(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板回転手段は、前記回転軸線まわりに回転可能な回転ベースと、前記回転ベースの周縁部に設けられ、基板の周端面に当接して基板を保持する複数の基板保持部材とを含む、請求項4に記載の基板処理装置。
前記処理液供給手段は、前記基板回転手段によって回転されている基板の上面に処理液を供給するための処理液上面供給手段と、前記基板回転手段によって回転されている基板の下面に処理液を供給するための処理液下面供給手段とを含み、
前記処理液上面供給手段が前記洗浄液上面供給手段として兼用されており、
前記処理液下面供給手段が前記洗浄液下面供給手段として兼用されている、請求項4または5に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転ベースの上面に上方から洗浄液が供給される場合、回転ベース上を流れる洗浄液が回転ベースの挟持部材で液跳ねを生じる結果、回転ベースの周縁部から、多方向に向けて洗浄液が飛散するおそれがある。そのため、処理カップの内壁のうち洗浄したい箇所に洗浄液を的確に供給することが困難であり、ゆえに、処理カップの内壁の洗浄が不十分になるおそれがある。この場合、基板処理後にパーティクル汚染が発生するおそれもある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、処理カップの内壁を、広範囲かつ良好に洗浄することができる処理カップ洗浄方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、パーティクルの発生を防止または抑制しながら、基板に処理液を用いた処理を良好に施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板(W)を水平姿勢に保持し
て所定の回転軸線(A1)まわりに回転させるための基板回転手段(3)の周囲を取り囲むように配置された内壁を有し、前記基板回転手段によって回転されている
前記基板から飛散する処理液を捕獲する処理カップ(7)を洗浄する方法であって、前記基板回転手段に前記基板またはダミー基板(DW)を保持した状態で、前記基板回転手段の回転動作を作動させる基板回転手段作動ステップ(S2;S12)と、前記基板回転手段作動ステップと並行して実行され、前記基板または前記ダミー基板の上面および下面の双方に洗浄液を供給して、当該基板または当該ダミー基板の周縁部から飛散する洗浄液を前記処理カップの前記内壁に着液させることにより、前記処理カップの前記内壁に洗浄液を供給する洗浄液供給ステップ(S4;S14)と、前記基板回転手段作動ステップおよび前記洗浄液供給ステップと並行して、前記基板または前記ダミー基板の周縁部から飛散する洗浄液の方向を変更させる飛散方向変更ステップ(S5;S1
5)とを含
み、前記飛散方向変更ステップは、前記基板または前記ダミー基板の上面に供給されている洗浄液と下面に供給されている洗浄液の流量比とを変更する流量比変更ステップを含む、処理カップ洗浄方法である。
【0009】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符合を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
この方法によれば、基板またはダミー基板の上面および下面の双方に洗浄液が供給されることにより、基板または当該ダミー基板の周縁部から飛散する洗浄液が処理カップの内壁に着液して、当該内壁に洗浄液が供給される。供給された洗浄液を用いて、処理カップの内壁が洗浄される。基板またはダミー基板の上下面の双方に洗浄液が供給されているので、基板またはダミー基板の周縁部において、基板またはダミー基板の下面に供給された洗浄液と上面に供給された洗浄液とが干渉し、基板またはダミー基板の周縁部から所定の飛散方向に向けて洗浄液が飛散する。
【0010】
基板またはダミー基板の周縁部からの洗浄液の飛散方向が変わると、処理カップの内壁における洗浄液の着液位置が上下動する。そのため、回転状態にある基板またはダミー基板の上下面への洗浄液の供給に並行して、周縁部からの洗浄液の飛散方向を所定の範囲内で変更させることにより、処理カップの内壁における、洗浄液の着液位置を上下動させることができる。これにより、処理カップの内壁を、広範囲かつ良好に洗浄することができる。その結果、処理カップの内壁において薬液が乾燥して結晶化するのを確実に防止でき、これにより、パーティクルの発生を防止または抑制しながら、基板に処理液を用いた処理を良好に施すことができる。
【0011】
また、基板またはダミー基板の上下面の双方に洗浄液が供給されている場合、上下面への洗浄液の供給流量比を変更することにより、周縁部からの洗浄液の飛散方向を変更させることができる。洗浄液の飛散方向は、基板またはダミー基板の上下面への洗浄液の供給流量比に依存する。そのため、洗浄液の供給流量比を変更することにより、処理カップの内壁における洗浄液の着液位置を容易に変更できる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、前記飛散方向変更ステップは、前記基板回転手段の回転動作の作動速度を変更する作動速度変更ステップ(S16)をさらに含む、請求項
1に記載の処理カップ洗浄方法である。
この方法によれば、基板またはダミー基板の回転速度を変更することにより、周縁部からの洗浄液の飛散方向を変更させることができる。洗浄液の飛散方向は、基板またはダミー基板の回転速度に依存する。そのため、基板またはダミー基板の回転速度を変更することにより、処理カップの内壁における洗浄液の着液位置を容易に変更できる。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、基板回転手段(3)に水平姿勢に保持された基板(W)を、所定の回転軸線(A1)まわりに回転させる基板回転ステップ(S2;S12)と、前記基板回転ステップと並行して、前記基板の上面および下面の双方に処理液を供給する処理液供給ステップ(S4;S14)とを含み、前記処理液供給ステップの実行により、前記基板の周縁部から飛散する処理液が、前記基板回転手段の周囲を取り囲むように配置された処理カップ(7)の内壁に捕獲されて、当該内壁に供給されるようになっており、前記内壁への処理液の供給によって当該内壁が洗浄されるようになっており、前記基板回転ステップおよび前記処理液供給ステップと並行して、
前記基板の上面に供給されている処理液と下面に供給されている処理液との流量比を変更して、前記基板の周縁部から飛散する処理液の方向を変更させる飛散方向変更ステップ(S5;S15,S16)をさらに含む、基板処理方法である。
【0014】
この方法によれば、請求項1に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
また、請求項1に関連して説明した作用効果に加えて次の作用効果を奏する。
すなわち、基板処理のために基板に供給されている処理液を、基板の周縁部から処理カップの内壁に供給し、その処理液を用いて処理カップの内壁を洗浄するので、処理カップの洗浄を、当該処理液を用いた基板の処理と並行して行うことができる。これにより、一連の処理プロセス毎の合間にカップ洗浄を実行する場合と比較して、基板処理の生産性の向上(スループットの向上)を図ることができる。
【0015】
また、前記処理液がリンス液を含んでいてもよい。この場合、前記の処理液供給ステップは、薬液処理後の基板に施されるリンス処理を実行する。薬液処理の後は、処理カップの内壁に薬液が付着していることが考えられる。しかしながら、薬液処理に次いで実行されるリンス処理に並行して処理カップが洗浄されるので、処理カップの内壁に付着した薬液が結晶化する前にその薬液をリンス液で洗い流すことができるから、処理カップの内壁をより一層良好に洗浄することができる。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、基板(W)を水平姿勢に保持して回転させるための基板回転手段(3)と、前記基板回転手段によって回転されている基板に処理液を供給する処理液供給手段(5,6)と、前記基板回転手段の周囲を取り囲むように配置された内壁を有し、前記基板回転手段に保持されている基板から飛散する処理液を捕獲するための処理カップ(7)と、前記基板回転手段によって回転されている前記基板またはダミー基板(DW)の上面に洗浄液を供給するための洗浄液上面供給手段(5)と、前記基板回転手段によって回転されている前記基板または前記ダミー基板の下面に洗浄液を供給するための洗浄液下面供給手段(6)と、前記洗浄液上面供給手段および前記洗浄液下面供給手段から供給されている前記洗浄液の流量比を調整するための洗浄液流量比調整手段(21;27)と、前記基板回転手段、前記洗浄液上面供給手段および前記洗浄液下面供給手段を制御して、前記基板回転手段に保持されている前記基板または前記ダミー基板を回転させるとともに、当該基板または当該ダミー基板の上面および下面の双方に洗浄液を供給して、当該基板または当該ダミー基板の周縁部から飛散する洗浄液を前記処理カップの前記内壁に着液させることにより、前記処理カップの前記内壁に洗浄液を供給する洗浄液供給制御手段(8)と
、前記洗浄液流量比調整手
段を制御して、
前記基板または前記ダミー基板の上面に供給されている洗浄液と下面に供給されている洗浄液との流量比を変更することにより、前記基板または前記ダミー基板の周縁部から飛散する洗浄液の方向を変更させる飛散方向変更制御手段(8)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0017】
この構成によれば、請求項1に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
請求項
5に記載の発明は、基板回転手段は、前記回転軸線まわりに回転可能な回転ベース(14)と、前記回転ベースの周縁部に設けられ、基板の周端面に当接して基板を保持する複数の基板保持部材(15)とを含む、請求項5に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板またはダミー基板の上面に供給された処理液は、当該上面を周縁部まで移動した後、回転している基板保持部材に当って飛散する。また、基板またはダミー基板の下面に供給された処理液は、当該下面を伝って周縁部まで移動した後、回転している基板保持部材に当って飛散する。そして、基板またはダミー基板の周縁部において、それぞれ飛散しようとしている、上面に供給された処理液と下面に供給された処理液とが干渉する。これにより、基板またはダミー基板の周縁部から所定の飛散方向に向けて洗浄液が飛散させることができる。
【0018】
請求項
6に記載のように、前記処理液供給手段は、前記基板回転手段によって回転されている基板の上面に
処理液を供給するための処理液上面供給手段(5)と、前記基板回転手段によって回転されている基板の下面に処理液を供給するための処理液下面供給手段(6)とを含み、前記処理液上面供給手段が前記洗浄液上面供給手段として兼用されており、前記処理液下面供給手段が前記洗浄液下面供給手段として兼用されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、請求項1に関連して説明した作用効果と同等の作用効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を模式的に示す図である。
基板処理装置1は、円形の半導体ウエハ等の基板Wにおけるデバイス形成領域側の表面に対して、薬液による処理を施すための枚葉型の装置である。
基板処理装置1は、処理室2内に、基板Wを保持して回転させるスピンチャック(基板回転手段)3と、スピンチャック3に保持されている基板Wの表面(上面)に薬液を供給するための薬液ノズル4と、スピンチャック3に保持されている基板Wの表面(上面)に、リンス液(処理液)または洗浄液としての水を供給するための水供給ユニット(処理液上面供給手段、洗浄液上面供給手段)5と、スピンチャック3に保持されている基板Wの裏面(下面)に処理液(薬液または水)を供給するための下面処理液供給ユニット(処理液下面供給手段、洗浄液下面供給手段)6と、スピンチャック3を取り囲む筒状の処理カップ7と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置(洗浄液供給制御手段、飛散方向変更制御手段)8とを含む。
【0022】
処理室2は、箱状の隔壁9と、隔壁9の上部から隔壁9内(処理室2内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)10と、隔壁9の下部から処理室2内の気体を排出する排気装置11とを含む。スピンチャック3、薬液ノズル4、および水供給ユニット5の水ノズル18は、隔壁9内に収容配置されている。
FFU10は隔壁9の上方に配置されており、隔壁9の天井に取り付けられている。FFU10は、隔壁9の天井から処理室2内に清浄空気を送る。排気装置11は、処理カップ7の底部に接続されており、処理カップ7の底部から処理カップ7の内部を吸引する。FFU10および排気装置11により、処理室2内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0023】
スピンチャック3として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック3は、スピンモータ12と、このスピンモータ12の駆動軸と一体化されたスピン軸13と、スピン軸13の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状の回転ベース14と、回転ベース14に配置された複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材(基板保持部材)15とを含む。複数個の挟持部材15は、回転ベース14の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0024】
複数個の挟持部材15は、互いに協動して、基板Wを水平方向に挟持する。この状態で、スピンモータ12が駆動されると、その駆動力によって回転ベース14が所定の回転軸線(鉛直軸線)A1まわりに回転され、その回転ベース14とともに、基板Wがほぼ水平な姿勢を保った状態で回転軸線A1まわりに回転される。
薬液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口を基板Wの上面の回転中心付近に向けて固定的に配置されている。薬液ノズル4には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給配管16が接続されている。薬液供給配管16の途中部には、薬液ノズル4からの薬液の供給/供給停止を切り換えるための第1薬液バルブ17が介装されている。薬液ノズル4に供給される薬液としては、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、BHF(Buffered Hydrogen Fluoride:バッファード薬液)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。
【0025】
水供給ユニット5は水ノズル18を含む。水ノズル18は、たとえば連続流の状態で液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック3の上方で、その吐出口を基板Wの上面の回転中心付近に向けて固定的に配置されている。水ノズル18には、水供給源からの水が供給される水供給配管19が接続されている。水供給配管19の途中部には、水ノズル18からの水の供給/供給停止を切り換えるための第1水バルブ20と、水供給配管19の開度を調節して、水ノズル18から吐出される水の流量を調整するための第1流量調整バルブ21とが介装されている。水ノズル18に供給される水としては、DIW(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)、脱気水等を例示することができる。
【0026】
下面処理液供給ユニット6は、スピンチャック3に保持された基板Wの下面(裏面)に向けて処理液(薬液や水)を吐出する下面ノズル22と、スピン軸13内で上下に延びる第1処理液供給配管23と、第1処理液供給配管23に接続された第2処理液供給配管24とを含む。第2処理液供給配管24には、第2薬液バルブ25を介して薬液が供給されるようになっている。また、第2処理液供給配管24には、第2水バルブ26および第2流量調整バルブ27を介して水が供給されるようになっている。
【0027】
第2水バルブ26が閉じられた状態で第2薬液バルブ23が開かれると、第2処理液供給配管24を介して、第1処理液供給配管23から下面ノズル22に薬液が供給される。下面ノズル22に供給された薬液は、その吐出口から上方に吐出される。これにより、スピンチャック3に保持されている基板Wの下面中央部に薬液が供給される。
同様に、第2薬液バルブ23が閉じられた状態で第2水バルブ26が開かれると、第2処理液供給配管24を介して、第1処理液供給配管23から下面ノズル22に水が供給される。下面ノズル22に供給された水は、その吐出口から上方に吐出される。これにより、スピンチャック3に保持されている基板Wの下面中央部に水が供給される。下面ノズル22から吐出される水の流量は、第2流量調整バルブ27によって調節されるようになっている。
【0028】
なお、薬液ノズル4および水18は、それぞれ、スピンチャック3に対して固定的に配置されている必要はなく、たとえば、スピンチャック3の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、このアームの揺動により基板Wの上面における薬液の着液位置がスキャンされる、いわゆるスキャンノズルの形態が採用されてもよい。
処理カップ7は、スピンチャック3に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ7は、スピンチャック3を取り囲む筒状部材30と、スピンチャック3と筒状部材30との間に配置された複数のカップ31〜33(第1〜第3カップ31〜33)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数のガード34〜37(第1〜第4ガード34〜37)と、複数のガード34〜37を個別に昇降させる昇降ユニット38とを含む。処理カップ7は、スピンチャック3に保持されている基板Wの外周よりも外側(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
図1において、処理カップ7は、回転軸線A1の右側と左側とで異なる状態が示されている。
【0029】
各カップ31〜33は、円筒状であり、スピンチャック3と筒状部材30との間でスピンチャック3を取り囲んでいる。内側から2番目の第2カップ32は、第1カップ31よりも外側に配置されており、第3カップ33は、第2カップ32よりも外側に配置されている。第3カップ33は、たとえば、第2ガード35と一体であり、第2ガード35と共に昇降する。各カップ31〜33は、上向きに開いた環状の溝を形成している。
【0030】
第1カップ31の溝には、第1回収/廃液配管41が接続されている。第1回収/廃液配管41には、たとえば三方弁により構成された第1切換えバルブ42を介して、第1回収配管43および第1廃液配管44がそれぞれ分岐接続されている。第1回収配管43の先端は回収ユニット(図示しない)へと延び、また、第1廃液配管44の先端は廃液ユニット(図示しない)へと延びている。第1切換えバルブ42の切換えにより、第1回収/廃液配管41を流通する液が、第1回収配管43と第1廃液配管44とに選択的に導かれる。第1カップ31の底部に導かれた処理液は、第1回収/廃液配管41を通じて回収ユニットまたは廃液ユニットに送られる。これにより、基板Wから排出された処理液が回収または廃棄される。
【0031】
第2カップ32の溝には、第2回収/廃液配管46が接続されている。第2回収/廃液配管46には、たとえば三方弁により構成された第2切換えバルブ47を介して、第2回収配管48および第2廃液配管49がそれぞれ分岐接続されている。第2回収配管48の先端は回収ユニット(図示しない)へと延び、また、第2廃液配管49の先端は廃液ユニット(図示しない)へと延びている。第2切換えバルブ47の切換えにより、第2回収/廃液配管46を流通する液が、第2回収配管48と第2廃液配管49とに選択的に導かれる。第2カップ32の底部に導かれた処理液は、第2回収/廃液配管46を通じて回収ユニットまたは廃液ユニットに送られる。これにより、基板Wから排出された処理液が回収または廃棄される。
【0032】
第3カップ33の溝には、第3回収/廃液配管51が接続されている。第3回収/廃液配管51には、たとえば三方弁により構成された第3切換えバルブ52を介して、第3回収配管53および第3廃液配管54がそれぞれ分岐接続されている。第3回収配管53の先端は回収ユニット(図示しない)へと延び、また、第3廃液配管54の先端は廃液ユニット(図示しない)へと延びている。第3切換えバルブ52の切換えにより、第3回収/廃液配管51を流通する液が、第3回収配管53と第3廃液配管54とに選択的に導かれる。第3カップ33の底部に導かれた処理液は、第3回収/廃液配管51を通じて回収ユニットまたは廃液ユニットに送られる。これにより、基板Wから排出された処理液が回収または廃棄される。
【0033】
各ガード34〜37は、円筒状であり、スピンチャック3と筒状部材30との間でスピンチャック3を取り囲んでいる。各ガード34〜37は、スピンチャック3の周囲を取り囲む円筒状の案内部40と、案内部40の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に斜め上方に延びる円筒状の傾斜部39とを含む。各傾斜部39の上端部は、ガード34〜37の内周部を構成しており、基板Wおよび回転ベース14よりも大きな直径を有している。4つの傾斜部39は、上下に重ねられており、4つの案内部40は、同軸的に配置されている。最も外側の第4ガード37の案内部40を除く3つの案内部40(ガード34〜36の案内部40)は、それぞれ、複数のカップ31〜33内に出入り可能である。すなわち、処理カップ7は、折り畳み可能であり、昇降ユニット38が4つのガード34〜37の少なくとも一つを昇降させることにより、処理カップ7の展開および折り畳みが行われる。なお、傾斜部39は、その断面形状が
図1に示すように滑らかな上に凸の円弧を描きつつ延びていてもよいし、またたとえば直線状であってもよい。
【0034】
基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード34〜37が、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。たとえば内側から3番目の第3ガード36を基板Wの周端面に対向させる場合には、第1ガード34および第2ガード35が下位置(
図1の左側に示す位置)に配置され、第3ガード36および第4ガード37が上位置(
図1の左側に示す位置)に配置される。また、最も外側の第4ガード37を基板Wの周端面に対向させる場合には、第4ガード37が上位置(
図1の右側に示す位置)に配置され、他の3つのガード34〜36が下位置(
図1の右側に示す位置)に配置される。
【0035】
後述する薬液工程(
図4のS3)やリンス工程(
図4のS4,S5)は、たとえば、最も外側の第4ガード37を除く3つのガード34〜36のいずれかが、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。したがって、基板Wに処理液が供給されているときに基板Wの周囲に飛散した処理液は、第1ガード34、第2ガード35、および第3ガード36のいずれかによって、いずれかのカップ31〜33に案内される。また、基板Wの乾燥は、たとえば、最も外側の第4ガード37が基板Wの周端面に対向している状態で行われる。また、後述する乾燥工程(
図4のS6)は、たとえば、最も外側の第4ガード37が基板Wの周端面に対向している状態で行われる。最も外側の第4ガード37を基板Wの周端面に対向させる場合には、第4ガード37が上位置(
図1の右側に示す位置)に配置され、他の3つのガード34〜36が下位置(
図1の右側に示す位置)に配置される。
【0036】
図2は、挟持部材15の側面図である。挟持部材15は、回転ベース14の周縁部に配置された台座61と、台座61の上面に固定された円柱状の挟持部62とを含む。挟持部62の外周面には、水平方向に関しV字状に開き、基板の周端面を挟持する挟持溝65が形成されている。挟持溝65は、内方(回転軸線A1側)に向いて開くV字溝である。挟持溝65は、水平面に対して角度θ1(
図6参照)下向きに傾斜する下側当接面63と、水平面に対して角度θ2(
図6参照)上向きに傾斜する上側当接面64とを含む。挟持溝65に基板Wの周端面が挟持された状態においては、基板Wの周端面の下端縁が下側当接面63に当接するとともに、基板Wの周端面の上端縁が上側当接面64に当接する。
【0037】
図3Aは、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
制御装置8は、たとえばマイクロコンピュータを含む構成である。制御装置8は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ12、ガード昇降ユニット38等の動作を制御する。さらに、制御装置8は、第1薬液バルブ17、第1水バルブ20、第2薬液バルブ25、第2水バルブ26、第1〜第3切換えバルブ42,47,52等の開閉動作を制御するとともに、第1および第2流量調整バルブ21,27の開度を制御する。
【0038】
制御装置8には、次におけるリンス工程において、基板Wの上面へ水の供給流量および基板Wの下面へ水の供給流量の変更範囲が格納された供給流量変更範囲記憶部81が設けられている。
図3Bは、供給流量変更範囲記憶部81の記憶内容の一例を示す図である。
後述するリンス工程(
図4のS4,S5)では、基板Wの上面に供給する水の供給流量(水ノズル18(
図1参照)からの水の吐出流量。以下、「上面側供給流量」という場合がある。)と、基板Wの下面に供給する水の流量(下面ノズル22からの水の吐出流量。以下、「下面側供給流量」という場合がある。)との流量比(以下、この流量比を「上下面供給流量比」という場合がある。)が予め定める範囲内で変更されるようになっている(ステップS5。流量比変更ステップ)。供給流量変更範囲記憶部81には、上下面供給流量比の変更範囲が規定されている。具体的には、供給流量変更範囲記憶部81には、上下面供給流量比の変更時における、基板W上面への供給流量と基板W下面への供給流量とがそれぞれ規定されている。供給流量変更範囲記憶部81に規定されている上下面供給流量比は、処理カップ7の内壁における水の着液位置が、上下方向に関し、傾斜部39の全域(先端側領域A
U(
図10A参照)、中間領域A
M(
図10B参照)および基端側領域A
D(
図10C参照))をカバーできるように設定されている。なお、
図3Bの例では、上面側供給流量および下面側供給流量は、基板Wの上下面への水の供給流量の合計が丁度4.0リットル(L)/minになるようにそれぞれ規定されている。
【0039】
供給流量変更範囲記憶部81では、上下面供給流量比の変更範囲は、たとえば1:1〜3:1の範囲に設定されている。上下面供給流量比が1:1であるように設定された第1の供給流量の組合せでは、上面側供給流量および下面側供給流量はともに2.0(L/min)である。上下面供給流量比が1.7:1であるように設定された第2の供給流量の組合せでは、上面側供給流量は2.5(L/min)であり、下面側供給流量は1.5(L/min)である。また、上下面供給流量比が3:1であるように設定された第3の供給流量の組合せでは、上面側供給流量は3.0(L/min)であり、下面側供給流量は1.0(L/min)である。
【0040】
図4は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第1処理例を示す工程図である。以下、
図1〜
図4を参照しつつ、この第1処理例について説明する。
図4の第1処理例では、基板Wへの薬液の供給、および基板Wへのリンスのための水の供給は、最も内側の第1ガード34を基板Wの周端面に対向させた状態で行われる場合を例に挙げて説明する。
【0041】
基板Wの処理に際しては、搬送ロボット(図示しない)が制御されて、処理室2内に未処理の基板Wが搬入される(ステップS1)。基板Wは、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック3に受け渡される。なお、この基板Wの搬入前は、その搬入の妨げにならないように、第1〜第4ガード34〜37が下位置(最も下方位置)に下げられ、第1〜第4ガード34〜37の上端がいずれも、スピンチャック3による基板Wの保持位置よりも下方に配置されている。
【0042】
スピンチャック3に基板Wが保持されると、制御装置8はスピンモータ12を制御して、回転ベース14を回転開始させ、基板Wを回転させる(ステップS2。基板回転手段作動ステップ)。基板Wの回転速度は予め定める液処理速度(300〜1200rpmの範囲内で、たとえば1200rpm)まで上昇させられ、その薬液処理速度に維持される。
また、制御装置8は、ガード昇降ユニット38を制御して、第1〜第4ガード34〜37を全て上位置(最も上方の位置)まで上昇させて、最も内側の第1ガード34を基板Wの周端面に対向させる。この状態では、全てのガード34〜37が上位置に配置される。
【0043】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置8は、第1薬液バルブ17を開くとともに、第2薬液バルブ25を開く。これにより、薬液ノズル4から基板Wの上面中央部に向けて薬液が吐出されるとともに、下面ノズル22の吐出口から基板Wの下面中央部に向けて薬液が上向きに吐出される。
基板Wの上面の中央部に供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域に薬液が供給され、基板Wの上下面に薬液を用いた薬液処理が施される(S3:薬液工程)。基板Wの上下面に供給された薬液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0044】
基板Wの周縁部から飛散する薬液は、第1ガード34の内壁に受け止められる。そして、第1ガード34の案内部40の内壁を伝って流下した薬液は、第1カップ31の底部に集められ、第1回収/排液配管41と導かれる。このとき、第1切換えバルブ42によって、第1回収/廃液配管41の流通先は第1回収配管43に設定されており、そのため、第1回収/排液配管41に導かれた薬液は、第1回収配管43を通じて回収ユニット(図示しない)へと導かれる。
【0045】
薬液の吐出開始から、予め定める薬液処理時間が経過すると、制御装置8は、第1薬液バルブ17および第2薬液バルブ25を閉じて、薬液ノズル4および下面ノズル22からの薬液の吐出を停止する。
その後、制御装置8は、基板Wの回転速度を前記の液処理速度に維持しながら、第1水バルブ20を開くとともに、第2水バルブ26を開く。これにより、水ノズル18からの水が基板Wの上面中央部に供給されるとともに、下面ノズル22からの水が基板Wの下面中央部に供給される(S4:水供給。洗浄液供給ステップ)。このときの基板Wの様子を
図5に示す。
【0046】
基板Wの上面の中央部に供給された水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、
図5に示すように、基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給された水は、基板Wの回転による遠心力を受けて、
図5に示すように、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これらにより、基板Wの上面および下面に付着していた薬液が洗い流され、基板Wの上下面にリンス処理が施される(リンス工程)。基板Wの上下面に供給された水は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0047】
基板Wの周縁部から飛散する水は、第1ガード34の内壁に受け止められる。そして、第1ガード34の内壁を伝って流下した水は、第1カップ31の底部に集められ、第1回収/排液配管41と導かれる。このとき、第1切換えバルブ42によって、第1回収/廃液配管41の流通先は第1廃液配管44に設定されており、そのため、第1回収/排液配管41に導かれた水は、第1廃液配管44を通じて廃液ユニット(図示しない)へと導かれる。
【0048】
このリンス工程では、基板Wへのリンス処理に並行して、処理カップ7の内壁の洗浄を行っている(ステップS5)。すなわち、リンス処理時に基板Wの周縁部から飛散する水を洗浄液として用いて、第1ガード34の内壁を洗浄している。
そして、リンス工程において、制御装置8は、基板Wの上下面への水の供給に並行して、上下面供給流量比を変更している。具体的には、制御装置8は、第1および第2流量調整バルブ21,27の開度を制御して、水ノズル18および下面ノズル22からの水の流量を調整する。これにより、上下面供給流量比が変更される。
【0049】
制御装置8は、供給流量変更範囲記憶部81の内容を参照しながら、第1および第2流量調整バルブ21,27の開度を制御する。すなわち、基板Wの上下面への供給流量の組合せが、第1の供給流量の組合せ(
図3B参照)、第2の供給流量の組合せ(
図3B参照)および第3の供給流量の組合せ(
図3B参照)の順で連続的に変更される。なお、第3の供給流量の組合せの次は、再度、第1の供給流量の組合せ、第2の供給流量の組合せおよび第3の供給流量の組合せを繰り返してもよいし、第3の供給流量の組合せの次は、第2の供給流量の組合せで実行されてもよい。この場合、上下面供給流量比の変更範囲は、1:1〜5:1の範囲であり、また、上下面供給流量比の変更によらずに、上面側供給流量および下面側供給流量の合計流量は6.0リットル(L)/minである。
【0050】
図6は、ステップS4の水供給時における挟持部材15の付近の状態を示す図である。
図6を参照して、基板Wの周縁部からの水の飛散について説明する。
基板Wの上面を周縁部に向けて流れる処理液は、回転ベース14と一体的に回転している挟持部材15に基板Wの周縁部で当り、基板Wの側方に向けて飛散する。同様に、基板Wの下面を伝って周縁部に向けて流れる処理液も、回転ベース14と一体的に回転している挟持部材15に基板Wの周縁部で当り、基板Wの側方に向けて飛散する。このように、基板Wの周縁部から飛散する水は、そのほとんどが挟持部材15に当接した勢いで飛散している。
【0051】
基板Wの下面から挟持部材15に当って飛散する水(以下、単に「下面からの水」という。)の飛散方向は、挟持部材15の下側当接面63の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、下面からの水の飛散方向D
Dは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ1上向きに傾斜している。一方、基板Wの上面から挟持部材15に当って飛散する水(以下、単に「上面からの水」という。)の飛散方向は、挟持部材15の上側当接面64の延長面に概ね沿うようになる。すなわち、上面からの水の飛散方向D
Uは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して角度θ2下向きに傾斜している。
【0052】
ステップS4の水供給時には、基板Wの上下面に水が供給されるので、基板Wの周縁部において、上面からの水と下面からの水とが干渉し、下面からの水の飛散方向D
Dと、上面からの水の飛散方向D
Uとを合成した方向である水の飛散方向D
1に向けて飛散する。
図7は、上下面供給流量比を異ならせた場合における、基板Wの周縁部からの水の飛散方向D
1の変化を説明するための図である。
【0053】
図7(a)には、上下面供給流量比(上面:下面)を1:1にした場合の水の飛散を示す。この場合、下面からの水は前述のように斜め上方に向けて飛散しており、この下面からの水に上面からの水が干渉するのであるが、上面からの水の流量がそれほど多くないので、斜め上方に向かう下面からの水の飛散を十分に抑制できない。そのため、水の飛散方向D
1は、
図7(a)に示すように径方向外方に向かうに従って水平面に対して上向きに大きく傾斜している。
【0054】
一方、
図7(b)には、上下面供給流量比(上面:下面)を3:1にした場合の水の飛散を示す。この場合、上面からの水の流量が多いので、斜め上方に向かう下面からの水の飛散を抑制できる。そのため、水の飛散方向D
1は、
図7(b)に示すように水平面に対して略水平方向に沿うか、あるいは、径方向外方に向かうに従って水平面に対して下向きに傾斜するようになる。
【0055】
また、基板Wの周縁部からの水の飛散方向D
1は、上下面供給流量比だけでなく、基板Wの回転速度にも大きく依存する。
図8は、基板Wの回転速度を異ならせた場合における、基板Wの周縁部からの水の飛散方向D
1の変化を説明するための図である。
図8(a)には、基板Wの回転速度が低回転速度(たとえば300rpm)であるときの水の飛散を示す。
図8(b)には、基板Wの回転速度が高回転速度(たとえば1200rpm)であるときの水の飛散を示す。このとき、基板Wの回転速度が高回転速度である場合には、基板Wの周縁部の水に作用する遠心力が大きいから、基板Wが低回転速度である場合と比較して、水の飛散方向D
1は、径方向外方に向かうに従って上向きになる。なお、この場合、基板Wへの水の供給流量および上下面への水の供給流量比は、
図8(a)および
図8(b)の場合で共通しているものとする。
【0056】
図9は、基板Wの回転速度と処理カップ7における上下方向の洗浄角度θとの関係を示すグラフである。
図9では、水の上面側供給流量および下面側供給流量がともに2.0(L/min)である場合(Condition 1)、ならびに水の上面側供給流量および下面側供給流量がそれぞれ2.5(L/min)および1.5(L/min)である場合(Condition 2)を示す。
【0057】
図9より、回転速度が高くなるにしたがって、所定の基準面(たとえば水平面)に水の飛散方向D
1(
図6等参照)の角度(洗浄角度θ)が大きくなることがわかる。また、上下面供給流量比(上面:下面)が高くなる(上面側供給流量が多くなる)のに従って、基準面(たとえば水平面)に対する水の飛散方向D
1の角度(洗浄角度θ)が大きくなることがわかる。
【0058】
図10A〜
図10Cは、リンス工程(
図4のS4,S5)における水の飛散を示す図である。
前述のように、リンス工程では、基板Wが液処理速度(たとえば1200rpm)で回転されられるとともに、基板Wの上下面に水が供給される。リンス工程において、基板Wの上下面への水の供給に並行して、制御装置8は、供給流量変更範囲記憶部81に基づいて、第1および第2流量調整バルブ21,27を制御して、上下面供給流量比を、1:1〜5:1の範囲で変更する(
図4のS5)。
【0059】
基板Wの上下面への供給流量の組合せが、前記の第1の供給流量の組合せ(上下面供給流量比(上面:下面)=1:1)である場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Aに示すように、第1ガード34の傾斜部39の内壁の先端側領域A
Uに着液する。
基板Wの上下面への供給流量の組合せが、前記の第2の供給流量の組合せ(上下面供給流量比(上面:下面)=1.7:1)である場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Bに示すように、第1ガード34の傾斜部39の内壁の中間領域A
Mに着液する。
【0060】
基板Wの上下面への供給流量の組合せが、前記の第3の供給流量の組合せ(上下面供給流量比(上面:下面)=3:1)である場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Cに示すように、第1ガード34の傾斜部39の内壁の基端側領域A
Dまたは第1ガード34の案内部40の上端部に着液する。
したがって、リンス工程において、第1ガード34の傾斜部39の略全域に水を着液させることができ、これにより、第1ガード34の傾斜部39の略全域を良好に洗浄することができる。
【0061】
図4に示すように、水の吐出開始から予め定めるリンス時間が経過すると、制御装置8は、第1水バルブ20および第2水バルブ26を閉じるとともに、ガード昇降ユニット38を制御して、第4ガード37を上位置に保ったまま、第1〜第3ガード34〜36を下位置まで下降させて、最も外側の第4ガード37を基板Wの周端面に対向させる。この状態では、第1〜第3ガード34〜36が下位置に配置され、第4ガード37だけが上位置に配置される。基板Wの高速回転によって基板Wの周囲に飛散した処理液は、第4ガード37によって受け止められた後、筒状部材30の底部に案内され、筒状部材30の底から廃液ユニット(図示しない)に送られる。
【0062】
また、制御装置8は、基板Wの回転速度をスピンドライ速度(たとえば2500rpm)に加速する。これにより、基板Wに付着している水が遠心力によって基板Wの周囲に振り切られて基板Wが乾燥される(ステップS6)。
乾燥工程(S6)が予め定める乾燥時間に亘って行われると、制御装置8は、スピンモータ12を駆動して、スピンチャック3の回転(基板Wの回転)を停止させる(ステップS7)。これにより、1枚の基板Wに対する洗浄処理が終了する。制御装置8は、ガード昇降ユニット38を制御して、第1〜第4ガード34〜37が下位置(最も下方位置)に下げる。その後、搬送ロボットによって、処理済みの基板Wが処理室2から搬出される(ステップS8)。
【0063】
以上によりこの実施形態によれば、基板Wの上面および下面の双方に水が供給されることにより、基板Wの周縁部から飛散する水が処理カップ7の内壁に着液し、当該内壁に水が供給される。供給された水を用いて、処理カップ7の内壁が洗浄される。基板Wの上下面の双方に水が供給されているので、基板Wの周縁部において、基板Wの下面に供給された水と基板Wの上面に供給された水とが干渉し、基板Wの周縁部から飛散方向D
1に向けて水が飛散する。
【0064】
回転状態にある基板Wの上下面への水の供給に並行して、上下面供給流量比を変更することにより、水の飛散方向D
1を変更させることができ、これにより、処理カップ7の内壁における水の着液位置を上下動させることができる。ゆえに、処理カップ7の内壁を、広範囲かつ良好に洗浄することができる。その結果、処理カップ7の内壁において薬液が乾燥して結晶化するのを確実に防止することができ、これにより、パーティクルの発生を防止または抑制しながら、基板Wに一連の処理を良好に施すことができる。
【0065】
また、リンスのために基板Wに供給されている水を、基板Wの周縁部から処理カップ7の内壁に供給し、その水を用いて処理カップ7の内壁を洗浄するので、処理カップ7の洗浄を、リンス工程(
図4のS4,S5)と並行して行うことができる。これにより、一連の処理プロセス毎の合間に処理カップ7の洗浄を行う場合と比較して、基板処理の生産性の向上(スループットの向上)を図ることができる。
【0066】
また、薬液処理の後は、処理カップの内壁に薬液が付着していることが考えられる。しかしながら、薬液工程(
図4のS3)に次いで実行されるリンス工程(
図4のS4,S5)に並行して処理カップ7が洗浄されるので、処理カップ7の内壁に付着した薬液が結晶化する前にその薬液を水で洗い流すことができるから、処理カップ7の内壁をより一層良好に洗浄することができる。
【0067】
図11は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第2処理例を示す工程図である。
第2処理例が、
図4に示す第1処理例と相違する点は、リンス工程(ステップS14,S15,S16)において、基板Wの上下面への水の供給に並行して、上下面供給流量比を変更する(ステップS15)だけでなく、併せて、回転ベース14の回転速度(すなわち基板Wの回転速度)も変更する(ステップS16)ようにした点である。
【0068】
図11に示すステップS11〜S13の工程は、それそれ、
図4に示すステップS1〜S4と同等の工程であり、また、
図11に示すステップS17〜S19の工程は、それそれ、
図4に示すステップS6〜S8と同等の工程であるので、説明を省略する。
具体的には、制御装置8には、リンス工程における、回転ベース14の回転速度(すなわち基板Wの回転速度)の組合せの変更範囲が格納された回転速度変更範囲記憶部82(
図3Aに破線にて図示)が設けられている。回転速度変更範囲記憶部82には、回転ベース14の回転速度の変更時における回転速度が格納されている。
【0069】
この場合、供給流量変更範囲記憶部81および回転速度変更範囲記憶部82にそれぞれ規定されている上下面供給流量比および回転ベース14の回転速度は、処理カップ7の内壁における水の着液位置が、上下方向に関し、傾斜部39の全域(先端側領域A
U(
図10A参照)、中間領域A
M(
図10B参照)および基端側領域A
D(
図10C参照))をカバーできるように設定されている。
【0070】
具体的には、供給流量変更範囲記憶部81において設定されている上下面供給流量比の変更範囲は、1:1〜1.7:1の範囲であり、回転速度変更範囲記憶部82において設定されている回転ベース14の回転速度の変更範囲は、800〜1200rpmの範囲である。基板Wの上下面への供給流量と回転ベース14の回転速度との複数の組合せのうち、第1の組合せは、上面側供給流量および下面側供給流量はそれぞれ2.0(L/min)であるとともに、回転ベース14の回転速度は1200rpmである。第2の組合せは、上面側供給流量および下面側供給流量は、それぞれ、2.25(L/min)および1.75(L/min)であるとともに、回転ベース14の回転速度は1000rpmである。第3の組合せは、上面側供給流量および下面側供給流量は、それぞれ、2.5(L/min)および1.5(L/min)であるであるとともに、回転ベース14の回転速度は800rpmである。
【0071】
制御装置8は、供給流量変更範囲記憶部81および回転速度変更範囲記憶部82の内容を参照しながら、第1および第2流量調整バルブ21,27の開度およびスピンモータ12をそれぞれ制御する。すなわち、基板Wの上下面への供給流量と回転ベース14の回転速度との組合せが、それぞれ、第1の組合せ、第2の組合せおよび第3の組合せの順で連続的に変更される。
【0072】
基板Wの上下面への供給流量と回転ベース14の回転速度との組合せが、前記の第1の組合せである場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Aの場合と同様、第1ガード34の傾斜部39の内壁の先端側領域A
Uに着液する。
基板Wの上下面への供給流量と回転ベース14の回転速度との組合せが、前記の第2の供給流量の組合せ(上下面供給流量比(上面:下面)=1.7:1)である場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Bの場合と同様、第1ガード34の傾斜部39の内壁の中間領域A
Mに着液する。
【0073】
基板Wの上下面への供給流量と回転ベース14の回転速度との組合せが、前記の第3の供給流量の組合せ(上下面供給流量比(上面:下面)=3:1)である場合には、基板Wの周縁部から飛散する水は、
図10Cの場合と同様、第1ガード34の傾斜部39の内壁の基端側領域A
Dまたは第1ガード34の案内部40の上端部に着液する。
したがって、リンス工程(S14〜S16)において、第1ガード34の傾斜部39の略全域に水を着液させることができ、これにより、第1ガード34の傾斜部39の略全域を良好に洗浄することができる。
【0074】
この第2処理例では、基板Wの上下面への水の供給に並行して、上下面供給流量比だけでなく、回転ベース14の回転速度(すなわち基板Wの回転速度)も併せて変更することにより、水の飛散方向D
1を変更させ、これにより、処理カップ7の内壁における水の着液位置を上下動させている。
図12は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置において実行されるカップ洗浄工程の様子を示す図である。
図13は、
図4に示すカップ洗浄工程における水の飛散を示す図である。
【0075】
他の実施形態に係る基板処理装置は、基板処理装置1と同等の構成を備えている。他の実施形態に係る基板処理装置では、処理液を用いた一連の基板処理が行われていないときに、処理カップ7(
図1参照)の洗浄が行われる。具体的には、1ロットの基板Wの処理が終了する毎に、次に述べるカップ洗浄工程が実行される。以下、
図1〜
図3および
図11を参照して、カップ洗浄工程について説明する。
【0076】
このカップ洗浄工程では、たとえばたとえばSiC製の円形のダミー基板DWをスピンチャック3に保持させる。そして、制御装置8は、ガード昇降ユニット38を制御して、洗浄対象となるガード(前述の実施形態の例であれば、薬液工程時にダミー基板DWの周端面に対向していた、最も内側の第1ガード34)をダミー基板DWの周端面に対向させる。また、制御装置8は、
図12に示すように、所定の回転速度(たとえば1200rpm)でダミー基板DWを回転させるとともに、水ノズル18および下面ノズル22から水を吐出させて、ダミー基板DWの上下面の中央部に水を供給する。
【0077】
ダミー基板DWの上下面に供給された水は、ダミー基板DWの回転による遠心力を受けてダミー基板DWの周縁部に向けて流れ、ダミー基板DWの周縁部において、ダミー基板DWの下面に供給された水とダミー基板DWの上面に供給された水とが干渉し、ダミー基板DWの周縁部から飛散方向D
2(
図13参照)に向けて水が飛散する。ダミー基板DWの周縁部から飛散する水は、第1ガード34の内壁に着液し、当該内壁に受け止められる。第1ガード34の内壁に供給された水を用いて、処理カップ7の内壁が洗浄される。
【0078】
このカップ洗浄工程では、ダミー基板DWの上下面への水の供給に並行して、ダミー基板DWの上下面への水の供給流量比(上下面供給流量比)を変更している。具体的には、制御装置8は、第1および第2流量調整バルブ21,27の開度を制御して、水ノズル18および下面ノズル22からの水の流量を調整する。これにより、ダミー基板DWの上下面への水の供給流量比が変更される。ダミー基板DWの上下面への供給流量比の変更のための具体的な手法は、前述の第1実施形態の場合のリンス工程(
図4のS4,S5)の場合と同様である。
【0079】
回転状態にあるダミー基板DWの上下面への水(洗浄液)の供給に並行して、上下面供給流量比を変更することにより、水の飛散方向D
2を変更させることができ、これにより、処理カップ7の内壁における水の着液位置を上下動させることができる。ゆえに、前述の
図1〜
図11の実施形態の場合と同様、処理カップ7の内壁を、広範囲かつ良好に洗浄することができる。その結果、処理カップ7の内壁において薬液が乾燥して結晶化するのを確実に防止することができる。
【0080】
ダミー基板DWへの水の供給開始後、予め定めるカップ洗浄時間が経過すると、制御装置8は、第1水バルブ20および第2水バルブ26を閉じるとともに、スピンモータ12を制御してダミー基板DWの回転を停止させる。制御装置8は、ガード昇降ユニット38を制御して、第1〜第4ガード34〜37が下位置(最も下方位置)に下げる。使用済みのダミー基板DWは、その後、搬送ロボットによって処理室2外に搬出され、ダミー基板保持部(図示しない)に収容される。
【0081】
なお、この
図12および
図13の実施形態において、カップ洗浄工程において、前述の第2処理例の場合と同様、基板Wの上下面への水の供給に並行して、水の飛散方向D
2を変更させるために、上下面供給流量比の変更だけでなく、回転ベース14の回転速度(すなわちダミー基板DWの回転速度)も併せて変更するようにしてもよい。
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
【0082】
たとえば、前述の各実施形態のリンス工程(
図4のS4,S5および
図5のS14〜S16)ならびにカップ洗浄工程において、水の飛散方向D
1,D
2を変更させるべく、回転ベース14の回転速度(すなわち基板Wやダミー基板DWの回転速度)のみを変更させるようにしてもよい。
また、前述の各実施形態のリンス工程(
図4のS4,S5および
図5のS14〜S16)ならびにカップ洗浄工程では、上面側供給流量および下面側供給流量の合計流量が一定であるとして説明したが、これらリンス工程およびカップ洗浄工程において、水の合計供給流量が変化していてもよい。
【0083】
また、前述の各実施形態では、基板Wの周端面に、薬液工程時とリンス工程時とで共通のガード(第1ガード34)が対向する処理例を例に挙げて説明した。しかしながら、
図12および
図13に示す実施形態では、薬液工程時に専用に用いられるガード34〜37に対して、ダミー基板DWから飛散する水(洗浄液)を供給することもできる。たとえば、第1ガード34を基板Wの周端面に対向させながらリンス工程中(
図4のS4と同等の工程)を実行し、かつ第2ガード35を基板Wの周端面に対向させながら薬液工程中(
図4のS3)を実行する場合に、カップ洗浄工程において、ダミー基板DWの周端面に第1ガード34を対向配置させ、ダミー基板DWから飛散する水を用いて、第1ガード34(薬液工程時に専用に用いられるガード)の内壁を洗浄することができる。
【0084】
また、前述の各実施形態では、基板Wまたはダミー基板DWから飛散する水を用いて、第1ガード34の内壁を洗浄する場合を例に挙げたが、前述のカップ洗浄方法は、第2〜第4ガード35〜37の内壁を洗浄する場合にも適用できる。
また、
図12および
図13に示す実施形態では、洗浄液として、水だけでなく、洗浄用薬液(たとえば、SC1(NH
4OHとH
2O
2とを含む混合液))を用いることもできる。
【0085】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。