特許第6230097号(P6230097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6230097-重力制御装置 図000005
  • 6230097-重力制御装置 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230097
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】重力制御装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/36 20060101AFI20171106BHJP
   B64G 7/00 20060101ALI20171106BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C12M1/36
   B64G7/00 A
   C12M1/00 D
   C12M1/34 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-124777(P2013-124777)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-8(P2015-8A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】513070484
【氏名又は名称】株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシスリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(72)【発明者】
【氏名】弓削 類
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕美
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−185698(JP,U)
【文献】 特許第3659816(JP,B2)
【文献】 特開2012−212234(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114620(WO,A1)
【文献】 特開2010−240242(JP,A)
【文献】 特開2007−131261(JP,A)
【文献】 特開2011−213138(JP,A)
【文献】 特開2007−284006(JP,A)
【文献】 Biological Sciences in Space,1998年,Vol.12, No.3,p.316-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
B64G 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動装置の駆動によって第1軸のまわりを回転する第1回転体と、
第2駆動装置の駆動によって、前記第1回転体の回転領域の内側領域にて、前記第1軸に直交する第2軸のまわりを回転する第2回転体と、
前記第2回転体の任意の位置に設置されて加速度を検出する加速度検出装置と、
前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置の駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記加速度検出装置で検出された加速度データに基づいて、下式1から加速度ベクトルを算出し、所定時間当たりの前記加速度ベクトルの積分が所定の値となるように前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置の駆動を制御する、
【数1】

(式1中、A、g、r及びωは、それぞれ、前記第2回転体の任意の点Pにおける加速度ベクトル、前記点Pにおける重力加速度ベクトル、前記第1軸及び前記第2軸の交点から前記点Pへの距離ベクトル及び前記点Pにおける角速度ベクトルを表す。)
ことを特徴とする重力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の分野において、重力を制御可能な装置が提案されている。例えば、宇宙での細胞培養実験等から生物の成長は重力に大きく影響を受けることが知られており、地球上においても無重力環境下或いは低重力環境下で細胞培養実験を行い得るよう、重力を変動させて擬似的に微小重力を発生させ得る装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、第1回転軸まわりに回転する第1回転体と第1回転軸に直交する第2回転軸まわりに回転する第2回転体とから構成され、3次元的に培養容器を回転させる装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複雑な計算式に基づいて第1回転体及び第2回転体の回転を制御しているため、装置の製造コストが高くなるという課題を有する。
【0006】
本発明は上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な処理に基づいて第1回転体及び第2回転体の回転を制御可能で製造コストの低減が可能な重力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る重力制御装置は、
第1駆動装置の駆動によって第1軸のまわりを回転する第1回転体と、
第2駆動装置の駆動によって、前記第1回転体の回転領域の内側領域にて、前記第1軸に直交する第2軸のまわりを回転する第2回転体と、
前記第2回転体の任意の位置に設置されて加速度を検出する加速度検出装置と、
前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置の駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記加速度検出装置で検出された加速度データに基づいて、下式1から加速度ベクトルを算出し、所定時間当たりの前記加速度ベクトルの積分が所定の値となるように前記第1駆動装置及び前記第2駆動装置の駆動を制御する、
【数1】

(式1中、A、g、r及びωは、それぞれ、前記第2回転体の任意の点Pにおける加速度ベクトル、前記点Pにおける重力加速度ベクトル、前記第1軸及び前記第2軸の交点から前記点Pへの距離ベクトル及び前記点Pにおける角速度ベクトルを表す。)
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る重力制御装置では、簡易な処理で第1回転体及び第2回転体の回転を制御可能であることから、製造コストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】重力制御装置が作動している状態を示す斜視図である。
図2】重力制御装置の内部構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しつつ、本実施の形態に係る重力制御装置について説明する。重力制御装置1は、図1、2に示すように、第1回転体10、第1軸11a、11b、第1駆動装置収容部32に収容された第1駆動装置12、第2回転体20、第2軸21a、21b、第2駆動装置収容部33に収容された第2駆動装置22、支持台30、支持部材31a、31b、加速度検出装置40、制御装置50を備える。
【0012】
支持台30から支持部材31a、31bが対向して立設している。この支持部材31a、31bの間に第1回転体10、第2回転体20等が支持されている。
【0013】
第1回転体10は、第1軸11a、11bに軸支されている。第1軸11a、11bは同軸上に配置されている。第1軸11aの一端が第1回転体10と連結しており、また、他端が第1駆動装置12の出力軸12aに連結している。第1軸11bは、支持部材31aに固定されて第1回転体10が摺動可能な形態であっても、第1回転体10に固定されて支持部材31aに対して摺動可能な形態であってもよい。このような構成により、第1駆動装置12が駆動すると出力軸12aに連結した第1軸11aが回転し、第1回転体10が第1軸11a、11bまわりに回転する。
【0014】
第1回転体10は、ここでは矩形の枠体であり、第1回転体10の回転領域の内側領域には、第2回転体20が配置されて回転可能な程度の空間を有している。
【0015】
第1回転体10の対向する枠それぞれに、第2軸21a、21bがそれぞれ取り付けられている。第2軸21a、21bは同軸上に配置されている。この第2軸21a、21bに第2回転体20が取り付けられている。
【0016】
第2軸21aの一端は第2回転体20に連結しており、また、他端が傘歯車28に連結している。傘歯車28が回転すると、第2回転体20は第1回転体10の内側領域にて回転する。第2軸21bは、一端が第2回転体20に連結しており、また、他端は第1回転体10に摺動可能に取り付けられている。
【0017】
第2回転体20は、微少重力環境や荷重力環境等、種々の重力環境下におきたいものが取り付けられる場である。例えば、第2回転体20には、細胞培養用の密封型の培養容器が取り付けられ、微少重力環境や荷重力環境等、種々の重力環境下にて細胞の培養実験を行うことができる。第2回転体20への培養容器の取り付けは、第2回転体20の任意の箇所に紐やゴム、固定具などを用いて固定される。また、第2回転体20には、細胞容器取り付け用の取り付け部が形成されていてもよい。
【0018】
第2駆動装置22は、支持部材31aに設置されている。第2駆動装置22の出力軸22aが第1軸11a、11bと平行に設置されており、出力軸22aには、歯車23が設置されている。歯車23は、第1軸11bに摺動可能に取り付けられた歯車24と噛み合うよう設置されている。
【0019】
歯車24は第1回転体10の内部に配置される傘歯車25と一体的に形成されている。歯車24及び傘歯車25には第1軸11bが貫通しており、歯車24及び傘歯車25が第1軸11bに対して摺動可能に構成されている。
【0020】
第1回転体10の内部には、第2駆動装置22からの駆動力を第2軸21aへ伝達する回転力伝達部材26、27が配置されている。
【0021】
回転力伝達部材26は、シャフト26bの両端に傘歯車26a、26cがそれぞれ取り付けられて構成されている。シャフト26bは、第1回転体10に摺動可能に設置されるとともに、第1軸11aに対して垂直に(第2軸21a、21bに対して平行に)設置されている。
【0022】
一方、回転力伝達部材27は、シャフト27bの両端に傘歯車27a、27cがそれぞれ取り付けられて構成されている。シャフト27bは、第1回転体10に摺動可能に設置されるとともに、第1軸11aに対して平行に(第2軸21a、21bに対して垂直に)設置されている。
【0023】
回転力伝達部材26の傘歯車26cは第1軸11bに取り付けられている傘歯車25と噛み合っている。また、傘歯車26aは、回転力伝達部材27の傘歯車27aと噛み合っている。また、傘歯車27cは第2回転体20に連結している第2軸21aに取り付けられた傘歯車28と噛み合っている。
【0024】
第1駆動装置12及び第2駆動装置22は、第1回転体10、第2回転体20に回転力を供給可能な電動の駆動装置が用いられ、例えば、出力軸12a、22aの回転を高精度に制御可能なサーボモータ、ステッピングモータ等のモータが用いられる。
【0025】
加速度検出装置40は、第2回転体20の任意の位置に設置され、第2回転体20の任意の位置の加速度を検出する。加速度検出装置40として、X軸、Y軸、Z軸の3方向の加速度をそれぞれ検出可能な3軸加速度センサが用いられる。
【0026】
制御装置50は、第1駆動装置12及び第2駆動装置22のそれぞれの回転数を制御し、第1回転体10及び第2回転体20の回転数を制御する。
【0027】
制御装置50は、加速度検出装置40で検出された加速度データに基づき、第1駆動装置12及び第2駆動装置22の駆動を制御する。
【0028】
なお、加速度検出装置40と制御装置50とは、無線で加速度データを通信可能な形態であることが好ましい。この場合、加速度検出装置40が無線送信部を備え、一方の制御装置50が無線受信部を備える。
【0029】
また、加速度検出装置40は、内蔵の蓄電池を備え、外部から無線で電力伝送を受けて、加速度の検出及び制御装置50への送信を行い得る形態であることが好ましい。この場合、支持台30や支持部材31a、31等、任意の箇所に加速度検出装置40に電力伝送を行い得る装置を備える。電力伝送の方式として、電波方式、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式など公知の方式が用いられ得る。
【0030】
続いて、制御装置50による第1回転体10、第2回転体20の回転制御について説明する。
【0031】
第1駆動装置12及び第2駆動装置22が駆動して、第1回転体10及び第2回転体20がそれぞれ回転している間、継続的に加速度検出装置40が3軸方向の加速度を検出する。
【0032】
この検出された加速度データは、制御装置50に送信される。制御装置50では、送信された加速度データに基づき、式1を用いて加速度ベクトルを算出する。加速度検出装置40が設置されている箇所を点Pとした場合、式1中のA、g、r及びωは、それぞれ、点Pにおける加速度ベクトル、点Pにおける重力加速度ベクトル、第2回転体の中心(第1軸11a、11b及び第2軸21a、21bの交点)から点Pへの距離ベクトル及び点Pにおける角速度ベクトルを表している。
【数2】
【0033】
加速度検出装置40では、3軸方向のそれぞれの方向の加速度データが得られ、制御装置50では、得られたそれぞれの加速度データから点Pにおける第1軸11a、11bまわりの角速度ベクトル(ω)、第2軸21a、21bまわりの角速度ベクトル(ω)、並びに重力加速度ベクトル(g)が成分解析される。また、第1軸11a、11bまわりの角速度ベクトル(ω)及び第2軸21a、21bまわりの角速度ベクトル(ω)から点Pにおける角速度ベクトル(ω)が解析され、式1に基づいて点Pにおける加速度ベクトルを算出する。なお、上記の解析は任意の手法で行い得る。また、任意の点における第1軸11a、11bまわりの角速度ベクトル(ω)、第2軸21a、21bまわりの角速度ベクトル(ω)は、回転数検出装置による検出に基づく形態であっても、第1駆動装置12及び第2駆動装置22の回転数から算出する形態であってもよい。
【0034】
そして、第1回転体10及び第2回転体20が回転している最中、継続して点Pの加速度ベクトルが算出され、所定時間あたり(例えば、10分間)の加速度ベクトルの積分が擬似無重力状態(およそ1/1000G)となるように、フィードバックして第1駆動装置12及び第2駆動装置22の駆動を制御する。これにより、擬似的に微小重力環境を生成させ得る。例えば、第1回転体10の角速度と第2回転体20の角速度の比を特定の比とし、第1回転体10及び第2回転体20をそれぞれ等角速度で回転させるよう、第1駆動装置12及び第2駆動装置22の駆動を制御してもよい。
【0035】
また、制御装置50が所定時間あたりの点Pにおける加速度ベクトルの積分が1/6Gとなるよう、第1回転体10及び第2回転体20のそれぞれの回転を制御することで月における重力環境の再現のほか、2Gや3Gなど1Gを超える荷重力環境など多彩な重力環境を擬似的に再現することも行い得る。
【0036】
このように、本実施の形態に係る重力制御装置1では、簡易な処理で第2回転体20内の空間を微小重力環境のほか、種々の重力環境にすることができ、重力制御装置1のコストの低減が可能である。
【0037】
なお、上記では、第2駆動装置22が第1回転体10の外部に配置された例をとって説明したが、第2駆動装置22が第1回転体10に設置され、スリップリング及びブラシから構成されるカップリング等の接触式給電機構によって電力を供給して第2駆動装置22を駆動させる形態であっても同様に制御可能である。
【0038】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0039】
1 重力制御装置
10 第1回転体
11a、11b 第1軸
12 第1駆動装置
12a 出力軸
20 第2回転体
21a、21b 第2軸
22 第2駆動装置
22a 出力軸
23 歯車
24 歯車
25 傘歯車
26 回転力伝達部材
26a 傘歯車
26b シャフト
26c 傘歯車
27 回転力伝達部材
27a 傘歯車
27b シャフト
27c 傘歯車
28 傘歯車
30 支持台
31a、31b 支持部材
32 第1駆動装置収容部
33 第2駆動装置収容部
40 加速度検出装置
50 制御装置
図1
図2