特許第6230077号(P6230077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6230077光ファイバーラマン分光法を利用する内視鏡検査でのリアルタイム癌診断に関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230077
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】光ファイバーラマン分光法を利用する内視鏡検査でのリアルタイム癌診断に関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20171106BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20171106BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A61B1/00 511
   A61B1/00 510
   A61B1/00 630
   G01N21/65
   G01N21/27 B
【請求項の数】16
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2015-520131(P2015-520131)
(86)(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公表番号】特表2015-526135(P2015-526135A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】SG2013000273
(87)【国際公開番号】WO2014007759
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】61/667,384
(32)【優先日】2012年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1307338.2
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジーウェイ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】ケック・ユー・ホー
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・シルヴェスト・バーグホルト
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ジェン
(72)【発明者】
【氏名】カイ・グアン・ヨー
(72)【発明者】
【氏名】シヤマラ・デュライパンディアン
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05850623(US,A)
【文献】 米国特許第06621574(US,B1)
【文献】 特表2005−522293(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0191398(US,A1)
【文献】 特表2013−514520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0259229(US,A1)
【文献】 特開平09−145619(JP,A)
【文献】 特表2009−539063(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0015829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G01N 21/27
G01N 21/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーラマン分光システムを較正する方法であって、該システムは、レーザー光源と、分光器と、該レーザー光源からの光をターゲットに伝送させ、そして該分光器に散乱光を戻すために該光ファイバーラマン分光システムに連結できる複数の光ファイバープローブとを備え、該方法は、該複数の光ファイバープローブのそれぞれのために該レーザー光源からの光を既知のスペクトルを有する基準ターゲットに伝送し、該基準ターゲットからの散乱光の較正スペクトルを記録し、該既知のスペクトルと該較正スペクトルとを比較し、そして伝達関数を生成し、そして該伝達関数を記憶させ、それによって該光ファイバープローブと該生成された伝達関数とを関連づけることを含む方法。
【請求項2】
その後に前記複数の光ファイバープローブ内の選択された光ファイバープローブを使用して試験対象に照射し、該試験対象に照射しながらスペクトルを記録し、そして該選択された光ファイバープローブと関連付けられた前記記憶された伝達関数に従ってスペクトルを補正するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分光器が関連する分光伝達関数を有し、前記プローブが関連するプローブ伝達関数を有し、該伝達関数は、分光器の伝達関数及びプローブ伝達関数の関数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
一次分光器システムで、一次光ファイバープローブにより第1伝達関数のそれぞれを算出し、二次光ファイバープローブで第2伝達関数を算出し、そして、該第1伝達関数及び第2伝達関数に基づいて較正関数を算出することを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
較正関数を二次光ファイバープローブと関連付けることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
二次分光計システムで、一次光ファイバープローブを使用し、二次システム伝達関数を生成し、そして二次システム伝達関数を記憶することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
二次光ファイバープローブを二次分光計システムと共に使用し、そして較正関数に従って、記憶された二次システム伝達関数を修正することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
一次分光計システムに従って二次分光計システムの波長軸較正を実行する初期ステップを含む、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
複数の光ファイバーラマン分光システム内の光ファイバーラマン分光システムを動作させる方法であって、該複数の光ファイバーラマン分光システムは、マスター分光器及びレーザー光源を有するマスターラマン分光システムと、該マスター分光器とは異なる対応する二次分光器及びレーザー光源を有する少なくとも1個の二次ラマン分光システムとを備え、該マスターラマン分光システムは、一次光ファイバープローブ及び/又は複数の二次光ファイバープローブに連結でき、該二次ラマン分光システムは、該一次光ファイバープローブ及び/又は該複数の二次光ファイバープローブに連結でき、該方法は、
(A)既知のスペクトルを有する標準的な光源を与え、
(B)該二次ラマン分光システムについて、該マスターラマン分光システムのマスター分光器に対するその二次分光器の波長軸較正を実行し、
(C)該二次ラマン分光システムについて第1較正プロセスを実行し、該第1較正プロセスは、
(i)複数の伝達関数を決定し、該複数の伝達関数は該二次ラマン分光システムに連結された、選択された二次光ファイバープローブに相当し、該複数の伝達関数は、該選択された二次光ファイバープローブが該二次ラマン分光システムに連結される間に該既知のスペクトルと得られた測定較正スペクトルとの数学的関係を確立し;及び
(ii)該選択された二次光ファイバープローブとそれについて決定された伝達関数とを関連付けることを含み;
又は
(D)第2較正プロセスを実行し、該第2較正プロセスは、
(i)該二次ラマン分光システムについて
(a)該二次ラマン分光システムに相当するシステム伝達関数を決定すると同時に、該一次光ファイバープローブを該標準的な光源から受け取った散乱光の較正スペクトルの測定中に該二次ラマン分光システムに連結させ;及び
(b)該二次ラマン分光システムとそれについて決定された該システム伝達関数とを関連付けることを含み;及び
(E)該二次光ファイバープローブについて
(i)該二次光ファイバープローブについて較正関数を決定し、該較正関数は、該標準的な光源から取得した散乱光のスペクトルの測定中に該マスターラマン分光システムに連結した該二次光ファイバープローブに相当し;及び
(ii)該二次光ファイバープローブとそれについて決定された該較正関数とを関連付けること
を含む方法。
【請求項10】
前記複数の二次光ファイバープローブが選択された二次ラマン分光システム用の複数の予備プローブを備え、前記第1較正プロセスを該選択された二次ラマン分光システムについて実行して該予備プローブのそれぞれに相当する伝達関数を決定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2較正プロセスを、任意の複数の二次光ファイバープローブを任意の数の二次ラマン分光システムに一致させるように実行し、それによって異なる二次ラマン分光システム及び異なる二次光ファイバープローブを使用して取り込まれたスペクトルが調和しかつ同等になるようにする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
レーザー光源と、分光器と、ラマン分光システムに連結できる複数の光ファイバープローブであって、該複数の光ファイバープローブのそれぞれが、該ラマン分光システムに連結されたときに該レーザー光源からの光をターゲットに伝送させかつ散乱光を該分光器に戻すように構成されるものと、複数の記憶された伝達関数であってそれぞれが該複数の光ファイバープローブの一つに相当するものと、該システムが該複数の光ファイバープローブの選択された一つを使用して該レーザー光源からの光を既知のスペクトルを有するターゲットに伝送させ、該ターゲットからの散乱光のスペクトルを記録し、そして該選択された光ファイバープローブに相当する該記憶された伝達関数に従って該記録されたスペクトルを変更するように動作可能であるようにプログラム命令を実行するように構成されたプロセッサを有するコンピュータとを備えるラマン分光システム。
【請求項13】
前記記憶された伝達関数が前記分光器及び前記選択された光ファイバープローブに相当する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記記憶された伝達関数が前記分光器及び前記選択された光ファイバープローブとは異なる一次光ファイバープローブに相当し、しかも、前記コンピュータは、前記システムが該選択された光ファイバープローブに関連付けられた記憶較正関数に従って該記憶された伝達関数を修正するように動作可能であるようにプログラム命令を実行するようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記レーザー光源からの光を複数のターゲットに伝送させ、それぞれのターゲットについて、該レーザー光源からの光の伝送力及び前記散乱光の取得したスペクトルを前記分光器で測定し、従属変数として該測定された伝送力により該取得スペクトルの多変量解析を実行し、そしてレーザーパワーの得られたモデルを該取得スペクトルのスペクトル特性の関数として記憶することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
試験ターゲットにレーザー光を伝送し、取得したスペクトルをモデルに送り、そして、伝送力の推定値を算出するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年7月2日に出願された米国仮出願61/667384号及び2013年4月23日に出願された英国特許出願第1307338.2号の利益を主張する。これらの両方を、全ての目的のためにその全体を引用により含める。
【0002】
分野
本発明は、光ファイバーラマン分光法での定量分析のための独立した測定用の内視鏡及び機器でのリアルタイム癌診断のためのオンライン生物医学的分光ソフトウェアプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ラマン分光法は単色光の非弾性又はラマン散乱を使用する技術である。従来から、単色光源は、可視又は近赤外(「NIR」)領域内のレーザーである。散乱光子のエネルギーは、照射された材料における振動モード又は励起との相互作用に応答して、シフトアップ又はシフトダウンし、散乱光子の波長を変化させる。したがって、散乱光のスペクトルは、散乱物質に関する情報を提供することができる。
【0004】
NIRラマン分光法は、多数の器官における生体内での前癌性及び癌性の細胞及び組織の特徴付け及び診断の可能な潜在技術として知られている。この技術は、非侵襲的又は低侵襲性であることができ、生検又は他の組織除去を必要としないときに望ましい。2つの波長領域でのNIRラマン分光法を使用することが知られている。第1のものは、800〜1800-1の波数のいわゆるフィンガープリント(「FP」)範囲である。これは、非常に特異的な二分子、例えば、組織性状及び診断のためのこのスペクトル領域に包含されるタンパク質、DNA及び脂質内容物の豊富な情報のためである。この波長範囲の不利益は、一般的に使用される785nmレーザー光源を使用した場合、強力な組織自己蛍光バックグラウンドシグナルを生成する可能性があることである。さらに、プローブが光ファイバーを使用する場合には、ラマン信号は、光ファイバー内の溶融シリカから散乱される。特に電荷結合素子(「CCD」)を使用して散乱スペクトルを測定する場合、自己蛍光信号は、CCDを飽和させ、かつ、この波長範囲において本来的に非常に弱いラマンシグナルの検出を妨害する。
【0005】
技術としての光ファイバーラマン分光法の別の問題は、機器の標準化の問題である。光ファイバーラマン分光法は、主として、単一のシステムに限定されており、多施設臨床試験又は日常的な医療診断に移転するための試みは何ら行われてこなかった。これは、主として、ラマン分光計機器が一般に類似しておらず(すなわち、光学部品、応答関数、アライメント、スループットなど)、しかも一般に非常に異なるラマンスペクトルを生成するからである。さらに、光ファイバーラマンプローブは、寿命が限られているため、定期的に置換又は交換しなければならない。残念ながら、様々な光ファイバープローブを用いて得られたラマンデータを比較することはできない。というのは、それぞれの光ファイバープローブは、その独自の背景を持つのみならず、異なる透過スペクトル特性とも関連するからである。異なる透過特性は、スペクトル強度を有意に歪ませ、異なる光ファイバープローブを用いて得られた組織ラマンスペクトルを比較できないものにする。その結果、一次臨床プラットフォームで開発された多変量診断アルゴリズムは、二次臨床プラットフォームには適用できない。特に、組織ラマン強度の定量的測定は、光ファイバーラマン生物医学用途における最も困難な問題の一つである。機器/ファイバープローブに依存しない強度較正及び標準化は、生物医学における光ファイバーラマン分光法のグローバルな利用の実現に不可欠である。この理由のため、「マスター」プローブを使用して構築された多変量統計的診断モデルは、「スレーブ」プローブで測定されたスペクトルには適用できない。ラマン技術が世界規模での癌スクリーニングのための広範なツールになるためには、特に生物医学的用途のためのラマン分光計と光ファイバープローブとの両方を標準化する必要がある。報告された研究のほとんどは、光ファイバープローブなしの単純な化学的混合物の測定のための相互ラマン分光計の標準化に焦点を当てている。一般に、単純な化学的混合物のラマン分光法は、異種生物学的組織サンプルの光ファイバーラマン分光法とは比較できない。
【0006】
機器にわたって結果を標準化する別の問題は、帯域通過フィルタ力に関連するスペクトル変動の問題である。従来から、一般的なスペクトル形状を保持するが、ただしこれが絶対的な定量分光特性を除去するラマンスペクトルが正規化されている。例えばファイバーの先端にダイヤモンドを埋め込む又は基準としてレーザー光路中に重合体キャップを配置することによって光ファイバーラマンプローブで送達レーザパワーを監視しようとすることが知られている。しかしながら、これらの解決策は満足できるものではなく、必要なスペクトル領域で干渉を引き起こすことがある。
【0007】
癌及び前癌状態の生体内診断用の光学分光技術(反射蛍光及びラマン含む)を使用する際のさらなる問題は、データ分析が主として後処理及びオフラインアルゴリズム開発に制限されることである。これは、内視鏡分析についても同様である。というのは内視鏡検査中に収集された多数のスペクトルは異常値だからである。内視鏡検査のためのリアルタイム診断を可能にするシステムを獲得することが有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
第1の態様によれば、光ファイバーラマン分光システムを較正する方法を提供し、該システムは、レーザー光源と、分光器と、該レーザー光源からの光をターゲットに透過させかつ散乱光を該分光器に戻すための光ファイバープローブとを備え、該方法は、該レーザー光源からの光を既知のスペクトルを有する標準的なターゲットに透過させ、該標準的なターゲットからの散乱光の較正スペクトルを記録し、該既知のスペクトルと該較正システムとを比較して伝達関数を生成し、そして該伝達関数を記憶することを含む。
【0009】
この方法は、その後に試験対象に照射し、スペクトルを記録し、そして前記記憶された伝達関数に従ってスペクトルを補正する工程をさらに含むことができる。
【0010】
この方法は、複数の光ファイバープローブのそれぞれについて較正スペクトルを記録し、該プローブのそれぞれを含むシステムについて伝達関数を計算し、そして該伝達関数を対応するプローブと関連付けることを含むことができる。
【0011】
分光計は、関連する分光伝達関数を有し、プローブは関連するプローブ伝達関数を有し、該伝達関数は、該分光計伝達関数及び該プローブ伝達関数の関数であることができる。
【0012】
この方法は、一次分光計システムで、第1伝達関数を一次光ファイバープローブで計算し、第2伝達関数を第2光ファイバープローブで計算し、そして該第1伝達関数及び第2伝達関数に基づいて(プローブ間)較正関数を計算することを含むことができる。
【0013】
この方法は、較正関数を二次光ファイバープローブと関連付けることを含むことができる。
【0014】
この方法は、二次分光器システムで、一次光ファイバープローブを使用し、二次システム伝達関数を生成、そして二次システム伝達関数を保存することを含むことができる。
【0015】
この方法は、二次光ファイバープローブを二次分光器システムと共に使用し、較正関数に従って保存二次システム伝達関数を変更することを含むことができる。
【0016】
この方法は、一次分光計システムに従って二次分光計システムの波長軸較正を実行する初期工程を含むことができる。
【0017】
第2の態様によれば、ラマン分光システムを動作させる方法が提供され、該システムは、レーザー光源と、分光器と、該レーザー光源からの光をターゲットに透過させかつ散乱光を該分光器に戻すための光ファイバープローブとを備え、この方法は、レーザー光源からの光を既知のスペクトルを有するターゲットに透過させ、該ターゲットからの散乱光のスペクトルを記録し、そして該記録されたスペクトルを記憶された伝達関数に従って変更することを含む。
【0018】
記憶された伝達関数を分析計及び光ファイバープローブに関連付けることができる。
【0019】
記憶された伝達関数を分光計及び一次光ファイバープローブに関連付けることができ、本方法は、記憶された伝達関数を該光ファイバープローブに関連付けられた記憶較正関数に従って変更することを含むことができる。
【0020】
第3の態様によれば、レーザー光源と、分光器と、該レーザー光源からの光をターゲットに透過させかつ散乱光を該分光器に戻すための光ファイバープローブと、記憶された伝達関数とを備えるラマン分光システムを提供し、このシステムは、該レーザー光源からの光を既知のスペクトルを有するターゲットに透過させ、該ターゲットからの散乱光のスペクトルを記録し、そして該記憶された伝達関数に従って該記録されたスペクトルを変更するように動作可能である。
【0021】
記憶された伝達関数を分光計及び光ファイバープローブに関連付けることができる。
【0022】
記憶された伝達関数を分光計及び一次光ファイバープローブに関連付けることができ、本方法は、該記憶された伝達関数を光ファイバープローブに関連付けられた記憶較正関数に従って変更することをさらに含むことができる。
【0023】
第4の態様によれば、ラマン分光システムで伝送されるレーザパワーを推定する方法が提供され、該システムは、レーザー光源と、分光器と、該レーザー光源からの光をターゲットに透過させかつ散乱光を該分光器に戻すための光ファイバープローブとを備え、該方法は、レーザー光源からの光を複数のターゲットに透過させ、ターゲットごとにレーザー光源からの光の透過力及び分光器での散乱光のスペクトルを測定し、従属変数としての測定伝送力により、取り込まれたスペクトルの多変量解析を実行し、そして得られたモデルを保存することを含む。
【0024】
該方法は、テストターゲットにレーザー光を伝送し、取り込まれたスペクトルをモデルに供給し、該伝送力の推定値を計算する工程を含むことができる。
【0025】
第5の態様によれば、光ファイバープローブを有する光ファイバーラマン分光システムからのバックグラウンドシグナルを減じる方法を提供し、該方法は次の工程を含む:(a)バックグラウンドスペクトルを保存し、(b)試験スペクトルを受信し、(c)1以上の基準ピークを使用してバックグラウンドの寄与を推定し、(d)推定されたバックグラウンドの貢献に基づいて補正係数によりバックグラウンドスペクトルを乗算し、そしてこれを試験スペクトルから減じ、(e)残りのバックグラウンドの寄与についての試験スペクトルを確認し、そして(f)該バックグラウンドの寄与が無視できる程度である場合には該試験スペクトルを出力し、そうでなければ工程(c)から(e)を繰り返すこと。
【0026】
1以上の基準ピークは、光ファイバープローブ中にシリカ又はサファイアに相当する1以上のピークを含むことができる。
【0027】
第6の態様によれば、内視鏡検査の間にラマン分光法を使用するリアルタイム診断のためコンピュータ実行方法を提供する。この方法は、組織に関連付けられた少なくとも1つのスペクトルを受信し;該スペクトルを使用するモデルにおいて該少なくとも1つのスペクトルを分析してスコアを決定し、ここで、該スコアは、組織が癌性である可能性を示し;そしてスコアを出力することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、モデルは、部分最小二乗−判別分析、主成分分析、線形判別分析、蟻コロニー最適化線形判別分析、分類及び回帰ツリー、サポートベクターマシン及び適応ブースティングよりなる群から選択される解釈機能を使用して生成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのスペクトルは、ラマン分光法によって生成される。モデル内で少なくとも1つのスペクトルを分析することは、第1モデル及び第2モデルにおいて少なくとも1つのスペクトルを分析することを含むことができる。いくつかの実施形態では、モデルは、分析された組織に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、スコアは、組織が正常か、腸上皮化生か、異形成か又は新生物かどうかを示す。
【0030】
いくつかの態様において、少なくとも1つのスペクトルを分析することは、異常値分析を実行し、そして該異常値分析に応答して、少なくとも1つのスペクトルが異常値であることを決定し、該スペクトルを拒否することを含む。異常値の分析を実行することは、主成分分析を含むことができる。
【0031】
いくつかの態様では、音声発信装置は、少なくとも1のスペクトルが異常値であることを決定する異常値分析に応じて音声信号を発する。スペクトルが異常値であるという決定に応じて、方法は、分析のためにシステムによって受信される少なくとも1の追加のスペクトルを取得するよう分光器に指示する。
【0032】
いくつかの実施形態では、音声発信装置は、組織を正常、異形成又は新生物と識別する音声信号を発信する。いくつかの実施形態では、各診断に関連した音声信号は異なり、また異常値スペクトルの決定に関連する音声信号とも異なる。
【0033】
いくつかの実施形態では、診断は、内視鏡手術の間に行われる。
【0034】
また、コンピュータ実行方法を実施するためのシステムのみならず、コンピュータ実行方法を実行するためにそれに関する指示による非一時的コンピュータ読み取り可能媒体も提供する。
【0035】
開示されたシステム及び方法の実施形態を、添付の図面を参照して単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、一実施形態によるラマン分光システムの概略図である。図1aは、図1の内視鏡の端部のより大きなスケールでの図である。図1bは、図1aの内視鏡のラマンプローブをさらに詳細に示す図である。
図2図2は、測定された蛍光スペクトルと参照標準との比較を示すグラフである。較正機能も示されている。
図3図3は、第1較正方法の概略図である。
図4図4aは、第1較正方法で使用するための第1処理を示すフローチャートである。図4bは、第1較正方法で使用するための第2方法の第1部分を示すフローチャートである。図4cは、第1較正方法で使用するための第2方法の第2部分を示すフローチャートである。
図5図5は、一次分光器及び二次分光器のうちアルゴン/水銀ランプの波長配置を示すグラフである。
図6図6は、第2較正方法を使用した一次分光器及び二次分光器のスペクトル較正を示すグラフである。
図7図7aは、第1較正方法で使用するための第1方法を示すフローチャートである。図7bは、第2較正方法で使用するための第2方法の第1部分を示すフローチャートである。図7cは、第2較正方法で使用するための第2方法の第2部分を示すフローチャートである。
図8図8は、マスター及びスレーブプローブ並びにプローブ較正伝達関数で測定された蛍光基準を示すグラフである。
図9図9Aは、未較正一次及び二次分光計とそれぞれマスター及びスレーブプローブとを比較する組織ラマンスペクトルのグラフである。図9Bは、第1較正方法を使用した再較正後におけるそれぞれマスター及びスレーブプローブによる一次及び二次分光器からの組織のラマンスペクトルのグラフである。図9Cは、第2の較正方法を使用した再較正後におけるそれぞれマスター及びスレーブプローブによる一次及び二次分光器からのスペクトルを示すグラフである。
図10図10は、較正前後における胃からの生体内組織ラマンスペクトルについての主成分分析スコアの散布図である。
図11図11は、ラマンスペクトルにおけるファイバープローブによるバックグラウンドスペクトルピークを示すグラフである。
図12図12は、励起用レーザパワーによるラマンスペクトルの変化を示すグラフである。
図13図13Aは、レーザパワーを推定するためのモデルを生成する方法を示すフローチャートである。図13Bは、レーザパワーを推定する方法を示すフローチャートである。
図14A図14Aは、任意の数の含まれる潜在変数についての自乗平均平方根誤差を示すグラフである。
図14B図14Bは、図10の方法の潜在変数のための格納係数及び回帰係数を示している。
図15図15は、生体内試験被験体における予測レーザーパワーに対する測定レーザパワーを示すグラフである。
図16図16は、プローブバックグラウンドシグナルを減じる方法を示すフローチャートである。
図17図17は、パーム及び光ファイバーシリカ及びサファイアバックグラウンドから受信したスペクトルを示すグラフである。
図18図18は、図16のラマンスペクトルとバックグラウンド除去後のスペクトルとを比較したグラフである。
図19図19は、方法の組み合わせを示すフローチャートである。
図20図20は、一実施形態に係るリアルタイム癌診断のためのスペクトル取得及び処理フローのためのシステムのアーキテクチャ図である。
図21図21は、一実施形態によるリアルタイム癌診断のためのスペクトルの取得及び処理フローの概略を示すフローチャートである。
図22A図22Aは、2つの実施形態に係るリアルタイム癌診断のためのシステムを使用するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である。
図22B図22Bは、2つの実施形態に係るリアルタイム癌診断のためのシステムを使用するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である。
図23図23は、305胃患者から取得した正常(n=2465)及び癌(n=283)胃組織の生体内平均ラマンスペクトルである。
図24図24は、スペクトルトレーニングデータベースから計算された主成分(PC)負荷を示す。
図25図25は、2つの診断上重要なPCスコア(PC1 VS PC2)の散布プロットである。
図26図26は、10見込みの胃のサンプルから取得した105ラマンスペクトル(45正常、30癌、30異常値)のためのホテリングのT2対Q−残差を示す。
図27図27は、リーブ・ワン・スペクトラム・アウト・クロスバリデーション法と共にPLS−DAモデルに基づく見込みの正常(n=45)及び癌(n=30)胃組織に属する事後確率値の散布図である。
図28図28は、遡及的予測のためのスペクトルデータベースから計算された受信者動作特性(ROC)曲線のみならず、正常及び癌胃組織の見込み予測のためのROC曲線も示す。
図29図29は、様々な785nmの帯域通過フィルタパワー(すなわち、10、30及び60mW)を使用することによって内側リップの自家蛍光減算及び強度較正平均生体内組織ラマンスペクトル1±SDを示す。
図30図30aは、リーブ・ワン・サブジェクト・アウト・クロスバリデーション法並びにデータに対する線形適合に基づくPLS回帰モデルを使用した実際の帯域通過フィルタパワーと予測の帯域通過フィルタパワーとの関係を示す図である。図30bは、独立した検証に基づくPLS回帰分析を使用した実際の帯域通過フィルタパワーと予測帯域通過フィルタパワーとの関係を示す図である。
図31図31は、60mW帯域通過フィルタパワーで測定された、種々の濃度(すなわち、重量で20、25、30、35、40、45、および50%)で調製されたゼラチン組織ファントムのラマンスペクトルを示す。
図32図32は、予測レーザパワーによる補正後の組織ファントムにおける実際のゼラチン濃度と予測ゼラチン濃度との相関関係を示す図である。
図33図33は、臨床内視鏡検査中に0.1秒でローゼンミュラーの窩から取得した代表的な生体内生ラマンスペクトルを示す。図33の挿入図は、強い自己蛍光バックグラウンドを除去した後の処理組織ラマンスペクトルである。
図34図34は、後部鼻咽頭(PN)(n=521)、ローゼンミュラー窩(FOR)(n=157)及び喉頭声帯(LVC)(n=196)の試験管内(被験者間)平均ラマンスペクトル1±標準偏差(SD)を示す。平均ラマンスペクトルは、より良い視覚化のために垂直に移動されていることに留意されたい。また、白色光反射率(WLR)及び狭帯域(NB)画像誘導下での後部鼻咽頭(上)、ローゼンミュラー窩(中)及び喉頭声帯(下)から生体内光ファイバーラマン視鏡取得物も示されている。
図35図35は、PNの生体内(被験体内)平均ラマンスペクトル±1SD(n=18)、FOR(n=18)及びLVC(n=17)を示す。平均ラマンスペクトルは、より良い視覚化のために垂直に移動されていることに注意してください。
図36図36は、様々な解剖組織タイプ(被験者間):[後部鼻咽頭(PN)−喉頭声帯(LVC)];[後部鼻咽頭(PN)−ローゼンミュラー窩(FOR)]及び[喉頭声帯(LVC)−ローゼンミュラー窩(FOR)]の様々なスペクトル±1SDの比較を示す。
図37図37は、ヒト体液(鼻汁、唾液、血液)からの潜在的交絡因子の試験管内ラマンスペクトルを示す。
図38図38は、スペクトル変動の合計57.41%を占める(PC1:22.86%;PC2:16.16%;PC3:8.13%;PC4 6.22%;PC5:4.05%)、頭頸部における様々な組織間における生体分子のばらつきを解消するPC負荷を示す。
図39A図39Aは、様々な組織型(すなわち、PN、FOR及びLVC)のための5個のPCAスコアのボックスチャートを与える。各ノッチボックス内の線は中央値を表すが、ボックスの下限と上限の境界は、それぞれ第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は1.5倍の四分位範囲を表し。また、p値も様々な組織型において与えられている。
図39B図39Bは、様々な組織型(すなわち、PN、FOR及びLVC)のための5個のPCAスコアのボックスチャートを与える。各ノッチボックス内の線は中央値を表すが、ボックスの下限と上限の境界は、それぞれ第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は1.5倍の四分位範囲を表し。また、p値も様々な組織型において与えられている。
図39C図39Cは、様々な組織型(すなわち、PN、FOR及びLVC)のための5個のPCAスコアのボックスチャートを与える。各ノッチボックス内の線は中央値を表すが、ボックスの下限と上限の境界は、それぞれ第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は1.5倍の四分位範囲を表し。また、p値も様々な組織型において与えられている。
図39D図39Dは、様々な組織型(すなわち、PN、FOR及びLVC)のための5個のPCAスコアのボックスチャートを与える。各ノッチボックス内の線は中央値を表すが、ボックスの下限と上限の境界は、それぞれ第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は1.5倍の四分位範囲を表し。また、p値も様々な組織型において与えられている。
図39E図39Eは、様々な組織型(すなわち、PN、FOR及びLVC)のための5個のPCAスコアのボックスチャートを与える。各ノッチボックス内の線は中央値を表すが、ボックスの下限と上限の境界は、それぞれ第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は1.5倍の四分位範囲を表し。また、p値も様々な組織型において与えられている。
図40A図40Aは、臨床内視鏡検査中に取得された線のある扁平上皮(n=165)、線のある円柱上皮(n=907)、バレット食道(n=318)、高度異形成(n=77)上皮の平均生体内共焦点ラマンスペクトルを示す。
図40B-E】図40Bは、(B)測定された組織部位に相当する代表的な組織学的切片スライド(ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色)を示す。図40Cは、線のある扁平上皮(C)杯細胞の存在しない線のある円柱上皮、×200を示す。図40Dは、(D)正常の層状扁平上皮を杯細胞を含有する腸上皮化生で置き換えたバレット食道、×200を示す。図40Eは、(E)構造的及び細胞学的異型性の両方並びに分岐及び乳頭の形成、細胞学的多形性及び極性の喪失を有する密集陰窩を示す高度形成異常、×100を示す。
図41A図41Aは、共焦点ラマン視鏡技術を使用した「正常」の線のある円柱上皮(CLE)、(ii)「低リスク」腸上皮化生(IM)(iii)の「ハイリスク」高度異形成(HGD)に属する見込みの事後確率の二次元三元プロットを示す。
図41B図41Bは、「正常」CLE、(ii)「低リスク」IM、(iii)「高リスク」HGDの二分区別の受信者動作特性(ROC)曲線を示す。ROC曲線下面積(AUC)は、それぞれ0.88、0.84及び0.90である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好ましい実施形態の詳細な説明
ここで提供するのは、内視鏡検査で様々な器官(例えば、胃腸管(胃、食道、結腸)、膀胱、肺、口腔、咽頭、喉頭、子宮頚部、肝臓、皮膚、等)における腫瘍性病変のリアルタイム検出を実現する生物医学的分析(すなわち、反射率、蛍光及びラマン分光法)のためのオンラインシステム及び方法である。この診断方法は、総合的なスペクトルデータベース(すなわち、様々な器官のラマン、蛍光、反射率)に基づく多クラス診断を含めて、励起源同期、積分時間調整、データ収集、前処理、異常値分析及び確率変量診断(すなわち、部分最小二乗−判別分析(PLS−DA)、主成分分析(PCA)−線形判別分析(LDA)、蟻コロニー最適化(ACO)−LDA、分類及び回帰ツリー(CART)、サポートベクターマシン(SVM)、適合ブースティング(AdaBoost)など)を統合する。
【0038】
一実施形態では、開示されるシステム及び方法は、オンライン診断フレームワークを、内視鏡検査での上部消化管における前癌及び癌の早期診断及び検出のために近年開発されたマルチモーダル画像誘導(WLR/NBI/AFI)ラマン分光プラットフォームと統合する。組織のラマンスペクトル及び0.5秒の所定の上限値を有する積分時間の自動スケーリングの蓄積により、SNRが改善した生体内組織スペクトルの瞬時取得が可能になると共に、CCDの信号飽和を防止することが可能になる。これは、自家蛍光強度が、おそらく組織内の個別の内因性蛍光団に起因する様々な解剖学的領域(例えば、胃における前庭部及び主要部、肺内気管支)間で大きく変動する場合には、内視鏡診断のために特に重要である。
【0039】
ここで、図面を特に詳細に参照すると、示されている特定事項は、例示であり、かつ、好ましい実施形態の例示的な議論を目的とするものであり、そして最も有用であり、かつ、開示されたシステム及び方法の原理及び概念的態様の説明を容易に理解されると考えられるものを提供するために提示されていることを強調する。この点で、試みは、開示されたシステムの詳細及び方法の構造的な詳細を、開示されるシステム及び方法の基本的理解に必要である以上に詳細に示す試みは行っておらず、図面について行う説明は、開示されるシステム及び方法のいくつかの形態を実際に具体化することができる方法を当業者に明らかにするものである。
【0040】
開示されるシステム及び方法の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用の際に、次の説明に示された又は図面に示された構成要素の構成及び配置の詳細には限定されないことを理解すべきである。開示されるシステム及び方法は、他の実施形態に適用でき、又は様々な方法で実行若しくは実施されるものである。また、ここで使用する表現法及び用語法は、説明を目的とするものであり、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0041】
ここで図1を参照すると、一実施形態に係る内視鏡システムを備える診断用器具が10で示されている。内視鏡自体は11で示されており、内視鏡11の作業用ヘッドが図1aに一般的に示されている。試験される領域のガイダンス及び視覚的視野を提供するために、内視鏡11は、好適なビデオシステムを備える。キセノン光源からの光は、内視鏡12の端部にある照明窓15に伝達される。CCD16及び17は、白色光反射イメージング、狭帯域イメージング又は自己蛍光イメージングに応答して、反射光を受光し、そして映像データを送信して、試験組織の目視検査及び内視鏡の所望の位置への案内を可能にする。共焦点ラマンプローブヘッドを18で示しており、さらに詳しくは図1bに示している。
【0042】
ラマン分光システムは、20で一般的に示されている。単色レーザー光源は21で示されており、本例では、約785nmでの出力波長を有するダイオードレーザーはである。レーザーダイオード21からの光は、近位帯域通過フィルタ22を通過し、±2.5nmの半値全幅を有する785nmの中心の狭帯域通過フィルタを含む。この光はカップリング23を通ってファイバーバンドルの一部として与えられる励起光ファイバー25に通る。励起ファイバー25は、200μmの直径及び0.22の開口数(「NA」)を有する。この励起ファイバー25を透過した光は、内視鏡11の端部にボールレンズ26に入射し、本例では約1.0mmの直径及び屈折率n=1.77を有するサファイアボールレンズを含む。図1bに示すように、励起光ファイバー25からの透過光は、ボールレンズ26内において内部で反射される。ボールレンズが試験を受ける組織と接触している場合には、ここでは27で示されているように、励起ファイバー25からの透過光は、少なくとも部分的に、〜140μmの深さまで組織27内でラマン散乱を受ける。散乱光は、再びボールレンズ26内部で反射され、繊維束の一部として与えられる複数の集光ファイバー28内で受信される。本例では26本の100μm集光ファイバーを0.22のNAで使用する。集光ファイバー28は、任意の好適な構成、例えば励起ファイバー25を囲む円形の配置で配置できる。
【0043】
集光ファイバー28により戻った収集散乱光は、ロングパスインライン捕集フィルタ29を通過し、これも同様に〜800nmのカットオフを有する。サファイアボールレンズ26、励起及び集光ファイバー25、28、帯域通過フィルタ22、ロングパスフィルタ29の構成は、組織27から後方散乱ラマンファントムを選択的に収集するための良好なシステムを与える。
【0044】
その後、戻った散乱光は分光器30で分離され、得られたスペクトルが光検出器アレイ34、本例では電荷結合素子(「CCD」)で画像化される。35で示されたコンピュータは、システム、プロセスの操作を制御し、そしてスペクトル及び制御データを記憶し、結果及びデータをユーザに対して提供する。
【0045】
一実施形態では、コンピュータ35は、チップセットに接続された少なくとも1個のプロセッサを備える。また、チップセットに接続されるのは、メモリ、記憶装置、キーボード、グラフィックスアダプタ、ポインティングデバイス、音声素子及びネットワークアダプタである。グラフィックスアダプタにはディスプレイが接続されている。一実施形態では、チップセットの機能は、メモリコントローラハブ及びI/Oコントローラハブによって与えられる。別の実施形態では、メモリは、チップセットの代わりにプロセッサに直接接続されている。
【0046】
記憶装置は、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)、DVD、又はソリッドステート記憶装置のように、データを保持することのできる任意の装置である。メモリは、プロセッサによって使用される命令及びデータを保持する。ポインティングデバイスは、マウス、トラックボール又は他のタイプのポインティングデバイスとすることができ、かつ、コンピュータシステムにデータを入力するためのキーボードと組み合わせて使用される。グラフィックスアダプタは、ディスプレイ上の画像及び他の情報を表示する。ネットワークアダプタは、コンピュータシステムをローカル又はワイドエリアネットワークに接続させる。
【0047】
当該技術分野において知られているように、コンピュータ35は、前記のものとは異なる及び/又は他の構成要素を有することができる。さらに、コンピュータは所定の構成要素を欠くことができる。さらに、記憶装置は、ローカル及び/又はコンピュータからリモートであることができる(例えばストレージエリアネットワーク(SAN)内で具現化される)。
【0048】
当該技術分野において知られているように、コンピュータは、ここで説明する機能を与えるためのコンピュータプログラムモジュールを実行するように構成されている。本明細書で使用するときに、用語「モジュール」とは、指定された機能を与えるために利用されるコンピュータプログラムロジックをいう。したがって、モジュールは、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアで実行できる。一実施形態では、プログラムモジュールは、記憶装置に記憶され、メモリにロードされ、そしてプロセッサによって実行される。
【0049】
ここで説明する実体の実施形態は、他の及び/又はここで説明するものとは異なるモジュールを備えることができる。また、モジュールに起因する機能は、他の実施形態では他の又は異なるモジュールによって実行できる。さらに、この説明は、明瞭さ及び便利さの目的のために、用語「モジュール」を省略する場合がある。
【0050】
また、コンピュータ35は、スペクトルデータを前処理することを実行する。測定された組織ラマンスペクトルが組織の自己蛍光バックグラウンドにより実質的に不明瞭になるときに、生体内組織ラマンスペクトルの前処理は、弱いラマン信号を抽出するために必要である。生体内組織から測定された生のラマンスペクトルは、弱いラマン信号と、強い自己蛍光バックグラウンドと、ノイズとの組合せを表す。スペクトルは、まず積分時間及びレーザパワーに正規化される。続いて、スペクトルを、一次サビツキー・ゴーレイ平滑化フィルタ(3画素のウィンドウ幅)を使用して平滑化してノイズを低減する。五次多項式は、自己蛍光バックグラウンドをノイズ平滑化スペクトルに適合させるのに最適であることが分かり、またこの多項式をその後生のスペクトルから減じて組織ラマンスペクトルを単独で生じさせる。また、コンピュータ35は、前癌及び癌検出のための診断アルゴリズムを有することもできる。
【0051】
分光器及びファイバー光学プローブの較正
これは、異なる分光計は、異なる伝達関数を有すること、すなわち、同じ光源を使用して照らした場合であっても、スペクトル内において異なる強度変化示すことが知られている。図2に示されているように、基準光源からのスペクトルが示されている。この例では、基準光源は、レーザー光源21などのレーザーによって励起される場合に既知の蛍光スペクトルを発する蛍光基準ターゲットである。蛍光基準ターゲットは、一貫しておりかつ安定であり、しかも帯域通過フィルタ(例えば、785nm)下で幅広い蛍光スペクトルを放射しなければならない。蛍光スペクトルは、経時的に安定でなければならず、かつ、問題の全スペクトル領域にわたって分光透過特性を効率的に特徴付けなければならない(例えば、400〜1800cm-1、2000〜3800cm-1)。例は、クロムがドープされたガラスである。得られた2個の分光器からのスペクトルが示されているが、これらは明らかに異なる。分光応答又は伝達関数を償うために、分光計から受信したスペクトルを修正することになる較正機能を適用することが知られている。例及び較正機能を図2に示しており、この図は、分光計の対応するスペクトルに適用された場合、スペクトルを公知の基準スペクトルに一致させる。
【0052】
蛍光基準光源を使用して、伝達関数、すなわち、分光器の波長依存応答を次式により与えることができ:
【数1】
(式1)式中、F(λ)は正確な蛍光標準スペクトルであり、S(λ)は蛍光基準光源の測定スペクトルであり、T(λ)は分光計の伝達関数である。したがって、T(λ)が知られているときに、新たなサンプルR(λ)の正確に較正されたラマンスペクトルを次式により算出できる:
【数2】
(式2)式中、S(λ)は測定サンプルスペクトルである。
【0053】
伝達関数T(λ)は、分光器伝達関数TS(λ)とプローブ伝達関数TP(λ)の関数である。したがって、式(2)を次のように書くことができる:
【数3】
(式3)。光ファイバープローブは交換可能であり、しかも消耗品とすることができるため、新たなプローブ伝達関数TPを有する新たなプローブが挿入されると、システム全体の伝達関数が変化することは明らかであろう。
【0054】
ここで図3を参照すると、一次又はマスター分光器が50で示されており、二次又はスレーブ分析計が51で示されている。分光器50、51は、それぞれ、図1に示したものと同様の構成を有するが、異なるファイバープローブ及び分光器特性を有することができる。理想的には、各分光器を制御するパーソナルコンピュータ35は、プログラムの共通のライブラリを使用してシステム及びデータ処理の制御を与えるため、また、一次及び二次分光器50、51の特性が整合していることが望ましい。この例では、一次分光器50は、一次又はマスタープローブ52に関連付けられており、二次分光器51は、53a、53a、53bで示された複数の二次又はスレーブプローブと関連づけられている。それぞれの場合において、較正は、54で図式に示した基準蛍光源を用いて実行される。
【0055】
較正の第1方法が図4aに示されている。ステップ60では、二次分光器は、一次分光器に従って波長較正される。この場合、二次分光器51の波長軸較正を、例えばアルゴン水銀スペクトルランプ又は規定スペクトル線を有する化学的試料を使用して実行し、その後線形補間を用いた画素解像度マッチングを実行して第2分光器の軸のサイズが一次分光器のサイズと一致することを確認する。この較正の結果を図5に示しており、そこでは、一次及び二次分光計50、51からのスペクトルは正確に整列されたランプからのスペクトル線を示す。ステップ61で、較正を、蛍光源54を使用して第2分光器及びプローブ53aについて実行する。図2のグラフと同様に、スペクトルを蛍光源から記録し、その後伝達関数を算出して測定されたスペクトルを既知のスペクトルラインに一致させ、そしてパーソナルコンピュータ35などによって保存できる。その後、ステップ62で、分光器51を生体内ラマン試験又は別の方法のために使用することができ、そして測定されたラマンスペクトルを、ステップ61で記録された較正関数を用いて補正することができる。
【0056】
プローブ53aを廃棄し、しかも新たな被験体で試験を実施することが望まれる場合には、代替プローブ53bを代わりに使用することができ、その場合には、図4aの方法を繰り返す。
【0057】
図4b及び4cに示されるように別の方法では、複数の較正機能を、まず二次分光器及び複数の二次プローブについて記録することができる。図4bのステップ60では、図4aのように、二次分光器51を、プライマリ分光器60との整合のために較正する。ステップ61では、二次プローブ53aについての較正機能を測定し、ステップ63において、この較正機能を保存し、そして何らかの方法、例えば二次プローブ53aに相当する参照番号でタグ付けされたコンピュータファイル56aとして較正機能を保存することによってプローブ53aに関連付けられる。矢印64で示すように、その後、このプロセスを任意の数のプローブ53b...、53nについて繰り返してプローブのストック又は予備を与える。図4cに示すように、分光器51を用いて試験を実施することが望まれる場合には、ステップ60で分光器を上記のように一次分光器50に従って較正する。ステップ65で、プローブ53nをシステムにインストールし、対応する格納伝達関数56nを取り出す。ステップ66で、二次分光器51を使用した試験を実施し、そして取り出した較正関数56nを使用して較正することができる。
【0058】
別のアプローチを、図6を参照して示しており、該図では、スレーブ又は二次プローブ53a...、53nを、一次又はマスター50で較正する。式2によれば、一次分光器を伝達関数TPP(λ)を有する一次又はマスタープローブ及び伝達関数TSP(λ)を有する二次又はスレーブプローブで試験する場合、蛍光源F(λ)からのスペクトルは、一次プローブのためのスペクトルSPP(λ)
【数4】
(式4)及び二次プローブを使用してスペクトルSSP(λ):
【数5】
(式5)をもたらす。式4及び5は、プローブ較正機能TCFにより2つのプローブ転送値を関連付けるために分割できる:
【数6】
(式6)。したがって、式2及び6から、二次分光器を二次プローブと共に使用する場合には、測定スペクトルS(λ)及びラマンスペクトルR(λ)は、次式によって関連付けられる:
【数7】
(式7)。式中、T(λ)= TS(λ)TPP(λ)は、マスタープローブを用いた二次分光器について測定された格納システム伝達関数である。
【0059】
図6〜7cに示すように、これは、任意の数の二次又はスレーブのプローブ53a、53b、53nを任意の数の二次分光器51a、51b、51nに一致させることを可能にする。図7aに示すように、第1ステップ70で、二次分光器51aは、マスタープローブ52を使用して、ステップ60に類似の方法で一次分光器50に従って較正される。システム伝達関数71aは、図3〜4cの方法と同様の態様で蛍光標準光源54に対して二次分光器を試験することによりステップ72で見出される。システム伝達関数71aは、ステップ73において任意の適切な方法、例えば、制御ソフトウェア又はその他のもので対応する分光器51aに関連付けられる。矢印74によって示されるように、これを任意の数の二次分光器システム51b、...51nについて繰り返して、適切なシステムの伝達関数71b、...71nを生成することができる。
【0060】
図7bに示すように、二次又はスレーブのプローブ53a、53b...、53nをマスタープローブ52に対して較正する。ステップ75では、一次分光計システム50は、蛍光源54に対してマスタープローブで好適に較正されるが、このステップが既に実行され、しかもマスタープローブに関連付けられた伝達関数が既に記憶されている場合にはこれを省略してもよい。ステップ76では、マスタープローブをプローブ53aで置き換え、その後一次分光器システムと対応するスレーブプローブとの組み合わせを、蛍光標準54に対して試験する。ステップ77では、較正機能TCFを一次プローブスペクトルと二次プローブスペクトルとの比から計算し、そして78でこれを記録し、そして79aで示されるように二次プローブに関連付けて記憶させる。矢印80によって示されるように、これを、任意の数の二次プローブ53b、...53nについて繰り返し、そして対応する較正関数TCFを79b、...79bで示されるように記憶できる。
【0061】
図7cに示すように、マスタープローブ52を使用したシステム伝達関数71aが知られており、しかも二次プローブ53nをマスタープローブ52に関連付ける較正機能TCFが知られているため、二次分光器システム51nの一つは、二次プローブ53nのいずれかと共に使用することができる。ステップ81で示すように、二次分光器システム51nは、一次分光器システム50に従って較正される。ステップ82で、二次プローブ較正機能TCFが取得され、そして記憶されたシステム伝達関数71nは、記憶された較正関数TCFに応じて変更される。その後、ステップ83で、生体内ラマン試験又は他の試験を実行することができ、そして捕捉されたラマンスペクトルを補正することができる。
【0062】
したがって、これらの方法のいずれかにおいて、二次分光器特性を一次分光器特性に戻して一致させ、そして分光器とプローブとの組み合わせについての伝達関数又は二次プローブと共に使用するためにマスタープローブ及び較正機能を組み込んだシステムの伝達関数のいずれかを記憶させることによって、様々な分光器とプローブとの組み合わせを使用して取得されたスペクトルは、それにもかかわらず一貫しておりかつ比較可能となる。
【0063】
これは、図8及び図9a〜9cから明らかである。図8は、マスタープローブ52と二次又はスレーブプローブ53nとの間で異なる応答を示す。強度応答はスペクトルにわたって変化し、示されたような較正機能は、二次プローブのスペクトルをメイン又はマスタープローブのスペクトルに対してマップするであろう。一次分光器50及び二次分光器51からの未較正組織スペクトルを図9aに示しており、それらの間の相違は明らかである。図9b及び9cは、上記の方法のそれぞれを用いた較正の結果を示しており、一次及び二次分光器からのスペクトルはほぼ一致している。
【0064】
ラマンスペクトルを、2つの異なるプローブ(n=902スペクトル)で胃から測定した。主成分分析(PCA)を、二次プローブの較正前後に実施した。図10は、光ファイバープローブのみならず、様々なスコアでの95%信頼区間の較正前後のPCA分析を示す。ファイバープローブの較正後に、スペクトルは、同じ信頼区間内に入ることは明らかであるが、これはマスター光ファイバーラマンプローブとスレーブ光ファイバーラマンプローブと間で転送が成功したことを示す。
【0065】
レーザーパワーの監視
図11は、ファイバープローブからのバックグラウンドスペクトルを示す、すなわち、組織信号の非存在下でのグラフである。ファイバーのシリカ内におけるラマン散乱又は蛍光に相当するピーク及び遠位ボールレンズのサファイアに相当するピークが明らかである。図12は、様々なレベルの伝達出力光と共に生体内組織でから受け取ったラマンスペクトルのグラフを示す。図11のピークは、図12の様々なラインで明らかであるが、ピーク及び連続バックグラウンドの相対的な高さは、伝達出力光と共に変化することは明らかであろう。
【0066】
有利には、取得されたラマンスペクトルにおけるファイバープローブ及びサファイアボールレンズの分光特性は、光学縦列内の任意の追加成分の供給を必要とすることなく、透過したレーザパワーを導出するための内部基準として使用できることが分かった。図13Aの方法に示されているように、ステップ90で、好適に多数のスペクトル(本例では352)を収集し、そして透過レーザパワーを測定する。ステップ91で、好適な多変量統計解析、本例では部分最小二乗法(「PLS」)回帰を実行する。PLS回帰は、スペクトルデータの値を多数の潜在変数(「LV」)にまで減少させる。この場合には、スペクトル変化と従属変数との間の差異、レーザパワーが最大化され、その結果、潜在変数は、レーザパワーとよく相関するスペクトルピークにさらに高いウェートを与える。潜在変数の適切な数を選択することにより、分光特性の関数としてのレーザパワーのモデルを導出することができ、かつ、ステップ92で示されるように記憶される。したがって、ステップ93で、図13bに示すような動作の際に、試験スペクトルは、例えば生体内被験体又はその他のものから取得され、そしてステップ94において、これらのスペクトル値を格納されたモデルに提供する。ステップ95では、レーザパワーを導出し、そして例えばパーソナルコンピュータ35でオペレータに表示する。
【0067】
本例では、自乗平均平方根誤差に対して含まれる潜在変数の数のグラフを図14aに示しており、4つの変数は、誤差と複雑さとの間の最良のバランスを与えるように選択される。4つの潜在変数及び回帰ベクトルの相対的な負荷を図14bに示す。図15では、5人の被験者における166スペクトルの実時間測定値からの例示データが示されており、測定されたレーザパワーをモデルによって推定されたパワーに対してプロットしている。実質的に線形の近似は、推定パワーが実際に供給されるパワーの良好な指標であることを示していることは明らかであろう。
【0068】
反復背バックグラウンド除去
蛍光、プローブのシリカ及びレンズのサファイアにおけるラマン散乱から得られるバックグラウンドラマンスペクトルを減じる方法は、図16〜18を参照して示されている。このバックグラウンド信号は、各特定のファイバープローブに固有のものである。バックグラウンドを過剰又は過小除去することなく、組織ラマンスペクトルからバックグラウンドを除去することが望ましい。
【0069】
図16におけるステップ110に示すように、バックグラウンドスペクトルを取得し、そして例えばターゲットの非存在下でプローブを介してレーザー光源からの光を透過させることにより格納した。ステップ111において、試験対象からのラマンスペクトルを、例えば組織から受け取る。ステップ112において、被験者ラマンスペクトルにおけるファイバーバックグラウンドシグナルの量を、1以上の別個の基準ピークの強度を用いて推定する。本例では、これらのピークは、シリカ及び/又はサファイアによるものである場合がある(例えば、417又は490cm-1)。バックグラウンド信号の推定量を使用して、格納されたバックグラウンドシグナルを、好適なおそらくは波長依存の補正係数で掛け、かつ、試験スペクトルから減じることができる(ステップ113)。
【0070】
ステップ114で、スペクトルについて、残りのバックグラウンドの有無をチェックする。バックグラウンドが完全に除去されている場合(シリカ及びサファイア信号が組織ラマンスペクトルに対して無視できる程度に寄与する場合)に、スペクトルを、ステップ115に示すように出力又はさらなる分析のために合格させる。バックグラウンド信号がまだ存在する場合には、矢印116で示すように112〜114を繰り返す。
【0071】
この方法は、単一のシリカ/サファイアピークに限定される必要はない。また、多変量解析(例えば、部分最小二乗及び曲線解決法など)も、この目的のために使用できる。
【0072】
一例として、図17は、掌組織から受信したラマンスペクトル及びプローブからのバックグラウンドスペクトルを示すグラフである。蛍光、プローブのシリカ及びレンズのサファイアでのラマン散乱からのピークは明らかであり、掌からのラマンスペクトルに重ねられる。このバックグラウンド信号は、それぞれ特定のファイバープローブに固有のものである。
【0073】
図18に示すように、図16の反復プロセスを実行した後に、滑らかなラマンスペクトルがバックグラウンド信号の特徴的なピークなしに示すが、必要なラマン分光情報は保持する。
【0074】
複合システム
様々な開示された方法を併用してもよい。このような組み合わせの一実施形態を図19に示す。ステップ100で、較正方法を、システム伝達関数をマスター又は一次システム50に従って知り、その後のスペクトルを適切に補正することができるように実行することができる。ステップ101で、信号の前処理を、平滑及び組織バックグラウンド除去を含めて実行することができる。ステップ103では、パワー監視を上記のようにスペクトルについて実行することができ、並行して、ステップ102で、プローブのバックグラウンド除去を行うことができる。ステップ104で示すように、ステップ102及び103の情報をパーソナルコンピュータ35上の好適なプログラムに提供して他の診断又は出力ステップを実行する。
【0075】
開示された較正方法を診断方法と組み合わせる際には、機器には依存しない光ファイバーラマン分光法が定量的な組織分析及び特徴付けのために可能である。これは、異なる機器によって撮影されたスペクトルのみならず、同じ機器で、ただし異なるプローブで撮影されたスペクトルの比較を可能にする。これは、異なる機械又は異なるプローブで撮影されたスペクトルが比較のために使用することを可能にするという点で、診断のために重要である。これは、診断の精度を高めるために重要である。
【0076】
リアルタイム癌診断
オンライン生物医学分光法(すなわち、反射率、蛍光及びラマン分光法)システム及び方法は、臨床内視鏡検査でのリアルタイム癌診断を実現し、かつ、予測される病理に関する確率的診断アルゴリズムの結果の聴覚フィードバック並びにグラフィカルディスプレイを使用して臨床医とインタフェースで接続することができる。例として胃のラマン内視鏡検査を挙げる(図22A);この方法は、いくつかの病理を予測することができる:正常、腸上皮化生、異形成及び新形成。このオンライン診断方法は、臨床医に、生検ガイダンス又は腫瘍根絶などの意思決定のために使用できる組織病理学の情報をリアルタイムで提供する。このシステムは、GUIを含めて、迅速なデータ処理のために最適化され、例えば臨床内視鏡検査のためのリアルタイム診断(<0.1秒)が可能になる。
【0077】
解剖間及び臓器間スペクトル差異に対処するために、オンラインのフレームワークは、臓器に特異的な診断モデルを実現し、かつ、様々な器官(例えば、食道、胃、大腸、子宮頸部、膀胱、肺、鼻咽頭、喉頭、及び口腔(硬口蓋、軟口蓋、頬、内唇、腹部及び舌))のスペクトルデータベース間で切り替わる。したがって、開示ラマンプラットフォームは、内視鏡検査での癌の診断のための普遍的な診断ツールである。
【0078】
図20は、一実施形態に係るリアルタイムの癌診断のためのスペクトル取得及び処理フローについての診断システム115のアーキテクチャ図である。診断システム115は、パーソナルコンピュータ35上に実装できる。診断システム115は、スペクトル取得モジュール120、スペクトル前処理モジュール125、異常値分析モジュール130、多変量解析モジュール135、病理モジュール140及びデータベース142を備える。簡潔にするために、1個のみのスペクトル取得モジュール120、スペクトル前処理モジュール125、異常値分析モジュール130、多変量解析モジュール135、病理モジュール140及びデータベース142が示されているが、実際にはそれぞれの多くが実行中であることができる。
【0079】
図20〜22参照すると、ステップ145において、スペクトル取得モジュール120は、CCDにより帯域通過フィルタ源を電子的に同期させ、そしてさらなる処理のためにデータベース142内のCCDからのビニング読み出しを格納する。スペクトル取得モジュールは、前の組織測定に基づいて総光子数の〜85%以内にスケーリングすることによりスペクトルの露光時間及び蓄積をさらに自動的に調節する一方、0.5秒の上限を設定して臨床的に許容可能な条件を実現する。複数のスペクトルの蓄積及び露光時間の自動調整は、信号飽和を防止し、かつ、内視鏡の用途のために高い信号対ノイズ比を得るために迅速かつ簡単な方法を提供する。スペクトル信号が飽和した場合には、本方法は、飽和を防ぐために短縮された積分時間を使用して新たなデータ収集を開始する。スペクトルの取得後、この方法は、宇宙線を識別し排除する(例えば、スペクトルの一次導関数を、最大閾値として設定された全スペクトル範囲にわたって95%の信頼区間(CI)と共に使用して)。同定された宇宙線は、線形補間により除去される。短いスペクトル取得時間枠は、内視鏡用途に特に便利である。図22Aで示されたGUIは、スペクトル取得を180で示す。
【0080】
他の用途のために、スペクトル取得フレームワークを外部又は内部の外科的介入のために使用することができ、或いは手術中に組織型を評価するために使用することができるであろう。リアルタイム特性は、現場での診断を可能にするため、腫瘍切除のための切除余白を手引きするために使用できる。診断情報をオンラインで(すなわち、<0.5秒)与えて医療の意思決定を支援することができることが重要である。皮膚の測定について、測定時間に対する要求はそれほど厳しくない。というのは、皮膚のスペクトルは、より制御可能な実験設定下で、より長い露光時間の可能性でもって取得されるためである。また、オンラインソフトウェアアーキテクチャは、蛍光、反射分光法を含めた高速スペクトル測定を必要とする他の分野又は中断のないリアルタイムスクリーニングが必要とされるプロセス分析技術、食品科学、科学捜査などの様々な分野でも適用できる。ステップ150において、スペクトル取得モジュール120は信号が飽和しているかどうかを決定する。もしそうなら、このものは、飽和を防ぐために短縮された積分時間を使用して新たなデータ収集を開始する。ステップ155において、スペクトル取得モジュール120は宇宙線を識別し排除する(すなわち、スペクトルの一次導関数を、最大閾値として設定された全スペクトル範囲にわたって95%の信頼区間(CI)と共に使用して)。一実施形態では、識別された宇宙線を線形補間により除去する。宇宙線は、多変量解析、平滑化、平均フィルタリング、メディアンフィルタリング、フーリエ変換、ウェーブレットなどを含めた他の方法によって除去できる。
【0081】
ステップ160において、スペクトル前処理モジュール125は、取得したスペクトルを積分時間及びレーザパワーでスケーリングする。一次サビツキー・ゴーレイ平滑化フィルタをさらに使用して強度補正スペクトルにおけるノイズを除去する。次いで、平滑化スペクトルの下限に制限された5次修正多項式を差し引いて組織ラマンスペクトルを単独で分解するために差し引かれる。ラマンスペクトルを800〜1800m-1の曲線下積分面積に最終的に正規化してスペクトルのライン形状及び相対強度を分解し、臨床内視鏡検査時におけるプローブ処理のばらつきを低減する。GUI(図22A)は、185で正規化スペクトルを示す。いくつかの実施形態では、スペクトル前処理モジュール125は、多重散乱補正(MSC)、FIRフィルタリング、加重ベースラインサブトラクション、ノイズリダクション、平均センタリング、微分(これらに限定されない)を含めて、前処理のための追加の方法を利用する。
【0082】
ステップ165において、異常値分析モジュール130は、ホテリングのT2及びQ−残余統計と接続された主成分分析(PCA)を使用して異常値スペクトルを検出する。GUI(図22A)は、190で異常値分析を示す。異常値検出の実装は、ホテリングのT2及びQ−残余統計と接続された主成分分析(PCA)を使用するオンラインフレームワークにおける高レベルのモデル固有フィードバックツールとして機能する。ホテリングのT2及びQ−残余は、モデル適合内外の情報を提供する二つの独立したパラメータである。スペクトル品質の指標としてのこれらのパラメータ(すなわち、プローブ接触モード、交絡因子、白色光干渉など)を使用して、聴覚フィードバックをオンラインラマン診断システムに統合し、臨床医に対するリアルタイム分光スクリーニング及びプローブの取り扱いのアドバイスを容易にする。ソフトウェアシステムは、異なる診断の結果に対して異なるサウンドフィードバックを提供する。例えば、スペクトルが異常値である場合には、所定の音が出る。スペクトルが診断的に「正常」に分類される場合には、第2の別個の音が出る。スペクトルが「前癌」又は「癌」に分類される場合には、第3又は第4の音が出る。音の周波数は、「事後確率」と比例することができるであろう。これは、非常に有用である。というのは、診断情報を受信しつつ内視鏡医にリアルタイムガイダンスを提供するからである。このようにして、内視鏡医は、ラマンプラットフォームモニターに注意を払う必要がなく、音のガイダンスによる内視鏡の操作手順に集中する。異常値解析モジュールが、取得したスペクトルが異常値であると判断した場合には、診断システム115がステップ145で開始する。
【0083】
スペクトルがさらなる分析のために認証された場合には、これらを生体内癌診断のために確率モデルに供給する。ステップ170では、多変量解析モジュール135は、生体内癌診断のための確率モデルを適用する。多変量解析モジュール135は、多数の患者のスペクトルデータベースに基づいて、部分最小二乗判別分析(PLS−DA)、PCA−線形判別分析(LDA)、蟻コロニー最適化(ACO)−LDA、分類及び回帰ツリー(CART)、サポートベクターマシン(SVM)、適応的ブースティング(AdaBoost)などを含めた様々なプリレンダリングモデル間でスイッチする。
【0084】
ステップ175では、病理モジュール140は、確率癌診断のための様々な器官のスペクトルのデータベース間で切り替えることができる器官固有診断モデルを実装する。オーディオフィードバックに加えて、GUI(図22A)は、臨床医に、195で病理モジュール140からのアウトプットを提供する。
【0085】
図22Bは、第2実施形態に係るGUIを提供する。
【0086】
データベース142は、取得したスペクトルを保存するのみならず、保存されたスペクトルは、診断のために使用される。
【0087】
いくつかの実施形態では、複数のスペクトルを採取し分析する。例えば、5〜15の間を取得する。それぞれを分析し、そして複数の閾値パーセンテージが同じ結果(正常対癌)を与える場合には、これが決定された診断である。例えば、10のスペクトルを取得する場合には、7以上が同じ回答を与えるが、これが診断である。5又は6のみが同じ回答を与える場合には、このプロセスを繰り返す。
【実施例】
【0088】

リアルタイム診断のために使用される統合ラマン分光及びトリモーダル広視野画像化システムは、USB6501デジタルI/O(米国テキサス州オースティンのナショナルインスツルメンツ)と電子的に同期されたスペクトル安定化785nmダイオードレーザー(最大出力:300mW、米国デラウェア州ニューアークのB&W TEK社)と、液体窒素で冷却されたNIR最適化裏面照射及びディープディプレーション型電荷結合素子(CCD)カメラ(ピクセル当たり20×20μmで1340 400ピクセル;Spec−10:400BR/LN、米国ニュージャージー州トレントンのプリンストンインスツルメンツ)を備えた透過イメージングスペクトログラフ(Holospec f/1.8、米国ミシガン州アナーバーのKaiser Optical Systems)と、レーザー光デリバリ及び生体内組織ラマン信号収集の両方のために特別に設計されたラマン内視鏡プローブとを備える。
【0089】
1.8mmラマン内視鏡プローブは、組織ラマン信号の収集を最大にすると同時にレイリー散乱光、ファイバー蛍光及びシリカラマン信号の干渉を低減させるために、プローブの近位端及び遠位端に組み込まれた2段の光フィルタリングを有する中央光伝送ファイバーを取り囲む集光ファイバー32から構成される。ラマンプローブを医療用内視鏡の器具チャネルに下方向に進めることができ、かつ、広視野内視鏡画像(WLR/AFI/NBI)モダリティの指導の下で、疑わしい組織部位に向けることができる。このシステムは、〜9cm-1のスペクトル分解能で、1.5W/cm2(200μmのスポットサイズ)の785nm励起パワーを使用して0.5秒以内に、生体内上部GI組織から800〜1800cm-1の波数範囲のラマンスペクトルを取得する。
【0090】
ラマンシステムのハードウェア構成要素(例えば、レーザパワー制御、分光計、CCDシャッター及びカメラ読み出し同期)を、異なる分光器/カメラ用のライブラリ(例えば、PVCAMライブラリ(プリンストン・インスツルメンツ、ローパーサイエンティフィック社、米国ニュージャージー州トレントン)及びオムニドライバー(オーシャンオプティクス社、米国フロリダ州ダニーデン)など)を通じてMATLABソフトウェアにインターフェースで接続した。レーザーをCCDのシャッターと電子的に同期させた。レーザパワー、露光時間及びスペクトルの蓄積の自動調整を、組織ラマン測定に基づいて総光子数の85%(例えば、65000の光子の55250)以内にスケーリングすることによって実現させたのに対し、0.5秒の上限を設定して臨床的に許容可能な条件を実現することができる。複数のスペクトルの蓄積及び露光時間の自動調整は、CCDの飽和を防ぎ、かつ、内視鏡用途のための信号対雑音比(SNR)の高い信号を得るために迅速かつ簡単な方法を提供する。ラマンシフト軸(波長)を、水銀/アルゴン較正ランプ(オーシャンオプティクス社、米国フロリダ州ダニディン)を用いて較正した。システムの波長依存性のためのスペクトル応答補正を、標準ランプ(RS−10、EG&Gガンマサイエンティフィック、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて実施した。プラットフォームの再現性を、波数基準としてレーザー周波数並びにシクロヘキサン及びアセトアミノフェンのラマンスペクトルにより連続的に監視する。それに応じて、CCD温度、積分時間、レーザパワー、CCDアライメントを含む全てのシステム性能基準を、SQLサーバーを介して中央データベースに記録する。
【0091】
ラマン信号のリアルタイム前処理は、一次導関数を、最大閾値として設定された全スペクトル範囲にわたって95%の信頼区間(CI)と共に使用して宇宙線の迅速な検出を実現した。閾値の外側にあるデータ点を2次に補間した。スペクトルを積分時間及びレーザパワーでさらにスケーリングした。一次5ポイントサビツキー・ゴーレイ平滑化フィルタを使用して強度補正スペクトルのノイズを除去すると共に、平滑化スペクトルの下限に制限される5次改変多項式を減算して組織ラマンスペクトルを単独で分解した。ラマンスペクトルを、800〜1800cm-1の曲線下積分面積に対して正規化し、異なる組織病理間でのスペクトル形状及び相対的ラマンバンド強度のより良好な比較を可能にした。その後、スペクトルを特定のデータベースに従ってローカルに平均中心としてデータ内の共通の変動を除去した。前処理後に、ラマンスペクトルをモデル固有の異常値分析に供給した。
【0092】
異常値の検出スキームを、ホテリングのT2及びQ−残余統計と一緒になったPCAを使用することによって、オンラインフレームワークにおける高レベルのモデル固有フィードバックツールとして生物医学分光法に組み込んだ。PCAは、ラマンスペクトルの大きさを、ラマンスペクトルを直交成分の線形結合に分解することにより減少させ(主成分(PC))、そうして、データセット内のスペクトル変化を最大化させる。データ行列XのPCAモデルは次式により定義される:
【数8】
ここで、T及びPはスコア及び負荷を表し、Eは残差を含む。負荷は新たな回転軸に相当するのに対し、スコアはデータの投影値を表す。したがって、ホテリングのT2統計は、PCAモデル(距離をモデル化するためのサンプル)によって取得される分散の尺度であり、かつ、次式によって定義される:
【数9】
ここで、Tikは、成分kを用使用したithサンプルスペクトルに対するPCスコアであり、λk-1λk-1は、成分kの共分散行列の正規化された固有値の対角行列である。したがって、ホテリングのT2は、PCAモデルに極値の指標を与える。一方、Q−残余は、PCAモデル(モデル適合統計の欠如)によっては取得されない分散の尺度であり、かつ、次式によって定義される:
【数10】
ここで、xiはサンプルスペクトルであり、Qikは成分kを使用したithサンプルスペクトルに対する二乗再構成誤差の合計であり、PkはPC負荷である。ホテリングT2及びQ−残差の両方について、正規化された99%のCIを、異常なラマンスペクトルを遮断するための上限閾値として利用した。したがって、ホテリングのT2及びQ−残余は、モデル適合についての定量的情報を提供する二つの独立したパラメータである。スペクトル品質(すなわち、プローブ接触モード、交絡因子、白色光干渉など)の指標としてこれらのパラメータを使用して、聴覚フィードバックをオンラインラマン診断システムに統合し、臨床内視鏡処置中に臨床医のためのリアルタイムプローブハンドリングアドバイス及び分光スクリーニングを容易にする。
【0093】
組織ラマンスペクトルの品質の検証に続いて、これらの検証されたラマンスペクトルをオンライン生体内診断及び病理予測のために確率モデルに直ちに送った。GUIは、臨床内視鏡的手順での潜在的分類のために、部分最小二乗法−判別分析(PLS−DA)、PCA−線形判別分析(LDA)、蟻コロニー最適化(ACO)−LDA、分類及び回帰ツリー(CART)、サポートベクターマシン(SVM)、適応的ブースティング(AdaBoost)などを含めた様々なモデル間で瞬時に切り替わることができる。一例として、確率PLS−DAを胃癌診断に使用した。PLS−DAは、PCAの基本的な原理を採用するが、スペクトルデータセット内での最も顕著な変動よりもむしろ診断関連の変動を得るために、スペクトル変化とグループ親和との間の共分散を最大化することによって成分をさらに交替させる。このシステムは、特定の組織病理を予測するためにバイナリ分類のone−against−all及びone−against−oneのマルチクラス(すなわち、良性、異形成及び癌)確率PLS−DA判別分析をサポートする。
【0094】
例1
合計2748の生体内胃組織スペクトル(2465正常及び283癌)を、胃癌の診断用の診断アルゴリズムを開発するためのスペクトルのデータベースを構築するために募集された305人の患者からが取得した。組織病理は、生体内組織診断及びキャラクタリゼーションのためにラマン技術の性能を評価するためのゴールドスタンダードとして機能する。
【0095】
胃は、分光診断のために多くの交絡因子(すなわち、胃液、食べ物のかす、出血、滲出液など)を提示する最も挑戦的な器官の1つを表す。アルゴリズムの開発のために305人の胃患者(正常(n=2465)及び癌(n=283))から取得されたこの生体内平均ラマンスペクトルを図23に示す。胃組織のラマンスペクトルは、875cm-1(ヒドロキシプロリンのυ(C−C))、936cm-1(タンパク質のυ(C−C))、1004cm-1(フェニルアラニンのυs(CC)環呼吸)、1078cm-1(脂質のυ(C−C))、1265cm-1(アミドIIIυ(CN)及びタンパク質のδ(NH))、1302及び1335cm-1(タンパク質及び脂質のδ(CH2)変形)、1445cm-1(タンパク質及び脂質のδ(CH2))、1618cm-1(ポルフィリンのυ(C=C))、1652cm-1(タンパク質のアミドIυ(C=O))及び1745cm-1(脂質のυ(C=O))で顕著なラマンピークを示す。胃組織ラマンスペクトルは、胃壁における皮下脂肪のインタロゲーションを反映する可能性があるトリグリセリドからの大きな寄与を含む(すなわち、1078、1302、1445、1652及び1745cm-1での主ピーク)。胃癌ラマンスペクトルは、前記ラマンスペクトル特性(例えば、強度、スペクトル形状、帯域幅及びピーク位置)における著しい変化を明らかにするが、これは、我々の先行する生体内ラマン研究で再確認している。
【0096】
自動異常値の検出を、PCAをホテリングのT2及びQ残余統計(99%CI)と共に使用して予測オンライン分析のために実現した。オンライン診断を効率的にするために、最大組織スペクトルの変化を含む二成分PCAモデルを表現した。データセットにおける総変動(n=2748ラマンスペクトル)の38.71%(PC1:30.33%、PC2:8.38%)の最大分散を占めるこれらの選択された重要なPC(P<0.0001)及び対応するPC負荷を図24に示す。
【0097】
図25は、癌スペクトルを正常から分離するためにPCスコアの能力を例示する正常(n=2465)及び癌組織スペクトル(n=283)についてのスコア散布図を示す(すなわち、PC2対PC1)。それに応じて、ホテリングのT2及びQ残余の99%CIを、トレーニングデータセットから計算し、そして見込まれるオンラインスペクトル検証のための閾値として固定した。次に、胃癌の予測のための確率PLS−DAモデルを表現した。トレーニングデータベースを、学習(80%)及び試験(20%)セットにランダムに複数回(n=10)再サンプリングした。生成されたPLS−DAモデルは、胃癌診断について、それぞれ、85.6%の予測精度(95%CI:82.9%〜88.2%)、(80.5%の感度(95%CI:71.4%〜89.6%)及び86.2%の特異性(95%CI:83.6%〜88.7%))を与えた。その後、さらに10名の見込み胃患者において異常値検出並びに確率的PLS−DAを試験した。また、見込み正常(n=45)及び癌(n=30)組織スペクトルについてのPCのスコア散布図(すなわち、PC1対PC2)も図25に示す。
【0098】
図26は、見込み胃サンプル10から得られた105スペクトル(正常45、30癌、30異常値)についての99%CIの境界を有するホテリングのT2(38.71%)及びQ−残余(61.29%)の見込み散布図を示す。点線は、見込みラマンスペクトルが主成分分析(PCA)モデルの一般的な組織変化の範囲内であるか否かを検証する99%信頼区間(CI)を表す。多数の非接触スペクトルは、99%CIの外側にあるため、組織診断に使われることなくリアルタイムで破棄されることが観察される。検証された組織のラマンスペクトルは、主に、T2及びQ−残余の99%CIの内部にあるが、これは、このオンラインデータ解析が生体組織スペクトルのリアルタイム検証の迅速かつ非常に効率的な手段を提供することを示す。
【0099】
オンライン異常値分析により確認された、将来的に取得されるスペクトルを、本疾患を予測するために確率的PLS−DAにさらに送り、病理組織学的検査によって確認されるように、胃癌の検出について80.0%(60/75)の診断精度を達成した(図27)。別々の点線は、生体内で正常胃組織から癌を分離するために90.0%の診断感度(27/30)及び73.3%(33/45)の特異性を与える。
【0100】
受信者動作特性(ROC)曲線を群分離を評価するためにさらに作成した。図28は、将来予測のためのスペクトルデータベースの各ランダム分配から計算されたROC曲線並びに将来データセット予測のために計算されたROCの平均を示す。遡及的及び将来的データセットについて作成されたROC曲線下積分面積は、それぞれ0.90及び0.92であり、生体内での胃癌の診断のためのPLS−DAアルゴリズムのロバスト性を示す。
【0101】
組織病理学的予測に対する上記の全てのオンラインデータ収集のための合計処理時間は0.13秒であった。図21のフローチャートの各ステップの処理時間を表1に示す。<0.5秒のフリーランニング光学診断及び処理時間を達成することができるが、これは、内視鏡検査でのリアルタイム生体内組織診断を実現するために重要である。
【0102】
【表1】
【0103】
例2
ラマン分光システムは、スペクトル安定化785nmダイオードレーザー(最大出力: 300mW、B&W TEK社、米国デラウェア州ニューアーク)及び液体窒素冷却裏面照射及びディープディプレッション型CCDカメラ(ピクセル当たり20×20μmで1340×400ピクセル;Spec−10:400BR/LN、プリンストンインスツルメンツ、ニュージャージー州トレントン)を搭載した透過イメージングスペクトログラフ(Holospec f/1.8、カイザーオプティカルシステムズ、ミシガン州アナーバー)を備える。また、このシステムは、中心光送出ファイバー(直径200μm、NA=0.22)を取り囲む9×200μm集光ファイバー(NA=0.22)を備える、特別に設計された溶融シリカ光ファイバーラマン内視鏡プローブ(外径1.8mm及び長さ1.30メートル)からなる。1.0mmのサファイアボールレンズ(屈折率1.76)が上皮組織ラマン測定を向上させるためにラマンプローブのファイバー先端に連結されている。このシステムは、800〜1800cm-1の範囲にわたって9cm-1のスペクトル分解能でラマンスペクトルを取得する。この研究における各ラマンスペクトルを785nm帯域通過フィルタ下において0.5秒の積分時間で測定した。この迅速なラマン分光法を、アルゴン/水銀スペクトルランプ(AR−1及びHG−1、オーシャンオプティクス社、フロリダ州ダニーデン)を使用して波長較正した。全ての波長較正スペクトルを、タングステン− ハロゲン較正ランプ(RS−10、EG&Gガンマサイエンティフィック、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してシステムの強度応答について補正した。
【0104】
図20〜22に記載されたシステム及び方法を使用して、リアルタイムデータ収集及び分析のためにラマン分光法システムを制御した。生体内組織から測定された生のラマンスペクトルは、弱いラマン信号と、強い自己蛍光バックグラウンドと、ノイズとの組合せを表す。生のスペクトルを一次サビツキー・ゴーレイ平滑化フィルタ(スペクトル分解能を一致させるように選択された3つのピクセルのウィンドウ幅)によって前処理してスペクトルノイズを低減させる。指紋領域(800〜1800cm-1)において、五次多項式は、ノイズ平滑化スペクトルにおいて自己蛍光バックグラウンドを適合させるのに最適であることが分かり、その後、この多項式を生のスペクトルから減算して組織ラマンスペクトルを単独で得る。上記の前処理の全てを100ミリ秒以内に完了し、そして処理結果をコンピュータ画面上にリアルタイムで表示することができる。
【0105】
PLS回帰は、光ファイバーラマンプローブからの特性内部基準バックグラウンド信号を抽出するための多変量法として使用した。簡単に言えば、PLSは、PCAの基本的な原理を利用するが、ただし、スペクトル変化と従属変数(例えば、帯域通過フィルタパワー)との間の共分散を最大化することによって成分LVを切り換え、それによって、LV負荷は、スペクトルデータセットにおける最も顕著な変動ではなく、関連する変動を説明する。帯域通過フィルタパワーに関連する重要なスペクトル基準信号を最初の数LVに保持した。この研究では、平均センタリングを実行してから、PLS回帰モデルの複雑さを軽減するためにモデル化した。PLS回帰モデルの最適な複雑さを、リーブ−1サブジェクトアウト相互検証を通じて決定し、そしてPLS回帰モデルの性能を、決定係数(R2)、較正の二乗誤差(RMSEC)を意味、較正の二乗平均平方根誤差(RMSEP)、クロスバリデーションの二乗平均平方根誤差(RMSECV)及び予測の二乗平均平方根誤差を算出することにより検討した。最適PLSモデルは、高いR2を有しているが、ただし、低いRMSEC、RMSECV及びRMSEPを有することに留意されたい。また、この研究における基準信号を分解するために開発されたPLS回帰モデルも、本発明のリアルタイム臨床ラマンソフトウェアのオンライン帯域通過フィルタ電力予測因子として実装し、そして公平な方法で将来的に試験した。多変量統計解析を、Matlab(マスワークス社、マサチューセッツ州ナティック)のプログラミング環境で実施した。
【0106】
合計30名の健常被験者(16名の女性及び14名の男性)を、口腔内での生体内組織ラマン測定のために募集した。生体内組織ラマン分光測定の前に、全ての被験者は、交絡因子(例えば、食物の残骸、微生物コーティング等)を低減するために大量のうがい薬を受けた。生体内組織のラマンスペクトル(n=783)を25名の被験者の内唇から採取した。25名の被験者について、生体内口腔組織ラマンスペクトル(n=〜5)を5〜65mW(〜10mWの間隔)の範囲内にある6つのパワーレベルで取得した。各組織ラマン測定の前に、帯域通過フィルタパワーレベルを±0.5%の直線性及び±3%の精度(0.1〜100mWの範囲)でパワー計を使用して光ファイバープローブの遠位先端で測定した。他の交絡因子(例えば、組織表面上のプローブ圧力、光退色、組織光学的特性及び光ファイバープローブの屈曲)を意図的には監視しなかったが、その場での基準信号のロバストな抽出のためにPLSモデルに組み込んだ。オンラインラマン取得フレームワークにおける開発PLSモデルの展開後に、帯域通過フィルタパワー監視のために内部基準信号の将来的かつ独立した検証を、新たな5名の被験者(n=166スペクトル)についてリアルタイムで行った。
【0107】
この研究で開発された内部基準法の定量値をさらに検証するために、本発明者は、組織ファントム実験も行った。様々なゼラチン濃度の組織ファントムを、ウシ皮膚のタイプBゼラチン(G9391、Sigma、米国)から調製した。ゼラチンを蒸留H2Oで所定濃度(20、25、30、35、40、45、50質量%)で溶解した。溶解したゼラチンを、連続的に撹拌しながら水浴中において1時間にわたり50℃に加熱した。その後、溶解したゼラチンを予め冷却した型(4℃)に注ぎ、そして2〜3時間保存して固体ゼラチンファントムを生成させた。次に、組織ファントムの定量的な光ファイバーラマン分光分析を行った。合計n=133のラマンスペクトルを、光ファイバーラマンプローブを様々なレーザパワーで使用して様々な組織ファントムから測定した。帯域通過フィルタパワーを10〜60mWの範囲で変更し、そして測定されたスペクトルを内部基準法によって予測されるように帯域通過フィルタパワーに対して正規化した。
【0108】
図11は、785nmダイオードレーザーによって励起されたときに使用されるボールレンズ光ファイバーラマンプローブのバックグラウンドスペクトルを示す。遠位ボールレンズに由来する異なるサファイア(Al23)ラマンピークを417及び646cm-1(A1g対称を有するフォノンモード)、380及び751cm-1(Egフォノンモード)で見出すことができる。溶融シリカファイバーからの2つの支配的なラマン成分並びに比較的弱いファイバー蛍光バックグラウンドが存在する。490及び606cm-1でD1及びD2と表記された溶融シリカの鋭い「欠陥ピーク」は、それぞれ、4及び3員環中における酸素原子の呼吸振動に割り当てられる。また、非晶質シリカ物質の一般的な特徴に関連する強いボソンラマンバンドの肩(〜130cm-1)も、光ファイバーラマンプローブのバックグラウンドスペクトルから観察される。シリカボソンバンドは、〜60cm-1付近でピークに達しているが、本発明のラマンプローブ設計の光学的フィルタリングのため肩しか明らかにならなかった。光ファイバーラマンプローブからのこれらの特性バックグラウンドラマンピーク(指紋領域よりも短い(800〜1800cm-1))は、それ自体が生体内組織ラマン測定のための内部基準信号として役立ち得る。
【0109】
PLS回帰モデルを開発し、かつ、内部基準信号を分解するために、本発明者は、独立したパラメータとして帯域通過フィルタパワーにより25名の被験者の口腔内での生体内ラマンスペクトルを測定した。各被験者について、生体内組織ラマンスペクトル(n=〜5)を、5〜65mWの範囲内で様々なパワーレベル(〜10mWの間隔)で取得した。図12は、様々な帯域通過フィルタパワー(例えば、10、30及び60mW)を使用して内唇から測定された平均生体内生ラマンスペクトル±1標準偏差(SD)の例を示す。変化する広範な自己蛍光バックグラウンドに重ねられた弱い組織ラマンシグナルを観察することができる。図29は、較正バックグラウンドのない平均ラマンスペクトル±1SDを示す。内唇の生体内ラマンスペクトルは、853cm-1(ν(CC))、1004cm-1(νs(C−C))、1245cm-1(タンパク質のアミドIII ν(C−N)及びδ(N−H))、1302cm-1(CH3CH2ねじれ及び振り)、1443cm-1(δ(CH2)変形)、1655cm-1(タンパク質のアミドIν(C=O))及び1745cm-1ν(C=O))の周辺にラマンピークを示す。一方、生の生体内組織ラマンスペクトル(図12)は、光ファイバーラマンプローブからの顕著な溶融シリカ及びサファイアのラマンピーク、つまり:380、417、490、606、646、及び751cm-1を有する。
【0110】
PLS回帰モデルは、口腔組織ラマンスペクトルから広範な特性内部基準ピークを抽出する。レイリー散乱光をPLS分析から除外した。測定された生体内生組織ラマンスペクトルを行方向スペクトル及び列方向波数を有するマトリックスに配置した。基準レーザパワーレベルを、従属変数を表す列ベクトルに配置した。平均センタリング後に、PLS回帰モデルを、帯域通過フィルタパワー予測のためにロブストな基準信号を表現するのに最適なアルゴリズムを確立するために、リーブワンサブジェクトアウトクロスバリデーションを用いて開発した。図14aは、保持されたLVの関数としてのレーザパワー予測のRMSEC及びRMSECVを示している。PLS回帰分析は、最適モデル(RMSECV=2.5mW)を、4LVを使用して得ることができることを示した。図14bは、最大ラマンスペクトル分散(すなわち、LV1:94.8%、LV2:3.0%、LV3:0.9%及びLV4:0.2%)及び帯域通過フィルタパワーの分散(LV1:80.1%、LV2:16.8%、LV3:0.8%、LV4:0.7%)を説明する最初の4つのLV負荷を表す。また、計算されたPLS回帰ベクトルも示す。図30aは、リーブワンサブジェクトアウトクロスバリデーションを使用した生体内レーザパワー監視結果(すなわち、予測レーザパワー対測定レーザパワー)を示す。データを次式(y=0.551+0.984x)で適合できるが、これは、かなりの直線関係(R=0.98)を示す。4LVのPLSモデルの複雑さは、2.5mWのRMSECV及び0.981のR2による帯域通過フィルタパワー監視のための正確な内部基準を付与した。その後、同じPLS回帰モデルを、5名の新たな被験者(n=166スペクトル)の独立した検証のためのラマンソフトウェアにオンラインでリアルタイムで実装した。図30bは、開発PLS回帰モデルを使用して、測定された実際の帯域通過フィルタパワーと予測された帯域通過フィルタパワーとの関係を示している。2.4mWのRMSEP及び線形関係(y=0.342+1.011x;R2=0.985)を得ることができるが、これは、生体内組織ラマン測定中に内部基準法としてPLS回帰の適用を再確認するものである。
【0111】
内部基準法の定量値を、組織ファントムの定量的スペクトル解析のために展開した。様々な濃度のゼラチンからなる7種の組織ファントム(すなわち、20、25、30、35、40、45及び50質量%)を構築し試験した。ゼラチンファントムからのラマンスペクトル(n=133スペクトル)を測定し、そして予測されたレーザーパワーに対してリアルタイムで正規化した。図31は、60mWの励起レーザパワーで様々な濃度のゼラチン組織ファントムから測定したラマンスペクトルを示す。予想通り、これらのラマンスペクトルは、ラマンピーク強度とゼラチン濃度との間で直線関係(R=0.992)を示す。図32は、様々な励起レーザパワー(10〜60mWで変化する)での実際のゼラチン濃度と予測濃度との相関関係を示している。その場でのリアルタイム帯域通過フィルタパワー監視によりレーザパワーの変動を補正することによって、ゼラチン組織ファントムの正確な定量分析を実現することができることは明らかである(RMSEP=1.9%及びR2=0.985)。上記の結果は、多変量内部基準信号に基づいて開発されたリアルタイムパワー監視方法が、光ファイバー組織ラマン分光法における堅牢な定量的組成分析を達成することができることを示している。
【0112】
例3:生体内リアルタイム経鼻画像誘導ラマン内視鏡検査:鼻咽頭及び喉頭におけるスペクトル特性の定義
この研究は、鼻内視鏡用途におけるラマン分光法の実現可能性を実証するものであり、頭頸部における大規模臨床研究のための基盤を提供する。開発された小型化ファイバーラマンプローブと統合された画像誘導ラマン内視鏡検査プラットフォームは、臨床内視鏡検査中に頭頸部の内因性組織成分の分子レベルでの迅速かつ低侵襲性の評価を提供する。これは、臨床医が頭頸部における組織の詳細な生体分子指紋を得るのを非常に容易にし、血管破裂又は組織脱水、形態学的及び解剖学的効果等に起因する画像の乱れを導入することなく、本物の組成及び形態学的署名を反映する。
【0113】
ラマン分光システムは、スペクトル安定化785nmダイオードレーザー(最大出力300mW、B&W TEK社、デラウェア州ニューアーク)と極低温冷却(−120℃)NIR最適化裏面照射及びディープディプレッション型電荷結合素子(CCD)カメラ(ピクセル当たり20×20μmで1340×400ピクセル、Spec−10:400BR/LN、プリンストンインスツルメンツ)を備える透過イメージングスペクトログラフ(Holospec f/1.8、カイザーオプティカルシステムズ)とからなる。新規分光ファイバー入力結合は、スペクトル分解及びラマン信号の信号対雑音比の両方を改善するための分光画像の収差を補正するために58本のファイバー(100μm)の放物線整列アレイからなる。組織の励起及び生体内組織ラマン収集の両方を最大化する経鼻内視鏡用途のための1.8mm光ファイバーラマンプローブを利用した。ラマンファイバープローブは、柔軟な経鼻内視鏡の作業用チャンネルに適合し、かつ、異なる広視野イメージング(すなわち、白色光反射率(WLR)及び狭帯域イメージング(NBI))ガイダンス下で咽頭及び喉頭内の様々な位置に向けることができる。臨床ラマン内視鏡検査プラットフォームを本発明者が最近開発したオンラインデータ処理ソフトウェアと統合して、プローブの取り扱い−アドバイスを容易にし、リアルタイム(<0.1秒の処理時間)で臨床医にサウンドフィードバックした。簡単に説明すると、オンラインラマン内視鏡フレームワークは、スペクトル取得(すなわち、レーザー露光、積分時間、CCDシャッター及び読み出しなど)を同期させ、かつ、平滑化、5次多項式ベースライン減算などを含めた確立された前処理方法を用いて生組織スペクトル(強い自己蛍光バックグラウンド及び弱いラマンシグナルを含む)からラマン信号を自動的に抽出する。生体内ラマンスペクトル及び多変量アルゴリズム(例えば、主成分分析)の結果を、臨床経鼻ラマン内視鏡検査中に理解可能なグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)にリアルタイムで表示することができる。
【0114】
異なる人種(22名のアジア人及び1名の白人)の合計23名の正常で健康な男性被験者を、経鼻内視鏡検査での生体内組織ラマン測定のために募集した。募集されたこれらの被験者では、WLR及びNB画像検査の下では疑わしい病変は全く特定されなかった。NPCが一般的に開始する真の喉頭声帯(LVC)、後部鼻咽頭(PN)及び咽頭陥凹すなわち、ローゼンミュラー窩(FOR))を含めた、想定された正常(又は良性)組織の合計3つの一次測定部位を、生体内でのラマン取得のためにあらかじめ定義した。光ファイバーラマンプローブを、リアルタイムで組織の内因性生体分子組成物と引テロゲートする内部組織と穏やかに接触した状態に置くことができる。生検組織部位に対する正確な位置決めを、担当の内視鏡医がWLR/NBIモニター上で確認した。このプローブは、ラマンスペクトルを約1mm3のプロービング体積及び〜800μmの侵入深さを有する所定の領域(直径200μm)から収集した。各スペクトルを、組織表面上に約〜50mWのパワーを有する785nmのレーザー光を用いて0.5秒内に取得した。
【0115】
ラマンスペクトルをオンラインで表示し、そして術後の検査のために保存した。この迅速なラマン内視鏡技術は、非破壊であり、かつ、臨床評価のための内視鏡的経鼻検査下で現在日常的に使用できる。内組織部位の分散を評価するために、いくつかのラマンスペクトル(〜18)を各組織部位から取得した。その結果、47の部位からの合計874の生体内ラマンスペクトルを経鼻内視鏡検査で測定し、そして23名の被験者からスペクトル解析のために使用した[PN(n=521)、FOR(n=157)及びLVC(n=196)。
【0116】
データ解析の前に、まず生のラマンスペクトルを、線形サビツキーゴーレイフィルタを用いて平滑化し、その後、組織の自己蛍光バックグラウンドを、5次多項式適合を使用して平滑化スペクトルから差し引いた。バックグラウンドを差し引いたラマンスペクトルを、様々な被験者及び組織部位に対する臨床的ラマン測定に及ぼすラマンプローブ処理変動の影響を最小にするために、曲線下積分面積に対して正規化した。処理された全てのラマンスペクトルをマトリックスに組み込み、次に全ラマンデータセットの平均センタリングを行った。スペクトルデータの次元を減少させるために、主成分分析(PCA)を使用して、組織特性決定のためのラマンスペクトルデータセットにおける最大分散を考慮する直交主成分(PC)のセットを抽出した。したがって、PC上の負荷は、分散を徐々に減少させる原因となるデータセットにおける最も顕著なスペクトル変化の直交基底スペクトルを表すのに対し、PC上でのスコアは、対応する負荷に関する組織ラマンスペクトルの投影値を表す。したがって、PCAを効率的に使用してスペクトル変化を分解できる共に、データセットの次元を最小限に低減させることができる。保持されたPCの数は、分散分析(ANOVA)及び0.05レベルでのスチューデントt検定に基づいて選択した。本発明者は、平均の差を評価するためにpost−hoc Fisherの最小二乗差(LSD)テストを用いた。多変量統計解析を、Matlab(マスワークス社、ナティック、MA)のプログラミング環境でPLSツールボックス(エイゲンベクトルリサーチ、ウェナチー、WA)使用して実施した。
【0117】
生体内ラマンスペクトルにおける高品質を、経鼻画像誘導(すなわち、WLR及びNBI)内視鏡検査中にリアルタイムで鼻咽頭及び喉頭において日常的に獲得することができる。図1は、内視鏡検査時に0.1秒の採取時間で後部鼻咽頭から取得した生体内生ラマンスペクトル(大きな組織自己蛍光のバックグラウンドに重ねた弱いラマン信号)の一例を示す。>10の信号対雑音比(SNR)を持つバックグラウンド除去組織ラマンスペクトル(図33の挿入図)を得ることができ、そして臨床内視鏡測定中にオンラインで表示することができる。図34は、ラマンプローブをWLR/NB画像ガイド下で組織と穏やかに接触させたときの正常の鼻咽頭[PN(n=521)及びFOR(n=157)]並びに喉頭組織[LVC(n=196)]の被験者間生体内平均ラマンスペクトル±1標準偏差(SD)を示す。取得した鼻咽頭と喉頭組織のラマンスペクトルとの比較(図34)は、体液中の生化学物質が経鼻内視鏡検査時に生体内組織ラマンスペクトルに有意には寄与していないことを示している。また、対応する解剖学的位置から得られたWLR画像も示されている。暫定的な生体分子の割り当てで表2にまとめたように、タンパク質及び脂質に関連する顕著なラマンバンドを同定する。
【0118】
【表2】
【0119】
図35は、ランダムに選択された被験者の被験者内平均スペクトル±1SDを示す。生体内組織ラマンスペクトルは、鼻咽頭及び喉頭において小さな被験者間及び内偏差(<10%)で再現可能であることが分かった。さらに、ラマン内視鏡検査は、後部鼻咽頭内の様々な組織部位間の変動がわずかであることを示す(<5%)(データは示さず)。また、本発明者は、図36に示すように様々な組織型(すなわち、PN−LVC、LV−FOR及びPN−FOR)間における差異スペクトル±1SDを算出し、様々な解剖組織部位の独特の組成及び形態学的プロファイルを生体分子レベルで解明する。ANOVAは、812、875、948、986、1026、1112、1254、1340、1450、1558、1655及び1745cm-1を中心とする3つの解剖組織部位間に有意な変動[P<0.0001]を示す12の顕著で広範なラマンスペクトルサブ領域を明らかに、鼻咽頭及び喉頭のラマンスペクトル特性を正確な生体内組織診断の方向に特徴づけることの重要性を再確認した。
【0120】
図37に示すように、健康な志願者から得た血液、唾液、鼻粘液の試験管内ラマンスペクトルを測定した。唾液及び鼻水における最も顕著なラマンバンドは、1638cm-1であるのに対し(水のv2屈曲モード)、血液は、1560及び1620cm-131付近のポルフィリンラマンバンドを示す。頭頸部における様々な組織間でのスペクトル差異をさらに評価するために、全分散(PC1:22.86%、PC2:16.16%、PC3:8.13%、PC4:6.22%、PC5:4.05%)の57.41%を占めるANOVA及びスチューデントt検定(p<0.05)に基づく5成分のPCAモデルを開発して、様々な解剖学的位置の有意なピーク変動を解明した。図38はPC負荷を示すが、これは、タンパク質(即ち、853、940、1004、1265、1450及び1660cm-1)及び脂質(すなわち、1078、1302、1440、1655及び1745cm-1)に関連した分解ラマンバンドを明らかにするものである。図39(A〜E)は、異なる組織タイプ(すなわち、PN、FOR及びLVC)のためのPCAスコアのボックスチャートを示す。各ノッチボックス内の線は中央値を表し、ボックス上限及び下限は、それぞれ、第1(25.0%パーセンタイル)及び第3(75.0%パーセンタイル)四分位数を示す。エラーバー(ウィスカー)は、1.5倍の四分位範囲を表す。また、p値も異なる組織型間で表される。線形判別分析(LDA)と統合された二値PCAアルゴリズムは、それぞれPN対FOR及びLVC対PN間の差異についてリーブ−1サブジェクトアウトクロスバリデーションを使用して77.0%(401/521)、67.3%(132/192)の感度及び89.2%(140/157)及び76.0%(396/521)の特異性を提供した。全体として、これらの結果は、頭頸部における鼻咽頭及び喉頭のラマンスペクトルを経鼻内視鏡で生体内で測定することができること、及び診断アルゴリズムの開発が最小のアルゴリズムの複雑性を確保するために組織部位特異的であるべきであることを実証する。
【0121】
例4:バレット食道における異形成のリアルタイム生体内診断のための光ファイバー共焦点ラマン分光法
光ファイバー共焦点ラマン診断は、リアルタイム(<0.5秒)で達成でき、かつ、バレット発癌における上皮細胞及び組織の進行性生体分子及び機能変化をその場で見出す。組織病理により、円柱上皮(n=597スペクトル)として将来的に測定された組織部位の152、腸上皮化(n=123スペクトル)として48、高度異形成(n=77スペクトル)として9を特徴付けた。受信者動作特性(ROC)分析を使用して、高度異形成の同定を成功裏に達成することができ、スペクトルベースで87.0%の感度及び84.7%の特異性をもたらした。ROC曲線下面積は0.90であった。リアルタイム機能を備えたこの新規生体分子特異的内視鏡のモダリティは、胃腸科医に、継続的な内視鏡検査中にバレット患者における高リスク組織領域を客観的に対象とするための信頼性の高いツールを提供する。
【0122】
共焦点ラマン分光システムは、近赤外(NIR)ダイオードレーザー(λex=785nm)と、液体窒素冷却NIR最適化電荷結合素子(CCD)カメラを装備したハイスループット透過イメージング分光器と、特別に設計された1.8mmの光ファイバー共焦点ラマンプローブとから構成される。このシステムは、〜9cm-1のスペクトル分解能で800〜1800cm-1範囲でラマンスペクトルを取得する。開発された光ファイバー共焦点ラマン内視鏡プローブは、レーザー光送達及び生体内組織ラマン信号の収集の両方に使用される。
【0123】
1.8mm(外径)共焦点ラマン分光内視鏡プローブは、中心光伝送ファイバー(直径200μm、NA=0.22)を取り囲む9×200μmフィルター被覆集光ファイバー(NA=0.22)を備える。小型の1.0mmサファイアボールレンズ(NA=1.78)を共焦点プローブのファイバー先端に連結して組織に励起光をしっかりと集光させ、上皮層(<200μm)からの実効ラマンスペクトル収集を可能にする。光ファイバー共焦点ラマンプローブを従来の内視鏡作業用チャンネルに挿入し、そして生体内組織キャラクタリゼーション及び診断のために上皮と穏やかに接触した状態にすることができる。この共焦点ラマンプローブの深度選択性は、次の事項を含めて説得力のある実験的な利点を提供する:(i)光ファイバー共焦点ラマン分光法は、バレット発癌の早期発症に関連した上皮層を選択的にターゲットにし、このことは、より大きな組織容量を調べる従来の容積型光ファイバーラマンプローブよりも優れていること;(ii)共焦点ラマン技術の浅い組織インタロゲーション能力は、より深い組織層(例えば、間質)からの組織自己蛍光寄与が大幅に低減されているため、より高い組織ラマン対自家蛍光バックグラウンド比を与えること、及び(iii)この新規光ファイバー共焦点ラマン分光法プラットフォームと十分に立証された多変量解析とを組み合わせることで、上皮分子情報を抽出し、そして生体内でリアルタイムに分析することを可能にすること。共焦点ラマン内視鏡システム全体は、内視鏡医に対する聴覚的確率フィードバックにより内視鏡スクリーニング設定において迅速な調査を可能にする直感的なソフトウェアフレームワークで制御されており、これは、ラマン分光法の最先端を日常的な臨床診断にする。
【0124】
合計450人の患者を、消化不良及び上部消化管腫瘍形成を含めた種々の適応症のサーベイランスやスクリーニングのためにラマン内視鏡検査で登録した。疑われる病変の典型的な検査の間に、各組織ラマン測定値を0.5秒以内に取得することができるが、これは、大組織領域の迅速な調査を可能にする。上部GIにおいて様々な組織学的サブタイプを有する373人の患者から得られた生体内ラマンスペクトルデータを使用して、包括的なラマンライブラリ(>12000ラマンスペクトル)を構築した。BEのスクリーニング及び監視のために募集された患者について、ラマンスペクトルを次の3つ病理組織学的リスククラスに分類する:(i)「正常」−円柱上皮(CLE)、(ii)杯細胞の存在として定義される「低リスク」BE、(iii)「高リスク」−低悪性度異形成(LGD)及び高度異形成(HGD)。例えば、図40Aは、組織病理学的特性評価によって確認されたように異なる組織型(すなわち、扁平上皮(n=165)、CLE(n=907)、腸上皮化(IM)(n=318)及びHGD(n=77))で提示する本発明のデータベースにおいて患者から測定された平均生体内共焦点ラマンスペクトルを示している。それぞれのラマンスペクトルを0.5秒以内に取得した。これらのスペクトルを比較目的のために1445cm-1でのラマンピークに正規化した。顕著な組織ラマンピークが、936cm-1(ν(C−C)タンパク質)、1004cm-1(フェニルアラニンのνs(CーC)環呼吸)、1078cm-1(脂質のν(C−C))、1265cm-1(タンパク質のアミドIII ν(C−N)及びδ(N−H))、1302cm-1(タンパク質のCH2ねじれ及び振り)、1445cm-1(タンパク質及び脂質のδ(CH2)変形)、1618cm-1(ポルフィリンのV(C=C))、1655cm-1(タンパク質のアミドIv(C=O))及び1745cm-1(脂質のν(C=O))周辺で観察できる。顕著なラマンスペクトルの相違(例えば、ピーク強度、シフト及びバンドの広がり)を異なる組織型間で識別することができる。これらの豊富なスペクトル特性は、バレット発癌に伴って上皮に発生する生体分子及び機能的変化を表現する。組織学が杯細胞並びに進行性の構造的及び細胞学的異型の存在を同定する(図40(B、C、D、E)一方で、光ファイバー共焦点ラマン分光法は、上皮がバレット発癌シーケンス全体にわたる主要な機能及び生体分子の変化を受けることを明らかにする。BEのラマン生体分子署名が異形成のそれとかなり似ていることは興味深く、これは、腸化生表現型への転換がバレット発癌における重要な事象であることを確認するものである。これらの非常に特異的な上皮分子署名は、おそらく、多数の内因性光学バイオマーカー(すなわち、腫瘍性タンパク質、DNA、ムチン発現、有糸分裂等)を反映する。したがって、上皮ラマンスペクトル特性と組織病理学又は組織化学との相関関係は、生体分子レベルでのその場でのバレット発症及び進行の理解を深めることができる。現時点では、他の競合の光学分光技術(例えば、蛍光弾性散乱分光法)は、内視鏡検査時において生体内でのこのような徹底的な分子特性を提供することはできない。
【0125】
組織病理は、CLEとして将来的に(すなわち、独立して)測定された組織部位の152(n=597スペクトル)、IMとして48(n=123スペクトル)及びHGDとして9(n=77スペクトル)を特徴づけた。図41Aは、正常、低リスク及び高リスク病変の共焦点ラマンスペクトルに属する77人の患者における将来的測定リスクスコアの二次元三散布図を示している。また、対応する二値受信者動作特性(ROC)曲線(図41B)も図3Aから生成し、その曲線下面積(AUC)は、正常、低リスク及び高リスク病変間の識別のために、それぞれ、0.88、0.84及び0.90である。共焦点ラマン技術がBE(図41A)により低リスク病変を区別するのみならず、異形成上皮を含む特定の組織領域を客観的に局所化することができた。上記ROC分析は、高リスク組織の標的化検出をリアルタイムで達成することに成功でき、スペクトル基準で87.0%(67/77)の診断感度及び84.7%(610/720)の特異性を得ることができることを示す。
【0126】
上記の説明では、実施形態は、開示されたシステム及び方法の例示又は実施である。「一実施形態」、「実施形態」又は「いくつかの実施形態」の様々な表現は、必ずしも同じ実施形態に言及しているとは限らない。
【0127】
開示されたシステム及び方法の様々な特徴を単一の実施形態の文脈で説明することができるが、これらの特徴は、別個に又は任意の好適な組み合わせでも提供できる。逆に、開示されたシステム及び方法は、明確にするために別個の実施形態の文脈において記載することができるが、開示されたシステム及び方法は、単一の実施形態でも実施できる。
【0128】
さらに、開示されたシステム及び方法を様々な態様で実施又は実現でき、かつ、上で概説した以外の実施形態で実施することができることを理解すべきである。
【0129】
本明細書で使用した技術用語及び科学用語の意味は、特に明記しない限り、一般的に、当業者が属するものとして解すべきである。
【0130】
本開示の特定の態様は、方法の形式で記載した処理ステップ及び命令を含む。本開示のプロセスステップ及び命令は、ソフトウェア、ファームウェア又はハードウェアで具現化でき、またソフトウェアで具現化する場合には、リアルタイムネットワークオペレーティングシステムによって使用される別のプラットフォーム上に常駐又はそれから操作されるようにダウンロードできるであろうことに留意すべきである。
【0131】
また、本開示は、ここでの動作を実行するための装置に関するものでもある。この装置は、要求される目的のために特別に構築してもよいし、コンピュータによってアクセス可能なコンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成された汎用コンピュータを備えてもよい。このようなコンピュータプログラムは、有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、光磁気ディスクを含めた任意のタイプのディスク、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気若しくは光カード、特定用途向け集積回路(ASIC)又は電子命令を格納するのに好適な任意のタイプの媒体(これらに限定されない)であって、それぞれがコンピュータシステムバスに接続されたものに格納されてもよい。さらに、本明細書でいうコンピュータは、単一のプロセッサを包含することができ、又は計算能力増大のためのマルチプロセッサ設計を使用するアーキテクチャであることができる。
【0132】
本明細書で提示した方法及び操作は、本質的に任意の特定のコンピュータその他の装置に関連するものではない。また、様々な汎用システムを、本明細書の教示に従ってプログラムと共に使用することもでき、或いは必要な方法ステップを実行するためにより特化した装置を構築することが便利である。これらの様々なシステムに必要な構造は、均等のバリエーションと共に、当業者には明らかであろう。また、本開示は、特定のプログラミング言語を参照して説明されていない。様々なプログラミング言語を使用して本明細書に記載の本開示の教示を実施できること及び特定の言語に対する言及は、実施可能要件の開示及び本発明のベストモードのために提供されることを理解されたい。
【0133】
本開示は、多数のトポロジーにわたって広範囲のコンピュータネットワークシステムに適している。この分野では、大規模ネットワークの構成及び管理は、インターネット、公衆ネットワーク、プライベートネットワーク又はコンピューティング・システム間の通信を可能にする他のネットワークなどネットワークを介して異種のコンピュータ及びストレージデバイスに通信接続されるストレージデバイス及びコンピュータを備える。最後に、本明細書で使用する用語は、主として、意味の取りやすさ及び教示の目的から選択されたものであり、本発明の主題を限定するために選択されたものではないことに留意すべきである。したがって、本発明の開示は、例示することを意図するものであり、特許請求の範囲に記載された開示の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0134】
10 診断用器具が
11 内視鏡自体
16 CCD
17 CCD
21 単色レーザー光源
22 帯域通過フィルタ
25 励起光ファイバー
26 サファイアボールレンズ
28 集光ファイバー
29 ロングパスインライン捕集フィルタ
30 分光器
35 コンピュータ
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図40A
図40B-E】
図41A
図41B