【実施例】
【0023】
以下本発明の実施例について図面とともに詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例による発光ダイオードを用いた成分濃度分析装置の構成図である。
本実施例による発光ダイオードを用いた成分濃度分析装置は、測定器10と分析器30とからなる。
測定器10は、波長の異なる複数の発光ダイオード11と、複数の発光ダイオード11を順に発光させる光源制御部12と、入射部21及び受光部22、23を測定対象物の表面に密着させるプローブ20と、測定対象物の表面温度を測定する対象物温度検出部24と、発光ダイオード11の使用温度を測定するLED温度検出部13と、時刻を計測するためのクロック部14と、発光ダイオード11の発光時間を変更する発光時間変更部15とを備えている。発光時間変更部15は、例えば、測定対象物を変更する時に発光時間を変更し、測定対象物に適した入射光の強度とする。測定対象物が果実の場合には、表皮の厚い果実にあっては、表皮の薄い果実、例えばトマトよりも発光時間を長くする。
【0024】
複数の発光ダイオード11は、例えばトマトの糖度を計測する場合には、860nm、900nm、935nm、950nm、及び1015nmの5波長を用いることが好ましい。
複数の発光ダイオード11からの発光(入射光)は、集光部25aを経由し、入射光路25によって入射部21に導かれる。複数の発光ダイオード11は、常に同じ発光順とし、5つの発光ダイオード11を用いる場合には、全5波長の発光を1波長ずつ、等間隔で発光させて測定対象物に入射する。
第1の受光部22と第2の受光部23とは、入射部21からの距離を異ならせている。第1の受光部22と第2の受光部23とは、入射部21からの方向は同一であることが好ましい。
受光部22、23で受光した散乱光は検出光路26、27によって検出部16に導かれる。第1の検出光路26は、第1の受光部22で受光した第1の散乱光を第1の検出部16aに導く。第2の検出光路27は、第2の受光部23で受光した第2の散乱光を第2の検出部16bに導く。第1の検出光路26には第1のフィルタ26aが、第2の検出光路27には第2のフィルタ27aが設けられている。
【0025】
記憶部17には、複数の発光ダイオード11の発光による測定ごとに、第1の検出部16aで検知した第1の散乱光の強度、第2の検出部16bで検知した第2の散乱光の強度、対象物温度検出部24で検出された表面温度、LED温度検出部13で検出された発光ダイオード11の使用温度に関するデータが記憶される。
また、記憶部17には、クロック部14によって発光ダイオード11の測定時刻データが記憶され、発光時間変更部15によって発光ダイオード11の発光時間のデータが記憶される。
複数の発光ダイオード11の発光ごとに測定して記憶部17に記憶された、第1の検出部16aで検知した第1の散乱光の強度、第2の検出部16bで検知した第2の散乱光の強度、対象物温度検出部24で検出された表面温度、LED温度検出部13で検出された発光ダイオード11の使用温度、クロック部14からの測定時刻、及び発光時間変更部15からの発光時間のデータは、測定器10を識別する識別データとともに送信部18から送信される。
なお、測定器10は、装置内に電源部19を備えていることが好ましい。光源制御部12、クロック部14、及び送信部18には電源部19から電力が供給される。
【0026】
送信部18から送信されるデータは、分析器30の受信部31で受信される。
分析器30には、LEDピーク波長記憶部51、吸収係数記憶部52、使用温度補正データ記憶部53、及び表面温度補正データ記憶部54を有している。
LEDピーク波長記憶部51には、LEDピーク波長計測手段55で計測された発光ダイオード11の個体毎のピーク波長データが記憶されている。測定器10に組み込まれる発光ダイオード11は、LEDピーク波長計測手段55によって、測定器10の製作時に、発光ダイオード11の個体毎にそれぞれのピーク波長が計測される。LEDピーク波長計測手段55は、ピーク波長自体を計測する場合の他、基準となるピーク波長からの偏差量であってもよい。
吸収係数記憶部52には、測定対象物における測定対象成分について、波長の組み合わせに応じて決定された吸収係数データが記憶されている。測定対象物における測定対象成分については、あらかじめ波長の違いによる吸光度特性を計測し、演算に用いる波長の組み合わせに応じた吸収係数が吸収係数決定手段56によって決定される。
使用温度補正データ記憶部53には、使用温度とピーク波長との関係データが記憶されている。使用温度が高くなるとピーク波長は長くなる方向にシフトする。
表面温度補正データ記憶部54には、表面温度と成分濃度との関係データが記憶されている。糖度の場合には、表面温度が高くなると成分濃度は高くなる方向にシフトする。
【0027】
受信部31で受信されるデータは、受信データ記憶部32に記憶される。
LEDピーク波長読出部41では、受信データ記憶部32に記憶された、測定器10を識別する識別データを基に、この測定器10に組み込まれたそれぞれの発光ダイオード11についてのピーク波長を、LEDピーク波長記憶部51から読み出す。
使用温度読出部42では、LED温度検出部13で検出された発光ダイオード11の使用温度データを受信データ記憶部32から読み出す。
LEDピーク波長補正部33では、LEDピーク波長読出部41で読み出した発光ダイオード11についてのピーク波長と、使用温度読出部42で読み出した発光ダイオード11の使用温度データと、使用温度補正データ記憶部53に記憶された使用温度とピーク波長との関係データとから、LEDピーク波長を補正する。
【0028】
演算対象成分決定部34では、演算対象とする成分が決定される。例えば、果実における演算対象成分を糖度とするか、酸度とするかが決定される。
演算対象成分決定部34で演算対象とする成分が決定されると、LED選択部35では、演算に用いる発光ダイオード11が選択される。
LED選択部35では、例えば、果実における演算対象を糖度とした場合には、第1の発光ダイオード11a、第2の発光ダイオード11b、及び第3の発光ダイオード11cを選択し、果実における演算対象を酸度とした場合には、第1の発光ダイオード11a、第4の発光ダイオード11d、及び第5の発光ダイオード11eを選択する。
LED選択部35において、演算に用いる発光ダイオード11が選択される場合には、LEDピーク波長補正部33では、選択された発光ダイオード11についてピーク波長を補正すればよい。
【0029】
吸収係数読出部43では、LEDピーク波長補正部33で補正されたピーク波長を基にした吸収係数を吸収係数記憶部52から読み出す。
散乱光強度読出部44では、第1の検出部16aで検知した第1の散乱光の強度、及び第2の検出部16bで検知した第2の散乱光の強度を受信データ記憶部32から読み出す。
成分濃度演算部36では、散乱光強度読出部44で読み出した第1の散乱光の強度と第2の散乱光の強度とから相対反射率を求め、この相対反射率と吸収係数読出部43で読み出した吸収係数
データとから成分濃度を演算する。
【0030】
成分濃度演算部36では、例えば3つの波長を用いた場合には以下の演算が行われる。
第1の発光ダイオード11aによる、第1の散乱光の強度をI
1.λ1、第2の散乱光の強度をI
2.λ1とし、第2の発光ダイオード11bによる、第1の散乱光の強度をI
1.λ2、第2の散乱光の強度をI
2.λ2とし、第3の発光ダイオード11cによる、第1の散乱光の強度をI
1.λ3、第2の散乱光の強度をI
2.λ3とする。
3つの波長の相対反射率を、R
λ1、R
λ2、R
λ3、とすると、
R
λ1=I
2.λ1/I
1.λ1、R
λ2=I
2.λ2/I
1.λ2、R
λ3=I
2.λ3/I
1.λ3となる。
濃度をC、吸収係数をk
0、k
1とすると、濃度Cは次式で演算される。
C=k
0+k
1*In(R
λ1/R
λ3)/(R
λ2/R
λ3)
【0031】
表面温度読出部45では、対象物温度検出部24で検出された表面温度を受信データ記憶部32から読み出す。
温度補正演算部37では、成分濃度演算部36で演算された成分濃度を基に、表面温度読出部45で読み出した表面温度と、表面温度補正データ記憶部54に記憶された表面温度と成分濃度との関係データから、温度補正がされた成分濃度が演算される。
温度補正演算部37で演算された成分濃度は、受信データ記憶部32に記憶された、第1の散乱光の強度、第2の散乱光の強度、表面温度、使用温度、測定時刻、及び発光時間、及び識別データとともにデータ蓄積部38に記憶される。
なお、データ蓄積部38には、識別データ、測定時刻、及び成分濃度が記憶されていればよいが、その他のデータが記憶されることで、機器の異常や設置状態の維持状態などについても分析することができる。
【0032】
データ蓄積部38に記憶されたこれらのデータは、送信部39から送信することで、携帯端末60にて、状況把握を行うことができる。
送信部39から送信されるデータは、携帯端末60の受信部61で受信し、受信したデータは記憶部62に記憶するとともに表示部63にて表示することができる。
【0033】
なお、本実施例による発光ダイオードを用いた成分濃度分析装置は、測定器10、分析器30、及び携帯端末60で構成した場合を示したが、測定器10と分析器30と携帯端末60とが一体で構成され、又は分析器30と携帯端末60とが一体で構成されていてもよい。また、測定器10に表示機能を持たせることが好ましい。