【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳述するが、本発明は以下の実施例に記載された具体的な形態に限定されるものではない。
【0059】
実施例においては、以下の試薬を用いた。
・ Al−Si合金粒子:Al/Si=88/12wt%、平均粒子径4.95μm、Valimet Inc製
・ AgNO
3:純度99.8%、和光純薬工業株式会社製、試薬特級
・ エチレングリコール:純度99.0%、ナカライテスク株式会社製EP
・ ポリビニルピロリドン(PVP1):重量平均分子量24,500、ナカライテスク株式会社製
・ ポリビニルピロリドン(PVP2):重量平均分子量15,000、東京化成工業株式会社製
・ ポリビニルピロリドン(PVP3):重量平均分子量630,000、東京化成工業株式会社
【0060】
図6にAl−Si合金粒子のSEM画像を示す。
図6に示すようにAl−Si合金粒子は球状粒子である。
【0061】
<実験1:Agの析出温度>
還元剤としてエチレングリコールを用いた場合におけるAgの析出条件を明らかにするため、エチレングリコール中にAgNO
3を溶解させ、任意の温度で加熱還流を行った。Agイオン濃度を0.15mol/l、加熱温度を80〜180℃の間で変化させ、加熱保持時間を1時間とした。その結果、80℃及び120℃では析出粒子は目視では確認されなかった。一方、150℃、180℃で加熱した場合、目視にて析出粒子が確認された。150℃で加熱還流を行った析出粒子の形態についてSEMにより確認したところ、析出粒子の粒子径はマイクロオーダーにまで成長し得ることが分かった(
図7(A))。また、析出粒子についてX線回折測定を行った結果、不純物や副生成物のないAgに由来するピークのみが確認された(
図7(B))。
以上の通り、エチレングリコールを用いてAgイオンを還元する場合は、150℃以上に加熱することが好ましいことが分かった。
【0062】
<実験2:ポリオール法による複合粒子の製造可能性>
AgNO
3をエチレングリコール(40ml)に加え、完全に溶解させた(Agイオン濃度0.15mol/l)。その後、Al−Si合金粒子(0.1g)を加え、溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流した。具体的には、20分かけて150℃まで昇温させて40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子を調製した。
【0063】
調製した複合粒子についてSEM画像を確認したところ、Al−Si合金粒子の表面の一部に、表面層としてAgが析出していた。
以上のことから、ポリオール法により複合粒子(Ag被覆Al−Si合金粒子)を製造可能であることが分かった。
【0064】
<実験3:保護剤添加の影響>
溶液に保護剤としてPVP1を添加(0.1g、0.5g、1.0g、5.0g、10g)したこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。
図8に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。
図8から明らかなように、PVP1を添加することにより、Al−Si合金粒子の表面に析出するAg粒子のサイズが小さくなることが分かる。特に、PVP1を0.5g〜5g添加した場合において、Agの被覆率が増加した。
PVPのN及びOの非共有電子対がAg
+と配位結合し、Ag
+及びPVP自身の立体効果によって、Ag粒子の成長・凝集を抑制できたと考えられる。
尚、洗浄・乾燥後に得られた複合粒子について、熱重量分析を行ったところ、複合粒子にPVPの残留は確認されなかった。
【0065】
PVP1を5.0g添加した場合に得られる複合粒子について、その表面の元素分布をSEM−EDXにより確認したところ、Al−Si合金粒子の表面全体に均一にAgが析出していることが分かった。
以上のことから、溶液には保護剤を添加することが好ましいことが示された。
【0066】
<実験4:保護剤の分子量の影響>
溶液に保護剤としてPVP1、PVP2、PVP3のいずれかを5g添加したこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。
図9に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。
図9から明らかなように、溶液にPVP1又はPVP2を添加した場合、Al−Si合金粒子の表面に均一にAg粒子を析出させることができる。一方、PVP3を添加した場合、Al−Si合金粒子の表面にAg粒子を析出させることができるものの、均一性はPVP1又はPVP2を添加した場合に劣る。
以上のことから、保護剤を添加する場合は、その重量平均分子量が1,000以上500,000以下程度のものを用いることがより有効であることが示された。
【0067】
<実験5:Agイオン濃度の影響>
PVP1を5g添加するとともに、Agイオン濃度を変化(0.0015mol/l、0.038mol/l、0.15mol/l、0.3mol/l)させたこと以外は実験2と同様にして複合粒子を調製した。
図10に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。
図10から明らかなように、Agイオン濃度を0.3mol/lとした場合、Al−Si合金粒子の周囲に、Al−Si合金粒子の表面を被覆しないAgの凝集体が確認できる。これは、溶液中のPVP添加量に対してAgイオンが過剰であるため、PVPの保護効果が及ばないAgイオンが多く存在したためと考えられる。
一方、Agイオン濃度が0.0015mol/lの場合、Al−Si合金粒子の表面の一部にAgを析出させることができるが、Agイオン濃度が0.015mol/lや0.15mol/lの場合と比較して、被覆率は低下している。
以上のことから、Agイオン濃度については0.015mol/l以上0.15mol/l以下が好ましいことが示された。
【0068】
<実験6:加熱時間の影響>
Agイオン濃度を0.038mol/lとし、PVP1を5g添加し、加熱時間を変化(10分、20分、30分、50分、60分)させて、各加熱時間における複合粒子の表面状態を観察した。
図11に加熱処理条件の詳細を、
図12に、それぞれの加熱保持時間で調製した複合粒子のXRDパターンを示す。
図11、12から明らかなように、加熱時間10分の段階では、温度が150℃に達していないことからAgの析出は生じず、Al−Si合金粒子のXRDパターンにおいてもAgに帰属されるピークは確認できないが、20分の段階で150℃に達したことからAgの析出が生じ、複合粒子のXRDパターンにおいてもAgに帰属される回折ピークが確認できる。その後、時間の経過とともに回折ピーク強度が増加している。
以上のことから、Agが小さなサイズの段階でAl−Si合金粒子表面に付着し(或いはAl−Si合金粒子表面にて核生成が生じ)、その後、時間の加熱時間の経過に伴いAg粒子が成長し、Ag表面層が形成されることが分かった。
【0069】
<実験7:Ag表面層の厚みの制御>
以下の工程S1及びS2を行うことで、Al−Si合金粒子にAg表面層を2段階に分けて形成した。
工程S1:Agイオン濃度を0.038mol/lとし、PVP1を5g添加したこと以外は実験2と同様にして複合粒子(P1)を調製した。
工程S2:Al−Si合金粒子に替えて複合粒子(P1)を用いたこと以外は、工程S1と同様にして複合粒子(P2)を調製した。
【0070】
図13(A)に複合粒子(P1)のSEM画像を、
図13(B)に複合粒子(P2)のSEM画像を示す。
図13から明らかなように、複合粒子(P2)の方が、複合粒子(P1)よりもAg表面層の厚みが増大している。
以上のことから、Ag表面層の厚みを増大させる場合は、Ag表面層の形成を2段階以上で行うことが有効であることが示された。
【0071】
<実験8:第2工程におけるAgイオン濃度の影響>
第2工程におけるAgイオン濃度を変化(0.0075mol/l、0.015mol/l、0.075mol/l、0.15mol/l)させたこと以外は、実験7と同様にして複合粒子(P2)を調製した。
図14に、得られた複合粒子それぞれについてのSEM画像を示す。
図14から明らかなように、第2工程におけるAgイオン濃度を0.0075mol/l或いは0.015mol/lとした場合、Agイオン濃度を0.075mol/l或いは0.15mol/lとした場合よりも、Ag表面層が一層均一となることが分かる。
以上のことから、Al−Si合金粒子にAg表面層を多段階に分けて形成する場合、後工程におけるAgイオン濃度を、前工程におけるAgイオン濃度よりも低下させることで、Ag表面層を一層均一に形成可能であることが示された。
【0072】
<実験9:Al−Si合金粒子の前処理>
(ポリオール及び保護剤により前処理を行う場合)
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させ、ここにAl−Si合金粒子を0.1g添加して、前処理用の分散溶液とした。分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の分散溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、前処理済みのAl−Si合金粒子(AP1)を調製した。
【0073】
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNO
3を溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここにAl−Si合金粒子(AP1)を0.1g添加した。Al−Si合金粒子(AP1)を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(EP1)を調製した。
【0074】
(ポリオールのみにより前処理を行う場合)
エチレングリコール(40ml)中にAl−Si合金粒子のみを0.1g添加して、前処理用の分散溶液とした。分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の分散溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、前処理済みのAl−Si合金粒子(AP2)を調製した。
【0075】
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNO
3を溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここにAl−Si合金粒子(AP2)を0.1g添加した。Al−Si合金粒子(AP2)を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(EP2)を調製した。
【0076】
(前処理を行わない場合)
エチレングリコール(40ml)中に保護剤としてPVP1を5g溶解させるとともにAgNO
3を溶解させ(Agイオン濃度:0.038mol/l)、ここに前処理を行っていないAl−Si合金粒子を0.1g添加した。Al−Si合金粒子を溶液中へ完全に分散させるために超音波処理を行った。得られた分散溶液を加熱還流し、20分かけて150℃まで昇温させ、40分加熱保持した後、室温まで自然冷却した。冷却後の溶液について遠心分離を行い、ろ別した固体を洗浄・乾燥させ、複合粒子(CP1)を調製した。
【0077】
図15に、複合粒子(EP1)、複合粒子(EP2)、複合粒子(CP1)それぞれについてのSEM画像を示す。
図15から明らかなように、複合粒子(EP1)、複合粒子(EP2)は、複合粒子(CP1)と比較して、Ag表面層の厚みが増大している。
複合粒子(EP1)及び複合粒子(CP1)について、マテリアルバランスをとったところ、複合粒子(CP1)については、溶液に存在していたAgイオンの約2%程度が複合粒子(CP1)の表面層として析出していた。一方、複合粒子(EP1)については、溶液において存在していたAgイオンの約33%が、複合粒子(EP1)の表面層として析出していた。
以上のことから、Al−Si合金粒子及びポリオールを含み、且つ、Agイオンを含まない溶液を加熱して、Al−Si合金粒子の前処理を行うことで、得られる複合粒子に均一且つ厚みの大きなAg表面層を形成できることが示された。
【0078】
<実験10:銅の酸化特性とAl−Si合金の酸化特性との比較>
熱重量分析装置((株)島津製作所製、DTG−60H)を用いて、銅の酸化特性とAl−Si合金の酸化特性とを比較した。使用した試料並びに試験条件を以下に示す。
(実験試料)
銅粉末(ナカライテスク社製、純度97%)
Al−Si合金粉末(Valimet社製(ナミックス株式会社提供))
(実験条件)
雰囲気:空気雰囲気(空気流量150ml)
昇温速度:5℃/min
到達温度:1000℃
【0079】
結果を
図16に示す。
図16から明らかなように、銅粉末については200℃付近から重量が増加し始め、500〜600℃で一定となっている。この重量増加は、空気中で加熱されたことによる酸化に起因するものと考えられる。一方、Al−Si合金の場合は、500℃広範から重量が増加している。こちらも、酸化による重量増加と考えられる。
以上のことから、銅とAl−Si合金とを比較すると、Al−Si合金のほうが、酸化開始温度が400℃近く高く、酸化され難いことが分かる。
【0080】
<実験11:導電性の評価>
上記のAl−Si合金粒子と、銀被覆粒子のコアとして公知であるセラミックス粉末(酸化アルミニウム(アルミナ)、ナカライテスク社製、純度99%以上、粒子径1〜5μm、例えば、国際公開2012/118061号を参照)とについて、それぞれ比抵抗を測定したところ、Al−Si合金粒子については5.0×10
−3Ω・cmであり、セラミックス粉末については10
14〜10
15Ω・cmを超える値となった。すなわち、Al−Si合金粒子のほうが、セラミックス粉末よりも比抵抗が小さく、電気特性に優れていることが分かる。
上記の耐酸化性の評価を考慮すると、Al−Si合金粒子は耐酸化性に優れるとともに導電性も確保可能といえ、そのような粒子により製造された複合粒子は、従来の複合粒子では達成できなかった両立効果を奏することが分かる。
【0081】
<補足:複合粒子の断面>
図17に、本発明の複合粒子の断面のSEM画像を示す。
図17に示すように、本発明の複合粒子は、Al−Si合金を含むコア層と、Ag粒子が凝集してなる表面層と、を有していることが分かる。また、Ag表面層はAl−Si合金を含むコア層にしっかりと固着していることも分かる。
【0082】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う複合粒子(Ag被覆Al−Si合金粒子)、複合粒子の製造方法、及び、導電性ペーストもまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。