【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、ナノテク・先端部材実用化研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結晶成長部が平面視三角形部を有し、一の頂点が前記種結晶部の他端に接しており、前記一の頂点から前記一の頂点の対辺側に向けて、有機半導体溶液を塗布しながら乾燥させて、前記種結晶部で作成した種結晶を成長させて、大面積ドメイン有機半導体結晶膜を作成することを特徴とする請求項1に記載の大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法及び大面積ドメイン有機半導体結晶膜について説明する。
【0022】
<大面積ドメイン有機半導体結晶膜>
まず、本発明の第1の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜について、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の一例を示す図であって、平面図(a)と、(a)のA−A’線における断面図(b)である。
図1(a)に示すように、大面積ドメイン有機半導体結晶膜41は、平面視して、幅L
L、長さN
L41の線部部分と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部部分と、幅L
O、長さN
O41の帯部部分とが結合されて形成されている。
【0023】
大面積ドメイン有機半導体結晶膜41は、平面視略同形状の孔部を有する撥液部13により囲まれている。撥液部13の孔部に部分的に埋め込まれるように形成されている。埋め込まれていない部分からは、基礎基板12の表面が露出されている。
大面積ドメイン有機半導体結晶膜41は、一の頂角D
Sから対辺、さらには帯部の末端に向かって成長したドメインを含み、該ドメインの面積が2.5mm
2以上と大面積化されている。この値以上の大面積にすると、チャネル領域に利用して、高性能な有機トランジスタ等を作製できるためである。
なお、大面積ドメイン有機半導体結晶膜41の平面視形状はこれに限られるものではない。本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法では、大面積ドメイン有機半導体結晶膜41だけでなく、別のドメイン領域が作成される場合もある。
【0024】
また、
図1(b)に示すように、大面積ドメイン有機半導体結晶膜41は、結晶成長用基板11の基礎基板12上に成膜されている。結晶成長用基板11は、基礎基板12の上に厚さF
13の撥液部13が形成されてなり、撥液部13の孔部に配置されるように、厚さF
41の大面積ドメイン有機半導体結晶膜41が形成されている。
【0025】
ドメインとは同じ結晶方位を有する連続した結晶薄膜領域のことであり、その境界は結晶方位の不連続境界あるいは、結晶薄膜が形成されていない領域によって囲まれている。
【0026】
有機半導体としては、TIPS−ペンタセン、2,7−ジアルキル [1]ベンゾチエノ [3,2−b]ベンアオチオフェン(Cn−BTBT)、2,9−ジアルキル−ジナフト [2,3−b:2´,3´−f]チエノ [3,2−b]チオフェン (Cn−DNTT)、5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(TES−ADT)等の可溶性低分子系有機分子を挙げることができる。TIPS−ペンタセン等の縮合フェニル基とR−Si基を両方備える低分子系有機分子が特に好ましい。結晶化が容易で、移動度が高く、半導体特性が高い結晶膜とすることができるためである。このような結晶性の高い膜をチャネル領域に用いることにより、高性能な有機トランジスタを作製することができる。より具体的には、有機トランジスタとしては、ボトムコンタクト・ボトムゲート型構造を有する有機FETに利用できる。しかし、特に、有機デバイスの種類や構造は問わない。
次式(1)に、TIPS−ペンタセンの化学式を示す。
【0028】
<結晶成長用基板>
図2は、本発明の実施形態である結晶成長用基板の一例を示す図であって、平面図(a)と、(a)のA−A’線における断面図(b)である。
図2(a)に示すように、結晶成長用基板11は、撥液部13と、基礎基板12とから構成されている。
撥液部13には、平面視して、幅L
L、長さN
Lの線部と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部23と、幅L
O、長さN
Oの帯部24とが結合されてなる孔部が形成されている。
線部は種結晶部21とされ、三角形部23と帯部24とからなる部分は、結晶成長部22とされる。三角形部は、二等辺三角形とすることが好ましい。これにより、歪を少なく結晶成長させることができる。
孔部では、基礎基板12が露出されている。
【0029】
また、
図2(b)に示すように、結晶成長用基板11は、基礎基板12と、その上に形成された厚さF
13の撥液部13とから構成されている。
【0030】
<結晶成長用基板作成工程>
図3〜8は、本発明の第1の実施形態である結晶成長用基板の作成工程の一例を示す工程図であって、平面図(a)と、(a)のA−A’線における断面図(b)である。
まず、平面視略矩形状の基礎基板12を用意する。
基礎基板12としては、SiO
2/Si基板(表面を酸化することにより形成したSiO
2膜付Si基板)を挙げることができる。具体的には、300nm厚のシリコン熱酸化膜付高ドープシリコン(100)基板を用いる。平面視形状はこれに限られるものではない。基板材料も、これに限られるものではなく、絶縁性が高く、表面を親液性とすることができる基板であればよい。
【0031】
次に、基礎基板12を洗浄処理する。これにより、表面の不純物、ごみ等を除去する。洗浄方法は、有機溶媒、酸等により行い、最後に親液化処理を行う。
具体的には、例えば、まず、アセトンで超音波洗浄し、硫酸と過酸化水素水を体積比3対1で混合した溶液に30分間3回浸漬してから、純水でリンスしてシリコン酸化膜表面を親液化する。しかし、この処理に限られるものではなく、処理回数、処理時間などは適宜変更できる。
【0032】
次に、
図3に示すように、洗浄処理した基礎基板12上に撥液部13を形成する。
具体的には、例えば、基礎基板12を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)に1時間浸漬して形成してから、クロロホルムでリンスし、表面全体を一様に撥水(撥液)化して、撥液部13を形成する。
スピンコーティング法等の他の湿式成膜手法や蒸気暴露により形成してもよい。HMDSのような自己組織化単分子膜の場合、撥液部13の厚さは1分子層となる。撥液膜として、アモルファスフッ素樹脂などの高分子膜を用いることができ、その撥液部13の厚さF
13には、特に制限はないが、100nm以下と薄くすることが好ましく、10nm程度とすることがより好ましい。
【0033】
次に、
図4に示すように、撥液部13上にネガ型のフォトレジスト51を形成する。
ネガ型のフォトレジスト51としては、Clariant社のAZ−5214Eを挙げることができる。
【0034】
次に、
図5に示すように、ネガ型フォトレジスト51上に石英ガラスマスクを配置する。マスク部52の材料としては、クロム等の金属を挙げることができる。
マスク52は、平面視して、幅L
L、長さN
Lの線部と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部と、幅L
O、長さN
Oの帯部とが結合されてなる形状とする。
【0035】
次に、フォトリソグラフィー法を用いて、マスク52の上方から基礎基板12側に向けて垂直な方向に露光する。これにより、
図6に示すように、ネガ型のフォトレジスト51が露光され、マスク52で覆われていない部分が硬化される。
【0036】
次に、マスク52を外す。
図7に示すように、マスク52で覆われていない部分が硬化されているが、マスクで覆われていた部分は硬化されない。次に現像工程により、マスクで覆われていた部分のレジスト膜を除去し、マスクで覆われていた部分の撥液部13を露出させる。これにより、ネガ型のフォトレジスト51のパターニングが処理される。
【0037】
次に、上方から基礎基板12側に向けて、酸素プラズマ処理(100W、1分間)を行う。
これにより、
図8に示すように、マスク52で覆われていない部分の撥液膜13はレジスト膜によって保護され、マスクで覆われていた部分の撥液部13が除去され、基礎基板12の表面が露出される。露出領域のみ親液化される。
【0038】
最後に、ネガ型フォトレジスト51を剥離することにより、先に記載の
図2に示すように、一面側に、親液性の基礎基板12の露出部分と、撥水性の撥液部13とを有し、前記親液性の基礎基板12の露出部分の形状が、平面視して、幅L
L、長さN
Lの線部20と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部23と、幅L
O、長さN
Oの帯部24とが結合されてなる形状である結晶成長用基板11が作成される。
【0039】
<大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成工程>
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、種結晶部と、前記種結晶部に接続された結晶成長部とを有する結晶成長用基板を用い、前記種結晶部に有機半導体溶液を塗布しながら乾燥させて、種結晶を作成してから、前記結晶成長部で前記種結晶を成長させて、大面積ドメイン有機半導体結晶膜を作成する。
つまり、特殊な結晶成長用基板を用い、フロー・コーティング法で成膜して、大面積ドメイン有機半導体結晶膜を作成する方法である。フロー・コーティング法により、ドメインを維持して、有機半導体溶液のコンタクト・ラインを移動させることができる。また、分子を配向させながら、大面積ドメイン有機半導体結晶膜を作成できる。
【0040】
図9〜12は、本発明の第1の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法の一例を示す工程図であって、平面図(a)と、(a)のA−A’線における断面図(b)である。
まず、先に記載の結晶成長基板11を用意する。結晶成長基板11は、親液性の基礎基板12の露出部分と、撥水性の撥液部13とを有する。
【0041】
次に、平面視長方形状のガラスプレート31を、他端側より一端側を結晶成長用基板11側に近づけるように傾け、結晶成長用基板11との距離が一定となるようにして、かつ、プレート31の長さ方向の中心軸が線部の長さ方向の中心軸と並行となるように配置する。ガラスプレート31としては、例えば、フッ素コートされたガラス平板(幅7mm、厚さ2mm、長さ120mm)を用いる。
【0042】
ガラスプレート31と結晶成長用基板11との距離は100〜300μmとすることが好ましく、150〜250μmとすることがより好ましい。例えば、200μmとする。傾き角度は、結晶成長用基板11の表面に対して0.5〜3°とすることが好ましく、1〜2°とすることがより好ましい。例えば、1.5°とする。
【0043】
次に、マイクロピペット等により、ガラスプレート31と結晶成長用基板11との間に一定量の有機半導体溶液40を注入する。これにより、
図9に示すように、表面張力により、有機半導体溶液40がたまる。
有機半導体溶液40としては、例えば、1.4mgのTIPS−ペンタセン、235.0mgのクロロホルムを混合し、マグネッチックスターラーで1時間以上攪拌することによって作成した0.6wt%のTIPS‐ペンタセン−クロロホルム溶液を用いる。
【0044】
この状態で、一定のスピード(掃引速度)で
図9(b)の矢印方向に、結晶成長用基板11との距離を保つように、ガラスプレート31を掃引する。掃引速度は、用いる溶媒の種類、溶液濃度に依存するが、10〜300μm/sとすることが好ましく、50〜250μm/sとすることがより好ましい。例えば、150μm/sとする。
【0045】
図10はわずかに動かした状態を示す図である。
図10に示すように、結晶成長用基板11とガラスプレート31とその間に保持された有機半導体溶液40との関係は保たれる。なお、本工程では、有機半導体溶液のコンタクト・ラインに乱れが生じないように配慮した方法で、有機半導体溶液40を適宜補充することが可能である。基礎基板12の表面は親液性とされているが、撥液部13は撥液性とされているので、溶液の接触角が親液性の基礎基板12の表面で小さく、コンタクト・ライン近傍での溶媒の蒸発に伴う溶液濃度の増加が大きいため、親液性の基礎基板12の表面のみに有機半導体結晶膜41Aが形成される。その結果、
図10に示すように、線部には、塗布された溶液が乾燥・固化して線状の有機半導体結晶膜41Aが形成される。
【0046】
線部の線幅が50μm以下とされているので、線部では複数のドメインが同時に形成さるマルチドメイン成長は抑制され、一つのドメインのみが形成されるシングルドメイン成長が優先的に起こる。これにより、一端側から他端側に有機半導体溶液を塗布しながら乾燥する方法により、線の終端部では全線幅にわたって一つの結晶ドメインのみが現れる。該結晶ドメインを結晶成長部における種結晶として利用する。
【0047】
図11は更に動かし、三角形部にまで結晶成長させた状態を示す図である。
図11に示すように、結晶成長用基板11とガラスプレート31とその間に保持された有機半導体溶液40との関係は保たれる。基礎基板12の表面は親液性とされているが、撥液部13は撥液性とされているので、溶液の接触角が親液性の基礎基板12の表面で小さく、コンタクト・ライン近傍での溶媒の蒸発に伴う溶液濃度の増加が大きいため、親液性の基礎基板12の表面のみに有機半導体結晶膜41Aが形成される。三角形部では、線部で形成された種結晶の結晶方位を保ちながら塗布された有機半導体溶液40が乾燥・固化して、ドメイン幅を広げるように結晶ドメインが形成される。
【0048】
結晶成長部が平面視三角形部を有し、一の頂点が種結晶部の他端に接している。これにより、一の頂点から前記一の頂点の対辺側に向けて、有機半導体溶液を塗布しながら乾燥させて、前記種結晶部で作成した種結晶を成長させることにより、種結晶によって結晶方位が規定された一つのドメインを大面積化できる。
【0049】
特に、三角形部の一の頂点の角度が16°以下とすることが好ましい。これにより、種結晶から連側して形成されるドメインの状態を壊すことなく、より容易に大面積化できる。
【0050】
図12は塗布を完了した状態を示す図である。
図12に示すように、線部で形成された種結晶から三角形部に面積を広げ、帯部にさらに広がるような大面積ドメイン有機半導体結晶膜41が形成される。
【0051】
このように、三角形部の一の頂点の対辺側に帯部が接続されている構成とすることが好ましい。これにより、より大面積化できる。
【0052】
(本発明の第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜について、説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の一例を示す図である。大面積ドメイン有機半導体結晶膜141の平面視形状が異なるほかは、本発明の第1の実施形態と同様の構成とされている。
図13に示すように、大面積ドメイン有機半導体結晶膜141は、平面視して、幅L
L、長さN
L41の線部部分と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部部分とが結合されて形成されている。
この平面視形状であっても、大面積ドメイン有機半導体結晶膜141は、一の頂角D
Sから対辺に向かって成長したドメインを含み、該ドメインの面積が2.5mm
2以上と大面積化されている。よって、チャネル領域に利用して、高性能な有機トランジスタ等を作製できる。
【0053】
(本発明の第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜について、説明する。
図14は、本発明の第3の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の一例を示す図である。大面積ドメイン有機半導体結晶膜142の平面視形状が異なり、別のドメイン領域42が設けられているほかは、本発明の第1の実施形態と同様の構成とされている。
図14に示すように、大面積ドメイン有機半導体結晶膜142は、平面視して、幅L
L、長さN
L41の線部部分と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部部分とが結合されて形成されており、帯部部分に平面視矩形状の別のドメイン部分42が形成されている。
この平面視形状であっても、大面積ドメイン有機半導体結晶膜142は、一の頂角D
Sから対辺に向かって成長したドメインを含み、該ドメインの面積が2.5mm
2以上と大面積化されている。よって、チャネル領域に利用して、高性能な有機トランジスタ等を作製できる。
【0054】
(本発明の第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜について、説明する。
図15は、本発明の第2の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の一例を示す図である。大面積ドメイン有機半導体結晶膜143は、平面視形状が異なり、別のドメイン領域43が設けられているほかは、本発明の第1の実施形態と同様の構成とされている。
図15に示すように、大面積ドメイン有機半導体結晶膜143は、平面視して、幅L
L、長さN
L41の線部部分と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部部分と、幅L
O、長さN
O41の帯部部分とが結合されて形成されており、帯部部分に平面視矩形状の別のドメイン部分43が形成されている。
この平面視形状であっても、大面積ドメイン有機半導体結晶膜143は、一の頂角D
Sから対辺に向かって成長したドメインを含み、該ドメインの面積が2.5mm
2以上と大面積化されている。よって、チャネル領域に利用して、高性能な有機トランジスタ等を作製できる。
【0055】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、種結晶部と、前記種結晶部に接続された結晶成長部と、を有する結晶成長用基板を用い、前記種結晶部に有機半導体溶液を塗布しながら乾燥させて、種結晶を作成してから、前記結晶成長部で前記種結晶を成長させて、大面積ドメイン有機半導体結晶膜を作成する構成なので、有機半導体溶液のコンタクト・ラインの移動制御と基板表面の親液性・撥液性を利用して、有機半導体層を親液部のみに塗布して、大面積有機半導体結晶ドメイン薄膜をその結晶方位を配向制御しながら基板上に直接形成することができ、かつ、パターン化することができる。低分子系の有機半導体の場合、コンタクト・ラインの移動方向に沿って結晶成長容易軸を配向させることができる。
【0056】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記種結晶部が平面視線状であり、一端側から他端側に有機半導体溶液を塗布しながら乾燥する構成なので、線の終端部においてシングルドメインの有機半導体の種結晶を安定して作成できる。
【0057】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記種結晶部の線幅が50μm以下である構成なので、線の終端部においてシングルドメインの有機半導体の種結晶を安定して作成できる。
【0058】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記結晶成長部が平面視三角形部を有し、一の頂点が前記種結晶部の他端に接しており、前記一の頂点から前記一の頂点の対辺側に向けて、有機半導体溶液を塗布しながら乾燥させて、前記種結晶部で作成した種結晶を成長させて、大面積結晶ドメイン薄膜を作成する構成なので、シングルドメインの有機半導体種結晶によって規定される結晶方位を有するドメインを大面積化することができる。
【0059】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記三角形部の一の頂点の角度が16°以下である構成なので、シングルドメインの有機半導体種結晶によって規定される結晶方位を有するドメインを大面積化することができる。
【0060】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記三角形部の一の頂点の対辺側に帯部が接続されている構成なので、幅を広げた結晶ドメインを更に、大面積化することができる。
【0061】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法は、前記種結晶部及び前記結晶成長部がいずれも親液性とされており、撥液部により囲まれている構成なので、有機半導体溶液の溶媒に対して親液部と撥液部にパターン化された基板表面上にコンタクト・ラインを移動させながら有機半導体溶液を塗布することにより、撥液部には有機半導体層は析出させず、親液部に選択的に有機半導体結晶を形成・成長させることができる。これにより、大面積有機半導体結晶ドメイン膜を意図した領域に選択的に作成できる。また、低分子系の有機半導体の場合、コンタクト・ラインの移動方向に沿って結晶成長容易軸が配向させることができ、大面積有機半導体結晶ドメイン膜の配向制御も同時に達成することができる。
【0062】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜は、面積が2.5mm
2以上あるである有機半導体結晶ドメインを含む構成なので、有機電界効果トランジスタ(FET)に代表される有機電子デバイスに容易に利用することができる。
【0063】
本発明の実施形態である大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成方法および大面積ドメイン有機半導体結晶膜は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
「種結晶作成実験」
(試験例1)
<親液・撥液パターン基板の作成>
図16は、フォトリソグラフィー工程を含む結晶成長用基板作成工程図である。
まず、300nm厚のシリコン酸化膜付高ドープシリコン(100)基板をアセトンで超音波洗浄した。
次に、硫酸と過酸化水素水を体積比3対1で混合した溶液に30分間3回浸漬した後、純水でリンスしてシリコン酸化膜表面を親液化した。
次に、その基板を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)に1時間浸漬し、クロロホルムでリンスし、表面全体を一様に撥水(撥液)化して、
図16(a)に示すように、SiO
2/Si基板上にHMDSが形成された基板を作成した。
【0065】
次に、
図16(b)、(c)に示すように、ネガ型レジストを塗布してから、フォトリソグラフィー法を用いて、撥液化された基板表面が幅20μm、長さ5mmのライン・パターン状に露出するようにパターニングした。
具体的には、ネガ型レジストとしてClariant社のAZ−5214Eを用い、レジスト膜をスピンコート法により形成し、空気中で120℃、1分間プリベークした。次に、ガラスマスクをレジスト膜に密着させて配置し、波長405nmの光を照度18mW/cm2で1秒間照射した。次に、試料を空気中で115℃、90秒間ベーク(反転ベーク)した。次に波長405nmの光を照度18mW/cm2で10秒間全面露光(マスクなし)した後、現像液(東京応化工業社製NMD−3)に2分間浸漬後、純水に30秒間浸漬することを3回行った。次に、115℃、2分間のポストベークを空気中で行い、レジストパターンを作成した。
次に、
図16(d)に示すように、その基板に対して酸素プラズマ処理(100W、1分間)を行い、露出領域のみ親液化した。
次に、
図16(e)に示すように、剥離液(ヘキストジャパン社製AZリムーバーあるいは、東京応化工業社製剥離液−104)でレジストを剥離することにより、線幅20μm、線長5mmのライン状の親液領域を有する撥水基板(試験例1基板)を作成した。
【0066】
<有機半導体溶液の作成>
次に、有機半導体溶液として、1.4mgのTIPS−ペンタセン、235.0mgのクロロホルムを混合し、マグネッチックスターラーで1時間以上攪拌することによって、0.6wt%のTIPS‐ペンタセン−クロロホルム溶液を作製した。
【0067】
<有機半導体結晶膜の作成>
フロー・コーティング法を用いて、コンタクト・ラインの移動制御を行いながら、有機半導体溶液を塗布して、有機半導体薄膜を作成した。
図17は、フロー・コーティング法の説明図であって、斜視図(a)と、断面図(b)である。
まず、
図17に示すように、フッ素コートされたガラス平板(幅7mm、厚さ2mm、長さ120mm)を、試験例1基板の表面に対して約1.5°傾けた状態で、ギャップが200μmになるように接近させた。
次に、0.6wt%のTIPS−ペンタセン・クロロホルム溶液を10μl、ガラス平板と試験例1基板との間に注入した。
次に、ガラス平板を150μm/sの速度で掃引して、TIPS−ペンタセン(TIPS−PEN)薄膜(試験例1の有機半導体結晶膜)を作成した。
【0068】
<実験結果>
図18は、試験例1の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図18に示すように、ライン長方向(x)の長さ3.8mmにわたって結晶性薄膜が形成され、幅20μm、長さ1.9mmの最大シングルドメイン成長領域と、長さ0.9mmの第2シングルドメイン成長領域と長さ0.8mmの第3シングルドメイン成長領域が存在し、全体としてライン長方向(x)の長さ3.6mmにわたってシングルドメイン結晶成長が達成されていた。
ライン長方向(x)の2か所でエネルギー的に等価で配向が異なるドメインの切り替え(矢印部分)が起こっていた。第2ドメインと最大ドメイン間のドメイン切り替え部(マルチドメイン成長領域)の長さが60μm、最大ドメインと第3ドメイン間のドメイン切り替え部(マルチドメイン成長領域)の長さが40μmであった。第2ドメイン成長開始部のマルチドメイン成長領域の長さが130μmであった。シングルドメイン成長率は94%であった。
シングルドメイン成長領域は大面積ドメイン形成用の種結晶として用いることができるので、シングルドメイン成長率が90%以上であることが好ましい。シングルドメイン成長率が90%以上であることから幅20μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効である。
なお、シングルドメイン成長率=シングルドメイン成長部の総長さ/結晶性薄膜成長部の総長さ×100%で定義される(以下、同じ)。
【0069】
TIPS−ペンタセン薄膜の偏光顕微鏡写真(クロスニコル配置)では、クロスニコル配置の2枚の偏光板の内1枚の偏光軸とフロー・コーティング方向が平行な場合を0°と定義した。
基板を法線周りに30°回転することによって、第3ドメインと第2ドメインに関して消光位が現れた。基板を法線周りに−30°回転することによって、第2ドメインに関して消光位が現れた。つまり、第2ドメインと最大ドメインの切り替え部を挟んで、最大ドメインと第3ドメインの切り替え部を挟んで、結晶方位が回転していることがわかる。また、第2ドメインと第3ドメインの結晶方位が同じであることがわかる。但し、各ドメイン内の結晶方位は揃っており、単結晶TIPS−ペンタセン膜が形成されていた。
【0070】
(試験例2)
線幅30μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図19は、試験例2の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図19に示すように、ライン長方向(x)の長さ4.1mmにわたって、結晶性薄膜が形成されていた。そのなかで、幅30μm、長さ2.9mmの最大シングルドメイン成長領域と、長さ1.0mmの第2シングルドメイン成長領域が存在し、全体としてライン長方向(x)の長さ3.9mmにわたってシングルドメイン結晶成長が達成されていた。ライン長方向(x)ではエネルギー的に等価で配向が異なるドメインの切り替え(矢印部分)が起こっており、第2ドメインと最大ドメイン間のドメイン切り替え部(マルチドメイン成長領域)の長さが130μmであった。第2ドメイン成長開始部のマルチドメイン成長領域の長さが80μmであった。シングルドメイン成長率は95%であった。
シングルドメイン成長率が90%以上であることから、幅30μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効である。
【0071】
(試験例3)
線幅50μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図20は、試験例3の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図20に示すように、ライン長方向(x)の長さ3.8mmにわたって、結晶性薄膜が形成されていた。そのなかで、幅50μm、長さ3.6mmの最大シングルドメイン成長領域が存在した。最大ドメイン成長開始部のマルチドメイン成長部の長さが170μmであり、シングルドメイン成長率は95%であった。
シングルドメイン成長率が90%以上であることから、幅50μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効である。
【0072】
(試験例4)
線幅100μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図21は、試験例4の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図21に示すように、幅100μm、長さ4.1mmの結晶性薄膜が形成されたが、そのうち2.7mmがマルチドメイン成長領域、1.4mmがシングルドメイン成長領域であった。シングルドメイン成長率は34%であった。
大面積ドメイン形成用の種結晶として用いるには、シングルドメイン成長率が90%以上であることが好ましいことから、幅100μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効でない。
【0073】
(試験例5)
線幅120μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図22は、試験例5の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図22に示すように、幅120μm、長さ4.2mmの結晶性薄膜が形成されたが、そのうち1.8mm及び1.6mmがマルチドメイン成長領域、0.8mmがシングルドメイン成長領域であった。シングルドメイン成長率は19%であった。
大面積ドメイン形成用の種結晶として用いるには、シングルドメイン成長率が90%以上であることが好ましいことから、幅120μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効でない。
【0074】
(試験例6)
線幅140μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図23は、試験例6の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図23に示すように、幅140μm、長さ4.4mmの結晶性薄膜が形成されたが、そのうち4.2mmがマルチドメイン成長領域、0.2mmがシングルドメイン成長領域であった。シングルドメイン成長率は5%であった。
大面積ドメイン形成用の種結晶として用いるには、シングルドメイン成長率が90%以上であることが好ましいことから、幅140μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効でない。
【0075】
(試験例7)
線幅160μm、線長5mmのライン状の親液領域を設けた基板を準備した他は試験例1と同様にして、フロー・コーティング法により、TIPS−ペンタセン薄膜を成膜した。
図24は、試験例7の有機半導体結晶膜であるTIPS−ペンタセンのライン・パターンの偏光顕微鏡写真である。
図24に示すように、幅160μm、長さ4.6mmの結晶性薄膜が形成されたが、全ての領域でマルチドメイン成長領域であった。シングルドメイン成長率は0%であった。
大面積ドメイン形成用の種結晶として用いるには、シングルドメイン成長率が90%以上であることが好ましいことから、幅160μmのライン幅パターンは種結晶成長部として有効でない。
以上の結果を表1にまとめた。
【0076】
【表1】
【0077】
幅50μm以下の親・撥液ライン・パターン基板上に有機半導体溶液のコンタクト・ラインを移動させながら、有機半導体薄膜を形成することによって、マルチドメイン成長を抑制し、一つのドメインのみが形成されるシングルドメイン成長を達成でき、大面積ドメイン成長に利用可能な種結晶を形成できることが分かった。
【0078】
「大面積ドメイン有機半導体結晶膜の作成実験」
<親液・撥液パターン基板の作製>
親液領域を、幅L
L、長さN
Lの線部と、一の頂角D
S、前記一の頂角の対辺の長さL
O、長さN
Sの略三角形部と、幅L
O、長さN
Oの帯部とが結合されてなる領域で作成し、
図25に示したフォトリソグラフィー工程含む工程図で示した方法により、親液・撥液パターンを有する結晶成長用基板(実施例1基板)を作成した。
具体的には、まず、300nm厚のシリコン酸化膜付高ドープシリコン(100)基板をアセトンで超音波洗浄した。次に、硫酸と過酸化水素水を体積比3対1で混合した溶液に30分間3回浸漬した後、純水でリンスしてシリコン酸化膜表面を親水化した。
次に、その基板を1vol%のPTCS(Phenyltrichlorosilane)トルエン溶液に16時間浸漬することによってPTCS単分子膜を形成し、表面の親液化を行った(
図25(a))。この親液化された表面にポジ型フォトレジスト(東京応化工業社製OFPR−800LB)をスピンコート(2000rpm,60秒)し、90℃、3分間、大気中でプリベークした(
図25(b))。
【0079】
次に、ガラスマスクをレジスト膜に密着させて配置し、波長405nmの光を照度18mW/cm
2で15秒間照射した(
図25(c))。
次に、現像液(東京応化工業社製NMD−3)に2分間浸漬後、純水に30秒間浸漬することを3回行った後、120℃、2分間、ポストベークを空気中で行い、レジストパターンを作成した。この時、露光時にマスクで覆われていた部分にのみレジスト膜が残り、露光部はPTCS単分子膜が露出している状態である。
次に、O
2プラズマ処理(100W、1分)を行い、露出しているPTCS単分子膜を除去した(
図25(d))。
次に、HMDSを基板上に滴下して1分後にスピンコートすることでPTCS単分子膜を除去した領域にHMDS単分子膜を形成し、撥液部を形成した(
図25(e))。
次に,剥離液(ヘキストジャパン社製AZリムーバー)への浸漬2回と、アセトンへ浸漬2回によりレジスト膜を除去し、親液・撥液パターンを有する結晶成長用基板(実施例1基板)を作成した。
図26は、本実験で用いた結晶成長用基板を示す図である。
本実験で用いた結晶成長用基板(実施例1、2の基板)の親液領域を、構成、作成条件、フロー・コーティング方向とともに示している。
【0080】
実施例1の結晶成長用基板は、種結晶部と、結晶成長部とを有するものとした。ここで、種結晶部は、線幅10μm、線長3mmとした。また、結晶成長部は、三角形部と帯部とを有するものとした。三角形部の頂点角度16°、長さ4.2mm、幅1.2mmとした。帯部の幅1.2mm、長さ11.8mmとした。
【0081】
<有機半導体溶液の作成>
先に記載の種結晶作成実験と同様にして、0.6wt%のTIPS‐ペンタセン−クロロホルム溶液を作製した。
【0082】
<有機半導体結晶膜の作成>
まず、実施例1基板を用意した。
次に、フッ素コートされたガラス平板(幅7mm、厚さ2mm、長さ120mm)からなる平面視長方形状のガラスプレートを、他端側より一端側を実施例1基板側に近づけるように傾け、実施例1基板との距離が一定となるようにして、かつ、ガラスプレートの長さ方向の中心軸が線部の長さ方向の中心軸と並行となるように配置した。
ガラスプレートと実施例1基板との距離は200μmとした。傾き角度は、1.5°とした。次に、前記0.6wt%のTIPS−ペンタセン・クロロホルム溶液12μlをガラス平板と試験例1基板との間に注入した。
この条件で、まず、種結晶を作成してから、前記結晶成長部で前記種結晶を成長させた他は、先に記載の種結晶作成実験と同様にして、実施例1の有機半導体結晶膜を作成した。
図27は、実施例1のTIPS−ペンタセン結晶膜の偏光顕微鏡写真である。
右回り方向に37°傾けたときの写真に示すように、先端側が暗部とされ、帯部の先端側で明部となる領域が存在している。また、左回り方向に34°傾けたときの写真では、逆の明暗となった。これにより、回り方向に37°傾けたときの写真で同時に暗部となる領域を同一のドメインであると認定した。
図28も、実施例1のTIPS−ペンタセン結晶膜の偏光顕微鏡写真である。大面積ドメインの面積として、親液部の幅(結晶成長方向に対して垂直方向)に対して80%以上のドメイン幅が維持されているドメイン領域の面積と定義すると、ドメイン領域は
図25の枠で囲まれた領域となり、ドメイン面積は2.5mm
2であった。
【0083】
(実施例2)
異なる親液・撥液パターンを有する結晶成長用基板(実施例2基板)を作成し、用いた他は実施例1と同様にして、実施例2の有機半導体結晶膜を作成した。
ここで、種結晶部は、線幅30μm、線長3mmとした。また、結晶成長部は、三角形部と帯部とを有するものとした。三角形部の頂点角度16°、長さ4.2mm、幅1.2mmとした。帯部の幅1.2mm、長さ11.8mmとした。
図29は、実施例2のTIPS−ペンタセン結晶膜の偏光顕微鏡写真である。
左回り方向に38°傾けたときの写真に示すように、先端側が暗部とされ、帯部の先端部両端側で明部となった。また、右回り方向に22°傾けたときの写真では、逆の明暗となった。これにより、左回り方向に38°傾けたときの写真で同時に暗部となる領域を同一のドメインであると認定した。
図30も、実施例2のTIPS−ペンタセン結晶膜の偏光顕微鏡写真である。大面積ドメインの面積として、親液部の幅(結晶成長方向に対して垂直方向)に対して80%以上のドメイン幅が維持されている領域の面積と定義すると、本実施例のドメイン領域は
図27の枠で囲まれた領域となり、ドメイン面積は3.29mm
2であった。
実施例1、2の条件を表2に、結果を表3に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
2.5mm
2以上の大面積の有機半導体結晶ドメインを結晶成長部の頂角から形成することができた。