましい。
【0010】
以上に対応するために、本願発明では、上記現像剤に含まれるバインダー成分として、(通常のレーザープリンタで用いられるもののように溶解度パラメータ値11程度のものを使用せず)溶解度パラメータの値が6以上11未満の比較的低い値のものを採用している。これにより、転写層と剥離層との密着性を増大させることができるので、粘着テープの剥離層への現像剤の転写性を向上し、前述のように現像剤が剥離層から引き剥がされるのを防止することができる。
【0011】
以上のように、本願発明においては、ロールからの繰り出し時に印字に悪影響が生じるのを防止しつつ、転写手段による転写性を向上できる、最適な特性の印字済み粘着テープを実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロールからの繰り出し時に印字に悪影響が生じるのを防止しつつ、トナーの転写性を向上できる、最適な特性の印字済み粘着テープを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係わるテープ印刷装置の外観を表す斜視図である。
図2】テープ印刷装置の内部構造を表す側断面図である。
図3】テープ印刷装置の第1開閉カバー、第2開閉カバー、及び前方側開閉カバーを開けてテープカートリッジ及びトナーカートリッジを取り外した状態を表す斜視図である。
図4】テープカートリッジの全体構成を表す上方からの斜視図である。
図5】トナーカートリッジの全体構成を表す上方からの斜視図である。
図6】トナーカートリッジの内部構造及びその周辺の装置側要素を拡大して表す側断面図である。
図7】テープ印刷装置の制御系の構成を表す機能ブロック図である。
図8】本実施形態の印字済み粘着テープの積層構造を概念的に示す断面図である。
図9】トナーの内部構成を概略的に示す図である。
図10】トナーバインダと剥離剤種類、及び剥離性の良否と溶解度パラメータの大小との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
【0015】
<テープ印刷装置の概略構成>
まず、図1図3を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
【0016】
<筐体>
図1図3において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
【0017】
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
【0018】
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
【0019】
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3状態)までの間で回動可能である。
【0020】
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3の状態)までの間で回動可能である。
【0021】
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
【0022】
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3図4の状態)までの間で回動可能である。
【0023】
<被印字粘着テープロール及びその周辺>
このとき、図2図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字粘着テープロールR1を備えている。
【0024】
すなわち、テープカートリッジTKは、図4に示すように、被印字粘着テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
【0025】
第1ブラケット部20,20は、上記被印字粘着テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字粘着テープロールR1を当該軸心O1まわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字粘着テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
【0026】
被印字粘着テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字粘着テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字粘着テープ150(後述する剥離剤層154、基材層153、粘着剤層152、剥離紙層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1まわりに巻回している。
【0027】
第1収納部3には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字粘着テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字粘着テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字粘着テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字粘着テープ150を繰り出す。
【0028】
本実施形態では、粘着性を備えた被印字粘着テープ150を用いる。すなわち、被印字粘着テープ150は、剥離剤層154(剥離層に相当)、基材層153(テープ基材層に相当)、粘着剤層152(粘着層に相当)、剥離紙層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。剥離剤層154は、後述のトナーカートリッジGK内におけるトナーの現像によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離紙層151は、粘着剤層152を覆う層である。
【0029】
<トナーカートリッジ及びその周辺>
図2図3に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側となる第2所定位置14(所定の装着部位に相当)には、トナーカートリッジGKが上方から着脱可能に装着される。トナーカートリッジGKの詳細構造を図5図6に示す。図5図6に示すように、トナーカートリッジGKの外郭を構成するカートリッジ筐体101の下方には後述の転写ローラ103を収納する凸部101aが形成されており、この凸部101aの前方と後方のそれぞれの側面には幅方向全体に渡ってスリット101bが形成されている(図6参照)。またカートリッジ筐体101の上方の壁部にはドラム窓101cが開口しており、このドラム窓101cを介して内部に収納されている後述の感光ドラム102の上方側面が露出している。当該トナーカートリッジGKを筐体本体2aに装着した際には、被印字粘着テープロールR1から繰り出された被印字粘着テープ150を上記2つのスリット101bに挿通させて凸部101a内を通過させる。なお、このトナーカートリッジGKが、各請求項記載の現像剤カートリッジに相当する。
【0030】
トナーカートリッジGKは、筐体本体2aの内部に設けられた搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して内部の感光ドラム102が所定の回転方向(図2中のD方向)で回転駆動される。これにより、トナーカートリッジGKは、第1収納部3に収納された被印字粘着テープロールR1から繰り出される被印字粘着テープ150を搬送しつつ、剥離剤層154の表面にトナーを転写して画像形成した印字済み粘着テープ150′を作成する。
【0031】
また、筐体本体2aにおける上記第2所定位置14の上方側には、上記トナーカートリッジGKでの画像形成に用いる帯電器41と露光ユニット42が設けられている。また、トナーカートリッジGKを通過して作成された印字済み粘着テープ150′の搬送経路上には、当該搬送経路を上下に挟んで対向する加熱ローラ43と加圧ローラ44が設けられている。なお、トナーカートリッジGK内部の詳細構成と、その周辺の帯電器41、露光ユニット42、加熱ローラ43、及び加圧ローラ44を用いたレーザ印刷工程の詳細については後述する。
【0032】
<剥離紙ロール及びその周辺>
【0033】
図2に示すように、筐体本体2aにおける第2収納部5及び第3収納部4の中間上方側で上記加熱ローラ43と加圧ローラ44を通過した印字済み粘着テープ150′の搬送経路上には、例えば外径の小さいローラで構成される引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字粘着テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済み粘着テープ150′から、剥離紙層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済み粘着テープ150′は、上記引き剥がし部17によって上記剥離紙層151が引き剥がされることで、剥離紙層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済み粘着テープ150″とに分離される。
【0034】
テープカートリッジTKは、図2及び図4に示すように、上記引き剥がされた剥離紙層151が軸心O3まわりに巻回されることで形成される、上記剥離紙ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離紙ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、剥離紙層巻回用の軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、剥離紙ロールR3は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離紙層151を巻き取る。
【0035】
このとき、図4に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離紙ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では剥離紙ロールR3を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
【0036】
また、図4中では、軸心O3まわりに剥離紙層151が巻回され剥離紙ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離紙層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離紙ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
【0037】
<印字済み粘着テープロール及びその周辺>
一方、図2及び図3に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済み粘着テープ150″を順次巻回するための、巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済み粘着テープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻き取り用モータM2により不図示のギア機構を介して駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済み粘着テープ150″を巻き取って積層する。これにより、巻き取り機構40の外周側に印字済み粘着テープ150″が順次巻回されて、印字済み粘着テープロールR2が形成される。
【0038】
<カッター機構>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿って引き剥がし部17の下流側でかつ印字済み粘着テープロールR2の上流側に、カッター機構30が設けられている。
【0039】
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータ(図示せず)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済み粘着テープ150″を幅方向に切断する。
【0040】
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
【0041】
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字粘着テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離紙ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済み粘着テープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
【0042】
このとき、トナーカートリッジGK内の感光ドラム102が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字粘着テープロールR1の回転により繰り出される被印字粘着テープ150が、テープ幅方向を水平方向としたテープ姿勢で前方側へ搬送される。そして、搬送される被印字粘着テープ150の剥離剤層154に対し、トナーカートリッジGK、帯電器41、露光ユニット42、加熱ローラ43、及び加圧ローラ44によるレーザ印刷により所望の印字が形成されて、印字済み粘着テープ150′となる。印字形成された印字済み粘着テープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離紙層151が引き剥がされて印字済み粘着テープ150″となる。引き剥がされた剥離紙層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離紙ロールR3が形成される。
【0043】
一方、剥離紙層151が引き剥がされた印字済み粘着テープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の外周側に巻回されて印字済み粘着テープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済み粘着テープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済み粘着テープロールR2に巻回されていく印字済み粘着テープ150″を切断し、切断後は印字済み粘着テープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。
【0044】
<トナーカートリッジの内部構成及びレーザ印刷工程>
ここで、トナーカートリッジGKとその周辺の装置側要素によるレーザ印刷工程について説明する。図6において、トナーカートリッジGKは上述したように上部にドラム窓101cを有し、下部に凸部101aを有するカートリッジ筐体101と、ドラム窓101cの下方側内部に位置する感光ドラム102と、凸部101aの内部に位置する転写ローラ103と、感光ドラム102の前方側に位置するクリーニングローラ104と、感光ドラム102の後方側に位置する現像ローラ105と、現像ローラ105の後方側に位置する供給ローラ106と、層厚規制ブレード107と、供給ローラ106の後方側に位置するトナー貯留部108とを有している。
【0045】
感光ドラム102は、その外周表面に静電潜像を形成可能な静電潜像担持体としての機能を有し、上述したように搬送用モータM1(図2参照)によりギア機構(図示省略)を介して所定の回転方向(図中のD方向)で回転駆動される。またカートリッジ筐体101の上方側に開口しているドラム窓101cを介して、感光ドラム102の上方側面がテープ印刷装置1側に設けられた帯電器41と露光ユニット42に対して露出している。
【0046】
転写ローラ103(転写手段に相当)は、上記2つのスリット101bを介してカートリッジ筐体101の内部に挿通する被印字粘着テープ150に対し、感光ドラム102と対向して挟み込むように配置されている。
【0047】
クリーニングローラ104は、感光ドラム102の前方側面に接触して回転可能に設置されている。
【0048】
現像ローラ105(現像手段に相当)は、感光ドラム102の後方側面に接触して回転可能に設置され、供給ローラ106(供給手段に相当)は現像ローラ105の後方側面に接触して回転可能に設置されている。
【0049】
層厚規制ブレード107は、上端がカートリッジ筐体101に固定された薄板であり、その下端縁部は現像ローラ105の外周側面に接触している。
【0050】
トナー貯留部108(貯留手段に相当)は、全体が略円筒形状に形成されており、供給ローラ106に対向する一部が開口している。このトナー貯留部108の内部に粉体のトナーTが充填されており、特に図示しない内部の撹拌部材が感光ドラム102と連動して回転することでトナーTを撹拌しつつ供給ローラ106へ供給する。
【0051】
感光ドラム102が回転することで、まず帯電器41によりその外周面が帯電される。次に、露光ユニット42から画像情報に従って変調されたレーザビームLが走査されることで、感光ドラム102の外周面に静電潜像が形成される。
【0052】
一方、トナー貯留部108から供給されたトナーTが供給ローラ106を介して現像ローラ105の外周面に担持され、層厚規制ブレード107によってその層厚さが規制される。感光ドラム102の静電潜像は、現像ローラ105からトナーTが付着されることによってトナー画像として顕像化(現像)される。
【0053】
転写ローラ103には感光ドラム102の電位とは逆電位の転写バイアスが印加されており、この転写ローラ103と感光ドラム102の間を通る被印字粘着テープ150に感光ドラム102のトナー画像が転写される。そして感光ドラム102上に残ったトナーTは、クリーニングローラ104で回収される。
【0054】
トナーカートリッジGKを通過してトナー画像が転写された被印字粘着テープ150は、加熱ローラ43により加熱されるとともに加圧ローラ44により圧着されることでトナー画像が定着する。以上のレーザ印刷工程により、印字済み粘着テープ150′が作成される。
【0055】
以上のようにトナーカートリッジGKは、消費材であるトナーTや、性能が他の構成部品よりも早く劣化する感光ドラム102、現像ローラ105、及び転写ローラ103等を一体的に交換できるようカートリッジ化していることで、メンテナンスの簡易化が図られている。なお本実施形態の例では、このトナー貯留部108がカートリッジ筐体101の一部として一体に形成されているが、これに限られず、消費材であるトナーTを貯留するトナー貯留部108だけがカートリッジ筐体101に対して着脱交換可能に構成してもよい。
【0056】
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
【0057】
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記印字済み粘着テープロールR2を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離紙ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記露光ユニット42の制御を行う露光ユニット制御回路221と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、に接続されている。
【0058】
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラムが記憶されている。RAM213には、例えば不図示のPCから受信した画像データ形式の印刷データを、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータに展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、ROM214に記憶された適宜の制御プログラムによって、搬送ローラ12により被印字粘着テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された印刷データに従って、露光ユニット制御回路221を介し露光ユニット42により当該印刷データに対応したレーザ印刷を行う。
【0059】
<実施形態の特徴>
以上のように本実施形態のテープ印刷装置1は、トナー画像を形成した印字済み粘着テープ150″を巻き取り機構40に巻回し、最終的に印字済み粘着テープロールR2として作成する。印字済み粘着テープ150″の裏面側には粘着剤層152が備えられていることから、上記印字済み粘着テープロールR2においては、図8に示すようにトナー画像(図中ではトナーバインダと表記)が形成されている剥離剤層154上でトナー画像と粘着剤層152とがロールの径方向に接してしまう。このとき、トナー画像の剥離剤層154への密着性が小さいと、印字済み粘着テープロールR2から印字済み粘着テープ150″が繰り出されて使用されるとき、剥離剤層154に形成された上記トナー画像が粘着剤層152側へと引き剥がされ、印字(画像)に悪影響を与える恐れがある。
【0060】
剥離剤層154は、印字済み粘着テープロールR2から印字済み粘着テープ150″を繰り出す際により軽い負荷で粘着剤層152を引き剥がす目的や、印字済み粘着テープ150″がラベルや封止材として使用されるときに表面に汚れやゴミが付着しにくい防汚性を持たせる目的などを考慮して設けられている。このため剥離剤層154は、比較的溶解度パラメータの値(以下適宜、「SP値」という)が低い材料(例えば図示するようなオレフィン樹脂系剥離剤、若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤等)によって構成される場合が多い。このような剥離剤層154に対するトナー画像の転写性を良好とし、逆にトナー画像が粘着剤層152へ転写するのを抑制するためには、隣接するトナー画像の転写層TLと剥離剤層154との密着性を増大させる必要がある。そしてそのためには、トナー画像の転写層TLのSP値と剥離剤層154のSP値との差が比較的低いことが好ましい(図10参照)。
【0061】
以上に対応するために、本実施形態では、トナー中のおよそ80%を占める成分のトナーバインダ(バインダー成分に相当)として、通常のレーザープリンタで用いられるもののようにSP値11程度のものを使用せず、SP値が6以上11未満の比較的低い値のトナーバインダーを採用する。このため、トナー画像と剥離剤層154との密着性を高めることができるとともに、逆にトナー画像と粘着剤層152との密着性を低下させることができる。これにより、トナー画像の剥離剤層154への転写性を向上し、前述のようにトナー画像が剥離剤層154から引き剥がされるのを防止することができる。
【0062】
<トナーと剥離剤層の具体的適用例>
図9は、トナーの内部構成を概略的に示している。粉体であるトナーTの1粒は、図示するように、その内部のほとんど(通常80%程度)の成分が定着剤として機能するトナーバインダTaで占めており、その中にさらに小さい粒子で印字色を決定する成分である着色剤Tbが含まれている。一般的には、着色剤Tbが狭義の意味でのトナーに相当し、トナーバインダTaと着色剤Tbを合わせた全体が広義の意味でのトナーTに相当する場合もある。なお、上記広義のトナーTが各請求項記載の現像剤に相当する。
【0063】
トナー画像の転写層TL(図2中における印字部155と同等)は、剥離剤層154の上記厚さ方向他方側(図2中上側)の表面に形成され、上述したように、所定の受熱と圧着により溶融して剥離剤層154の表面に定着されている。上述したようにトナー(広義のトナー)は、ほとんどの成分がトナーバインダTaで占められており、そのSP値は6以上11未満の、比較的低い値となっている(図10参照)。なお、狭義の意味でのトナーである着色剤Tbについては、後述の転写性や剥離性などに対してあまり影響を与えないため、そのSP値は考慮しなくてよい。
【0064】
剥離剤層154は、基材層153の上記厚さ方向他方側(図2中上側)に設けられ、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤、またはシリコーン系剥離剤)により構成されている。剥離剤層154のSP値は、例えば6以上9以下の、比較的低い値となっている(図10参照)。
【0065】
なお、剥離剤層154を形成する上記オレフィン樹脂系剥離剤としては、結晶性オレフィン系樹脂が使用される。この結晶性オレフィン系樹脂としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0066】
1.エチレン系樹脂(分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)
2.ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独ポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレン−α−オレフィンコポリマー(プロピレン−α−オレフィン共重合体)、なお、立体規則性α−オレフィン系樹脂という表記でもよい。また、上記結晶性オレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。)
【0067】
また、剥離剤層154を形成する上記長鎖アルキル系剥離剤としては、例えば下記のものが挙げられる。
1.長鎖アルキル基含有化合物
長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたもの→側鎖に炭素数8〜30の長鎖アルキル基を有するもの。なお、上記炭素数が8未満となると剥離性能確保が難しい。また、炭素数が30を超えると入手性や取り扱いが困難である。このような剥離性ポリマーには、アルキルイソシアネートを原料成分としたウレタン系ポリマーなどの反応生成物、アクリル系重合体などがある。また、反応生成物は、ポリビニルアルコール系重合体やポリエチレンイミンなどに炭素数8〜30の長鎖アルキル基を有するアルキルイソシアネートを反応させて生成できる。例えば、ポリビニルアルコール系重合体+長鎖アルキルイソシアネート→ポリビニルカーバメート、または、ポリエチレンイミン+長鎖アルキルイソシアネート→アルキル尿素誘導体、等の反応が挙げられる。
【0068】
粘着剤層152は、基材層153の上記厚さ方向一方側(図2中下側)に設けられ、例えばアクリル系粘着剤等の、所定の粘着剤により構成されている。粘着剤層152のSP値は、例えば9より大きく14以下の、比較的高い値となっている。
【0069】
<防汚性の向上>
上記印字済み粘着テープ150″は、上述したように、剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152に対して、レーザ印刷による転写と定着によりトナーバインダTaを多く含む転写層TLが形成されることにより構成されている。そして、ユーザは、前述のようにして第3ロールR3に巻回された印字済み粘着テープ150″を適宜のタイミングで第2収納部5から取り出した後、当該第3ロールR3から所望の長さ分の印字済み粘着テープ150″を繰り出して適宜の被着体に対し貼り付けることで、例えばラベルや梱包用の封止材として使用することができる。このとき、印字済み粘着テープ150″は、剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152、をこの順序で含む積層構造となっている(図2等も参照)。印字済み粘着テープ150″において基材層153の上記厚さ方向一方側(すなわち被着体への貼り付け側と反対側)に比較的SP値の低い剥離剤層154を設けることにより、上記のようにラベルや封止材として使用されるときに表面に汚れやゴミが付着しにくくなり、防汚性を保つことができる。
【0070】
<剥離性の向上>
ここで、上述のように印字済み粘着テープ150″では剥離剤層154、基材層153、及び粘着剤層152をこの順序で含むことから、上記第3ロールR3においては、図8に示されるように、転写層TLが転写されている部分以外では、粘着剤層152は、第3ロールR3の径方向に剥離剤層154と接して粘着した状態となる(図2も参照)。上記剥離剤層154はこの粘着剤層152との粘着を再剥離しやすくすることも目的として設けられている。すなわち、上記のようにして第3ロールR3から印字済み粘着テープ150″が繰り出されるときには、上記粘着剤層152が剥離剤層154から順次引き剥がされて剥離される。そして本実施形態では、このときの剥離性を向上する(より軽い負荷で粘着剤層152を引き剥がせるようにする)ために、剥離剤層154が、SP値が比較的低い(例えば6以上9以下の)、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤、又はシリコーン系剥離剤)によって構成されている(図10参照)。これにより、上記第3ロールR3からの印字済み粘着テープ150″繰り出し時における剥離剤層154からの剥離性を向上することができる。
【0071】
<転写性の向上等>
一方、転写層TLは、図8に示されるように、上記剥離剤層154の上記厚さ方向他方側に隣接して形成される。転写性を良好にするためには、これら隣接する剥離剤層154と転写層TLとの密着性を増大させる必要があり、そのためには、剥離剤層154のSP値とトップ層161のSP値との差が比較的低いことが好ましい(図10参照)。
【0072】
ここで、前述のように、剥離剤層154は、オレフィン樹脂系剥離剤(若しくは長鎖アルキル基を有するアクリル樹脂系剥離剤、又はシリコーン系剥離剤)によって構成されており、比較的SP値が低い。そこで、本実施形態では、転写層TLについても、通常のレーザ印刷に用いられるトナーバインダTaのようにSP値が11程度のものを使用せず、SP値が6以上11未満の比較的低い値のものを採用している(図8及び図10参照)。これにより、転写層TLと剥離剤層154との密着性を増大させ、レーザ印刷によりトナー画像の転写層TLが転写するときの転写性を向上することができる。
【0073】
また、上記のように第3ロールR3として巻回された場合には、既に述べたように、転写層TLが転写されている部分以外では、粘着剤層152と剥離剤層154とが第3ロールR3の径方向に接する状態となる(図2及び図8参照)。上記密着性の観点からは、これら粘着剤層152と剥離剤層154との密着性を減少させる必要があり、そのためには、粘着剤層152のSP値と剥離剤層154のSP値との差が比較的高いことが好ましい。上記のように剥離剤層154のSP値は比較的低いことから、本実施形態では、SP値が比較的高い粘着剤層152が採用される(図8参照)。
【0074】
一方このとき、上記第3ロールR3として巻回された場合には、転写層TLが転写されている部分では、転写層TLと粘着剤層152とが第3ロールR3の径方向に接する状態となる(図2及び図8参照)。上記密着性の観点からは、これら転写層TLと粘着剤層152との密着性を減少させる必要があり、そのためには、転写層TL中のトナーバインダTaのSP値と粘着剤層152のSP値との差が比較的高いことが好ましい(図8及び図10参照)。上記の理由により本実施形態ではSP値が比較的高い粘着剤層152が用いられることから、転写層TLのSP値は比較的低いことが好ましい。そこで、本実施形態では、転写層TLについても、SP値が6以上11未満の比較的低い値のものを採用している(図8及び図10参照)。これにより、転写層TLと粘着剤層152との密着性を減少させることができるので、レーザ印刷により剥離剤層154に転写して形成された転写層TLが粘着剤層152側へと引き剥がされるのを防止することができる。
【0075】
<実施形態の効果>
以上、説明したように、本実施形態のトナーカートリッジGKによれば、トナー(広義)に含まれるトナーバインダTaとして、通常のレーザープリンタで用いられるもののようにSP値11程度のものを使用せず、SP値が6以上11未満の比較的低い値のものを採用している。これにより、トナー画像の転写層TLと剥離剤層154との密着性を増大させることができるとともに、逆にトナー画像と粘着剤層152との密着性を低下させることができる。これにより、トナー画像の剥離剤層154への転写性を向上し、トナー画像が剥離剤層154から引き剥がされるのを防止することができる。以上のように、本実施形態においては、印字済み粘着テープロールR2からの繰り出し時に印字に悪影響が生じるのを防止しつつ、転写性を向上できる、最適な特性の印字済み粘着テープ150″を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態では特に、被印字粘着テープ150は、基材層153と、基材層153の厚さ方向の一方側(図2中の下側)に設けられ所定の粘着剤により構成された粘着剤層152と、基材層153の厚さ方向の他方側(図2中の上側)に設けられた剥離剤層154と、を備えており、トナーカートリッジGKの転写ローラ103は、静電潜像が現像されたトナー(広義)を、被印字粘着テープ150の剥離剤層154に転写する。これにより、比較的SP値が低い材料によって構成される剥離剤層154に対する、トナー画像の転写層TLの転写性を確実に良好にすることができる。
【0077】
なお、以上において、図7等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0078】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0079】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 テープ印刷装置(印刷装置)
41 帯電器
42 露光ユニット
43 加熱ローラ
44 加圧ローラ
101 カートリッジ筐体
102 感光ドラム(静電潜像担持体)
103 転写ローラ(転写手段)
104 クリーニングローラ
105 現像ローラ(現像手段)
106 供給ローラ(供給手段)
107 層厚規制ブレード
108 トナー貯留部(貯留手段)
150 被印字粘着テープ
150′ 印字済み粘着テープ
150″ 印字済み粘着テープ
151 剥離紙層
152 粘着剤層(粘着層)
153 基材層(テープ基材層)
154 剥離剤層(剥離層)
T トナー(現像剤)
Ta トナーバインダ(バインダー成分)
Tb 着色剤
TL 転写層
R3 第3ロール
TK テープカートリッジ
GK トナーカートリッジ(現像剤カートリッジ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10