(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230116
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】蛍光体、照明器具および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20171106BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20171106BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20171106BHJP
F21V 9/16 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/64
H01L33/50
F21V9/16 100
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-16319(P2014-16319)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143289(P2015-143289A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 浩代
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
【審査官】
林 建二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/104936(WO,A1)
【文献】
特開2013−209570(JP,A)
【文献】
特開2013−182975(JP,A)
【文献】
特開2013−120812(JP,A)
【文献】
特開2012−140697(JP,A)
【文献】
特開2007−126536(JP,A)
【文献】
特開2010−077472(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/016893(WO,A1)
【文献】
特表2013−522815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
H01L 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子とセラミックス粒子とガラスとを含み、
前記金属粒子は角柱状であり、
前記金属粒子と前記セラミックス粒子とは、前記ガラスに分散しており、
前記金属粒子が400nm以上500nm以下の波長を有する光を吸収し、
前記セラミックス粒子が500nm以上650nm以下の波長を有する光を発光し、
前記金属粒子と前記セラミック粒子とは、前記セラミックス粒子100質量部に対して、前記金属粒子を4.16×10−8質量部以上8.32×10−7質量部以下の範囲を満たすように含有されている、蛍光体。
【請求項2】
前記金属粒子は銀粒子である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
前記金属粒子の平均粒径(体積基準メディアン径d50)は、30nm以上80nm以下である、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記セラミックス粒子は、Euを含むβサイアロン、Euを含むαサイアロンおよびEuを含むCaAlSiN3からなる群から選ばれる、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
励起光源と蛍光体とを含む照明器具であって、
前記励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、
前記蛍光体は、少なくとも請求項1に記載の蛍光体を含む、照明器具。
【請求項6】
前記励起光源は、LED、レーザダイオードおよび有機ELからなる群から選択される、請求項5に記載の照明器具。
【請求項7】
励起光源と蛍光体とを含む画像表示装置であって、
前記励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、
前記蛍光体は、少なくとも請求項1に記載の蛍光体を含む、画像表示装置。
【請求項8】
前記励起光源は、LED、レーザダイオードおよび有機ELからなる群から選択される、請求項7に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子とセラミックス粒子とを含む蛍光体、それを用いた照明器具および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、蛍光表示管(VFD(Vacuum−Fluorescent Display))、フィールドエミッションディスプレイ(FED(Field Emission Display)またはSED(Surface−Conduction Electron−Emitter Display))、プラズマディスプレイパネル(PDP(Plasma Display Panel))、陰極線管(CRT(Cathode−Ray Tube))、白色発光ダイオード(LED(Light−Emitting Diode))などに用いられている。これらのいずれの用途においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するためのエネルギーを蛍光体に供給する必要があり、蛍光体は真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により励起されて、青色光、緑色光、黄色光、橙色光、赤色光等の可視光線を発する。しかしながら、蛍光体は前記のような励起源に曝される結果、蛍光体の輝度が低下し易く、輝度低下のない蛍光体が求められている。そのため、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体に代わり、高エネルギーの励起においても輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体などの結晶構造に窒素を含有する無機結晶を母体とする蛍光体が提案されている。
【0003】
このサイアロン蛍光体の一例は、概略以下に述べるような製造プロセスによって製造される。まず、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ユーロピウム(Eu
2O
3)を所定のモル比に混合し、1気圧(0.1MPa)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によって得られるEu
2+イオンを付活したαサイアロンは、450から500nmの青色光で励起されて550から600nmの黄色の光を発する蛍光体となることが報告されている。また、αサイアロンの結晶構造を保ったまま、SiとAlとの割合、あるいは、酸素と窒素との割合を変えることにより、発光波長が変化することが知られている(例えば、特許文献2および特許文献3を参照)。
【0004】
サイアロン蛍光体の別の例として、βサイアロンにEu
2+を付活した緑色の蛍光体が知られている(例えば、特許文献4を参照)。この蛍光体では、結晶構造を保ったまま酸素含有量を変化させることにより発光波長が短波長に変化することが知られている(例えば、特許文献5を参照)。また、Ce
3+を付活すると青色の蛍光体となることが知られている(例えば、特許文献6を参照)。
【0005】
酸窒化物蛍光体の一例は、JEM相(LaAl(Si
6−zAl
z)N
10−zO
z)を母体結晶としてCeを付活させた青色蛍光体(例えば、特許文献7を参照)が知られている。この蛍光体では、結晶構造を保ったままLaの一部をCaで置換することにより、励起波長が長波長化するとともに発光波長が長波長化することが知られている。
【0006】
酸窒化物蛍光体の別の例として、La−N結晶La
3Si
8N
11O
4を母体結晶としてCeを付活させた青色蛍光体(例えば、特許文献8を参照)が知られている。
【0007】
窒化物蛍光体の一例は、CaAlSiN
3を母体結晶としてEu
2+を付活させた赤色蛍光体(例えば、特許文献9を参照)が知られている。この蛍光体を用いることにより、白色LEDの演色性を向上させる効果がある。光学活性元素としてCeを添加した蛍光体は橙色の蛍光体と報告されている。
【0008】
また、金属プラズモン共鳴を用いた蛍光体の発光増強に関する研究がおこなわれている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3668770号明細書
【特許文献2】特許第3837551号明細書
【特許文献3】特許第4524368号明細書
【特許文献4】特許第3921545号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/066733号公報
【特許文献6】国際公開第2006/101096号公報
【特許文献7】国際公開第2005/019376号公報
【特許文献8】特開2005−112922号公報
【特許文献9】特許第3837588号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】T.Tanakaら、Appled Physics Express 4,2011,032105−032108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの蛍光体は、耐久性や温度特性にすぐれており過酷な環境で使われる用途に適しているが、組成によっては発光強度が十分でない場合もあった。その原因のひとつとして、組成によっては励起光を十分に吸収できない場合があった。本発明はこのような要望に応えようとするものであり、目的のひとつは、励起光を効率良く吸収し、発光強度を高めた蛍光体を提供することにある。本発明のもうひとつの目的として、斯かる蛍光体を用いた耐久性に優れた、照明器具および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に記載する構成を講ずることによって特定波長領域で高い輝度の発光現象を示す蛍光体を提供することに成功した。さらに、この蛍光体を使用し、以下に記載する構成を講ずることによって優れた特性を有する照明器具および画像表示装置を提供することにも成功した。
【0013】
本発明による蛍光体は、金属粒子とセラミックス粒子とを含み、前記金属粒子が400nm以上500nm以下の波長を有する光を吸収し、前記セラミックス粒子が500nm以上650nm以下の波長を有する光を発光し、これにより上記課題を解決する。
前記金属粒子は銀粒子であってもよい。
前記金属粒子は角柱状であってもよい。
前記金属粒子の平均粒径(体積基準メディアン径d50)は、30nm以上80nm以下であってもよい。
前記セラミックス粒子は、Euを含むβサイアロン、Euを含むαサイアロンおよびEuを含むCaAlSiN
3からなる群から選ばれてもよい。
透光性物質をさらに含み、前記金属粒子と前記セラミックス粒子とは、前記透光性物質に分散していてもよい。
前記透光性物質は、ガラスであってもよい。
本発明による照明器具は、励起光源と蛍光体とを含み、前記励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、前記蛍光体は、少なくとも上述の蛍光体を含み、これにより上記課題を解決する。
前記励起光源は、LED、レーザダイオードおよび有機ELからなる群から選択されてもよい。
本発明による画像表示装置は、励起光源と蛍光体とを含み、前記励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、前記蛍光体は、少なくとも上述の蛍光体を含み、これにより上記課題を解決する。
前記励起光源は、LED、レーザダイオードおよび有機ELからなる群から選択されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による蛍光体は、400nm以上500nm以下の光を吸収する金属粒子と、500nm以上650nm以下の光を発光するセラミックス粒子とを含み、金属粒子がセラミックス粒子の励起波長において強いプラズモン吸収ピークを有することにより、高輝度発光する。本発明による蛍光体を用いることにより、高い発光効率を有し温度変動が小さい照明器具、ならびに、鮮やかな発色の画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】銀ナノキューブ溶液の共鳴吸収スペクトルを示す図
【
図3】実施例1〜4および比較例5による発光スペクトルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、主として可視光を発光する蛍光体について詳細な研究を行い、セラミックス粒子(蛍光体粒子)と金属粒子とを共存させることにより、高輝度の蛍光を発することを見いだした。また、特定の金属粒子および特定のセラミックス粒子との組み合わせにより、青色の励起光を効率良く吸収して500nm以上の可視光を効率良く発光することを見いだした。
【0017】
本発明の蛍光体は、金属粒子とセラミックス粒子とを含む。金属粒子は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を吸収する。すなわち、金属粒子は、400nm以上500nm以下の範囲の波長に強いプラズモン吸収ピークを有する。このような金属粒子は、好ましくは、銀粒子である。
【0018】
セラミックス粒子は、400nm以上500nm以下の波長を有する光によって励起され、500nm以上650nm以下の波長を有する光を発光する。このようなセラミックス粒子は、Euを含むβサイアロン、Euを含むαサイアロンおよびEuを含むCaAlSiN
3からなる群から選ばれる。なお、Euを含むβサイアロン、Euを含むαサイアロンおよびEuを含むCaAlSiN
3は、いずれも、それぞれの母体結晶の結晶構造を損なわない限り、構成元素以外の添加元素を含んでいてもよい。たとえば、Euを含むαサイアロンは、Euで付活したCa−αサイアロンも包含するものとする。
【0019】
本発明者らは、励起波長に相当する波長域に強いプラズモン吸収ピークを有する金属粒子と、その励起波長で励起されて蛍光を発するセラミックス粒子とが共存することにより、プラズモン共鳴による発光増強を見出した。
【0020】
金属粒子は、好ましくは、角柱状の形状を有する。より好ましくは、金属粒子は立方体(ナノキューブ)の形状を有する。このような形状を有することにより、プラズモン共鳴による発光増強をより高めることができる。
【0021】
金属粒子の平均粒径(体積基準メディアン径d50)は、30nm以上80nm以下である。例えば、上述のセラミックス粒子の平均粒径(d50)は、0.1μm以上20μm以下であり得るので、このような平均粒径を有する金属粒子であれば、セラミックス粒子を確実にコーティングあるいは包囲するように配置できるので、プラズモン共鳴による発光増強を確実にする。
【0022】
さらに、本発明の蛍光体は、金属粒子およびセラミックス粒子に加えて、透光性物質を含んでもよい。この場合、金属粒子およびセラミックス粒子は、透光性物質に分散している。このような蛍光体は、取扱いが簡便であり、透光性物質において光の拡散反射が抑制されるので、優れた発光特性を示すことができる。
【0023】
透光性物質は、好ましくは、ガラスである。本明細書において、ガラスとは、ケイ酸塩を主成分とする透光性のあるガラスに限らず、ガラス状態となり、かつ、透光性のある物質を意図している。例えば、ケイ酸ガラス以外のガラスとして、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、透光性セラミックス等がある。ガラスは、熱安定性に優れるともに、極めて高い透光性を有するため好ましい。
【0024】
また、透光性物質は、好ましくは、SiO
2である。SiO
2は、上述のケイ酸塩を主成分とする石英ガラスであってもよいし、SiO
2の結晶構造を有する水晶であってもよい。SiO
2は、高い透光性ならびにゾルゲル法による容易な作製プロセスによりガラス化可能なため好ましい。
【0025】
また、透光性物質は、正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物を熱処理することによって得られる無機物質であってもよい。このような無機物質は、例えば、石英ガラス、水晶、ケイ酸塩を主成分とするガラスおよびその複合体である。これらは、作製プロセスが容易なため好ましい。
【0026】
透光性物質は、耐熱性樹脂であってもよい。例示的には、耐熱性樹脂は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、SAN(スチレン系樹脂)、フッ素樹脂およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる群から選択される。これらの耐熱性樹脂は、高温(例えば、ポリイミドは250〜300℃)で安定であり、透光性に優れるため好ましい。
【0027】
本発明の蛍光体の製造方法を例示する。
【0028】
少なくとも熱処理または脱水・還化処理により透光性を有する固体化合物になる任意の材料を含む液状物質に、金属粒子とセラミックス粒子とを分散させ、原料溶液を得る。
【0029】
ここで、液状物質は、加熱等の熱処理により透光性を有するガラスまたはSiO
2になる任意の材料である。好ましくは、液状物質は、少なくともケイ素を含有する材料である。これにより、液状物質は、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは、SiO
2の固体化合物に変換され得る。このような少なくともケイ素を含有する液状物質は、より好ましくは、正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物であり、これらは、入手および取り扱いが容易であるとともに、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは、SiO
2となることが知られている。
【0030】
あるいは、液状物質は、熱処理または脱水・還化により透光性を有する耐熱性樹脂の前駆体を含んでもよい。耐熱性樹脂の前駆体は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、SAN(スチレン系樹脂)、フッ素樹脂およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる群から選択される耐熱性樹脂になる任意の物質である。
【0031】
なお、液状物質に、適宜、蒸留水、アルコール、アンモニア等の触媒を加えてもよい。例えば、液状物質が正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物である場合、液状物質に蒸留水およびアンモニアを加え、加水分解を促進させることができる。また、液状物質に低級アルコールなどの疎水性および親水性の両方を有するアルコールを加えることにより、疎水性を有する液状物質と蒸留水との混和を容易にさせることができる。
【0032】
次いで、金属粒子とセラミックス粒子とが分散した原料溶液を、例えば、所望の基板上に塗布し、乾燥することによって、少なくとも金属粒子とセラミックス粒子とを含む薄膜状の蛍光体が得られる。塗布は、具体的には、ディップコート、滴下、スピンコート等である。あるいは、金属粒子とセラミックス粒子とが分散した原料溶液を静置しゲル化した後、加熱することにより、金属粒子とセラミックス粒子とが透光性物質に分散した蛍光体が得られる。
【0033】
なお、上述の製造方法において使用するセラミックス粒子は、例えば、上述した特許文献1〜5および9を参照して製造することができる。
【0034】
また、上述の製造方法において使用する金属粒子は、市販の金属粒子を用いてもよいが、例えば、金属粒子が銀からなるナノキューブである場合、銀前駆体(例えば、AgCF
3COO)をNaHSや塩酸の存在下にて反応させることにより得ることができる。
【0035】
また、金属粒子として銀粒子を用いる場合、原料溶液における金属粒子の粒子濃度は、好ましくは、0より大きく5×10
15particle/L以下が好ましい。この範囲であれば。銀粒子に基づくプラズモン共鳴による効果的な発光増強が得られる。なお、粒子濃度が5×10
15particle/Lを超えると、発光増強は見られるものの、増強の効果が小さい場合があり得る。
【0036】
このようにして得た本発明の蛍光体を用いて照明器具および画像表示装置を設計することができる。
【0037】
本発明の照明器具は、少なくとも励起光源と本発明の蛍光体とを用いて構成される。照明器具としては、LED照明器具、蛍光ランプなどがある。LED照明器具では、本発明の蛍光体を用いて、特開平5−152609号公報、特開平7−99345号公報、特許公報第2927279号などに記載されているような公知の方法により製造することができる。本発明の照明器具において、励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、好ましくは、LED発光素子、LD発光素子および有機ELからなる群から選択される。これらの発光素子は、GaN、InGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する発光光源となり得る。
【0038】
照明器具において本発明の蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する照明器具を構成することができる。
【0039】
本発明の画像表示装置は、少なくも励起光源と本発明の蛍光体とを用いて構成される。発明の画像表示装置において、励起光源は、400nm以上500nm以下の波長を有する光を発し、好ましくは、LED発光素子、LD発光素子および有機ELからなる群から選択される。青色LED等の励起光源により本発明の蛍光体が励起されて、所望の色を表示する画像表示装置を構成する。
【実施例】
【0040】
次に本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
本発明の蛍光体の製造に先立って、金属粒子としてナノキューブ状の銀粒子(銀ナノキューブと称する)、および、セラミックス粒子としてEuを含むαサイアロン(αサイアロン蛍光体と称する)を合成した。
【0042】
<銀ナノキューブの合成>
150℃に温めたエチレングリコール(5mL)に、3mMのNaHSエチレングリコール溶液(60μL)を添加し、次いで、3mMの塩酸エチレングリコール溶液(0.5mL)、ポリビニルピロリドンエチレングリコール溶液(1.25mL)、および、282mMのCF
3COO銀エチレングリコール溶液(0.4mL)を添加して攪拌することにより、46nmの粒径の単結晶銀ナノキューブを得た。銀ナノキューブを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。観察結果を
図1に示す。
【0043】
図1は、銀ナノキューブのSEM像を示す図である。
【0044】
図1によれば、合成した銀ナノキューブは、いずれも、角柱状であり、詳細には、平均粒径(d50)が46nmを有するナノキューブ形状の単結晶であることを確認した。
【0045】
<αサイアロン蛍光体の合成>
原料として、Si
3N
4(宇部興産製SN−E10グレード:64.897wt%)、AlN(トクヤマ製グレードF:18.965wt%)、CaCO
3(高純度化学製純度4N:14.51wt%)、および、Eu
2O
3(信越化学製純度99.9%グレード:1.628wt%)を用い、窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒とで混合した。混合物を窒化ホウ素製のるつぼに入れ、黒鉛抵抗加熱方式の炉で焼成した。具体的には、3×10
−3以下の高真空まで真空引きをし、1MPaの窒素ガス中で、毎分20℃で1700℃まで昇温し、1700℃で2時間保持した。冷却後、焼成粉末を窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒とで解砕し、32μmの篩を通した。得られた焼成粉末をX線回折(XRD)による結晶相の同定をしたところ、αサイアロン(すなわち、Euで付活されたCa−αサイアロン)であることを確認した。
【0046】
[実施例1〜4]
実施例1〜4では、金属粒子として銀ナノキューブと、セラミックス粒子としてαサイアロン蛍光体とを用い、銀ナノキューブとαサイアロン蛍光体とからなる薄膜状の蛍光体を製造した。
【0047】
Si(OC
2H
5)
4、C
2H
5OHおよびH
2Oを、それぞれ、1.31ml、0.97mlおよび0.48mlずつ添加し混合した溶液に、種々の粒子濃度の銀ナノキューブのエタノール溶液0.97ml(0.48×10
15、2.4×10
15、4.8×10
15、9.6×10
15particle/L)を加えた。次いで、これらの溶液に、αサイアロン蛍光体0.2006g(ガラス(SiO
2)に対して50mass%)を加え、室温で24時間撹拌し、原料溶液を調製した。
【0048】
撹拌後、原料溶液をカバーガラス基板(24mm角)上に200マイクロリットルを滴下し、3000rpm30secでスピンコートした。80℃で10分間乾燥を行い、αサイアロン蛍光体と銀ナノキューブとを含む薄膜試料を得た。なお、コーティング回数は2回であった。得られた薄膜試料は、いずれも、ガラス基板から剥がれ落ちることはなかった。実施例1〜4の薄膜試料は、それぞれ、0.48×10
15、2.4×10
15、4.8×10
15、9.6×10
15particle/Lの粒子濃度の銀ナノキューブエタノール溶液を用いた薄膜試料である。
【0049】
紫外・可視分光光度計(UV−VIS)を用いて、銀ナノキューブのプラズモン共鳴吸収ピークを測定した。試料には、銀ナノキューブを含有するエタノール溶液を用いた。測定範囲は、銀プラズモン共鳴の吸収ピークが確認できる240〜800nmの波長で測定を行った。結果を
図2に示す。
【0050】
図2は、銀ナノキューブ溶液の共鳴吸収スペクトルを示す図である。
【0051】
図2によれば、銀ナノキューブによる明瞭な吸収ピークが波長450nm近傍に存在することが分かった。このことから、本発明による薄膜試料では、銀ナノキューブである金属粒子が400nm以上500nm以下の光を吸収することが示唆される。
【0052】
得られた薄膜試料について、蛍光分光光度計を用いて、波長450nmを有する光で励起させた際の発光スペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
【0053】
[比較例5]
比較例5では、αサイアロン蛍光体からなる薄膜状の蛍光体を製造した。製造の手順は、銀ナノキューブを用いない以外、実施例1〜4と同様であった。得られた薄膜試料は、ガラス基板からはがれ落ちることなく、実施例1〜4と同様の外観であった。得られた薄膜試料について、実施例1〜4と同様に、発光スペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
【0054】
図3は、実施例1〜4および比較例5による発光スペクトルを示す図である。
【0055】
図3によれば、実施例および比較例の薄膜試料は、いずれも、波長約585nmにピークを有する黄色蛍光体であることが分かった。さらに、実施例の薄膜試料の発光ピーク強度は、比較例のそれよりも大きく、高輝度発光する黄色蛍光体であった。このことから、銀ナノキューブに基づくプラズモン共鳴により、αサイアロン蛍光体の発光強度を増大することを確認した。
【0056】
さらに、
図3によれば、銀ナノキューブの粒子濃度が低いほど、プラズモン共鳴による発光増強が大きくなり、銀ナノキューブの粒子濃度が高いほど、プラズモン共鳴による発光増強が小さいことが分かる。このことから、より高い発光増強効果を得るには、銀ナノキューブの粒子濃度は、5×10
15particle/L以下が好ましいこと示唆される。
【0057】
[実施例6]
実施例6では、金属粒子として銀ナノキューブと、セラミックス粒子としてαサイアロン蛍光体と、透光性物質としてガラスとを用い、銀ナノキューブとαサイアロン蛍光体とが透光性物質としてガラスに分散した蛍光体を製造した。
【0058】
Si(CH
3)
4、CH
3OHおよびジメチルホルムアミド(DMF)を混合し、これにアンモニア水溶液を添加・撹拌した。次いで、これに、実施例1と同様の濃度で、αサイアロン蛍光体と銀ナノキューブエタノール溶液とを添加し、静置してゲル化した。その後、ゲル化した溶液を150℃で乾燥させ、1050℃で焼結し、αサイアロン蛍光体と銀ナノキューブとがガラスに分散された試料を得た。実施例1〜4と同様に、発光スペクトルを測定したところ、銀ナノキューブに基づくプラズモン共鳴による発光増強が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の蛍光体は、金属粒子とセラミックス粒子とを含み、金属粒子に基づくプラズモン共鳴により、高輝度発光することができる。また、金属粒子およびセラミックス粒子ともに化学的および熱的に安定であり、さらに励起源に曝された場合の蛍光体の輝度の低下が少ないので、VFD、FED、PDP、CRT、白色LEDなどに好適に使用される蛍光体である。今後、各種表示装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に寄与することが期待できる。