(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電線巻取装置の上面図である。
図2は、電線巻取装置の側面図である。なお、
図1および
図2では、鉛直上方向を+Z軸方向とし、このZ軸と直交する2軸をX,Y軸として説明する。以下の図面においても同様である。
【0031】
電線巻取装置1は、
図1および
図2に示すように、X軸回りに回転自在に設けられた回転体2と、回転体2を回転させる回転駆動部3と、回転体2の−Y軸方向側に設けられるとともに、回転体2の軸方向(X軸方向)に沿って延在するガイドユニット4と、ガイドユニット4に載置されるとともに、ガイドユニット4に沿って移動するトラバーサ5とを備えている。
また、電線巻取装置1は、回転駆動部3を載置する箱体61およびガイドユニット4を載置する箱体62を組み合わせて構成された筐体6を備えている。
【0032】
図3は、回転体の断面を拡大して示す図である。具体的には、
図3は、回転体2の中心軸を通るXY平面にて切断した回転体2の断面を示す図である。
回転体2は、
図1〜
図3に示すように、円柱軸状のシャフト21と、シャフト21の−X軸方向側に取り付けられた第1フランジ部22と、シャフト21の+X軸方向側に取り付けられた第2フランジ部23と、シャフト21の外周面に沿うようにして設けられた6枚の板状部材24と、6枚の板状部材24うち、1枚の板状部材24に設けられた円柱状の保持機構25とを備えている。
【0033】
シャフト21は、回転駆動部3の出力軸31に接続されている。このシャフト21は、出力軸31の回転に伴ってX軸回りに回転する。
第1フランジ部22は、YZ平面上にシャフト21を中心として放射状に取り付けられた略矩形板状の6枚の第1羽根部材22Aを備えている。
第2フランジ部23は、第1羽根部材22Aと対応する位置に取り付けられるとともに、YZ平面上にシャフト21を中心として放射状に取り付けられた略矩形板状の6枚の第2羽根部材23Aを備えている。6枚の羽根部材23Aのうち、1枚の羽根部材23Aは、回転駆動部3の代わりに回転体2を回転させることができるハンドル23A1を備えている。
板状部材24は、シャフト21の外周面に沿うようにして設けられるとともに、第1羽根部材22Aおよび第2羽根部材23Aの間のそれぞれに設けられている。
【0034】
図4は、板状部材および保持機構を示す拡大斜視図である。
この板状部材24は、
図4に示すように、略矩形板状に形成されている。具体的には、板状部材24は、シャフト21側に位置するとともに、回転体2の幅方向(X軸方向)に長手方向を有する矩形平面状の底面部24Aと、底面部24Aと平行な上面部24Bとを有している。この上面部24Bは、回転体2の周方向の両側のそれぞれに形成された傾斜面24B1を有している。これによって、6枚の板状部材24の上面部24Bは、全体として円柱軸状の外周面のようになっている。
【0035】
したがって、本実施形態では、板状部材24は、中心軸回りに回転自在に設けられた円柱軸状の回転体2の外周面として機能している。
なお、本実施形態では、6枚の板状部材24を回転体2の外周面として機能させていたが、回転体2の外周面は一体的に形成されていてもよい。要するに、電線巻取装置は、中心軸回りに回転自在に設けられた円柱軸状の回転体の外周面に沿って電線を巻き取ることができればよい。
【0036】
図5は、保持機構の断面を示す図である。具体的には、
図5(A)は、保持機構25の中心軸を通るように板状部材24の短手方向に沿って保持機構25を切断した断面を示す図である。また、
図5(B)は、保持機構25の中心軸を通るように板状部材24の長手方向に沿って保持機構25を切断した断面を示す図である。
【0037】
保持機構25は、
図4および
図5に示すように、板状部材24の上面部24Bに起立して設けられた円柱状の軸体251と、軸体251を内部に収容するとともに、軸体251の軸方向に沿ってスライド自在に設けられた円筒状の筒状体252と、軸体251の板状部材24側の端面に固定された矩形板状のストッパ253と、板状部材24の底面部24Aから露出して設けられた2つのボールプランジャ254とを備えている。
【0038】
軸体251は、軸方向と直交する方向に貫通して取り付けられた円柱状のピン251Aと、ピン251Aよりも板状部材24側に形成されるとともに、ピン251Aの中心軸と平行な中心軸を有し、軸体251の軸方向と交差する方向に沿って軸体251を貫通するように形成された断面円形状の穴部251Bと、板状部材24の上面部24Bに当接するフランジ部251Cと、板状部材24に形成された貫通穴24Cに嵌合するとともに、フランジ部251Cよりも小径に形成された円柱状の嵌合部251Dとを有している。
【0039】
筒状体252は、中心軸に沿って長手方向を有するように形成されるとともに、ピン251Aと係合する長穴252Aと、長穴252Aよりも板状部材24側に形成されるとともに、ピン251Aの中心軸と平行な中心軸を有し、軸体251の軸方向と交差する方向に沿って筒状体252を貫通するように形成された断面円形状の穴部252Bと、筒状体252の内部に設けられるとともに、板状部材24の上面部24Bから離間させる方向に筒状体252を付勢する付勢部材としてのバネ252Cとを備えている。
【0040】
図6は、筒状体を押圧した状態の保持機構の断面を示す図である。具体的には、
図6(A)は、保持機構25の中心軸を通るように板状部材24の短手方向に沿って保持機構25を切断した断面を示す図である。また、
図6(B)は、保持機構25の中心軸を通るように板状部材24の長手方向に沿って保持機構25を切断した断面を示す図である。
【0041】
この筒状体252は、
図6に示すように、押圧することによって、板状部材24の上面部24Bに近接させる方向にスライドさせることができ、押圧を除去することによって、バネ252Cにて付勢されて板状部材24の上面部24Bから離間させる方向にスライドすることができる(
図5参照)。
【0042】
ここで、板状部材24の上面部24Bに近接させる方向にスライドできる範囲は、軸体251のフランジ部251Cと、筒状体252との当接によって規制されている。また、板状部材24の上面部24Bから離間させる方向にスライドできる範囲は、軸体251のピン251Aと、筒状体252の長穴252Aとの当接によって規制されている。したがって、筒状体252は、軸体251の軸方向に沿って所定の距離だけスライド自在に設けられている。
また、軸体251の穴部251Bおよび筒状体252の穴部252Bは、筒状体252を板状部材24の上面部24Bに向かってスライドさせたときに連通する位置に形成されている。
【0043】
図7は、保持機構にて電線を保持した状態を示す断面図である。具体的には、
図7は、保持機構25の中心軸を通るように板状部材24の短手方向に沿って保持機構25を切断した断面を示す図である。
したがって、保持機構25は、筒状体252を押圧することによって、板状部材24の上面部24Bに向かってスライドさせて軸体251の穴部251Bおよび筒状体252の穴部252Bを連通させた後、この穴部251B,252Bに電線EWの端部を挿入し、筒状体252の押圧を除去することによって、
図7の矢印に示すように、板状部材24の上面部24Bから離間させる方向にスライドさせて回転体2の板状部材24に仮固定することができるようになっている。
【0044】
ストッパ253は、長手方向の両端部に円錐状に形成された2つの溝部253Aを有する矩形板状の部材である。このストッパ253は、軸体251の嵌合部251Dにおける板状部材24側の端面に2本のネジ253Bを介して固定されている。
【0045】
図8は、板状部材の底面部側からストッパを見た図である。具体的には、
図8(A)は、保持機構25を板状部材24の貫通穴24Cに挿入した状態を示す図である。
図8(B)は、保持機構25を板状部材24に取り付けた状態を示す図である。
貫通穴24Cは、
図8に示すように、軸体251の嵌合部251Dおよびストッパ253を重ね合わせた形状になっているので、軸体251の嵌合部251Dおよびストッパ253を板状部材24に形成された貫通穴24Cに挿入した後(
図8(A)参照)、
図8(B)の矢印に示すように、軸体251を中心軸回りに回転させることによって、板状部材24から軸体251を抜けないようにすることができる。この際、ストッパ253の各溝部253Aは、各ボールプランジャ254と嵌合し、軸体251を板状部材24にロックすることができるようになっている(
図7参照)。
【0046】
したがって、保持機構25は、板状部材24の上面部24Bに着脱自在に設けられるとともに、電線EWを保持することができる。
なお、本実施形態では、保持機構25は、回転体の外周面に着脱自在に設けられていれば、これ以外の機構を採用してもよい。
【0047】
ここで、第1羽根部材22Aは、回転体2の幅方向に所定の厚さを有し、板状部材24の一部を覆うようにして設けられている。
図4は、この第1羽根部材22Aに覆われた板状部材24の領域の境界線を一点鎖線にて示している。そして、板状部材24に形成された貫通穴24Cは、第1羽根部材22Aおよび第2羽根部材23Aの略中央位置に形成されている(
図4参照)。したがって、保持機構25は、回転体2の中心軸方向の中央位置に着脱自在に設けられている。
なお、第1羽根部材22Aは、回転体2の中心軸に沿って進退自在に構成されているので、第1羽根部材22Aおよび第2羽根部材23Aの間隔は調整可能となっている。
また、本実施形態では、保持機構25は、板状部材24に形成された貫通穴24Cに固定するように構成されていたが、回転体2の中心軸に沿って進退自在に構成されていてもよい。
【0048】
シャフト21は、
図3に示すように、シャフト本体211と、X軸方向に沿って摺動自在にシャフト本体211に取り付けられた外筒212とを備えている。この外筒212は、前述した第2フランジ部23を支持している。
板状部材24は、−X軸方向側の一端を中心として回動自在となるように第1フランジ部22にバネ部材221を介して取り付けられている。また、板状部材24は、+X軸方向側の他端を中心として回動自在となるように第2羽根部材23Aの基端部(基端よりも僅かに先端側に位置する部位)にヒンジ部23A2を介して取り付けられている。
第2羽根部材23Aは、基端を中心として回動自在となるように第2フランジ部23にヒンジ部231を介して取り付けられている。
【0049】
図9は、折り畳んだ状態の回転体の断面を拡大して示す図である。具体的には、
図9は、回転体2の中心軸を通るXY平面にて切断した回転体2の断面を示す図である。
回転体2は、
図9に示すように、第2羽根部材23Aの先端をシャフト21側に寄せるようにして折り畳むことができる(図中矢印A参照)。
第2羽根部材23Aの先端をシャフト21側に寄せるようにして折り畳むことによって、外筒212および第2フランジ部23は、シャフト本体211に沿って−X軸方向側に移動する(図中矢印B参照)。また、板状部材24は、+X軸方向側の他端をシャフト21側に引き寄せられて−X軸方向側の一端を中心として回動する(図中矢印C参照)。
【0050】
ガイドユニット4は、
図1および
図2に示すように、X軸方向に沿って延在するとともに、Y軸方向の両側のそれぞれに設けられた2本の円柱状のストロークシャフト41と、X軸方向に沿って延在するとともに、各ストロークシャフト41の間に設けられた1本のボールねじ42と、ボールねじ42を回転させるモータ43(
図1参照)とを備えている。
なお、
図1および
図2は、ガイドユニット4およびトラバーサ5を切断した断面を示している。
【0051】
トラバーサ5は、X軸方向に沿って摺動自在にストロークシャフト41に載置されるとともに、ボールねじ42に螺合されるスライダ51と、スライダ51の−Y軸方向側に設けられた2本の入口側トラバーサローラ52と、スライダ51の+Y軸方向側に設けられた4本の出口側トラバーサローラ53と、入口側トラバーサローラ52および出口側トラバーサローラ53の間に設けられた計尺ベルト54と、計尺ベルト54の+Z軸方向側に設けられた3本の圧力ローラ55とを備えている。
【0052】
スライダ51は、モータ43にてボールねじ42を回転させることによって、X軸方向に沿って移動することができる。換言すれば、トラバーサ5は、モータ43にてボールねじ42を回転させることによって、X軸方向に沿って移動することができる。
入口側トラバーサローラ52および出口側トラバーサローラ53は、Z軸回りに回転自在となるようにスライダ51に取り付けられている。また、入口側トラバーサローラ52は、Y軸方向の両側に一対となるように取り付けられている。出口側トラバーサローラ53は、Y軸方向の両側に二対(−Y軸方向側の一対および+Y軸方向側の一対)となるように取り付けられている。なお、一対の入口側トラバーサローラ52および二対の出口側トラバーサローラ53は、その間隔を調整できるよう構成されている。
【0053】
計尺ベルト54は、X軸回りに回転自在となるようにスライダ51に取り付けられた2本の計尺ローラ541と、各計尺ローラ541に巻き回されたベルト本体542とを備えている。この計尺ベルト54は、計尺ローラ541に取り付けられたエンコーダ(図示略)を備え、エンコーダの計測結果に基づいて、ベルト本体542の移動量を算出できるようになっている。
圧力ローラ55は、X軸回りに回転自在となるようにスライダ51に取り付けられている。なお、圧力ローラ55は、Z軸方向に沿って昇降自在となるようにスライダ51に取り付けられている。したがって、計尺ベルト54および圧力ローラ55は、その間隔を調整できるように構成されている。
【0054】
このトラバーサ5は、電線EWを一対の入口側トラバーサローラ52の間から二対の出口側トラバーサローラ53の間に通すとともに、計尺ベルト54および圧力ローラ55の間を通すことによって、電線EWを案内している。
ここで、前述したように、一対の入口側トラバーサローラ52および二対の出口側トラバーサローラ53の間隔や、計尺ベルト54および圧力ローラ55の間隔は、調整できるよう構成されているので、トラバーサ5は、電線EWの太さに応じた間隔に調整することによって、電線EWを確実に案内することができる。
そして、トラバーサ5にて案内された電線EWは、その端部を保持機構25に保持させることによって、回転体2の板状部材24に仮固定される。
【0055】
本実施形態の電線巻取装置1は、回転駆動部3にて回転体2を回転させることによって、中心軸回りに回転自在に設けられた円柱軸状の回転体2の外周面に沿って電線EWを巻き取ることができる。
この際、トラバーサ5は、回転体2の軸方向に沿って移動するとともに、電線EWを案内することによって、回転体2に対する電線EWの巻き取り位置を規定している。
また、保持機構25は、巻き取りを開始する電線EWの端部を保持している。
【0056】
図10は、電線巻取装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
電線巻取装置1は、前述したように、回転体2、およびトラバーサ5などを備えている他、
図10に示すように、回転駆動部3を介して回転体2を制御するとともに、トラバーサ5を制御する制御手段7を備えている。この制御手段7は、前述した筐体6(
図1,2参照)の内部に収納されている。
【0057】
制御手段7は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどによって構成され、このメモリに記憶された所定のプログラムに従って情報処理を実行する。この制御手段7は、往復周期設定部71と、回転制御部72と、往復制御部73とを備えている。
往復周期設定部71は、回転体2に対してトラバーサ5を移動させて往復させる往復周期を設定する。具体的には、往復周期設定部71は、回転体2の回転周期と、トラバーサ5の往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定する。
回転制御部72は、回転駆動部3にて回転体2を所定の回転周期にて回転させる。具体的には、回転制御部72は、操作パネル(図示略)を介して使用者に入力された所定の回転周期にて回転体2を回転させる。
往復制御部73は、モータ43にてボールねじ42を回転させてトラバーサ5をX軸方向に沿って移動させることによって、トラバーサ5を往復周期設定部71にて設定された往復周期にて往復させる。
【0058】
以下、トラバーサ5の移動幅Wを90mmとし、トラバーサ5のピッチ(回転体2の一回転当たりのトラバーサ5の移動幅)Pを80mmとした場合を例示して説明する。なお、この場合には、所定の回転周期を1sとすれば、トラバーサ5の往復周期の半周期は80/90sとなるので、往復周期設定部71は、回転体2の回転周期と、トラバーサ5の往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定していることになる。
【0059】
図11は、回転体の外周面と、回転体の外周面に巻き取られる電線との関係を示すグラフである。具体的には、
図11は、トラバーサ5の移動幅Wを縦軸とし、回転体2の外周面の位置(回転角θ)を横軸としたグラフである。
図12は、回転体の外周面と、回転体の外周面に巻き取られる電線との関係を示す模式図である。具体的には、
図12は、回転体2の外周面を中心軸に向かって見た図である。
なお、本実施形態では、回転体2の外周面は、6枚の板状部材24にて構成されているが、
図12では、回転体2の外周面は、理想的な周面であるものとして表現する。
【0060】
また、本実施形態では、巻き取りを開始する電線EWの端部を保持する保持機構25は、回転体2の中心軸方向の中央位置に着脱自在に設けられているので、トラバーサ5の移動幅W=45mmの位置を起点として巻き取りを開始することになるが、説明を簡略化するために、
図11および
図12では、トラバーサ5の移動幅W=0mmの位置を起点として巻き取りを開始する場合について説明する。
【0061】
トラバーサ5の移動幅W=0mmの位置を起点とし、回転体2の回転と、トラバーサ5の往復とを同時に開始した場合には、電線EWは、
図11および
図12に示すように、回転体2の回転角θ=360度となったときに、トラバーサ5の移動幅W=80mmの位置に至る経路R1を通って巻き回される(
図11中実線参照)。
2回転目の回転では、電線EWは、回転体2の回転角θ=45度となったときにトラバーサ5の移動幅W=90mmの位置に至った後、折り返して回転体2の回転角θ=360度(720度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=20の位置に至る経路R2を通って巻き回される(
図11中鎖線参照)。
【0062】
3回転目の回転では、電線EWは、回転体2の回転角θ=90度となったときにトラバーサ5の移動幅W=0の位置に至った後、折り返して回転体2の回転角θ=360度(1080度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=60の位置に至る経路R3を通って巻き回される(
図11中一点鎖線参照)。
4回転目の回転では、電線EWは、回転体2の回転角θ=135度となったときにトラバーサ5の移動幅W=90の位置に至った後、折り返して回転体2の回転角θ=360度(1440度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=40の位置に至る経路R4を通って巻き回される(
図11中二点鎖線参照)。
これを繰り返すことによって、電線巻取装置1は、所定の長さの電線EWを回転体2の外周面に巻き取っている。
【0063】
ここで、往復周期設定部71は、回転体2の回転周期と、トラバーサ5の往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定しているので、電線EWの交差位置X12,13,14,23,24,34は、回転体2の外周面の周方向および幅方向に亘って複数の位置に分散していくことになる。
具体的には、X12は、1回転目に巻き取られた電線EWと、2回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X13は、1回転目に巻き取られた電線EWと、3回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X14は、1回転目に巻き取られた電線EWと、4回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。また、X23は、2回転目に巻き取られた電線EWと、3回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X24は、2回転目に巻き取られた電線EWと、4回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。さらに、X34は、3回転目に巻き取られた電線EWと、4回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。
【0064】
図13は、電線巻取装置の制御方法を示すフローチャートである。
図14は、電線巻取装置にて回転体の外周面に沿って電線を巻き取っている状態を示す図である。
電線巻取装置1にて回転体2の外周面に沿って電線EWを巻き取る場合には、制御手段7は、
図13に示すように、ステップS1〜S6の電線巻取処理を実行する。
【0065】
まず、使用者は、
図14(A)に示すように、電線EWをトラバーサ5に通した後、電線EWの端部を保持機構25に保持させることによって、回転体2の板状部材24に仮固定する。また、使用者は、操作パネル(図示略)を介して所定の回転周期などの情報を入力する。制御手段7は、使用者に入力された所定の回転周期などの情報をメモリに記憶し、これを初期設定とする(S1:初期設定ステップ)。
【0066】
次に、往復周期設定部71は、回転体2に対してトラバーサ5を移動させて往復させる往復周期を設定する(S2:往復周期設定ステップ)。
ここで、往復周期設定部71は、操作パネル(図示略)を介して使用者に入力された所定の回転周期に基づいて、往復周期を自動的に設定してもよく、操作パネル(図示略)を介して使用者に入力された情報に基づいて、往復周期を設定してもよい。要するに、往復周期設定部71は、回転体2の回転周期と、トラバーサ5の往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定すればよい。
例えば、往復周期設定部71は、前述したように、所定の回転周期を1sに設定し、トラバーサ5の往復周期の半周期を80/90sに設定することができる。
【0067】
所定の回転周期および往復周期を設定した後、回転制御部72は、回転駆動部3にて回転体2を所定の回転周期にて回転させる(S3:回転制御ステップ)。また、往復制御部73は、トラバーサ5を往復周期設定部71にて設定された往復周期にて往復させる(S4:往復制御ステップ)。これによって、電線巻取装置1は、
図14(B)に示すように、回転体2の外周面に沿って電線EWの巻き取りを開始する(図中矢印参照)。ここで、往復制御ステップS4にてトラバーサ5の往復を開始するタイミングは、回転制御ステップS3にて回転体2の回転を開始するタイミングと同時になっている。
【0068】
なお、本実施形態では、回転制御ステップS3を実行した後、往復制御ステップS4を実行しているが、これとは逆に往復制御ステップS4を実行した後、回転制御ステップS3を実行してもよく、回転制御ステップS3および往復制御ステップS4を同時に実行してもよい。
【0069】
回転体2の回転およびトラバーサ5の往復を開始した後、制御手段7は、電線EWの巻き取りを終了するか否かを判定する(S5:巻取終了判定ステップ)。この巻取終了判定ステップS5では、制御手段7は、計尺ベルト54のベルト本体542の移動量に基づいて回転体2に巻き取られた電線EWの長さを計測する。そして、制御手段7は、操作パネル(図示略)を介して使用者に予め入力された長さを回転体2に巻き取られた電線EWの長さが超えた場合に電線EWの巻き取りを終了すると判定し、超えていない場合に電線EWの巻き取りを終了しないと判定する。
【0070】
巻取終了判定ステップS5にて電線EWの巻き取りを終了すると判定した場合には、制御手段7は、回転体2の回転およびトラバーサ5の往復を停止する(S6:巻取終了ステップ)。
なお、巻取終了判定ステップS5にて電線EWの巻き取りを終了しないと判定した場合には、制御手段7は、巻取終了判定ステップS5を再び実行する。
【0071】
ここで、電線巻取装置1にて巻き取られた巻取電線10は、
図14(C)に示すように、保持機構25を避けて巻き取られている。保持機構25は、円柱状に形成されているので、電線EWは重なることなく側方の領域へと逃げていくからである。
その後、使用者は、板状部材24から保持機構25を取り外すことによって、保持機構25の存在していた開口部101を介して電線EWの端部を引き出すことができる。
【0072】
そして、使用者は、回転体2およびトラバーサ5の間に架け渡された電線EWをカッター(図示略)にて切断した後、回転体2の第2羽根部材23Aの先端をシャフト21側に寄せるようにして折り畳むことによって(
図9参照)、電線巻取装置1から巻取電線10を取り外すことができる。
【0073】
図15は、中心軸を通る平面にて巻取電線を切断した断面を示す図である。
巻取電線10は、
図15に示すように、電線巻取装置1にて巻き取られたことによって、巻取電線10の周方向および幅方向に亘って複数の位置に電線EWの交差位置を有し、前述した開口部101に挿入されたソケット102と、巻取電線10を包装するシュリンクフィルム103とを備えている。
【0074】
ソケット102は、巻取電線10の外側に向かうにしたがって拡径する円錐台状に形成されるとともに、その内部に電線EWの端部を挿入可能な筒状に形成されている。使用者は、巻取電線10の使用に際してソケット102を介して電線EWを引き出すことができる。
シュリンクフィルム103は、巻取電線10の外周面から両側面を介して内周面の一部を覆うようにして巻取電線10を包装している。このシュリンクフィルム103は、加熱することによって収縮し、巻取電線10を包装することができる。
なお、本実施形態では、シュリンクフィルム103は、巻取電線10の外周面から両側面を介して内周面の一部を覆うようにして巻取電線10を包装しているが、巻取電線10の全体を覆うようにして巻取電線10を包装してもよい。
【0075】
このような本実施形態の製造方法によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)制御手段7は、回転体2を所定の回転周期にて回転させる回転制御部72と、トラバーサ5を往復周期設定部71にて設定された往復周期にて往復させる往復制御部73とを備えているので、交差位置を有するように電線EWを回転体2に巻き取ることができる。したがって、電線巻取装置1にて巻き取られた巻取電線10は、電線EWを捻じれにくくすることができるので、使用に際して電線EWを引き出しやすくなる。
【0076】
(2)往復周期設定部71は、回転周期と、往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定するので、電線EWの交差位置は、同じ位置に留まることなく、ずれていくことになる。したがって、電線巻取装置1にて巻き取られた巻取電線10は、巻取電線10の周方向および幅方向に亘って複数の位置に電線の交差位置を分散させることができるので、特定位置だけ巻取電線の径方向に厚くなってしまうことがなく、外観を良好にすることができ、ケースなどに収納しやすくすることができる。
【0077】
(3)電線巻取装置1は、電線EWを保持する保持機構25を備えているので、この保持機構25に電線EWを保持させた後、電線EWの巻き取りを開始することができる。
(4)電線EWは、保持機構25を設けた部位を避けて回転体2に巻き取られるので、電線巻取装置1にて巻き取られた巻取電線10は、保持機構25を取り外すことによって、電線EWを引き出すための開口部101を設けることができる。そして、巻取電線10は、この開口部101を介して使用に際して電線EWを引き出すことができる。
【0078】
(5)巻取電線10は、巻取電線10の周方向および幅方向に亘って複数の位置に電線EWの交差位置を分散させることができるので、特定位置だけ巻取電線10の径方向に厚くなってしまうことがなく、外観を良好にすることができ、ケースなどに収納しやすくすることができる。
(6)巻取電線10は、巻取電線10を包装するシュリンクフィルム103を備えているので、ケースなどに収納した場合と比較して小さくすることができ、巻取電線10を設置するスペースの無駄を省くことができる。また、シュリンクフィルム103を透明にすれば、電線EWの残量や色を容易に把握できるので、巻取電線10は、利便性を向上させることができる。
【0079】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図16は、本発明の第2実施形態に係る電線巻取装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
前記第1実施形態では、電線巻取装置1は、制御手段7を備え、この制御手段7は、往復周期設定部71と、回転制御部72と、往復制御部73とを備えていた。
これに対して、本実施形態では、電線巻取装置1Aは、
図16に示すように、制御手段7Aを備え、この制御手段7Aは、往復移動幅設定部74と、回転制御部72と、往復制御部73Aとを備えている点で前記第1実施形態と異なる。
【0081】
制御手段7Aは、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどによって構成され、このメモリに記憶された所定のプログラムに従って情報処理を実行する。
往復移動幅設定部74は、回転体2に対して1回転ごとに往路および復路を切り替えるようにトラバーサ5を移動させて往復させる往復移動幅を設定する。具体的には、往復移動幅設定部74は、トラバーサ5の往路の移動幅をトラバーサ5の最大移動幅よりも第1の移動幅だけ短くするとともに、トラバーサ5の復路の移動幅をトラバーサ5の往路の移動幅よりも第2の移動幅だけ短くするように、往復移動幅を設定する。ここで、第1の移動幅は、第2の移動幅の整数倍である。
【0082】
回転制御部72は、回転駆動部3にて回転体2を所定の回転周期にて回転させる。具体的には、回転制御部72は、操作パネル(図示略)を介して使用者に入力された所定の回転周期にて回転体2を回転させる。
往復制御部73Aは、モータ43にてボールねじ42を回転させてトラバーサ5をX軸方向に沿って移動させることによって、トラバーサ5を往復移動幅設定部74にて設定された往復移動幅にて往復させる。
【0083】
以下、トラバーサ5の最大移動幅WMを240mmとし、トラバーサ5の往路の移動幅W1を200mmとし、トラバーサ5の復路の移動幅W1を180mmとした場合を例示して説明する。したがって、往復移動幅設定部74は、トラバーサ5の往路の移動幅W1をトラバーサ5の最大移動幅WMよりも40mm(第1の移動幅)だけ短くするとともに、トラバーサ5の復路の移動幅W2をトラバーサ5の往路の移動幅W1よりも20mm(第2の移動幅)だけ短くするように、往復移動幅を設定している。ここで、第1の移動幅(40mm)は、第2の移動幅(20mm)の2倍(整数倍)となっている。
【0084】
図17は、回転体の外周面と、回転体の外周面に巻き取られる電線との関係を示すグラフである。具体的には、
図17は、トラバーサ5の移動幅Wを縦軸とし、回転体2の外周面の位置(回転角θ)を横軸としたグラフである。
図18は、回転体の外周面と、回転体の外周面に巻き取られる電線との関係を示す模式図である。具体的には、
図18は、回転体2の外周面を中心軸に向かって見た図である。
なお、本実施形態では、回転体2の外周面は、6枚の板状部材24にて構成されているが、
図18では、回転体2の外周面は、理想的な周面であるものとして表現する。
【0085】
また、本実施形態では、巻き取りを開始する電線EWの端部を保持する保持機構25は、回転体2の中心軸方向の中央位置に着脱自在に設けられているので、トラバーサ5の移動幅W=120mmの位置を起点として巻き取りを開始することになるが、説明を簡略化するために、
図17および
図18では、トラバーサ5の移動幅W=0mmの位置を起点として巻き取りを開始する場合について説明する。
【0086】
トラバーサ5の移動幅W=0mmの位置を起点とし、回転体2の回転と、トラバーサ5の往復とを同時に開始した場合には、電線EWは、
図17および
図18に示すように、回転体2の回転角θ=360度となったときに、トラバーサ5の移動幅W=200mmの位置に至る経路R1を通って巻き回される(
図17中実線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、往路の移動幅W1だけX軸方向に沿って移動する。
2回転目の回転では、電線EWは、折り返して回転体2の回転角θ=360度(720度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=20の位置に至る経路R2を通って巻き回される(
図17中鎖線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、復路の移動幅W2だけX軸方向に沿って移動する。
【0087】
3回転目の回転では、電線EWは、折り返して回転体2の回転角θ=360度(1080度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=220の位置に至る経路R3を通って巻き回される(
図17中一点鎖線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、往路の移動幅W1だけX軸方向に沿って移動する。
4回転目の回転では、電線EWは、折り返して回転体2の回転角θ=360度(1440度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=40の位置に至る経路R4を通って巻き回される(
図17中二点鎖線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、復路の移動幅W2だけX軸方向に沿って移動する。
5回転目の回転では、電線EWは、折り返して回転体2の回転角θ=360度(1800度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=240の位置に至る経路R5を通って巻き回される(
図17中太線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、往路の移動幅W1だけX軸方向に沿って移動し、最大移動幅WMに到達する。
【0088】
その後、トラバーサ5の移動幅W=240の位置を起点とし、次の往復を開始する。6回転目の回転では、電線EWは、
図17および
図18に示すように、回転体2の回転角θ=360度(2160度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=40mmの位置に至る経路R6を通って巻き回される(
図17中太鎖線参照)。換言すれば、トラバーサ5は、往路の移動幅W1だけX軸方向に沿って移動する。
【0089】
図19は、1回転目から10回転目に至る回転体の外周面と、回転体の外周面に巻き取られる電線との関係を示すグラフである。具体的には、
図19は、トラバーサ5の移動幅Wを縦軸とし、回転体2の外周面の位置(回転角θ)を横軸としたグラフである。
そして、7回転目から9回転目の回転では、電線EWは、
図19に示すように、経路R7から経路R9を通って巻き回される。
【0090】
また、10回転目の回転では、電線EWは、回転体2の回転角θ=360度(3600度)となったときに、トラバーサ5の移動幅W=0mmの位置に至る経路R10を通って巻き回される。換言すれば、10回転目の回転では、電線EWは、1回転目の起点であるトラバーサ5の移動幅W=0mmの位置に戻ることになる。
これを繰り返すことによって、電線巻取装置1Aは、所定の長さの電線EWを回転体2の外周面に巻き取っている。
【0091】
ここで、往復移動幅設定部74は、トラバーサ5の往路の移動幅W1をトラバーサ5の最大移動幅WMよりも第1の移動幅(40mm)だけ短くするとともに、トラバーサ5の復路の移動幅W2をトラバーサ5の往路の移動幅W1よりも第2の移動幅(20mm)だけ短くするように、往復移動幅を設定し、第1の移動幅は、第2の移動幅の2倍(整数倍)であるので、
図17および
図18に示すように、電線EWの交差位置X12,X14,X16,X23,X25,X34,X36,X45,X56は、回転体2の外周面の幅方向に亘って複数の位置に分散していくことになる。
【0092】
具体的には、X12は、1回転目に巻き取られた電線EWと、2回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X14は、1回転目に巻き取られた電線EWと、4回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X16は、1回転目に巻き取られた電線EWと、6回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。また、X23は、2回転目に巻き取られた電線EWと、3回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X25は、2回転目に巻き取られた電線EWと、5回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。また、X34は、3回転目に巻き取られた電線EWと、4回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置であり、X36は、3回転目に巻き取られた電線EWと、6回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。また、X45は、4回転目に巻き取られた電線EWと、5回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。さらに、X56は、5回転目に巻き取られた電線EWと、6回転目に巻き取られた電線EWとの交差位置である。
【0093】
図20は、電線巻取装置の制御方法を示すフローチャートである。
電線巻取装置1Aにて回転体2の外周面に沿って電線EWを巻き取る場合には、制御手段7Aは、
図20に示すように、ステップS1〜S6の電線巻取処理を実行する。
【0094】
まず、使用者は、前記第1実施形態と同様に、電線EWをトラバーサ5に通した後、電線EWの端部を保持機構25に保持させることによって、回転体2の板状部材24に仮固定する。また、使用者は、操作パネル(図示略)を介して所定の回転周期などの情報を入力する。制御手段7Aは、使用者に入力された所定の回転周期などの情報をメモリに記憶し、これを初期設定とする(S1:初期設定ステップ)。
【0095】
次に、往復移動幅設定部74は、回転体2に対してトラバーサ5を移動させて往復させる往復移動幅を設定する(S21:往復移動幅設定ステップ)。
ここで、往復移動幅設定部74は、操作パネル(図示略)を介して使用者に入力された情報に基づいて、往復移動幅を設定してもよく、その他の情報に基づいて、往復移動幅を設定してもよい。要するに、往復移動幅設定部74は、トラバーサ5の往路の移動幅をトラバーサ5の最大移動幅よりも第1の移動幅だけ短くするとともに、トラバーサ5の復路の移動幅をトラバーサ5の往路の移動幅よりも第2の移動幅だけ短くするように、往復移動幅を設定すればよい。ここで、第1の移動幅は、第2の移動幅の整数倍である。
例えば、往復移動幅設定部74は、前述したように、トラバーサ5の最大移動幅WMを240mmとし、トラバーサ5の往路の移動幅W1を200mmとし、トラバーサ5の復路の移動幅W1を180mmとして設定することができる。
【0096】
所定の回転周期および往復移動幅を設定した後、回転制御部72は、回転駆動部3にて回転体2を所定の回転周期にて回転させる(S3:回転制御ステップ)。また、往復制御部73Aは、トラバーサ5を往復移動幅設定部74にて設定された往復移動幅にて往復させる(S41:往復制御ステップ)。これによって、電線巻取装置1Aは、回転体2の外周面に沿って電線EWの巻き取りを開始する。ここで、往復制御ステップS4にてトラバーサ5の往復を開始するタイミングは、回転制御ステップS3にて回転体2の回転を開始するタイミングと同時になっている。
【0097】
なお、本実施形態では、回転制御ステップS3を実行した後、往復制御ステップS41を実行しているが、これとは逆に往復制御ステップS41を実行した後、回転制御ステップS3を実行してもよく、回転制御ステップS3および往復制御ステップS41を同時に実行してもよい。
【0098】
回転体2の回転およびトラバーサ5の往復を開始した後、制御手段7Aは、電線EWの巻き取りを終了するか否かを判定する(S5:巻取終了判定ステップ)。この巻取終了判定ステップS5では、制御手段7Aは、計尺ベルト54のベルト本体542の移動量に基づいて回転体2に巻き取られた電線EWの長さを計測する。そして、制御手段7Aは、操作パネル(図示略)を介して使用者に予め入力された長さを回転体2に巻き取られた電線EWの長さが超えた場合に電線EWの巻き取りを終了すると判定し、超えていない場合に電線EWの巻き取りを終了しないと判定する。
【0099】
巻取終了判定ステップS5にて電線EWの巻き取りを終了すると判定した場合には、制御手段7Aは、回転体2の回転およびトラバーサ5の往復を停止する(S6:巻取終了ステップ)。
なお、巻取終了判定ステップS5にて電線EWの巻き取りを終了しないと判定した場合には、制御手段7Aは、巻取終了判定ステップS5を再び実行する。
【0100】
その後、使用者は、前記第1実施形態と同様に、板状部材24から保持機構25を取り外すことによって、保持機構25の存在していた開口部を介して電線EWの端部を引き出すことができる。
【0101】
そして、使用者は、回転体2およびトラバーサ5の間に架け渡された電線EWをカッター(図示略)にて切断した後、回転体2の第2羽根部材23Aの先端をシャフト21側に寄せるようにして折り畳むことによって(
図9参照)、電線巻取装置1Aから巻取電線を取り外すことができる。
【0102】
この巻取電線は、電線巻取装置1Aにて巻き取られたことによって、巻取電線の幅方向に亘って複数の位置に電線EWの交差位置を有し、前記第1実施形態における巻取電線10と同様に、開口部に挿入されたソケットと、巻取電線を包装するシュリンクフィルムとを備えている。
【0103】
このような本実施形態によれば、前記第1実施形態における(3),(4),(6)と同様の作用効果を奏することができる他、以下の作用・効果を奏することができる。
(7)制御手段7Aは、回転体2を所定の回転周期にて回転させる回転制御部72と、トラバーサ5を往復移動幅設定部74にて設定された往復移動幅にて往復させる往復制御部73Aとを備えているので、交差位置を有するように電線を回転体2に巻き取ることができる。したがって、電線巻取装置1Aにて巻き取られた巻取電線は、電線EWを捻じれにくくすることができるので、使用に際して電線EWを引き出しやすくなる。
【0104】
(8)往復移動幅設定部74は、トラバーサ5の往路の移動幅W1をトラバーサ5の最大移動幅WMよりも第1の移動幅だけ短くするとともに、トラバーサ5の復路の移動幅W2をトラバーサ5の往路の移動幅W2よりも第2の移動幅だけ短くするように、往復移動幅を設定し、第1の移動幅は、第2の移動幅の整数倍であるので、電線EWの交差位置は、同じ位置に留まることなく、回転体2の軸方向、すなわち巻取電線の幅方向に沿ってずれていくことになる。したがって、電線巻取装置1Aにて巻き取られた巻取電線は、巻取電線の幅方向に亘って複数の位置に電線EWの交差位置を分散させることができるので、特定位置だけ巻取電線の径方向に厚くなってしまうことがなく、外観を良好にすることができ、ケースなどに収納しやすくすることができる。
【0105】
(9)巻取電線は、巻取電線の幅方向に亘って複数の位置に電線EWの交差位置を分散させることができるので、特定位置だけ巻取電線の径方向に厚くなってしまうことがなく、外観を良好にすることができ、ケースなどに収納しやすくすることができる。
【0106】
〔実施形態の変形例〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、電線巻取装置1,1Aは、保持機構25を備え、この保持機構25は、回転体2の中心軸方向の中央位置に着脱自在に設けられていた。これに対して、保持機構25は、回転体2の中心軸方向の中央位置に設けられていなくてもよく、例えば、第1羽根部材22Aの近傍や、第2羽根部材23Aの近傍に設けられていてもよい。また、電線巻取装置1,1Aは、保持機構25を備えていなくてもよい。この場合には、例えば、第1羽根部材22Aまたは第2羽根部材23Aに開孔を形成し、この開孔に電線EWの端部を挿入することによって、電線EWを回転体2に仮固定することができる。
【0107】
前記各実施形態では、巻取電線は、巻取電線を包装するシュリンクフィルムを備えていたが、これを備えていなくてもよい。例えば、巻取電線は、紙箱などに収納してもよい。
【0108】
前記各実施形態では、電線巻取装置1,1Aは、回転体2を所定の回転周期にて回転させる回転駆動部3を備えていたが、これを備えていなくてもよい。この場合には、例えば、回転駆動部3の代わりにハンドル23A1を利用して回転体2を回転させることによって、回転体2を所定の回転周期にて回転させてもよい。この際、往復制御部73,73Aは、センサ等を介して計測した回転体2の回転角θを参照することによって、トラバーサ5の移動幅を算出し、これに基づいてトラバーサ5を移動させればよい。
【0109】
前記各実施形態では、巻取電線は、電線巻取装置1,1Aにて巻き取られていたが、これ以外の装置にて巻き取られていてもよく、手作業にて巻き取られていてもよい。要するに、巻取電線は、円環状に巻き取られていればよい。
【解決手段】電線巻取装置1は、中心軸回りに回転自在に設けられた円柱軸状の回転体2の軸方向に沿って移動するとともに、電線を案内することによって、回転体2に対する電線の巻き取り位置を規定するトラバーサ5と、回転体2およびトラバーサ5を制御する制御手段7とを備える。制御手段7は、回転体2に対してトラバーサ5を移動させて往復させる往復周期を設定する往復周期設定部71と、回転体2を所定の回転周期にて回転させる回転制御部72と、トラバーサ5を往復周期設定部71にて設定された往復周期にて往復させる往復制御部73とを備える。往復周期設定部71は、回転周期と、往復周期の半周期とを同期させないように、往復周期を設定する。