(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229996
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】浴室ユニットの天井点検口構造
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
E04F19/08 101G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-199787(P2013-199787)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-63877(P2015-63877A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林堂 翔太
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−328740(JP,A)
【文献】
特開2002−206334(JP,A)
【文献】
特開平08−184242(JP,A)
【文献】
実開平06−044941(JP,U)
【文献】
特開2007−291697(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01233130(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室ユニットの天井パネルに点検口を設け、前記点検口に上方から覆蓋を被せるように
した浴室ユニットの天井点検口構造において、
前記天井パネルは、裏側の前記点検口の周囲を除いた部位に断熱材を設けると共に前記
点検口の周囲に第一の磁石を設けてなり、
前記覆蓋は、周縁部が中央部よりも高くなる段差が形成され、前記周縁部の前記天井パ
ネル側に第二の磁石を設けてなり、
前記覆蓋を天井パネルの点検口に被せると、前記第一の磁石の上面と第二の磁石の下面とが引き合う磁力によって前記覆蓋と前記天井パネルとがくっつくように構成されているとともに、
前記覆蓋の下面には、パッキン材が貼着されており、前記天井パネルの点検口側端部に上向きに折り返すように形成した折返部と前記パッキン材との高さ方向寸法の総和が、前記第一の磁石と前記第二の磁石との高さ方向寸法の総和よりも長くなるように構成され、
前記第一の磁石の上面と前記第二の磁石の下面とがくっつくと前記折返部が前記パッキン材を潰して止水ラインを形成するとともに前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面とが面一になり、前記第二の磁石の下面と前記折返部とが当接すると前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面との高さ方向の位置がずれることを特徴とする浴室ユニットの天井点検口構造。
【請求項2】
浴室ユニットの鋼板製の天井パネルに点検口を設け、点検口に上方から覆蓋を被せるよ
うにした浴室ユニットの天井点検口構造において、
前記天井パネルは、裏側の前記点検口の周囲を除いた部位に断熱材を設けてなり、
前記覆蓋は、周縁部が中央部よりも高くなる段差が形成され、前記周縁部の前記天井パ
ネル側に磁石を取り付け、
前記覆蓋を天井パネルの点検口に被せると、前記磁石によって前記覆蓋と前記鋼板とが
くっつくように構成されているとともに、
前記覆蓋の下面には、パッキン材が貼着されており、前記天井パネルの点検口側端部に上向きに折り返すように形成した折返部と前記パッキン材との高さ方向寸法の総和が、前記磁石の高さ方向寸法の総和よりも長くなるように構成され、
前記磁石の下面と鋼板の上面とがくっつくと前記折返部が前記パッキン材を潰して止水ラインを形成するとともに前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面とが面一になり、前記磁石の下面と前記折返部とが当接すると前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面との高さ方向の位置がずれることを特徴とする浴室ユニットの天井点検口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットの天井に設けられた点検口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室ユニットの天井点検口構造は、天井パネルに形成された点検口の上方から覆蓋を被せて密閉していた。覆蓋は、単に点検口周りに形成された折返部に載っているだけなので、浴室ドアの開閉時の風圧によって覆蓋が浮き上がることがないように、覆蓋の裏側に石膏ボードを二重に接着したり、鋼板パネルを接着したりすることによって重くしていた。そのため、施工時の作業性に改善の余地があった。
【0003】
そこで、覆蓋を重量化することなく施工時の作業性を向上させた上で、浴室ドアの開閉時の風圧によって覆蓋が浮き上がることがないよう、例えば、特許文献1に示される技術が提案されている。
この特許文献1に示された技術では、天井パネルの点検口周りに起立片を立上げ、その起立片の上端部から外向きに折返部を形成している。一方、点検口の上方から被せる覆蓋の周縁部には係止具が固定され、係止具には、天井パネルの折返部に係止し得る係止部が形成されている。そして、点検口の上から覆蓋を被せると、折返部に係止部が係止されることによって、浴室ドアの開閉時の風圧によって覆蓋が浮き上がらないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された技術では、メンテナンスを行う際などに覆蓋を取り外す場合は、浴室内から覆蓋を左右にずらせて係止部と折返部との係止を解除した上で覆蓋を持ち上げる。そのため、天井パネルの起立片と覆蓋の立上片との間には隙間が必要となる。特許文献1ではこの隙間を埋めるためにシールリップ(シール材)を設けている。ところが、このシールリップが浴室内から視認できない場合には、点検口と覆蓋の間の隙間が目立ってしまうし、シールリップが浴室内から視認可能な場合には、シールリップが見えてしまい見栄えが悪いという問題がある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、覆蓋を軽量化しても浴室ドアの開閉で浮き上がることがなく、浴室内からの見栄えが向上する浴室ユニットの天井点検口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、浴室ユニットの天井パネルに点検
口を設け、前記点検口に上方から覆蓋を被せるようにした浴室ユニットの天井点検口構造
において、前記天井パネルは、裏側の前記点検口の周囲を除いた部位に断熱材を設けると
共に前記点検口の周囲に第一の磁石を設けてなり、前記覆蓋は、周縁部が中央部よりも高
くなる段差が形成され、前記周縁部の前記天井パネル側に第二の磁石を設けてなり、前記覆蓋を天井パネルの点検口に被せると、前記第一の磁石
の上面と第二の磁石
の下面とが引き合う磁力によって前記覆蓋と前記天井パネルとがくっつくように
構成されているとともに、前記覆蓋の下面には、パッキン材が貼着されており、前記天井パネルの点検口側端部に上向きに折り返すように形成した折返部と前記パッキン材との高さ方向寸法の総和が、前記第一の磁石と前記第二の磁石との高さ方向寸法の総和よりも長くなるように構成され、前記第一の磁石の上面と前記第二の磁石の下面とがくっつくと前記折返部が前記パッキン材を潰して止水ラインを形成するとともに前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面とが面一になり、前記第二の磁石の下面と前記折返部とが当接すると前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面との高さ方向の位置がずれることを特徴とする。
これによれば、点検口に被せた覆蓋を天井パネルに磁力でくっつけたので、従来のよう
に覆蓋に重りを載せなくても、ドア開閉時の風圧によって蓋が浮き上がることがない。ま
た、覆蓋は重量化されないので、施工時の作業性が悪化することはない。さらに、覆蓋を
取り外すときは、第一の磁石と第二の磁石が離れるように、覆蓋を真上に持ち上げるだけ
なので、従来技術のように覆蓋を左右にずらす必要がなく、点検口と覆蓋の間で隙間やシ
ール材が目立つことがなく、浴室内からの見栄えが向上する。
さらに、磁石がくっつくと覆蓋の下面と天井パネルの下面が面一になるから、天
井と覆蓋との面合わせ精度が向上する。これにより、点検口周りに段差ができないから、
影のできない美しい天井面を得ることができる。
【0008】
また、請求項
2記載の発明は、浴室ユニットの天井パネルに点検口を設け、点検口に上
方から覆蓋を被せるようにした浴室ユニットの天井点検口構造において、前記天井パネル
は、裏側の前記点検口の周囲を除いた部位に断熱材を設けてなり、前記覆蓋は、周縁部が
中央部よりも高くなる段差が形成され、前記周縁部の前記天井パネル側に磁石を取り付け
、前記覆蓋を天井パネルの点検口に被せると、前記磁石によって前記覆蓋と前記鋼板とが
くっつくように
構成されているとともに、前記覆蓋の下面には、パッキン材が貼着されており、前記天井パネルの点検口側端部に上向きに折り返すように形成した折返部と前記パッキン材との高さ方向寸法の総和が、前記磁石の高さ方向寸法の総和よりも長くなるように構成され、前記磁石の下面と鋼板の上面とがくっつくと前記折返部が前記パッキン材を潰して止水ラインを形成するとともに前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面とが面一になり、前記磁石の下面と前記折返部とが当接すると前記覆蓋の下面と前記天井パネルの下面との高さ方向の位置がずれることを特徴とする。
これによれば、点検口に被せた覆蓋を天井パネルに磁力でくっつけたので、従来のように覆蓋に重りを載せなくても、ドア開閉時の風圧によって蓋が浮き上がることがない。また、覆蓋は重量化されないので、施工時の作業性が悪化することはない。さらに、覆蓋を取り外すときは、天井パネルと磁石が離れるように、覆蓋を真上に持ち上げるだけなので、従来技術のように覆蓋を左右にずらす必要がなく、点検口と覆蓋の間で隙間やシール材が目立つことがなく、浴室内からの見栄えが向上する。
さらに、点検口周りに段差ができないから、影のできない美しい天井面を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、覆蓋を軽量化しても浴室ドアの開閉で浮き上がることがなく、浴室内からの見栄えが向上する浴室ユニットの天井点検口構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の天井パネル構造の一例の天井点検口近傍を示す、
図2のX部を拡大した断面図であり、(a)は覆蓋2が天井点検口1に保持される前の状態を示す断面図、(b)は覆蓋2が天井点検口1に保持された状態を示す断面図である。
【
図2】本発明の天井パネル構造の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の天井パネル構造の他の例の天井点検口近傍を示す断面図であり、(a)は覆蓋2が天井点検口1に保持される前の状態を示す断面図、(b)は覆蓋2が天井点検口1に保持された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図に基づいて説明する。
図1及び
図2は、本発明を実施したユニットバスルームの天井パネル3を示している。
【0013】
天井パネル3は鋼板を折曲加工して成形されており、天井パネル3の一部には、天井裏の電気配線、換気扇等のメンテナンスを行うために、天井点検口1が設けられている。また、天井パネル3の裏面には、石膏ボード等の天井裏補強材4(断熱材)が貼着されている。
【0014】
天井点検口1は、メンテナンス時以外は通常、上方から覆蓋2が被せられて閉塞されている。
覆蓋2は鋼板を折曲加工して成形されており、覆蓋2の裏面に補強材(断熱材)として石膏ボード8等が貼着されている。なお、覆蓋2の鋼板は、天井パネル3の鋼板と同じ厚みである。
【0015】
天井点検口1の周縁には、天井パネル3の端部から上向きに折り返された折返部1aが全周に亘り形成されている。折返部1aと天井裏補強材4の間には所定の空隙が設けられるように、天井点検口1の周囲には天井裏補強材4が貼着されていない領域を設けている。
【0016】
覆蓋2の周縁には、覆蓋2の端部から上向きに折り返された立上部2aと、立上部2aの上端から外側に折り返されたフランジ部2bとが全周に亘り形成されている。すなわち、覆蓋2には、中央部よりも周縁部の方が高くなるような段差が形成されている。
【0017】
また、覆蓋2のフランジ部2bの立上部2a側には、全周に亘ってパッキン材7が貼着されている。さらに、
図1及び
図2に示すように、磁石6(第二の磁石)が、パッキン材7の外側に設置されている。この第二の磁石6は、複数個所に設置されている。この第二の磁石6に対応する場所に磁石5(第一の磁石)が天井パネル3裏面の天井裏補強材4の端部に沿って設置される。この第一の磁石5は、天井点検口1の周囲において天井裏補強材4が貼着されていない領域に貼着される。また、第一の磁石5と第二の磁石6は、それぞれ異なる磁極が向き合うように配設され、磁力(引力)によって互いに引き合ってくっつくようになされている。
ここで天井点検口1の全体形状は図示していないが、特に限定されるものではなく、本発明であれば、略方形、長円形等いずれの形状でも適用可能であり、磁石5,6は天井点検口1及び覆蓋2の周縁に沿って複数個取り付けられる。
【0018】
パッキン材7は、軟質のウレタン等の合成樹脂やゴム材等の弾性材でなり、覆蓋2の立上部2aと磁石6との間、すなわちフランジ部2bに貼着され、天井パネル3の折返部1aの真上に配設されている。そして、折返部1aとパッキン材7の高さ方向寸法の和が、第一の磁石5と第二の磁石6の高さ方向寸法の和よりも長くなっている。このため、磁石5,6同士が引き合って当接することによって、折返部1aによりパッキン材7が潰れる。これにより、天井点検口1周りの全周に止水ラインを形成することができ、ユニットバスルームの天井裏へ、水や水蒸気が浸入することを防止することができる。
【0019】
また第一の磁石5と第二の磁石6の高さ方向寸法の和が、覆蓋2の中央部の上面とフランジ部2bの下面との距離と等しくなっており、覆蓋2と天井パネル3の鋼板は同じ厚みとなっているため、覆蓋2の下面と天井パネル3の下面とが面一になる。
また第一の磁石5の高さ方向寸法は、天井裏補強材4及び折返部1aの高さ方向寸法よりも小さく設定されており、これによりメンテナンスの際に覆蓋2を持ち上げた後で左右にスライドした際でも、鋼板製の覆蓋2が第一の磁石5に張り付くことがなく、覆蓋2の着脱作業をスムーズに行うことができる。
【0020】
次に、天井点検口1への覆蓋2の取り付け方法を説明する。
垂直に倒した覆蓋2をユニットバスルーム内から天井点検口1を通して天井裏に持ち上げる。そして、天井裏で覆蓋2を水平方向に直して第二の磁石6が第一の磁石5の真上に来るようにして天井点検口1に被せる。これにより覆蓋2が天井点検口1の周縁に磁力によって保持され、天井点検口1が閉塞される。
【0021】
このような構造によれば、覆蓋2を軽量化しても浴室ドアの開閉によって浮き上がることがないばかりか、天井パネル3と覆蓋2の下面が面一となるので浴室内からの見栄えが向上する浴室ユニットの天井点検口構造を提供することができる。また、覆蓋2は天井点検口1の上から被せて装着するので、覆蓋2が天井点検口1から不意に落下することはなく、安全性が高い。
【0022】
次に、本発明の第二の実施の形態について図を基にして説明する。
図3は、天井点検口近傍を示す断面図であり、
図3(a)は覆蓋2が天井点検口1に保持される前の状態を示す断面図、
図3(b)は覆蓋2が天井点検口1に保持された状態を示す断面図である。なお、前述した実施形態と同じ部材については同じ符号を用いその説明を省略する。
【0023】
この実施の形態では、天井パネル3に設けた第一の磁石5を用いていない点で、前述した実施の形態とは異なる。
覆蓋2のフランジ部2bには、磁石9が、パッキン材7の外側に設置されている。この磁石9の高さ方向寸法は、覆蓋2の中央部の上面とフランジ部2bの下面との距離と等しくなっており、覆蓋2と天井パネル3の鋼板は同じ厚みとなっているため、磁石9を天井パネル3の鋼板にくっつけると、覆蓋2の下面と天井パネル3の下面とが面一になる。
この実施の形態によれば、用いる磁石の数を少なくしても第一の形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 …天井点検口
1a…折返部
2 …覆蓋
2a…立上部
2b…フランジ部
3 …天井パネル
4 …天井裏補強材(断熱材)
5 …第一の磁石
6 …第二の磁石
7 …パッキン材
8 …石膏ボード
9 …磁石