(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの排気通路上に設けられ且つ、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態であるときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、この吸蔵したNOxを、排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりもリッチな状態であるときに還元するNOx触媒であって、HCを酸化する酸化触媒としての機能も有するNOx触媒を備えたエンジンの排気浄化装置であって、
上記NOx触媒よりも下流側の排気通路上に設けられ、NH3との反応によって排気ガス中のNOxを浄化するSCR触媒と、
上記SCR触媒に尿素を供給するように上記尿素を上記エンジンの排気通路に噴射する尿素噴射弁と、
燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御手段と、
排気ガスの空燃比をリッチ化させ、上記NOx触媒に吸蔵されたNOxを還元可能な第一目標空燃比に設定して、上記NOx触媒に吸蔵されたNOxを還元させるNOx還元制御を実行するNOx還元制御手段と、を備え、
上記NOx還元制御手段は、上記尿素噴射弁からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合には、排気ガスの空燃比が上記第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御を実行することにより、上記NOx触媒からNH3を上記SCR触媒に供給させるNH3供給NOx還元制御を実行する、ことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
上記NOx還元制御手段は、上記第二目標空燃比を、理論空燃比よりもリッチ側且つ所定の限度空燃比までの範囲内で決定する、請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
上記NOx還元制御手段は、上記空燃比リッチ化NOx還元制御を実行した後、排気ガスの空燃比が上記第一目標空燃比よりもリーン側の状態となる空燃比リーン運転制御を実行し、空燃比リーン運転制御終了後、上記NOx還元制御を実行することにより、上記NOx触媒からNH3を上記SCR触媒に供給させるNH3供給NOx還元制御を実行する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
上記NOx還元制御手段は、上記空燃比リッチ化NOx還元制御を実行した後、排気ガスの空燃比が上記目標空燃比よりもリーンな状態となる空燃比リーン運転制御を実行し、上記空燃比リーン運転制御終了後、上記空燃比リッチ化NOx還元制御を実行することにより、上記NOx触媒からNH3を上記SCR触媒に供給させるNH3供給制御を実行する、請求項1乃至4の何れか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
上記NOx還元制御手段は、上記尿素噴射弁に供給される尿素が凍結している場合には排気ガスの空燃比が上記第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御を実行することにより、上記NOx触媒からNH3を上記SCR触媒に供給させるNH3供給NOx還元制御を実行する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
上記NOx還元制御手段は、上記空燃比リーン運転制御終了後、上記空燃比リッチ化NOx還元制御を実行する場合には、上記空燃比リッチ化NOx還元制御におけるポスト噴射時期を、ポスト噴射させた燃料をエンジンの筒内において燃焼させるポスト噴射時期に設定する、請求項1乃至6の何れか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態によるエンジンの排気浄化装置について説明する。
【0019】
<システム構成>
最初に、
図1を参照して、本発明の一実施形態によるエンジンの排気浄化装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるエンジンの排気浄化装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、エンジンシステム200は、主に、ディーゼルエンジンとしてのエンジンEと、エンジンEに吸気を供給する吸気系INと、エンジンEに燃料を供給するための燃料供給系FSと、エンジンEの排気ガスを排出する排気系EXと、エンジンシステム200に関する各種の状態を検出するセンサ100〜119と、エンジンシステム200の制御を行うPCM(Power-train Control Module)60と、SCR触媒47に関する制御を行うDCU(Dosing Control Unit)70とを有する。
【0021】
まず、吸気系INは、吸気が通過する吸気通路1を有しており、この吸気通路1上には、上流側から順に、外部から導入された空気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気を圧縮して吸気圧を上昇させる、ターボ過給機5のコンプレッサと、外気や冷却水により吸気を冷却するインタークーラ8と、通過する吸気流量を調整する吸気シャッター弁7(スロットルバルブに相当する)と、エンジンEに供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク12と、が設けられている。
また、吸気系INにおいて、エアクリーナ3の直下流側の吸気通路1上には吸入空気量を検出するエアフローセンサ101及び吸気温度を検出する温度センサ102が設けられ、ターボ過給機5には吸気の圧力を検出する圧力センサ103が設けられ、インタークーラ8の直下流側の吸気通路1上には吸気温度を検出する温度センサ106が設けられ、吸気シャッター弁7には当該吸気シャッター弁7の開度を検出するポジションセンサ105が設けられ、サージタンク12には吸気マニホールドにおける吸気の圧力を検出する圧力センサ108が設けられている。これらの吸気系INに設けられた各種センサ101〜108は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S101〜S108をPCM60に出力する。
【0022】
次に、エンジンEは、吸気通路1(詳しくは吸気マニホールド)から供給された吸気を燃焼室17内に導入する吸気バルブ15と、燃焼室17に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁20と、通電により発熱する発熱部を燃焼室17内に備えたグロープラグ21と、燃焼室17内での混合気の燃焼により往復運動するピストン23と、ピストン23の往復運動により回転されるクランクシャフト25と、燃焼室17内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路41へ排出する排気バルブ27と、を有する。また、エンジンEには、クランクシャフト25における上死点などを基準とした回転角としてのクランク角を検出するクランク角センサ100が設けられており、このクランク角センサ100は、検出したクランク角に対応する検出信号S100をPCM60に出力し、PCM60は、この検出信号S100に基づきエンジン回転数を取得する。
【0023】
燃料供給系FSは、燃料を貯蔵する燃料タンク30と、燃料タンク30から燃料噴射弁20に燃料を供給するための燃料供給通路38とを有する。燃料供給通路38には、上流側から順に、低圧燃料ポンプ31と、高圧燃料ポンプ33と、コモンレール35とが設けられている。
【0024】
次に、排気系EXは、排気ガスが通過する排気通路41を有しており、この排気通路41上には、通過する排気ガスによって回転され、この回転によって上記したようにコンプレッサを駆動するターボ過給機5のタービンが設けられている。更に、このタービンの下流側の排気通路41上には、上流側から順に、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒45と、排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel particulate filter)46と、DPF46の下流側の排気通路41中に尿素(典型的には尿素水)を噴射する尿素インジェクタ51と、尿素インジェクタ51から噴射された尿素を加水分解してアンモニアを生成し(CO(NH
2)
2+H
2O→CO
2+2NH
3)、このアンモニアを排気ガス中のNOxと反応(還元)させてNOxを浄化するSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒47と、SCR触媒47から放出されたアンモニアを酸化させて浄化するスリップ触媒48と、が設けられている。なお、尿素インジェクタ51は、DCU70から供給される制御信号S51によって、排気通路41中に尿素を噴射するための制御が行われる。
【0025】
ここで、NOx触媒45及びSCR触媒47についてより具体的に説明する。NOx触媒45は、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンな状態(λ>1)において排気ガス中のNOxを吸蔵し、この吸蔵したNOxを、排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において還元する、NOx吸蔵還元型触媒(NSC:NOx Storage Catalyst)である。NOx触媒45は、このように吸蔵したNOxを還元する際にアンモニアを発生し、発生したアンモニアを放出する。具体的には、NOx還元制御時に、NOx触媒45が吸蔵しているNOx中の「N」と、NOx触媒45に還元剤として供給された未燃燃料などの「HC」中の「H」又は、筒内燃焼により生じる「H
2O」中の「H」とが結合することで、アンモニア(NH
3)が生成される。
【0026】
また、NOx触媒45は、上記のNSCとしての機能だけでなく、排出ガス中の酸素を用いて炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などを酸化して水と二酸化炭素に変化させるディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)45a(酸化触媒)としての機能も有するように構成されている。具体的には、NOx触媒45は、ディーゼル酸化触媒45aの触媒材層の表面をNSCの触媒材によりコーティングすることで作られている。従って、NOx触媒45はディーゼル酸化触媒45aと複合された複合触媒を形成している。NOx触媒45はディーゼル酸化触媒45aと組合せて配置されているので、ディーゼル酸化触媒45aにおいて酸化反応により反応熱が生じ且つ温度上昇が生じる場合に、この反応熱がNOx触媒45に伝達され、且つNOx触媒45に温度上昇が生じるようになっている。
【0027】
他方で、SCR触媒47は、尿素インジェクタ51から噴射された尿素より生成されたアンモニア、及び、NOx触媒45におけるNOxの還元により生成されたアンモニアを吸着し、こうして吸着したアンモニアを排気ガス中のNOxと反応させてNOxを還元浄化する。例えば、SCR触媒47は、アンモニアによってNOxを還元する触媒金属を、アンモニアをトラップするゼオライトに担持させて触媒成分を形成し、この触媒成分をハニカム担体のセル壁に担持させることで作られている。NOx還元用の触媒金属としては、Fe、Ti、Ce、Wなどが用いられる。
なお、上記したDCU70は、SCR触媒47によるNOx浄化性能の確保と、SCR触媒47からのアンモニアの放出(スリップ)の抑制とを両立する観点から、SCR触媒47に適量のアンモニアが吸着されるように、尿素インジェクタ51から尿素を噴射させる制御を行う。この場合、SCR触媒47の温度に応じてアンモニア吸着能力が変化するので(具体的にはSCR触媒47の温度が高くなるとSCR触媒47からアンモニアが放出されやすくなる)、DCU70は、SCR触媒47の温度も考慮に入れて、尿素インジェクタ51から尿素を噴射させる制御を行う。
【0028】
尿素インジェクタ51は、SCR触媒47の上流側且つNOx触媒45の下流側の排気通路41中に配置されている。尿素インジェクタ51は、尿素供給経路53に接続され、この尿素供給経路53は尿素送出ポンプ54を介して尿素タンク55に接続されている。尿素供給経路53は、尿素(尿素水)を送出できる配管により形成されている。尿素供給経路53上には、尿素が通過した場合の圧力の変化を測定する尿素供給経路圧力センサ56が配置されている。尿素供給経路53上には、尿素が尿素供給経路53上で凍結することを防止するための尿素経路ヒータ57が配置されている。尿素送出ポンプ54は、DCU70からの制御指令を受けて、尿素を尿素タンク55から尿素インジェクタ51に向けて送出する。
【0029】
尿素タンク55は、尿素を貯留しておくことができるタンクである。尿素タンク55には、尿素レベルセンサ58と、尿素温度センサ59と、尿素タンクヒータ61とが設けられている。尿素レベルセンサ58は、尿素タンク55中の尿素の水位レベルを検出する。尿素温度センサ59は、尿素タンク55中の尿素の温度を検出する。尿素タンクヒータ61は、尿素タンク55中の尿素を加熱するように構成されている。尿素タンクヒータ61は、尿素タンク55中の尿素の全部又は一部が凍結しているような場合に、尿素を加熱して、凍結状態を解消し液体の状態に戻すことができる。
【0030】
DCU70は、尿素供給経路圧力センサ56と、尿素レベルセンサ58と、尿素温度センサ59と電気的に接続されている。尿素供給経路圧力センサ56と、尿素レベルセンサ58と、尿素温度センサ59とは、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S52〜S54をDCU70に出力する。また、DCU70は、尿素経路ヒータ57と、尿素送出ポンプ54と、尿素タンクヒータ61と電気的に接続されている。尿素経路ヒータ57、尿素送出ポンプ54、尿素タンクヒータ61は、それぞれ、DCU70から供給される制御信号S55〜S57によって、作動状態を制御することができる。
【0031】
DCU70は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。DCU70は、PCM60と双方向に通信可能に接続されており、PCM60の制御指令を受けて制御される。
【0032】
また、
図1に示すように、排気系EXにおいては、ターボ過給機5のタービンの上流側の排気通路41上には排気ガスの圧力を検出する圧力センサ109及び排気ガスの温度を検出する温度センサ110が設けられ、ターボ過給機5のタービンの直下流側の排気通路41上には酸素濃度を検出するO
2センサ111が設けられている。更に、排気系EXには、NOx触媒45の直上流側の排気ガスの温度を検出する温度センサ112と、NOx触媒45とDPF46との間の排気ガスの温度を検出する温度センサ113と、DPF46の直上流側と直下流側との排気ガスの圧力差を検出する差圧センサ114と、DPF46の直下流側の排気ガスの温度を検出する温度センサ115と、DPF46の直下流側の排気ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ116と、SCR触媒47の直上流側の排気ガスの温度を検出する温度センサ117と、SCR触媒47の直下流側の排気ガス中のNOxの濃度を検出するNOxセンサ118と、スリップ触媒48の直上流側の排気ガス中のPMを検出するPMセンサ119と、が設けられている。これらの排気系EXに設けられた各種センサ109〜119は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S109〜S119をPCM60に出力する。
【0033】
更に、本実施形態では、ターボ過給機5は、排気エネルギーが低い低回転域から高回転域まで全域で効率よく高過給を得られる2段過給システムとして構成されている。即ち、ターボ過給機5は、高回転域において多量の空気を過給するための大型ターボチャージャー5aと、低い排気エネルギーでも効率よく過給を行える小型ターボチャージャー5bと、小型ターボチャージャー5bのコンプレッサへの吸気の流れを制御するコンプレッサバイパスバルブ5cと、小型ターボチャージャー5bのタービンへの排気の流れを制御するレギュレートバルブ5dと、大型ターボチャージャー5aのタービンへの排気の流れを制御するウェイストゲートバルブ5eとを備えており、エンジンEの運転状態(エンジン回転数及び負荷)に応じて各バルブを駆動することにより、大型ターボチャージャー5aと小型ターボチャージャー5bによる過給を切り替える。
【0034】
本実施形態によるエンジンシステム200は、EGR装置43を更に有する。このEGR装置43は、ターボ過給機5のタービンの上流側の排気通路41とターボ過給機5のコンプレッサの下流側(詳しくはインタークーラ8の下流側)の吸気通路1とを接続するEGR通路43aと、EGR通路43aを通過する排気ガスを冷却するEGRクーラ43bと、EGR通路43aを通過させる排気ガスの流量を調整する第1EGRバルブ43cと、EGRクーラ43bをバイパスさせて排気ガスを流すためのEGRクーラバイパス通路43dと、EGRクーラバイパス通路43dを通過させる排気ガスの流量を調整する第2EGRバルブ43eと、を有する。
【0035】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置の電気的構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0036】
本発明の実施形態によるPCM60は、上述した各種センサ100〜119の検出信号S100〜S119に加えて、アクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ150、及び車速を検出する車速センサ151のそれぞれが出力した検出信号S150、S151に基づいて、主に、燃料噴射弁20に対する制御を行うべく制御信号S20を出力し、吸気シャッター弁7に対する制御を行うべく制御信号S7を出力する。また、PCM60は、DCU70と双方向に通信を行い、尿素をインジェクタ51から排気通路41中に供給する又は尿素タンク55中において凍結している尿素を尿素タンクヒータ61によって溶かす等を行わせるように、DCU70を制御する制御信号S8を出力する。
【0037】
特に、本実施形態では、PCM60は、排気ガスの空燃比を目標空燃比(具体的には理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりも小さい所定の空燃比)に設定するように燃料噴射弁20からポスト噴射させて、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させるための制御(NOx還元制御)を行う。つまり、PCM60は、ドライバのアクセル操作に応じたエンジントルクを出力させるために気筒内に燃料を噴射するメイン噴射に加えて(基本的にはメイン噴射においては排気ガスの空燃比がリーンになるように燃料噴射量等が設定される)、このメイン噴射の後に、エンジントルクの出力に寄与しないタイミング(具体的には膨張行程)で燃料を噴射するポスト噴射を行って、排気ガスの空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)に設定されるようにして、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させる。以下では、このようなNOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させるための制御を「DeNOx制御」と呼ぶ。なお、「DeNOx」の文言中の「De」は分離や除去を意味する接頭語である。なお、後述するNH
3供給DeNOx制御についても、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させるための制御行うため「DeNOx制御」に含まれる。
【0038】
また、詳細は後述するが、PCM60は、「NOx還元制御手段」として機能する。
【0039】
なお、PCM60は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0040】
<燃料噴射制御>
次に、
図3を参照して、本発明の実施形態による燃料噴射制御について説明する。
図3は、本発明の実施形態による燃料噴射制御を示すフローチャート(燃料噴射制御フロー)である。この燃料噴射制御フローは、車両のイグニッションがオンにされてPCM60に電源が投入された場合に開始され、所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
まず、ステップS101では、PCM60は、車両の運転状態を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、アクセル開度センサ150が検出したアクセル開度、車速センサ151が検出した車速、クランク角センサ100が検出したクランク角、及び車両の変速機に現在設定されているギヤ段を取得する。
【0042】
次いで、ステップS102では、PCM60は、ステップS101で取得されたアクセルペダルの操作等を含む車両の運転状態に基づき、目標加速度を設定する。具体的には、PCM60は、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された加速度特性マップ(予め作成されてメモリなどに記憶されている)の中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択した加速度特性マップを参照して現在のアクセル開度に対応する目標加速度を決定する。
【0043】
次いで、ステップS103では、PCM60は、ステップS102で決定された目標加速度を実現するためのエンジンEの目標トルクを決定する。この場合、PCM60は、現在の車速、ギヤ段、路面勾配、路面μなどに基づき、エンジンEが出力可能なトルクの範囲内で、目標トルクを決定する。
【0044】
次いで、ステップS104では、PCM60は、ステップS103で決定された目標トルクをエンジンEから出力させるべく、当該目標トルク及びエンジン回転数に基づいて、燃料噴射弁20から噴射させるべき燃料噴射量を算出する。この燃料噴射量は、メイン噴射において適用する燃料噴射量(メイン噴射量)である。
【0045】
他方で、上記したステップS102〜S104の処理と並行して、ステップS105において、PCM60は、エンジンEの運転状態に応じた燃料の噴射パターンを設定する。具体的には、PCM60は、上記したDeNOx制御を行う場合には、メイン噴射に加えてポスト噴射を少なくとも行う燃料噴射パターンを設定する。この場合、PCM60は、ポスト噴射において適用する燃料噴射量(ポスト噴射量)や、ポスト噴射を行うタイミング(ポスト噴射タイミングなど)も決定する。これらについては、詳細は後述する。
【0046】
ステップS104及びS105の後、ステップS106に進み、PCM60は、ステップS104で算出されたメイン噴射量及びステップS105で設定された燃料噴射パターンに基づき(ポスト噴射を行う場合にはポスト噴射量やポスト噴射タイミングも含む)、燃料噴射弁20を制御する。つまり、PCM60は、所望の燃料噴射パターンにおいて所望の量の燃料が噴射されるように燃料噴射弁20を制御する。
【0047】
<DeNOx制御>
以下では、本発明の実施形態によるDeNOx制御について具体的に説明する。
【0048】
最初に、本発明の実施形態によるDeNOx制御の基本概念について説明する。本実施形態では、PCM60は、NOx触媒45のNOx吸蔵量が所定量以上である場合、典型的にはNOx吸蔵量が限界付近にある場合に、NOx触媒45に吸蔵されたNOxをほぼ0にまで低下させるべく、排気ガスの空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比以下の目標空燃比に継続的に設定するように燃料噴射弁20からポスト噴射させるDeNOx制御(以下では適宜「アクティブDeNOx制御」と呼ぶ。)を実行する。こうすることで、NOx触媒45に多量に吸蔵されたNOxを強制的に還元して、NOx触媒45のNOx浄化性能を確実に確保するようにする。
【0049】
また、本実施形態では、PCM60は、NOx触媒45のNOx吸蔵量が所定量未満であっても、車両の加速により排気ガスの空燃比がリッチ側に変化するときに、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させるべく、排気ガスの空燃比を目標空燃比に一時的に設定するように燃料噴射弁20からポスト噴射させるDeNOx制御(以下では適宜「パッシブDeNOx制御」と呼ぶ。)を実行する。このパッシブDeNOx制御は、加速時のようなメイン噴射量が増加して排気ガスの空燃比が低下するような状況に乗じて、空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比以下の目標空燃比に設定するようにポスト噴射を行うので、排気ガスの空燃比が低下しない状況(つまり非加速時)においてDeNOx制御を行う場合よりも、空燃比を目標空燃比に設定するためのポスト噴射量が少なくなる。また、パッシブDeNOx制御は、車両の加速に乗じて行われるので、比較的高頻度で行われることとなる。
【0050】
また、本実施形態では、PCM60は、NOxをSCR触媒47で浄化すべき状況において、尿素インジェクタ51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合に、NOx触媒45からNH
3をSCR触媒47に供給させるために行うDeNOx制御(以下では適宜「NH
3供給DeNOx制御」と呼ぶ。)を実行する。このNH
3供給DeNOx制御は、NOxをSCR触媒47で浄化すべき状況において、尿素インジェクタ51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合に、SCR触媒47に吸着されたNH
3が不足することによりSCR触媒47において排気ガス中のNOxを浄化することができないこととなることを防ぐため、排気ガスの空燃比をリッチ化させたNOx還元制御を実行してNOx触媒45からNH
3をSCR触媒47に供給させ、SCR触媒47におけるNH
3の吸着量を増大させることによりSCR触媒47における排気ガス中のNOxの浄化率を上昇させることができるものである。
【0051】
本実施形態では、上述のパッシブDeNOx制御を適用することで、DeNOxによる燃費悪化などを抑制しつつ、DeNOxを高頻度で行うようにする。パッシブDeNOx制御は比較的短い期間しか行われないが、高頻度で行われるので、NOx触媒45のNOx吸蔵量を効率的に低下させることができる。その結果、NOx触媒45のNOx吸蔵量が所定量以上になりにくくなるので、パッシブDeNOx制御よりも多量のポスト噴射量を要するアクティブDeNOx制御の実行頻度を低下させることができ、DeNOxによる燃費悪化を効果的に改善することが可能となる。
【0052】
更に、本実施形態では、上記のアクティブDeNOx制御を実行する場合、ポスト噴射させた燃料をエンジンEの筒内において燃焼させることで、排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定するようにする。この場合、PCM60は、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼されるタイミングにおいてポスト噴射を行う。具体的には、PCM60は、エンジンEの膨張行程前半における所定のタイミングを、アクティブDeNOx制御でのポスト噴射タイミングとして設定する。このようなポスト噴射タイミングをアクティブDeNOx制御において適用することで、ポスト噴射された燃料がそのまま未燃燃料(つまりHC)として排出されることや、ポスト噴射された燃料によるオイル希釈を抑制するようにしている。
【0053】
他方で、本実施形態では、PCM60は、上記のパッシブDeNOx制御を実行する場合には、ポスト噴射させた燃料をエンジンEの筒内において燃焼させずに未燃燃料として排気通路41に排出させることで、排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定するようにする。この場合、PCM60は、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼されずに未燃燃料として排気通路41に排出されるタイミングにおいてポスト噴射を行う。具体的には、PCM60は、エンジンEの膨張行程後半における所定のタイミングを、パッシブDeNOx制御でのポスト噴射タイミングとして設定する。このようなポスト噴射タイミングをパッシブDeNOx制御において適用することで、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼してスモーク(煤)が発生することを抑制するようにしている。
【0054】
更に、本実施形態では、上記のNH
3供給DeNOx制御を実行する場合、ポスト噴射させた燃料をエンジンEの筒内において燃焼させることで、排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定するようにする。この場合、PCM60は、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼されるタイミングにおいてポスト噴射を行う。具体的には、PCM60は、エンジンEの膨張行程前半における所定のタイミングを、NH
3供給DeNOx制御でのポスト噴射タイミングとして設定する。このようなポスト噴射タイミングをアクティブDeNOx制御において適用することで、ポスト噴射された燃料がそのまま未燃燃料(つまりHC)として排出されることや、ポスト噴射された燃料によるオイル希釈を抑制するようにしている。
【0055】
ここで、
図4を参照して、本発明の実施形態においてパッシブDeNOx制御及びアクティブDeNOx制御のそれぞれを実行するエンジンEの運転領域について説明する。
図4は、横軸にエンジン回転数を示し、縦軸にエンジン負荷を示している。また、
図4において、曲線L1は、エンジンEの最大トルク線を示している。
【0056】
図4に示すように、本実施形態では、PCM60は、エンジン負荷が第1所定負荷Lo1以上で第2所定負荷Lo2(>第1所定負荷Lo1)未満である中負荷域にあり、且つ、エンジン回転数が第1所定回転数N1以上で第2所定回転数N2(>第1所定回転数N1)未満である中回転域にある場合に、つまりエンジン負荷及びエンジン回転数が符号R12に示す運転領域(以下では「アクティブDeNOx実行領域R12」と呼ぶ。)に含まれる場合に、アクティブDeNOx制御を実行する。このようなアクティブDeNOx実行領域R12を採用する理由は以下の通りである。
【0057】
上述したように、アクティブDeNOx制御を実行する場合、ポスト噴射された燃料がそのまま排出されることによるHCの発生やポスト噴射された燃料によるオイル希釈などを抑制する観点から、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼されるタイミングにおいてポスト噴射を行う。この場合、本実施形態では、ポスト噴射された燃料を燃焼させたときに、スモークの発生を抑制すると共に、HCの発生(つまり不完全燃焼による未燃燃料の排出)を抑制するようにする。具体的には、ポスト噴射された燃料が燃焼するまでの時間をできるだけかせぐようにし、つまり空気と燃料が適切に混合された状態で着火が生じるようにして、スモーク及びHCの発生を抑制している。このために、アクティブDeNOx制御時には適量のEGRガスを導入することで、ポスト噴射された燃料の着火を効果的に遅延させるようにしている。
【0058】
なお、アクティブDeNOx制御時にHCの発生を抑制する理由は、上記のようにEGRガスを導入する場合に、HCもEGRガスとして吸気系INに還流されて、このHCがバインダとなって煤と結合してガスの通路が閉塞してしまうのを防止するためである。加えて、NOx触媒45の温度が低く、HCの浄化性能(NOx触媒45中のDOCによるHCの浄化性能)が確保されないような領域においてアクティブDeNOx制御を実行したときに、HCが浄化されずに排出されてしまうのを防止するためである。因みに、アクティブDeNOx実行領域R12には、そのようなHCの浄化性能が確保されないようなNOx触媒45の温度が比較的低い領域も含めている。
また、アクティブDeNOx制御時にスモークの発生を抑制する理由は、スモークに対応するPMはDPF46に捕集されるが、このDPF46に捕集されたPMを燃焼除去するためのDPF再生(DeNOx制御と同様にポスト噴射させる制御)が高頻度で行われて、燃費などが悪化してしまうのを抑制するためである。
【0059】
ところで、エンジン負荷が高くなると、目標空燃比を実現するためにエンジンEに導入する空気を絞ることで、ポスト噴射された燃料を適切に燃焼させるのに必要な酸素が足りなくなってスモークやHCが発生する傾向にある。特に、エンジン負荷が高くなると、筒内温度が高くなり、ポスト噴射された燃料が着火するまでの時間を適切に確保することができずに途中で着火が生じ、つまり空気と燃料が適切に混合されていない状態で燃焼が生じ、スモークやHCが発生してしまう。他方で、エンジン負荷がかなり低い領域では、NOx触媒45の温度が低く、NOx触媒45のNOx還元機能が十分に発揮されなくなる。加えて、この領域では、ポスト噴射された燃料が適切に燃焼しなくなる、つまり失火が発生してしまう。
なお、上記ではエンジン負荷に関する現象を述べたが、エンジン回転数についても同様の現象が生じる。
【0060】
以上のことから、本実施形態では、中負荷域且つ中回転域に対応するエンジンEの運転領域を、アクティブDeNOx制御を実行するアクティブDeNOx実行領域R12として採用している。換言すると、本実施形態では、アクティブDeNOx実行領域R12でのみ、アクティブDeNOx制御を実行することとし、アクティブDeNOx実行領域R12以外の運転領域では、アクティブDeNOx制御の実行を禁止する。このようにアクティブDeNOx制御の実行を禁止することとしたエンジンEの運転領域では、特にアクティブDeNOx実行領域R12よりも高負荷側又は高回転側の領域では(符号R13を付した領域)では、SCR触媒47のNOx浄化性能が十分に確保されているので、SCR触媒47がNOxを浄化することとなり、DeNOx制御を実行しなくても車両からのNOxの排出を防止することができる。
【0061】
また、本実施形態では、SCR触媒47でNOxを浄化させる領域R13よりも更に高負荷側の領域(符号R11を付した領域であり、以下では「パッシブDeNOx実行領域R11」と呼ぶ。)では、排気ガス量が大きくなり、SCR触媒47でNOxを浄化しきれなくなるので、パッシブDeNOx制御を実行する。このパッシブDeNOx制御では、上記したように、ポスト噴射された燃料が筒内において燃焼されずに未燃燃料として排気通路41に排出されるタイミングにおいてポスト噴射を行う。パッシブDeNOx実行領域R11では、NOx触媒45の温度が十分に高く、HCの浄化性能(NOx触媒45中のDOCによるHCの浄化性能)が確保されているので、このように排出された未燃燃料をNOx触媒45で適切に浄化することができる。
なお、パッシブDeNOx制御において、アクティブDeNOx制御のようにポスト噴射された燃料を筒内において燃焼させると、スモークが発生してしまう。その理由は、上述したように、エンジン負荷が高くなるとアクティブDeNOx制御の実行を禁止することとした理由と同様である。そのため、パッシブDeNOx制御では、ポスト噴射された燃料を筒内において燃焼させずに未燃燃料として排気通路41に排出している。
【0062】
ここで、
図4中の矢印A11に示すようにエンジンの運転状態が変化したときのアクティブDeNOx制御の具体例について説明する。まず、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に入ると(符号A12参照)、PCM60は、アクティブDeNOx制御を実行する。そして、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12を外れると(符号A13参照)、PCM60は、アクティブDeNOx制御を一旦中止する。このときには、SCR触媒47がNOxを浄化することとなる。そして、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に再度入ると(符号A14参照)、PCM60は、アクティブDeNOx制御を再開する。こうすることで、NOx触媒45に吸蔵されたNOxがほぼ0に低下するまで、アクティブDeNOx制御を終了させないようにする。
【0063】
次に、本発明の実施形態においてパッシブDeNOx制御及びアクティブDeNOx制御を行う温度範囲について説明する。基本的には、NOx触媒45は、比較的低温域においてNOx浄化性能を発揮し、SCR触媒47は、比較的高温域、具体的にはNOx触媒45のNOx浄化性能が発揮される温度域よりも高い温度域においてNOx浄化性能を発揮する。本実施形態では、SCR触媒47により所定以上のNOx浄化率が得られる温度範囲の下側の境界値付近の温度を判定温度(以下では「SCR判定温度」と呼ぶ。)として用い、PCM60は、SCR触媒47の温度(以下では「SCR温度」と呼ぶ。)がSCR判定温度未満である場合にのみ、パッシブDeNOx制御又はアクティブDeNOx制御を実行し、SCR温度がSCR判定温度以上である場合には、NH
3供給DeNOx制御を実行する。
【0064】
次に、
図5を参照して、本発明の実施形態においてDeNOx制御時に適用するポスト噴射量(以下では「DeNOx用ポスト噴射量」と呼ぶ。)の算出方法について説明する。
図5は、本発明の実施形態によるDeNOx用ポスト噴射量算出処理を示すフローチャート(DeNOx用ポスト噴射量算出フロー)である。このDeNOx用ポスト噴射量算出フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローと並行して実行される。つまり、燃料噴射制御が行われている最中に、DeNOx用ポスト噴射量が随時算出される。DeNOx用ポスト噴射量には、NH
3供給DeNOxのためのポスト噴射量が含まれる。
【0065】
まず、ステップS111では、PCM60は、エンジンEの運転状態を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、エアフローセンサ101によって検出された吸入空気量(新気量)、O
2センサ111によって検出された排気ガスの酸素濃度、
図3のステップS104で算出されたメイン噴射量を取得する。また、PCM60は、所定のモデルなどにより求められた、EGR装置43によって吸気系INに還流される排気ガス量(EGRガス量)も取得する。加えて、SCR触媒47に吸着されたアンモニアの量であるアンモニア吸着量を取得する。この場合、PCM60は、推定したアンモニア吸着量を取得する。アンモニア吸着量の推定方法については、詳細は後述する。
【0066】
次いで、ステップS112では、PCM60は、ステップS111で取得したSCR触媒47のアンモニア吸着量に基づいて、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元するために適用する目標空燃比を設定する。具体的には、PCM60は、アクティブDeNOx制御を実行する場合に適用する目標空燃比と、パッシブDeNOx制御を実行する場合に適用する目標空燃比と、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合に適用する目標空燃比のそれぞれを、SCR触媒47のアンモニア吸着量に基づき設定する。この目標空燃比の設定方法について、
図6を参照して具体的に説明する。
【0067】
図6は、本発明の実施形態による目標空燃比の設定方法についての説明図である。
図6は、横軸にSCR触媒47のアンモニア吸着量を示し、縦軸に目標空燃比を示している。
【0068】
図6において、「λ1」は理論空燃比を示し、この理論空燃比λ1よりもリッチ側の空燃比の領域R21は、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元可能な空燃比の範囲を示し、理論空燃比λ1よりもリーン側の空燃比の領域R22は、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元不可能な空燃比の範囲を示している。また、限度空燃比λ2よりもリッチ側の空燃比の領域R23は、未燃燃料がEGR装置43に供給されてしまうことによるEGR装置43の信頼性の低下の問題が生じることを抑制するため、目標空燃比、例えばグラフG13による第二目標空燃比が限度空燃比λ2を超えて領域R23内に設定されないようになっている。また、グラフG11は、パッシブDeNOx制御を実行する場合にSCR触媒47のアンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比を示しており、グラフG12は、アクティブDeNOx制御を実行する場合にSCR触媒47のアンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比(第一目標空燃比)を示している。グラフG13は、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合にSCR触媒47のアンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比(第二目標空燃比)を示している。これらのグラフG11、G12、G13は、アンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比を規定したマップに相当する。
【0069】
基本的には、目標空燃比を領域R21内においてリッチ側に設定すると、NOx触媒45に供給されるHC、H
2Oの量、すなわち「H」成分の総量が増大され、NOx触媒45からのNH
3の発生量が増大する。別の言い方によれば、目標空燃比を領域R21内においてリッチ側に設定するとき、ポスト噴射時期等の設定により未燃燃料を排気ガス中に排出する場合にはHC及びCO等が排気ガス中に増大することとなり、又はポスト噴射時期等の設定により筒内燃焼を実現する場合には、H
2O及びCO
2等が排気ガス中に増大することとなって、排気ガス中の「H」成分の総量が増大され、NOx触媒45からのNH
3の発生量が増大する。
これを考慮して、本実施形態では、グラフG13に示すように、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合における目標空燃比がアクティブDeNOx制御を実行する場合の目標空燃比よりもリッチ側に設定されている。NH
3供給DeNOx制御においては、NOx触媒45に供給される「H」成分の総量が増大され、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくなり、NOx触媒45から発生するNH
3の発生量が増大されることができる。
【0070】
グラフG13において、SCR触媒47のアンモニア吸着量が比較的少ない場合には、NH
3供給DeNOx制御の目標空燃比は、排気ガス中の「H」成分の総量が増大され且つNOx触媒45からのNH
3発生量が増大するように、リッチ側においても限度空燃比λ2近傍の値に設定されている。これに対し、グラフG13において、SCR触媒47のアンモニア吸着量が比較的多い場合には、NH
3供給DeNOx制御の目標空燃比は、SCR触媒47のアンモニア吸着量の目標吸着量までの不足分に応じて、リッチ側の領域R21のうち比較的理論空燃比に近い値に設定されている。このように、NH
3供給DeNOx制御の目標空燃比は、SCR触媒47のアンモニア吸着量が増大されるにつれて、理論空燃比に近づけられる(リッチ側の領域R21内においてリーン側の最小値に近づく)ように設定されることにより、SCR触媒47のアンモニア吸着量の目標吸着量までの不足分に対応したNH
3の発生量をNOx触媒45からNH
3が発生させることができる。また、NH
3供給DeNOx制御によりNOx触媒45から発生されたNH
3がSCR触媒47で吸着しきれずに放出されてしまうことも抑制することができる。
【0071】
これに対して、グラフG12に示すように、アクティブDeNOx制御は、NOx触媒45に吸蔵されたNOxをほぼ0にまで低下させるべく、排気ガスの空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比以下の目標空燃比に継続的に設定するように燃料噴射弁20からポスト噴射させるために、アクティブDeNOx制御の目標空燃比を設定している。従って、アクティブDeNOx制御が実行される条件(NOx触媒45温度等の条件)下においては、NOx触媒45においてNOx浄化を行い、SCR触媒47においてNH
3を用いるNOx浄化を行わないことから、アクティブDeNOx制御においては、NOx触媒45からNH
3を意図的に発生させるという観点によらずに目標空燃比が設定されている。また、アクティブDeNOx制御においては、実行条件等からNOx触媒45からNH
3が発生したとしても比較的少量であった。
【0072】
また、グラフG11に示すように、パッシブDeNOx制御は、車両の加速により排気ガスの空燃比がリッチ側に変化するときに、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元させるべく、排気ガスの空燃比を目標空燃比に一時的に設定するように燃料噴射弁20からポスト噴射させるために、パッシブDeNOx制御の目標空燃比を設定している。従って、パッシブDeNOx制御が実行される条件(NOx触媒温度等の条件)下においては、NOx触媒45においてNOx浄化を行い、SCR触媒47においてNH
3を用いるNOx浄化を行わないことから、パッシブDeNOx制御においては、NOx触媒45からNH
3を意図的に発生させるという観点によらずに目標空燃比が設定されている。また、パッシブDeNOx制御においては、実行条件等からNOx触媒45からNH
3が発生したとしても比較的少量であった。
【0073】
ここで、本実施形態によるSCR触媒47のアンモニア吸着量の推定方法について簡単に説明する。このアンモニア吸着量の推定方法は、PCM60によって実行される。PCM60は、SCR触媒47に吸着されたNH
3の吸着量を推定又は検出して取得するNH
3吸着量取得手段としても機能する。
まず、PCM60は、排気ガス量や排気ガス温度などの排気ガス状態、及びSCR温度などのSCR触媒47の状態に基づき、尿素インジェクタ51からの尿素噴射によりSCR触媒47に供給された単位時間当たりのアンモニア供給量を求める。また、PCM60は、エンジンEの運転状態、及びNOx触媒温度やNOx吸蔵量などのNOx触媒45の状態に基づき、DeNOx制御時にNOx触媒45から発生した単位時間当たりのアンモニア発生量を求める。また、PCM60は、排気ガス量や排気ガス温度や排気ガス中のNOx濃度などの排気ガス状態、及びSCR温度などのSCR触媒47の状態に基づき、SCR触媒47においてNOxの還元浄化により消費された単位時間当たりのアンモニア消費量を求める。
【0074】
この後、PCM60は、これらのアンモニア供給量、アンモニア発生量及びアンモニア消費量から、SCR触媒47における単位時間当たりの吸着アンモニア変化量(アンモニア吸着量の変化量)を求める。具体的には、PCM60は、「アンモニア供給量+アンモニア発生量−アンモニア消費量」より、単位時間当たりの吸着アンモニア変化量を求める。そして、PCM60は、求められた吸着アンモニア変化量を、現在のアンモニア吸着量、つまり前回推定されたアンモニア吸着量に適用することで、今回のアンモニア吸着量を求める。具体的には、PCM60は、吸着アンモニア変化量が正値である場合には、当該吸着アンモニア変化量を前回推定されたアンモニア吸着量に加算して今回のアンモニア吸着量を求め(この場合アンモニア吸着量は増加する)、吸着アンモニア変化量が負値である場合には、当該吸着アンモニア変化量を前回推定されたアンモニア吸着量から減算して今回のアンモニア吸着量を求める(この場合アンモニア吸着量は減少する)。PCM60は、このようにして推定したアンモニア吸着量を取得する。
なお、上記では、SCR触媒47のアンモニア吸着量を推定する例を示したが、他の例では、PCM60は、SCR触媒47のアンモニア吸着量を所定のセンサを用いて検出して取得してもよい。
【0075】
図5に戻って、ステップS113以降の処理について説明する。ステップS113では、PCM60は、ステップS111で取得された新気量及びEGRガス量に基づき、エンジンEに導入される空気量(つまり充填量)を算出する。そして、ステップS114では、PCM60は、ステップS113で算出された充填量から、エンジンEに導入される空気の酸素濃度を算出する。
【0076】
次いで、ステップS115では、PCM60は、ステップS112で設定した目標空燃比を実現するのに必要なポスト噴射量(DeNOx用ポスト噴射量)を算出する。つまり、PCM60は、排気ガスの空燃比を目標空燃比にするためにメイン噴射量に加えてどれだけのポスト噴射量を適用すればよいかを決定する。この場合、PCM60は、ステップS112で設定したアクティブDeNOx制御を行う場合の目標空燃比を実現するためのポスト噴射量と、ステップS112で設定したパッシブDeNOx制御を行う場合の目標空燃比を実現するためのポスト噴射量と、ステップS112で設定したNH
3供給DeNOx制御を行う場合の目標空燃比を実現するためのポスト噴射量とをそれぞれ算出する。
【0077】
具体的には、PCM60は、ステップS111で取得された酸素濃度(O
2センサ111によって検出された酸素濃度)と、ステップS114で算出された酸素濃度との差を考慮して、DeNOx用ポスト噴射量を算出する。より詳しくは、PCM60は、メイン噴射した燃料を燃焼させたときに発生する排気ガスの空燃比から、検出された酸素濃度と算出された酸素濃度との差に応じてフィードバック処理を適宜行って、排気ガスの空燃比を目標空燃比にするためのDeNOx用ポスト噴射量を算出する。このようにDeNOx用ポスト噴射量を算出することで、DeNOx制御におけるポスト噴射によって、排気ガスの空燃比を精度良く目標空燃比に設定して、NOx触媒45に吸蔵されたNOxを確実に還元させるようにしている。
【0078】
以下では、上記した本発明の実施形態によるアクティブDeNOx制御、パッシブDeNOx制御及びNH
3供給DeNOx制御について具体的に説明する。
まず、
図7を参照して、本発明の実施形態によるアクティブDeNOx制御の実行要否を判定するために用いるアクティブDeNOx制御実行フラグの設定処理について説明する。
図7は、アクティブDeNOx制御実行フラグの設定処理を示すフローチャート(アクティブDeNOx制御実行フラグ設定フロー)である。このアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローなどと並行して実行される。
【0079】
最初に、ステップS201では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、NOx触媒温度と、SCR温度と、NOx触媒45のNOx吸蔵量と、を取得する。この場合、NOx触媒温度は、例えば、NOx触媒45の直上流側に設けられた温度センサ112によって検出された温度に基づいて推定される(NOx触媒45とDPF46との間に設けられた温度センサ113によって検出された温度も用いてもよい)。また、SCR温度は、例えば、SCR触媒47の直上流側に設けられた温度センサ117によって検出された温度に基づいて推定される。また、NOx吸蔵量は、例えば、エンジンEの運転状態や排気ガスの流量や排気ガスの温度などに基づいて、排気ガス中のNOx量を推定し、このNOx量を積算していくことで求められる。
【0080】
次いで、ステップS202では、PCM60は、ステップS201で取得されたSCR温度がSCR判定温度未満であるか否かを判定する。この判定の結果、SCR温度がSCR判定温度未満である場合(ステップS202:Yes)、処理はステップS203に進む。これに対して、SCR温度がSCR判定温度以上である場合(ステップS202:No)、処理はステップS209に進む。この場合には、排気ガス中のNOxをSCR触媒47によって適切に浄化させることができるので、PCM60は、アクティブDeNOx制御の実行を禁止すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS209)。そして、処理は終了する。
【0081】
次いで、ステップS203では、PCM60は、ステップS201で取得されたNOx触媒温度が所定温度以上であるか否かを判定する。NOx触媒温度が低い場合には、排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定しても、NOx触媒45は吸蔵しているNOxをほとんど還元しない。したがってステップS203では、NOx触媒45が吸蔵しているNOxを還元可能な状態であるか否かを判定している。そのために、ステップS203の判定で用いる所定温度は、NOx触媒45が吸蔵しているNOxを還元可能なNOx触媒温度に基づき設定される。ステップS203の判定の結果、NOx触媒温度が所定温度以上である場合(ステップS203:Yes)、処理はステップS204に進む。これに対して、NOx触媒温度が所定温度未満である場合(ステップS203:No)、処理はステップS209に進む。この場合には、PCM60は、アクティブDeNOx制御の実行を禁止すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS209)。
【0082】
次いで、ステップS204では、PCM60は、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していないか否かを判定する。このステップS204の判定は、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していない場合には、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を実行したことがある場合よりも、アクティブDeNOx制御の実行条件を緩和して、アクティブDeNOx制御を優先的に実行する目的から行っている。具体的には、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を実行したことがある場合には、比較的条件が厳しいステップS207の実行条件及びステップS208の実行条件を用いるのに対して、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していない場合には、比較的条件の緩いステップS205の実行条件のみを用いる(これらの詳細は後述する)。このようなステップS204の判定の結果、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を実行していない場合(ステップS204:Yes)、処理はステップS205に進む。
【0083】
次いで、ステップS205では、PCM60は、ステップS201で取得されたNOx吸蔵量が第1吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。例えば、第1吸蔵量判定値は、NOx吸蔵量の限界値よりもある程度低い値に設定される。この判定の結果、NOx吸蔵量が第1吸蔵量判定値以上である場合(ステップS205:Yes)、処理はステップS206に進む。この場合には、PCM60は、アクティブDeNOx制御の実行を許可すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「1」に設定する(ステップS206)。こうすることで、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を実行してNOx触媒45にある程度吸蔵されたNOxを強制的に還元することで、NOx触媒45のNOx浄化性能を確実に確保するようにする。これに対して、NOx吸蔵量が第1吸蔵量判定値未満である場合(ステップS205:No)、処理はステップS209に進む。この場合には、PCM60は、無駄なアクティブDeNOx制御の実行を禁止すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS209)。そして、処理は終了する。
【0084】
他方で、ステップS204の判定の結果、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を実行したことがある場合(ステップS204:No)、処理はステップS207に進む。ステップS207では、PCM60は、ステップS201で取得されたNOx吸蔵量が第2吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。第2吸蔵量判定値は、上記した第1吸蔵量判定値よりも少なくとも大きな値が適用され、例えば、NOx吸蔵量の限界値付近の値(1つの例では限界値の2/3程度の値)に設定される。この判定の結果、NOx吸蔵量が第2吸蔵量判定値以上である場合(ステップS207:Yes)、処理はステップS208に進む。これに対して、NOx吸蔵量が第2吸蔵量判定値未満である場合(ステップS207:No)、処理はステップS209に進む。この場合には、PCM60は、無駄なアクティブDeNOx制御の実行を禁止すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS209)。そして、処理は終了する。
【0085】
次いで、ステップS208では、PCM60は、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が所定の判定距離以上であるか否かを判定する。ステップS208の判定の結果、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が判定距離以上である場合(ステップS208:Yes)、処理はステップS206に進む。この場合には、PCM60は、アクティブDeNOx制御の実行を許可すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「1」に設定する(ステップS206)。こうすることで、アクティブDeNOx制御を実行してNOx触媒45に多量に吸蔵されたNOxを強制的に還元することで、NOx触媒45のNOx浄化性能を確実に確保するようにする。これに対して、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が判定距離未満である場合(ステップS208:No)、処理はステップS209に進む。この場合には、PCM60は、アクティブDeNOx制御の実行を禁止すべく、アクティブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS209)。そして、処理は終了する。
【0086】
アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が短い状況においてアクティブDeNOx制御を実行すると(つまりアクティブDeNOx制御の実行インターバルが短い場合)、ポスト噴射に起因するオイル希釈が発生する可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が判定距離未満である場合には(ステップS208:No)、アクティブDeNOx制御の実行を禁止して、アクティブDeNOx制御におけるポスト噴射に起因するオイル希釈を抑制するようにしている。他方で、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が長い場合(つまりアクティブDeNOx制御の実行インターバルが長い場合)には、これからアクティブDeNOx制御を実行しても、ポスト噴射に起因するオイル希釈が発生する可能性は低い。そのため、本実施形態では、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が判定距離以上である場合には(ステップS208:Yes)、アクティブDeNOx制御の実行を禁止しない。
また、本実施形態では、筒内温度が高くなると、ポスト噴射された燃料の気化が進んでオイル希釈が生じにくくなることを考慮して、筒内温度が高くなるほど、ステップS208で用いる判定距離を小さな値に設定して、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離に応じた当該制御の制限を緩和する。
【0087】
次に、
図8を参照して、本発明の実施形態によるパッシブDeNOx制御の実行要否を判定するために用いるパッシブDeNOx制御実行フラグの設定処理について説明する。
図8は、本発明の実施形態によるパッシブDeNOx制御実行フラグの設定処理を示すフローチャート(パッシブDeNOx制御実行フラグ設定フロー)である。このパッシブDeNOx制御実行フラグ設定フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローや
図7に示したアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローなどと並行して実行される。
【0088】
まず、ステップS301では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、NOx触媒温度と、SCR温度と、
図3に示した燃料噴射制御フローで決定された目標トルクと、
図5に示したDeNOx用ポスト噴射量算出フローで算出されたDeNOx用ポスト噴射量(具体的にはパッシブDeNOx制御時に適用するものとして算出されたDeNOx用ポスト噴射量)と、NOx触媒45のNOx吸蔵量と、
図7に示したアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローで設定されたアクティブDeNOx制御実行フラグの値と、を取得する。なお、NOx触媒温度、SCR温度及びNOx吸蔵量の求め方は、上述した通りである。
加えて、ステップS301では、PCM60は、所定期間内におけるパッシブDeNOx制御の実行頻度も取得する。具体的には、PCM60は、所定期間(例えば数秒間又は数分間)の間にパッシブDeNOx制御を実行した回数を、パッシブDeNOx制御の実行頻度として取得する。
【0089】
次いで、ステップS302では、PCM60は、ステップS301で取得されたSCR温度がSCR判定温度未満であるか否かを判定する。この判定の結果、SCR温度がSCR判定温度未満である場合には(ステップS302:Yes)、処理はステップS303に進む。これに対して、SCR温度がSCR判定温度以上である場合には(ステップS302:No)、処理はステップS308に進む。この場合には、排気ガス中のNOxをSCR触媒47によって適切に浄化させることができるので、PCM60は、パッシブDeNOx制御の実行を禁止すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS308)。そして、処理は終了する。
【0090】
次いで、ステップS303では、PCM60は、ステップS301で取得されたパッシブDeNOx制御の実行頻度が所定の頻度判定値未満であるか否かを判定する。ステップS303の判定の結果、パッシブDeNOx制御の実行頻度が頻度判定値未満である場合(ステップS303:Yes)、処理はステップS304に進む。これに対して、パッシブDeNOx制御の実行頻度が頻度判定値以上である場合(ステップS303:No)、処理はステップS308に進む。この場合には、PCM60は、パッシブDeNOx制御の実行を禁止すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS308)。
【0091】
パッシブDeNOx制御がこれまでに比較的高頻度で行われた場合には、これからパッシブDeNOx制御を実行すると、ポスト噴射に起因するオイル希釈が発生する可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、パッシブDeNOx制御の実行頻度が頻度判定値以上である場合には(ステップS303:No)、パッシブDeNOx制御の実行を禁止して、パッシブDeNOx制御におけるポスト噴射に起因するオイル希釈を抑制するようにしている。他方で、パッシブDeNOx制御がこれまでにほとんど行われていない場合(つまりパッシブDeNOx制御の実行頻度が比較的低い場合)には、これからパッシブDeNOx制御を実行しても、ポスト噴射に起因するオイル希釈が発生する可能性は低い。そのため、本実施形態では、パッシブDeNOx制御の実行頻度が頻度判定値未満である場合には(ステップS303:Yes)、パッシブDeNOx制御の実行を禁止しない。
本実施形態では、筒内温度が高くなるほど、ステップS303で用いる頻度判定値を大きな値に設定する。頻度判定値が大きな値である場合には、頻度判定値が小さな値である場合よりも、パッシブDeNOx制御の実行頻度が頻度判定値未満(ステップS303:Yes)になる可能性が高くなる。したがって、本実施形態では、筒内温度が高くなるほど、パッシブDeNOx制御の実行頻度に応じた当該制御の制限を緩和するようにしている。これは、筒内温度が高くなると、ポスト噴射された燃料の気化が進んでオイル希釈が生じにくくなるからである。
【0092】
次いで、ステップS304では、ステップS301で取得されたNOx吸蔵量が第3吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。例えば、第3吸蔵量判定値は、NOx吸蔵量の限界値の1/3程度の値に設定される。この判定の結果、NOx吸蔵量が第3吸蔵量判定値以上である場合(ステップS304:Yes)、処理はステップS305に進む。これに対して、NOx吸蔵量が第3吸蔵量判定値未満である場合(ステップS304:No)、処理はステップS308に進む。この場合には、PCM60は、無駄なパッシブDeNOx制御の実行を禁止して、パッシブDeNOx制御の実行に起因する燃費悪化を抑制すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS308)。そして、処理は終了する。
【0093】
次いで、ステップS305では、PCM60は、ステップS301で取得されたアクティブDeNOx制御実行フラグが「0」であるか否かを判定する。つまり、PCM60は、アクティブDeNOx制御を実行すべき状況でないか否かを判定する。この判定の結果、アクティブDeNOx制御実行フラグが「0」である場合(ステップS305:Yes)、処理はステップS306に進む。これに対して、アクティブDeNOx制御実行フラグが「0」でない場合、つまり「1」である場合(ステップS305:No)、処理はステップS308に進む。この場合には、PCM60は、パッシブDeNOx制御の実行を禁止して、アクティブDeNOx制御を優先的に実行すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS308)。つまり、たとえパッシブDeNOx制御の実行条件が成立したとしても、アクティブDeNOx制御の実行条件が成立した場合には、アクティブDeNOx制御を優先的に実行するようにする。そして、処理は終了する。
【0094】
次いで、ステップS306では、PCM60は、ステップS301で取得されたDeNOx用ポスト噴射量が第1ポスト噴射量判定値未満であるか否かを判定する。このステップS306では、上記したようにポスト噴射によって目標空燃比を実現するのに必要な燃料量として算出されたDeNOx用ポスト噴射量に基づいて、排気ガスの空燃比がリッチ側の所定値以下まで低下するような状況、つまり所定の加速状態であるか否かを判定している。こうすることで、燃費悪化をできるだけ抑えてDeNOx制御を実行することができる状況であるか否かを判定すると共に、ポスト噴射によってオイル希釈が生じる可能性がないか否かを判定している。このような観点に基づき、ステップS306の判定に適用される第1ポスト噴射量判定値が設定される。
【0095】
ステップS306の判定の結果、DeNOx用ポスト噴射量が第1ポスト噴射量判定値未満である場合(ステップS306:Yes)、処理はステップS307に進む。この場合には、上記したステップS302〜S306の条件が全て成立するので、PCM60は、パッシブDeNOx制御の実行を許可すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「1」に設定する(ステップS307)。そして、処理は終了する。これに対して、DeNOx用ポスト噴射量が第1ポスト噴射量判定値以上である場合(ステップS306:No)、処理はステップS308に進む。この場合には、PCM60は、パッシブDeNOx制御の実行を禁止して、パッシブDeNOx制御の実行に起因する燃費悪化やオイル希釈を抑制すべく、パッシブDeNOx制御実行フラグを「0」に設定する(ステップS308)。そして、処理は終了する。
【0096】
図9を参照して、本発明の実施形態によるNH
3供給DeNOx制御の実行要否を判定するために用いるNH
3供給DeNOx制御実行フラグの設定処理について説明する。
図9は、NH
3供給DeNOx制御実行フラグの設定処理を示すフローチャート(NH
3供給DeNOx制御実行フラグ設定フロー)である。このNH
3供給DeNOx制御実行フラグ設定フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローなどと並行して実行される。
【0097】
最初に、ステップS601では、PCM60は、車両における各種情報及び尿素を尿素インジェクタ51からSCR触媒47に噴射するシステムに関する各種情報をDCU70から取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、車両の外気温温度、尿素タンク55内の尿素の凍結に関連する情報を取得する。尿素タンク55内の尿素の凍結に関連する情報は、例えば、尿素タンク55内の尿素の温度であり、尿素の温度は、尿素タンク55に設けられた尿素温度センサ59によって検出された温度に基づいて測定又は推定される。
【0098】
次いで、ステップS602では、PCM60は、尿素タンク55内の尿素を尿素インジェクタ51から正常に噴射が行えないか否かを判定する。具体的には、PCM60は、車両の外気温温度又は尿素タンク55内の尿素の温度に基づいて尿素が尿素タンク55内において凍結されているか否かの判定を行う。PCM60は、尿素が尿素タンク55内において凍結されていると判断する場合には、尿素経路ヒータ57及び尿素タンクヒータ61を始動させて尿素の加熱を開始させる。尿素が尿素タンク55内において溶けることにより尿素インジェクタ51から正常に噴射できるようになるまで、尿素経路ヒータ57及び尿素タンクヒータ61は尿素の加熱を行う。
この間、PCM60は、尿素インジェクタ51からの尿素の噴射を正常に行えない場合(ステップS602:Yes)、処理はステップS603に進む。ステップS602において、尿素インジェクタ51からの尿素の噴射を正常に行えない場合には、例えば、尿素が尿素タンク55内において全部又は一部が凍結され、尿素インジェクタ51からの尿素の噴射を行えなくなっている場合、尿素タンク55内の尿素が空になっている場合、尿素インジェクタ51からの実際の尿素の噴射量がPCM60により算定された尿素インジェクタ51からの尿素の噴射量よりも少なくなっている場合、及び尿素を尿素タンク55から尿素インジェクタ51まで供給する尿素供給経路53又は尿素送出ポンプ54が故障して尿素が供給できなくなっている場合等が含まれる。これに対して、尿素を尿素インジェクタ51から噴射できる場合(ステップS602:No)、処理はステップS606に進む。この場合には、排気ガス中のNOxをSCR触媒47によって適切に浄化させることができるので、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御の実行を禁止すべく、NH
3供給DeNOx制御実行フラグを「0」に設定し(ステップS606)、処理は終了する。
【0099】
なお、ステップS602では、尿素タンク55内の尿素を尿素インジェクタ51から正常に噴射が行えないか否かを判定する他の変形例として、尿素供給経路53上に設けられた尿素供給経路圧力センサ56が、尿素供給経路53上を尿素が通過した場合の圧力変化を検知することにより尿素インジェクタ51からの尿素の噴射を正常に行えていないか否かを判定してもよい。この場合、尿素供給経路圧力センサ56が尿素が尿素供給経路53上を流れることにより生じる圧力変化を検出できなかった場合(ステップS602:Yes)、尿素インジェクタ51からの尿素の噴射を正常に行えなかったとして、処理はステップS603に進む。また、尿素供給経路圧力センサ56が尿素が尿素供給経路53上を流れることにより生じる圧力変化を検出した場合(ステップS602:No)、処理はステップS606に進む。この場合には、排気ガス中のNOxをSCR触媒47によって適切に浄化させることができるので、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御の実行を禁止すべく、NH
3供給DeNOx制御実行フラグを「0」に設定し(ステップS606)、処理は終了する。
【0100】
尿素を尿素インジェクタ51から噴射できなかった場合においては、PCM60は、尿素タンクヒータ61を作動させ、尿素タンク55内で凍結した状態である尿素を加熱して溶かす制御を実行する。尿素を溶かすことにより、尿素を尿素インジェクタ51から噴射できるようになった場合には、処理はステップS606に進むこととなる。
【0101】
次いで、ステップS603では、PCM60は、SCR触媒47に吸着されているNH
3の吸着量の推定値を取得し、ステップS604に進む。
【0102】
次いで、ステップS604では、PCM60は、SCR触媒47に吸着されているNH
3の吸着量の推定値が所定閾値未満であるか否かを判定する。
この判定の結果、SCR触媒47に吸着されているNH
3の吸着量の推定値が所定閾値未満であった場合(ステップS604:Yes)、処理はステップS605に進む。この場合には、上記したステップS602〜S604の条件が全て成立するので、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御の実行を許可すべく、NH
3供給DeNOx制御実行フラグを「1」に設定する(ステップS605)。そして、処理は終了する。
これに対して、SCR触媒47に吸着されているNH
3の吸着量の推定値が所定閾値未満でない場合(ステップS602:No)、処理はステップS606に進む。SCR触媒47へのNH
3の吸着量の推定値が所定閾値に達している場合には、排気ガス中のNOxをSCR触媒47によって適切に浄化させることができるので、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御の実行を禁止すべく、NH
3供給DeNOx制御実行フラグを「0」に設定し(ステップS606)、処理は終了する。
【0103】
次に、
図10を参照して、上記したように設定されたアクティブDeNOx制御実行フラグに基づき実行される、本発明の実施形態によるアクティブDeNOx制御について説明する。
図10は、本発明の実施形態によるアクティブDeNOx制御を示すフローチャート(アクティブDeNOx制御フロー)である。このアクティブDeNOx制御フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローや
図7に示したアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローなどと並行して実行される。
【0104】
まず、ステップS401では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、エンジン負荷と、エンジン回転数と、NOx触媒温度と、
図5に示したDeNOx用ポスト噴射量算出フローで算出されたDeNOx用ポスト噴射量(具体的にはアクティブDeNOx制御時に適用するものとして算出されたDeNOx用ポスト噴射量)と、
図7に示したアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローで設定されたアクティブDeNOx制御実行フラグの値と、を取得する。
【0105】
次いで、ステップS402では、PCM60は、ステップS401で取得されたアクティブDeNOx制御実行フラグが「1」であるか否かを判定する。つまり、PCM60は、アクティブDeNOx制御を実行すべき状況であるか否かを判定する。この判定の結果、アクティブDeNOx制御実行フラグが「1」である場合(ステップS402:Yes)、処理はステップS403に進む。これに対して、アクティブDeNOx制御実行フラグが「0」である場合(ステップS402:No)、アクティブDeNOx制御を実行せずに、処理は終了する。
【0106】
次いで、ステップS403では、PCM60は、エンジンの運転状態(エンジン負荷及びエンジン回転数)がアクティブDeNOx実行領域R12(
図4参照)に含まれているか否かを判定する。ステップS403の判定の結果、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に含まれている場合(ステップS403:Yes)、処理はステップS405に進む。これに対して、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に含まれていない場合(ステップS403:No)、処理はステップS404に進む。
【0107】
次いで、ステップS405では、PCM60は、アクティブDeNOx制御において適用するポスト噴射タイミング(ポスト噴射時期)を設定する。このポスト噴射タイミングの設定方法については、後述する
図13を参照して具体的に説明する。
【0108】
次に、アクティブDeNOx制御及びNH
3供給DeNOx制御において適用するポスト噴射タイミングの設定方法について、
図13を参照して具体的に説明する。
図13は、本発明の一実施形態によるアクティブDeNOx制御及びNH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミング(ポスト噴射時期)の設定方法についての説明図である。
図13は、横軸にエンジン負荷を示し、縦軸にポスト噴射タイミングを示している。また、グラフG21、G22、G23は、異なるエンジン回転数について、エンジン負荷に応じて設定すべきポスト噴射タイミングを示している。具体的には、グラフG21、G22、G23の順にエンジン回転数が高くなるものとし、グラフG21が低回転数、G22が中回転数、G23が高回転数に対応する。
【0109】
本実施形態では、アクティブDeNOx制御を実行する場合、ポスト噴射させた燃料を筒内において燃焼させることで、排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定するようにする。そのようにポスト噴射させた燃料を筒内で燃焼させるためには、膨張行程における比較的進角側のタイミングでポスト噴射を行えばよい。しかしながら、ポスト噴射タイミングを進角させ過ぎると、空気と燃料が適切に混合されていない状態で着火が生じて、スモークが発生してしまう。したがって、本実施形態では、ポスト噴射タイミングを適度に進角側に設定し、具体的には膨張行程前半における適当なタイミングをアクティブDeNOx制御におけるポスト噴射タイミングとして採用し、また、アクティブDeNOx制御時に適量のEGRガスを導入することで、ポスト噴射された燃料の着火を遅延させてスモークなどの発生を抑制している。そして、本実施形態では、そのような少なくとも膨張行程前半にあるポスト噴射タイミングを、
図13に示すように、エンジン負荷が高くなるほど、より遅角側に設定する。これは、エンジン負荷が高くなると燃料噴射量が多くなり、スモークが発生しやすくなるため、ポスト噴射タイミングをできるだけ遅角させるようにしたものである。この場合、ポスト噴射タイミングを遅角させ過ぎると、ポスト噴射させた燃料が燃焼しなくなり(失火)、HCが発生してしまうので、本実施形態では、ポスト噴射タイミングを適度に遅角させるようにしている。
【0110】
また、本実施形態では、
図13のグラフG21、G22、G23に示すように、エンジン回転数が高くなるほど、ポスト噴射タイミングを進角側に設定する、つまりポスト噴射タイミングの遅角度合いを小さくする。エンジン回転数が高い場合にエンジン回転数が低い場合と同一のクランク角度で燃料を噴射すると、燃料が着火するまでの時間が短いために失火が発生してしまうことがあるので、本実施形態では、燃焼安定性を確保するために、エンジン回転数が高くなるほど、ポスト噴射タイミングを進角側に設定している。
【0111】
再び、
図10に戻って説明する。ステップS404では、PCM60は、アクティブDeNOx制御を実行せずに、つまり排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定するためのポスト噴射を含む燃料噴射制御を行わずに、当該ポスト噴射を含まない通常の燃料噴射制御を行う(ステップS404)。基本的には、PCM60は、目標トルクに応じた燃料噴射量をメイン噴射させる制御のみを行う。実際には、PCM60は、このステップS404の処理を、
図3に示した燃料噴射制御フローのステップS106において実行する。そして、処理はステップS403に戻って、上記したステップS403の判定を再度行う。つまり、PCM60は、アクティブDeNOx制御実行フラグが「1」である場合には、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に含まれていない間は、通常の燃料噴射制御を行うようにし、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に含まれるようになると、通常の燃料噴射制御からアクティブDeNOx制御における燃料噴射制御に切り替えるようにする。例えば、PCM60は、アクティブDeNOx制御における燃料噴射制御中にエンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12から外れると、当該燃料噴射制御を中断して通常の燃料噴射制御を行い、この後に、エンジンの運転状態がアクティブDeNOx実行領域R12に入ると、アクティブDeNOx制御における燃料噴射制御を再開する。
【0112】
次いで、ステップS406では、PCM60は、ステップS401で取得されたDeNOx用ポスト噴射量が第2ポスト噴射量判定値未満であるか否かを判定する。この第2ポスト噴射量判定値は、上記の第1ポスト噴射量判定値(
図8のステップS306参照)よりも大きな値に設定される。こうすることで、アクティブDeNOx制御においてパッシブDeNOx制御よりも多量のポスト噴射量を噴射できるようにし、エンジンEの運転状態によらずに(例えば加速時のような空燃比が低下するような状況でなくても)、排気ガスの空燃比を確実に目標空燃比に設定可能にする。
【0113】
ステップS406の判定の結果、DeNOx用ポスト噴射量が第2ポスト噴射量判定値未満である場合(ステップS406:Yes)、処理はステップS407に進む。ステップS407では、PCM60は、ステップS401で取得されたDeNOx用ポスト噴射量をポスト噴射するように燃料噴射弁20を制御する。実際には、PCM60は、このステップS407の処理を、
図3に示した燃料噴射制御フローのステップS106において実行する。そして、処理はステップS410に進む。
【0114】
他方で、DeNOx用ポスト噴射量が第2ポスト噴射量判定値以上である場合(ステップS406:No)、処理はステップS408に進む。ステップS408では、PCM60は、第2ポスト噴射量判定値を超えないポスト噴射量(具体的には第2ポスト噴射量判定値そのものをDeNOx用ポスト噴射量として適用する)によって排気ガスの空燃比を目標空燃比に設定すべく、エンジンEに導入される空気の酸素濃度を低下させる制御を行う。この場合、PCM60は、吸気シャッター弁7を閉弁方向に駆動する制御、EGRガス量を増加させる制御、及び、ターボ過給機5による過給圧を低下させる制御のうちの少なくともいずれかを実行して、エンジンEに導入される空気の酸素濃度を低下させる、つまり充填量を低下させる。例えば、PCM60は、第2ポスト噴射量判定値を適用したDeNOx用ポスト噴射量によって排気ガスの空燃比を目標空燃比にするのに必要な過給圧を求め、この過給圧を実現するように、実際の過給圧(圧力センサ108によって検出された圧力)とEGRガス量に基づき、吸気シャッター弁7を閉側の所望の開度に制御する。そして、処理はステップS409に進む。
なお、吸気シャッター弁7は、通常のエンジンEの運転状態においては全開に設定される。他方で、DeNOx時、DPF再生時及びアイドル運転時などにおいては、基本的には、吸気シャッター弁7は予め定められたベース開度に設定される。また、EGRガスを導入しない運転状態においては、吸気シャッター弁7は過給圧に基づきフィードバック制御される。
【0115】
ステップS409では、PCM60は、第2ポスト噴射量判定値をDeNOx用ポスト噴射量に適用して、つまりDeNOx用ポスト噴射量を第2ポスト噴射量判定値に設定して、このDeNOx用ポスト噴射量をポスト噴射するように燃料噴射弁20を制御する。実際には、PCM60は、このステップS409の処理を、
図3に示した燃料噴射制御フローのステップS106において実行する。そして、処理はステップS410に進む。
【0116】
ステップS410では、PCM60は、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になったか否かを判定する。具体的には、PCM60は、エンジンEの運転状態や排気ガスの流量や排気ガスの温度などに基づいて推定したNOx吸蔵量がほぼ0になり、且つ、DPF46の直下流側に設けられたNOxセンサ116の検出値が変化した場合に、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になったと判断する。NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になった場合(ステップS410:Yes)、処理は終了する。この場合、PCM60は、アクティブDeNOx制御を終了する。また、PCM60は、当該アクティブDeNOx制御フロー及び
図7のアクティブDeNOx制御実行フラグ設定フローにおいて用いるNOx吸蔵量を0にリセットする。
【0117】
これに対して、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になっていない場合(ステップS410:No)、処理はステップS403に戻る。この場合には、PCM60は、アクティブDeNOx制御を継続する。つまり、PCM60は、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になるまで、アクティブDeNOx制御を継続する。特に、PCM60は、アクティブDeNOx制御中にアクティブDeNOx制御の実行条件(具体的にはステップS403の条件)が成立しなくなり、アクティブDeNOx制御を中止したとしても、その後にアクティブDeNOx制御の実行条件が成立したときにアクティブDeNOx制御を速やかに再開して、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になるようにする。
【0118】
ここで、NOxセンサ116の検出値に基づき、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になったことを判断できる理由は、以下の通りである。NOxセンサ116は、酸素濃度センサとしての機能も有することから、NOxセンサ116の検出値は、NOxセンサ116に供給される排気ガスの空燃比に対応するものとなる。NOx触媒45の還元が行われている間は、つまりNOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になっていないときには、NOxが還元されることで生成された酸素がNOxセンサ116に供給される。一方で、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になると、そのような還元によって生成された酸素がNOxセンサ116に供給されなくなる。したがって、NOx触媒45のNOx吸蔵量がほぼ0になったタイミングにおいて、NOxセンサ116に供給される排気ガスの空燃比が低下することで、NOxセンサ116の検出値が変化するのである。
【0119】
次に、
図11を参照して、上記したように設定されたパッシブDeNOx制御実行フラグに基づき実行される、本発明の実施形態によるパッシブDeNOx制御について説明する。
図11は、本発明の実施形態によるパッシブDeNOx制御を示すフローチャート(パッシブDeNOx制御フロー)である。このパッシブDeNOx制御フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローや
図8に示したパッシブDeNOx制御実行フラグ設定フローと並行して実行される。
【0120】
まず、ステップS501では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、
図5に示したDeNOx用ポスト噴射量算出フローで算出されたDeNOx用ポスト噴射量(具体的にはパッシブDeNOx制御時に適用するものとして算出されたDeNOx用ポスト噴射量)と、
図8に示したパッシブDeNOx制御実行フラグ設定フローで設定されたパッシブDeNOx制御実行フラグの値と、を取得する。
【0121】
次いで、ステップS502では、PCM60は、ステップS501で取得されたパッシブDeNOx制御実行フラグが「1」であるか否かを判定する。つまり、PCM60は、パッシブDeNOx制御を実行すべき状況であるか否かを判定する。この判定の結果、パッシブDeNOx制御実行フラグが「1」である場合(ステップS502:Yes)、処理はステップS503に進む。これに対して、パッシブDeNOx制御実行フラグが「0」である場合(ステップS502:No)、パッシブDeNOx制御を実行せずに、処理は終了する。
【0122】
次いで、ステップS503では、PCM60は、ステップS501で取得されたDeNOx用ポスト噴射量をポスト噴射するように燃料噴射弁20を制御する。つまり、パッシブDeNOx制御を実行する。実際には、PCM60は、このステップS503の処理を、
図3に示した燃料噴射制御フローのステップS106において実行する。そして、処理はステップS504に進む。
【0123】
ステップS504では、PCM60は、パッシブDeNOx制御実行フラグが「0」になったか否かを判定する。その結果、パッシブDeNOx制御実行フラグが「0」になった場合(ステップS504:Yes)、処理は終了する。この場合、PCM60は、パッシブDeNOx制御を終了する。これに対して、パッシブDeNOx制御実行フラグが「0」になっていない場合(ステップS504:No)、即ちパッシブDeNOx制御実行フラグが「1」に維持されている場合、処理はステップS503に戻る。この場合には、PCM60は、パッシブDeNOx制御を継続する。つまり、PCM60は、パッシブDeNOx制御実行フラグが「1」から「0」に切り替わるまで、パッシブDeNOx制御を継続する。
【0124】
次に、
図12を参照して、上記したように設定されたNH
3供給DeNOx制御実行フラグに基づき実行される、本発明の実施形態によるNH
3供給DeNOx制御について説明する。
図12は、本発明の実施形態によるNH
3供給DeNOx制御を示すフローチャート(NH
3供給DeNOx制御フロー)である。このNH
3供給DeNOx制御フローは、PCM60によって所定の周期で繰り返し実行されると共に、
図3に示した燃料噴射制御フローや
図9に示したNH
3供給DeNOx制御実行フラグ設定フローなどと並行して実行される。
【0125】
まず、ステップS701では、PCM60は、車両における各種情報を取得する。具体的には、PCM60は、少なくとも、エンジン負荷と、エンジン回転数と、NOx触媒温度と、SCR温度と、
図5に示したDeNOx用ポスト噴射量算出フローで算出されたDeNOx用ポスト噴射量(具体的にはNH
3供給DeNOx制御時に適用するものとして算出されたDeNOx用ポスト噴射量)と、
図9に示したNH
3供給DeNOx制御実行フラグ設定フローで設定されたNH
3供給DeNOx制御実行フラグの値と、を取得する。
【0126】
次いで、ステップS702では、PCM60は、ステップS701で取得されたNOx触媒温度がNOx触媒45のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲(NOx触媒45の触媒温度の比較的低い温度範囲)内にあるか否かを判定する。つまり、PCM60は、NOxをNOx触媒45で浄化すべき状況(NOx触媒45の触媒温度の比較的低い状況)であるか、又はSCR触媒47で浄化すべき状況(SCR触媒47の触媒温度の比較的高い状況)であるか否かを判定する。なお、ステップS702では、PCM60は、ステップS701で取得されたSCR温度がSCR触媒47のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲(SCR触媒47の触媒温度の比較的高い温度範囲)内にあるか否かを判定してもよい。
この判定の結果、NOx触媒温度がNOx触媒45のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲内にない(及び/又はSCR温度がSCR触媒47のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲内にある)場合(ステップS702:No)、処理はステップS703に進む。これに対して、NOx触媒温度がNOx触媒45のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲内にある(及び/又はSCR温度がSCR触媒47のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲内にない)場合(ステップS702:Yes)、処理は、アクティブDeNOx制御又はパッシブDeNOx制御を実行するか否かの判定に進む。
すなわち、SCR温度がSCR触媒47のNOx浄化率の比較的高い領域と対応する温度範囲(SCR触媒47の触媒温度の比較的高い温度範囲)内にあるときに、NOx触媒45におけるNOxの浄化率が多少低下したとしてもNH
3を発生させるために有効な後述するNH
3供給DeNOx制御を実行する。なお、SCR触媒47のNOx浄化率の比較的高い領域においては、NOx触媒45におけるNOxの浄化率が多少低下したとしても、より下流側のSCR触媒47においてNOxが有効に浄化されるため排気ガス中のNOxの浄化性能は保たれる。
【0127】
次いで、ステップS703では、PCM60は、ステップS701で取得されたNH
3供給DeNOx制御実行フラグが「1」であるか否かを判定する。つまり、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御を実行すべき状況であるか否かを判定する。この判定の結果、NH
3供給DeNOx制御実行フラグが「1」である場合(ステップS703:Yes)、処理はステップS703に進む。これに対して、NH
3供給DeNOx制御実行フラグが「0」である場合(ステップS703:No)、NH
3供給DeNOx制御を実行せずに、処理はステップS701に戻る。
【0128】
次いで、ステップS704では、PCM60は、NOx触媒45の温度が目標温度未満であるか否かを判定する。NOx触媒45の温度が目標温度に到達している場合には、NOx触媒45上において排気ガス中の「N」成分(窒素成分)と「H」成分(水素成分)とが結合してできるNH
3の発生反応を促進させることができ、NOx触媒45からNH
3を発生させやすくすることができる。従って、アクティブDeNOx制御とほぼ同様のポスト噴射タイミングによる空燃比リッチ化NOx還元制御を行う場合においても、アクティブDeNOx制御とほぼ同様のポスト噴射タイミングによる空燃比リッチ化NOx還元制御によりNOx触媒45から発生されるNH
3の発生量よりも多くのNH
3を発生させることができ、NOx触媒45から比較的大量のNH
3をSCR触媒47に供給させることができる。NOx触媒45の温度が上昇するほど、NH
3の発生反応が促進され、NH
3の発生量が増大される。
ステップS704の判定の結果、NOx触媒45の温度が目標温度未満である場合(ステップS704:Yes)、処理はステップS705に進む。これに対して、NOx触媒45の温度が目標温度未満でない場合(ステップS704:No)、処理はステップS709に進む。
【0129】
ステップS705では、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミングを、通常のNOx還元制御、例えばアクティブDeNOx制御における第1ポスト噴射タイミングよりも遅角させた第2ポスト噴射タイミングに設定し、処理はステップS706に進む。
【0130】
図13に示すように、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミングを、アクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングより遅角されたタイミング(ステップS705参照)又は、アクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングと同じタイミング(ステップS709参照)に設定している。NH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミングをアクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングと同じタイミングに設定する場合については、グラフG21、G22、G23に示され、アクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングの説明と同じとなるため説明を省略する。
【0131】
NH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミング(NH
3供給DeNOx制御中の空燃比リッチ化NOx還元制御のポスト噴射タイミング)をアクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングより遅角されたタイミングに設定する場合について説明する。NH
3供給DeNOx制御のポスト噴射タイミングはアクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングより遅角された(リタードされた)タイミングに設定される。
NH
3供給DeNOx制御の遅角されたポスト噴射タイミングは、エンジンの回転数が低回転数である場合には、グラフG21に対して遅角されたグラフH21によって例示され、エンジンの回転数が中回転数である場合には、グラフG22に対して遅角されたグラフH22によって例示され、エンジンの回転数が高回転数である場合には、グラフG23に対して遅角されたグラフH23によって例示される。グラフH21〜H23はあくまでも例示の仮想的なグラフであり、グラフG21〜G23に対して遅角されたグラフH21〜H23は、数度程度遅角された値としてPCM60により算出されている。グラフG21〜G23以外のアクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングに対しても、NH
3供給DeNOx制御の遅角されたポスト噴射タイミングが設定される。
このように、アクティブDeNOx制御のポスト噴射タイミングよりも遅角させたポスト噴射タイミングによってNH
3供給DeNOx制御中の空燃比リッチ化NOx還元制御を実行させる場合には、アクティブDeNOx制御における排気通路41上の未燃燃料量よりも多い未燃燃料量を排気通路41上に供給することができ、排気通路41上の排気ガス中に含まれる未燃燃料及びこの未燃燃料に含まれるHCを増大させ、NOx触媒45の酸化触媒に吸着されるHC量を増大させることができる。よって、NOx触媒45の酸化触媒におけるHCの酸化反応による反応熱が増大し、NOx触媒45の触媒温度の昇温が増大され且つ昇温が比較的速く生じ、NOx触媒45からNH
3が比較的速いタイミングで発生しやすくなり、NOx触媒45から発生するNH
3の発生量が増大されることができる。また、NOx触媒45に供給されるHCのH成分も増大されることから、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくなり、NOx触媒45から発生するNH
3の発生量が増大されることができる。
【0132】
PCM60は、NH
3供給DeNOx制御におけるポスト噴射タイミングの遅角量を、低エンジン負荷の場合の遅角量が高エンジン負荷(又は中エンジン負荷)の場合の遅角量より大きくなるように決定する。例えば、エンジンの回転数が低回転数である場合において、グラフG21及びグラフH21により示すように、NH
3供給DeNOx制御におけるポスト噴射タイミングの遅角量を、低エンジン負荷の場合の遅角量A1が高エンジン負荷(又は中エンジン負荷)の場合の遅角量A2より大きくなるように決定する。低エンジン負荷の場合においては、排気通路41上の排気ガス中に含まれる未燃燃料を増大させるように設定できる一方、高エンジン負荷の場合において、ポスト噴射タイミングをリタードしすぎることにより排気温度が高くなり、排気通路41中の他の部品の信頼性に影響を生じさせることを防ぐことができる。
【0133】
また、PCM60は、低エンジン負荷の場合においてのみ、アクティブDeNOx制御におけるポスト噴射タイミングよりも遅角させたポスト噴射タイミングによってNH
3供給DeNOx制御を実行させることができる。このように制御することで、低エンジン負荷の場合においてのみ、ポスト噴射タイミングをリタードさせ、アクティブDeNOx制御における排気通路41上の未燃燃料量よりも多い未燃燃料量を排気通路41上に供給することができる。また、高エンジン負荷の場合において、ポスト噴射タイミングをリタードすることにより排気温度が高くなり、排気通路41中の他の部品の信頼性に影響を生じさせることを防ぐことができる。
【0134】
また、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御におけるポスト噴射タイミングの遅角量を、エンジンが低回転数の場合の遅角量がエンジンが高回転数の場合の遅角量より大きくなるように決定する。例えば、エンジンが低回転数の場合において、グラフG21からグラフH21に遅角されるときの遅角量A1は、エンジンが中回転数の場合において、グラフG22からグラフH22に遅角されるときの遅角量A3より大きくなるように決定される。さらに、エンジンが低回転数の場合において、グラフG21からグラフH21に遅角されるときの遅角量A1は、エンジンが高回転数の場合において、グラフG23からグラフH23に遅角されるときの遅角量A4より大きくなるように決定される。エンジンが高回転数の場合において、ポスト噴射タイミングをリタードしすぎることにより排気温度が高くなり、排気通路41中の他の部品の信頼性に影響を生じさせることを防ぐことができる。
【0135】
また、PCM60は、エンジンが低回転数の領域にある場合においてのみ、アクティブDeNOx制御におけるポスト噴射タイミングよりも遅角させたポスト噴射タイミングによってNH
3供給DeNOx制御を実行させることができる。このように制御することで、エンジンが低回転数の領域にある場合においてのみ、ポスト噴射タイミングをリタードさせ、アクティブDeNOx制御における排気通路41上の未燃燃料量よりも多い未燃燃料量を排気通路41上に供給することができる。また、高エンジン負荷の場合において、ポスト噴射タイミングをリタードすることにより排気温度が高くなり、排気通路41中の他の部品の信頼性に影響を生じさせることを防ぐことができる。
【0136】
なお、PCM60は、NH
3供給DeNOx制御におけるポスト噴射タイミングの遅角量を、ポスト噴射させた燃料をエンジンの筒内において燃焼させる範囲内のポスト噴射タイミングの遅角量に設定することができる。このとき、ポスト噴射された燃料がそのまま未燃燃料として排出されることや、ポスト噴射された燃料によるエンジンオイル希釈を抑制することができる。
【0137】
ステップS706では、PCM60は、排気ガスの空燃比が第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御の実行を開始する。ここで、第一目標空燃比は、アクティブDeNOx制御において設定されているNOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元可能な目標空燃比である。第二目標空燃比は、
図6において示されるように、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合にSCR触媒47のアンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比である。第二目標空燃比は、
図6において示されるように、SCR触媒47のアンモニア吸着量に対し、第一目標空燃比よりもリッチ化された目標空燃比に設定されている。空燃比リッチ化NOx還元制御は、排気ガスの空燃比を第二目標空燃比までリッチ化させることにより、エンジンの筒内燃焼を行わせる場合及び未燃燃料を排気通路に排出させる場合のいずれの場合においても、NOx触媒45に供給されるH成分が増大され、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくすることができる。
ステップS706では、PCM60は、ステップS705において設定された第2ポスト噴射タイミングによるポスト噴射を実施させる。
図5に示すように、このときのポスト噴射量はステップS115において決定されている。
よって、PCM60は、アクティブDeNOx制御における排気通路上の未燃燃料量よりも多い未燃燃料量を排気通路上に供給させ、且つ空燃比を第二目標空燃比となるまでリッチ化させた排気ガスを排気通路41上に供給させる空燃比リッチ化NOx還元制御を実行し、処理はステップS707に進む。
【0138】
ステップS707では、PCM60は、排気通路上の排気ガス中に含まれる未燃燃料に含まれるHCがNOx触媒45の温度を目標温度まで昇温させるために必要な分量まで酸化触媒45aに供給(又は吸着)されたか否かを判定する。ステップS707の判定の結果、HCが昇温させるために必要な分量まで酸化触媒45aに供給(又は吸着)された場合(ステップS707:Yes)、処理はステップS708に進む。これに対して、HCが昇温させるために必要な分量まで酸化触媒45aに供給されていない場合(ステップS707:No)、処理はステップS706に戻る。
【0139】
ステップS708では、PCM60は、空燃比リッチ化NOx還元制御を停止(中断)させることにより、排気ガスの空燃比が理論空燃比λ1よりもリーンな状態となる通常の運転状態(NOx還元制御を実行していないエンジンの運転状態)に戻ることによって空燃比リーン運転制御を実行させる。空燃比リーン運転制御においては、排気ガス中に供給される酸素の量が多くなり、酸化触媒45aに吸着されたHCと酸素との酸化反応により反応熱が生じる。よって、酸化触媒45aが反応熱により昇温され、NOx触媒45中において酸化触媒45aと近接して配置されているNOx触媒45についても、この反応熱により昇温される。
なお、PCM60は、空燃比リッチ化NOx還元制御を停止させることにより、排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態となる他の運転状態に変更させて空燃比リーン運転制御を実現してもよい。なお、PCM60は、排気ガスの空燃比が目標空燃比よりもリーン側の状態となる他の運転状態に変更させて空燃比リーン運転制御を実現してもよい。PCM60は、空燃比リッチ化NOx還元制御を停止させるという非常に簡単な制御のみにより、排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御から目標空燃比よりもリーン側の状態となる空燃比リーン運転制御に切替えてを実行させることができ、酸化触媒45aに吸着されたHCと酸素との反応により、酸化触媒45aとNOx触媒45の温度を比較的容易に上昇させることができる。
【0140】
ステップS708においては、空燃比リッチ化NOx還元制御を停止させ且つ空燃比リーン運転制御を実行する状態を、予め定めた終了条件が成立するまで継続させる。予め定めた終了条件は、例えば、酸化触媒45aに供給されるHCの供給量の推定値に基づいて算出されるHCと酸素との反応が完了すると想定される反応時間が経過することとする。酸化触媒45aに供給されるHCの供給量の推定値に基づいて算出されるHCと酸素との反応が完了すると想定される反応時間が経過するまで、空燃比リーン運転制御を実行することにより、酸化触媒45aに吸着されたHCのほぼ全てを、酸素と反応させてNOx触媒45を昇温させるために有効に消費することができ、また、酸化触媒45aにHCが吸着されている分だけ、空燃比リーン運転制御を実行し、NOx触媒45を効率的に昇温させることができる。このように、ステップS705及びS706及びS707の空燃比リッチ化NOx還元制御を実行した後、及びステップS708の空燃比リーン運転制御を実行することにより上記NOx触媒45を昇温させる制御を昇温制御と称する。すなわち、昇温制御は、空燃比リッチ化NOx還元制御と、空燃比リーン運転制御を備えている。PCM60は、所定の反応時間が経過した場合に、空燃比リッチ化NOx還元制御を終了させるとともに空燃比リーン運転制御の実行を終了させ、処理はステップS711に進む。
【0141】
次いで、ステップS711では、PCM60は、SCR触媒47に吸着されるNH
3の吸着量の推定値が所定値に到達しているか否かを判定する。
ステップS711の判定の結果、SCR触媒47に吸着されるNH
3の吸着量の推定値が所定値に到達している場合(ステップS711:Yes)、NOx触媒45からNH
3をSCR触媒47に供給させるNH
3供給NOx還元制御は終了され、処理はステップS701に戻る。
これに対して、SCR触媒47に吸着されるNH
3の吸着量の推定値が所定値に到達していない場合(ステップS711:No)、処理はステップS703に戻る。
【0142】
その後、ステップS703からステップS704に進む。ステップS704において、NOx触媒45の温度が目標温度未満である場合(ステップS704:Yes)、処理は、再び、ステップS705に進む。このように、NOx触媒45の温度がNH
3を発生させやすくなるような目標温度に到達するまで、空燃比リッチ化NOx還元制御と空燃比リーン運転制御とからなる昇温制御を繰り返すこととなる。
【0143】
その後、ステップS703からステップS704に進み、ステップS704において、PCM60が、NOx触媒45の温度が目標温度未満でないと判断する場合、すなわち、NOx触媒45の温度が目標温度以上であると判断する場合(ステップS704:No)、昇温制御を実行せずに、処理はステップS709に進む。
【0144】
次いで、ステップS709では、PCM60は、空燃比リッチ化NOx還元制御において、通常のNOx還元制御、例えばアクティブDeNOx制御におけるポスト噴射タイミングと同じ(遅角されていない)ポスト噴射タイミングを設定し、処理はステップS710に進む。
【0145】
ステップS710では、PCM60は、排気ガスの空燃比が第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御の実行を開始する。ここで、第一目標空燃比は、アクティブDeNOx制御において設定されているNOx触媒45に吸蔵されたNOxを還元可能な空燃比である。第二目標空燃比は、
図6において示されるように、NH
3供給DeNOx制御を実行する場合にSCR触媒47のアンモニア吸着量に応じて設定すべき目標空燃比である。第二目標空燃比は、
図6において示されるように、SCR触媒47のアンモニア吸着量に対し、第一目標空燃比よりもリッチ化された目標空燃比に設定されている。空燃比リッチ化NOx還元制御は、排気ガスの空燃比を第二目標空燃比までリッチ化させることにより、エンジンの筒内燃焼を行わせる場合及び未燃燃料を排気通路に排出させる場合のいずれの場合においても、NOx触媒45に供給されるH成分が増大され、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくすることができる。
ステップS710では、PCM60は、ステップS709において設定された第1ポスト噴射タイミングによるポスト噴射を実施させる。
図5に示すように、このときのポスト噴射量はステップS115において決定されている。
よって、PCM60は、アクティブDeNOx制御と同じ第1ポスト噴射タイミングにおいて基本的には筒内燃焼を行うため未燃燃料の排気通路への供給を抑制しており、且つ空燃比を第二目標空燃比となるまでリッチ化させた排気ガスを排気通路上に供給させる空燃比リッチ化NOx還元制御を実行し、処理はステップS711に進む。
【0146】
上述した本発明の一実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、尿素インジェクタ51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合において、NOx還元制御手段は、排気ガスの空燃比が第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御を実行するので、空燃比リッチ化NOx還元制御が、エンジンEの筒内燃焼を行わせる場合及び未燃燃料を排気通路に排出させる場合のいずれの場合においても、NOx触媒45に供給されるH成分を増大させる。よって、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくなり、NOx触媒45から比較的大量のNH
3をSCR触媒47に供給させることができる。従って、尿素インジェクタ51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合においても、SCR触媒47に吸着されたNH
3が不足することによりSCR触媒47において排気ガス中のNOxを浄化することができないことを抑制するとともに、SCR触媒47におけるNH
3の吸着量を増大させることによりSCR触媒47における排気ガス中のNOxの浄化率を上昇させることができ、NOxの排出量を抑制させることができる。
【0147】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、NOx還元制御手段は、空燃比リッチ化NOx還元制御の第二目標空燃比のリッチ化される度合いを、SCR触媒47に吸着されたNH
3の吸着量に応じて変更するので、第二目標空燃比のリッチ化される度合いに応じて、NOx触媒45に供給されるH成分を増大させ、NOx触媒45からNH
3が発生する量を変更させることができ、NH
3供給制御として、SCR触媒47に吸着されたNH
3の吸着量に応じて変更されるNH
3をNOx触媒45からSCR触媒47に供給させることができる。
【0148】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、NOx還元制御手段は、第二目標空燃比を、理論空燃比よりもリッチ側且つ所定の限度空燃比までの範囲内で決定するので、未燃燃料がEGR装置43に供給されてしまうことによるEGR装置43の信頼性の低下の問題が生じることを抑制することができる。
【0149】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、NOx還元制御手段は、空燃比リッチ化NOx還元制御を実行した後、排気ガスの空燃比が第一目標空燃比よりもリーン側の状態となる空燃比リーン運転制御を実行するので、酸化触媒45aに吸着されたHCと酸素とを反応させ、NOx触媒45中の酸化触媒45aとNOx触媒45の温度を上昇させることができる。NOx触媒45の温度が上昇した状態で、NOx還元制御を実行することにより、NOx触媒45からNH
3が発生しやすくなり、NOx触媒45から比較的大量のNH
3をSCR触媒47に供給させることができる。
【0150】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、空燃比リッチ化NOx還元制御を実行した後、排気ガスの空燃比が目標空燃比よりもリーンな状態となる空燃比リーン運転制御を実行し、空燃比リーン運転制御終了後、空燃比リッチ化NOx還元制御を実行するので、空燃比リーン運転制御により、NOx触媒45の温度が上昇した状態で、空燃比リッチ化NOx還元制御を実行することとなり、NOx触媒45からNH
3が発生しやすくなるのみならず、空燃比リッチ化NOx還元制御が、NOx触媒45に供給されるH成分を増大させる。よって、NOx触媒45からNH
3が発生する量を増加させやすくなり、NH
3供給制御として、NOx触媒45から比較的大量のNH
3をSCR触媒47に供給させることができる。
【0151】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、尿素インジェクタ51に供給される尿素が凍結している場合においても、SCR触媒47に吸着されたNH
3が不足することによりSCR触媒47において排気ガス中のNOxを浄化することができないことを抑制するとともに、SCR触媒47におけるNH
3の吸着量を増大させることによりSCR触媒47における排気ガス中のNOxの浄化率を上昇させることができ、NOxの排出量を抑制させることができる。
【0152】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、NOx還元制御手段は、空燃比リーン運転制御終了後、空燃比リッチ化NOx還元制御を実行する場合には、空燃比リッチ化NOx還元制御におけるポスト噴射時期を、ポスト噴射させた燃料をエンジンの筒内において燃焼させるポスト噴射時期に設定するので、ポスト噴射された燃料がそのまま未燃燃料として排出されることや、ポスト噴射された燃料によるオイル希釈を抑制することができる。
【0153】
また、本実施形態によるエンジンの排気浄化装置によれば、NOx還元制御手段は、排気ガスの温度が比較的高く且つこの排気ガス中のNOxをSCR触媒47により浄化することが求められる場合において、尿素インジェクタ51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断されるとき、NH
3供給NOx還元制御を実行することができ、SCR触媒47に吸着されたNH
3が不足することによりSCR触媒47において排気ガス中のNOxを浄化することができないことを抑制するとともに、SCR触媒47におけるNH
3の吸着量を増大させることによりSCR触媒47における排気ガス中のNOxの浄化率を上昇させることができ、NOxの排出量を抑制させることができる。
【解決手段】エンジンの排気浄化装置は、NOx触媒45と、SCR触媒47と、尿素噴射弁51と、NOx触媒に吸蔵されたNOxを還元可能な第一目標空燃比に設定してNOx還元制御を実行するNOx還元制御手段と、を備え、NOx還元制御手段は、尿素噴射弁51からの尿素噴射が正常に行えていないと判断される場合には、排気ガスの空燃比が第一目標空燃比よりもリッチ化された第二目標空燃比となるまで排気ガスの空燃比をリッチ化させた空燃比リッチ化NOx還元制御を実行することにより、NOx触媒45からNH