特許第6230075号(P6230075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230075
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】軌条車両
(51)【国際特許分類】
   B61F 3/12 20060101AFI20171106BHJP
   B61D 13/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B61F3/12
   B61D13/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-514548(P2015-514548)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公表番号】特表2015-522462(P2015-522462A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】FI2013050596
(87)【国際公開番号】WO2013182746
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】20125604
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】514307187
【氏名又は名称】ヘルシンギン カウプンギン リーケンネライトス−リーケライトス
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッキラー オリ ペッカ
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306156(JP,A)
【文献】 特開2004−249894(JP,A)
【文献】 特開平11−334590(JP,A)
【文献】 特開2010−188964(JP,A)
【文献】 特開2009−173225(JP,A)
【文献】 特開2009−120091(JP,A)
【文献】 特開2008−062680(JP,A)
【文献】 特開2007−331461(JP,A)
【文献】 特開2002−019609(JP,A)
【文献】 特開昭60−146751(JP,A)
【文献】 特開昭55−008928(JP,A)
【文献】 米国特許第05640910(US,A)
【文献】 米国特許第05860667(US,A)
【文献】 米国特許第04235451(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 3/00− 5/48
B61D 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結客車(3)を有し、該連結客車(3)が2つの客車ユニット(1、2、11、12、13)の間に連結されてこれらの客車ユニットを支持しかつ連結客車(3)自体の台車ユニット(6)上に支持されている構成の軌条車両、より詳しくは低床路面電車において、前記連結客車(3)が、1つの支点(T)の回りの水平平面内で実質的に自由にピボット回転するようにその台車ユニット(6)上に支持され、前記連結客車(3)とこれに連結された両客車ユニット(1、2、11、12、13)との間には、連結された両客車ユニット(1、2、11、12、13)と連結客車(3)との間の水平旋回角(α、β)の大きさをほぼ等しく維持する装置(7、70)が配置されており、
前記水平旋回角(α、β)の大きさをほぼ等しく維持する装置は、一方の客車ユニット(1、11、12)に関節連結された第1バー(8)と、他方の客車ユニット(2、11、13)に関節連結された第2バー(9)と、連結客車(3)にピボット回転可能に取付けられたアイドラ(10)とを備えたレバー機構(7)からなり、第1バー(8)および第2バー(9)は、アイドラ(10)の支点(A)から選択された距離において支点(A)の両側に関節連結され、第1バー(8)および第2バー(9)並びにアイドラ(10)は、軌条車両の長手方向垂直中心平面(B)に関して軌条車両の同じ側に位置していることを特徴とする軌条車両。
【請求項2】
前記第1バー(8)および第2バー(9)は長さが異なっており、アイドラ(10)は、連結車両(3)の台車ユニット(6)の支点の前側または後側でピボット回転可能に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の軌条車両。
【請求項3】
前記第1バー(8)および第2バー(9)は長さが等しく、アイドラ(10)は連結客車(3)の台車ユニット(6)の支点に隣接してピボット回転可能に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の軌条車両。
【請求項4】
無台車の客車ユニットは連結客車(3)の両側に支持され、台車付の客車ユニットは無台車の客車ユニットに連結されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の軌条車両。
【請求項5】
前記連結客車(3)は、台車(4、5)付の客車ユニット(1、2、12、13)に連結されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の軌条車両。
【請求項6】
前記2つの連結客車(3)の間に無台車の客車ユニット(11)が支持され、前記連結客車(3)の他端部が台車付の客車ユニット(1、2)に連結され、これらの台車付の客車ユニット(1、2)後ろに、台車付の客車ユニットおよび/または無台車の客車ユニットを更に連結できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の軌条車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結客車(connecting car)を有し、該連結客車が2つの客車ユニットの間に配置されてこれらの客車ユニットを支持しかつ自らの台車上に支持された構成の軌条車両、より詳しくは低床路面電車(トラム)に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての台車付客車に、客車に対して旋回しない固定台車、または回転方向にごく僅かなフレキシビリティを有する台車(以下、これらの台車も「固定台車」と呼ぶ)が設けられ、このため、単一客車に大きい横加速度を引き起こす路面電車の解決策は知られている。
【0003】
或る路面電車では、中央の客車セクション(連結客車)に1つの固定台車が設けられており、この連結客車に連結される客車ユニットの各々には、1つの支点の回りでピボット回転できる台車が設けられている。
【0004】
全ての台車が1つの支点の回りをピボット回転する台車であり、このため、連結客車には2つの台車が設けられておりかつ端末客車の各々に1つの台車が設けられている構成の路面電車の解決策も使用されている。この解決策の問題点は、客車の長さが制限されることおよび組合せの長さに対して多くの台車を要することである。
【0005】
2つの支点をもつ2つの台車を有する構造も実施されており、この構造では、連続して連結された客車は前記支点でピボット回転できかつ組合せの端末客車には1つの支点の回りでピボット回転する台車が設けられている。
【0006】
例えば2つの固定台車と、1つの支点を有しかつ他方の台車よりも高い位置に配置された種々の台車の組合せとを備えたハイブリッド構造も存在し、このハイブリッド構造の場合の問題点は、種々の形式の複数の台車が必要であることおよび該台車のために乗客キャビン内に階段構造が必要になることである。
【0007】
客車を相互連結する上記台車の幾つかは、軌条車両と組合わされてヤコブ型台車と呼ばれる台車であり、該台車には、連続する客車が支持されかつ関節連結される。ヤコブ型台車は、該台車が1つの支点のみの回りでピボット回転するように、別々の支点を介してまたは客車を互いに関節連結する中間ボディ(連結客車または関節連結セクション)を介して相互連結客車に直接固定される。上記状況において、客車のボディ物品を一体にシールするベローズを含む台車構造は、垂直方向に多くの空間を必要とする。
【0008】
1つの支点の回りでピボット回転するヤコブ型台車は、低床路面電車でも長所を有しているが、ヤコブ型台車を適当な態様で低床路面電車に組込むことは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、上記問題点を解決することにある。この目的は、連結客車が、1つの支点の回りの水平平面内で実質的に自由にピボット回転するようにその台車ユニット上に支持され、前記連結客車とこれに連結された両客車ユニットとの間には、連結された両客車ユニットと連結客車との間の水平旋回角の大きさをほぼ等しく維持する装置が配置されていることを主な特徴とする本発明の軌条車両により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
好ましくは、水平旋回角の大きさをほぼ等しく維持する前記装置は、一方の客車ユニットに関節連結された第1バーと、他方の客車ユニットに関節連結された第2バーと、連結客車にピボット回転可能に取付けられたアイドラとを備えたレバー機構からなり、第1バーおよび第2バーは、アイドラの支点から選択された距離において支点の両側に関節連結され、第1バーおよび第2バー並びにアイドラは、軌条車両の長手方向垂直中心平面に関して軌条車両の同じ側に位置している。
【0011】
したがって、本発明の上記好ましい実施形態は、レバー機構が、1つの支点の回りを自由にピボット回転する台車に取付けられた2つの長い客車モジュールの角度および短い客車モジュールの角度を等しい大きさの角度に分割するように、レバー機構を取付けることに基づいている。このレバー機構は、例えば、いわゆるワット機構(Watt mechanism)で構成できる。
【0012】
旋回角の大きさを等しく維持する前記装置は、機械的、油圧的、空気圧的、電気機械的態様等の他の態様で実施することもできる。重要な事は、前記装置が、台車上で自由にピボット回転する連結客車の水平角度の大きさを、該連結客車の前および後の客車ユニットに対して等しく維持することである。
【0013】
本発明のこれらの実施形態および他の好ましい実施形態は、特許請求の範囲の記載の実施態様項に記載されている。
【0014】
2つの支点をもつ台車構造の使用およびピボット回転しない台車構造の使用と比較して、本発明による1つの支点をもつ台車構造の使用に関する解決策は、台車構造および実際の客車構造の両方における、より小さい横方向力および横加速度の達成を可能にする。横方向力および横加速度が小さくなればなる程、より軽量で長寿命の客車構造が可能となり、このことは、製造コスト、メインテナンスコストおよびエネルギコストをかなり節約できることを意味する。また、ホイールに作用する横方向力が小さくなると、ホイールのフランジおよび軌条湾曲部の摩耗および亀裂が低減され、これはメインテナンスコストのかなりの節約を意味する。同時に、脱線の危険性が低減されかつ乗客の快適性が向上する。全部が同じ形式の台車を備えた軌条車両を提供することにより、設計コスト、製造コスト、スペア部品コスト並びに客車および鉄道軌条メインテナンスコストの節約が達成される。本発明はまた、より小さい街路スペースでの鉄道軌条の敷設を可能にする。なぜならば、旋回台車のため、実際の鉄道カーブよりも小さい広がりの移行カーブ(クロソイド)で充分だからである。
【0015】
以下、添付図面を参照しかつ幾つかの好ましい実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】2つの客車ユニットおよびこれらの間の1つの連結客車が設けられた路面電車を示すものである。
図2】カーブでの図1の路面電車を示すものである。
図3】無台車の客車ユニットが2つの連結客車の間に支持されかつ台車付の客車ユニットが連結客車の他端部に連結されている路面電車を示すものである。
図4】2つの台車付の客車ユニットが連結客車の両側に連結された路面電車を示すものである。
図5図1の路面電車の変更形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2は、2つの客車ユニット1、2と、これらの客車ユニットの間に配置されてこれらの客車ユニットを支持する連結客車3とを有する低床路面電車を示す。客車ユニット1、2には台車4、5が設けられかつ連結客車3には台車6が設けられており、連結客車3は、その中心で台車6上に支持され、1つの支点Tの回りの水平平面内で実質的に自由にピボット回転できるようになっている。また、連結客車3とこれに連結された客車ユニット1、2との間には、連結された両客車ユニット1、2と連結客車3との間の水平旋回角α、βの大きさがほぼ等しくなるように維持する装置7が配置されている。
【0018】
旋回角α、βの大きさが等しくなるように維持する装置はレバー機構7からなり、該レバー機構7は、客車ユニット1に関節連結された第1バーと、他の客車ユニット2に関節連結された第2バー9と、アイドラ10とを有している。この例では、アイドラ10は、水平平面内(もちろん、垂直平面内でもよい)で調節可能(tumably)に連結客車3にピボット連結されている。第1バー8および第2バー9は、支点Aから選択された距離において、支点Aに関してアイドラ10の両側に関節連結されており、これにより、第1バー8および第2バー9並びにアイドラ10は、軌条車両の長手方向垂直中心平面Bに関して軌条車両の同じ側に位置している。この例では、第1バー8および第2バー9は長さが異なっており、アイドラ10は、連結客車3の長手方向で見て、連結客車3の台車6の支点Tに関して一方の側にピボット連結されている。レバー機構7は、例えば、客車1、2、3の下側構造体に固定できる。もちろん、レバー機構9は、側方から見て、第1バー8および第2バー9の長さが等しくかつアイドラ10が連結客車3の台車6の支点Tに隣接してピボット連結されるように構成することもできる。
【0019】
図2から、カーブ走行状況において、客車ユニット1と連結客車3との間の角度αの大きさと、客車ユニット2と連結客車3との間の角度βの大きさとを等しくするレバー機構7が、従来技術に比べてかなり優れた上記長所をいかにして達成可能にするかが理解されよう。
【0020】
図3には、本発明による路面電車の他の実施形態が示されている。この実施形態では、無台車の客車ユニット11が2つの連結客車3の間に支持されていると同時に、連結客車3の他端部には、図1および図2の客車ユニットと同様に台車付の客車ユニット1、2が連結されている。連結客車3と客車ユニット1、2、11との間のレバー機構7は、図1および図2に示したレバー機構と同じであり、もちろん、図1および図2におけるように客車1、2、3、11同士の旋回角を案内する。
【0021】
図4は本発明による路面電車の更に別の実施形態を示し、この実施形態では、連結客車3の各側に2つの台車付の客車ユニット1、12および2、13が連結されている。この場合、端末客車1、2は、前の図面に示した端末客車1、2と同じである。
【0022】
旋回角α、βの大きさをほぼ等しく維持する装置は、上記レバー機構7以外の態様で実施することもできる。図5にはこのような例の1つが示されており、この例では、旋回角の大きさを等しく維持する装置70は、連結客車3と該連結客車3に連結された客車ユニット1、2との間に取付けられた油圧シリンダまたは空気圧シリンダ80、90からなり、連結客車3の前部に配置されたシリンダ80および連結客車3の後部に配置されたシリンダ90は、軌条車両の長手方向垂直中心平面Bに関して互いに反対側に配置されている。シリンダ80、90の代わりに、旋回角を制御された態様で制御する多くの変更形態の1つとして、電気機械装置を使用することもできる。作動を確実なものとするため、両側により多くのシリンダ80、90を設けることもできる。
【0023】
本発明の上記説明は、本発明による基本的概念を示すことを意図したものに過ぎない。したがって、当業者ならば、特許請求の範囲内でその細部を変更し得るであろう。例えば、相互連結する客車の数は、本発明により定められた限度内で必要に応じて変えることができ、かつ上記変更形態とは異ならせることができる。また本発明は、例えば高速路面車両等のような、路面電車以外の軌条車両にも適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1,2 客車ユニット
3 連結客車
4、5、6 台車
7、70 水平旋回角をほぼ等しく維持する装置(レバー機構)
8 第1バー
9 第2バー
10 アイドラ
11 無台車の客車ユニット
12 台車付の客車ユニット
80、90 油圧シリンダ(または空気圧シリンダ)
A 支点
B 長手方向中心平面
T 支点
α、β 旋回角
図1
図2
図3
図4
図5