(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229984
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ポリアミド6の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 69/18 20060101AFI20171106BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20171106BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
C08G69/18
C08L77/00
C08K5/29
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-504314(P2015-504314)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2014055385
(87)【国際公開番号】WO2014136747
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-46779(P2013-46779)
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104813
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】安井 勉
【審査官】
柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02447301(EP,A1)
【文献】
特表2003−518179(JP,A)
【文献】
特表2005−513206(JP,A)
【文献】
特開昭64−029428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00− 69/50
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド化合物、及び、カルボジイミド化合物ではないアニオン重合触媒の存在下に、溶融カプロラクタムをアニオン重合するポリアミド6の製造方法であって、予め調製しておいた、カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、カプロラクタムとカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bとを溶融混合して反応させる製造方法であって、カルボジイミド化合物として、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及び/又はジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる製造方法。
【請求項2】
アニオン重合触媒は、アルカリ金属塩のラクタメート、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらの金属の水素化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルキル化物、アルコキシド又はグリニャール化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
さらにカルボジイミド化合物ではない活性化剤を存在させる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
カルボジイミド化合物ではない活性化剤は、イソシアネート、アシルラクタム及びN−アセチルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
カルボジイミド化合物ではない活性化剤を原料組成物Bに含有させる請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
さらに、予め調製しておいた、カプロラクタムからなる原料組成物Cを溶融混合する請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
全カプロラクタムのうち60〜90重量%を原料組成物Cに含有させる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
アニオン重合工程終了後、反応器内の温度を重合工程終了時の温度から昇温させることなく反応器から重合体を取得する請求項1〜7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
溶融カプロラクタムをアニオン重合する際に溶融カプロラクタムに添加するための、カルボジイミド化合物を有効成分とするポリアミド6の結晶化度向上剤であって、カルボジイミド化合物は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及び/又はジシクロヘキシルカルボジイミドである結晶化度向上剤。
【請求項10】
カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、
カプロラクタムと活性化剤と芳香族カルボジイミド化合物及び脂環族カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種のカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bと
からなり、重合工程で溶融混合して反応させるための、ポリアミド6合成原料であって、カルボジイミド化合物は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及び/又はジシクロヘキシルカルボジイミドであるポリアミド6合成原料。
【請求項11】
カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、
カプロラクタムと活性化剤と芳香族カルボジイミド化合物及び脂環族カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種のカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bと
さらに、全原料カプロラクタムのうち60〜90重量%を含有する原料組成物Cと
からなり、重合工程で溶融混合して反応させるための、ポリアミド6合成原料であって、カルボジイミド化合物は、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド及び/又はジシクロヘキシルカルボジイミドであるポリアミド6合成原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン重合性カプロラクタムの重合体を一層高い結晶化度にすることができるポリアミド6の製造方法に関し、詳細にはカルボジイミド化合物存在下にカプロラクタムをアニオン重合することにより結晶化度を向上させたポリアミド6を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カルボジイミド化合物は、ポリマーの加水分解耐性等を向上させるための添加剤として知られている。例えば、特許文献1にはカルボジイミド化合物を含有するポリマー改質用錠剤が開示されているが、カルボジイミド化合物をポリマーに配合して加水分解耐性を向上させることが述べられているにすぎず、ポリアミドの結晶化度向上はなんら開示されていない。特許文献2にはポリアミド樹脂にカルボジイミドを配合して耐加水分解耐性を向上させることが開示されているが、やはりポリアミドの結晶化度向上についてなんら開示されていない。また、特許文献3にはポリアミド樹脂にポリカルボジイミドを配合することが開示されているが、カルボジイミド化合物をポリマーに配合して耐油性や熱安定性を向上させることが述べられているにすぎず、ポリアミドの結晶化度向上についてなんら開示されていない。
【0003】
特許文献4には結晶化度が45%以上のモノマーキャストナイロン成形体が開示されているが、高結晶化度の達成は、樹脂成形後、ポリアミド成形体をオーブン中で10時間程度かけて熱処理をすることによる。
【0004】
このように、従来、カルボジイミド化合物はポリマーに添加することにより加水分解耐性等の改質をもたらす添加剤として用いられているが、添加することによりポリマーの結晶化度を向上させるとの知見は存在しない。また、ポリアミドの結晶化度向上について従来知られている手法は、重合したポリアミドに結晶核剤を添加する方法、あるいはポリアミドを長時間熱処理する方法であった。
【0005】
一方、特許文献5には強化繊維に、触媒を溶剤に溶解した液状触媒とカプロラクタム溶融液との混合液を含浸させて、複合材料を製造する方法が開示されており、開始剤にカルボジイミドを使用することが開示されているが、ポリアミドの結晶化度向上についてなんら開示されていない。特許文献6にもアニオンラクタム重合用触媒系を構成する活性化剤としてカルボジイミドが開示されている。しかしながら、カルボジイミドを溶剤に溶解して添加しているとともに、結晶化度向上については別途に成核剤を添加するものであり、その使用がない場合のポリアミドの結晶化度向上についてなんら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−124010号公報
【特許文献2】特開2012−41526号公報
【特許文献3】特開平09−328609号公報
【特許文献4】特開2007−84747号公報
【特許文献5】特表2005−513206号公報
【特許文献6】特開平10−292041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、モノマーキャスト法のような、溶剤を用いずにアニオン重合性カプロラクタム溶融液を重合する手法は、成形、加工の現場にてポリアミド重合を行う手法として知られている。この方法を用いる際に、ポリアミドの重合工程が終了した時点で、もしも、成形、加工の現場では実施困難な長時間の加熱処理を行うことなく、ポリアミドの結晶化度をさらに向上させることができたなら、このような現場重合型ポリアミドの寸法安定性、吸湿による物性低下の抑制等の特性の向上が期待できる。また、ポリアミド6の結晶化度が向上することによって、強度の向上、剛性の向上、硬度の向上、耐クリープ性の向上、耐薬品性(例えば、耐ガソリン性、耐ブレーキ油性、耐グリース性等を含むがこれらに限定されない。)の向上、耐摩耗性の向上、熱変形温度の向上、線膨張係数の低下、吸水性の低下、ガスバリア性の向上、電気特性の向上等が期待できる。そこで、従来公知の手法である結晶核剤、造核剤や成核剤の使用を試みるかもしれない。結晶核剤、造核剤、成核剤等は、ポリアミド等の結晶性樹脂に添加することによりその結晶化度を向上することを期待して使用されるものである。
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、従来公知の各種結晶核剤、造核剤や成核剤(以下、区別することなく結晶核剤とも言う。その中には有機、無機、ポリマー等の各種の知られている結晶核剤が含まれる。)をモノマーキャスト法に用いて試したところ、後述するように、予期に反して、いずれも結晶化度をさらに向上させることはできなかった。すなわち、従来、結晶核剤は、ポリマーに溶融混練して溶融保持することにより結晶化度を向上させるという手法で用いられていたものであり、モノマーキャスト法のモノマー原料中に結晶核剤を添加する手法では、モノマーキャスト工程で得た樹脂の結晶化度向上には効果が見られなかった。実際、従来技術において、モノマーキャスト法と一般に称される、アニオン重合性カプロラクタム溶融液の重合において、長時間の加熱処理を行うことなく、重合工程終了時点で、一層高い結晶化度にする手法が開示された文献は知られていない。
【0009】
従って本発明は、アニオン重合性カプロラクタム溶融液の重合工程終了時点での重合体を、一層高い結晶化度にすることができる、ポリアミド6の製造方法、ポリアミド6の結晶化度向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カルボジイミド化合物、及び、カルボジイミド化合物ではないアニオン重合触媒の存在下に、溶融カプロラクタムをアニオン重合することを特徴とするポリアミド6の製造方法である。
本発明の一態様においては、重合工程において、予め調製しておいた、カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、カプロラクタムとカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bとを溶融混合して反応させる。
本発明の他の態様においては、重合工程において、さらにカルボジイミド化合物ではない活性化剤を存在させる。
本発明はまた、溶融カプロラクタムをアニオン重合する際に溶融カプロラクタムに添加するための、カルボジイミド化合物を有効成分とするポリアミド6の結晶化度向上剤でもある。
本発明はまた、カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、カプロラクタムと活性化剤と芳香族カルボジイミド化合物及び脂環族カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種のカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bとからなるポリアミド6合成原料、及び、原料組成物AとBとさらに、全原料カプロラクタムのうち60〜90重量%を含有する原料組成物Cとからなるポリアミド6合成原料でもある。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の製造方法によれば、アニオン重合性カプロラクタム溶融液の重合工程終了時点での重合体を一層高い結晶化度にすることができ、モノマーキャスト法で重合後すみやかに金型から取り出したポリアミド6成形体の結晶化度を、好ましくは42%以上、より好ましくは44%以上、さらに好ましくは45%以上にすることができる。従って、ポリマーに結晶核剤を配合したり、ポリマーを重合後さらに熱処理したりすることなく、現場重合のポリアミド6の結晶化度を、一層向上することができる。
(2)本発明の製造方法によれば、結晶化度の向上したポリアミド6を得ることができ、ポリアミド6の成形体の寸法安定性が向上し、また、吸湿による物性低下の抑制等の成形体の特性が向上する。さらに、ポリアミド6の結晶化度が向上することによって、強度の向上、剛性の向上、硬度の向上、耐クリープ性の向上、耐薬品性(例えば、耐ガソリン性、耐ブレーキ油性、耐グリース性等。)の向上、耐摩耗性の向上、熱変形温度の向上、線膨張係数の低下、吸水性の低下、ガスバリア性の向上、電気特性の向上等の優れた特性を有する成形体を得ることができる。
(3)本発明のポリアミド6の結晶化度向上剤は、アニオン重合性カプロラクタム溶融液を重合する手法により得られるポリアミド6において、カプロラクタムに配合すると、得られる重合体の結晶化度が飛躍的に向上するという、従来知られていなかったカルボジイミド化合物の特性を見出すことによりなされたものであり、ポリアミド6の結晶核剤として使用できる。
(4)本発明のポリアミド6合成原料は、重合することにより、長時間の熱処理を必要とすることなしに、結晶化度の向上したポリアミド6を得ることができ、しかも、貯蔵安定な組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の製造方法は、カルボジイミド化合物、及び、カルボジイミド化合物ではないアニオン重合触媒の存在下に、溶融カプロラクタムをアニオン重合する工程を含む。
【0013】
本発明の製造方法におけるカルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を有する化合物であればよく、カルボジイミドのモノマー、オリゴマー、ポリマーを含み、具体的には、モノマーとしては、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクタデシルカルボジイミド等の脂肪族カルボジイミド化合物、ジフェニルカルボジイミド、ビス(2,6−ジメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,6−ジtert−ブチルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジ−o−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミド、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(2,4,6−トリイソブチルフェニル)カルボジイミド等の芳香族カルボジイミド化合物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脂環族カルボジイミド化合物等が挙げられる。オリゴマーとしては、例えば、前記モノマーが同一又は異なって2個結合したダイマーから、多数結合し分子量が1万未満(好ましく5000未満)のものまでが挙げられる。ポリカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド化合物、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド化合物、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド化合物を挙げることができる。これらのうち、高結晶化度ポリアミド6が得られる観点から、芳香族カルボジイミド化合物、脂環族カルボジイミド化合物が好ましく、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、Hydorostab3(商品名)(カルボジイミド化合物のオリゴマー;Schafer Additivsysteme GmbH社製)、ジイソプロピルカルボジイミド、ポリ(4,4−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、カルボジライトHMV−15CA(商品名)(ポリ(4,4−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの末端イソシアネートキャップ品;日清紡ケミカル社製)がより好ましく、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドが更に好ましい。
【0014】
上記カルボジイミド化合物の配合量としては、通常、カプロラクタム100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部であり、0.2〜6.0重量部がより好ましい。
【0015】
本発明においては、カルボジイミド化合物を予めカプロラクタムと混合した固形、顆粒又は粉末状の組成物、あるいは固形成分と液状成分とを含有した湿った固形状の組成物、としておき、溶融カプロラクタムをアニオン重合する際に溶融カプロラクタム中に添加するための、ポリアミド6の結晶化度向上剤とすることで、ハンドリング性向上ができる。この場合の、剤中のカルボジイミド化合物の含有割合としては、例えば、5重量%又はそれ以上とすることができ、また、反応器仕込み量のカプロラクタムに対して上述の配合量を容易に達成可能なように剤中の含有量を適宜調製すればよい。
【0016】
本発明の製造方法におけるアニオン重合触媒としては、公知のものを使用することができ、例えば、カプロラクタムのアルカリ金属塩等のラクタメート、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらの金属の水素化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、アルキル化物、アルコキシド、グリニャール化合物を挙げることができる。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種であり、なかでもNa又はKが反応性、経済性の面から好ましい。上記触媒はカルボジイミド化合物でないものが、原料組成物のゲル化を防止することができるので好ましい。上記触媒としては、カプロラクタムのNa又はK塩等のラクタメートが好ましい。
【0017】
上記重合触媒の配合量としては、通常、カプロラクタム100モルに対して好ましくは0.02〜2.0モルである。
【0018】
本発明の製造方法においては、重合工程において、好ましくは、さらに、任意成分として、カルボジイミド化合物ではない活性化剤を存在させることができる。上記活性化剤としては、例えば、イソシアネート、アシルラクタム、カルバミドラクタム、イソシアヌレート誘導体、酸ラハイド、尿素誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、n−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、オクチルイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知の有機イソシアネート類、N−アセチル−ε−カプロラクタム、1,6−ヘキサメチレンビスカルバミドラクタム、トリアリルイソシアヌレート、テレフタロイルクロリド、1,3−ジフェニル尿素等を挙げることができる。これらのうち、イソシアネート、アシルラクタム及びN−アセチルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。上記活性化剤はカルボジイミド化合物でないものを用いる。
【0019】
上記活性化剤を用いる場合の配合量としては、通常、カプロラクタム100モルに対して活性化剤中に含まれる官能基が0.02〜2.0モルとなる量である。
【0020】
本発明においては、重合工程において、これらの原料を用いる際に、カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、カプロラクタムとカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bとして、予め調製しておき、これらを溶融混合して反応させてもよい。原料組成物A、Bは予め別途に調製しておいたものを用いることができる。もちろん、重合工程の前に調製工程を設けてもよい。上記活性化剤は、好ましくは、上記原料組成物Bに配合することができる。また、原料組成物AとB中のカプロラクタムの配合割合は適宜でよく、例えば、等量(重量)ずつでもよく、あるいはそうでない量とすることもできる。また用いる原料組成物AとBの量比も適宜調節することができ、例えば、等量(重量)ずつとすることができる。さらに、カプロラクタムのみからなる原料組成物Cを調製しておき、原料組成物A、B及びCを溶融混合することもできる。この場合において、仕込む各原料組成物中のカプロラクタムの配合割合は、用いる原料組成物AとBとCとの量比により適宜調節することができ、例えば、原料組成物C中に、仕込むべき全原料カプロラクタムのうちの60〜90重量%を含有させることができる。例えば、原料組成物A、B及びCの使用量の重量比を20:20:65とし、原料組成物Aの組成をカプロラクタム18.8重量部、触媒1.2重量部とし、原料組成物Bの組成をカプロラクタム16.2重量部、活性剤1.9重量部、カルボジイミド化合物1.9重量部とし、原料組成物Cの組成をカプロラクタム65重量部とすることができる。しかしながら、これらに限定されず、本発明の目的に沿って適宜の割合で使用することができる。
【0021】
本発明においては、カプロラクタムとアニオン重合触媒とを含有する原料組成物Aと、カプロラクタムと活性化剤と芳香族カルボジイミド化合物及び脂環族カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種のカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物Bとからなるか、あるいは、さらに、全原料カプロラクタムのうち、60〜90重量%を含有する原料組成物Cとからなる、ポリアミド6合成原料を予め調製しておき、溶融混合して重合工程に供することができる。
【0022】
本発明の製造方法においては、反応原料中には、本発明の効果が損われない範囲で、更に、従来公知の各種の無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤の種類や配合量は、用途や組成物の粘度に応じて適宜選択することができる。上記無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ粉末、石英ガラス粉末、結晶性シリカ粉末、ガラス微小繊維、タルク、アルミナ粉末、珪酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化アンチモン粉末、硫酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、水酸化アルミニウム粉末等が挙げられる。
【0023】
上記無機充填剤の配合量としては、特に制限されないが、通常、カプロラクタム100重量部に対して10〜70重量部である。
【0024】
さらに、反応原料中に、必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、内部離型剤等の添加剤を配合することができる。上記熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール等、上記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン等、上記難燃剤としては、例えば、燐酸メラミン等を挙げることができる。配合量は特に限定されず、一般に適用される配合量を用いることができる。本発明においては、溶剤を使用する必要はなく、むしろ使用しないことが好ましい。溶剤を用いると発泡が起きやすくなる。
【0025】
上記無機充填剤や上記熱安定剤等の添加剤は、上記原料組成物A、BあるいはさらにCを用いる場合は、それらのうちの一つ又は複数に含有させることができる。
【0026】
アニオン重合工程は、予め、上記原料組成物Aと、上記原料組成物B、好ましくはカプロラクタム、活性化剤と芳香族カルボジイミド化合物及び脂環族カルボジイミド化合物からなる群から選択される少なくとも1種のカルボジイミド化合物とを含有する原料組成物B、とからなる合成原料を調製しておき、重合時に両者を混合して使用することができる。この際の溶融加熱温度としては、カプロラクタムの溶融温度を考慮して、100〜110℃程度が挙げられる。アニオン重合温度としては、例えば、110〜180℃が好ましく、より好ましくは140℃〜170℃で行う。重合工程に要する時間としては、一般的には、2分〜50分が好ましく、より好ましくは5分〜40分である。この際の反応器としては、例えば、加熱可能な成形金型であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0027】
前記重合工程終了後、好ましくは反応器内の温度を重合工程終了時の温度から昇温させることなく、反応器から重合体を取得する。重合工程終了後とは上記重合工程に要する時間が経過した時点である。従って、本発明の製造方法においては、重合工程に要する時間が経過した時点で反応器内に重合体が生成し、その生成した重合体を、速やかに、あるいは、必要に応じて反応器を冷却してから、例えば、金型であれば脱型して、取得することができる。このように、本発明の製造方法では結晶化度を向上させるために通常行われる重合後の後処理としての熱処理をする必要がない。重合後、速やかに反応器から取得した場合でもポリアミド6は、結晶化度が、本願発明における結晶化度向上剤の有効成分であるカルボジイミド化合物を使用しない場合に比べて顕著に向上し、好ましくは42%以上、より好ましくは44%以上、さらに好ましくは45%以上の結晶化度を有することができる。
【0028】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、たとえば、繊維強化複合体を製造するために、強化用繊維にモノマー溶融液を含浸するための工程を実施することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
以下の実施例、比較例中の略号の意味は以下のとおり。
カルボジイミド化合物1:ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド
カルボジイミド化合物2:Hydorostab3(商品名)(カルボジイミド化合物のオリゴマー;Schafer Additivsysteme GmbH社製)
カルボジイミド化合物3:ジシクロヘキシルカルボジイミド
カルボジイミド化合物4:ジイソプロピルカルボジイミド
カルボジイミド化合物5:カルボジライトLA−1(商品名)(ポリ(4,4−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド);日清紡ケミカル社製)
カルボジイミド化合物6:カルボジライトHMV−15CA(商品名)(カルボジライトLA−1の末端イソシアネートキャップ品;日清紡ケミカル社製)
カルボジイミド化合物7:カルボジライトV−05(商品名)(テトラメチルキシリレンジイソシアネートを原料としたカルボジイミド;日清紡ケミカル社製)
触媒1:ナトリウムラクタメート
活性化剤1:デュラネートD101(商品名)(ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート;旭化成ケミカルズ社製)
活性化剤2:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0031】
実施例1−1〜1−5、
3、参考例2−0、4−0、5−0、6−0、比較例1
表1に記した原料成分を反応器に仕込んだ。なお、原料成分は予め、カプロラクタムと触媒とを混合した原料組成物Aと、カプロラクタムと活性化剤とカルボジイミド化合物とを混合した原料組成物Bとを調製し、両者を等量(重量部)混合して反応器に仕込んだ。原料組成物は100℃で溶融させて用いた。反応器中の重合時間は30分、重合温度は150℃とした。重合時間経過後、反応器から速やかに重合体を取り出した。取得した重合体の結晶化度は、セイコーインスツル製示差走査熱量計DSC6220を用い、昇温速度20℃/分で測定することにより得られたピーク面積から求めた結晶部の融解熱量を、結晶化度100%時の理論値である188J/gで除して、結晶化度として算出した。結果を表1に示した。表1中の配合量数値は重量部である。なお、触媒1の配合量は、カプロラクタムのモル量に対して1.0モル%となる量であり、活性化剤1の配合量は、カプロラクタムのモル量に対して官能基量が1.0モル%となる量である。
【0032】
【表1】
【0033】
参考例1〜7
表2に記した結晶核剤を1.0重量部、活性化剤2を0.7重量部用いたこと以外は比較例1と同様にして、ただし、反応器中の重合時間は60分、重合温度は160℃として、カプロラクタムの重合を試みた。
【0034】
【表2】
【0035】
参考例1、2、4〜7の結果
参考例1、2はカプロラクタムの重合阻害が生じて重合体が得られなかった。参考例4〜7は、結晶核剤の全部又は一部がカプロラクタム溶融液に溶解せず、結晶核剤として作用しなかった。
【0036】
参考例3の結果
参考例3の結晶核剤はカプロラクタム溶融液に溶解したので表3の配合で参考例3−1〜3−5を調製した。参考例3の結果を参考例3−1〜3−5として表3に示した。ただし、参考例3−1はブランクテストである。表3中の配合量数値は重量部である。
【0037】
【表3】
【0038】
参考例3においては、結晶核剤の配合量を変化させた表3の結果から、重合体の結晶化度は、ブランクに対して低下するか、僅かしか上昇せず、結晶化度向上効果はなかった。
【0039】
これに対して、表1に示すように、実施例の結果から、カルボジイミド化合物を結晶化度向上剤として用いたなら、所謂モノマーキャスト手法により得られたポリアミド6の結晶化度が、公知の結晶核剤やポリマーの熱処理のような公知の結晶化度向上手段を用いることなしに、顕著に向上したことが判った。