特許第6229894号(P6229894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6229894食事トレイを温度管理して、配膳する自主管理型ワゴン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229894
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】食事トレイを温度管理して、配膳する自主管理型ワゴン
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20171106BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20171106BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20171106BHJP
   B65D 81/18 20060101ALI20171106BHJP
   F25D 23/12 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F25B17/08 D
   A47B31/00 E
   A47B31/00 H
   A47B31/02 B
   A47B31/02 D
   B65D81/18 Z
   F25D23/12 P
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-549519(P2014-549519)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-509179(P2015-509179A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】FR2012053052
(87)【国際公開番号】WO2013098516
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】1104115
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513098651
【氏名又は名称】コールドウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】リゴー,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】キントバイター,フランシス
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06427761(US,B1)
【文献】 特開平10−213359(JP,A)
【文献】 特開平08−061802(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3019973(JP,U)
【文献】 特表2002−502950(JP,A)
【文献】 実公昭46−023485(JP,Y1)
【文献】 特表平11−500521(JP,A)
【文献】 特表平11−508351(JP,A)
【文献】 実開昭60−037776(JP,U)
【文献】 特開昭62−138665(JP,A)
【文献】 特開平02−146473(JP,A)
【文献】 特表平06−502715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 17/08
F25D 23/12
A47B 31/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食事トレイ(13)を温度管理して、配膳する自主管理型ワゴンであって、
隔離壁(11)で分離された2つの区画、すなわち温区画という加熱する区画(12a)、および冷区画という冷却する区画(12b)を有し、該両区画が少なくとも1つの食事トレイの積層を受け入れ、該食事トレイが、各食事トレイ(13)の一部(13a)が前記温区画(12a)にあって食事トレイの残りの部分(13b)が冷区画(12b)にあるように配置され、前記温区画の加熱および前記冷区画の冷却が、固体の反応物質が入った少なくとも1つの反応装置(15)および液化ガスが入った蒸発器(27、27a、27b)に連結した少なくとも1つのタンク(19)を有するタイプの熱化学システムを用いて同時に実現され、前記反応装置(15)および前記タンク(19)が連通しているとき、前記タンク(1)に入っている前記液状ガスは蒸発し、これによって一定量の熱が吸収される結果、蒸発器側で冷気の生成が起こり、該ガスは前記反応物質に吸収され、これによって発熱性吸収による化学反応が起こり、その結果、前記反応装置(15)は熱の発散源となり、前記反応が終了した時点で、前記反応装置(15)に入っている生成物を再加熱すると、前記反応物質が吸収したガスが解放され、前記解放されたガスは前記蒸発器(27、27a、27b)で凝縮される、ワゴンにおいて、
前記ワゴンは、さらに、2つの対向する食事トレイ(13)の積層を有し、該食事トレイが、各食事トレイ(13)の一部(13a)が前記温区画(12a)にあって食事トレイの残りの部分(13b)が冷区画(12b)にあるように配置され、前記熱化学システムの前記反応装置(15)および前記蒸発器(27、27a、27b)は、それぞれ独占的に前記温区画(12a)および前記冷区画(12b)に配置されること、および前記反応物質は、塩化マンガンおよび膨張天然黒鉛(GNE)を混合圧縮したもので構成され、前記ガスは、アンモニアで構成され、さらに、前記反応装置(15)および前記蒸発器(27、27a、27b)は、前記積層の間に、それぞれが前記温区画(12a)および前記冷区画(12b)に配置されることを特徴とする、ワゴン。
【請求項2】
前記膨張天然黒鉛の仮比重は、50kg/mから150kg/mであることを特徴とする、請求項1に記載のワゴン。
【請求項3】
前記塩化マンガンの前記膨張天然黒鉛に対する質量割合は、50%から90%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のワゴン。
【請求項4】
前記反応装置(15)は、前記熱化学反応を起こす前に予備加熱を実行できる手段を有し、該手段はとりわけ、前記反応装置の周囲に配置した電気バンドヒータであって、とりわけ電力を調節される電気バンドヒータで構成されることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載のワゴン。
【請求項5】
前記熱化学反応を起こす前に前記温区画(12a)を予備加熱する手段を有することを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載のワゴン。
【請求項6】
前記温区画(12a)の前記予備加熱手段は、前記反応装置(15)の予備加熱手段で構成されることを特徴とする、請求項に記載のワゴン。
【請求項7】
前記熱化学システムには、複数の反応装置(15)を利用し、該反応装置の前記予備加熱手段は、該予備加熱手段の全部または一部の動作を操作できる制御手段(26)を用いて操作されることを特徴とする、請求項のうちいずれか一項に記載のワゴン。
【請求項8】
前記反応装置(15)は、筒形状で、対向する食事トレイの積層間に垂直に配置されることを特徴とする、請求項のうちいずれか一項に記載のワゴン。
【請求項9】
前記温区画(12a)と前記冷区画(12b)との間の前記隔離壁(11)は、前記温区画(12a)に配置された前記トレイ(13)の面積(13a)が前記冷区画(12b)に配置されたトレイの面積(13b)のほぼ2倍になるように配置されることを特徴とする、請求項1〜のうちいずれか一項に記載のワゴン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ食事トレイを配膳し、この食事トレイに載った食品を温度管理するためのワゴンに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなワゴンは、飲食分野、とりわけ病院での飲食分野で見られ、このような分野では、とりわけスープ、肉および野菜など、温かいうちに消費すべき食品、および、とりわけ特定の前菜、チーズおよびデザートなど、冷たいままで消費すべき食品の温度を維持する必要がある。
【0003】
我々は、先行技術文献、とりわけ米国特許第4,974,419号明細書(特許文献1)で、加熱手段および冷蔵手段を備えた保管棚であって、両手段が保管棚に入っている食品をそれぞれ保温・保冷でき、そのあとに食品を利用者に配布するという保管棚を利用することを提案した。したがって、我々は、温かいうちに給仕すべきものの温度維持に必要な熱量をもたらすために、例えば電気抵抗を備えるとともに、冷たいまま給仕すべきものの温度維持に必要な冷気をもたらすために、例えばコンプレッサを有する手段を備えているシステムを提案した。
【0004】
このようなシステムは、極めて複雑な性質である上に、熱生成手段および冷気生成手段を追加するために費用がかかる。このほか、これらのシステムは固定されているため、給仕段階では食品の温度を維持できず、その結果、食品が利用者に給仕されるとき、温かい食品は冷たく、冷たい食品は再び温かくなっている。
【0005】
そのため、我々は、とりわけ欧州特許第1,518,486号明細書(特許文献2)で、2つの特定の領域、すなわち温かいうちに消費すべき食品を置く「温領域」、および冷たいままで消費すべき食品を置く「冷領域」を有する食事トレイを提案した。このようなトレイは、2つの内部空間をそれぞれ有する特定の配膳ワゴンに配置され、この空間内で、トレイはラックに積層されて、トレイの温領域全体が「温空間」という加熱された空間になり、トレイの冷領域全体が「冷空間」という冷却された空間になる。しかしながら、この種のワゴンは、食事トレイの配膳段階で食品の加熱および冷却ができなければ、自主管理型ではない。
【0006】
このほか、自主管理タイプの食事トレイを運搬するワゴンが知られている。例えば、仏国特許第2,766,148号明細書(特許文献3)により、食品の温度維持に必要な熱および冷気が、それぞれ2つの異なる熱化学システム、すなわちいわゆる再吸収するタイプ、つまりそれぞれのシステムがとりわけアンモニアなどのガスが入った2つのタンクを利用し、制御弁で連結されている2つの熱化学システムによって供給されるという食事トレイ運搬ワゴンが知られている。
【0007】
このようなシステムは、熱力学面ではあまり効果がなく、このようなワゴンを動作させるのに必要なエネルギーを生成できるようにするためには、提案されている用途の枠組みでは完全に禁止されている体積および重量である熱化学システムが必要になることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,974,419号明細書
【特許文献2】欧州特許第1,518,486号明細書
【特許文献3】仏国特許第2,766,148号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、温空間の熱および冷空間の冷気を同時に自主管理方式で生成できる食事トレイの配膳ワゴンであって、給仕人がこの食事トレイを満足に配膳できるように十分な時間にわたってこの生成を行うワゴンを提供することを目的とする。さらに、食事トレイに載っている温食品の質量が冷食品の質量の約2倍であることがわかっていれば、生成される熱の量は、冷気の量のほぼ2倍でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、食事トレイを温度管理して、配膳する自主管理型ワゴンであって、隔離壁で分離された2つの区画、すなわち温区画という加熱する区画、および冷区画という冷却する区画を有し、両区画が少なくとも1つの食事トレイの積層を受け入れ、食事トレイが、各食事トレイの一部が温区画にあって食事トレイの残りの部分が冷区画にあるように配置され、温区画の加熱および冷区画の冷却が、固体の反応物質が入った少なくとも1つの反応装置および液化ガスが入った蒸発器に連結したタンクを有するタイプの熱化学システムを用いて同時に実現され、反応装置およびタンクが連通しているとき、タンクに入っている液状ガスは蒸発し、これによって一定量の熱が吸収される結果、蒸発器側で冷気の生成が起こり、このガスは反応物質に吸収され、これによって発熱性吸収による化学反応が起こり、その結果、反応装置は熱の発散源となり、反応が終了した時点で、反応装置に入っている生成物を再加熱すると、反応物質が吸収したガスが解放され、反応物質は蒸発器で凝縮される、ワゴンにおいて、熱化学システムの反応装置および蒸発器は、それぞれ独占的に温区画および冷区画に配置されること、および反応物質は、塩化マンガンおよび膨張天然黒鉛(GNE)を混合圧縮したもので構成され、ガスは、アンモニアで構成されることを特徴とする、ワゴンを目的とする。
【0011】
したがって、本出願者は、前述したタイプの独自の熱化学システムが、温区画に必要な熱および冷区画に必要な冷気を一度に同時に供給できることを確認した。
【0012】
実際このようなシステムでは、直接反応の際、つまりタンク内に入っているガスを反応装置に注入したとき、ガスはこのタンクの出口で蒸発し、その結果冷気が生成され、これと同時に、前述の熱化学反応に従って、ガスは反応剤に吸収され、これによって発熱性吸収による化学反応が起こり、その結果、熱が生成される。このような熱は、冷気を生成する公知の熱化学システムに有害で、排除しなければならないものであり、本明細書では食品を加熱するための熱源として利用される。
【0013】
このような熱化学システムを選択すると、温区画に置かれた食品の体積が冷空間に置かれた食品の体積のほぼ2倍であることがわかっているとき、この熱化学システムによって生成された熱の量が冷気の量のほぼ2倍であれば、特に有益であることがわかる。そのために、温区画と冷区画との間の分離壁は、温区画に配置されるトレイの面積が冷区画に配置されるトレイの面積のほぼ2倍になるように配置される。
【0014】
本出願者は、アンモニアをガスとして選択し、膨張天然黒鉛などの熱膨張性の結合剤と混合圧縮した塩化マンガンを反応剤として選択することで最良の結果が得られ、反応剤の仮比重は、好ましくは50kg/mから150kg/mであり、塩化マンガンの膨張天然黒鉛に対する質量割合は、好ましくは50%から90%であることを確認した。
【0015】
このような条件では、冷区画の温度を4℃未満にし、温区画の温度を63℃超にすることができ、これは、この種の用途でみられる温度に相当する。
【0016】
本発明によれば、本ワゴンは、2つの対向する食事トレイの積層を有し、反応装置および蒸発器は、この積層の間に、それぞれが温区画および冷区画に配置される。
【0017】
出力を増大させるために、反応装置は、熱化学反応を起こす前に予備加熱を実行できる手段を有することができ、この手段を、反応装置の周囲に配置した電気バンドヒータであって、とりわけ電力を調節される電気バンドヒータで構成することができる。
【0018】
このほか、本ワゴンは、熱化学反応を起こす前に温区画を予備加熱する手段を有することができる。このような予備加熱手段を、本発明の一実施変形例では、反応装置の予備加熱手段で構成することができる。
【0019】
熱化学システムは、複数の反応装置を利用できるものであり、これらの反応装置の予備加熱手段は、該予備加熱手段の全部または一部の動作を操作できる制御手段を用いて操作されてよい。
【0020】
反応装置は、筒形状で、対向する食事トレイの積層の間に垂直に配置されることが好ましい。
【0021】
以下、非限定的な例として、添付の図面を参照して本発明の複数の実施形態を説明していく。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるワゴンの斜視図である。
図2図1に示したワゴンの斜視図であり、アクセスドアのうちの1つが開位置にある図である。
図3図1および図2に示したワゴンの斜視図であり、筐体を取り除いた図である。
図4】本発明によるワゴンに実装した熱化学システムの概略図である。
図5】本発明によるワゴンに使用した熱化学システムの動作を説明しているグラフである。
図6】本発明によるワゴンの斜視図であり、熱化学システムのタンクの側面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図4には、病院での食事トレイの保管および配膳を目的としたワゴン1を示し、このワゴンは、食事トレイの一部を保温でき、食事トレイの残りの部分を保冷でき、これは、食事トレイを患者に配膳する段階を通して持続される。
【0024】
このワゴン1は、長方形の支持フレーム3で構成され、この支持フレームは、車輪5の上に取り付けられ、2つの逆向きのドア9からアクセスできる2つのケース7を形成する構造を支持する。2つのケース7はそれぞれ、長手方向に隔離壁11で分離されて、一方の側に「温区画」12aという区画を形成し、もう一方の側に「冷区画」12bという区画を形成している。
【0025】
この温区画および冷区画の内部にあるラックに食事トレイ13をスライド式に積層して取り付け、各食事トレイの一部13aを温区画12aに配置し、残りの部分13bを冷区画12bに配置するようにする。そのために、隔離壁11には、各食事トレイ13の高さに、ラックに食事トレイを設置するためのスリット14を設けるとともに、温区画と冷区画との2区画間で熱交換が起こらないように、トレイに当接する弾性気密ジョイントを設ける。
【0026】
本発明のこの実施形態では、温区画12aに配置した2つの食事トレイの積層間に、温空間という空間17aを設けた。この温空間は、4つの筒状の反応装置15で形成された熱化学システムの熱源を受け入れるようになっていて、反応装置は、この空間に垂直に配置されて熱をトレイの積層の方へうまく放散するようにする。同じように、冷区画12bに配置した2つの食事トレイの積層間には、冷空間という空間17bを設けた。この冷空間は、アンモニアタンク19および蒸発器27で形成された熱化学システムの冷源を受け入れるようになっていて、蒸発器は、この空間に垂直に配置されて冷気をうまく放散するようにする。
【0027】
本出願人は、このように加熱手段および冷却手段を直接それぞれ温区画および冷区画に配置することで、この2区画で起こる熱交換を大幅に改善して食品の加熱および冷却をそれぞれ均質に実現できる方法を確立した。
【0028】
図4の原理図に示した熱化学システムは、4つの反応装置15を備え、この反応装置はそれぞれ、膨張天然黒鉛からなる膨張性結合剤と混合して圧縮した塩化マンガンで構成した反応剤を収容し、この反応剤の仮比重は、好ましくは50kg/mから150kg/mであり、塩化マンガンの膨張天然黒鉛に対する質量割合は、好ましくは50%から90%である。
【0029】
これらの反応装置15は、制御弁23および凝縮器25の制御を受けて、アンモニアからなる特定のガスが貯蔵されているタンク19と連通していて、このタンクは蒸発器27と連通している。
【0030】
反応剤およびガスは、反応剤が、発熱性の熱化学反応によって、いわゆる動作段階で、ガスを吸収して反応生成物を生成でき、その後、反応生成物を加熱したときに、逆の熱化学反応によって、いわゆる再生段階で、ガスを放出できるというものである。
【0031】
したがって、反応装置(15)およびタンク(19)が連通しているとき、タンク(15)内に入っている液状ガスは蒸発し、これによって一定量の熱が吸収される結果、蒸発器側で冷気の生成が起こり、このガスは反応物質に吸収され、これによって発熱性吸収による化学反応が起こり、その結果、反応装置(15)は熱の発散源となる。反応が終了した時点で、反応装置(15)に入っている反応生成物を再加熱すると、反応物質が吸収したガスが解放され、反応物質は蒸発器(27、27a、27b)で凝縮される。
【0032】
この種の熱化学システムは公知のものであり、様々な塩およびガスを用いて実施できる。本発明によれば、可能性のある様々な塩とガスとの組み合わせのなかから、本用途に特に有効な塩とガスとの組み合わせを選択した。つまりこれは、塩化マンガンおよびアンモニアであり、上記で明らかにしたように、塩を膨張天然黒鉛からなる膨張剤と混合した。その密度は、好ましくは50kg/mから150kg/mである。
【0033】
図5には、このような熱化学システムの動作のグラフを示した。このグラフからわかるのは、この熱化学システムの動作段階では、蒸発温度Teは−8℃であり、これによって冷区画12b内の温度を4℃未満にすることができ、凝縮器の温度Tcは110℃であり、これによって温区画12a内の温度を少なくとも63℃にすることができるということである。したがって、本発明によるワゴンにより、ワゴンに入っている食品をその原料にふさわしいそれぞれの温度で加熱・冷却することができる。
【0034】
トレイを配膳した時点で、熱化学システムの再生段階に進み、図5のグラフに示したように、反応装置15に入っている反応生成物を175℃の温度Trで再加熱する。これには例えば、以下で詳述するように電子管理手段26で制御した状態で、これらの反応装置の周囲に配置した電気バンドヒータを用いる。
【0035】
図4および図6に示したように、ガスのタンクは、冷区画12bの冷空間17bの上部に配置されている2つの容器(19)で構成され、蒸発器27は、2つの部材27aおよび27bで形成され、この両部材は、容器の下にトレイの積層に沿って垂直に広がり、生成した冷気を窓29bを介してトレイに放散でき、窓は、仕切り31bに開いていて、食事トレイに放散される冷気流を制御することができる。
【0036】
蒸発器23の下には、ワゴンが電源から切断された場合に制御用電子機器に給電できるバッテリなどの電子管理手段26を配置した。
【0037】
4つの反応装置15は、食事トレイの積層の高さに概ね沿って、温区画12aの温空間17aに垂直に配置されていて、熱化学システムの動作段階時に、窓29aを介して供給された熱を食事トレイに放出することができ、窓は、仕切り31aに設けられて、食事トレイへ放散される熱流を制御することができる。
【0038】
このほか、温区画で生成される熱と再加熱する食品との間で起きる熱交換を促進するとともに、冷区画で生成される冷気と冷却する食品との間で起きる熱交換を促進するために、ファン33aが、反応装置15が生成した温風を引き出し、この温風を図示していない特定の導管を介して循環させて、温区画12aのトレイ間の各スペースに窓29aから通す。
【0039】
同じように、ファン33bが、蒸発器27の部材27aおよび27bで生成された冷風を引き出し、この冷風を冷区画12bのトレイ間の各スペースに窓29bを介して循環させる。
【0040】
本発明によれば、反応装置をまだ使用していないとき、つまり熱化学システムを動作させる前に、反応装置15を予備加熱することができる。このような措置を講じることで、システムが自主管理性を得られるとともに、室温から指定温度までの温度上昇段階を省略することができる。
【0041】
このようにするために、有益には、反応装置15に付属の加熱手段であって、とりわけ電気スリーブヒータまたは電気バンドヒータなど、電子管理手段26を用いて電力を操作、調節できる加熱手段を設置することができる。
【0042】
本発明によれば、反応装置の全体または一部のみに予備加熱を作用させることができる。したがって、予備加熱していない反応装置は、アンモニア吸収力がより大きくなり、これによって蒸発力をより強くすることができ、その結果、冷気生成がより迅速になり、これは特に、熱化学システムを温度管理する際に有益である。
【0043】
また、本発明の一実施変形例では、ワゴンを使用していないとき、つまり例えば食事トレイに食品を載せている間、またはこの作業の前に、温区画12aを予備加熱できる熱生成手段を備えることもできる。このような予備加熱は、例えば反応装置の予備加熱手段により実現でき、とりわけ反応装置がバンドヒータまたはスリーブヒータで構成されている場合はこのようにできる。
【0044】
温度が25℃の場所では、本発明によるワゴンを使用して、以下の動作サイクルを実施して、一日全体の食事の温度を維持して患者に給仕することができた。
【0045】
【表1】
【0046】
このように本発明により、先行技術のワゴンとは逆に、一日全体にわたって完全に自主管理型の動作を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6