(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料製造設備を構成する配管やタンクの内部は定期的に洗浄、殺菌される。その洗浄、殺菌には、熱水や殺菌剤を含む水が使われ、殺菌剤をリンスするのにも水が使われる。
【0006】
洗浄、殺菌後に配管やタンク内から水を抜いたとしても、配管の屈曲部等、配管内には相当量の水が残存する。そういった水がシロップに混入されることで、シロップタンク内のシロップ濃度が規定値よりも低くなったとする。そうすると、シロップタンクと水タンクとから所定流量で払い出された液を混合した際に、混合液の濃度が所定の値を下回ってしまう。
【0007】
それを避けるため、設備の始業に際して例えば10分の間、水が混入したシロップをドレンから排出することが通例である。ドレンからは、当初、配管内に残存している水が排出される。その水は、ある時点から次第にシロップに置き換わる。所定時間、ドレンからシロップと水の混合液を捨てることにより、水からシロップへの置換が完了してから本稼働させるのである。
【0008】
上記では、配管内に残存する水がシロップに完全に置き換わるまでドレンからの排出を行うため、水が混入してはいるものの、混合液の所定の濃度には達しているシロップも捨てられることとなる。そのシロップを捨てることなく製品に利用しようとすれば、供給されるシロップの濃度を連続的に検知し、検知された濃度に応じてシロップと水との混合比率を変更することが考えられる。あるいは混合液の濃度をフィードバックして混合比率を一定に制御することも考えられる。
【0009】
しかし、濃度の検知に要する時間、検知された濃度に応じて制御される弁の動作時間を考慮すると、濃度変化に応答性よく追従することが難しい。そのため、所定の濃度の混合液を得ることが難しい。
【0010】
同じことは、始業時に限らず、終業時や運転中にも言え、濃度変化に応答性よく追従することが難しい。
【0011】
そこで、本発明は、所定の濃度の混合液を得ることができ、それによって原材料の廃棄量を確実に抑えて歩留まりを向上させることができるブレンダ、ブレンダを備えた飲料製造設備、および混合液製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1液体と第2液体とを混合するブレンダであって、第1液体を受け入れて貯留する第1液体タンクと、第2液体を受け入れて貯留する第2液体タンクと、第1液体タンクから払い出される第1液体、および第2液体タンクから払い出される第2液体が混合される混合部と、第1液体タンクの第1液体の濃度を検知するタンク濃度計と、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部を通じた第1液体タンクへの第1液体の受け入れあるいは受入停止を切り替える受入切替弁と、第1液体タンクの第1液体の貯留あるいは払い出しを切り替える払出切替弁と、を備え
、導入部に設けられるドレンと、導入部における第1液体の濃度を検知する導入部濃度計と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明では、第1液体の濃度が
、混合液製造の始業時において、第1液体の供給源から供給される第1液体に規定の濃度である規定濃度から
低い方向に逸脱した場合に、払出切替弁を閉じたまま、第1液体タンク内に所定の量だけ液を受け入れてから、受入切替弁を閉じることで、第1液体タンク内の液を出入りのない状態とし、その状態で第1液体タンク内の液の濃度をタンク濃度計で検知することができる。そして、検知された濃度に基づいて混合部における第1液体と第2液体との混合比率を設定することができる。
【0014】
ここで、第1液体タンクに液の出入りがなく安定した状態で、タンク濃度計により第1液体タンク内の液の濃度が正確に検知されるので、検知された濃度に基づいて混合比率を設定することにより、所定の濃度の混合液を確実に得ることができる。
【0015】
以上によれば、規定の濃度から逸脱した液を無駄にすることなく製品に利用することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0016】
第1液体タンクへの液の受け入れ、第1液体タンクの液濃度の検知、および混合比率の設定は、繰り返し行うことができる。繰り返しの回数は、規定濃度に満たない液の総量と、第1液体タンクの容量とに応じて定まる。
【0017】
タンク濃度計により第1液体の規定の濃度が検知されれば、第1液体タンクおよび第2液体タンクのそれぞれに液を連続して受け入れ、各タンクから払い出された液を混合する連続運転に移行することができる。
【0018】
本発明における第1液体は、例えば、シロップや果汁である。
【0019】
本発明における第2液体は、典型的には水である。第2液体はシロップや果汁であってもよい。
【0020】
第1液体および第2液体に加えて、他の原材料も混合されるように構成することもできる。
【0021】
本発明のブレンダは、導入部に設けられるドレンと、導入部における第1液体の濃度を検知する導入部濃度計と、を備え
る。
【0022】
例えば始業時において、導入部に残存する水から第1液体への置換の開始が検知されるまでの間はドレンから水を排出し、置換の開始が検知されたならば、その後に到来する第1液体を含む液を排出することなく第1液体タンク内に受け入れて製品に利用する。
【0023】
導入部濃度計により水から第1液体への置換開始を捉えたならば即、ドレンからの排出を止めて第1液体タンクへと液を受け入れることにより、第1液体の濃度が混合液の所定濃度以上である限り、第1液体を少しも無駄にすることなく製品に利用することができる。また、第1液体の受け入れ当初より、第1液体を含む液を第1液体タンクに受け入れることができるので、第1液体タンクに定量だけ受け入れて濃度を検知し、混合比率を設定する処理を繰り返す回数を減らすことができる。
【0024】
本発明のブレンダは、第1液体タンクから払い出される第1液体の流量を定める第1計量弁と、第2液体タンクから払い出される第2液体の流量を定める第2計量弁と、を備え、第1計量弁および第2計量弁の少なくとも一方における流量が変更可能であることが好ましい。
【0025】
第1第1計量弁および第2計量弁の少なくとも一方の開度を変更することなどによって、第1計量弁および第2計量弁の少なくとも一方における流量を変更することにより、混合比率を設定することができる。
【0026】
本発明のブレンダは、タンク濃度計により検知された濃度に基づいて第1計量弁および第2計量弁の少なくとも一方の開度を取得する開度取得部を備えることが好ましい。
【0027】
開度取得部により、弁開度を自動的に、容易に取得することができる。
【0028】
本発明のブレンダにおいて、第1液体タンクは、導入部により第1液体が導入される上流タンクと、上流タンクの下流側に連結される下流タンクとを含んで構成され、上流タンクは、下流タンクに比べて貯留可能な量が大であり、タンク濃度計は、上流タンクの第1液体の濃度を検知し、受入切替弁は、上流タンクへの第1液体の受け入れあるいは受入停止を切り替え、払出切替弁は、上流タンクの第1液体の貯留あるいは払い出しを切り替えることが好ましい。
【0029】
上記の構成では、第1液体の受け入れを上流タンクに、第1液体の払い出しを下流タンクに分担させる。
【0030】
そうすると、上流タンク内に液を受け入れてタンク濃度計により濃度を検知し、その検知濃度に基づいて下流タンクの液と第2液体タンクの液との混合比率を割り出すことができる。それを終えたら、上流タンクから下流タンクへと液を移送して、設定した混合比率で液の混合を行う。
【0031】
ここで、上流タンクの貯留可能な量(容量)が下流タンクに比べて大であることにより、液の受け入れおよび液の払い出しの双方を下流タンクが担う場合と比べて、液受け入れ、濃度検知、混合比率設定の処理が繰り返される回数を少なくすることができる。
【0032】
そのため、繰り返される処理の次のサイクルに移る前に、一旦液の受け入れを停止する操作や、計器等の動作確認などに要する手間を低減できる。
【0033】
上記構成において、上流タンクの第1液体を循環させる循環経路を備え、タンク濃度計は、循環経路を流れる第1液体の濃度を検知することが好ましい。
【0034】
その場合、タンク濃度計として、配管に設置可能な汎用の濃度計を用いることができる。
【0035】
本発明の飲料製造設備は、上述のブレンダと、ブレンダにより混合された混合液
を容器に充填する、あるいは、混合液に炭酸ガスを吹き込む後工程装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0036】
本発明の飲料製造設備は、ブレンダから後工程装置へと混合液を送り出す送出経路に、送出経路濃度計を備えることが好ましい。
【0037】
送出経路濃度計による濃度に基づいて、送出経路に残存する水と液との置換状況を検知することができる。それにより、後工程においても、液を無駄なく使用して歩留まりを向上させることが可能となる。
【0038】
本発明の混合液製造方法は、第1液体と第2液体とを混合して混合液体を製造する方法であって、第1液体を所定の量だけ第1液体タンクに受け入れる第1ステップと、第1液体タンクの第1液体の濃度を検知する第2ステップと、検知された濃度に基づいて、第1液体タンクから払い出される第1液体と、第2液体との混合比率を設定する第3ステップと、混合比率にて第1液体および第2液体を混合する第4ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明の混合液製造方法は、上述のブレンダを使用した混合液製造方法としても特定できる。
つまり、本発明の混合液製造方法は、以下の構成のブレンダを使用する。
第1液体と第2液体とを混合するブレンダであって、第1液体を受け入れて貯留する第1液体タンクと、第2液体を受け入れて貯留する第2液体タンクと、第1液体タンクから払い出される第1液体、および第2液体タンクから払い出される第2液体が混合される混合部と、第1液体タンクの第1液体の濃度を検知するタンク濃度計と、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部を通じた第1液体タンクへの第1液体の受け入れあるいは受入停止を切り替える受入切替弁と、第1液体タンクの第1液体の貯留あるいは払い出しを切り替える払出切替弁と、導入部に設けられるドレンと、導入部における第1液体の濃度を検知する導入部濃度計と、を備えたブレンダ。
このブレンダを使用する場合、本発明の混合液製造方法は、受入切替弁を用いて、導入部を通じ、第1液体を所定の量だけ第1液体タンクに受け入れる第1ステップと、タンク濃度計を用いて第1液体タンクの第1液体の濃度を検知する第2ステップと、検知された濃度に基づいて、払出切替弁を用いて第1液体タンクから払い出される第1液体と、第2液体タンクから払い出される第2液体との混合比率を設定する第3ステップと、混合比率にて第1液体および第2液体を混合部において混合する第4ステップと、を含むことを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、第1液体の濃度が規定の濃度から逸脱した際に、第1ステップにより第1液体タンク内に所定の量だけ貯留された液の濃度を、第2ステップにより検知することができる。そして、検知された濃度に基づいて第1液体と第2液体との混合比率を設定することができる(第3ステップ)。
【0040】
ここで、第1液体タンクに液の出入りがなく安定した状態で、第1液体タンク内の液の濃度が正確に検知されるので、検知された濃度に基づいて混合比率を設定することにより、所定の濃度の混合液を確実に得ることができる(第4ステップ)。
【0041】
以上によれば、規定の濃度から逸脱した液を無駄にすることなく製品に利用することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0042】
本発明の混合液製造方法においては、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部の内部に存在する水を第1液体で置換する際に、第1ステップから第4ステップまでを行うことができる。
【0043】
上記構成において、第1ステップから第4ステップまでを行う前に、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部の液濃度の上昇が
導入部濃度計により検知されるまで水をドレンから排出するステップを含むことが好ましい。
【0044】
導入部の液濃度が上昇することをもって、導入部に存在する水から第1液体への置換開始が捉えられるので、後続の第1液体を含む液を排出することなく第1液体タンク内に受け入れて製品に利用することができる。
【0045】
導入部の液濃度の上昇は、例えば、導入部内の検知された液濃度が所定の閾値以上となったことに基づいて検知することができる。
【0046】
水から第1液体への置換が開始された直後を捉えるために、閾値は0に近い値に設定されることが好ましい。そうるすと、導入部の液濃度が少しでも上昇したならば即、ドレンからの排出を止めて第1液体タンクへの受け入れに移行することができる。
【0047】
なお、液濃度の上昇率が所定の閾値以上となったことに基づいて、導入部の液濃度の上昇を検知することもできる。
【0048】
本発明の混合液製造方法においては、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部の内部に存在する第1液体を水で置換する際、第1ステップから第4ステップまでを行うことができる。
【0049】
上記構成において、第1液体タンクへと第1液体を導入する導入部の液濃度の下降が
導入部濃度計により検知されるまで、第1ステップから第4ステップまでを行うことが好ましい。
【0050】
本発明の混合液製造方法においては、第1液体タンクへと導入される第1液体の濃度の変化が生じた際に、第1ステップから第4ステップまでを行うことができる。
【0051】
本発明の混合液製造方法において、第3ステップでは、第1液体タンクから払い出される第1液体の流量、および第2液体の流量に基づいて混合比率を設定することができる。
【0052】
本発明の混合液製造方法において、第1液体タンクから払い出される第1液体の流量よりも、第2液体の流量が大であり、第2液体の流量を一定とし、第1液体タンクから払い出される第1液体の流量を可変に制御することで混合比率を設定することが好ましい。
【0053】
第2液体に比べて流量が小さい第1液体の流量を変更することで、全体的な流れにさほど影響を与えることなく、所定の濃度の混合液を得ることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、所定の濃度の混合液を得ることができ、それによって原材料の廃棄量を確実に抑えて歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す飲料製造装置1は、原材料であるシロップおよび水から飲料を製造する。
飲料製造装置1は、シロップ供給源11と、水供給源12と、シロップと水とを混合するブレンダ20と、ブレンダ20にシロップを導入するための導入経路13と、導入経路13に設けられるドレン14と、ブレンダ20により混合された液に対して冷却、炭酸ガスの吹き込み、容器への充填等の後工程を行う後工程装置15と、ブレンダ20により作られた混合液を後工程装置15に向けて送り出す送液ポンプ16とを備える。
飲料製造設備1を構成する各要素同士は、配管により接続される。
【0057】
導入経路13は、シロップ供給源11とブレンダ20のシロップタンク21とを接続する。
ドレン14は、導入経路13内に残存する水をシロップタンク21へと送ることなく、図示しないタンクへと排出させる。ドレン14は、ドレン弁141の操作により開閉される。
【0058】
ブレンダ20は、シロップタンク21と、水タンク22と、シロップ計量弁23と、水計量弁24と、混合タンク25とを備える。
シロップタンク21は、シロップ供給源11から供給されたシロップを貯留する。
シロップ供給源11とシロップタンク21との間には、シロップタンク21へのシロップの受け入れを許容する場合(開)と、遮断する場合(閉)とに切り替えられるシロップ受入切替弁17が設けられる。
水タンク22は、シロップを希釈するために水供給源12から供給された水を貯留する。
水供給源12と水タンク22との間には、水タンク22への水の供給を許容する場合(開)と、遮断する場合(閉)とに切り替えられる水受入切替弁18が設けられる。
【0059】
ブレンダ20は、GOブレンダであり、シロップタンク21内の液位と水タンク22内の液位とをそれぞれ一定に制御し、それぞれのタンク21,22から計量弁23,24を介して所定の流量だけ払い出されたシロップと水とを混合タンク25内で混合する。
本実施形態では、シロップの流量に比べて水の流量の方が大きい。シロップと水とは、例えば、1:4の割合で混合される。
なお、シロップと水とを1:1の割合で混合することもできる。
【0060】
シロップタンク21には、貯留した液を重力により混合タンク25内へと払い出すための払出経路210が接続される。
水タンク22には、貯留した水を重力により混合タンク25内へと払い出すための払出経路220が接続される。
なお、シロップタンク21および水タンク22のそれぞれの液の払い出しには、重力のみならず圧力も加担する。
シロップの払出経路210に位置するシロップ計量弁23は、開度が可変であり、設定された開度に応じた所定の流量でシロップを通過させる。
払出経路210においてシロップ計量弁23の前段には、シロップタンク21内に液を貯留する場合(閉)と、シロップタンク21内から液を払い出す場合(開)とに切り替えられるシロップ払出切替弁27が設けられる。
ここで、シロップ払出切替弁27およびシロップ計量弁23を一体の弁として構成することもできる。つまり、シロップ払出切替弁27およびシロップ計量弁23を設ける代わりに、シロップを計量するとともに、シロップの貯留/払い出しを切り替える弁を設けることができる。
【0061】
水の払出経路210に位置する水計量弁24は、開度が可変であり、設定された開度に応じた所定の流量で水を通過させる。
払出経路220において水計量弁24の前段には、水タンク22内に液を貯留する場合(閉)と、水タンク22内から液を払い出す場合(開)とに切り替えられる水払出切替弁28が設けられる。
ここで、水払出切替弁28および水計量弁24を一体の弁として構成することもできる。つまり、水払出切替弁28および水計量弁24を設ける代わりに、水を計量するとともに、水の貯留/払い出しを切り替える弁を設けることができる。
【0062】
シロップ受入切替弁17、水受入切替弁18、シロップ払出切替弁27、および水払出切替弁28は、原則、ブレンダ20の起動/停止に連動される。
つまり、ブレンダ20が起動されると、これらの弁17,18,27,28は開いた状態に切り替えられ、ブレンダ20が停止されると、これらの弁17,18,27,28は閉じた状態に切り替えられる。
【0063】
混合タンク25は、シロップタンク21および水タンク22内からそれぞれ払い出されて混合された液を貯留する。
混合タンク25には、貯留した液を下流側へと払い出すための払出経路250が接続される。
混合タンク25と後工程装置15との間(本実施形態では送液ポンプ16と後工程装置15との間)には、混合タンク25内に液を貯留する場合(閉)と、混合タンク25内から液を払い出す場合(開)とに切り替えられる払出切替弁29が設けられる。
【0064】
本実施形態の飲料製造設備1は、製品である飲料を一定の濃度で製造する。
本実施形態における濃度は、ブリックス(Brix)を意味する。ブリックスとは、液体中の可溶性固体の重量含有率のことをいう。シロップ(ショ糖水溶液)におけるブリックスは、ショ糖水溶液の単位重量(例えば100g)に含まれるショ糖の重量をいう。
シロップ供給源11から供給されるシロップ(原液)は、規定の濃度(ブリックス)を示す。この原液シロップに、飲料製造設備1の洗浄、殺菌等に用いられた後そのまま導入経路13内に残存する水が混入することで、規定の濃度よりも低い濃度のシロップがシロップタンク21に導入されることがある。しかし、そのシロップの濃度が製品に定められるショ糖の濃度(製品濃度)以上であれば、原液の規定濃度よりは低くても製品に利用可能である。
【0065】
本実施形態の飲料製造設備1は、シロップを無駄なく製品に利用するために、シロップの濃度(ブリックス)を検知する第1ブリックス計31および第2ブリックス計32を備える。
第1ブリックス計31は、導入経路13内を流れる液のブリックスを検知する。
第2ブリックス計32は、シロップタンク21内に貯留された液のブリックスを検知する。
これらのブリックス計31,32としては、液の屈折率あるいは密度の測定値に基づいてブリックスを算出するものを用いることができる。
本実施形態において、単に「液」と言う場合は、場所や、水およびシロップの置換状況に応じて、シロップ、シロップおよび水の混合液、および水のうちのいずれかを意味する。
【0066】
以下、第1ブリックス計31および第2ブリックス計32が示す値を適宜参照して行う飲料製造設備1の始業に際して行われる処理(
図2)について説明する。
【0067】
[始業処理]
始業に際して、第1始業準備段階S10および第2始業準備段階S20を行う。
始業前において、飲料製造設備1の配管内やタンク内には、飲料製造設備1の洗浄、あるいは殺菌のすすぎに用いられた清浄な水が存在する。
飲料を製造するにあたり、ドレン弁141を開くことでドレン14からの水の排出を開始するとともに、ブレンダ20を起動し、シロップ供給源11からシロップタンク21へのシロップの受け入れを開始する(ステップS11)。
ブレンダ20は、シロップタンク21および水タンク22のそれぞれの液位を一定に制御しながら、計量弁23,24の開度に従った流量でシロップおよび水を混合タンク25内へと払い出して混合する。
【0068】
ブレンダ20の運転中、シロップ供給源11から供給されるシロップは、導入経路13、シロップタンク21、混合タンク25、および後工程装置15へと順次、水を追い込みながら下流へと送られる。
したがって、供給されたシロップが導入経路13における第1ブリックス計31の検知箇所に到達するまでは、第1ブリックス計31は0に近い値を検知する。第1ブリックス計31により閾値以上の値が検知されるまでの間は(ステップS12でY)、ドレン14からの水の排出を続ける。
【0069】
シロップ供給源11から供給されたシロップの流れは、水と置換されながら導入経路13内を進む。少量のシロップを含む液が第1ブリックス計31による検知箇所に到達すると、第1ブリックス計31により、0を超えた所定の閾値以上の濃度が検知される(ステップS12でY)。
つまり、検知箇所では水と同視しうる状態を脱してシロップへの置換が開始されたことが検知されたことになる。後続の液にはシロップが含まれる。
本実施形態では、次の第2始業準備段階S20において、その液に含まれるシロップを捨てることなく製品に利用する。
【0070】
そのため、導入経路13のドレン弁141を閉じて液の排出を停止する(ステップS13)。
ステップS13では、シロップ受入切替弁17を閉じてシロップタンク21へのシロップの受け入れを停止しておく。
水の排出を完了したら、一旦、ブレンダ20を停止する。
【0071】
次いで、第2始業準備段階S20に移行する。
第2始業準備段階S20に移行する前までに、シロップタンク21および混合タンク25のそれぞれの液を排出させておく。
第2始業準備段階S20では、まず、シロップ受入切替弁17を開き、シロップタンク21内の規定の液位までシロップを受け入れたら、シロップ受入切替弁17を再び閉じて受け入れを停止する(ステップS21)。
そして、シロップタンク21内に貯留された液の濃度を第2ブリックス計32によって検知する(ステップS22)。
ここで、受け入れ開始直後は、依然として水に近い状態の液がシロップタンク21へと流入するが、継続して流入する液がシロップタンク21内に貯留される過程で、シロップタンク21内の液の濃度は上昇する。シロップタンク21内に貯留された液の濃度が、シロップタンク21内に供給されるシロップの規定濃度(シロップ供給源11と同様)には満たなくても、製品濃度には達しているのであれば、その液と、希釈する水との混合比率を変更することで、シロップタンク21内の液を製品に利用可能である。
【0072】
そのため、第2ブリックス計32により検知されたシロップタンク21内の液の濃度に基づいて、希釈水と混合したときに所定の製品濃度を得ることのできるシロップ計量弁23の開度を算出する(ステップS23)。
つまり、シロップタンク21内の液の濃度が規定よりも薄いので、シロップ計量弁23の開度を大きくすることによって、混合タンク25内に送られるシロップを水に対して増量する。ここで、水に比べて流量が小さいシロップの計量弁23の開度を変えることで、飲料製造設備1内の全体の流れにさほど影響を与えることなく、所定の製品濃度の混合液を作ることができる。
シロップ計量弁23の開度は、第2ブリックス計32により検知された濃度に応じて自動的に演算を行う演算部34によって算出することもできる。
【0073】
製品濃度を得るために必要な開度が算出されたならば、その開度でシロップ計量弁23を設定する(ステップS24)。
【0074】
次いで、ブレンダ20を起動して、シロップタンク21内の液と水タンク22内の水とをそれぞれ払い出しながら混合タンク25内でブレンドする(ステップS25)。その間は、シロップ受入切替弁17を閉じたままシロップの受け入れをしない。このときブレンダ20は、シロップタンク21内の液位を一定に制御することを行わない。
シロップと異なり濃度変化のない水は、ステップS21においてシロップをシロップタンク21に所定の液位まで受け入れるまでに、水タンク22に所定の液位まで受け入れておく。以降は、ブレンダ20の運転に伴って、水受入切替弁18、水払出切替弁28、および水計量弁24が制御されることで、水タンク22内の水位が一定に保たれることとなる。
【0075】
シロップタンク21内の液の払い出しが完了すると(ステップS26)、混合タンク25内には、所定の製品濃度の混合液が貯留されているので、混合液を後工程装置15に送ることで、製品に利用することができる。
【0076】
その後は、上記のステップS21に戻り、ステップS21〜S26を繰り返す。なお、ステップS26を終えた後、ブレンダ20を一旦停止し、各種の弁やブリックス計31,32の状態を確認してからステップS21に戻ってもよい。
ステップS21〜S26を繰り返した回数の分だけ、混合タンク25内に製品濃度の混合液が作られるので、その都度、混合タンク25内から後工程装置15へと払い出して、製品に利用する。
【0077】
ステップS21〜S26を2回以上繰り返すうち、水からシロップへの置換が完全に終了した後は、シロップタンク21内には、水が混入していないシロップが貯留される。それによって、ステップS22で、第2ブリックス計32により規定濃度(あるいは規定濃度の許容範囲の値)が検知されれば(ステップS22でY)、第2始業準備段階S20を終了する。
【0078】
以上で始業準備を終えたならば、通常の製造工程に移行する。このとき、シロップタンク21内に規定の液位まで貯留されている規定濃度のシロップをそのまま使用する。
シロップ受入切替弁17を開いてシロップの受け入れを再開し、シロップタンク21と水タンク22のそれぞれの液位を一定に保つ通常のモードでブレンダ20を運転させることにより、シロップと水とを連続的に混合して飲料を製造することができる。
【0079】
以上で説明したように、本実施形態では、第1ブリックス計31により検知された濃度に基づいて導入経路13内の水からシロップへの置換の開始が検知されると、その後に続く液を捨てることなくシロップタンク21内に受け入れて製品に利用するので、歩留まりを向上させることができる。
ここで、シロップを含む液を利用するにあたり、シロップタンク21内に液を定量だけ受け入れて貯留している。そのため、シロップの出入りがなく安定した状態で、第2ブリックス計32によりシロップタンク21内の液の濃度が正確に検知される。したがって、検知されたシロップタンク21内の液の濃度が製品濃度以上である限り、検知された濃度に基づいてシロップと水との混合比率を変更することで、所定の製品濃度である混合液を確実に得ることができる。このとき、混合タンク25内で混合される水の量とシロップの量とを所定の混合比率に合致させることができる限り、シロップおよび水のそれぞれの払い出しのタイミングや流量は任意である。水の量とシロップの量とを所定の混合比率に合致させるために、シロップおよび水のそれぞれの払い出す時間や、シロップ計量弁23および水計量弁24の開度を適宜に設定することができる。
【0080】
第1ブリックス計31において閾値以上の濃度が検知された後(第2始業準備段階S20)、シロップタンク21内に受け入れられた液の濃度は、当初は製品濃度よりも薄くても、シロップタンク21の規定液位にまでシロップが貯留される過程で製品濃度になることが多いので、シロップを少しも無駄にすることなく製品に利用することができる。
【0081】
また、本実施形態の飲料製造設備1は、既存の導入経路13およびブレンダ20に、第1ブリックス計31および第2ブリックス計32を設けるだけで容易に構成することができる。第1ブリックス計31および第2ブリックス計32以外の装置を新たに設置する必要がないので、飲料製造設備1の設置に必要なスペースを既存設備と同等に抑えることができる。また、装置コストも抑えることができる。
【0082】
ところで、本実施形態は、飲料製造設備1の終業に際して配管やタンク内のシロップが水に置換される際や、製造工程においてブレンダ20を連続運転させている最中に、供給されるシロップの濃度に変動が生じた際にも有効である。
【0083】
[終業処理]
まず、
図3を参照し、飲料製造設備1の終業に際して行われる処理について説明する。
終業に際して、第1終業準備段階S30および第2終業準備段階S40を行う。
終業にあたり、シロップ供給源11から導入経路13へのシロップの導入を止めて、水の供給源から導入経路13へと清浄な水を導入することで、下流に向けて水でシロップを追い込む(ステップS31)。
【0084】
そして、ブレンダ20により、シロップタンク21および水タンク22のそれぞれの液位を一定に制御しつつ、混合された液を下流へと送りながら、第1ブリックス計31により導入経路13内の液濃度を検知する(ステップS32)。
第1ブリックス計31により、規定濃度を下回る値が検知されるまでの間は(ステップS32でY)、導入経路13よりも下流側に製造時と同様の濃度の液が存在しているので、その液を使用して飲料を製造する。
【0085】
その後、第1ブリックス計31により、規定濃度を下回る値が検知される(ステップS32でY)。つまり、検知箇所においてシロップから水への置換が開始されたことが検知されたことになる。検知箇所よりも上流側の液には水が混入されている。
第1ブリックス計31により規定濃度を下回る値が検知されると、シロップ受入切替弁17を閉じてシロップタンク21へのシロップの受け入れを停止する(ステップS33)。その時点では、導入経路13よりも下流側でなおも製造時と同様の濃度の液が存在している。そのため、シロップタンク21および混合タンク25内の液を払い出して下流側へと送り、飲料の製造を続ける(ステップS34)。
下流側への送液を完了したら、一旦、ブレンダ20の運転を停止する(ステップS35)。
【0086】
次に、第2終業準備段階S40に移行する。第2終業準備段階S40では、規定濃度よりも薄いシロップであっても捨てることなく製品に利用する。
第2終業準備段階S40では、上述した第2始業準備段階S20とほぼ同様の処理を行うことができる。
まず、シロップタンク21内の規定の液位までシロップを受け入れる(ステップS41)。
そして、シロップタンク21内に貯留された液の濃度を第2ブリックス計32によって検知する(ステップS42)。
ここで、シロップタンク21内に流入するシロップの濃度は次第に下がるが、規定濃度よりも薄くても、製品濃度以上の濃度である限り、その液と、希釈する水との混合比率を変更することで、シロップタンク21内の液を製品に利用可能である。
【0087】
そのため、第2ブリックス計32により検知されたシロップタンク21内の液の濃度に基づいて、希釈水と混合したときに所定の製品濃度を得ることのできるシロップ計量弁23の開度を算出する(ステップS43)。
そして、算出された開度でシロップ計量弁23を設定する(ステップS44)。
【0088】
次いで、ブレンダ20を起動し、シロップタンク21内の液と水タンク22内の水とをそれぞれ払い出しながら混合タンク25内でブレンドする(ステップS45)。その間は、シロップ受入切替弁17を閉じたままシロップの受け入れをしない。このときブレンダ20は、シロップタンク21内の液位を一定に制御することを行わない。一方、水タンク22内の水位は一定に制御してもよいし、シロップタンク21と同様、一定に制御しなくてもよい。
【0089】
シロップタンク21内の液の払い出しが完了すると(ステップS46)、混合タンク25内には、所定の製品濃度の混合液が貯留されているので、混合液を後工程装置15に送ることで、製品に利用することができる。
【0090】
その後は、上記のステップS41に戻り、第2ブリックス計32により検知された濃度が製品濃度を下回るまで、ステップS41〜S46を繰り返す。なお、ステップS46を終えた後、ブレンダ20を一旦停止し、各種の弁やブリックス計31,32の状態を確認してからステップS41に戻ってもよい。
ステップS41〜S46を繰り返した回数の分だけ、混合タンク25内に製品濃度の混合液が作られるので、その都度、混合タンク25内から後工程装置15へと払い出して、製品に利用する。
【0091】
以上で終業準備を終えたならば、通常の終業運転に移行する。終業運転では、シロップタンク21および混合タンク25のそれぞれの液を排出させた後、導入経路13から水を導入してブレンダ20の内部のシロップを洗い流す。その後、必要に応じて殺菌工程を行う。
【0092】
以上の通り、終業に際して、第1ブリックス計31により検知された濃度に基づいてシロップから水への置換の開始が検知されると、検知箇所よりも下流側にある規定濃度の液を製品に利用するのは勿論のこと、検知箇所よりも上流側にある規定濃度には満たない液をも製品に利用することにより、歩留まりを向上させることができる。
ここで、規定濃度よりも薄い液を利用するにあたり、始業時と同様に、シロップタンク21内に液を定量だけ受け入れて貯留するので、シロップの出入りがなく安定した状態で、第2ブリックス計32によりシロップタンク21内の液の濃度が正確に検知される。したがって、検知された濃度に基づいてシロップと水との混合比率を変更することで、所定の製品濃度である混合液を確実に得ることができる。
【0093】
[連続運転中の処理]
次に、
図4を参照し、ブレンダ20の連続運転中にシロップの濃度に変動が生じた場合に行われる処理について説明する。
その処理は、上述した始業処理(
図2)あるいは終業処理(
図3)とほぼ同様に行うことができる。
例えばシロップ供給源11におけるシロップの調合に不具合が生じると、規定濃度よりも濃いあるいは薄いシロップが過渡的に導入経路13に供給されることがある。そのとき、規定濃度に設定された許容範囲を逸脱した濃度が第1ブリックス計31により検知される(ステップS51)。
シロップの濃度が規定濃度に回復されるまで、以下の調整処理により対応する。
【0094】
まず、シロップ受入切替弁17を閉じてシロップタンク21へのシロップの受け入れを停止する(ステップS52)。その時点では、導入経路13よりも下流側では正常な濃度の液が存在しているので、シロップタンク21および混合タンク25内の液を払い出して下流側へと送り、飲料の製造を続ける(ステップS53)。
下流側への送液を完了したら、一旦、ブレンダ20の運転を停止する(ステップS54)。
【0095】
次に、シロップタンク21内の規定の液位までシロップを受け入れる(ステップS61)。このステップS61以降、ステップS66までは、上述した始業処理のステップS21〜S26(
図2)あるいは終業処理のステップS41〜S46(
図3)と同様に行う。第2ブリックス計32により検知される濃度が規定濃度よりも薄い場合には、始業処理のステップS21〜S26に該当し、第2ブリックス計32により検知される濃度が規定濃度よりも濃い場合には、終業処理のステップS41〜S46に該当する。
そして、第2ブリックス計32により規定濃度(あるいは規定濃度の許容範囲の値)が検知されると(ステップS62でY)、濃度変動に対する調整処理を終えて連続運転に復帰する。このとき、シロップタンク21内に規定の液位まで貯留されている規定濃度のシロップをそのまま使用する。
【0096】
以上の通り、シロップの濃度が変動した場合にも、シロップを廃棄することなく製品に使用して歩留まりを向上させることができる。
【0097】
〔第2実施形態〕
次に、
図5および
図6を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
以降の各実施形態では、第1実施形態との相違する点を中心に説明する。第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。
第2実施形態に係る飲料製造設備4のブレンダ40は、シロップを貯留するシロップタンク400を備える。シロップタンク400は、上流シロップタンク41と、第1実施形態のシロップタンク21と同様の下流シロップタンク42とから構成される。
本実施形態は、下流シロップタンク42を備える既存のブレンダ(第1実施形態のブレンダ20と同様)の構成を変更することなく、上流シロップタンク41の追加により実施可能である。
【0098】
上流シロップタンク41は、導入経路13によりシロップ供給源11と接続される。
上流シロップタンク41には、上流シロップタンク41外に取り出した液を上流シロップタンク41内に還流させる循環経路R1と、上流シロップタンク41内に貯留された液を下流シロップタンク42に向けて払い出すための払出経路R2とが設けられる。
上流シロップタンク41の容量は、下流シロップタンク42の容量よりも大きい。本実施形態の上流シロップタンク41の容量は、下流シロップタンク42の容量の数倍である。
【0099】
循環経路R1には、液を送り出すポンプ46と、方向切替弁47と、第1ブリックス計31とが設けられる。
方向切替弁47は、上流シロップタンク41内に液を留める場合(閉)と、上流シロップタンク41内から液を取り出して循環させる場合(開)とに切り替えられる。
第1ブリックス計31は、循環経路R1を流れる液の濃度を検知する。
【0100】
払出経路R2は、循環経路R1から分岐している。分岐点に設けられた方向切替弁47により、上流シロップタンク41に貯留された液を循環経路R1に流すのか、あるいは払出経路R2に流すのかを切り替えられるようになっている。
【0101】
上流シロップタンク41は、下流シロップタンク42の前段に設置されており、循環経路R1および払出経路R2により下流シロップタンク42と連結される。上流シロップタンク41と下流シロップタンク42とは互いに近接して設置されている。そのため、方向切替弁47から下流シロップタンク42までの区間を、例えばガスを押し込んだりピグで掃行することによって水が存在しない状態にすることができる。また、方向切替弁47から下流シロップタンク42までの区間は短いので、その区間に水が残存したままであっても、その水は、混合比率に実質的に影響しない。
【0102】
図6を参照し、飲料製造設備4の始業に際して行われる処理について説明する。
その処理は、シロップを受け入れて液の濃度を第2ブリックス計32により検知するまでは、第1実施形態の始業処理(
図2)と同様である。
【0103】
[始業処理]
飲料製造設備4の始業に際して、
図6に示すように、第1始業準備段階S70および第2始業準備段階S80を行う。
始業にあたり、ドレン弁141を開くことでドレン14からの水の排出を開始するとともに、ブレンダ40を起動し、シロップ供給源11からシロップタンク400(上流シロップタンク41および下流シロップタンク42)へのシロップの受け入れを開始する(ステップS71)。
このとき、上流シロップタンク内の液が払出経路R2を通じて下流シロップタンク42へと流れるように、方向切替弁47を切り替える。
【0104】
ブレンダ40の運転中、シロップ供給源11から供給されるシロップは、導入経路13、上流シロップタンク41、下流シロップタンク42、混合タンク25、および後工程装置15へと順次、水を追い込みながら下流へと送られる。
導入経路13に設けられた第1ブリックス計31により閾値以上の値が検知されるまでの間は(ステップS72でY)、ドレン14からの水の排出を続ける。
【0105】
少量のシロップを含む液が第1ブリックス計31による検知箇所に到達すると、第1ブリックス計31により、0を超えた所定の閾値以上の濃度が検知される(ステップS72でY)。
すると、ドレン弁141を閉じて液の排出を停止するとともに、シロップタンク400へのシロップの受け入れを停止する(ステップS73)。
水の排出を完了したら、一旦、ブレンダ40を停止する。
【0106】
次いで、第2始業準備段階S80に移行する。第2始業準備段階S80では、上流シロップタンク内の液が循環経路R1を通じて循環されるように、方向切替弁47を切り替える(ステップS81)。そして、上流シロップタンク41内の規定の液位までシロップを受け入れる(ステップS82)。
そして、循環経路R1により循環される上流シロップタンク41の液の濃度を第2ブリックス計32によって検知する(ステップS83)。本実施形態の第2ブリックス計32は循環経路R1に設けられているので、上流シロップタンク41の液の濃度は、循環経路R1において検知される。
【0107】
続いて、第2ブリックス計32により検知された濃度に基づいて、希釈水と混合したときに所定の製品濃度を得ることのできるシロップ計量弁23の開度を算出する(ステップS84)。その開度でシロップ計量弁23を設定する(ステップS85)。
【0108】
以上により、設定した混合比率でシロップと水をブレンドする準備が整うので、方向切換弁47を切り替えることで、払出経路R2を通じて上流シロップタンクと下流シロップタンク42とを連結する(ステップS87)。
そして、ブレンダ40を起動し、ポンプ46により上流シロップタンク41から下流シロップタンク42へと送液しながら、下流シロップタンク42内の液と水タンク22内の水とをそれぞれ払い出しながら混合タンク25内で混合する(ステップS88)。その間は、上流シロップタンク41のシロップ受入切替弁171を閉じたまま、上流シロップタンク41へのシロップの受け入れをしない。
【0109】
下流シロップタンク42内の液の払い出しが完了すると(ステップS89)、混合タンク25内には所定の製品濃度の混合液が貯留されているので、混合液を後工程装置15に送ることで、製品に利用することができる。
【0110】
その後は、上記のステップS82に戻り、ステップS82〜S89を繰り返す。なお、ステップS88を終えた後、ブレンダ40を一旦停止し、各種の弁やブリックス計31,32の状態を確認してからステップS21に戻る。
【0111】
ステップS82〜S89を行ううちに、水からシロップへの置換が完全に終了した後は、上流シロップタンク41内には、水が混入していないシロップが貯留される。それによって、ステップS82で、第2ブリックス計32により規定濃度(あるいは規定濃度の許容範囲の値)が検知されれば、第2始業準備段階S80を終了する。
【0112】
以上で始業準備を終えたならば、通常の製造工程に移行する。このとき、上流シロップタンク41内に規定の液位まで貯留されている規定濃度のシロップをそのまま使用する。
シロップ受入切替弁17を開いて上流シロップタンク41へのシロップの受け入れを再開し、移送先である下流シロップタンク42と水タンク22のそれぞれの液位を一定に保つ通常のモードでブレンダ40を運転させることにより、シロップと水とを連続的に混合して飲料を製造することができる。
【0113】
終業処理、および連続運転中に濃度が変動した場合の処理についても、第1実施形態で説明した処理とほぼ同様にして行うことができる。
【0114】
本実施形態では、上述のように、下流シロップタンク42の数倍の容量を有する上流シロップタンク41内にシロップを受け入れて第2ブリックス計32により濃度を検知し、その検知濃度に基づいて下流シロップタンク42の計量弁23の開度を割り出す。それを終えたら、上流シロップタンク41から下流シロップタンク42へと液を移送して、設定した混合比率でシロップと水とのブレンドを行う。
以上の処理を1回行うことで、第1実施形態のシロップタンク21にシロップを定量だけ繰り返し受け入れては、濃度検知、および開度算出する処理を行う場合の数回分の処理が一括して行われることとなる。すなわち、1つのシロップタンク21のみを備える第1実施形態において第2始業準備段階S20が繰り返される回数に比べて、本実施形態において第2始業準備段階S80が繰り返される回数は少ない。
そのため、第2始業準備段階のサイクル(S81〜S88)を終えて次のサイクルに移る前に、一旦、ブレンダ40を停止させる操作、計器等の動作確認に要する手間を低減できる。
【0115】
上流シロップタンク41の容量は、水からシロップへの置換に際して生じる規定濃度よりも薄いシロップの想定される総量と同じ程度に設定されていると、上流シロップタンク41にシロップを定量だけ繰り返し受け入れては、濃度検知、および開度算出する処理を繰り返す回数を極力抑えることができる。
【0116】
さらに、本実施形態では、上流シロップタンク41内の液濃度を直接検知するのではなく、上流シロップタンク41に設けた循環経路R1において液濃度を検知する。それにより、配管に設置可能な汎用のブリックス計32を用いることができる。そういったブリックス計32は安価かつ容易に入手できる。
【0117】
〔第3実施形態〕
次に、
図7および
図8を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の飲料製造設備5は、ブレンダ20と、後工程装置であるカーボネータ50とを備える。
ブレンダ20とカーボネータ50とは、一体型のユニットを構成しており、シロップと水のブレンドと炭酸ガス吹き込みとを連携して行う。
【0118】
カーボネータ50は、ノズル51と、炭酸ガスが封入されたカーボネータタンク52とを備える。
ノズル51は、ブレンダ20から送られた混合液をカーボネータタンク52に向けて取り込む。
カーボネータタンク52は、混合液に対して炭酸ガスを吹き込む。
カーボネータタンク52の上流側にはドレン521が設けられ、下流側にはドレン522が設けられる。
【0119】
混合タンク25の払出経路250とカーボネータタンク52の上流側とは送出経路R3により接続される。送出経路R3の途上には、送液ポンプ16と、エアや水との熱交換により混合液を冷却するプレートフィンタイプのクーラ53と、ノズル51とが設けられる。
【0120】
第3実施形態は、ブレンダ20により混合された液に、送出経路R3内に残存する水が混入することを防ぐ。
そのために、飲料製造設備5は、第1ブリックス計31および第2ブリックス計32に加えて、送出経路R3に設けられる第3ブリックス計33を備える。
第3ブリックス計33により、送出経路R3を流れる液の濃度を検知する。
【0121】
図8を参照し、飲料製造設備5の始業に際して行われる処理について説明する。
本実施形態では、ブレンダ20とカーボネータ50とを連系をとって動作させる。
第1ブリックス計31が示す値を参照する第1始業準備段階S10と、第2ブリックス計32が示す値を参照して繰り返される第2始業準備段階S20は、第1実施形態(
図2)と同様に行われる。
ここで、第1始業準備段階S10を終えてブレンダ20を一旦停止させた後、第2始業準備段階S20の初回を開始する際、ドレン521を開いてカーボネータ50の使用準備S90を開始する(ステップS91)。この時点で、送出経路R3にはシロップが混入していない水が存在すると想定される。
初回の第2始業準備段階S20においてブレンダ20が運転されると、水およびシロップの混合液が混合タンク25から払い出される。その混合液により、送出経路R3内の水が下流側へと追い込まれる。水を追う混合液が送出経路R3における第3ブリックス計33の検知箇所に到達するまでは、第3ブリックス計33は0に近い値を検知する。第3ブリックス計33により混合液の規定濃度が検知されるまでの間は(ステップS92でY)、ドレン521からの水の排出を続ける。
【0122】
混合液が第3ブリックス計33による検知箇所に到達すると、第3ブリックス計33により、混合液の規定濃度が検知される(ステップS92でY)。すると、ドレン521を閉じる(ステップS93)。これによってカーボネータタンク52への混合液の受け入れを開始し、送液ポンプ16、クーラ53およびカーボネータ50を起動する(ステップS94)。
以降、カーボネータ50は、ブレンダ20から連続して混合液を受け入れ、混合液に炭酸ガスを吹き込む。
【0123】
本実施形態では、第3ブリックス計33により得られる送出経路R3内の液の濃度に基づいて、送出経路R3内における水から混合液への置換を検知しており、検知するまではドレン521から水だけを廃棄し、検知後はドレン521を閉じる。つまり、ブレンダ20とカーボネータ50との間の配管内に残存する水をドレン521から廃棄することで、ブレンダ20からカーボネータ50へと混合液だけを渡し、製品に利用することができる。
【0124】
なお、ドレン521を開いてカーボネータ50の使用準備S90を開始するタイミングは、上記のように第2始業準備段階S20の初回開始時には限らず、適宜設定できる。
【0125】
終業時には、第3ブリックス計33により送出経路R3内の液濃度の下降を検知することで、送出経路R3内の混合液から水への置換を検知することができるので、検知するまでの間は混合液を廃棄せずに製品に利用することができる。
また、連続運転時に第3ブリックス計33により濃度の変動が検知された際には、規定濃度から逸脱している間に限り液を廃棄することで、廃棄量を抑えて歩留まりを向上させることができる。
【0126】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。