特許第6229928号(P6229928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229928
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】照明装置および投射装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20171106BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G03B21/14 A
   G03B21/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-134945(P2013-134945)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-11101(P2015-11101A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】倉 重 牧 夫
【審査官】 関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−237968(JP,A)
【文献】 特開2002−107543(JP,A)
【文献】 特開2013−015820(JP,A)
【文献】 特開2012−255982(JP,A)
【文献】 特開2010−197916(JP,A)
【文献】 特開2012−123381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00
G03B 21/14
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に含まれる特定の波長域の光を回折するホログラム記録媒体と、
前記ホログラム記録媒体における前記入射光の入射面とは反対側の面側に配置され、前記ホログラム記録媒体を透過した光を前記ホログラム記録媒体の回折方向と同じ方向に反射させる反射部材と、
前記ホログラム記録媒体で回折された光と、前記反射部材で反射されて前記ホログラム記録媒体を透過した光とを第1の領域に集光させる集光光学系と、
前記第1の領域に集光された光を全反射させながら伝搬させて、第2の領域の全域で均一化させる均一化光学系と、を備え
前記ホログラム記録媒体は、前記反射部材に対向する面側で、少なくとも2回以上前記反射部材からの光を反射させることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記ホログラム記録媒体に入射される光は、前記特定の波長域を含む複数の波長域成分を含んでおり、
前記ホログラム記録媒体で回折される光の前記特定の波長域は、前記反射部材で反射される光の波長域内に含まれることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記均一化光学系は、入射面に対応する前記第1の領域に入射された光を筒状筐体の内面で全反射させながら伝搬させて、出射面に対応する前記第2の領域の全域で光量が均一な光を出射させるインテグレータロッドを有することを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記ホログラム記録媒体と前記反射部材との間でN回(Nは1以上の整数)折り返した光は、前記ホログラム記録媒体を透過して、前記ホログラム記録媒体の回折方向と同じ方向に伝搬することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記入射光が前記ホログラム記録媒体上を走査するように、前記ホログラム記録媒体にコヒーレント光を照射する照射装置を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記照射装置は、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源から放射された前記コヒーレント光の反射角度を調整可能で、反射されたコヒーレント光を前記ホログラム記録媒体上で走査させる走査デバイスと、を有することを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記照射装置は、前記ホログラム記録媒体を振動させる振動機構を有することを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の照明装置と、
前記均一化光学系により照明される前記第2の領域の周辺に配置され、変調画像を生成する光変調器と、
前記光変調器で生成される変調画像を投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光を用いて所定の領域を均一に照明する照明装置および投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型のホログラム記録媒体は、特定波長域の光を高効率に回折できることが知られている。また、体積型ホログラムは、規則的な画素構造を持たないように設計できるため、レーザ照明系の強度分布が不均一な場合にも使用できる。本発明者は、過去に、体積型ホログラムをレーザ光のスペックル低減のために使用した投写型映像表示装置を発明した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−58712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザ光源から放射されるレーザ光の初期波長は特に半導体レーザーでは変動しやすく、また、温度変化によってもレーザ光の波長が変動するおそれがある。レーザ光の波長が変動すると、ホログラム記録媒体での回折効率が低下してしまう。
【0005】
また、温度が変化すると、ホログラム記録媒体でも、回折可能な波長帯域がシフトして、回折効率が低下する場合がある。
【0006】
さらに、レーザ光は、スペックルの発生の要因になるが、レーザ光の波長帯域によっては、スペックルがあまり目立たない場合があり、必ずしもスペックル低減のための対策が必要であるとは限らない。
【0007】
このような事情に鑑みて、本発明の目的は、レーザ光の波長やホログラム記録媒体の回折可能な波長が変動しても、入射光の利用効率低下が抑えられる照明装置および投射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る照明装置は、入射光に含まれる特定の波長域のコヒーレント光を回折する反射型ホログラム記録媒体と、
前記反射型ホログラム記録媒体における前記入射光の入射面とは反対側の面側に配置され、前記反射型ホログラム記録媒体を透過した光を前記反射型ホログラムの回折方向と同じ方向に反射させる反射部材と、
前記反射型ホログラム記録媒体で回折された光と、前記反射部材で反射されて前記反射型ホログラム記録媒体を透過した光とを第1の領域に集光させる集光光学系と、
前記第1の領域に集光された光を全反射させながら伝搬させて、第2の領域の全域で均一化させる均一化光学系と、を備える。
【0009】
前記反射型ホログラム記録媒体に入射される光は、前記特定の波長域を含む複数の波長域成分を含んでおり、
前記反射型ホログラム記録媒体で回折される光の前記特定の波長域は、前記反射部材で反射される光の波長域内に含まれるものでもよい。
【0010】
前記均一化光学系は、入射面に入射された光を筒状筐体の内面で全反射させながら伝搬させて、出射面の全域で光量が均一な光を出射させるインテグレータロッドを有していてもよい。
【0011】
前記反射型ホログラム記録媒体と前記反射部材との間でN回(Nは1以上の整数)折り返した光は、前記反射型ホログラム記録媒体を透過して、前記反射型ホログラムの回折方向と同じ方向に伝搬してもよい。
【0012】
前記入射光が前記反射型ホログラム記録媒体上を走査するように、前記反射型ホログラム記録媒体にコヒーレント光を照射する照射装置を備えていてもよい。
【0013】
前記照射装置は、
コヒーレント光を放射する光源と、
前記光源から放射された前記コヒーレント光の反射角度を調整可能で、反射されたコヒーレント光を前記ホログラム記録媒体上で走査させる走査デバイスと、を有していてもよい。
【0014】
前記照射装置は、前記反射型ホログラム記録媒体を振動させる振動機構を有していてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る投射装置は、上述した照明装置と、
前記均一化光学系により照明される前記第2の領域の周辺に配置され、変調画像を生成する光変調器と、
前記光変調器で生成される変調画像を投射する投射光学系と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ光の波長やホログラム記録媒体の回折可能な波長が変動しても、入射光の利用効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る照明装置40を含む投射装置20の概略構成を示すブロック図。
図2】反射型ホログラム記録媒体55を透過した光の進行方向を示す図。
図3】吸収ロスがある場合の反射型ホログラム記録媒体55を透過した光の進行方向を示す図。
図4】ホログラム記録媒体55に散乱板6の像を干渉縞として形成する様子を説明する図。
図5図4の露光工程を経て得られたホログラム記録媒体55に形成された干渉縞を用いて散乱板の像を再生する様子を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから適宜変更したり、誇張してある。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る照明装置40を含む投射装置20の概略構成を示すブロック図である。図1の投射装置20は、照明装置40と、光変調器30と、投射光学系80とを備えている。
【0020】
照明装置40は、反射型ホログラム記録媒体55と、反射部材56と、照射装置60と、集光光学系70と、均一化光学系71とを備えている。
【0021】
照射装置60は、特定の波長域を含む複数の波長域のコヒーレント光を反射型ホログラム記録媒体55の一方の主面に照射する。
【0022】
反射型ホログラム記録媒体55は、照射装置60からのコヒーレント光に含まれる特定の波長域のコヒーレント光を回折する。以下では、照射装置60からのコヒーレント光が入射される反射型ホログラム記録媒体55の一方の面を入射面と呼び、その反対側の面を背面と呼ぶ。
【0023】
反射部材56は、反射型ホログラム記録媒体55の背面側に配置されて、反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光を反射型ホログラムの回折方向と同じ方向に反射させる。反射部材56は、例えば反射ミラーで構成される。ここで、同じ方向とは、より詳細には、均一化光学系71にて利用可能な範囲を進行する光の方向を指し、その意味では、反射型ホロングラム記録媒体55を透過したコヒーレント光の方向と反射型ホログラムの回折方向とは若干ずれていてもよい。
【0024】
このように、照射装置60が照射するコヒーレント光のうち、特定の波長域のコヒーレント光は反射型ホログラム記録媒体55で回折され、他の波長域のコヒーレント光は反射型ホログラム記録媒体55を透過した後に反射部材56で反射される。反射型ホログラム記録媒体55による回折光と反射部材56による反射光はいずれも、同じ方向を進み、集光光学系70に入射される。これにより、反射型ホログラム記録媒体55で回折できなった波長域成分のコヒーレント光も、集光光学系70に入射させることができる。ここで、特定の波長域とは、反射型ホログラム記録媒体55に干渉縞を記録する際に参照光および記録光の波長に依存する波長域である。反射型ホログラム記録媒体55で回折される特定の波長域は、反射部材56で反射される光の波長域内に含まれるものである。
【0025】
反射部材56は、反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光を全反射させる。このため、反射部材56の反射面は、反射部材56での反射光が反射型ホログラム記録媒体55による回折光と同じ方向に進むように傾き調整される。より具体的には、照射装置60から反射型ホログラム記録媒体55を透過して反射部材56の反射面に入射される方向に合わせて、反射面が傾き調整される。
【0026】
集光光学系70は、反射型ホログラム記録媒体55で回折されたコヒーレント光と、反射部材56で反射されて反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光とを、第1の領域に集光させる。ここで、第1の領域とは、具体的には、均一化光学系71の入射面である。集光光学系70は、例えば凸レンズを含む光学系で構成される。
【0027】
集光光学系70を設けることで、反射型ホログラム記録媒体55上の任意の位置で拡散されたコヒーレント光は、集光光学系70にてその拡散角が抑制されて、均一化光学系71の入射面である第1の領域に入射される。これにより、ホログラム記録媒体55で拡散されたコヒーレント光のうち、第1の領域の照明に用いられないコヒーレント光の割合を減らすことができ、第1の領域の照明強度をより向上できる。
【0028】
均一化光学系71は、その入射面である第1の領域に集光されたコヒーレント光を全反射させながら伝搬させて、出射面である第2の領域の全域で均一化させる。均一化光学系71は、例えばインテグレータロッドを用いて構成可能である。インテグレータロッドは、筒状になっており、その入射面に入射されたコヒーレント光を内面で全反射させながら出射面方向に伝搬させる。これにより、均一化光学系71の出射面からは、出射面内の全域で光量が均一なコヒーレント光が出射される。ここで、均一化の程度は、個々の使用形態によって異なるが、概略的な目安としては、出射面での輝度分布のばらつきが10%以内である。
【0029】
均一化光学系71の出射面である第2の領域内の全域は均一な光量で照明されるため、この第2の領域を面照明光として用いることができる。すなわち、本実施形態に係る照明装置40は、均一化光学系71の出射面のサイズで規定される面照明光源として用いることができる。
【0030】
本実施形態の特徴の一つは、反射型ホログラム記録媒体55が波長選択性を有することに着目して、反射型ホログラム記録媒体55で回折できなかったコヒーレント光の少なくとも一部を、反射部材56で反射させて、回折光と反射光をともに集光光学系70に入射させることにある。これにより、照射装置60から反射型ホログラム記録媒体55に入射されるコヒーレント光の利用効率を向上でき、均一化光学系71の出射面である第2の領域の照明強度を上げることができる。
【0031】
図2は反射型ホログラム記録媒体55を透過した光の進行方向を示す図である。図2では、反射型ホログラム記録媒体55の回折効率をα(0<α<1)としている。この場合、照射装置60から反射型ホログラム記録媒体55に入射されるコヒーレント光のうち、反射型ホログラム記録媒体55で回折されるコヒーレント光の割合は、αで表される。また、反射型ホログラム記録媒体55で回折されずに透過するコヒーレント光の割合は、(1−α)で表される。
【0032】
反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光が反射部材56で全反射したとしても、全反射したすべてのコヒーレント光が一回で反射型ホログラム記録媒体55を透過するとは限らず、反射部材56での反射光の一部は反射型ホログラム記録媒体55の背面で反射されて、再び反射部材56の方向に進行する。反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光の割合が(1−α)の場合、反射部材56で反射後に反射型ホログラム記録媒体55を透過するコヒーレント光の割合は(1−α)で表され、反射型ホログラム記録媒体55の背面で反射されるコヒーレント光の割合は(1−α)αで表される。
【0033】
同様に、反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光の割合が(1−α)αの場合、反射部材56で反射後に反射型ホログラム記録媒体55を透過するコヒーレント光の割合は(1−α)αで表され、反射型ホログラム記録媒体55の背面で反射されるコヒーレント光の割合は(1−α)αで表される。
【0034】
このように、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間でN回(Nは1以上の整数)コヒーレント光が折り返すときの効率ηは、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間での透過吸収を考慮しない場合は、以下の(1)式で表される。
【数1】
【0035】
実際には、図3に示すように、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間でコヒーレント光がN回折り返す際に、反射型ホログラム記録媒体55を透過する際のコヒーレント光の吸収ロスがあり、その吸収ロスを透過率βで表し、反射型ホログラム記録媒体55の回折効率をα’(0<α’<1)とすると、反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光の割合は(1−α’)βで表され、反射部材56で反射後に反射型ホログラム記録媒体55を透過するコヒーレント光の割合は(1−α)βで表され、反射型ホログラム記録媒体55の背面で反射されるコヒーレント光の割合は(1−α’)α’βで表される。ただし、α’は回折時に材料中を光が通過する際の吸収ロスを考慮した効率となっている。
【0036】
同様に、反射型ホログラム記録媒体55を透過したコヒーレント光の割合が(1−α’)α’βの場合、反射部材56で反射後に反射型ホログラム記録媒体55を透過するコヒーレント光の割合は(1−α’)α’βで表され、反射型ホログラム記録媒体55の背面で反射されるコヒーレント光の割合は(1−α’)α’βで表される。
【0037】
このように、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間でN回(Nは1以上の整数)コヒーレント光が折り返すときの効率η’は、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間での透過吸収を考慮した場合は、以下の(2)式で表される。
【数2】
【0038】
上述した(1)式を(2)式と比較すればわかるように、反射型ホログラム記録媒体55と反射部材56との間でコヒーレント光の吸収ロスがある場合は、照射装置60からのコヒーレント光の利用効率が落ちるが、反射部材56を設けない場合の利用効率は、(1)式と(2)式の右辺第1項のみであり、反射部材56を設けることで、各式の右辺第2項の成分が加わるため、コヒーレント光の入射効率を向上できる。
【0039】
本実施形態に係る照明装置40は、それ単体で、面照明光源として利用できる他、図1に示すように、投射装置20に組み込むことも可能である。図1に示す投射装置20は、照明装置40の他に、光変調器30と投射光学系80を備えている。
【0040】
光変調器30は、均一化光学系71の出射面である第2の領域の近傍に配置され、第2の領域の照明光を利用して、変調画像を生成する。
【0041】
光変調器30としては、例えばDMD(Digital Micromirror Device)などのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる反射型のマイクロディスプレイを用いることができる。あるいは、光変調器30として透過型の液晶パネルを用いてもよい。
【0042】
理想的には、光変調器30の入射面は、均一化光学系71の出射面である第2の領域と同一の位置で、かつ第2の領域と同一の形状およびサイズであることが好ましい。この場合、照明装置40からのコヒーレント光を、無駄なく投射光学系80での投射に利用可能となる。
【0043】
光変調器30で生成された変調画像は投射光学系80に入射される。投射光学系80は、例えば複数枚のレンズ群で構成されたプロジェクションレンズ81を有する。光変調器30で生成された変調画像は、プロジェクションレンズ81で屈折されて拡散スクリーン15上に投射される。プロジェクションレンズ81の径や、プロジェクションレンズ81と光変調器30との距離や、プロジェクションレンズ81と拡散スクリーン15との距離によって、拡散スクリーン15に投影される変調画像のサイズを調整することができる。
【0044】
図1の拡散スクリーン15は透過型であり、投射された変調画像光を拡散する。なお、拡散スクリーン15は、反射型でもよい。
【0045】
図1では省略しているが、拡散スクリーン15で拡散された変調画像を、不図示のハーフミラーに入射して、このハーフミラーで、拡散スクリーン15で拡散された変調画像光の一部を反射させて変調画像の虚像を形成して、この虚像を外光とともにハーフミラーを介して観察者が視認できるようにしてもよい。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置を実現できる。この場合、ハーフミラーとして、例えば、車両のフロントガラスを用いることができ、観察者は運転席に座って前方を向くことで、フロントガラスを通して車外の景色を見ながら、虚像を視認できる。あるいは、ハーフミラーの代わりに、種々の光学素子やプリズムを用いてもよい。
【0046】
光変調器30では、種々の変調画像を生成可能であり、光変調器30で変調画像を生成して、その変調画像を均一化光学系71の出射面からの照明光で照明することで、種々の変調画像を拡散スクリーン15上に投射することができる。
【0047】
均一化光学系71の出射面は、時間的に異なる角度で照明され、この照明光を利用して光変調器30で生成された変調画像が投射光学系80で拡散スクリーン15に投射されるため、拡散スクリーン15の入射角度も時間的に角度変化する。これにより、拡散スクリーン15で生成されるスペックルパターンが時間的に変化し、観察者の目には不可視化される。
【0048】
図1の投射装置20は、均一化光学系71の出射面に光変調器30を配置しており、光変調器30の照明領域のサイズは、均一化光学系71の出射面のサイズに依存することになる。よって、例えば均一化光学系71の出射面のサイズに見合ったサイズの光変調器30を配置しなければならないという制約が生じる。
【0049】
このような制約をなくすには、均一化光学系71の出射面と光変調器30との間に、第2の領域のサイズ変換手段を設ければよい。このサイズ変換手段は、例えばリレー光学系で実現可能である。
【0050】
本実施形態は、均一化光学系71から投射光学系80までを既存の光学部材を流用して構成できるという特徴を持っている。すなわち、図1の投射装置20は、既存の光学部材に、本実施形態に係る照明装置40を組み合わせるだけで、入射光の利用効率の高い投射装置20を実現できる。このように、本実施形態では、既存の光学部材を流用できることから、設計変更が容易で、設計変更に要するコストと時間を削減できる。
【0051】
また、本実施形態では、反射型ホログラム記録媒体55と均一化光学系71との間に集光光学系70を設けているため、照明装置40の位置が多少ずれても、集光光学系70で焦点調節を行うことができ、照明装置40と均一化光学系71との位置合わせが容易になることから、光学設計が容易になり、製造時の作業性も向上し、光学的な位置ずれも生じにくく、性能のばらつきを抑制できる。
【0052】
本実施形態では、均一化光学系71の出射面である第2の領域の光量の均一性や第2の領域のビーム形状は均一化光学系71に依存するため、反射型ホログラム記録媒体55でコヒーレント光を均等に拡散させる必要はない。多少不均一であっても、均一化光学系71を介在することで、光量の均一化を実現できる。また、反射型ホログラム記録媒体55でのコヒーレント光の拡散範囲が狭くても、均一化光学系71の出射面の形状で、第2の領域のビーム形状が決まる。このため、反射型ホログラム記録媒体55の拡散性能はある程度緩和されるが、反射型ホログラム記録媒体55で拡散されたコヒーレント光が、均一化光学系71内の内面で全反射するような拡散特性を持った反射型ホログラム記録媒体55を使用する必要がある。
【0053】
反射型ホログラム記録媒体55は、照射装置60から放射されるコヒーレント光を再生照明光Laとして受けて、当該コヒーレント光を高効率で回折する必要がある。とりわけ、ホログラム記録媒体55は、その各位置、言い換えると、その各点とも呼ばれるべき各微小領域に入射するコヒーレント光を回折することによって、散乱板の像を再生することができるようになっている。
【0054】
均一化光学系71の出射面である第2の領域は、上述したように、その全域が均一な光量のコヒーレント光で照明されるが、そのままではコヒーレント光特有のスペックルが目立ちやすくなる。スペックルを目立たなくさせるには、照射装置60からのコヒーレント光を反射型ホログラム記録媒体55の決まった場所に入射させるのではなく、このコヒーレント光を反射型ホログラム記録媒体55の入射面上で走査さればよい。このような走査を実現するには、照射装置60内に、コヒーレント光を放射するレーザ光源61の他に、レーザ光源61から放射されたコヒーレント光を反射型ホログラム記録媒体55の入射面上で走査させる走査デバイス65を設ければよい。
【0055】
走査デバイス65は、例えば、レーザ光源61からのコヒーレント光の反射角度を時間的に変化させる。これにより、走査デバイス65からのコヒーレント光は、反射型ホログラム記録媒体55上を走査することになる。これにより、走査デバイス65からのコヒーレント光は、ホログラム記録媒体55への入射角度および入射位置を時間的に変えながら、ホログラム記録媒体55の記録面上の干渉縞により回折される。したがって、均一化光学系71には、入射角度や入射位置が時間的に変化するコヒーレント光が入射され、これらコヒーレント光が均一化光学系71内で全反射しながら出射面方向に伝搬するため、均一化光学系71の出射面は、時間的に異なる角度で、かつ均一な光量で照明されることになる。
【0056】
なお、一部の波長域(例えば、青成分)のコヒーレント光については、人間の目の視感度が低いため、スペックルがほとんど気にならない場合がある。したがって、照射装置60内に走査デバイス65を設けて、反射型ホログラム記録媒体55上でコヒーレント光を走査させることは必ずしも必須ではない。
【0057】
また、図1では、照射装置60内に走査デバイス65を設けて、コヒーレント光を反射型ホログラム記録媒体55上で走査させる例を示したが、走査デバイス65を設ける代わりに、反射型ホログラム記録媒体55を振動させてもよい。これにより、照射装置60からのコヒーレント光の照射位置が固定されていても、結果として、反射型ホログラム記録媒体55上でコヒーレント光を走査させることができ、走査デバイス65を設けた場合と同様のスペックル低減効果が得られる。反射型ホログラム記録媒体55を振動させるには、例えば振動モータやボイスコイルなどの振動機構を設ければよい。
【0058】
照射装置60内のレーザ光源61は、単色のレーザ光源61でもよいし、発光色の異なる複数のレーザ光源61でもよい。例えば、赤、緑、青の複数のレーザ光源61を用いて構成してもよい。複数のレーザ光源61を用いる場合は、各レーザ光源61からのレーザ光が走査デバイス65上の同一点を照射するようにする。これにより、ホログラム記録媒体55は、各レーザ光源61の照明色が混ざり合った再生照明光で照明されることになる。この場合、各レーザ光源61からのコヒーレント光は、走査デバイス65の入射角度に応じた反射角度で反射されて、ホログラム記録媒体55上に入射され、ホログラム記録媒体55から別個に回折されて、第2の領域上で重ね合わされて合成色になる。例えば、赤、緑、青の複数のレーザ光源61を用いて構成して場合には白色になる。あるいは、各レーザ光源61ごとに、別個の走査デバイス65を設けてもよい。
【0059】
なお、例えば白色で照明する場合は、赤緑青以外の色で発光するレーザ光源61、例えば、黄色で発光するレーザ光源61を別個に設けた方が、より白色に近い色を再現できる場合もある。したがって、照射装置60内に設けるレーザ光源61の種類や数は、特に限定されるものではない。
【0060】
反射型ホログラム記録媒体55は、特定の波長域のみを回折させるため、例えば、レーザ光源61が赤緑青の3色の波長成分を含んでいて、そのうちの緑成分のみを回折させる場合は、残りの赤と青成分のコヒーレント光は反射型ホログラム記録媒体55を透過して、反射部材56にて反射される。
【0061】
光変調器30にてカラーの変調画像を形成する場合には、種々の実現手法が考えられる。光変調器30がシリコン基板上に形成された液晶表示装置などで構成されていて、各画素ごとにカラーフィルタを有する場合には、第2の領域を白色光とすることで、光変調器30で生成される変調画像をカラー化することができる。
【0062】
あるいは、例えば、赤色の変調画像を生成する光変調器30と、緑色の変調画像を生成する光変調器30と、青色の変調画像を生成する光変調器30とを近接配置し、これら3つの光変調器30のそれぞれを照明する3つの第2の領域を、順次にホログラム記録媒体55からの拡散光で照明してもよい。これにより、3つの光変調器30で生成された3色の変調画像が合成されて、カラーの変調画像を生成可能となる。このような時分割駆動の代わりに、3つの光変調器30で同時に生成した3色の変調画像をプリズム等を用いて合成して、カラーの変調画像を生成してもよい。
【0063】
上述した投射光学系80は、主には、光変調器30の変調画像を拡散スクリーン15に投影するために設けられている。拡散スクリーン15を設けることで、スペックルが重ねられて平均化される結果、スペックルが目立たなくなる。
【0064】
本実施形態では、均一化光学系71の出射面である第2の領域を照明するために、ホログラム記録媒体55を含む反射型ホログラム記録媒体55を用いている。ホログラム記録媒体55は、例えばフォトポリマーを用いた反射型の体積型ホログラムである。図4はホログラム記録媒体55に散乱板の像を干渉縞として形成する様子(以下、露光工程という)を説明する図である。
【0065】
図4に示すように、ホログラム記録媒体55は、実物の散乱板6からの散乱光を物体光Loとして用いて作製されている。図4には、ホログラム記録媒体55をなすようになる感光性を有したホログラム感光材料58に、互いに干渉性を有するコヒーレント光からなる参照光Lrと物体光Loとが露光されている状態が示されている。
【0066】
参照光Lrとしては、例えば、特定波長域のレーザ光を発振するレーザ光源61からのレーザ光が用いられる。参照光Lrは、レンズからなる集光素子7を透過してホログラム感光材料58に入射する。図4に示す例では、参照光Lrを形成するためのレーザ光が、集光素子7の光軸と平行な平行光束として、集光素子7へ入射する。参照光Lrは、集光素子7を透過することによって、それまでの平行光束から収束光束に整形(変換)され、ホログラム感光材料58へ入射する。この際、収束光束Lrの焦点位置FPは、ホログラム感光材料58を通り過ぎた位置にある。すなわち、ホログラム感光材料58は、集光素子7と、集光素子7によって集光された収束光束Lrの焦点位置FPと、の間に配置される。
【0067】
一方、物体光Loは、例えばオパールガラスからなる散乱板6からの散乱光として、ホログラム感光材料58に入射する。図4の例では、作製されるべきホログラム記録媒体55が反射型であり、物体光Loは、参照光Lrと反対側の面からホログラム感光材料58へ入射する。物体光Loは、参照光Lrと干渉性を有することが前提である。したがって、例えば、同一のレーザ光源61から発振されたレーザ光を分割させて、分割された一方を上述の参照光Lrとして利用し、他方を物体光Loとして使用することができる。
【0068】
図4に示す例では、散乱板6の板面への法線方向と平行な平行光束が、散乱板6へ入射して散乱され、そして、散乱板6を透過した散乱光が物体光Loとしてホログラム感光材料58へ入射している。この方法によれば、通常安価に入手可能な等方散乱板を散乱板6として用いた場合に、散乱板6からの物体光Loを、ホログラム感光材料58に概ね均一な光量分布で入射させることができる。またこの方法によれば、散乱板6による散乱の度合いにも依存するが、ホログラム感光材料58の各位置に、散乱板6の出射面6aの全域から概ね均一な光量で物体光Loが入射しやすくなる。このような場合には、得られたホログラム記録媒体55の各位置に入射した光が、それぞれ、散乱板6の像5を同様の明るさで再生し、かつ、再生された散乱板6の像5を概ね均一な明るさで観察することが実現され得る。
【0069】
以上のようにして、参照光Lrおよび物体光Loがホログラム感光材料58に露光されると、参照光Lrおよび物体光Loが干渉してなる干渉縞が生成され、この光の干渉縞が、何らかのパターン例えば、体積型ホログラムでは、一例として、屈折率変調パターンとして、ホログラム感光材料58に記録される。その後、ホログラム感光材料58の種類に対応した適切な後処理が施され、ホログラム記録材料55が得られる。
【0070】
図5図4の露光工程を経て得られたホログラム記録媒体55に形成された干渉縞を用いて散乱板の像を再生する様子を説明する図である。図5に示すように、図4のホログラム感光材料58にて形成されたホログラム記録媒体55は、露光工程で用いられたレーザ光と同一波長の光であって、露光工程における参照光Lrの光路を逆向きに進む光によって、そのブラッグ条件が満たされるようになる。すなわち、図5に示すように、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する焦点FPの相対位置(図4参照)と同一の位置関係をなすようにしてホログラム記録媒体55に対して位置する基準点SPから発散し、露光工程時における参照光Lrと同一の波長を有する発散光束は、再生照明光Laとして、ホログラム記録媒体55にて回折され、露光工程時におけるホログラム感光材料58に対する散乱板6の相対位置(図4参照)と同一の位置関係をなすようになるホログラム記録媒体55に対する特定の位置に、散乱板6の再生像5を生成する。
【0071】
この際、散乱板6の再生像5を生成する再生光、すなわち再生照明光Laをホログラム記録媒体55で回折してなる光Lbは、露光工程時に散乱板6からホログラム感光材料58へ向かって進んでいた物体光Loの光路を逆向きに進む光として散乱板6の像5の各点を再生する。ここで、図4に示したように、露光工程時に散乱板6の出射面6aの各位置から出射する物体光Loが、それぞれ、ホログラム感光材料58の概ね全領域に入射するように拡散している。すなわち、ホログラム感光材料58上の各位置には、散乱板6の出射面6aの全領域からの物体光Loが入射し、結果として、出射面6a全体の情報がホログラム記録媒体55の各位置にそれぞれ記録されている。このため、図5に示された、再生照明光Laとして機能する基準点SPからの発散光束をなす各光は、それぞれ単独で、ホログラム記録媒体55の各位置に入射して互いに同一の輪郭を有した散乱板6の像5を、互いに同一の位置(第2の領域)に再生することができる。
【0072】
ホログラム記録媒体55で拡散された光は、集光光学系70により拡散角度が抑制されて、第2の領域の方向に進行するため、無駄な散乱光を効果的に抑制できる。したがって、ホログラム記録媒体55に入射される再生照明光Laのほとんどを、第2の領域を照明するために有効利用できる。
【0073】
このように、本実施形態では、反射型ホログラム記録媒体55が波長選択性を有することに着目して、反射型ホログラム記録媒体55で回折できない波長成分については、反射型ホログラム記録媒体55の背面側に配置した反射部材56で反射させて、この反射光を回折光と同じ方向に伝搬させるため、集光光学系70に入射されるコヒーレント光の光量を増大でき、結果として、均一化光学系71の出射面である第2の領域の光量も増大でき、照射装置60からのコヒーレント光の利用効率を向上できる。
【0074】
また、インテグレータロッド等からなる均一化光学系71を設けることで、その出射面で光量が均一なコヒーレント光が得られるだけでなく、出射面でのコヒーレント光の出射角度が時間的に変化するようになる。よって、出射面でのコヒーレント光を投射光学系80に導くことで、拡散スクリーン15上のスペックルパターンを時間的に変化させることができ、スペックルが不可視化される。
【0075】
さらに、反射型ホログラム記録媒体55と均一化光学系71の間に集光光学系70を設けることで、反射型ホログラム記録媒体55で拡散されたコヒーレント光の拡散角度を抑制でき、反射型ホログラム記録媒体55で拡散されたコヒーレント光のうち、第2の領域の照明に利用されないコヒーレント光の割合を低減でき、第2の領域での照明強度を向上できる。
【0076】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0077】
15 拡散スクリーン、20 投射装置、30 光変調器、40 照明装置、55 反射型ホログラム記録媒体、56 反射部材、58 ホログラム感光材料、60 照射装置、61 光源、65 走査デバイス、70 集光光学系、71 均一化光学系、80 投射光学系、81 プロジェクションレンズ
図1
図2
図3
図4
図5