(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性材料が炭素系材料であり、炭素系材料が、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又は多孔質炭素材料である請求項6に記載の固体酸化物アルカリ燃料電池用触媒。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体(但し、前記鉄族金属系合金粒子がFe及びCoからなる鉄族金属系合金粒子である複合体は除く)を含む、フィッシャー・トロプシュ反応触媒。
工程(1)で用いる少なくとも2種の化合物が、2種又は3種の鉄族金属含有化合物であるか、1種又は2種以上の鉄族金属含有化合物及び1種又は2種以上の遷移金属含有化合物である、請求項9に記載の製造方法。
前記工程(2)で得られる鉄族金属を含有する前駆体粒子は、鉄酸化物、コバルト酸化物及びニッケル酸化物の少なくとも1種を含有する粒子である請求項9〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
保護ポリマーは、水および溶媒に対する溶解度が、鉄族金属含有化合物及び遷移金属含有化合物と同等であり、金属錯体原料と相互作用して錯形成を伴うことがある物質である請求項9〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[鉄族金属系合金粒子を含む複合体]
本発明は、固体担体及び前記固体担体に担持された下記(a)〜(d)のいずれか1つの鉄族金属系合金粒子を含む複合体に関する。
【0018】
(a)の鉄族金属系合金粒子
(a)の鉄族金属系合金粒子は、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属からなる鉄族金属系合金粒子である。但し、前記鉄族金属系合金は、前記2種又は3種の鉄族金属が固溶体型合金である。本願明細書において、鉄族金属群とはFe、Co及びNiから成る群を意味する。Fe、Co及びNiは、原子%で表示して(本明細書においては特に断らない限り、合金組成に関しての%は原子%を意味する)、それぞれ0〜99%の範囲で含有する。但し、Fe、Co及びNiの合計は100原子%であり、Fe、Co及びNiの少なくとも2種は、0.1原子%を超える量の含有量である。Fe、C及びNiは、原子%で表示して、好ましくはそれぞれ0.01〜99.99%の範囲、より好ましくはそれぞれ1〜99%の範囲、さらに好ましくはそれぞれ5〜95%の範囲、一層好ましくはそれぞれ10〜90%の範囲、さらに一層好ましくはそれぞれ20〜80%の範囲、尚一層好ましくはそれぞれ30〜70%の範囲で含有する。
【0019】
より具体的には、(a)の鉄族金属系合金粒子は、Fe-Co、Fe-Ni、Co-Ni、及びFe-Co-Niの4種類の合金粒子からなる。
【0020】
Fe-Coにおいては、Fe:Co原子%比は、0.1〜99.9:99.9〜0.1の範囲、好ましくは1〜99:99〜1の範囲、より好ましくは10〜90:90〜10の範囲、さらに好ましくは20〜80:80〜20の範囲、一層好ましくは30〜70:70〜30の範囲、さらに一層好ましくは40〜60:60〜40の範囲、尚一層好ましくは45〜55:55〜45の範囲である。但し、燃料電池の電極用触媒として用いる場合には、生成物分布や電力密度および電流効率を考慮して、Fe:Co原子%比は適宜決定できる。
【0021】
Fe-Niにおいては、Fe:Ni原子%比は、0.1〜99.9:99.9〜0.1の範囲、好ましくは1〜99:99〜1の範囲、より好ましくは10〜90:90〜10の範囲、さらに好ましくは20〜80:80〜20の範囲、一層好ましくは30〜70:70〜30の範囲、さらに一層好ましくは40〜60:60〜40の範囲、尚一層好ましくは45〜55:55〜45の範囲である。但し、燃料電池の電極用触媒として用いる場合には、生成物分布,電力密度,電流効率および寿命を考慮して、Fe:Ni原子%比は適宜決定できる。フィッシャー・トロプシュ反応用触媒として用いる場合には、原料の転化率や生成物の選択率や収率を考慮して、Fe:Ni原子%比は適宜決定できる。
【0022】
Co-Niにおいては、Co:Ni原子%比は、0.1〜99.9:99.9〜0.1の範囲、好ましくは1〜99:99〜1の範囲、より好ましくは10〜90:90〜10の範囲、さらに好ましくは20〜80:80〜20の範囲、一層好ましくは30〜70:70〜30の範囲、さらに一層好ましくは40〜60:60〜40の範囲、尚一層好ましくは45〜55:55〜45の範囲である。但し、燃料電池の電極用触媒として用いる場合には、生成物分布,電力密度,電流効率および寿命を考慮して、Co:Ni原子%比は適宜決定できる。フィッシャー・トロプシュ反応用触媒として用いる場合には、原料の転化率や生成物の選択率や収率を考慮して、Co:Ni原子%比は適宜決定できる。
【0023】
Fe-Co-Niにおいては、Fe:Co:Ni原子%比は、Feを1としたときにCoは0.01〜999の範囲とすることができ、Niは0.01〜999の範囲とすることができる。但し、3つの元素の合計は100原子%とする。例えば、Feを1としたときにCoが0.5、Niが0.5の場合、Fe:Co:Ni原子%比は、50:25:25となる。Feを1としたときにCoは、好ましくは0.05〜99.95の範囲、より好ましくは0.1〜99.9の範囲、さらに好ましくは0.5〜99.5の範囲とすることができる。Feを1としたときにNiは、好ましくは0.05〜99.95の範囲、より好ましくは0.1〜99.9の範囲、さらに好ましくは0.5〜99.9の範囲とすることができる。但し、燃料電池の電極用触媒として用いる場合には、生成物分布、電力密度、電流効率および寿命
を考慮して、Fe:Co:Ni原子%比は適宜決定できる。フィッシャー・トロプシュ反応用触媒として用いる場合には、原料の転化率や生成物の選択率や収率を考慮して、Fe:Co:Ni原子%比は適宜決定できる。
【0024】
(b)の鉄族金属系合金粒子
(b)の鉄族金属系合金粒子は、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属を含有する鉄族金属系合金粒子である。但し、前記鉄族金属系合金は、少なくとも前記2種又は3種の鉄族金属が固溶体型合金である。
(b)の鉄族金属系合金粒子は、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属を含有することに加えて、後述する(c)及び(d)の鉄族金属系合金粒子に含有される遷移金属以外の追加成分を、(b)の鉄族金属系合金粒子の触媒性能に影響を及ぼさない範囲で含有することもできる。そのような追加成分の例として、例えば、Al, Zn, V, W, Ta, Y, Re, Biなどを挙げることができる。但し、前記追加成分の含有量は、特に制限はないが、(b)の鉄族金属系合金粒子の触媒性能に影響を及ぼさない範囲であることを考慮すると、1%未満、好ましくは0.5%未満であることが適当である。尚、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属からなる部分については(a)の鉄族金属系合金粒子の鉄族金属系合金と同様である。
【0025】
(c)の鉄族金属系合金粒子
(c)の鉄族金属系合金粒子は、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる1種、2種又は3種の鉄族金属、並びにCr、Mn、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuから成る遷移金属群から選ばれる1種又は2種以上の遷移金属からなる鉄族金属系合金粒子である。本願明細書において、遷移金属群とは、Cr、Mn、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuから成る群を意味する。但し、前記鉄族金属系合金は、前記1種、2種又は3種の鉄族金属及び1種又は2種以上の遷移金属が固溶体型合金である。
【0026】
(c)の鉄族金属系合金粒子は、1種、2種又は3種の鉄族金属、並びに1種又は2種以上の遷移金属からなる鉄族金属系合金粒子である。例えば、鉄族金属であるFe、Co及びNiのいずれか1種と1種又は2種以上の遷移金属からなる鉄族金属系合金粒子、Fe及びCo、Fe及びNi、又はCo及びNiと1種又は2種以上の遷移金属からなる鉄族金属系合金粒子、Fe、Co及びNiと1種又は2種以上の遷移金属からなる鉄族金属系合金粒子である。鉄族金属及び遷移金属の含有量は、それぞれ0.1〜99.9%の範囲である。但し、鉄族金属及び遷移金属の合計は100原子%である。鉄族金属及び遷移金属の含有量は、原子%で表示して、好ましくはそれぞれ1〜99%の範囲、より好ましくはそれぞれ5〜95%の範囲、さらに好ましくはそれぞれ10〜90%の範囲、一層好ましくはそれぞれ20〜80%の範囲、さらに一層好ましくはそれぞれ30〜70%の範囲、尚一層好ましくはそれぞれ40〜60%の範囲である。但し、鉄族金属及び遷移金属の種類に応じて、燃料電池の電極用触媒として用いる場合には、生成物分布、電力密度、電流効率および寿命を考慮して、鉄族金属及び遷移金属の原子%比は適宜決定できる。同様に、フィッシャー・トロプシュ反応用触媒として用いる場合には、原料の転化率や生成物の選択率や収率を考慮して、鉄族金属及び遷移金属の原子%比は適宜決定できる。
【0027】
(c)の鉄族金属系合金粒子において2種又は3種の鉄族金属を含有する場合には、(a)の鉄族金属系合金粒子における鉄族金属の組合せや含有比を参照できる。2種以上の遷移金属を含有する場合には、合金の結晶構造や固溶状態およびその触媒特性を考慮して、遷移金属の組合せや含有比を適宜決定することができる。
【0028】
(d)の鉄族金属系合金粒子
(d)の鉄族金属系合金粒子は、Fe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれる1種、2種又は3種の鉄族金属、並びにCr、Mn、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuから成る遷移金属群から選ばれる1種又は2種以上の遷移金属を含有する鉄族金属系合金粒子である。但し、前記鉄族金属系合金は、少なくとも前記1種、2種又は3種の鉄族金属及び1種又は2種以上の遷移金属が固溶体型合金である。
(d)の鉄族金属系合金粒子は、鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属及び遷移金属群から選ばれる1種又は2種以上の遷移金属を含有することに加えて、上記鉄族金属及び遷移金属以外の追加成分を、(d)の鉄族金属系合金粒子の触媒性能に影響を及ぼさない範囲で含有することもできる。そのような追加成分の例として、例えば、Al, Zn, V, W, Ta, Y, Re, Bi等を挙げることができる。但し、前記追加成分の含有量は、特に制限はないが、(d)の鉄族金属系合金粒子の触媒性能に影響を及ぼさない範囲であることを考慮すると、1%未満、好ましくは0.5%未満であることが適当である。尚、鉄族金属群から選ばれる2種又は3種の鉄族金属及び遷移金属群から選ばれる1種又は2種以上の遷移金属からなる部分については(c)の鉄族金属系合金粒子の鉄族金属系合金と同様である。
【0029】
<固溶体型合金>
(a)の鉄族金属系合金粒子においては、2種又は3種の鉄族金属が固溶体型合金である。(b)の鉄族金属系合金粒子においては、少なくとも2種又は3種の鉄族金属が固溶体型合金であり、追加成分も含めて鉄族金属とともに固溶体型合金であることもできる。(c)の鉄族金属系合金粒子においては、1種、2種又は3種の鉄族金属及び1種又は2種以上の遷移金属が固溶体型合金である。(d)の鉄族金属系合金粒子においては、少なくとも1種、2種又は3種の鉄族金属及び1種又は2種以上の遷移金属が固溶体型合金であり、追加成分も含めて鉄族金属とともに固溶体型合金であることもできる。
【0030】
本発明において、固溶体型合金とは、合金を構成する金属原子が、合金粒子中において均一に存在する合金であることを意味する。さらに、本発明の成分金属が原子レベルで固溶した鉄族合金触媒は、ナノレベルの小粒径の鉄族合金粒子とすることで、上記触媒反応活性および反応選択性の改善がより高まることにも基づく。尚、ここで原子レベルとは、合金一粒子の体積16.7nm
3中に異種金属原子に結合した鉄族金属原子が少なくとも1個存在することを意味する。
【0031】
但し、異種金属原子は、前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子であるか、前記遷移金属原子であるか、または前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子及び前記遷移金属原子以外の追加成分の金属原子である。即ち、(a)の鉄族金属系合金粒子においては、異種金属原子は、前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子である。(b)の鉄族金属系合金粒子においては、異種金属原子は、前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子であるか、又は追加成分の金属原子である。(c)の鉄族金属系合金粒子においては、異種金属原子は、前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子 又は遷移金属原子である。(d)の鉄族金属系合金粒子においては、異種金属原子は、前記鉄族金属原子とは異なる鉄族金属原子若しくは遷移金属原子であるか、又は追加成分の金属原子である。
【0032】
固溶体型合金の粒子は、合金一粒子の体積16.7nm
3中に存在する異種金属原子に結合した鉄族金属原子の個数が合金組成に比例した割合で存在することが望ましい。
【0033】
前記鉄族金属系合金粒子は、一粒子の体積が16.7nm
3以上10,466.7nm
3以下である合金粒子であることが、高活性の触媒として利用できるという観点から好ましい。一粒子の体積は、好ましくは20nm
3以上5,000nm
3以下、より好ましくは50nm
3以上1,000nm
3以下、さらに好ましくは50nm
3以上1,000nm
3以下であることが高活性の触媒として利用できるという観点から好ましい。尚、本発明の複合体においては、上記範囲に含まれる体積を有する合金粒子を少なくとも10質量%以上含む合金粒子を固体担体上に担持したものであればよい。上記範囲に含まれる体積を有する合金粒子の固体担体上への担持量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、一層好ましくは90質量%以上である。
【0034】
固体担体
本発明の複合体は、固体担体及び前記固体担体に担持された(a)〜(d)のいずれか1つの鉄族金属系合金粒子を含むものである。前記固体担体は、本発明の複合体が各種触媒として使用される場合に好適な活性や耐久性等を発揮できる材料の中から適宜選択することができる。本発明の複合体に用いられる固体担体は、少なくとも一部が多孔質材料からなるものであることが好ましく、多孔質材料の表面に鉄族金属系合金粒子が担持されることが適当である。したがって、本発明の複合体に用いられる固体担体は、少なくとも鉄族金属系合金粒子が担持される部分の表面が多孔質材料からなることが適当であり、固体担体全体が多孔質材料からなっていても、あるいは非多孔質材料からなる支持体の表面に多孔質材料が被覆されたものであっても良い。また、支持体が別の多孔質材料からなっていても良い。
【0035】
本発明の複合体に用いられる固体担体は、少なくとも一部が、例えば、炭素系材料又は無機材料からなることができる。炭素系材料としては活性炭やカーボンナノチューブ等を挙げることができる。無機材料としては無機酸化物材料を挙げることができる。無機酸化物材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア等を挙げることができる。固体担体は表面積が大きいことが好ましく、例えば、比表面積500〜2000m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0036】
固体担体の形状、形態は、特に制限されないが、例えば、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状などを呈することができる。粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状の担体は、例えば、前記の多孔質材料の担体材料のみからなることができる。それに対してハニカム構造の担体は、非多孔質材料、例えば、コージエライト等からなる支持体の表面に前記の多孔質材料の担体材料が被覆されたものであっても良い。また、前述のように支持体は、別の多孔質材料からなっていても良い。
【0037】
固体担体の形状が、例えば、粉体状、粒子状又は顆粒状の場合、固体担体は、直径が1nmから10μmの範囲の粒子を含有することが適当であり、直径が10nmから10μmの範囲の粒子を含有することが好ましく、直径が10nmから500μmの範囲の粒子を含有することがより好ましい。固体担体の粒子径は、本発明の複合体の用途に応じて適宜選択することができる。
【0038】
固体担体上への鉄族金属系合金粒子の担持量は、鉄族金属系合金粒子の種類、固体担体の種類、複合体の用途等を考慮して適宜決定することができる。例えば、質量比で、固体担体100に対して、鉄族金属系合金粒子の担持量を0.01〜50の範囲にすることができる。複合体の単位質量当たりの活性が高く、かつ鉄族金属系合金粒子の単位質量当たりの活性も高かいという観点からは、固体担体100に対して、鉄族金属系合金粒子の担持量を0.1〜30の範囲にすることが好ましく、0.5〜15の範囲にすることがより好ましく、1〜10の範囲にすることがさらに好ましい。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【0039】
[複合体の製造方法]
本発明の複合体は、工程(1)〜(3)を含む方法により製造することができる。
本発明では、合金粒子の粒径を制御するためには、鉄族金属イオン及び/又は遷移金属イオンと粒子凝集の抑制剤として水溶性ポリマーを混合させた溶液を用いる。鉄族金属イオン及び/又は遷移金属イオンがポリマーと相互作用することで、同種金属間における凝集が抑制されると期待される。この混合溶液に還元剤を加えて一度金属に還元し、それをそのまま、あるいは再酸化することにより、鉄族金属およびその酸化物及び/又は遷移金属あるいは遷移金属酸化物と水溶性ポリマーが混合したナノ合金前駆体を作製する。前駆体中でも金属イオンが原子レベルでの固溶(混合)は維持される。更に、前駆体を水素雰囲気下で加熱することで、構成金属イオンを同時に還元することが可能となり、成分金属が原子レベルで固溶し、かつ、粒子径が制御されたナノ合金触媒(例えば、1−50nm)を作製できる。
【0040】
工程(1)
工程(1)は、鉄族金属含有化合物及び遷移金属含有化合物から成る群から選ばれる少なくとも2種の金属含有化合物、保護ポリマー、溶媒及び固体担体を混合して混合物を調製する工程である。但し、鉄族金属はFe、Co及びNiから成る鉄族金属群から選ばれ、遷移金属はCr、Mn、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuから成る遷移金属群から選ばれる。工程(1)で用いる少なくとも2種の化合物は、2種又は3種の鉄族金属含有化合物であるか、1種又は2種以上の鉄族金属含有化合物及び1種又は2種以上の遷移金属含有化合物である。
【0041】
鉄族金属含有化合物は、鉄族金属を含有する化合物であれば、特に制限はない。工程(1)に用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、鉄族金属の塩化塩、硫酸塩、硝酸塩、およびそれらの水和物などの無機鉄族金属含有化合物、さらには、鉄族金属を含む錯体を挙げることができる。鉄族金属が鉄の場合は、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、およびそれらの水和物などの無機鉄含有化合物、さらには、鉄を含む錯体を挙げることができる。鉄を含む錯体としては、例えば、酢酸鉄、鉄アセチルアセトナト、テトラクロロ鉄(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラクロロ鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ビス(スルフィド)テトラニトロシルに鉄(2-)ナトリウム八水和物、トリス(スルフィド)ヘプタニトロシル四鉄酸(1-)アンモニウム一水和物、ヘキサアンミン鉄(II)臭化物、テトラキス(チオフェノラト)鉄(II)酸テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(2,3,5,6-テトラメチルフェノラト)鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ペンタシアノアンミン鉄(II)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノアンミン鉄(III)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物、ペンタシアノニトロ鉄(II)酸カリウム一水和物、テトラシアノ(エチレンジアミン)鉄(II)酸ナトリウム三水和物等を挙げることかできる。但し、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。
【0042】
鉄族金属がニッケルの場合は、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケルおよびそれらの水和物などの無機ニッケル含有化合物、さらには、ニッケルを含む錯体を挙げることができる。ニッケルを含む錯体としては、例えば、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナト、テトラクロロニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラブロモニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物、ジニトロテトラアンミンニッケル(II)、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム一水和物、ヘキサニトロニッケル(II)酸カリウムバリウム、トリス(エチレンジアミン)ニッケル(II)硫酸塩、ビス(エチレンジアミン)ジアクアニッケル硝酸塩、エチレンジアミンテトラアクアニッケル(II)硫酸塩一水和物、ジニトロ(エチレンジアミン)ニッケル(II)、ビス(N,N-ジメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)過塩素酸、ビス(2,3-ジメチル-2,3-ジアミノブタン)ニッケル(II)ヨウ化物、ビス(ペルクロラト)テトラピリジンニッケル(II)、アセチルアセトナト(ニトラト)(N,N,N'、N'-テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)等を挙げることかできる。但し、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。
【0043】
鉄族金属がコバルトの場合は、例えば、塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルトおよびそれらの水和物などの無機コバルト含有化合物、さらには、コバルトを含む錯体を挙げることができる。コバルトを含む錯体としては、例えば、酢酸コバルト(II)四水和物、アセチルアセトン酸コバルト、ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム、(エチレンジアミンテトラアセタト)コバルト(III)酸カルシウム五水和物、クロロ(エチレンジアミンテトラアセタト)コバルト(III)酸カリウム、ジクロロビス(エチレンジアミン)コバルト(III)塩化物、カルボナトテトラアンミンコバルト(III)塩化物、トリス(エチレンジアミン)コバルト(III)塩化物三水和物、エチレンジアミンテトラニトロコバルト(III)酸カリウム、ジアンミンビス(オキサラト)コバルト(III)酸カリウム、チオシアン酸コバルト(II)三水和物、ヘキサアンミンコバルト(II)塩化物、ペンタアンミンニトロコバルト(III)塩化物、過塩素酸コバルト(II)六水和物等を挙げることができる。ただし、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。
【0044】
遷移金属含有化合物は、遷移金属を含有する化合物であれば、特に制限はない。工程(1)に用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、遷移金属の塩化塩、硫酸塩、硝酸塩、およびそれらの水和物などの無機遷移金属含有化合物、さらには、遷移金属を含む錯体を挙げることができる。遷移金属を含む錯体としては、例えば、酢酸クロム(III)一水和物、シュウ酸クロム(III)六水和物、ヘキサアンミンクロム(III)塩化物、硫酸クロム(III)アンモニウム十二水和物、テトラクロロマンガン(II)酸アンモニウム二水和物、ペンタクロロマンガン(II)酸カリウム、ヘキサシアノマンガン(III)酸カリウム、酢酸銅(II)一水和物、ペンタニトロ銅(II)酸カリウム、テトラクロロ銅(II)酸アンモニウム、二モリブデン酸カリウム、ペンタクロロオキソモリブデン(V)酸アンモニウム、三モリブデン酸ナトリウム七水和物、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、ヘキサシアノルテニウム(II)酸カリウム三水和物、トリス(オキサラト)ルテニウム(III)酸カリウム、ヘキサシアノロジウム(III)酸カリウム、ヘキサアンミンロジウム(III)塩化物、トリス(オキサラト)ロジウム(III)酸カリウム、テトラクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物一水和物、ジアンミン銀(I)硫酸塩、酢酸銀(I)、ジシアノ銀(I)酸カリウム、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩化物、硫酸カリウムイリジウム(III)十二水和物、テトラアンミン白金(II)塩化物一水和物、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、テトラクロロ金(III)酸カリウム二水和物、ジシアノ金(I)酸カリウム、テトラシアノ金(III)酸カリウム等を挙げることができる。ただし、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。
【0045】
保護ポリマーは、前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物に対して親和性を示し、さらに溶媒に対しても可溶性を示す、前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物などの金属含有化合物に対して親和性を有する官能基部分、例えば極性官能基を有するポリマーであることが適当であり、水溶性のポリマーであることが好ましい。前記保護ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリ(メルカプトメチレンスリレン-N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリアクリロニトリルなどを挙げることかできる。さらに、PVPのような環状アミド構造を有するポリマーが好適である。保護ポリマーは、水および溶媒に対する溶解度が、鉄族金属含有化合物及び遷移金属含有化合物と同等であり、金属錯体原料と相互作用して錯形成を伴うことがある物質であり得る。
【0046】
保護ポリマーの役割は、主に、工程(2)及(3)ので生成する前駆体粒子及び/又は合金粒子間の凝集を防止することと、生成する前駆体粒子及び/又は合金粒子のサイズを制御することである。前駆体粒子及び/又は合金ナノ粒子は、平均粒子径は、例えば、1〜200000nm、望ましくは1〜5000nmであり、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましくは1〜200nmであり、さらに好ましくは1〜100nmであり、さらに一層好ましくは1〜50nmであり、より一層好ましくは1〜20nmであり、さらにより一層好ましくは1〜10nmであり、最も好ましくは、平均粒子径は1〜4nmの範囲である。そのためこの粒子径を維持するために、各ナノ粒子を凝集等から保護する手段を用いることが好ましく、そのための手段として保護ポリマーを用いる。さらに、合金の粒子径は、金属と保護ポリマーの比率を調整することによって制御することが出来る。例えば、溶媒中における保護ポリマーの量を相対的に増やすと、析出する前駆体粒子及び/又は合金粒子の粒径は小さくなる。この現象を利用すれば前駆体粒子及び/又は合金粒子の粒径を制御できる。尚、析出する合金粒子の粒径は、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物の濃度を調整することでも調整できる。
【0047】
前記溶媒は、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーを溶解できる溶媒である。ここで溶解とは、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーが溶媒に溶けている状態であり、溶液が透明になることが好ましい。溶媒として、水及び/又は有機溶媒、その混合溶媒を用いることができる。有機溶媒は、水に親和性のある有機溶媒または極性部位を有する有機溶媒であることが、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーに対する溶解性に優れるという観点から好ましい。溶媒は、水及び水に親和性のある有機溶媒の混合溶媒であることもできる。有機溶媒としては、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの種類等に応じて適宜選択するとよく、例えばエタノール、プロパノールやエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを用いることができる。水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合にも、鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの溶解性等を考慮して、有機溶媒の種類や有機溶媒と水との混合比を適宜調整できる。
【0048】
前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの溶媒中での存在状態は、特に制限はなく、分散及び/又は溶解した状態であることができる。分散した状態は分散液であり、溶解した状態は溶解液である。尚、固体担体は、溶媒中で分散した状態になる。溶解の際には混合物を加熱することもできる。分散と溶解が併存する場合も含まれる。前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーが分散状態にあるか、溶解状態にあるか、両者の併存状態にあるかは、前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの種類並びに溶媒、さらには、溶媒中の前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの濃度により変化する。溶媒中の前記鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの濃度は、それぞれ前駆体の組成や粒子径等を考慮して決められる。分散液または溶解液中の保護ポリマーの濃度、鉄族金属イオンの濃度及び/又は遷移金属イオンの濃度は、例えば、保護ポリマーが1×10
-7〜10mol/Lの範囲、鉄族金属イオンが1×10
-10〜10mol/Lの範囲、及び遷移金属イオンが1×10
-10〜10mol/Lの範囲であることができる。
【0049】
分散液または溶解液の調製は、上記溶媒に保護ポリマー並びに鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物を加えて、溶解または分散することで行うことができる。保護ポリマー並びに鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物の添加順序には制限はない。保護ポリマーを分散または溶解した溶液と鉄族金属含有化合物を溶解した溶液及び遷移金属含有化合物を溶解した溶液を、適宜混合することで調製することもできる。固体担体は、このようにして得られた分散液または溶解液に添加混合して混合物を調製することができる他、溶媒に保護ポリマー並びに鉄族金属含有化合物及び/又は遷移金属含有化合物を加える際に、固体担体も添加して混合物を調製することもできる。
【0050】
前記鉄族金属含有化合物、遷移金属含有化合物及び保護ポリマーの溶媒への分散または溶解の操作は、常温または加温または冷却下で行うことができる。さらに、前記溶媒への分散または溶解の操作は、静置した状態で行っても、攪拌した状態で行ってもよい。さらに、固体担体を添加しての混合物の調製も常温または加温または冷却下で行うことができる。
【0051】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られた混合物に、前記金属含有化合物に含まれる金属イオンに対する還元剤を添加して、鉄族金属、又は鉄族金属及び遷移金属を含有する担持前駆体粒子を調製する工程である。
【0052】
還元剤は、酸化還元電位が、還元対象である金属の酸化還元電位よりも卑である物質から選択される。具体的には還元剤としては、標準還元電位が室温における水素(0eV)よりも負である化合物を用いることが、鉄族金属イオンを金属に還元する力が強いという観点から適当である。そのような還元剤としては、例えば、MBH
4,MEt
3BH(M=Na, K), 水素化シアノホウ素ナトリウム NaBH
3CN、水素化ホウ素リチウム LiBH
4、水素化トリエチルホウ素リチウム LiBHEt
3、ボラン錯体 BH
3・L(Lは配位子、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、SMe
2(ジメチルスルフィド))、トリエチルシラン Et
3SiH、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム (Sodium Bis(2-methoxyethoxy)Alminium Hydride; Red-Al)などを挙げることができる。但し、これらの還元剤の中には、水と爆発的に反応して危険であるため水溶液中で使用できないものもあるので注意を要する。その場合は、溶媒として水以外の溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等のアプロトニックな極性溶媒)を使用することが適当である。
【0053】
還元剤の使用量は、金属原料に含まれる鉄族金属及び/又は遷移金属の物質量等を考慮して適宜決定され、例えば、還元すべき鉄族金属及び/又は遷移金属イオンの合計量の当量から200倍当量以下の範囲とすることができる。好ましくは鉄族金属及び/又は遷移金属イオンの合計量の当量から50倍当量以下の範囲とする
【0054】
還元剤の添加方法は、特に制限はされないが、例えば、粉末状又は顆粒状の還元剤を前記混合物に添加することができる。あるいは、前記工程(1)で用いた溶媒に例えば、粉末状又は顆粒状の還元剤を溶解及び/又は分散し、溶解及び/又は分散液を前記混合物に添加することもできる。使用する溶媒は、還元剤に対して不活性な物であることが、還元効率の観点から好ましい。
【0055】
上記還元剤で鉄族金属及び/又は遷移金属イオンを還元することで、前駆体粒子が調製される。上記還元剤での還元の温度は、還元により調製されるべき合金の結晶構造を考慮して決定され、例えば、0〜200℃の範囲とすることが適当である。好ましくは25〜160℃の範囲とすることがきる。
【0056】
工程(2)において、得られる前記鉄族金属及び/又は遷移金属を含有する前駆体粒子は、鉄族金属酸化物及び/又は遷移金属酸化物を含有する粒子であるか、または鉄族金属合金又は鉄族金属及び遷移金属合金、並びに鉄族金属酸化物又は鉄族金属酸化物及び遷移金属酸化物を含有する粒子である。前駆体粒子の作製時の還元により鉄族金属及び/又は遷移金属イオンは、還元剤の量が過剰であればその分、金属(合金)にまで還元されることがある。しかし、金属を含む前駆体粒子は、酸素を含む雰囲気に晒されることで、酸化される。従って、合成直後の前駆体粒子は金属(合金)の含有量は比較的高く、時間の経過と共にその量は低下する。鉄族金属合金又は鉄族金属及び遷移金属合金、並びに鉄族金属酸化物又は鉄族金属酸化物及び遷移金属酸化物の割合(合金:酸化物)は、還元条件により変化するが、例えば、1:0.1〜100:0.1〜100の範囲であることができる。但し、この範囲に制限される意図ではない。
【0057】
前記前駆体粒子における鉄族金属の割合、又は鉄族金属及び遷移金属の割合は、目的とする合金粒子の組成に応じて、原料の組成比を調整することで適宜決定できる。工程(2)で得られる鉄族金属を含有する前駆体粒子は、例えば、鉄酸化物、コバルト酸化物及びニッケル酸化物の少なくとも1種を含有する粒子であることができる。
【0058】
工程(2)における反応生成物は、反応終了後、工程(3)に供する前に適宜有機溶媒等を用いて洗浄することもできる。例えば、有機溶媒としてアセトンとジエチルエーテルの混合溶液を用い、この溶液を固相と液相に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して固相を回収する。次いで回収された固相を水に分散させ、この分散物に、アセトンを加えて再び固相と液相を分離させ、遠心分離することで洗浄済み試料を得ることができる。この操作により、固体担体に担持された金属からなる複合体をNaやホウ酸などの不純物から分離することができる。
【0059】
工程(3)
工程(3)は、前記前駆体粒子を水素含有雰囲気下で加熱して、前記前駆体粒子を還元し、かつ16.7 nm
3以上10466.7 nm
3以下の体積を有する合金粒子が固体担体上に担持した複合体を得る工程である。
【0060】
前記水素雰囲気での加熱処理は、上記工程(2)で得られた前駆体粒子から溶媒を除去した後に、または溶媒とともに、所定の温度及び水素圧力にて行うことができる。温度は、例えば、200℃〜1000℃の範囲であり、水素圧力は0.01Pa〜100MPaの範囲であることができる。水素雰囲気加熱処理の条件は、好ましくは300〜950℃の範囲で、かつ水素圧0.01MPa〜5MPaの範囲である。水素雰囲気加熱処理の条件は、より好ましくは400〜900℃の範囲で、かつ水素圧0.1MPa〜3MPaの範囲である。加熱温度は、より好ましくは500〜900℃の範囲である。処理時間は、温度及び圧力に応じて適宜設定することができ、例えば、0.05〜10時間の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。水素含有雰囲気の水素含有率は、例えば、1vol%超100vol%以下の範囲であることができ、水素以外にアルゴンや窒素などの不活性ガスを含有することができる。
【0061】
工程(3)における水素雰囲気加熱処理は、得られる鉄族ナノ合金粒子が、16.7 nm
3以上10466.7 nm
3以下の体積を有する結晶子サイズを有する条件で実施されることが好ましい。200℃〜1000℃の範囲の温度及び0.01Pa〜100MPaの範囲の水素圧力から条件を選択することで、上記体積範囲を有する結晶子サイズを有する合金粒子を得ることができる。
【0062】
[アルカリ燃料電池用触媒]
本発明の複合体は、固体酸化物アルカリ燃料電池用の触媒として利用できる。アルカリ燃料電池は、例えば、前述のように燃料として水素を用いる燃料電池であることができる。さらにアルカリ燃料電池は、例えば、燃料としてグリコールを用いる燃料電池(アルカリ系直接エチレングリコール燃料電池)であることができる。燃料としてグリコールを用いるサイクルでは、グリコールからシュウ酸を生成し、二酸化炭素まで酸化しない選択的酸化触媒が好ましく、本発明の複合体には、そのような選択的酸化活性を示す触媒が含まれている。
【0063】
〔燃料電池用アノード〕
本発明は、上記本発明の複合体とアニオン伝導性材料を含むアノード用組成物からなる層を基板表面に有する燃料電池用アノードを包含する。
【0064】
アノード用組成物に用いるイオン伝導性材料は、カソードにおいて、電気化学反応によって発生する水酸化物イオンを固体高分子電解質に伝導させるためのイオン伝導性媒体としての機能を有すると共に、上記本発明の複合体からなる触媒粒子を導電性多孔質基材に電極触媒層として結着させる結着剤としての機能を有する。このイオン伝導性材料としては、固体高分子電解質あるいは固体酸化物電解質と同じ素材からなるものを用いることができ、例えば、フレミヨン(旭硝子) として知られている。触媒粒子の結着性にすぐれるのみならず、イオン伝導性にすぐれる。但し、本発明において用いることができるイオン伝導性材料は、固体高分子電解質に限定されるものではない。
【0065】
本発明によれば、電極触媒層において、イオン伝導性材料の質量に対する前記触媒粒子の質量の比( 以下、触媒粒子/ポリマー質量比ということがある。)は、例えば、3/1〜20/1の範囲にあり、好ましくは、4/1〜18/1の範囲にあることができる。
【0066】
本発明においては、電極触媒層は、触媒粒子の結着剤として、イオン伝導性材料に加えて、他の樹脂を少量含有してもよい。他の樹脂としては、例えば、プロトン伝導性を有しないフッ素樹脂等を挙げることができ、より具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン等を挙げることができる。結着剤におけるその樹脂の割合は、結着剤中、30重量%以下であることが好ましく、特に、10重量%以下であることが好ましい。
【0067】
また、導電性多孔質基材としては、 多孔性炭素粉や導電性高分子等の繊維からなるペーパー、不織布、織布、編物、導電性多孔質膜等を挙げることができる。
【0068】
〔燃料電池用膜電極接合体〕
さらに本発明は、高分子電解質膜を挟んで上記本発明のアノードとカソードを積層した、燃料電池用膜電極接合体を包含する。
【0069】
本発明において、カソードは、電極触媒を結着剤と共に電極触媒層として導電性多孔質基材に結着、担持させてなるものであり、その構成は特に限定されるものではない。電極触媒層は、例えば、白金微粒子を担持させたカーボンブラック粉末と共に、導電助剤としてのカーボンブラック粉末、これらをまとめるための結着剤及び電気化学反応によって発生するイオンの伝導体となるイオン伝導性材料等を適宜に含有する。
【0070】
一例を挙げれば、カソードは、例えば、白金微粒子を担持させたカーボンブラック粉末と、必要に応じて、導電助剤としてのカーボンブラックとを適宜の結着剤を用いてペーストとし、これを前述したような導電性多孔質基材に塗布し、加熱、乾燥させることによって得ることができる。
【0071】
また、カソードとアノードを構成するそれぞれの導電性多孔質基材は、所謂フラッディングを防止するために、電極触媒を担持させる側に導電性撥水層を有することができる。
【0072】
〔燃料電池〕
さらに本発明は、上記本発明の燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池を包含する。
【0073】
本発明による燃料電池の作動温度は、通常、0℃以上であり、好ましくは、15〜200℃の範囲であり、より好ましくは、30〜100℃の範囲である。作動温度が高すぎるときは、用いる材料の劣化や剥離等が起こるおそれがある。
【0074】
アルカリ系直接エチレングリコール燃料電池においては、燃料極(アノード)に本発明の複合体を触媒として用いることができる。但し、電極用の触媒として用いることから固体担体は、導電性材料、例えば、炭素系材料(例えば、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、多孔質炭素材料など)であることが好ましい。本発明の複合体は実施例に示すように、エチレングリコール酸化反応(EOR)活性が示す。本燃料電池での反応は以下のとおりである。
燃料極: HOCH
2CH
2OH + 8 OH
- →(COOH)
2 + 6 H
2O + 8 e
-
酸素極: 2 O
2 + 4 H
2O + 8 e
- →8 OH
-
全反応: HOCH
2CH
2OH + 2 O
2 →(COOH)
2 + 2 H
2O
【0075】
本発明の複合体を燃料極(アノード)用触媒として用いることで、アルカリ系直接エチレングリコール燃料電池を構成できる。さらにエチレングリコールを燃料として使用する燃料電池からの排出物であるシュウ酸を、例えば、光触媒によってエチレングリコールに還元することで、燃料の再利用が可能な燃料電池を提供することができる。
【0076】
[フィッシャー・トロプシュ反応触媒]
本発明の複合体は、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応用の触媒として利用できる。但し、FT反応用触媒に関しては、本発明の複合体から、前記鉄族金属系合金粒子がFe及びCoからなる鉄族金属系合金粒子である複合体は除く。
【0077】
FT反応は合成ガス(一酸化炭素と水素を主成分とする混合ガス)から炭化水素を合成する方法である。FT反応としては、本発明の複合体を触媒として用い、合成ガス(CO+H
2)から直鎖の飽和又は不飽和炭化水素を生成する反応が挙げられる。このときの反応式は以下の通りである。
nCO + (2n+1)H
2 → C
nH
2n+2 + nH
2O
nCO + 2nH
2 → C
nH
2n + nH
2O
【0078】
本発明の複合体からなるFT反応用触媒は、FT反応によるエチレン、プロピレン、ブテン等の炭素原子数2〜4の軽質オレフィンの製造へ適用した場合に、CO転化率が高く、目的物を効率よく得られるものである。また、本発明の複合体からなるFT反応用触媒は、特にプロピレンの製造に好適である。FT反応における圧力は、例えば、常圧〜10MPaの範囲、好ましくは0.5〜5MPaの範囲とすることができ、温度は、200〜450℃の範囲、好ましくは200〜350℃の範囲とすることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、実施例に記載の範囲に限定される意図ではない。
【0080】
[実施例1-1]Fe
33Co
33Ni
33/C50wt%
0.0747g の酢酸鉄(II)、0.0706g の酢酸コバルト(II)、0.0996g の酢酸ニッケル(II)四水和物、0.0515g のポリエチレングリコール(以下PEG と表記する)および0.0692g のバルカン(登録商標)を200ml のトリエチレングリコール(以下、TEGと表記する)に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、0.75g のNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料を得た。
【0081】
この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0082】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe-Co-Ni ナノ粒子の粒径は35.6nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が49wt%含まれ、Fe:Co:Ni=34:34:32 であることが明らかとかった。
【0083】
[実施例1-2]Fe
50Co
50/C50wt%
0.5611g の酢酸鉄(II)、0.5333g の酢酸コバルト(II)、2.6337g のPEG および0.3460g のバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、2.2895g のNaBH4 を加えて8 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料を得た。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0084】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0085】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe-Co ナノ粒子の粒径は24nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が47wt%含まれ、Fe:Co=51:49 であることが明らかとかった。
【0086】
[実施例1-3]Co
50Ni
50/C50wt%
0.5335g の酢酸コバルト(II)、0.7471g の酢酸ニッケル(II)四水和物、2.6378gのPEG および0.3458g のバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、2.31g のNaBH
4 を加えて10 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料を得た。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0087】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0088】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたCo-Ni ナノ粒子の粒径は13nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が42wt%含まれ、Co:Ni=48:52 であることが明らかとかった。
【0089】
[実施例1-4]Fe50Ni50/C50wt%
0.5612g の酢酸鉄(II)、0.7471g の酢酸ニッケル(II)四水和物、2.6368g のPEGおよび0.71g のバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、2.4037g のNaBH
4 を加えて7 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料を得た。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0090】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0091】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe-Ni ナノ粒子の粒径は22 nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が44wt%含まれ、Fe:Ni=50:50 であることが明らかとかった。
【0092】
[実施例1-5]
Fe
25Co
75/C20wt%
0.135g の酢酸鉄(II)、0.4g の酢酸コバルト(II)、1.33g のポリエチレングリコール(以下PEG と表記する)および0.71g のバルカン(登録商標)を200ml のトリエチレングリコール(以下、TEG と表記する)に混合した。混合溶液を120℃まで加熱した後、1.1gのNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0093】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0094】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe-Co ナノ粒子の粒径は17±8nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES測定より、触媒中に金属が14.1wt%含まれ、Fe:Co=22:78 であることが明らかとかった。
【0095】
[実施例1-6]Fe
60Co
40/C20wt%
0.26g の鉄(III)アセチルアセトナト、0.27g の酢酸コバルト(II)、1.33g のPEGおよび0.71g のバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、1.1gのNaBH
4を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0096】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0097】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe-Co ナノ粒子の粒径は24±14nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はbcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が12.7wt%含まれ、Fe:Co=55:45 であることが明らかとかった。
【0098】
[実施例1-7]Fe
75Co
25/C20wt%
0.39g の酢酸鉄(II)、0.13g の酢酸コバルト(II)、1.33g のPEG および0.71gのバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を120℃まで加熱した後、1.1gのNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。
【0099】
この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で700℃まで昇温して触媒を作成した。
【0100】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたナノ粒子の粒径は18±9nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のFe ナノ粒子はbcc 構造をとり、ICP−AES 測定より、触媒中に金属が22wt%含まれ、Fe:Co=72:28 であることが明らかとかった。
【0101】
[参考例1] Co/C50wt%
1.06g の酢酸コバルト(II)、1.33g のPEG をおよび0.71g のバルカン(登録商標)を200ml のTEG に混合した。混合溶液を120℃まで加熱した後、1.1gのNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=2:1 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0102】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で800℃まで昇温して触媒を作製した。
【0103】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたCo ナノ粒子の粒径は39.5nm であることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のナノ粒子はfcc 構造をとることがわかった、ICP−AES 測定より、触媒中にCo が48.2wt%含まれていることが明らかとかった。
【0104】
[参考例2]Fe/C35wt%
0.14g の酢酸鉄(II)、0.35gのPEGを200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、0.08g のバルカン(登録商標)を混合し撹拌した。0.3gのNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=1:0 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0105】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で800℃まで昇温して触媒を作成した。
【0106】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたFe ナノ粒子の粒径は28.1±12.3nmであることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のFe ナノ粒子はbcc 構造とfcc構造をとり、ICP−AES 測定より、触媒中にFe が28.5wt%含まれることが明らかとかった。
【0107】
[参考例3]Ni/C50wt%
3.9g の酢酸ニッケル(II)四水和物、7gのPEGを200ml のTEG に混合した。混合溶液を80℃まで加熱した後、0.9g のバルカン(登録商標)を混合し撹拌した。6gのNaBH
4 を加えて5 分間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=1:0 の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離する作業を3 回繰り返して黒色試料をえた。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
【0108】
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。500mg の前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Ar ガスを流通させた状態で800℃まで昇温して触媒を作成した。
【0109】
TEM 測定より、バルカン(登録商標)に担持されたNiナノ粒子の粒径は37.0±11.5nmであることがわかった。粉末XRD 測定より、作製した触媒中のNi ナノ粒子はfcc構造をとり、ICP−AES 測定より、触媒中にNi が46.3wt%含まれることが明らかとかった。
【0110】
[試験例1]
図1の(a)に参考例1で得られた従来(含浸)法(900℃加熱処理後)調製品、および(b)に実施例1-1で得られた本発明(900℃加熱処理後)により調製されたFe 系合金ナノ合金担持触媒のTEM 像を示す。
【0111】
[試験例2]
図2に、実施例1-1〜4で得られたFexCoyNi(1-x-y)/Cの粉末XRDパターンを示す。
【0112】
[試験例3]
図3に、実施例1-2で得られたFe
50Co
50/C 前駆体(a)とナノ合金触媒(b)のSTEM-EDS(元素マップ)像を示す。鉄とコバルトが16.7nm
3 内に分散していることが分かる。
【0113】
[試験例4]
FexCoyNi(100-x-y)/C のTEM 像およびTEM-EDS による金属組成分析結果
図4に二成分系ナノ合金(RT〜1000℃、10K/min、10min Keep、N
2)のTEM像を示す。
図5に金属ナノ粒子のTEM像を示す。
【0114】
[試験例5]
FexCoyNi(100-x-y)/C をアノード触媒に用いた、ダイレクトグリコール無機アルカリ電池発電特性を
図6に示す。組成により出力特性が変化している。
【0115】
[実施例2-1]Fe-Co-Niナノ合金触媒の調製
(1)A重量/gの(2)金属塩原料A、(3)B重量/gの(4)金属塩原料B、(5)C重量/gの(6)金属塩原料C、(7)D重量/gの(8)保護剤Dおよび(9)E重量/gの(10)担体Eを(11)F容量/mlの(12)溶媒Fに混合した。
混合溶液を(13)温度/℃まで加熱した後、(14)重量/gのNaBH
4を加えて(15)時間撹拌したのち放冷した。反応混合物にアセトン:ジエチルエーテル=組成(16): (17)の混合溶液を黒色層と無色透明の溶液層に分離が起こるまで加えた後、遠心分離して黒色の試料を得た。得られた黒色沈殿を水に分散させた。この混合物に、アセトンおよびジエチルエーテルを加えて再び黒色試料と無色透明な溶液を分離させ、遠心分離して黒色試料を得た。この試料を触媒前駆体と呼ぶ。触媒前駆体を真空デシケータ内にて乾燥させた。
乾燥させた触媒前駆体を粉砕して粉末とした。(18)重量/gの前駆体粉末を石英ボートに移し、5%H
2-Arガスを流通させた状態で(19)温度/℃で(20)時間/分間前駆体を焼成して触媒を作製した。
TEM測定より、担持されたナノ粒子の粒径は(21)直径/nmであることがわかった。ICP−AES測定より、触媒中に金属が(22)金属担持量/ wt%含まれ、Fe:Co:Ni=組成(23):(24):(25)であることが明らかとかった。(1)〜(25)の各説明は表1に示す。活性炭(Vulcan)以外の担体材料としてγ-Al2O3を担体とする複合体も合成した。
【0116】
【表1】
【0117】
[実施例2-2]Fe-Co-Crナノ合金触媒の調製
実施例2-1同様の方法でFe-Co-Crナノ合金触媒を調製した。(1)〜(25)の各説明は表2に記載した。
【0118】
【表2】
【0119】
[実施例2-3]Fe-Crナノ合金触媒の調製
実施例2-1同様の方法でFe-Crナノ合金触媒を調製した。但し、実施例2-1の(1)〜(4)が表3の(1)〜(4)に相当し、(7)〜(25)が表3の(5)〜(22)に相当する。
【0120】
【表3】
【0121】
[実施例2-4]Fe-Mnナノ合金触媒の調製
実施例2-1同様の方法でFe- Mnナノ合金触媒を調製した。但し、実施例2-1の(1)〜(4)が表4の(1)〜(4)に相当し、(7)〜(25)が表4の(5)〜(22)に相当する。
【0122】
【表4】
【0123】
[実施例2-5] Fe-Co-Ni/Cの粉末XRDパターン
BRUKER社製D8ADVANCEを使いCu Kα線により実施例2-1で作製した表1のFe33Co33Ni33/C(=FeCoNi/C)、Co50Ni50/C(=CoNi/C)、Fe50Co50/C(=FeCo/C)、Fe50Ni50/C(=FeNi/C)の粉末XRDパターンを測定した(
図7)。尚、Co/C、 Fe/C、Ni/Cは参考例1〜3で得られた試料である。 XRDパターンの全体像を
図7に示す。全てのナノ合金触媒に於いて、単一の結晶相からの回折パターンが得られたことから、全てのサンプルは固溶体型構造であることが示唆された。
【0124】
[実施例2-6]STEM-EDSによる元素マッピング測定とその一次元解析
JEM-ARM 200FとCEOS Cs correctorを用い、加速電圧120 kVにおいて、実施例2-1で作製した表1のFe33Co33Ni33/C(=FeCoNi/C)、Co50Ni50/C(=CoNi/C)、Fe50Co50/C(=FeCo/C)、Fe50Ni50/C(=FeNi/C)のSTEM-HAADFとEDSによる元素マッピングとその一次元分析をおこなった。元素マッピングの1点1点の間隔はx軸y軸方向とも0.773 nm であり、線分析の1点1点の間隔は0.2-0.5 nm 前後である。結果を
図8〜11に示す。得られたTEM写真から、いずれのナノ合金も測定した分解能の範囲でナノ合金の構成元素は粒子全体に均一に分布しており、16.7nm
3 の体積内に構成分子が存在していることを示している。また、元素からの特性X線の計数をBF STEM像上にしめした直線上で計測するとどの位置においても全ての構成元素について同様であることがわかった。このことから、ナノ合金内で構成元素が均一に分布していることが明らかとなった。
【0125】
[実施例2-7] Fe-Co-Ni/C上でのエチレングリコールの電気化学的酸化
実施例2-1で作製した表1のFe33Co33Ni33/C(=FeCoNi/C)、Co50Ni50/C(=CoNi/C)、Fe50Co50/C(=FeCo/C)、又はFe50Ni50/C(=FeNi/C)の触媒に50 mgにエチレングリコールを700 mg程加え、黒色懸濁液を調製した。この黒色懸濁液をカーボンフェルトに染み込ませて電極触媒を調製した。
続いて、Nafion膜を隔壁として挟持した反応セルの一方にエチレングリコールを30 wt%、含んだKOH(20 wt%)水溶液を50 mL程加え、先に調製した電極触媒をステンレス製のクリップでホールドした電極を作用極とし、Hg/HgO参照電極とともに溶液に導入した。もう一方のセルへは、KOH(20 wt%)水溶液を50 mL程加えPt線を対極として導入した。反応溶液を1時間程N
2バブリングを行い、系中をN
2置換した。N
2バブリング後のガスクロマトグラフィ分析により、反応開始前の初期状態のセル中の気相成分の分析を行った。さらに作用極および対極側のセルの溶液を50 mL程採取し、脱イオン水450 mLで希釈した試料を、島津製作所製液体クロマトグラフ(LC-20AD)で分析し、反応開始前の溶液成分を分析した。続いて、1.0 V vs. RHEの電圧を印可しながら125分程定電位での電極酸化を行った。電圧印可後は、作用極側の反応溶液中の気相成分をGC分析することにより分析した。また、電圧印可後の反応溶液50 mLを前述のLC-20ADで分析し、溶液成分の分析を行い、初期状態からの差分により、電圧印可にともない生成した各種成分量を算出した。
検討を行った結果を
図12に示す。Fe-Co-Ni/C触媒上ではその金属組成により、生成物に違いがあることがわかった。さらにそれらは印可電圧に大きく依存することが明らかとなった。また、FeCoNi/Cを用いた場合には最もシュウ酸の選択性(ca. 16%)が高いことが確認された。尚、Co/C、 Fe/C、Ni/Cは参考例1〜3で得られた試料についての結果である。
【0126】
[実施例2-8] Fe-Co-Ni/Cを用いたダイレクトグリコールアルカリ形燃料電池特性
Fe33Co33Ni33/C(=FeCoNi/C)、Co50Ni50/C(=CoNi/C)、Fe50Co50/C(=FeCo/C)、又はFe50Ni50/C(=FeNi/C)触媒とNa
xCoO
2電解質粉末を混合し、Heガスを流通させた状態で400 ℃で1時間加熱し焼結体を作製した。その後、焼結体とNa
xCoO
2加圧成型ペレットを同時に、湿潤H
2ガス流通下で300 ℃で30分間加熱することにより、アノード電極およびNa
xCoO
2電解質ペレットを作製した。カソード電極には、P50Tカーボンペーパー上に、Na
xCoO
2電解質粉末とVulcan XC-72Rカーボン粉末を重量比2:1で混合した粉末を9.44 mg/cm
2塗布したものを使用した。アノードおよびカソード電極はそれぞれ直径5 mmφのものを使用した。作製したアノード電極触媒と電解質ペレット、およびカソード電極をElectroChem社製燃料電池評価用セルに設置し、燃料電池特性評価を行った。アノード電極側に、エチレングリコール10 wt%および水酸化カリウム10 wt%を含有した水溶液を充填し、カソード電極側に70 ℃の湿潤O
2ガスを200 ml/minで流通させ、評価セルを70 ℃に保持した。電流-電圧特性はSolartron社製Electrochemical Test System 1280Cにより測定した。開回路電圧測定の結果、0.6-0.7 (V) の起電力を確認した。電流-電圧特性測定の結果を
図13に示す。電力密度はFe50Co50/C上で最大で46.0 (mW/cm
2)を示すことを確認した。尚、Co/C、 Fe/C、Ni/Cは参考例1〜3で得られた試料についての結果である。
【0127】
[実施例3]
実施例2-1にて作製したFe50Co50/Al2O3を用いてFT反応を行った。
反応装置は日本ベル製BEL-REAを使用した。Al
2O
3担持FeCo触媒0.5 gを直径1.0cmの反応管に充填した。前処理はH
2を400℃,0.1 MPa, 50 sccm条件下で5時間行った。引き続き,H
2/CO (=1)を260℃,1.0 MPa, 37 sccm条件下で16時間処理を行い,次にH
2/CO (=1)を300℃,0.1 MPa, 50 sccm条件下で5時間処理を行った。その後,H
2/CO (=1)を300℃,1.0 MPa, 37 sccm条件下で16時間FT反応を行った。CO転化率と低級炭化水素の選択率は,BEL-REAに接続したガスクロマトグラフィー装置によって求めた。長鎖炭化水素の選択率は,反応管の後にトルエンのトラップを置き,反応終了後これをガスクロマトグラフィーによって生成物を帰属した。
【0128】
反応結果を表5に示す。この反応条件ではCO転化率は15%とそれほど大きくないが、プロピレンへの選択率は24%とFT反応で得られる生成物分布を確率的に予測するASF分布(
図14)におけるC3化合物の生成確率18%と比較して非常に大きくなっている。また、表5、
図15および
図16に示すように生成物におけるオレフィン選択率が高いことがわかった。FeとCoが原子レベルで固溶された触媒におけるFT 反応活性は通常の触媒とは異なると考えられる。
【0129】
【表5】