特許第6229993号(P6229993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229993
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】油類精製用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 3/06 20060101AFI20171106BHJP
   C11B 13/00 20060101ALI20171106BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20171106BHJP
   C01B 33/22 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C11B3/06
   C11B13/00
   A23D9/02
   !C01B33/22
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-167746(P2013-167746)
(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-36398(P2015-36398A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237972
【氏名又は名称】富田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 孝典
(72)【発明者】
【氏名】堀家 裕史
(72)【発明者】
【氏名】亀和 利広
(72)【発明者】
【氏名】柚木 正志
(72)【発明者】
【氏名】大久保 彰
(72)【発明者】
【氏名】板東 明人
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−335982(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0269464(US,A1)
【文献】 特開昭62−061635(JP,A)
【文献】 特開2005−006510(JP,A)
【文献】 特表2003−526496(JP,A)
【文献】 米国特許第05597600(US,A)
【文献】 国際公開第2012/056749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B
C11C
A23D
C01B 33/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とを含む複合体を含有する油類精製用組成物であって、前記複合体中におけるSi及びMgの含有比率がSiO/MgO重量比換算で2.5〜8.0であることを特徴とする油類精製用組成物。
【請求項2】
平均粒径30μm以上の粉末状である、請求項1に記載の油類精製用組成物。
【請求項3】
前記複合体のBET比表面積が200m/g以上である、請求項1に記載の油類精製用組成物。
【請求項4】
前記前駆体の表面の一部又は全部がケイ素成分により被覆されている、請求項1に記載の油類精製用組成物。
【請求項5】
前記複合体が、70℃未満の温度下において、硫酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム及び水を含む混合水溶液から得られた沈殿物である、請求項1に記載の油類精製用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の油類精製用組成物と油類とを接触させる工程を含むことを特徴とする精製油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な油類精製用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンビニエンスストアー、惣菜屋等の揚物をその場で調理して販売する食品営業では食用油が多量に使用されている。このような食用油で惣菜等の揚種を揚げる場合、食用油は高温に曝されるとともに繰り返し使用されることになる。このため、食用油は、加水分解、酸化等を受けて劣化を生じる。その結果、食用油中に遊離脂肪酸が生成することにより酸価が上昇することとなる。常に新しい食用油を用いることが理想的であるが、そのようにすると調理コストの上昇が避けられない。このため、資源の有効利用、食品のリサイクル化の要請等も相まって、使用済み食用油(劣化食用油)については再生剤(脱酸剤)による再生も行われている。
【0003】
再生剤を用いた場合には食用油の酸価を下げることができ、再利用が可能となる。これに対し、ケイ酸マグネシウム等を再生剤として用いることも提案されている。具体的には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、合成フィロケイ酸マグネシウム、シリカ、マグネシア、二酸化ケイ素および活性白土からなる群から選択される食用油の脱酸剤において、粒径が50〜200μmに造粒されてなることを特徴とする食用油の脱酸剤が開示されている(特許文献1)。
【0004】
これに対し、本発明者は、良好な脱酸能力と脱色能力とを併せ持つケイ酸マグネシウム系劣化食用油用再生剤を提供するため、3八面体型スメクタイト族粘土鉱物の結晶系であり、X線回折測定において、2θ=18〜20度のピークにおける積分強度Iaと2θ=26〜28度のピークにおける積分強度Ibとの比率Ib/Iaが1〜2であり、SiO/MgOモル比(X)が1.2〜3.8であることを特徴とするケイ酸マグネシウム系劣化食用油用再生剤を先に提案し、特許が成立している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335793
【特許文献2】特許第4831517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来のケイ酸マグネシウム系再生剤では、脱酸性能が低く、脱酸性能を高めるために、その使用量を増加させるとマグネシウムの溶出も顕著になる。溶出したマグネシウム成分は、精製した油類(再生油等)中の遊離脂肪酸(カルボン酸等)と反応してケン化し、再生油等に濁り又は発泡を生じさせるほか、例えばその再生油を用いて調理された食品の食感等も低減させてしまう。このようなマグネシウム溶出の問題を考慮すると、再生剤の使用量も自ずと限界があり、結果的には十分満足できる脱酸性能を得ることは困難である。このように、従来技術では、マグネシウム溶出量の低減化と、満足できる脱酸性能を得ることとを両立させることは困難とされており、これらを両立できる技術は未だ開発されるに至っていないのが現状である。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、より優れた脱酸性能を有するとともに、マグネシウム溶出量が効果的に抑制された油類精製用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構成からなる材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の油類精製用組成物に係る。
1. ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とを含む複合体を含有する油類精製用組成物であって、前記複合体中におけるSi及びMgの含有比率がSiO/MgO重量比換算で2.5〜8.0であることを特徴とする油類精製用組成物。
2. 平均粒径30μm以上の粉末状である、前記項1に記載の油類精製用組成物。
3. 前記複合体のBET比表面積が200m/g以上である、前記項1に記載の油類精製用組成物。
4. 前記前駆体の表面の一部又は全部がケイ素成分により被覆されている、前記項1に記載の油類精製用組成物。
5. 前記複合体が、70℃未満の温度下において、硫酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム及び水を含む混合水溶液から得られた沈殿物である、前記項1に記載の油類精製用組成物。
6. 前記項1に記載の油類精製用組成物と油類とを接触させる工程を含むことを特徴とする精製油の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より優れた脱酸性能を発揮すると同時に、マグネシウム成分の溶出を抑制ないしは防止された油類精製用組成物を提供することができる。すなわち、本発明の油類精製用組成物では、マグネシウムの溶出量が抑制されているだけではなく、脱酸性能もより優れた性能を発揮することができる。これにより、濁り及び発泡が効果的に抑制されると同時により高品質の精製油を製造することができる。
このような本発明の油類精製用組成物は、例えば使用済み油(食用油等)の再生、製品である天然油・合成油を製造する際における粗油(原料油)の精製、天然油・合成油を原料とする製品(例えば医薬品、化粧品、食品、化学品等)の製造における前記原料の精製等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1aは、実施例1の粉末をSEMで観察した結果を示す図である。図1bは、実施例1の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてケイ素の元素分布を測定した結果を示す図である。図1cは、実施例1の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてマグネシウムの元素分布を測定した結果を示す図である。
図2図2aは、実施例3の粉末をSEMで観察した結果を示す図である。図2bは、実施例3の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてケイ素の元素分布を測定した結果を示す図である。図2cは、実施例3の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてマグネシウムの元素分布を測定した結果を示す図である。
図3図3aは、実施例7の粉末をSEMで観察した結果を示す図である。図3bは、実施例7の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてケイ素の元素分布を測定した結果を示す図である。図3cは、実施例7の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてマグネシウムの元素分布を測定した結果を示す図である。
図4図4aは、比較例1の粉末をSEMで観察した結果を示す図である。図4bは、比較例1の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてケイ素の元素分布を測定した結果を示す図である。図4cは、比較例1の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてマグネシウムの元素分布を測定した結果を示す図である。
図5図5aは、比較例2の粉末をSEMで観察した結果を示す図である。図5bは、比較例2の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてケイ素の元素分布を測定した結果を示す図である。図5cは、比較例2の粉末をエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いてマグネシウムの元素分布を測定した結果を示す図である。
図6】実施例及び比較例の粉末について、SiO/MgO重量比と酸価低減率/Mg溶出量の関係を示すグラフである。
図7】比較例1の粉末をX線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した結果を示す図である。
図8】実施例5の粉末をX線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した結果を示す図である。
図9】比較例3の粉末をX線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した結果を示す図である。
図10】比較例4の粉末をX線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した結果を示す図である。
図11】比較例6の粉末をX線回折装置を用いてX線回折パターンを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.油類精製用組成物
本発明の油類精製用組成物(以下「本発明組成物」)は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とを含む複合体を含有する油類精製用組成物であって、前記複合体中におけるSi及びMgの含有比率がSiO/MgO重量比換算で2.5〜8.0であることを特徴とする。
【0013】
本発明組成物に有効成分として含まれる複合体は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とを含むものである。
【0014】
ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体は、所定の熱履歴を経てケイ酸マグネシウム結晶になり得る物質であり、未だケイ酸マグネシウム結晶(フィロケイ酸マグネシウム結晶)に至っていないものである。より具体的には、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体のX線回折測定において、2θ=26±1°、2θ=35±1°及び2θ=60±1°にピークを有し、かつ、ケイ酸マグネシウム結晶に特有のピーク位置2θ=20±1°にピークを有さないという特徴を有するものである。2θ=20±1°にピークが確認される場合は、完全なケイ酸マグネシウム結晶に相転移していると考えられるため、所望の脱酸性能を得ることが困難となる。
【0015】
複合体は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体のほか、ケイ素成分をさらに含有している。すなわち、前駆体とともにケイ素成分を共存させることにより、マグネシウム溶出を効果的に抑制しつつ、高い脱酸性能を得ることが可能になる。特に、マグネシウム溶出を抑制するという見地より、ケイ素成分は複合体(複合体の粒子)の表面により多く分布していることが好ましい。例えば、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体(前駆体粒子)の表面の一部又は全部がケイ素成分により被覆されていることが好ましい。ケイ素成分の形態は特に限定されないが、例えば酸化ケイ素(二酸化ケイ素を含む。)を含むことが好ましい。酸化ケイ素は、結晶質又は非晶質のいずれであっても良いが、特に非晶質であることが好ましい。
【0016】
本発明における複合体は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とが独立して存在するが、両者が物理的又は化学的に結合して一体的になったものと考えられ、単なるケイ酸マグネシウムとケイ素化合物との混合物とは区別されるものである。一例として、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体を主成分とするコア部とケイ素成分を主成分とする表層部とから構成される粒子(粒子群)を複合体として好適に用いることができる。このようなケイ酸マグネシウム結晶の前駆体とケイ素成分とが一体的に構成された複合体としては、例えば70℃未満の温度下において、硫酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム及び水を含む混合水溶液から得られた沈殿物(特に未熱処理物)を好適に用いることができる。
【0017】
また、本発明の複合体中におけるSi及びMgの含有比率は、SiO/MgO重量比換算で2.5〜8.0であり、好ましくは2.7〜7.6である。SiO/MgO重量比が2.5より小さい場合は、マグネシウム成分の溶出量が大きくなって精製油(処理後の油類)を濁らせる等の悪影響を及ぼす。また、SiO/MgO重量比が8.0を超える場合は、脱酸性能が低下し、十分な効果が得られない。
【0018】
本発明組成物中における複合体の含有量は、処理する油類の種類、所望の脱酸性能等に応じて適宜設定することかできるが、通常は本発明組成物中90〜100重量%程度とし、特に95〜100重量%とすることが望ましい。従って、例えば本発明組成物中の複合体の含有量が100重量%であっても良い。
【0019】
本発明組成物では、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲内において他の添加剤を配合することもできる。例えば、公知の再生剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0020】
本発明組成物の形態は、通常は粉末状として使用すれば良い。その場合の平均粒径は特に制限されないが、通常は30μm以上とし、特に50〜100μmとすることが好ましい。このような範囲に設定することによって、精製処理後の油類と本発明組成物との固液分離に際してより優れたろ過性能を発揮することができる。
【0021】
本発明組成物のBET比表面積は特に制限されないが、通常は200m /g以上とし、特に300〜600m/gとすることが好ましい。このような範囲に設定することによって、より優れた脱酸性能を発揮することができる。
【0022】
本発明組成物は、モデル油AV1において[酸価低減率/Mg溶出量]が30以上、特に38以上であることが好ましい。[酸価低減率/Mg溶出量]は、酸価低減率(%)をMg溶出量(ppm)で除することによって求めることができる。例えば、後記の実施例1のように、酸価低減率が20.8%であり、Mg溶出量が0.5ppmである場合は20.8/0.5=41.6となる。[酸価低減率/Mg溶出量]が上記範囲内にある場合は、より高い酸価低減率を有するとともに、Mgの溶出をより効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明組成物は、通常は粉末の形態で使用することができるが、必要に応じて造粒等の成形を行うこともできる。造粒方法は特に制限されず、例えば転動造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、圧縮成型法(圧縮造粒法)、成膜処理法、磁気特性処理法、表面改質法、焼結成型法、振動成型法、圧力スイング法、真空成型法、スプレードライ法等のほか、凍結乾燥法、共沈法等を利用する方法等のいずれであっても良い。造粒物の平均粒径は、一般的には10〜300μm程度とすれば良い。なお、造粒に際しては、ケイ酸マグネシウムの含有水分率の変動を効果的に抑制するために、溶媒としてアルコール類等の有機溶剤を使用したり、あるいは造粒後に乾燥工程を実施することもできる。
【0024】
本発明組成物は、例えば本発明組成物と油類とを接触させる工程を含む方法によって好適に使用することができる。すなわち、本発明組成物を油類と接触させる工程(接触工程)を含む方法(本発明の製造方法)よって精製油を好適に製造することができる。
【0025】
接触させる際の温度は、処理対象となる油類の種類等に応じて適宜設定すれば良い。例えば、使用済み油の再生(再利用)を目的として精製する場合は、200℃以下(好ましくは70〜200℃、より好ましくは120〜170℃)の温度に加熱された劣化油(使用済み油)と本発明組成物とを接触させる工程を含む精製方法により劣化油の精製、ひいては精製油の製造を好適に行うことができる。
【0026】
油類と接触させる方法は特に制限されず、例えばa)油類に本発明組成物を分散・攪拌させる方法、b)本発明組成物を含むフィルター層に油類を1回又は複数回流通させる方法等を採用することができる。なお、本発明組成物を用いて精製処理を実施した後において、精製された油類中に本発明組成物が含まれている場合は、ろ過等の公知の固液分離方法により本発明組成物を分離・回収することができる。
【0027】
接触工程で用いる本発明組成物の使用量は、用いる油類の酸価等に応じて適宜設定することができるが、通常は油類100重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.4〜4重量部とすることが好ましい。
【0028】
接触工程では、本発明組成物とともに、脱色剤と併用することもできる。脱色剤の併用により、脱酸効果とともに脱色効果が得ることができる。すなわち、処理対象である油類が劣化油(使用済み油)である場合、脱色剤により色素成分を吸着し、黄褐色ないしは茶褐色に変色した劣化油をもとの色に近い色に戻すことができる。脱色剤としては、公知のもの又は市販品を使用することができ、例えば酸性白土、活性白土、活性炭、二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0029】
脱色剤を使用する場合の使用量は、油類の変色レベル等に応じて適宜決定することができるが、通常は本発明組成物100重量に対して0.1〜10重量部程度、特に0.4〜4重量部とすることが望ましい。
【0030】
油類としては、特に限定的でなく、公知又は市販の油類のいずれにも適用することができる。また、本発明組成物によって酸価を下げることができる限り、動物性油、植物性油又は鉱物性油のいずれであっても良い。動物性油としては、例えばバター、ラード、魚油、鶏油、鯨油、スクワレン等が挙げられる。植物性油としては、例えばパーム油、ショートニング、サラダ油、大豆油、コーン油、ごま油、菜種油、ひまわり油、椿油、オリーブオイル等が挙げられる。鉱物性油としては、例えばシリコンオイル、琥珀油等が挙げられる。
【0031】
また、本発明において、油類としては、使用前の油類であっても良いし、使用後の油類(使用済み油)であっても良い。すなわち、本発明の製造方法は、使用済み油の再生のほか、粗油の精製を目的として実施することができる。例えば、魚油は、搾油しただけの未精製の状態では、アミン化合物、脂肪酸、カルボニル化合物等を含むため、通常は脱ガム、脱酸、脱色、脱臭等の精製処理が行われるが、これらの精製工程において本発明組成物を好適に用いることができる。
【0032】
2.油類精製用組成物の製造
本発明組成物は、前記複合体を調製する工程を含むことを特徴とするものである。すなわち、1)70℃未満の温度下で硫酸マグネシウム溶解液、ケイ酸ナトリウム溶液を滴下することにより沈殿物を生成させる工程(第1工程)、2)前記沈殿物を複合体として回収する工程(第2工程)を含む製造方法によって、本発明組成物を好適に得ることができる。
【0033】
第1工程では、70℃未満の温度下で硫酸マグネシウム溶解液、ケイ酸ナトリウム溶液を滴下することにより沈殿物を得る。滴下方法は、特に制限されないが、逐次滴下方法、同時滴下方法等のいずれであっても良く、特に同時滴下方法が好ましい。
【0034】
ケイ酸質原料としては、公知のケイ酸マグネシウム合成で使用されている原料と同様のものを使用することができる。例えば、二酸化ケイ素、ケイ砂、ケイ石、石英、ケイ酸ナトリウム等を挙げることができる。また、マグネシウム原料としては、公知のケイ酸マグネシウム合成で使用されている原料と同様のものを使用することができる。例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等を挙げることができる。これらを水に添加することによって溶解液あるいは水性スラリーを得ることができる。
【0035】
また、両溶液の混合割合は、得られる複合体の所定のSiO/MgO重量比の範囲内になるように適宜調整すれば良い。食品添加物ケイ酸マグネシウムを得る場合は、SiO/MgO重量比を2.8〜5.4の範囲内になるように適宜調整すれば良い。
【0036】
両溶液を混合する際の温度は、適宜調整することができるが、特に70℃未満とし、さらには50℃以下の範囲内で行うことが好ましい。かかる温度範囲に設定することによって、安定した沈殿反応物が得られるという効果を得ることができる。
【0037】
第2工程では、前記沈殿物を必要に応じて脱水、水洗、乾燥等(これらをまとめて「精製処理」という。)を行うことにより複合体として回収する。脱水方法は、公知の固液分離方法、乾燥方法等に従えば良い。固液分離方法としては、例えばろ過、遠心分離等を一般的に採用することができる。また、乾燥方法としては、加熱乾燥又は凍結乾燥がある。乾燥装置は限定的でなく、例えば固定床式送風乾燥機、コンベヤ式送風乾燥機、流動層乾燥機、転動乾燥機、振動乾燥機、ドラム式乾燥機、気流乾燥機、噴霧乾燥機、凍結乾燥機、減圧乾燥機等を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0039】
実施例1
合成用原料として、市販の3号ケイ酸ナトリウム213.0g(SiO換算61.8g)、市販の硫酸マグネシウム135.0g(MgO換算22.2g)を各々量りとり、硫酸マグネシウムは、溶解後の液量がMgO換算重量の10倍量となるように水を加え、溶解させて水溶液とした(SiO/MgO仕込み重量比=2.8)。次に、予め3400gの水道水を入れた容量5Lのステンレス鋼製容器に各合成用原料を撹拌しながら、同時に約30分間で全量滴下した。滴下終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液40gを添加し、得られたスラリーを減圧ろ過により脱水し、脱水ケーキを乾燥器に入れ、100℃
で一晩乾燥し、複合体としての粉末(SiO:71.2重量%、MgO:26.5重量%、SiO/MgO重量比=2.7)を得た。
【0040】
実施例2
仕込み重量比を4.0、48%水酸化ナトリウム水溶液の量を13.3gとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:79.0重量%、MgO:20.1重量%、SiO/MgO重量比=3.9)を得た。
【0041】
実施例3
仕込み重量比を4.7、48%水酸化ナトリウム水溶液の量を1.7gとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:81.7重量%、MgO:17.9重量%、SiO/MgO重量比=4.6)を得た。
【0042】
実施例4
仕込み重量比を5.3とし、48%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに濃塩酸4.1gを添加することとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:83.5重量%、MgO:16.4重量%、SiO/MgO重量比=5.1)を得た。
【0043】
実施例5
仕込み重量比を6.0とし、48%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに濃塩酸12.2gを添加することとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:86.2重量%、MgO:14.7重量%、SiO/MgO重量比=5.9)を得た。
【0044】
実施例6
仕込み重量比を7.0とし、48%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに濃塩酸22.3gを添加することとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:85.4重量%、MgO:13.0重量%、SiO/MgO重量比=6.6)を得た。
【0045】
実施例7
仕込み重量比を8.0とし、48%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに濃塩酸28.4gを添加することとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、複合体としての粉末(SiO:88.7重量%、MgO:11.7重量%、SiO/MgO重量比=7.6)を得た。
【0046】
比較例1
仕込み重量比を1.3、48%水酸化ナトリウム水溶液の量を111.7gとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、粉末(SiO:48.4重量%、MgO:41.7重量%、SiO/MgO重量比=1.2)を得た。なお、この粉末は、後記の試験例のX線回折分析により、本発明の前駆体に相当する成分のみから構成されているのであることが確認された。
【0047】
比較例2
仕込み重量比を10.0とし、48%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに濃塩酸38.5gを添加することとした以外は実施例1と同様にサンプルを調製し、粉末(SiO:90.2重量%、MgO:9.5重量%、SiO/MgO重量比=9.5)を得た。
【0048】
比較例3
実施例3で得られたスラリーを90℃で3時間熟成した。前記スラリーを減圧ろ過により脱水し、得られたケーキを乾燥器に入れ、100℃ で乾燥し、粉末(SiO:85.4重量%、MgO:17.2重量%、SiO/MgO重量比=5.0)を得た。
【0049】
比較例4
3号ケイ酸ナトリウム213.0g(SiO換算61.8g)に濃塩酸62.9gを加え、スラリーを減圧ろ過により脱水し、得られたケーキを乾燥器に入れ、100℃
で乾燥し、二酸化ケイ素粉末を得た。
【0050】
比較例5
比較例1で得られた粉末1.0gに、市販の二酸化ケイ素粉末(商品名:二酸化ケイ素SK、富田製薬(株)製)1.5gを仕込み重量比が4.7になるように加えた後、乾式混合し、前駆体−二酸化ケイ素混合粉末を得た。
【0051】
比較例6
比較例1で得られたスラリーを90℃で3時間熟成した。前記スラリーを減圧ろ過により脱水し、得られたケーキを乾燥器に入れ、100℃で乾燥し、粉末を得た。
【0052】
なお、実施例及び比較例で得られた各粉末について、食品添加物ケイ酸マグネシウムの品質規格への適合性を調査した結果、実施例2〜4の複合体については、当該食品添加物規格に合格するものであった。
【0053】
試験例1
実施例及び比較例で得られた各粉末について、酸価低減能等の物性を調べた。その結果を表1及び図1〜11に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、表1中の各物性は次のようにして測定した。
【0056】
(1)MgO、SiO含量
「平成22年10月20日、平成22年厚生労働省告示第372号、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」記載のMgO、SiO含量測定方法に従い、測定した。
【0057】
(2)平均粒径
試料を水中に分散させてレーザー回折法により水溶媒中にて測定を行った。測定装置として「MICROTRAC MT3300 EXII」日機装社製を用いた。
【0058】
(3)BET比表面積
測定装置としてQuantachrome社製の高速比表面積・細孔分布測定装置「N
OVA4000e型」を用いた。試料の前処理として、試料0.05gを正確に測り、試
験管に封入し、105℃で3時間脱気を行った。比表面積の測定は、前処理終了後、液体
窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、その吸着等温線を用いて多点BET法に
よりを算出した。
【0059】
(4)脱酸価試験
モデル油AV1(オレイン酸0.4g(和光一級)に大豆油99.6g(和光一級)を加え、混合し、酸価が1〜2(本試験では酸価1.20)になるように調整した油)10mLに実施例及び比較例で調製した試料100mgを添加した後、150℃のオイルバス中、振とう器にて130回/分の条件で15分間振とうした。振とう後、直ちにメンブランフィルタ(目開き0.80μm)にてろ過した。得られたろ過液5gを精密に量り、エタノール/ジエチルエーテル混合液(容積比1:1)50mLを加え、必要に応じて加温して溶かし、検液とした。冷却した後、フェノールフタレイン試液数滴を加え、0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液(本表記は食品添加物公定書の記載方法に準ずる。)で30秒間持続する紅色を呈するまで滴定し、次式Aにより酸価を求めた。ただし、使用する溶媒は、予め使用前にフェノールフタレイン試液を指示薬として30秒間持続する紅色を呈するまで0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液を加えた。なお、脱酸価値及び酸価低減率は、次式B及びCにより算出した。
・酸価=(0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の消費量(mL)×5.611)/(試料の採取量(g))…式A
・脱酸価値=処理前のモデル油の酸価値(酸価1.20)−処理後のモデル油の酸価値…式B
・酸価低減率=((処理前のモデル油の酸価値(酸価1.20)−処理後のモデル油の酸価値)/処理前のモデル油の酸価値(酸価1.20))×100…式C
【0060】
(5)マグネシウム溶出量
(5−1)試料溶液の調製
前記(4)の脱酸価試験で得られたろ過液1gを精密に量り、白金皿に入れ、電気コンロで徐々に加熱して灰化した。冷却後、10%(v/v)塩酸5mLを加え、超純水で正確に50mLとし、これを試料溶液とした。
標準溶液(a)(ブランク)
10%(v/v)塩酸5mLに超純水を加え50mLとした。
標準溶液(b)(Mg:0.25ppm)
10%(v/v)塩酸5mL及びマグネシウム標準液(100ppm)0.125mLを正確にとり、超純水を加え50mLとした。
標準溶液(c)(Ca:0.5ppm)
10%(v/v)塩酸5mL及びマグネシウム標準液(100ppm)0.25mLを正確にとり、超純水を加え50mLとした。
(5−2)測定方法
原子吸光光度法フレーム方式(フレーム:空気―アセチレン(波長:422.7nm))の検量線法により求めた。前記の標準溶液(a)、(b)、(c)順に吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、試料溶液の吸光度を測定し、本品1g当たりのマグネシウム溶出量を次式Dにより計算した。吸光度の測定には、偏光ゼーマン原子吸光分光光度計(型式「Z−5010」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。原子吸光用マグネシウム標準液としては、和光純薬工業(株)製の製品を使用した。
溶出マグネシウム(ppm)=(C/試料採取量(g))×50…式D
(但し、C=測定液中のマグネシウム濃度(ppm))
【0061】
(6)酸価低減率/マグネシウム溶出量
前記(4)の脱酸価試験で得られた酸価低減率を前記(5)のマグネシウム溶出量の測定方法で得られたマグネシウム溶出量で除することによって算出した。
【0062】
(7)XRD回折測定
まず、X線回折測定を以下の測定条件で実施し、各粉末のX線回折結果をもとにピーク位置を特定した。なお、図7〜11のチャート図の横軸は2θ(°)を示す。
装置 : 株式会社リガク製X線回折装置(Smart Lab)
X線 : Cu−Kα
フィルター : Cu−Kβ
カウンター : D/teX
電圧 : 40kV
電流 : 30mA
走査速度 : 40.00°/分
ステップ幅 : 0.020°
入射スリット : 2/3deg
受光スリット : 10.0mm
【0063】
(8)元素分布測定
試料をカーボンテープに固定し、金蒸着を施して測定試料とした。測定は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM−5500LV」)を用い、加速電圧15kVにて二次電子像(SEM像)を撮影した後、エネルギー分散型X線分光装置(EDS:日本電子株式会社製「JED−2200」)を用いて加速電圧15kVにてケイ素及びマグネシウム由来の特性X線の強度から元素分布を測定した。
【0064】
図1〜5の「a」は各試料をSEMで観察した結果を示したものである。また、図1〜5の「b」及び「c」は各試料のSi元素及びMg元素の分布状態をそれぞれ示したものである。
【0065】
図1〜5に示すように、比較例1及び実施例1〜7では、SiO/MgO重量比=1.2〜7.6の範囲において、複合体粒子表面に前駆体の構成元素に由来するSi元素とMg元素が同一の粒子中に分布していることが確認され、この範囲においてSi成分含有量の増加とともにSi元素に起因する特性X線の強度の増加が認められたが、一方でMg元素に起因する特性X線の強度が顕著に低下することが確認された。比較例2のようにSiO/MgO重量比=9.5を超えると、Mg元素に起因する特性X線の強度はバックグランド以下となり確認されず、Si元素に起因する特性X線のみが確認された。このことはMg成分含有量に対するSi成分含有量の増加に伴い、複合体中において前記前駆体の粒子表面をケイ素成分が徐々に覆っていくことを示している。
【0066】
図6は、実施例及び比較例の粉末について、SiO/MgO重量比と[酸価低減率/Mg溶出量]の関係を示すグラフである。図6に示すように、比較例1のSiO/MgO重量比=1.2では、酸価低減率は高いが、Mg溶出量が大きくなるため、[酸価低減率/Mg溶出量]は低くなる。これは、Si元素とMg元素の分布からも明らかなように、複合体の粒子表面におけるケイ素の分布量が少ないため(換言すれば、前駆体の粒子表面がケイ素成分で十分に覆われていないため)であると考えられる。また、比較例2のSiO/MgO重量比=9.5では、酸価低減率が低くなる。これは、比較例4のシリカゲルの特徴が反映され、前駆体の粒子表面がケイ素成分により完全に覆われているためであると考えられる。
【0067】
図7にも示すように、比較例1で得られた粉末は、2θ=26±1°、2θ=35±1°及び2θ=60±1°にピークを有し、かつ、ケイ酸マグネシウム結晶のピーク位置2θ=20±1°にピークを有さないという特徴を有するものであり、本発明の前駆体に相当する成分であることがわかる。すなわち、比較例1の粉末は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体のみに相当する成分のみから構成されている。また、比較例6で得られた粉末のX線回折ピーク(図11)と比較例1の粉末とのX線回折ピーク(図7)とを比較すると、図11で得られた粉末では、2θ=20±1°に公知のフィロケイ酸マグネシウムに特有のX線回折ピークが検出されるということがわかる。すなわち、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体に相当する成分を熟成処理することにより、徐々に公知のフィロケイ酸マグネシウムへの相転移が起こっているものと考えられる。
【0068】
図8に示すように、実施例5で得られた複合体は、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体に相当する2θ=26±1°のピークが見かけ上消失し、二酸化ケイ素由来の2θ=22±1°のピークが確認されるようになるが、2θ=35±1°及び2θ=60±1°のピークは残存していることから、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体が比較的多くのケイ素成分に覆われてはいるものの、ケイ酸マグネシウム結晶の前駆体としての性能は有していることがわかる。
【0069】
比較例3は、実施例3で得られたスラリーを90℃で3時間熟成したものであるが、[酸価低減率/Mg溶出量]は低くなる。これは、図9にも示すように、2θ=20±1°に公知のフィロケイ酸マグネシウムに特有のX線回折ピークが検出されたためであると考えられる。
【0070】
比較例5では、比較例1で得られた粉末に、二酸化ケイ素粉末をSiO/MgO重量比が4.7になるように加えた後、乾式混合したものであるが、本発明組成物のような複合体が形成されていないため、Mg溶出量が多くなったと考えられる(表1参照)。
【0071】
これらの結果からも明らかなように、本発明組成物を用いる場合には、それ以外の粉末を使用する場合に比べて高い脱酸性能を発揮できるとともに、マグネシウムの溶出を効果的に抑制できることがわかる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11