特許第6230022号(P6230022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6230022Ag被覆Al−Si合金粒子及びその製造方法、並びに、導電性ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230022
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】Ag被覆Al−Si合金粒子及びその製造方法、並びに、導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20171106BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20171106BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20171106BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20171106BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   C22C 21/02 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   B22F1/02 A
   B22F9/00 B
   H01B5/00 E
   H01B1/00 E
   H01B1/22 A
   H01B5/00 C
   H01B1/00 C
   B22F1/00 N
   !C22C21/02
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-36902(P2014-36902)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160991(P2015-160991A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 勝康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】板倉 尚道
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−085500(JP,A)
【文献】 特開2012−079458(JP,A)
【文献】 特開2010−185135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
C22C 1/04− 1/05
C22C 21/02−21/04
C22C 33/02
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程を備える、複合粒子の製造方法であって、
前処理工程として、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱する工程を備える、製造方法。
【請求項2】
前記溶液にさらに保護剤を含ませる、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保護剤がポリビニルピロリドンである、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶液における前記Agイオンの濃度を0.015mol/l以上0.15mol/l以下とする、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオールを溶媒として用いる、請求項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオールがエチレングリコールである、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
Al−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程を備える、複合粒子の製造方法により複合粒子(P1)を得る、第1工程と、
前記複合粒子(P1)、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該複合粒子(P1)の表面にAgを析出させて複合粒子(P2)を得る、第2工程と、
を備える、複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により複合粒子(P1)を得る、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程における前記溶液のAgイオン濃度を、前記第1工程における前記溶液のAgイオン濃度よりも低いものとする、請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2工程における溶液にさらに保護剤を含ませる、請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記保護剤がポリビニルピロリドンである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程において前記ポリオールを溶媒として用いる、請求項11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記ポリオールがエチレングリコールである、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al−Si合金粒子の表面をAgで被覆してなる複合粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化・薄型化・軽量化を支えるエレクトロニクス実装分野において、はんだの鉛フリー化や電子配線の微細化等が急速に進んでいる。これに応える技術の一つとして低温実装及び微細接続が可能な導電性ペーストが注目されている。
【0003】
導電性ペーストとしては、導電性フィラーである銀を樹脂に混合分散させたものが最も一般的に用いられている。しかしながら、銀は高価であることから、導電性フィラーの低コスト化が求められている。
【0004】
導電性フィラーの低コスト化を実現する技術として、例えば、銀よりも安価な銅からなるコアに銀を被覆した銀被覆銅粒子が提案されている(特許文献1、2等)。銀被覆銅粒子は、電気めっき、無電解めっき、蒸着、置換法等により調製可能である(特許文献1〜5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−25991号公報
【特許文献2】特開2010−65260号公報
【特許文献3】米国特許第4954235号
【特許文献4】米国特許第4305997号
【特許文献5】米国特許第4956014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に開示された銀被覆銅粒子は、銅が酸化され易いことから、酸化による導電性の低下が懸念される。銅に代えて、コアとしてセラミックスを用いることで耐酸化性を向上させた場合、複合粒子全体としての導電性が被覆層のみによって確保されることとなり、結局は十分な導電性が得られない。
【0007】
そこで本発明は、耐酸化性に優れるとともに導電性にも優れる複合粒子、当該複合粒子を用いた導電性ペースト、及び、当該複合粒子を簡易且つ効率的に製造可能な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが導電性複合粒子について鋭意研究を進めたところ以下の数々の知見を得た。
(1)導電性を有し、且つ、酸化され難い粒子をコアとして用い、当該コアにAgを被覆することで、Ag粒子そのものを用いる場合よりもAg使用量を削減しつつ、耐酸化性に優れるとともに導電性にも優れる複合粒子を得ることができる。
(2)そのようなコアとしては特にAl−Si合金粒子が好適である。
(3)Al−Si合金粒子の表面をAgで被覆するにあたっては、めっき法や蒸着法よりも操作が簡便であるポリオール法を適用することが可能であることを初めて知見した。すなわち、合金粒子とAgイオンとポリオールとを少なくとも含む溶液において、該ポリオールを酸化させて電子を放出させ、AgイオンをAgへと還元することで、合金粒子の表面にAgを析出させることが可能である。
(4)ポリオール法によれば、加熱処理を行うだけで容易にAgを析出させることができる。すなわち、高価な装置は不要であり、多種の薬品類を使用することもない。例えば、ポリオールを溶媒としてここに合金粒子とAgイオン源とを添加し、そのまま所定温度(該ポリオールが酸化して電子を放出する温度)以上に加熱するだけで、所望の複合粒子を得ることができる。
(5)ポリオール法により合金粒子表面にAgを析出させた場合、合金粒子表面をAgにて均一に被覆することが可能である。特に、Ag濃度が所定範囲内である場合に、より良好な被覆が可能となる。
(6)Agを析出させる前に、前処理を施すことで、その後、Al−Si合金粒子表面にAgを析出させるにあたり、Agの析出量を増大させることができる。鋭意研究の結果、前処理としては、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱する形態が好適である。
(7)Agを析出させるにあたって、溶液に所定の保護剤を共存させることで、析出するAgの微細化が可能となり、合金粒子に対しAgを一層均一に被覆させることが可能となる。
(8)Agの被覆を2段階以上で行うことで、Ag被覆層の厚みを容易に制御することができる。この際、1段目の被覆処理と2段目の被覆処理とで、Agイオン濃度を変化させるとよい。具体的には2段目におけるAgイオン濃度を、1段目におけるAgイオン濃度よりも低いものとすることで、一層均一なAg被覆層とすることができ、厚みの制御も容易となる。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
第1の本発明は、Al−Si合金からなるコア層と、Agからなる表面層とを有する、複合粒子である。
【0010】
「コア層」とは、複合粒子において中核をなす層を意味する。
「表面層」とは、複合粒子の最表面に設けられる層を意味する。
「Al−Si合金」とは、Alを主体(主成分)として少なくともSiが添加されてなる合金を意味する。すなわち、その他の合金成分が含まれていてもよい。
「複合粒子」とは、粒子径(最大径)が1μm以上12μm以下の粒子を意味する。
尚、複合粒子は、当該コア層と当該表面層とを有していればよく、それ以外の層をさらに有していてもよい。
例えば、Agからなる表面層に加えてそれ以外の表面層を有する形態(複合粒子の最表層の少なくとも一部分がAgからなり、最表層のその他部分が他の成分からなる形態。コア層が最表面に一部露出している形態も含む。)も本発明に含まれる。本発明では、コア層が耐酸化性に優れるとともに導電性をも有しているため、コア層が一部露出していても所望の性能を確保することができる。
また、コア層及び表面層以外に何らかの中間層を有する形態も本発明に含まれる。ただし、本発明の効果は、Al−Si合金からなるコア層及びAgからなる表面層のみよって十分に奏される。よって、コア層の表面にAgからなる表面層が直接接触する形態が最も簡便で好ましい。
【0011】
第1の本発明に係る複合粒子は、ポリオール法により容易に得られる。「ポリオール法」とは、ポリオール(多価アルコール)を還元剤として、金属イオンを還元して金属として析出させる方法である。具体的には、以下の本発明により、複合粒子を容易に製造することができる。
【0012】
すなわち、第2の本発明は、Al−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程を備える、複合粒子の製造方法である。
【0013】
「Al−Si合金粒子」とは、Al−Si合金からなるコア層を有する粒子である。好ましくは、Al−Si合金からなる粒子である。
「ポリオール」とは、加熱されることによって還元剤としての機能を発現するポリオール(多価アルコール)を意味する。
「Al−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールを含む溶液」とは、Al−Si合金粒子が溶解していない一方で、Agがイオンとして含まれ、且つ、ポリオールが溶解した溶液を言う。ただし「ポリオールが溶解した溶液」とは、ポリオールそのものが溶液における溶媒として機能する形態も含む概念とする。
【0014】
第2の本発明において、前処理工程として、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱する工程を備えることが好ましい。
【0015】
第2の本発明において、溶液にさらに保護剤を含ませることが好ましい。
【0016】
「保護剤」とは、溶液に溶解する有機高分子であって、Agの核生成を促し、且つ、Agの析出粒子径を制御するものを意味する。例えば、構造中に非共有電子対を有する有機高分子であってAgと配位結合可能な有機高分子が挙げられる。具体的には、ポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。
【0017】
第2の本発明においては、溶液におけるAgイオンの濃度を0.015mol/l以上0.15mol/l以下とすることが好ましい。
【0018】
第2の本発明においては、ポリオールを溶媒として用いることができる。例えば、エチレングリコールが好適である。
【0019】
第3の本発明は、第2の本発明に係る製造方法により複合粒子(P1)を得る第1工程と、複合粒子(P1)、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して該複合粒子(P1)の表面にAgを析出させて複合粒子(P2)を得る第2工程と、を備える、複合粒子の製造方法である。
【0020】
第3の本発明において、第2工程における溶液のAgイオン濃度を、第1工程における溶液のAgイオン濃度よりも低いものとすることが好ましい。
【0021】
第3の本発明において、第2工程における溶液にさらに保護剤を含ませることが好ましい。この場合も、保護剤としてポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。
【0022】
第3の本発明において、第2工程におけるポリオールを溶媒として用いることが好ましい。例えば、エチレングリコールが好適である。
【0023】
第4の本発明は、第1の本発明に係る複合粒子を含む、導電性ペーストである。
【0024】
「導電性ペースト」とは、本発明に係る複合粒子の他、溶媒等を含有するペーストを意味する。複合粒子以外の成分については、用途に応じて適宜選択される。例えば、導電性ペーストを導電性接着剤とする場合は、複合粒子の他に樹脂や溶媒等を含有させればよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐酸化性に優れるとともに導電性にも優れる複合粒子を提供することができる。当該複合粒子は導電性ペーストにおける導電性フィラーとして適用可能である。また、当該複合粒子はポリオール法により簡易且つ効率的に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態に係る本発明の複合粒子10の断面を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法S10の流れを説明するための図である。
図3】保護剤の機能を説明するための概略図である。
図4】他の実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法S20の流れを説明するための図である。
図5】他の実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法S30の流れを説明するための図である。
図6】実施例にて用いたAl−Si合金粒子のSEM画像図である。
図7】エチレングリコールを用いたポリオール法における析出粒子の形態を説明するための図である。
図8】ポリオール法における保護剤の影響を説明するための図である。
図9】ポリオール法における保護剤の分子量の影響を説明するための図である。
図10】ポリオール法におけるAgイオン濃度の影響を説明するための図である。
図11】実施例における加熱還流条件を説明するための図である。
図12】加熱時間の経過に伴いAg析出量が増大していくことを説明するための図である。
図13】Ag表面層を二段階で形成した場合について説明するための図である。
図14】Ag表面層を二段階で形成する場合において、第2工程におけるAgイオン濃度の影響を説明するための図である。
図15】Al−Si合金粒子を前処理したことによる効果を説明するための図である。
図16】各材料の耐酸化性の評価結果を示す図である。
図17】複合粒子の断面を示すSEM画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.複合粒子(Ag被覆Al−Si合金粒子)
図1に一実施形態に係る本発明の複合粒子10の断面を概略的に示す。図1に示すように複合粒子10は、Al−Si合金からなるコア層1と、Agからなる表面層2とを有することを特徴とする。
【0028】
1.1.コア層
コア層1はAl−Si合金からなる。コア層1の形状は特に限定されるものではない。
例えば、後述するポリオール法により複合粒子を製造する場合、コア層の形状はAl−Si合金粒子の形状に依存する。当該Al−Si合金粒子の粒子径(最大径)は用途によって適宜選択可能であるが、下限が好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、上限が好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下である。Al−Si合金粒子の形状は特に限定されるものではない。例えば、球状のもの、断面が楕円形状のもの、矩形状のもの、或いはこれらの凝集体(2次粒子)等、種々の形状が採用できる。導電性ペーストにおける導電性フィラーとして用いる場合は、球状のものが好ましい。
【0029】
Al−Si合金は、Alを主体(主成分)として、さらにSiが添加されてなる。具体的には、Alが80質量%以上90質量%以下含まれていることが好ましく、Siが10質量%以上20質量%以下含まれていることが好ましい。Alの含有量は、下限がより好ましくは87質量%以上であり、上限がより好ましくは89質量%以下である。Siの含有量は、下限がより好ましくは11質量%以上であり、上限がより好ましくは13質量%以下である。
Al−Si合金におけるAl及びSiの含有量をこのような範囲とすることで、耐酸化性及び導電性に一層優れる複合粒子とすることが可能である。
【0030】
Al−Si合金には、本発明の効果を損なわない範囲で、Al及びSi以外のその他合金成分が含まれていてもよい。そのような成分としては、Mg、Zn、Cu、Mn等が挙げられる。
【0031】
1.2.表面層
表面層2はAgからなる。表面層2の厚みについては特に限定されるものではない。用途によっても異なるが、40nm以上2.5μm以下の厚みとすることが好ましい。以下に説明するポリオール法により複合粒子を製造する場合、表面層2の厚みは処理時間や処理回数等によって適宜調整可能である。
【0032】
以下に説明するポリオール法により複合粒子を製造する場合、表面層2はAg粒子の凝集体となる。この場合、表面層2を構成するAg粒子(一次粒子)の大きさは、保護剤の有無等にもよるが、5nm以上3μm以下となる。
【0033】
表面層2は、隙間を有して、コア層1の一部が表面に露出しているような形態であってもよい。或いは、コア層1の表面にAg粒子が担持されてなる層についても、本発明にいう表面層2に含まれる。複合粒子10では、コア層1がAl−Si合金からなるため、コア層1が耐酸化性及び導電性に優れており、コア層1の全面を表面層2によって完全に被覆せずとも、所望の性能を有する複合粒子とすることができる。
【0034】
以上のように、複合粒子10は、Al−Si合金層をコアとし、その表面にAgからなる表面層を有しているので、コア層を銅で構成する場合やセラミックスで構成する場合と比較して、優れた耐酸化性及び優れた導電性を両立することができる。
【0035】
尚、図1においては、複合粒子がコア層1及び表面層2のみからなる形態について説明したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。例えば、表面層2とAg以外成分からなる表面層とが混在するような形態であってもよいし、或いは、コア層及び表面層以外に何らかの中間層を有する形態であってもよい。ただし、本発明の効果は、Al−Si合金からなるコア層及びAgからなる表面層のみによっても十分に奏される。以下に説明するポリオール法により容易に製造でき観点からも、複合粒子は、コア層1及び表面層2のみからなることが好ましい。
【0036】
2.複合粒子の製造方法(Ag被覆Al−Si合金粒子の製造方法)
本発明に係る複合粒子は、ポリオール法により簡便且つ効率的に製造可能である。すなわち、Al−Si合金粒子とAgイオンとポリオールとを含む系内において、ポリオールを還元剤として機能させて、Agイオンを還元してAgとし、Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させることで、複合粒子を製造できる。
例えば、ポリオールとしてエチレングリコールを用いた場合、加熱により脱水及び縮合を経てジアセチルを生成する。この過程で放出された電子により、金属イオンを還元させることができる(F. Fievet et al. “Homogeneous and Heterogeneous nucleation in the polyol process for the preparation of micron and submicron size metal particles” Solid state Ionics 32/33 (1989) 198-205)。
ポリオール法による複合粒子の製造方法について以下詳細に説明する。
【0037】
2.1.第1実施形態
図2に一実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法(S10)を示す。製造方法S10は、Al−Si合金粒子並びにAgイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程S11と、工程S11を経た溶液に対して遠心分離を行う工程S12と、工程S12を経て得られた固形分を洗浄して乾燥する工程S13と、を有している。
【0038】
2.1.1.工程S11
工程S11はAl−Si合金粒子並びにAgイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程である。
【0039】
工程S11においては、ポリオールが還元剤として機能する温度にまで、溶液を加熱する。
工程S11における加熱温度は、用いるポリオールに依存する。例えば、ポリオールとしてエチレングリコールを用いる場合、加熱温度を150℃以上とすることが好ましい。
工程S11における加熱保持時間(所望の加熱温度に達した後の加熱保持時間)は、溶液のAgイオン濃度や、Al−Si合金粒子の表面に析出させるAg量等に応じて適宜調整する。本発明者らの知見によれば、所望の加熱温度に達した後、当該温度にて1時間弱保持するだけで、Al−Si合金粒子の表面を覆うようにAgを析出させることができる。
【0040】
工程S11において、溶液には、Al−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールを含ませる。ここで、Al−Si合金粒子は溶液に溶解していない。一方、Agイオンはその言葉通り、溶液中にイオンとして存在する。溶液にAgイオンを含ませるにあたっては、Agイオン源として溶液に溶解可能な塩を添加すればよい。例えば硝酸銀や酢酸銀等が好ましい。ポリオールも溶液に溶解しているが、これにはポリオールそのものを溶媒として用いる形態が含まれる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール類を用いることができる。この中でも、還元剤としても溶媒としても機能し得るものが好ましい。特にエチレングリコールが最も好ましい。
例えば、溶媒としてポリオールであるエチレングリコールを用い、ここにAl−Si合金粒子を分散させるとともに、Agイオン源を添加・溶解させる形態が最も簡便且つ効率的であり好ましい。
【0041】
工程S1において、溶液におけるAl−Si合金粒子、Agイオン及びポリオールの含有比については特に限定されるものではない。
【0042】
工程S11において、溶液におけるAgイオンの濃度を0.015mol/l以上0.15mol/l以下とすることが好ましい。より好ましくは、下限が0.04mol/l以上である。Agイオン濃度が低過ぎると表面層の形成が困難となる虞がある。一方、Agイオン濃度が高過ぎるとAl−Si合金粒子以外の箇所でAgの凝集が生じる虞がある。溶液に含まれるAgイオンの濃度をこの範囲内とすることで、Al−Si合金粒子にAg粒子をより均一に析出させることができる。
【0043】
工程S11においては、溶液中に保護剤を含ませることが好ましい。
保護剤は、溶液に溶解する有機高分子であって、工程S11においてAgの核生成を促し、且つ、Agの析出粒子径を制御するものを意味する。すなわち、図3に概略的に示すように、互いに網目状に絡まり合う有機高分子の間にAgを析出させることで、Agの粒子径制御(Ag粒子の微小化)が容易となり、Al−Si合金粒子表面のAg被覆率を増加させることができる。例えば、構造中に非共有電子対を有する有機高分子であってAgと配位結合可能な有機高分子が好ましい。
このような保護剤の具体例としては、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
保護剤はその重量平均分子量が1,000以上500,000以下であることが好ましく、5,000以上100,000以下であることがより好ましく、10,000以上50,000以下であることが特に好ましい。
溶液における保護剤の含有量は、保護剤が溶液に溶解している限り、特に限定されるものではない。例えば、溶液全体を100質量%として1質量%以上15質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、1.1質量%以上11.3質量%以下である。
【0044】
工程S11においては、Al−Si合金粒子を溶液に均一に分散させ、且つ、Agイオン源や保護剤の溶解を促すために、攪拌処理や超音波処理を行うことが好ましい。攪拌手段や超音波照射手段としては、公知の手段を採用すればよい。
【0045】
2.1.2.工程S12
工程S12は、工程S11を経た溶液に対して遠心分離を行う工程である。遠心分離の後、上澄みを取り除くことにより、固形分として複合粒子を容易に取り出すことができる。遠心分離手段としては公知の手段を用いればよい。
【0046】
2.1.3.工程S13
工程S13は、工程S12を経て得られた固形分を洗浄して乾燥する工程である。洗浄は水洗、或いは有機溶媒による洗浄のいずれであってもよい。
【0047】
以上のように、工程S11〜工程S13を有する製造方法S10によれば、ポリオール法により、Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させて、Al−Si合金からなるコア層と、Agを含む表面層とを有する複合粒子を容易に製造することができる。このように、ポリオール法によれば、加熱処理を行うだけで容易にAgを析出させることができる。すなわち、高価な装置は不要であり、多種の薬品類を使用することもない。また、本発明者らの知見によれば、ポリオール法によれば、合金粒子表面をAgにて均一に被覆することが可能であり、且つ、コア層と表面層との結合力も十分であり、表面層がコア層から容易に剥離することがない。
【0048】
2.2.第2実施形態
図4に第2実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法(S20)を示す。製造方法S20は、前処理工程として、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱する工程S21と、工程S21を得て得られたAl−Si合金粒子、並びに、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、該Al−Si合金粒子の表面にAgを析出させる工程S22と、工程S22を経た溶液に対して遠心分離を行う工程S23と、工程S23を経て得られた固形分を洗浄して乾燥する工程S24と、を有している。
【0049】
2.2.1.工程S21
工程S21は、前処理工程であり、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱する工程である。
工程S21における加熱温度、加熱時間については、後工程である工程S11と同様とすることができる。
工程S21において、Al−Si合金粒子及びポリオールの含有比は特に限定されるものではない。例えば、後工程である工程S22と同様の比率とすることができる。
また、溶液中に保護剤を含ませた状態で工程S21を行ってもよい。
【0050】
2.2.2.工程S22〜S24
工程S22〜S24は、Al−Si合金粒子として、上記した前処理済みのAl−Si合金粒子を用いること以外は、上記した工程S11〜S13と同様の工程とすることができる。
【0051】
工程S21と工程S22とは連続する工程であっても、そうでなくてもよい。
例えば、工程S21により前処理されたAl−Si合金粒子を、遠心分離により溶液から取り出して、適宜洗浄・乾燥したうえで、前処理済みのAl−Si合金粒子を乾燥した状態で保管することが可能である。そして、工程S22を行う場合には、前処理済みのAl−Si合金粒子を必要分だけ取り出して、Agイオン及びポリオールを含む溶液に分散させて加熱することで、前処理済みのAl−Si合金粒子の表面にAgを均一に析出させることができる。
或いは、工程S21を行った溶液に、Agイオン源や保護剤等を添加して、そのまま工程S22に移って加熱を行ってもよい。
【0052】
製造方法S20では、工程S21を行うことにより、工程S21を行わない場合と比較して、後工程である工程S22においてAl−Si合金粒子の表面におけるAg析出量が増大する。Ag析出量が増大する原因については不明であるが、ポリオール中での加熱処理によって、Al−Si合金粒子の表面の性状が変化し、Agの核生成或いは核成長が起きやすくなったものと考えられる。
【0053】
2.3.第3実施形態
図5に第3実施形態に係る本発明の複合粒子の製造方法(S30)を示す。製造方法S30は、第1実施形態(又は第2実施形態)に係る複合粒子の製造方法S10(又はS20)により、複合粒子(P1)を得る、第1工程S31と、複合粒子(P1)、Agイオン及びポリオールを含む溶液を加熱して、当該複合粒子(P1)の表面にAgを析出させて複合粒子(P2)を得る、第2工程S32と、工程S32を経た溶液に対して遠心分離を行う工程S33と、工程S33を経て得られた固形分を洗浄して乾燥する工程S34と、を有している。
【0054】
すなわち、製造方法S30は、Al−Si合金粒子の表面に、表面層としてのAg層を多段階で設けるものである。工程S31〜S34の詳細については、上記したS11〜S13を参考にすることができる。
【0055】
ただし、製造方法S30においては、第2工程S32における溶液のAgイオン濃度を、第1工程S31における溶液のAgイオン濃度よりも低いものとすることが好ましい。これにより、複合粒子P1の表面層の隙間部分にAgを析出させることができ、より均一で被覆率の高い複合粒子(P2)を得ることができる。また、これにより、厚みの制御(微調整)も容易となる。
第1工程S31におけるAgイオン濃度は上述した通りである。
第2工程S32におけるAgイオン濃度は、0.0075mol/l以上0.015mol/l以下とすることが好ましい。
【0056】
尚、上記製造方法S10〜S30において、遠心分離工程(工程S12、S23、S33)や洗浄・乾燥工程(S13、S24、S34)は任意である。すなわち、必ずしも溶液から固形分を取り出す必要はなく、用途によっては、複合粒子が分散したスラリーとして用いることも可能である。
【0057】
3.導電性ペースト
本発明に係る複合粒子は樹脂や溶媒等とともに混合して導電性ペーストとすることによって、電子機器の電子回路において導電性部材を実装するための導電性接着剤、或いは、電子回路の配線をパターン印刷するための導電性インク等に好適に用いることができる。すなわち、複合粒子は導電性フィラーとして各種用途に適用可能である。導電性ペーストにおける複合粒子以外の成分については、用途に応じて適宜選択すればよく、公知の樹脂、溶媒等を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳述するが、本発明は以下の実施例に記載された具体的な形態に限定されるものではない。
【0059】
実施例においては、以下の試薬を用いた。
・ Al−Si合金粒子:Al/Si=88/12wt%、平均粒子径4.95μm、Valimet Inc製
・ AgNO:純度99.8%、和光純薬工業株式会社製、試薬特級
・ エチレングリコール:純度99.0%、ナカライテスク株式会社製EP
・ ポリビニルピロリドン(PVP1):重量平均分子量24,500、ナカライテスク株式会社製
・ ポリビニルピロリドン(PVP2):重量平均分子量15,000、東京化成工業株式会社製
・ ポリビニルピロリドン(PVP3):重量平均分子量630,000、東京化成工業株式会社
【0060】
図6にAl−Si合金粒子のSEM画像を示す。図6に示すようにAl−Si合金粒子は球状粒子である。
【0061】
<実験1:Agの析出温度>
還元剤としてエチレングリコールを用いた場合におけるAgの析出条件を明らかにするため、エチレングリコール中にAgNOを溶解させ、任意の温度で加熱還流を行った。Agイオン濃度を0.15mol/l、加熱温度を80〜180℃の間で変化させ、加熱保持時間を1時間とした。その結果、80℃及び120℃では析出粒子は目視では確認されなかった。一方、150℃、180℃で加熱した場合、目視にて析出粒子が確認された。150℃で加熱還流を行った析出粒子の形態についてSEMにより確認したところ、析出粒子の粒子径はマイクロオーダーにまで成長し得ることが分かった(図7(A))。また、析出粒子についてX線回折測定を行った結果、不純物や副生成物のないAgに由来するピークのみが確認された(図7(B))。
以上の通り、エチレングリコールを用いてAgイオンを還元する場合は、150℃以上に加熱することが好ましいことが分かった。
【0062】
<実験2:ポリオール法による複合粒子の製造可能性>
AgNOをエチレングリコール(40ml)に加え、完全に溶解させた(Agイオン濃度0.15mol/l)。その後、Al−Si合金粒子(0.1g)を加え、溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流した。具体的には、20分かけて150℃まで昇温させて40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子を調製した。
【0063】
調製した複合粒子についてSEM画像を確認したところ、Al−Si合金粒子の表面の一部に、表面層としてAgが析出していた。
以上のことから、ポリオール法により複合粒子(Ag被覆Al−Si合金粒子)を製造可能であることが分かった。
【0064】
<実験3:保護剤添加の影響>
溶液に保護剤としてPVP1を添加(0.1g、0.5g、1.0g、5.0g、10g)したこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。図8に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。図8から明らかなように、PVP1を添加することにより、Al−Si合金粒子の表面に析出するAg粒子のサイズが小さくなることが分かる。特に、PVP1を0.5g〜5g添加した場合において、Agの被覆率が増加した。
PVPのN及びOの非共有電子対がAgと配位結合し、Ag及びPVP自身の立体効果によって、Ag粒子の成長・凝集を抑制できたと考えられる。
尚、洗浄・乾燥後に得られた複合粒子について、熱重量分析を行ったところ、複合粒子にPVPの残留は確認されなかった。
【0065】
PVP1を5.0g添加した場合に得られる複合粒子について、その表面の元素分布をSEM−EDXにより確認したところ、Al−Si合金粒子の表面全体に均一にAgが析出していることが分かった。
以上のことから、溶液には保護剤を添加することが好ましいことが示された。
【0066】
<実験4:保護剤の分子量の影響>
溶液に保護剤としてPVP1、PVP2、PVP3のいずれかを5g添加したこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。図9に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。図9から明らかなように、溶液にPVP1又はPVP2を添加した場合、Al−Si合金粒子の表面に均一にAg粒子を析出させることができる。一方、PVP3を添加した場合、Al−Si合金粒子の表面にAg粒子を析出させることができるものの、均一性はPVP1又はPVP2を添加した場合に劣る。
以上のことから、保護剤を添加する場合は、その重量平均分子量が1,000以上500,000以下程度のものを用いることがより有効であることが示された。
【0067】
<実験5:Agイオン濃度の影響>
PVP1を5g添加するとともに、Agイオン濃度を変化(0.0015mol/l、0.038mol/l、0.15mol/l、0.3mol/l)させたこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。図10に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。図10から明らかなように、Agイオン濃度を0.3mol/lとした場合、Al−Si合金粒子の周囲に、Al−Si合金粒子の表面を被覆しないAgの凝集体が確認できる。これは、溶液中のPVP添加量に対してAgイオンが過剰であるため、PVPの保護効果が及ばないAgイオンが多く存在したためと考えられる。
一方、Agイオン濃度が0.0015mol/lの場合、Al−Si合金粒子の表面の一部にAgを析出させることができるが、Agイオン濃度が0.015mol/lや0.15mol/lの場合と比較して、被覆率は低下している。
以上のことから、Agイオン濃度については0.015mol/l以上0.15mol/l以下が好ましいことが示された。
【0068】
<実験6:加熱時間の影響>
Agイオン濃度を0.038mol/lとし、PVP1を5g添加し、加熱時間を変化(10分、20分、30分、50分、60分)させて、各加熱時間における複合粒子の表面状態を観察した。図11に加熱処理条件の詳細を、図12に、それぞれの加熱保持時間で調製した複合粒子のXRDパターンを示す。図11、12から明らかなように、加熱時間10分の段階では、温度が150℃に達していないことからAgの析出は生じず、Al−Si合金粒子のXRDパターンにおいてもAgに帰属されるピークは確認できないが、20分の段階で150℃に達したことからAgの析出が生じ、複合粒子のXRDパターンにおいてもAgに帰属される回折ピークが確認できる。その後、時間の経過とともに回折ピーク強度が増加している。
以上のことから、Agが小さなサイズの段階でAl−Si合金粒子表面に付着し(或いはAl−Si合金粒子表面にて核生成が生じ)、その後、時間の加熱時間の経過に伴いAg粒子が成長し、Ag表面層が形成されることが分かった。
【0069】
<実験7:Ag表面層の厚みの制御>
以下の工程S1及びS2を行うことで、Al−Si合金粒子にAg表面層を2段階に分けて形成した。
工程S1:Agイオン濃度を0.038mol/lとし、PVP1を5g添加したこと以外は実験2と同様にして複合粒子(P1)を調製した。
工程S2:Al−Si合金粒子に替えて複合粒子(P1)を用いたこと以外は、工程S1と同様にして複合粒子(P2)を調製した。
【0070】
図13(A)に複合粒子(P1)のSEM画像を、図13(B)に複合粒子(P2)のSEM画像を示す。図13から明らかなように、複合粒子(P2)の方が、複合粒子(P1)よりもAg表面層の厚みが増大している。
以上のことから、Ag表面層の厚みを増大させる場合は、Ag表面層の形成を2段階以上で行うことが有効であることが示された。
【0071】
<実験8:第2工程におけるAgイオン濃度の影響>
第2工程におけるAgイオン濃度を変化(0.0075mol/l、0.015mol/l、0.075mol/l、0.15mol/l)させたこと以外は、実験7と同様にして複合粒子(P2)を調製した。図14に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。図14から明らかなように、第2工程におけるAgイオン濃度を0.0075mol/l或いは0.015mol/lとした場合、Agイオン濃度を0.075mol/l或いは0.15mol/lとした場合よりも、Ag表面層が一層均一となることが分かる。
以上のことから、Al−Si合金粒子にAg表面層を多段階に分けて形成する場合、後工程におけるAgイオン濃度を、前工程におけるAgイオン濃度よりも低下させることで、Ag表面層を一層均一に形成可能であることが示された。
【0072】
<実験9:Al−Si合金粒子の前処理>
(ポリオール及び保護剤により前処理を行う場合)
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させ、ここにAl−Si合金粒子を0.1g添加して、前処理用の分散溶液とした。分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の分散溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、前処理済みのAl−Si合金粒子(AP1)を調製した。
【0073】
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNOを溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここにAl−Si合金粒子(AP1)を0.1g添加した。Al−Si合金粒子(AP1)を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(EP1)を調製した。
【0074】
(ポリオールのみにより前処理を行う場合)
エチレングリコール(40ml)中にAl−Si合金粒子のみを0.1g添加して、前処理用の分散溶液とした。分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の分散溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、前処理済みのAl−Si合金粒子(AP2)を調製した。
【0075】
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNOを溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここにAl−Si合金粒子(AP2)を0.1g添加した。Al−Si合金粒子(AP2)を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(EP2)を調製した。
【0076】
(前処理を行わない場合)
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNOを溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここに前処理を行っていないAl−Si合金粒子を0.1g添加した。Al−Si合金粒子を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(CP1)を調製した。
【0077】
図15に、複合粒子(EP1)、複合粒子(EP2)、複合粒子(CP1)それぞれについてのSEM画像を示す。図15から明らかなように、複合粒子(EP1)、複合粒子(EP2)は、複合粒子(CP1)と比較して、Ag表面層の厚みが増大している。
複合粒子(EP1)及び複合粒子(CP1)について、マテリアルバランスをとったところ、複合粒子(CP1)については、溶液に存在していたAgイオンの約2%程度が複合粒子(CP1)の表面層として析出していた。一方、複合粒子(EP1)については、溶液において存在していたAgイオンの約33%が、複合粒子(EP1)の表面層として析出していた。
以上のことから、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱して、Al−Si合金粒子の前処理を行うことで、得られる複合粒子に均一且つ厚みの大きなAg表面層を形成できることが示された。
【0078】
<実験10:銅の酸化特性とAl−Si合金の酸化特性との比較>
熱重量分析装置((株)島津製作所製、DTG−60H)を用いて、銅の酸化特性とAl−Si合金の酸化特性とを比較した。使用した試料並びに試験条件を以下に示す。
(実験試料)
銅粉末(ナカライテスク社製、純度97%)
Al−Si合金粉末(Valimet社製(ナミックス株式会社提供))
(実験条件)
雰囲気:空気雰囲気(空気流量150ml)
昇温速度:5℃/min
到達温度:1000℃
【0079】
結果を図16に示す。図16から明らかなように、銅粉末については200℃付近から重量が増加し始め、500〜600℃で一定となっている。この重量増加は、空気中で加熱されたことによる酸化に起因するものと考えられる。一方、Al−Si合金の場合は、500℃広範から重量が増加している。こちらも、酸化による重量増加と考えられる。
以上のことから、銅とAl−Si合金とを比較すると、Al−Si合金のほうが、酸化開始温度が400℃近く高く、酸化され難いことが分かる。
【0080】
<実験11:導電性の評価>
上記のAl−Si合金粒子と、銀被覆粒子のコアとして公知であるセラミックス粉末(酸化アルミニウム(アルミナ)、ナカライテスク社製、純度99%以上、粒子径1〜5μm、例えば、国際公開2012/118061号を参照)とについて、それぞれ比抵抗を測定したところ、Al−Si合金粒子については5.0×10−3Ω・cmであり、セラミックス粉末については1014〜1015Ω・cmを超える値となった。すなわち、Al−Si合金粒子のほうが、セラミックス粉末よりも比抵抗が小さく、電気特性に優れていることが分かる。
上記の耐酸化性の評価を考慮すると、Al−Si合金粒子は耐酸化性に優れるとともに導電性も確保可能といえ、そのような粒子により製造された複合粒子は、従来の複合粒子では達成できなかった両立効果を奏することが分かる。
【0081】
<補足:複合粒子の断面>
図17に、本発明の複合粒子の断面のSEM画像を示す。図17に示すように、本発明の複合粒子は、Al−Si合金を含むコア層と、Ag粒子が凝集してなる表面層と、を有していることが分かる。また、Ag表面層はAl−Si合金を含むコア層にしっかりと固着していることも分かる。
【0082】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う複合粒子(Ag被覆Al−Si合金粒子)、複合粒子の製造方法、及び、導電性ペーストもまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る複合粒子は、電子機器の小型化・薄型化・軽量化を支えるエレクトロニクス実装分野において、導電性接着剤や導電性ペースト等に用いられる導電性フィラーとして利用可能である。本発明に係る複合粒子は、ポリオール法によって簡便且つ効率的に製造可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 コア層(Al−Si合金)
2 表面層(Ag)
10 複合粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17