(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6230037
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】縫製方法
(51)【国際特許分類】
A41H 43/02 20060101AFI20171106BHJP
A41H 9/00 20060101ALI20171106BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
A41H43/02
A41H9/00
A41D13/002 105
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-203863(P2016-203863)
(22)【出願日】2016年10月17日
【審査請求日】2017年6月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年4月28日に株式会社チロルは丸美衣料株式会社に本発明により開口部を設けた衣服を卸した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516311674
【氏名又は名称】株式会社チロル
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【弁理士】
【氏名又は名称】澤 喜代治
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】穐吉 俊行
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6108327(JP,B1)
【文献】
特開2017−057547(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/140926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00−13/12,20/00
A41H 9/00,43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地に円形の開口部を設けるための縫製方法であって、
前記布地の一面に当て布の一面をあてがい、前記布地と前記当て布とを円形の縫い目で縫合することによって円形状縫目を設ける第一縫合工程と、
前記円形状縫目の内縁に沿って、前記円形状縫目の内側に存する前記布地及び前記当て布を円形に切断し、前記円形状縫目と同心円となる円形穴を設ける切断工程と、
前記円形穴を通じて、前記当て布を前記布地の他面側に反転させ、前記布地の他面と前記当て布の他面とが面するように配する反転工程と、
前記円形状縫目の外縁を縫合する第二縫合工程と、
を実行し、
前記第一縫合工程の実行前に、前記当て布の他面に円環状の補強シートを固定する補強シート固定工程を実行し、
前記第一縫合工程の実行時に、前記補強シートの内縁に沿って前記円形状縫目を設け、
前記切断工程の実行時に、前記円形状縫目の縫い代が5mm未満となるように前記円形穴を設け、
前記第二縫合工程の実行時に、前記布地の他面と前記当て布の他面との間に挟まれた前記縫い代より外側の部分を縫合することを特徴とする縫製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の縫製方法において、
前記第二縫合工程の実行時に、前記補強シートと共に前記円形状縫目の外縁を縫合する縫製方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の縫製方法において、
前記第二縫合工程の実行後に、前記当て布の外縁を前記布地に対して縫合する縫製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地に円形の開口部を設けるための縫製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、外気を作業服内に供給し、もって前記作業服内を冷却するファン付きの作業服が実用化されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
この種の作業服は、作業服の布地に取り付けられたファンによって、外気を作業服内に供給するタイプのものが一般的である。そのため、作業服には、前記ファンを取り付けるための開口部を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015‐65998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、この開口部(ファン取付部)を作成するにあたり、布地(シート状部材)に当て布(裏地)をあてがい、前記布地と前記当て布とを円形の縫い目(縫合部)で縫合する第一工程と、この縫目より内側に円形の穴(開口孔)を形成する第二工程と、前記穴から前記縫い目に向かって複数の切り込みを入れる第三工程と、前記穴を通じて前記当て布を反転させる第四工程と、前記縫い目の外縁を縫合する第五工程と、を実行する。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示された方法では、前記第三工程において、複数の切り込みを入れる作業が煩雑である。又、前記第三工程の実行中に切り込みの一つが前記縫い目を切断すると、縫い目のほつれが生じるため前記第一工程のやり直しが必要となる。
【0007】
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、簡単な工程によって布地に円形の開口部を設けることができる新規な縫製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決する本発明の縫製方法は、布地に円形の開口部を設けるための縫製方法であって、前記布地の一面に当て布の一面をあてがい、前記布地と前記当て布とを円形の縫い目で縫合することによって円形状縫目を設ける第一縫合工程と、前記円形状縫目の内縁に沿って、前記円形状縫目の内側に存する前記布地及び前記当て布を円形に切断し、前記円形状縫目と同心円となる円形穴を設ける切断工程と、前記円形穴を通じて、前記当て布を前記布地の他面側に反転させ、前記布地の他面と前記当て布の他面とが面するように配する反転工程と、前記円形状縫目の外縁を縫合する第二縫合工程と、を実行し、前記切断工程の実行時に、前記円形状縫目の縫い代が5mm未満となるように前記円形穴を設け、前記第二縫合工程の実行時に、前記布地の他面と前記当て布の他面との間に挟まれた前記縫い代より外側の部分を縫合することを特徴とする(以下、「本発明方法」と称する。)。
【0009】
本発明方法においては、前記第一縫合工程の実行前に、前記当て布の他面に円環状の補強シートを固定する補強シート固定工程を実行し、前記第一縫合工程の実行時に、前記補強シートの内縁に沿って前記円形状縫目を設けることが好ましい態様となる。
【0010】
本発明方法においては、前記第二縫合工程の実行時に、前記補強シートと共に前記円形状縫目の外縁を縫合することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な工程によって布地に円形の開口部を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明方法によって開口部が設けられた布地を示す正面図(a)と、断面図(b)と、背面図(c)である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る本発明方法における第一縫合工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る本発明方法における切断工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る本発明方法における反転工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る本発明方法における第二縫合工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図6】
図6は、本発明方法によって開口部が設けられた作業服を示す背面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る本発明方法における補強シート固定工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る本発明方法における第一縫合工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る本発明方法における切断工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る本発明方法における反転工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る本発明方法における第二縫合工程を示す正面図(a)と、断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
[実施形態1]
<本発明方法>
図1に、実施形態1に係る本発明方法によって開口部10が設けられた布地1を示す。又、
図2〜
図5に、実施形態1に係る本発明方法の各工程を示す。本発明方法は、第一縫合工程と、切断工程と、反転工程と、第二縫合工程と、を実行する。
【0015】
‐第一縫合工程(
図2参照)‐
前記第一縫合工程では、前記布地1の一面に当て布2の一面をあてがい、前記布地1と前記当て布2とを円形の縫い目で縫合することによって円形状縫目3を設ける。本発明方法において、前記布地1及び前記当て布2の素材は特に限定されず、又、前記布地1と前記当て布2とを縫合する縫い方(ステッチ)についても限定されない。本実施形態においては、前記布地1として市販の作業服を用い、ミシンによって前記当て布2を縫合した。
【0016】
‐切断工程(
図3参照)‐
前記切断工程では、前記円形状縫目3の内縁に沿って、前記円形状縫目3の内側に存する前記布地1及び前記当て布2を切断し、前記円形状縫目3と同心円となる円形穴4を設ける。この際、前記円形状縫目3の縫い代(X)が5mm未満となるように前記円形穴4を設ける。
【0017】
‐反転工程(
図4参照)‐
前記反転工程では、前記円形穴4を通じて、前記当て布2を前記布地1の他面側に反転させ、前記布地1の他面と前記当て布2の他面とが面するように配置する。この工程によって、前記円形状縫目3とほぼ同径の開口部10が形成される。なお、本発明方法においては、この反転工程の実行後に、前記開口部10の周囲にアイロンをかけることが好ましい。
【0018】
‐第二縫合工程(
図5参照)‐
前第二縫合工程では、前記円形状縫目3の外縁を縫合(図中、縫合線5にて示す。)する。この際、前記布地1の他面と前記当て布2の他面との間に挟まれた前記縫い代(X)より外側の部分を縫合する。なお、本発明方法においては、前記第二縫合工程の実行後、更に、前記当て布2の外縁を前記布地1に対して縫合(
図1(縫合線6)参照)することが好ましい。
【0019】
前記各工程を経て前記布地1に前記開口部10を設ける本発明方法は、
図6に示すように、例えば、作業服の布地1にファンFを取り付けるための開口部10を設ける手段として好適に利用される。
【0020】
そして、本発明方法によれば、原則として、前記切断工程における前記円形穴4を設ける作業時以外に、前記布地1や前記当て布2を切断する作業が不要となるため作業工程が簡単となる。
【0021】
又、本発明方法によれば、前記切断工程の実行時に、前記円形状縫目3の縫い代(X)が5mm未満(好ましくは、1〜4mmの範囲内)となるように前記円形穴4を設けることによって、前記縫い代(X)の代幅ができるだけ狭くなるようにしているから、前記布地1に設けられる前記開口部10の周縁にしわが生じ難くなる。
【0022】
更に、本発明方法によれば、前記第二縫合工程において、前記布地1の他面と前記当て布2の他面との間に挟まれた前記縫い代(X)より外側の部分を縫合しているから、前記縫い代(X)の自由度が高く、当該部分がつれたりよれたりし難くなる。
【0023】
[実施形態2]
<本発明方法>
図7〜
図11に、実施形態2に係る本発明方法の各工程を示す。本発明方法は、補強シート固定工程と、第一縫合工程と、切断工程と、反転工程と、第二縫合工程と、を実行する。
【0024】
‐補強シート固定工程(
図7参照)‐
前記補強シート固定工程では、前記当て布2の他面に円環状の補強シート7を固定する。本発明方法において、前記補強シート7の素材、及び、固定手段は特に限定されない。本実施形態においては、前記補強シート7として、ネクタイの芯地として用いられる柔軟な繊維シートを円環状に打ち抜いたものを用い、いわゆるアイロンプリントの手段によって前記当て布2に固定した。
【0025】
‐第一縫合工程(
図8参照)‐
前記第一縫合工程では、前記布地1の一面に当て布2の一面をあてがい、前記布地1と前記当て布2とを円形の縫い目で縫合することによって円形状縫目3を設ける。本実施形態においては、前記補強シート7の内縁に沿って前記円形状縫目3を設けた。
【0026】
‐切断工程(
図9参照)‐
前記切断工程では、前記円形状縫目3の内縁に沿って、前記円形状縫目3の内側に存する前記布地1及び前記当て布2を切断し、前記円形状縫目3と同心円となる円形穴4を設ける。この際、前記円形状縫目3の縫い代(X)が5mm未満となるように前記円形穴4を設ける。
【0027】
‐反転工程(
図10参照)‐
前記反転工程では、前記円形穴4を通じて、前記当て布2を前記布地1の他面側に反転させ、前記布地1の他面と前記当て布2の他面とが面するように配置する。この際、前記当て布2と共に前記補強シート7も前記布地1の他面側に反転させる。
【0028】
‐第二縫合工程(
図11参照)‐
前第二縫合工程では、前記円形状縫目3の外縁を縫合(図中、縫合線5にて示す。)する。本実施形態においては、前記補強シート7と共に前記円形状縫目3の外縁を縫合した。
【0029】
前記各工程を経て前記布地1に前記開口部10を設ける本発明方法によれば、前記開口部10の周縁を前記補強シート7によって補強することができる。
【0030】
その余は、前記実施形態1と同様であることから、繰り返しの説明を避けるべく、ここでは説明を省略する。
【0031】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明方法は、作業服等に、ファンを取り付けるための開口部を設ける手段として好適に利用される。
【符号の説明】
【0033】
1 布地
2 当て布
3 円形状縫目
4 円形穴
5 縫合線
6 縫合線
7 補強シート
10 開口部
X 縫い代
F ファン
【要約】
【課題】本発明は、簡単な工程によって布地に円形の開口部を設けることができる新規な縫製方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の縫製方法は、布地1と当て布2とを円形の縫い目で縫合することによって円形状縫目3を設ける第一縫合工程と、前記円形状縫目3の内縁に沿って、円形穴4を設ける切断工程と、前記円形穴4を通じて、前記当て布2を前記布地1の他面側に反転させる反転工程と、前記円形状縫目3の外縁を縫合する第二縫合工程と、を実行し、前記切断工程の実行時に、前記円形状縫目3の縫い代(X)が5mm未満となるように前記円形穴4を設け、前記第二縫合工程の実行時に、前記縫い代(X)より外側の部分を縫合する
【選択図】
図1