(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230107
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】埋設具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20171106BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
E04B1/58 508L
E04B1/58 505L
E04B1/26 G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-244214(P2013-244214)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-101902(P2015-101902A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】500292851
【氏名又は名称】大倉 憲峰
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】大倉 憲峰
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−185585(JP,A)
【文献】
特開2007−077629(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0135746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材(41、51)同士の連結部で用い、該部材(41又は51)に形成された下穴(52又は42)に埋め込む棒状の埋設具であって、
円柱形の胴体(23)の側周面から突出し且つ螺旋状に伸びる凸条(25)を有するスクリュー部分(21)と、
前記下穴(52又は42)の中に充填された接着剤(A)によって前記部材(41又は51)と一体化する係留軸部分(31)と、
が同心で直列状に一体化してあり、且つその中心には雌ネジ(26)又は雄ネジ(22)を設けてあり、
前記スクリュー部分(21)と前記係留軸部分(31)は別途に製造して、
双方の境界面には、一対の雌ネジ(27、37)または一対の雄ネジ(29)と雌ネジ(37)を設け、該一対の雌ネジ(27、37)をスタッドボルト(88)で引き寄せるか、または該一対の雄ネジ(29)と雌ネジ(37)を螺合させ、
該スクリュー部分(21)と該係留軸部分(31)を一体化することを特徴とする埋設具。
【請求項2】
部材(41、51)同士の連結部で用い、該部材(41又は51)に形成された下穴(52又は42)に埋め込む棒状の埋設具であって、
円柱形の胴体(23)の側周面から突出し且つ螺旋状に伸びる凸条(25)を有するスクリュー部分(21)と、
前記下穴(52又は42)の中に充填された接着剤(A)によって前記部材(41又は51)と一体化する係留軸部分(31)と、
が同心で直列状に一体化してあり、且つその中心には貫通孔(28)を設けてあり、
前記係留軸部分(31)の根元付近には、該貫通孔(28)と外部とを連通する排気孔(39)を設けたことを特徴とする埋設具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築を始めとする各種木構造において、部材同士の連結部で用いる埋設具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築は、住宅などの比較的小規模な建物を中心に普及してきた。しかし近年は、集成材の製造技術の向上に伴い、大断面の部材を無理なく入手できるようになり、また木材を鉄骨のように組み上げる門型フレーム構法などの技術開発が進み、木造建築の大型化が妥当なコストで実現できるようになった。この大型化に際しては、部材同士の連結部の剛性を一段と高める必要があり、金属製のラグスクリューやシャフトを部材の中に埋め込むことが多い。ラグスクリューは、通常の木ネジよりも大径であり、埋め込みには相応の設備が必要となる。
【0003】
門型フレーム構法の例として後記特許文献1が挙げられる。この文献では、大断面の縦材と横材を連結するため、基本金物と付属金物からなる一対の金物を使用しており、さらに金物を縦材や横材に固定するため、縦材の側面および横材の端面にラグスクリュー(取付具)を埋め込んでいる。ラグスクリューを用いることで、縦材や横材に作用する応力が緩和されるほか、木材の経年変形の影響も受けにくくなり、連結部の剛性を長期間維持できる。
【0004】
またラグスクリューの使用例として後記特許文献2が挙げられる。この文献では、二本の柱をつなぐ技術が開示されており、美観を向上するため、連結に関与する全ての部品を内部に埋め込むことを特徴としている。詳細には、連結される二部材のうち、一方の端面にはラグスクリューを埋め込み、他方の端面には異形棒鋼を埋め込み、ラグスクリューと異形棒鋼をスタッドボルトで引き寄せ、二部材を一体化している。なお施工時は、同心で対向するラグスクリューと異形棒鋼をスタッドボルトで引き寄せた後、異形棒鋼を接着剤で部材に固定する。
【0005】
そのほか、ラグスクリューの埋め込み方法の例として後記特許文献3が挙げられる。この文献では、ラグスクリューを用いた構造部材同士の連結部について、粗質な木材を使用した場合でも、ラグスクリューの緩みを阻止できる方法が開示されている。詳細には、まずドリルで部材に下孔を加工して、次に、下孔にタップを差し込み、その内周を雌ネジ状に加工する。その後、下孔の内部に接着剤を注入して、さらに、下孔にラグスクリューをねじ込んでいくと、下孔(タップ抜け孔)とラグスクリューが螺合するほか、ラグスクリューと下孔との隙間には接着剤が充満する。そのためラグスクリューは、不動状態で部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−132168号公報
【特許文献2】特開2012−77545号公報
【特許文献3】特開2013−44345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建築物の強度設計をする際は、自重などに基づく長期荷重や、地震や暴風といった突発的要因に基づく短期荷重のほか、経年による腐食など、様々な要因を考慮する必要がある。国内おいては、大規模な地震の可能性が指摘されているほか、大型台風や竜巻も発生しており、より高い安全性を確保するため、短期荷重を一段と厳しく見積もる傾向がある。そのため、部材同士の連結部で用いるラグスクリューについても、重要箇所を中心に直径や延長を増大させて、引抜荷重に対する耐力を向上させる場合がある。しかしラグスクリューを長大化することで、埋め込みの際、部材との摩擦も増大するため、従来の設備では作業が困難になり、何らかの改善策が求められている。
【0008】
また安全性の観点から、近年、建築分野においても「フェールセーフ」の思想が導入されており、部材同士の連結部で用いる各種金物についても、特異な要因で本来の機能が発揮できなくなった場合でも、何らかのバックアップによって連結部の破損を食い止め、必要最低限の安全性を維持できる対策が待ち望まれている。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、木造建築を始めとする各種木構造において、部材同士の連結部で用い、部材への埋め込み作業が容易で、また安全性にも優れた埋設具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、部材同士の連結部で用い、該部材に形成された下穴に埋め込む棒状の埋設具であって、円柱形の胴体の側周面から突出し且つ螺旋状に伸びる凸条を有するスクリュー部分と、前記下穴の中に充填された接着剤によって前記部材と一体化する係留軸部分と、が同心で直列状に一体化してあり、且つその中心には
雌ネジ又は雄ネジを設けてあり、前記スクリュー部分と前記係留軸部分は別途に製造して、双方の境界面には、一対の雌ネジまたは一対の雄ネジと雌ネジを設け、該一対の雌ネジをスタッドボルトで引き寄せるか、または該一対の雄ネジと雌ネジを螺合させ、該スクリュー部分と該係留軸部分を一体化することを特徴とする埋設具である。
【0011】
本発明による埋設具は、部材同士の連結部において、部材の端面や側面に加工された円断面の下穴に埋め込まれ、これとボルトや金物などを組み合わせ、部材同士の連結を実現する。仮に、部材同士をボルトで連結する場合、一方の部材に埋設具を埋め込み、この埋設具に向けて他方の部材からボルトを差し込み、部材同士を引き寄せる。また部材に金物を取り付ける場合、埋設具はその基礎となり、金物と部材を緩みなく一体化する。なお埋設具は金属製の棒状で、大別してスクリュー部分と係留軸部分で構成される。
【0012】
スクリュー部分は、従来のラグスクリューと同じ形状で、円柱形の胴体と、その側周面から半径方向に突出する凸条で構成され、凸条は、胴体を螺旋状に取り囲んでいる。なお、部材に加工する下穴は、胴体を無理なく差し込み可能で、且つ凸条が部材の中に食い込むよう、内径を調整する。そのため埋設具を埋め込む際は、埋設具の一端を下穴に差し込んだ後、スパナなどの工具を掛けて回転を与え、凸条を徐々に部材の中に食い込ませていく。食い込んだ凸条は、部材との間で大きな摩擦が発生して、全体が不動状態で固定される。
【0013】
係留軸部分は、下穴の中に充填された接着剤によって部材と一体化する。そのため、係留軸部分と下穴との境界には、接着剤が入り込む程度の隙間を確保することが好ましい。なお係留軸部分は、単純な円柱形とすることもできるが、軸線方向の荷重に対する強度を確保するため、側周面に何らかの凹凸を設けることが多い。また接着剤は、あらかじめ係留軸部分に塗布することもできるが、部材の表面から下穴につながる孔を加工して、そこから注入することもできる。
【0014】
スクリュー部分と係留軸部分は、同心且つ直列に並ぶ。そのため、一端側がスクリュー部分で、他端側が係留軸部分となる。しかも両部分は、部材の中に埋め込む前の段階で、一体化されていることを前提とする。またスクリュー部分を埋め込む際は、相応のねじり荷重が作用するが、これに耐えられるよう、各部の強度を確保する。そのほか下穴の内径は、作業性の観点から、スクリュー部分と係留軸部分の全域で同一とすべきだが、事情があれば差を設けても構わない。
【0015】
埋設具の中心には、
雌ネジまたは雄ネジを設ける。雌ネジは、ボルトの軸部を螺合させるためのもので、一端面の中心または両端面の中心に形成する。
また雄ネジは、ナットを螺合させるためのもので、一端面の中心または両端面の中心に形成する。
なお一端面の中心に雌ネジを形成して、他端面の中心に雄ネジを形成することもできる。
【0016】
このように、一本の埋設具において、スクリュー部分と係留軸部分といった性質の異なる二要素を一体化することで、スクリュー部分の直径や延長を増大させることなく、全体としての強度を向上できるため、長期荷重のほか、短期荷重に対しても十分な余裕が確保され、建築物の安全性を向上できる。さらに、スクリュー部分の直径や延長を増大しないことから、埋め込みの際の手間は従来と変わらず、新たな設備投資などは不要で、無理なく作業を進めることができる。またスクリュー部分と係留軸部分を一体化することで、冗長性が確保され、極限状態においても、一定の安全性を維持できる。
【0017】
加えて本発明では、スクリュー部分と係留軸部分を別途に製造して、双方の境界面には、一対の雌ネジまたは一対の雄ネジと雌ネジを設け、該一対の雌ネジをスタッドボルトで引き寄せるか、または該一対の雄ネジと雌ネジを螺合させ、該スクリュー部分と該係留軸部分を一体化することを特徴とする。スクリュー部分と係留軸部分は、一体で製造することもできるが、本発明のように、それぞれを別途に製造した後、双方を一体化することもできる。
【0018】
スクリュー部分と係留軸部分を別途に製造することで、既存品の流用が容易になり、製造原価の抑制を期待できる。なおスクリュー部分と係留軸部分は、溶接で一体化することもできるが、両部分を狂いなく同心に揃えることが難しく、さらに熱による変形も避けられない。しかし本発明のように、対向する雌ネジ同士をスタッドボルトで引き寄せるか、または雄ネジと雌ネジを螺合させて、スクリュー部分と該係留軸部分を一体化することで、一連の作業が容易になり、精度も確保しやすい。
【0019】
請求項2記載の発明は、接着剤の充填を考慮した埋設具に関するもので、
スクリュー部分と係留軸部分が同心に揃って直列状に一体化してあり、且つその中心に貫通孔を設けてある場合において、係留軸部分の根元付近には、該貫通孔と外部とを連通する排気孔を設けたことを特徴とする。
なお貫通孔は、ボルトの軸部を差し込むための役割を果たし、埋設具の中心に位置し、両端面を結んでいる。係留軸部分を固定する接着剤は、何らかの手段で下穴の中に供給する必要がある。この供給手段は様々だが、貫通孔を設けた埋設具の場合、部材に埋め込んだ後、注射器状の充填器を用い、その注射針を貫通孔に差し込み、下穴の奥から接着剤を吐出することがある。
【0020】
その際、下穴と係留軸部分との隙間の空気は、接着剤で押し出されるが、下穴の入り口付近はスクリュー部分で塞がれており、空気の逃げ道がない。そこで係留軸部分の根元付近には、貫通孔につながる排気孔を設けることで、押し出された空気を貫通孔から外部に放出でき、係留軸部分の側周面全体に接着剤を充填させることができる。なお係留軸部分の根元付近とは、係留軸部分において、スクリュー部分との境界近傍を意味する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明のように、一本の埋設具をスクリュー部分と係留軸部分で構成することで、スクリュー部分の長大化を伴うことなく、引抜荷重に対する耐力を向上でき、突発的な短期荷重に対しても十分な余裕が確保され、建築物などの安全性の向上に貢献する。さらにスクリュー部分の長大化が回避されることで、従来の設備でも無理なく埋め込み作業が可能で、施工業者などに新たな負担を強いることもない。
【0022】
スクリュー部分と係留軸部分といった性質の異なる二要素を一体化することで、冗長性を確保できる。そのため不測の要因により、一方の部分が本来の機能を発揮できなくなった場合でも、他方の部分によってある程度の強度は維持され、安全性が一段と向上する。
【0023】
加えて、スクリュー部分と係留軸部分を別途に製造して、これらを雌ネジやスタッドボルトや雄ネジの螺合で一体化することで、既存品の流用が容易になり、製造原価の抑制を期待できる。しかも、スクリュー部分と係留軸部分を一体化する作業は、単純なねじ込みだけでよく、容易に実施できるほか、スクリュー部分と係留軸部分を無理なく同心に揃えることができる。
【0024】
請求項2記載の発明のように、貫通孔を設けた埋設具において、係留軸部分の根元付近には、貫通孔と外部とをつなぐ排気孔を設けることで、貫通孔に注射針を差し込み、下穴の奥から接着剤を充填する場合でも、下穴と係留軸部分との隙間に残る空気を貫通孔から外部に放出可能で、係留軸部分の側周面全体に無理なく接着剤を充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による埋設具の形状例と使用例を示す斜視図で、垂直材と水平材をL字状に連結するため、水平材の端面に埋設具を埋め込んでいる。
【
図2】
図1の垂直材と水平材を連結した状態を示す斜視図と縦断面図である。
【
図3】本発明による埋設具と併せて、金物を用いる連結部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の垂直材と水平材を連結した状態を示す斜視図と縦断面図である。
【
図5】スクリュー部分と係留軸部分を別途に製造した後、これらをスタッドボルトで一体化した埋設具を示す斜視図である。
【
図6】スクリュー部分と係留軸部分を別途に製造した後、これらを雄ネジと雌ネジで一体化した埋設具を示す斜視図である。
【
図7】埋設具の形状例とその施工時の状況を示す斜視図で、埋設具の係留軸部分にはラセン溝を形成してあるほか、中心には、両端面を結ぶ貫通孔を設けてある。
【
図8】これまでとは異なる二種類の埋設具を示す斜視図である。図の上方に示す埋設具は、貫通孔の両端部に雌ネジを形成してある。また図の下方に示す埋設具は、係留軸部分にローレット目を形成してある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による埋設具11の形状例と使用例を示している。ここで描かれた垂直材41と水平材51は、いずれも木材(ムク材のほか各種集成材も含む)で、上下に伸びる垂直材41の側面と、横に伸びる水平材51の端面を接触させて、双方をL字状に連結する。そのため垂直材41にはラグスクリュー61を埋め込み、また水平材51には埋設具11を埋め込み、これらをボルト86で引き寄せ、垂直材41と水平材51を一体化する。
【0027】
垂直材41に埋め込むラグスクリュー61は汎用品で、その側周面には螺旋状に伸びる凸条65を形成してある。またその中心には、ボルト86の軸部を差し込むため、中孔63が貫通しており、さらに一端面には、埋め込みの際にスパナなどの工具を掛けるため、六角形の頭部64を形成してある。そのほか垂直材41には、ラグスクリュー61を埋め込むため、あらかじめ側面孔43を加工してある。側面孔43は、両面を貫通しており、しかも凸条65が食い込むことのできる内径である。
【0028】
埋設具11は、図の左寄りのスクリュー部分21と右寄りの係留軸部分31で構成され、水平材51の端面に加工された下穴52の中に埋め込まれる。スクリュー部分21は、垂直材41に埋め込むラグスクリュー61と同様の形状で、円柱形の胴体23の側周面には、半径方向に突出し且つ螺旋状に伸びる凸条25を形成してあるほか、埋め込みの際に工具を掛けるため、頭部24を形成してある。また端面中心には、ボルト86の先端を螺合させるため、雌ネジ26を設けてある。
【0029】
係留軸部分31は、接着剤Aを介して水平材51と一体化される部分で、単純な円柱形を基調としているが、接着剤Aとの摩擦を増大できるよう、一定の間隔で環状溝33を形成してある。さらに係留軸部分31は、接着剤Aの流動を確保するため、スクリュー部分21の胴体23よりも小径としてある。なおこの図の埋設具11は、一本の金属棒を素材として、切削や転造などの工程を経て製品化され、スクリュー部分21と係留軸部分31など、全てが一体化されている。
【0030】
下穴52の内径は、スクリュー部分21の胴体23よりもわずかに大きくしてある。そのため凸条25は、下穴52の内周を削りながら水平材51の中に食い込み、双方の摩擦によって埋設具11は緩みなく固定される。対して係留軸部分31は、胴体23よりも小径で、下穴52と接触することなく隙間が生じ、そこに接着剤Aを充填する。また下穴52は、埋設具11の全体を収容可能な延長としてある。
【0031】
接着剤Aは、埋設具11を下穴52に埋め込んだ後に充填するが、その際、下穴52の入り口はスクリュー部分21で塞がれており、そこから接着剤Aを充填することはできない。そのため水平材51の側面には、下穴52につながる小孔54を加工してあり、ここから接着剤Aを送り込む。なお、接着剤Aで押し出された空気を外部に排出するため、小孔54は、一本の下穴52に対して二本加工してある。さらに小孔54は、機能を正しく発揮できるよう、埋め込まれた係留軸部分31の両端付近に達するよう配置してある。
【0032】
そのほかこの図では、ラグスクリュー61と埋設具11とボルト86を上下に二組配置してあり、側面孔43や下穴52も上下二箇所に加工してある。また側面孔43と下穴52は、同心で揃うように加工してあり、しかもラグスクリュー61と埋設具11は、施工後、端面同士が接触するよう、埋め込み深さを調整する。
【0033】
図2は、
図1の垂直材41と水平材51を連結した状態である。垂直材41の側面孔43にはラグスクリュー61が埋め込まれ、水平材51の下穴52には埋設具11が埋め込まれ、さらにラグスクリュー61の中孔63に差し込んだボルト86は、埋設具11の雌ネジ26に螺合している。そのため、ラグスクリュー61と埋設具11が引き寄せられ、双方の端面同士が接触するほか、垂直材41と水平材51も密着して、L字状の連結部が構成される。なお埋設具11などは、上下に二組配置してあるほか、ボルト86の頭部は、垂直材41の側面から突出することなく、側面孔43の中に収容されている。
【0034】
ラグスクリュー61は、凸条65だけで垂直材41に固定されているが、埋設具11は、凸条25のほか接着剤Aでも水平材51に固定されている。接着剤Aは、係留軸部分31と下穴52との隙間に埋め尽くすように充填され、単独でも応分の引抜荷重を受け止めることができる。なお、実際に連結部を設計する際は、埋設具11のスクリュー部分21だけで長期荷重を受け止め可能として、より突発的で過大な短期荷重に対しては、スクリュー部分21と係留軸部分31の両方で受け止める構造とする。これにより、荷重条件の厳しい連結部においても、スクリュー部分21を無理に長大化する必要がなくなり、埋設具11の埋め込み作業を円滑に実施できる。
【0035】
図3は、本発明による埋設具12と併せて、金物を用いる連結部の構成例を示している。
図1の埋設具11は、部材同士の連結を担うボルト86の螺合相手となっているが、この図のように埋設具12は、各種金物の取り付けにも使用できる。ここでは、一本の垂直材41を挟んで二本の水平材51を十字状に連結することを想定しており、垂直材41の両側面には、埋設具12を介して、受け金物71を背中合わせに取り付ける。そのため垂直材41の側面には、埋設具12を埋め込むため、反対側に貫通する下穴42を上下に二本加工してある。埋設具12は、凸条25が形成されたスクリュー部分21と、環状溝33が形成された係留軸部分31で構成され、その中心には、ボルト86を挿通できるよう、両端面を結ぶ貫通孔28を設けてある。さらに埋設具12と下穴42は、延長を揃えてある。
【0036】
受け金物71および掛け金物72は、垂直材41と水平材51との連結を担う角棒状のもので、その一端側には、先細り状のクサビ部76を形成してあり、他端側には、クサビ部76を差し込むための保持帯74を設けてあり、さらに側面には、ボルト86などを差し込むため、取付孔75を設けてある。また受け金物71と掛け金物72は、いずれも同一形状だが、受け金物71は、クサビ部76が上に位置し、且つ垂直材41の側面に取り付けるが、掛け金物72は、クサビ部76が下に位置し、且つ水平材51の端面中央の縦溝55の中に取り付ける。そして受け金物71と掛け金物72の双方のクサビ部76を相手方の保持帯74に差し込むと、両金物が離脱不能に密着する。
【0037】
埋設具12を下穴42の中に埋め込み、下穴42の出口(図の右側)から接着剤Aを充填した後、埋設具12の端面を挟み込むように二個の受け金物71を配置して、次に一方の取付孔75からボルト86を差し込み、その先端を裏側の受け金物71に到達させ、そこにナット82を螺合させて締め付けると、二個の受け金物71が垂直材41を挟み込むように固定される。さらに二本の水平材51についても、それぞれの縦溝55の中に掛け金物72を取り付ける。なお縦溝55の奥には、掛け金物72を取り付けるため、ラグスクリュー62を埋め込んである。
【0038】
図4は、
図3の垂直材41と水平材51を連結した状態である。対向する二本の水平材51で垂直材41の側面を挟み込み、十字状の連結部が構成される。また埋設具12は、スクリュー部分21と係留軸部分31により、垂直材41と強固に一体化しており、受け金物71と掛け金物72を強固に保持する。そのほか掛け金物72は、水平材51に埋め込まれたラグスクリュー62と接触しており、双方は短ボルト77で一体化してある。
【0039】
図5は、スクリュー部分21と係留軸部分31を別途に製造した後、これらをスタッドボルト88で一体化した埋設具13を示している。埋設具は、一本の金属棒から製造することもできるが、この図のように、スクリュー部分21と係留軸部分31を別途に製造して、これらをスタッドボルト88で一体化することもできる。スタッドボルト88を螺合できるよう、両部分の境界面中心には、双方に雌ネジ27、37を設ける。そして一方の雌ネジ37にスタッドボルト88を螺合させて、回転不能になるまで埋め込み、次に、他方の雌ネジ27にスタッドボルト88を螺合させて、緩みがなくなるまで締め付けると、全てが実質的に一体化する。
【0040】
ここで使用しているスクリュー部分21は、汎用のラグスクリューの両端面に雌ネジ26、27を形成したもので、また係留軸部分31は、異形棒鋼を切り出したものである。そのため係留軸部分31の側周面には、縦横にリブ34が伸びている。このように、スクリュー部分21と係留軸部分31を別途に製造した後、双方を一体化することで、汎用品を使いやすくなりコストダウンを期待できる。
【0041】
図6は、スクリュー部分21と係留軸部分31を別途に製造した後、これらを雄ネジ29と雌ネジ37で一体化した埋設具14を示している。ここでも先の
図5と同様、スクリュー部分21と係留軸部分31は、別途に製造しており、さらにスクリュー部分21の両端に雄ネジ22、29を設けてある。そのうち図の左側の雄ネジ22は、金物などの取り付けに使用するもので、また右側の雄ネジ29は、係留軸部分31との連結に使用する。なおこの雄ネジ29と螺合できるよう、係留軸部分31の左側の端面には、雌ネジ37を設けてある。そして部材への埋め込みに先立ち、雄ネジ29と雌ネジ37を螺合させて、スクリュー部分21と係留軸部分31を一体化する。
【0042】
この図の係留軸部分31は単純な円柱形だが、スクリュー部分21と一体化する作業や、接着剤Aとの摩擦を考慮して、その側周面に挟み面38を設けてある。挟み面38は、側周面の一部を削ったもので、上下対向するように配置してあり、工具で挟み込むことができる。そして埋設具14は、図の「施工時」に示すように、その雄ネジ22を利用して、掛け金物72の取り付けなどに使用することができる。
【0043】
図7は、埋設具の形状例を示している。この埋設具15は、スクリュー部分21と係留軸部分31が当初から一体化しており、スクリュー部分21の胴体23の側周面からは、凸条25が突出している。また係留軸部分31は、胴体23よりもわずかに直径が小さく、その側周面には、接着剤Aとの摩擦を増大させるため、螺旋状に伸びるラセン溝32を形成してある。さらに埋設具15の中心には、両端面を結ぶ貫通孔28を設け、その一端側に雌ネジ26を設けてある。そのほかラセン溝32の奥(スクリュー部分21との境界近傍)には、貫通孔28と外部とを連通する排気孔39を設けてある。排気孔39は、貫通孔28に差し込んだ注射針Nで接着剤Aを充填する際、下穴52の中に残留した空気を貫通孔28に誘導して、外部に排出する役割を果たす。
【0044】
この埋設具15を水平材51の下穴52に埋め込む際は、図の「施工時」に示すように、まず頭部24に回転を与え、凸条25を徐々に水平材51に食い込ませ、埋設具15の全体を下穴52に埋め込む。次に、接着剤Aを供給する注射針Nを貫通孔28に差し込み、その先端を下穴52の奥に到達させ、接着剤Aを吐出させると、これが下穴52の奥を埋め、やがてラセン溝32に流入する。その際、接着剤Aで押し出された空気は、排気孔39から貫通孔28に流れ込み、外部に放出される。そのため下穴52の奥や係留軸部分31の側周面には、隙間なく接着剤Aが充填され、必要な強度を確保することができる。この図のように、貫通孔28に注射針Nを差し込んで接着剤Aを充填する方法は、
図1のような小孔54を加工する必要がなく、美観などの面で優れている。
【0045】
図8は、これまでとは異なる二種類の埋設具16、17を示している。図の上方に示す埋設具16は、貫通孔28の両端部に雌ネジ26を形成してあり、両側にボルト86等を螺合できる。また係留軸部分31のリブ34は環状だが、その一箇所には、接着剤Aの流路となるスリット36を形成してある。スリット36の位置は、隣接するリブ34で上下反転させてある。そのため流動中の接着剤Aは、都度リブ34でせき止められ、強制的にリブ34を半周程度回り込み、隙間を確実に埋めることができる。そのほか、係留軸部分31の根元付近には、
図7の埋設具15と同様、空気の逃げ道となる排気孔39を設けてある。
【0046】
図の下方に示す埋設具17は、製造工程や接着作業の簡素化を目的として、係留軸部分31を単純な円柱形として、その側周面にローレット目35を形成したほか、頭部24に隣接して係留軸部分31を配置したものである。ローレット目35は、接着剤Aの付着性を向上する役割があり、また転造で比較的簡単に形成できるため、コストダウンを期待できる。さらに、この埋設具17を部材に埋め込んだ際は、スクリュー部分21が部材の奥に位置して、係留軸部分31が部材の表面付近に位置する。そのため接着剤Aを下穴の入り口から充填でき、作業性に優れている。加えて埋設具17を埋め込む際、凸条25により、下穴内周のほぼ全域に螺旋状の切り込みが形成され、その中に接着剤Aが流れ込むことで、部材と接着剤が噛み合い、係留軸部分31をより強固に固定することができる。
【0047】
これまでの各図に示すように、本発明による埋設具は、連結部の構造に依存することなく幅広く汎用的に使用可能である。また、スクリュー部分21と係留軸部分31との構成や、係留軸部分31の詳細形状や、雌ネジ26や雄ネジ22の配置などについては、これまでの各図に示した要素を自在に組み合わせることができ、目的に応じて最適な埋設具を使用することができる。
【符号の説明】
【0048】
11 埋設具(環状溝と雌ネジを有するもの)
12 埋設具(環状溝と貫通孔を有するもの)
13 埋設具(スクリュー部分と係留軸部分をスタッドボルトで一体化したもの)
14 埋設具(スクリュー部分と係留軸部分を雄ネジと雌ネジで一体化したもの)
15 埋設具(ラセン溝を有するもの)
16 埋設具(リブにスリットを有するもの)
17 埋設具(ローレット目を有するもの)
21 スクリュー部分
22 雄ネジ
23 胴体
24 頭部
25 凸条
26 雌ネジ
27 雌ネジ(スクリュー部分と係留軸部分との連結用)
28 貫通孔
29 雄ネジ(スクリュー部分と係留軸部分との連結用)
31 係留軸部分
32 ラセン溝
33 環状溝
34 リブ
35 ローレット目
36 スリット
37 雌ネジ(スクリュー部分と係留軸部分との連結用)
38 挟み面
39 排気孔
41 垂直材
42 下穴
43 側面孔
51 水平材
52 下穴
54 小孔
55 縦溝
61 ラグスクリュー
62 ラグスクリュー(掛け金物の取り付け用)
63 中孔
64 頭部
65 凸条
71 受け金物
72 掛け金物
74 保持帯
75 取付孔
76 クサビ部
77 短ボルト
82 ナット
86 ボルト
88 スタッドボルト
A 接着剤
N 注射針