特許第6230127号(P6230127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6230127環状オレフィンコポリマーを含む多層フィルム
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  • 特許6230127-環状オレフィンコポリマーを含む多層フィルム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230127
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】環状オレフィンコポリマーを含む多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/06 20060101AFI20171106BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171106BHJP
   B29C 47/88 20060101ALI20171106BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171106BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20171106BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20171106BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   B29C47/06
   B32B27/00 A
   B29C47/88
   B65D65/40 D
   B29K23:00
   B29L7:00
   B29L9:00
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-555691(P2014-555691)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公表番号】特表2015-512801(P2015-512801A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013024022
(87)【国際公開番号】WO2013116445
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】61/592,870
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/592,884
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルイエ イヴ エム
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−500187(JP,A)
【文献】 特表2003−535733(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0003432(US,A1)
【文献】 特表2010−504885(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0034999(US,A1)
【文献】 特表2009−522137(JP,A)
【文献】 特開平04−276441(JP,A)
【文献】 特開2012−011587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時押出多層フィルム構造体であって、
少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーと少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む少なくとも1つの耐破壊性層と;
少なくとも1つの結合層と;
ポリアミド、環状オレフィンコポリマー、あるいは環状オレフィンコポリマーとポリエチレンまたはポリプロピレンまたはアイオノマーとのブレンドをそれぞれ独立して含む少なくとも2つの層の間の、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層からなる少なくとも1つの障壁層と;
少なくとも1つのシーラント層とをこの順序で含み;
多層フィルム構造体における少なくとも1つの結合層が、オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーからなる、又は、酸、無水物、若しくはエポキシドの官能基で変性されたオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含み、
前記フィルムは一軸延伸または二軸延伸のいずれかが行われる、多層フィルム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の同時押出多層フィルム構造体を含む包装物品。
【請求項3】
同時押出多層フィルム構造体の製造方法であって、
多層フィルム構造体を同時押出して、同時押出管状フィルムを得るステップと;
第1のバブル中で前記同時押出管状フィルムを冷却するステップと;
第2のバブル中、加熱下で、前記同時押出管状フィルムを延伸して、延伸フィルムを得るステップと;
第3のバブル中、加熱下で、前記延伸フィルムを緩和させるステップとを含み;
前記管状多層フィルム構造体が、請求項1に記載の少なくとも1つの耐破壊性層を含み、前記管状多層フィルム構造体が、さらに請求項1に記載の少なくとも1つの結合層を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年1月31日に出願された米国仮特許出願第61/592870号明細書、および2012年1月31日に出願された米国仮特許出願第61/592884号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、食品包装用途などの包装に使用できる環状オレフィンコポリマーを含む同時押出多層フィルム構造体に関する。
【背景技術】
【0003】
包装の分野においては、品物を保持するために設計された収縮性および非収縮性の両方の多層フィルムが、複数の要求を満たす必要があることが多い。
【0004】
たとえば、鋭い端部または針状の突出部を有する品物を包装する場合、そのような品物の包装に使用される多層フィルムが優れた耐破壊性を有することが重要である。
【0005】
このような耐破壊性の要求に対する解決法の1つは、ポリアミド、またはそのブレンドを含有する層を含む多層フィルムによって得ることができる。たとえば、欧州特許第1296830号明細書には、あばら肉、およびカニなどのシーフードなどの冷凍食品の包装に好適な良好な耐破壊性を有するポリアミドの中間層を含む多層フィルムが記載されている。
【0006】
他方、このような多層フィルムは、熱の影響下で収縮して包装される品物の形状を採用する傾向、すなわち「熱収縮」として知られる性質などの他の性質をも示す必要がある。
【0007】
食品、特に肉の包装に使用されるシュリンク袋などのほとんどの包装用途において、少なくとも40%の「熱収縮」が必要であるが、耐破壊性を向上させるためにポリアミド層を混入すると、一般に、熱によって多層フィルムが収縮する傾向も低下し、そのためこれら2つの望ましい性質の間の妥協点を見いだす必要がある。
【0008】
アイオノマーは、加熱すると収縮する優れた性能で知られており、アイオノマーの中和の程度に依存して、アイオノマーの層を含む多層フィルムの「熱収縮」は50%、さらにはそれを超える値に到達しうる。
【0009】
しかし、アイオノマーの層を含む多層フィルムは、ポリアミドなどの剛性のより高い成分を含有する類似の多層構造体と比較して中程度のみの耐破壊性を有し、したがって、突出した骨片または破片を有する肉の切り身などの鋭いまたはとがった端部の包装に広範囲には使用されない。
【0010】
ポリアミドおよびアイオノマーのブレンドによって、ポリアミドの耐破壊性とアイオノマーの熱収縮性とを併せ持つポリマー材料が得られるが、その程度は大きく低下し、そのような組成物はあまり望ましくないと考えられる。
【0011】
個別の層のそれぞれの利点を併せ持つフィルムを製造するために、1つのフィルム中で複数の層を組み合わせる可能性が存在するが、そのようなフィルムの経済コストはその複雑さとともに増加するので、必ずしも好都合となるわけではない。多くの場合、多層フィルムは、逐次積層作業によって構成する必要があり、それによって費用が増加する。さらに、耐破壊性を増加させるために剛性のポリアミド層を含めることは、ポリアミドとポリオレフィンとの間の化学的非相溶性のためにこのような構造体の再利用は本来問題となるので、環境の観点から問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、良好な耐破壊性と、より重要な高い「熱収縮」特性とを1つの層中で併せ持ち、低い経済コストで製造でき、再利用がより容易となりうる多層フィルムの提供が必要とされている。
【0013】
欧州特許第EP1423408号明細書には、比較的良好な耐破壊性を有するアイオノマーと環状オレフィンポリマーとのブレンドを含むシーラント層が開示されているが、延伸多層フィルム中でのそのようなブレンドの熱収縮挙動には言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題は、積層の代わりに好ましくは同時押出される多層フィルム構造体であって、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーと少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む少なくとも1つの耐破壊性層と;少なくとも1つの結合層と;少なくとも1つのシーラント層とをこの順序で含み;フィルムが一軸延伸または二軸延伸のいずれかが行われ、トリプルバブルプロセスによって得られ;フィルム構造体が少なくとも2J/mmの耐破壊性を有し、耐破壊性は、DIN14477に準拠して、1mm/分の速度の速度で、先端に球状のボールを有するロッドを使用して測定され、ロッドの直径は2mmであり、球状のボールの直径は2.5mmである、多層フィルム構造体によって解決される。
【0015】
本発明の多層フィルム構造体は、トリプルバブルプロセスによって得ることができる、またはトリプルバブルプロセスによって得られ、一軸延伸または二軸延伸のいずれかを行うことができる。
【0016】
トリプルバブルプロセスでは、二軸延伸した外側フィルム(たとえばポリエステル)を、ポリオレフィンまたはアイオノマーを有するCOCブレンドを含有する層に積層するのではなく、同時押出による1ステップでこれらの構造体を製造することができる。これによって包装用フィルムのコストを大きく削減することができる。またこの場合、選択された層だけではなくフィルム全体が延伸され、そのためより一貫した収縮特性が得られる。
【0017】
本発明は、同時押出多層フィルム構造体を製造するための(トリプルバブル)プロセスであって、多層フィルム構造体を同時押出して、同時押出管状フィルムを得るステップと;同時押出多層管状フィルム構造体を第1のバブル中で冷却するステップと;第2のバブル中、加熱下で同時押出多層管状フィルム構造体を延伸して、延伸フィルムを得るステップと;第3のバブル中、加熱下で延伸フィルムを緩和させるステップとを含み;管状多層フィルム構造体は、前述の特徴を有する少なくとも1つの耐破壊性層を含む、プロセスも提供する。すなわち、耐破壊性層は、少なくとも1種類のCOCと、少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む。好ましいプロセスの1つでは、延伸フィルムは、一軸延伸または二軸延伸のいずれかが行われる。
【0018】
さらに、本発明は、前述の多層フィルム構造体を含む物品、特に包装物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】後述の本発明のトリプルバブルプロセスの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、好ましくは同時押出された多層フィルム構造体であって、少なくとも1種類のCOCと少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む少なくとも1つの耐破壊性層と、少なくとも1つの結合層と、少なくとも1つのシーラント層とをこの順序で含む多層フィルム構造体を提供する。
【0021】
好ましい多層フィルム構造体は、少なくとも1つの耐破壊性層が、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよび少なくとも1種類のアイオノマー、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよびポリエチレン、あるいは少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよびポリプロピレンを含み、結合層が、オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマー、好ましくはポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー、またはそれらの混合物、あるいはエチレンコポリマー、好ましくはエチレンα−オレフィンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、あるいは酸、無水物、またはエポキシド官能基で変性されたポリマーまたはコポリマーを含み;シーラント層が、ポリエチレン、プロピレンホモポリマーおよびコポリマー、エチレンコポリマー、好ましくはエチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、ならびにそれらの対応するアイオノマー、および/またはそれらの混合物から選択されるオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む多層フィルム構造体である。
【0022】
耐破壊性は、鋭い物体が突き刺された後に、その貫入の進行を抑制する材料の相対能力を意味する。耐破壊性を測定するために考案された試験は、一般に、屋根材、包装材料、防護服、および耐針性材料などの被覆品目の用途に特有のものである。たとえば、耐破壊性材料は、材料に対して垂直の25ゲージ針による単位厚さ当たりの比貫入力であって0.1〜150N/mm、0.1〜100N/mm、1〜50N/mm、1〜20N/mm、または1〜10N/mm、50〜150N/mm、50〜100N/mmの比貫入力に耐えることができ、あるいはJ/mmの単位での単位厚さ当たりの比エネルギーの形態に耐えることができる。通常は、これは0.1〜20または1〜10J/mmであり得る。
【0023】
耐破壊性は、DIN14477またはEN388試験に準拠して、1mm/分の速度で、先端に球状のボールを有するロッドを使用して測定することができ、ロッドは直径2mmであり、球状のボール直径2.5mmである。好ましくは、本明細書に記載のフィルムは、この試験での耐破壊性が少なくとも2J/mmであり、たとえば2〜10J/mm、好ましくは3〜8J/mmである。
【0024】
多層フィルム構造体の耐破壊性層は、少なくとも1種類のCOCと、少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む。好ましくは、同時押出多層フィルム構造体の耐破壊性層は、たとえば半結晶性および非晶質のポリアミドなどのポリアミドを本質的に含有しなくてよく、すなわち同時押出多層フィルム構造体の耐破壊性層は、たとえば半結晶性および非晶質のポリアミドなどのポリアミドを含まなくてよい。
【0025】
耐破壊性層は、耐破壊性層の全重量を基準として10〜99、10〜40、10〜30、40〜95、55〜95、または60〜95重量%のCOCを含むことができる。
【0026】
COCは、不飽和環状モノマーのコポリマーを含み、1種類以上の不飽和環状モノマーと、たとえばエチレンなどの1種類以上の不飽和線状モノマーとの連鎖重合によって、あるいは1種類以上の不飽和環状モノマーの開環メタセシス、および引き続く水素化のいずれかによって得ることができる。
【0027】
不飽和環状モノマーの例は、ノルボルネン、およびその誘導体、たとえば2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、および5−フェニル−2−ノルボルネン;シクロペンタジエン、およびその誘導体、たとえばジシクロペンタジエンおよび2,3−ジヒドロシクロペンタジエン;ならびにそれら2種類以上の組み合わせから選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
不飽和線状モノマーの例は、1〜20個、好ましくは1〜12個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルケン、たとえばα−オレフィン、たとえばエチレン、プロピレン、およびブチレンから選択することができるが、これらに限定されるものではない。他の不飽和線状モノマーは、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセン(1−eicocene)、シクロペンテン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチルテトラシクロドデセン、および2−エチルテトラシクロドデセン;またはそれら2種類以上の組み合わせから選択することができる。好ましくは不飽和線状モノマーはエチレンである。
【0029】
1種類以上の不飽和環状モノマーと1種類以上の不飽和線状モノマーとの連鎖重合によって得られるCOCの例としては、エチレンおよびノルボルネン、エチレンおよびテトラシクロドデセンのコポリマーを挙げることができる。
【0030】
COCポリマーは、全体的に、またはさらには完全に、非晶質で、高透明性であり、非常に高い防湿特性を有し、防湿特性はHDPEの約2倍であり、LDPEの5倍である。COCは、60〜150℃または70〜100℃のガラス転移温度(Tg)を有する環状オレフィンコポリマーから選択することができる。
【0031】
1種類以上の不飽和環状モノマーの開環メタセシスおよび引き続く水素化によって得られるCOCの例としては、水素化ポリノルボルネンを挙げることができる。
【0032】
COCは、少なくとも15、15〜90、または15〜40モルパーセントの不飽和環状モノマーを有する環状オレフィンコポリマーから選択することができる。
【0033】
シクロオレフィンポリマーは、遷移金属触媒を用いて調製することができる。調製は、たとえば、東独特許出願公開第A−109 225号明細書、欧州特許出願公開第A−0 407 870号明細書、欧州特許出願公開第A−0 485 893号明細書、米国特許第5,869,586号明細書および米国特許第6,068,936号明細書、ならびに国際公開第98/27126号パンフレットに記載されている。水素を使用して、調製中の分子量制御を好都合に行うことができる。好適な分子量は、対象とする触媒および反応条件の選択によって得ることもできる。この点に関する詳細は上記明細書に記載されている。
【0034】
好適なシクロオレフィンポリマーは、Ticonaより商標Topas(登録商標)で販売される製品である。
【0035】
耐破壊性層は、E/X/Y酸コポリマー(式中、Eはエチレンであり、XはC3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸であり、Yは、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルから選択される任意選択のコモノマーである)を主成分とするアイオノマーを含むこともできる。
【0036】
好適なC3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸は、たとえばメタクリル酸およびアクリル酸から選択することができる。
【0037】
3〜C8α,β−エチレン系不飽和カルボン酸は、酸コポリマーの全重量を基準として2〜30、5〜20、または12〜19重量パーセントの量で存在することができる。
【0038】
任意選択のコモノマーYは、E/X/Yコポリマーの重量を基準として0.1〜40、0.1〜10重量%の量で存在しても、全く存在しなくてもよい。
【0039】
アイオノマーを形成するために、E/X/Yコポリマー中に存在するカルボン酸官能基を少なくとも部分的に中和して、1種類以上のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオン、たとえばナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、またはカルシウムを含有する塩にすることができる。
【0040】
したがって、アイオノマーは、Eがエチレンであり、Xが、亜鉛またはナトリウムによって少なくとも部分的に中和されたメタクリル酸であるE/Xコポリマーから選択することができる。
【0041】
本発明における使用に好適なポリマーは、E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)より商標Surlyn(登録商標)で市販されるアイオノマーである。アイオノマーの例としては、エチレンと15%のメタクリル酸を有し、メルトフローインデックス(MFI)が0.7であり、58%がZnで中和されたエチレンのコポリマー、および10%のメタクリル酸を有し、MFIが1.5、38%がZnで中和されたエチレンのコポリマーが挙げられる。
【0042】
耐破壊性層は、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマー、および/またはそれらの混合物から選択されるポリオレフィンを含むこともできる。
【0043】
同時押出多層フィルム構造体中の耐破壊性層または結合層(以下にさらに説明する)中の成分としての使用に好適なポリエチレンホモポリマーおよび/またはコポリマー(エチレンが主要なコモノマーである)の非限定的な例は、たとえば、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、またはメタロセンポリエチレン(mPE)である。
【0044】
ポリエチレンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、従来のチーグラー・ナッタ、メタロセン、および後期遷移金属錯体触媒系を使用する高圧ガス法、低圧ガス法、溶液法、およびスラリー法などの当技術分野において周知のあらゆる利用可能な方法によって製造することができる。
【0045】
プロピレンのランダムコポリマー、ブロックコポリマー、およびターポリマーなどのポリプロピレンホモポリマーおよび/またはコポリマーとしては、プロピレン(プロピレンが主要なコモノマーである)と、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、および種々のペンテン異性体などの他のオレフィンとのコポリマー、ならびにプロピレンとエチレンと他のオレフィンとのコポリマーなどのプロピレンのターポリマー、ならびにプロピレンとコモノマーとの供給比に対応する比率でポリマー鎖全体に不規則に分布したプロピレンとコモノマーとを有するランダムコポリマー(統計コポリマー)が挙げられる。好適なブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントと、たとえばプロピレンおよびエチレンのランダムコポリマーからなる鎖セグメントとから構成される。
【0046】
ポリプロピレンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、あらゆる周知の方法によって製造することができる(たとえば、有機金属化合物または三塩化チタンを含有する固体を主成分とするチーグラー・ナッタ触媒を使用)。ブロックコポリマーは、第1段階でプロピレン単独を最初に重合させ、第2段階で、第1段階中に得られたポリマーの存在下でプロピレンおよびエチレンなどの追加のコモノマーを次に重合させることを除けば、同様に製造することができる。ポリプロピレンの製造方法は当業者には周知であるので、簡潔にするため、その説明は本明細書では割愛する。
【0047】
耐破壊性層の厚さは、同時押出多層フィルム構造体の個別の最終用途によって変動させることができ、5〜60μmまたは10〜30μmの範囲であってよい。耐破壊性層の厚さは、同時押出多層フィルム構造体の全体の厚さの5〜90%、10〜70%、または20〜50%の範囲であってよい。
【0048】
同時押出多層フィルム構造体は少なくとも1つの結合層を含む。結合層は、耐破壊性層をシーラント層および/または他の隣接層に接着させる機能を果たす。結合層が少なくとも1つの耐破壊性層を少なくとも1つのシーラント層に接着させる機能を果たす場合、結合層は、少なくとも1つのシーラント層および耐破壊性層に隣接する。言い換えると、結合層は耐破壊性層とシーラント層との間にはさまれる。
【0049】
結合層は、前述のような1種類以上のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含むことができる。好ましくは、1種類以上のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリエチレンホモポリマーおよび/またはコポリマー、プロピレンホモポリマーおよび/またはコポリマー、および/またはそれらの混合物から選択される。
【0050】
注目される結合層の1つは、1種類以上のエチレンコポリマーを含む。
【0051】
「エチレンコポリマー」は、エチレンと少なくとも1つの追加のモノマーとから誘導される繰り返し単位を含むポリマーを意味する。追加のモノマーは、別のα−オレフィン、または極性官能基を有するモノマーであってよい。
【0052】
エチレンコポリマーは、エチレンα−オレフィンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、たとえばエチレン(メタ)アクリル酸メチルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸エチルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸ブチルコポリマー、あるいはそれら2種類以上の組み合わせから選択することができる。
【0053】
「(メタ)アクリル酸アルキル」は、アクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルを意味する。
【0054】
結合層がエチレンコポリマーを含む場合、エチレンコポリマーは、エチレンと、3〜20個または4〜8個の炭素原子のα−オレフィンとを含むエチレンα−オレフィンコポリマーであってよい。
【0055】
エチレンα−オレフィンコポリマーの密度は、0.860g/cm3〜0.925g/cm3、0.860g/cm3〜0.91g/cm3、または0.880g/cm3〜0.905g/cm3の範囲であってよい。記載の密度範囲内となるのであれば、チーグラー・ナッタ型触媒反応によって、およびメタロセンまたはシングルサイト触媒反応によって製造された樹脂も含まれる。本発明において有用なメタロセン樹脂またはシングルサイト樹脂は、(i)I−10/I−2比が5.63未満であり、Mw/Mn(多分散性)が(I−10/I−2)−4.63を超える樹脂、および(ii)I−10/I−2比が5.63以上であり、多分散性が(I−10/I−2)−4.63以下である樹脂を主成分とする樹脂である。グループ(ii)のメタロセン樹脂は、1.5を超え(I−10/I−2)−4.63以下の多分散性を有することができる。実質的に線状のメタロセン樹脂を生成できる条件および触媒が米国特許第5,278,272号明細書に記載されている。この参考文献には、周知のレオロジーパラメータI−10およびI−2の測定の詳細な説明が記載されており、これらのパラメータは異なる荷重、したがって異なる剪断条件下での流動値である。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められる、周知のMw/Mn比を決定するための測定の詳細も記載されている。
【0056】
エチレンコポリマーは、酢酸ビニルまたは(メタ)アクリル酸アルキルなどの極性官能基を含むモノマーと共重合したエチレンであってよい。
【0057】
結合層がエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む場合、共重合した酢酸ビニル単位の相対量は、エチレン酢酸ビニルコポリマーの全重量を基準として2〜40、10〜40、10〜30、または15〜28重量%であってよい。2種類以上の異なるエチレン酢酸ビニルコポリマーの混合物を、1種類のコポリマーの代わりに結合層の成分として使用することができる。
【0058】
エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーは、エチレンコモノマーと、アルキル基が1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸アルキルコモノマーとの共重合から誘導される熱可塑性エチレンコポリマーである。
【0059】
結合層がエチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーを含む場合、共重合した(メタ)アクリル酸アルキル単位の相対量は、エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーの全重量を基準として0.1〜45、5〜35、または8〜28重量パーセントであってよい。エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーの一例は、エチレンと16%のアクリル酸エチルとのコポリマーであり、メルトフローインデックス(MFI)が1である。
【0060】
オレフィンホモポリマーおよび/またはエチレンコポリマーは、コポリマーが有機官能基とおよび/または共重合していることを意味する変性コポリマーであってよい。結合層中に使用するための変性ポリマーは、酸、無水物、および/またはエポキシドの官能基で変性することができる。モノ−、ジ−、またはポリカルボン酸であってよいポリマーの変性に使用される酸および無水物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、および置換無水マレイン酸、たとえばジメチルマレイン酸無水物、または無水シトロトン酸(citrotonic anhydride)、無水ナジック酸、ナジックメチルアンヒドリド、およびテトラヒドロフタル酸無水物、あるいはそれら2種類以上の組み合わせであり、無水マレイン酸が好ましい。
【0061】
オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーが酸で変性される場合、変性ポリマーの全重量を基準として0.05〜25重量パーセントの酸を含有することができる。
【0062】
無水物変性ポリマーが使用される場合、変性ポリマーの全重量を基準として0.03〜10、または0.05〜5重量パーセントの無水物を含有することができる。
【0063】
ポリマーの変性に使用されるエポキシドの例としては、4〜11個の炭素原子を含む不飽和エポキシド、たとえば(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、およびイタコン酸グリシジルを挙げることができ、(メタ)アクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0064】
エポキシド変性エチレンコポリマーは、変性エチレンコポリマーの全重量を基準として0.05〜15重量%のエポキシドを含有することができる。エチレンコポリマーの変性に使用されるエポキシ度としては、(メタ)アクリル酸グリシジルを挙げることができる。エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジルコポリマーは、1〜6個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルと、1〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンとの共重合単位をさらに含有することができる。代表的な(メタ)アクリル酸アルキルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、またはそれら2種類以上の組み合わせが挙げられる。注目すべきはアクリル酸エチルおよびアクリル酸ブチルである。α−オレフィンは、プロピレン、オクテン、ブテン、およびヘキサンの群から選択することができ、特にプロピレンであってよい。
【0065】
変性エチレンコポリマーは、酸、無水物、および/または(メタ)アクリル酸グリシジルの官能基で変性することができる。
【0066】
オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマー、ならびに変性ポリマーは、DuPontよりAPPEEL(登録商標)、BYNEL(登録商標)、ELVALOY(登録商標)AC、およびELVAX(登録商標)の商標で市販されている。
【0067】
エチレンコポリマーは、オートクレーブまたは管型反応器のいずれかを用いて当業者に周知のあらゆる手段によって生成することができる(たとえば米国特許第3,404,134号明細書、米国特許第5,028,674号明細書、米国特許第6,500,888号明細書、米国特許第3,350,372号明細書、および米国特許第3,756,996号明細書)。
【0068】
多層構造体の結合層の厚さは、1〜100μm、5〜50μm、または5〜30μmであってよい。
【0069】
同時押出多層フィルム構造体は、少なくとも1つのシーラント層をも含む。シーラント層は、フィルム構造体をあらゆる好適な基材またはそれ自体に接着させる機能を果たし、ヒートシールなどの従来手段によってあらゆる好適な基材またはそれ自体に融着可能な1種類以上のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含むことができる。
【0070】
シーラント層は、ポリエチレン、プロピレンホモポリマーおよび/またはコポリマー、エチレンコポリマー、たとえばエチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、ならびにそれらの対応するアイオノマー、および/またはそれらの混合物から選択されるオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含むことができる。
【0071】
シーラント層は、他のポリマーとブレンドされたこれらのホモポリマーまたはコポリマーを含むこともできる。たとえば、ポリエチレンは、向上した剥離性を有するシーラントを得るためにポリブチレンとブレンドすることができる。
【0072】
注目すべきは、前述の開示のような少なくとも1種類のアイオノマーを含むシーラント層である。多層構造体中、シーラント層中のアイオノマーは、耐破壊性層中のアイオノマー同じであっても、異なっていてもよい。
【0073】
多層フィルム構造体は、少なくとも1つの障壁層をさらに含むことができ、前記障壁層は、少なくとも1つの耐破壊性層と少なくとも1つのシーラント層との間に存在し、好ましくは障壁層は、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、COC、ならびにそれらとポリエチレン、ポリビニルアルコール、およびポリアミドとのブレンドを含む。
【0074】
同時押出多層フィルム構造体が少なくとも1つの障壁層を含む場合、そのような障壁層は、所望の障壁効果(たとえば防湿および/または酸素障壁)に依存して、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、COC、ならびにそれらとポリエチレン、ポリビニルアルコール、およびポリアミドとのブレンドを含む層から選択することができる。このような障壁層は、1つ以上の層の組み合わせであってよい。
【0075】
同時押出多層フィルム構造体は、ポリアミドまたはCOCを含む、あるいはCOCとポリエチレン、ポリプロピレン、またはアイオノマーとのブレンドを含む2つの層に隣接しそれらの間に存在するEVOHの層からなる障壁層を含むこともできる。言い換えると、同時押出多層フィルム構造体は、ポリアミド、COC、あるいはCOCとポリエチレン、ポリプロピレン、またはアイオノマーとのブレンドを含む層が両側に存在するEVOHの層からなる障壁層を含むこともできる。ある実施形態においては、結合層は、障壁層と、ポリアミドまたはCOC、あるいはCOCとポリエチレン、ポリプロピレン、またはアイオノマーとのブレンドを含む層との間に存在することができる。したがって、好ましい多層フィルム構造体は、少なくとも1つの障壁層が、それぞれが独立してポリアミド、あるいは環状オレフィンコポリマーと、ポリエチレンまたはポリプロピレンまたはアイオノマーとのブレンドを含む少なくとも2つの層の間の、エチレンビニルアルコールコポリマーの層から本質的になる、多層フィルム構造体である。
【0076】
好ましい一実施形態は、少なくとも1つの障壁層が、環状オレフィンコポリマーと、アイオノマー、ポリエチレン、またはポリプロピレンとのブレンドを含む2つの層のエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層からなり、EVOHの層と、環状オレフィンコポリマーとアイオノマー、ポリエチレン、またはポリプロピレンとのブレンドを含む層との間に結合層を有してもよい多層構造体である。
【0077】
別の好ましい一実施形態は、少なくとも1つの障壁層が、ポリアミドを含む2つの層に隣接しそれらの間にあるエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層からなる多層構造体である。
【0078】
EVOHポリマーは、一般に、約15モルパーセント〜約60モルパーセント、より好ましくは約20〜約50モルパーセントのエチレン含有量を有する。市販のEVOHの密度は、一般に、約1.12g/cm3〜約1.20g/cm3の範囲であり、ポリマーは約142℃〜191℃の範囲の溶融温度を有する。EVOHポリマーは、周知の技術によって調製することができるし、商業的供給源から入手することもできる。EVOHコポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマーの鹸化または加水分解によって調製することができる。したがってEVOHは加水分解エチレン酢酸ビニル(HEVA)コポリマーと呼ばれる場合もある。加水分解の程度は、好ましくは約50〜100モルパーセント、より好ましくは約85〜100モルパーセントである。さらに、重合度および繰り返し単位の分子量から計算される本発明の構造体中に有用なEVOH成分の重量平均分子量Mwは、5,000ダルトン〜300,000ダルトンの範囲であってよく、50,000〜70,000ダルトン、たとえば60,000ダルトンが最も好ましい。
【0079】
好適なEVOHポリマーは、米国のEval Companyまたは日本のKuraray CompanyよりEVAL(商標)の商標で入手することができる。EVOHは、Noltex L.L.CよりSOARNOL(登録商標)の商標でも入手可能である。このようなEVOH樹脂の例としては、EVAL(商標)F101、EVAL(商標)E105、EVAL(商標)J102、ならびにSOARNOL(登録商標)DT2903、SOARNOL(登録商標)DC3203、およびSOARNOL(登録商標)ET3803が挙げられる。好ましくはEVOHは、EVOH層のピンホール、ネッキング、および破壊によって障壁特性の低下を引き起こさずに約3×3〜約10×10で延伸可能である。
【0080】
本発明の積層シュリンクフィルムの構成要素として有用となり得る、米国のEval Companyまたは日本のKuraray Companyより入手されるEVAL(商標)SPの商標で販売されるEVOH樹脂が特に注目される。EVAL(商標)SPは、向上した可塑性を示し、シュリンクフィルムなどの包装用途における使用に適した種類のEVOHである。このようなEVOH樹脂の例としては、EVAL(商標)SP 521、EVAL(商標)SP 292、およびEVAL(商標)SP 482が挙げられる。EVAL(商標)SPグレードのEVOHは、従来のEVAL(商標)樹脂よりも延伸が容易である。これらのEVOHポリマーは、本発明多層延伸熱収縮性フィルムにおける使用に好ましい種類の1つである。理論によって束縛しようとするものではないが、EVAL(商標)SP EVOH樹脂の向上した延伸性は、それらの化学構造から、特にEVOHポリマー鎖中の頭−頭隣接ヒドロキシル基の量が比較的多いことから得られると考えられる。頭−頭隣接ヒドロキシル基とは、1,2−グリコール構造単位を意味する。比較的多いとは、約2〜約8モル%の1,2−グリコール構造単位がEVOHポリマー鎖中に存在することを意味する。好ましくは、約2.8〜約5.2モル%の1,2−グリコール単位が存在する。
【0081】
障壁層は、EVOHを含み、2つの耐破壊性層の間にはさまれることができ、言い換えると少なくとも1つの障壁層は、少なくとも2つの耐破壊性層に隣接し、それらの間に存在する。
【0082】
したがって、多層フィルム構造体は、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーと少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む少なくとも2つの耐破壊性層であって、好ましくはポリオレフィンはポリエチレンまたはポリプロピレンである少なくとも2つの耐破壊性層と;少なくとも1つの障壁層であって、少なくとも2つの耐破壊性層の間に存在する少なくとも1つの障壁層と;少なくとも1つの結合層と;少なくとも1つのシーラント層とを含むことができる。
【0083】
多層構造体は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、またはポリオレフィンを含む外層をさらに含むことができる。
【0084】
外層は、同時押出多層フィルム構造体に機械抵抗および/または印刷適性を付与することができ、および/または少なくとも1つの耐破壊性層と少なくとも1つのシーラント層との間に配置された障壁層および/または別の機能層などの1つ以上の追加の機能層をさらに含むことができる。
【0085】
外層とは、シーラント層とは反対側の面上の同時押出多層フィルム構造体の最外層である層、すなわちシーラント層の面とは反対側の面上の構造体の外面を形成する層を意味する。たとえば、トリプルバブルプロセスで形成されるものなどの管状同時押出構造体においては、外層は、管状構造体の外側の面として機能する層である。製品を収容する包装材料においては、外層は、製品から最も離れた層である。
【0086】
外層は、ポリアミド、ポリエステル、およびポリカーボネートなどの重縮合物、またはポリオレフィンから選択することができる。
【0087】
ポリアミド(本明細書ではPAと略記される)は、ナイロンとも呼ばれ、1種類以上のジカルボン酸とおよび1種類以上のジアミンとの縮合生成物、および/または11−アミノドデカン酸などの1種類以上のアミノカルボン酸の縮合生成物、および/またはカプロラクタムおよびラウロラクタムなどの1種類以上の環状ラクタムの開環重合生成物である。ポリアミドは、完全脂肪族または半芳香族であってよい。
【0088】
ラクタムまたはアミノ酸などの1種類の反応物から得られるポリアミドは、AB型ポリアミドと呼ばれ、Nylon Plastics(Melvin L.Kohan著、1973、John Wiley and Sons,Inc.)に開示されており、そのようなものとしてはナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、またはそれら2種類以上の組み合わせが挙げられる。2種類以上のラクタムまたはアミノ酸から調製されるポリアミドとしてはナイロン−6,12が挙げられる。
【0089】
外層の構成要素として有用な別の周知のポリアミドとしては、ジアミンおよび二酸、の縮合によって調製され、AABB型ポリアミドと呼ばれるもの(たとえばナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−612、ナイロン−1010、およびナイロン−1212)、ならびにラクタム、ジアミン、および二酸の組み合わせから調製されるもの、たとえばナイロン−6/66、ナイロン−6/610、ナイロン−6/66/610、ナイロン−66/610、あるいはそれら2種類以上の組み合わせが挙げられる。
【0090】
本発明の樹脂組成物中に使用される完全脂肪族ポリアミドは、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、およびそれらの反応性同等物などの脂肪族および脂環式のモノマーから形成される。この状況において、用語「完全脂肪族ポリアミド」は、2種類以上のそのようなモノマーから誘導されるコポリマー、および2種類以上の完全脂肪族ポリアミドのブレンドをも意味する。線状、分岐、および環状のモノマーを使用することができる。
【0091】
完全脂肪族ポリアミドに含まれるカルボン酸モノマーとしては、脂肪族ジカルボン酸、たとえばアジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、デカン二酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、トリデカン二酸(C13)、テトラデカン二酸(C14)、およびペンタデカン二酸(C15)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ジアミンは、限定するものではないがテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2メチルオクタメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタ−キシリレンジアミン、および/またはそれらの混合物などの4つ以上の炭素原子を有するジアミンから選択することができる。
【0092】
半芳香族ポリアミドとしては、芳香族基を含有するモノマーから形成されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、またはより高次のポリマーが挙げられる。1種類以上の芳香族カルボン酸は、テレフタル酸、またはテレフタル酸と1種類以上の別のカルボン酸、たとえばイソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、およびナフタル酸との混合物であってよい。さらに、1種類以上の芳香族カルボン酸は、前述の開示のような1種類以上の脂肪族ジカルボン酸と混合することができる。あるいは、メタ−キシリレンジアミン(MXD)などの芳香族ジアミンを使用して、MXDおよびアジピン酸を含むホモポリマーであるMXD6などの半芳香族ポリアミドを得ることができる。
【0093】
本明細書に開示される好ましいポリアミドは、ホモポリマーまたはコポリマーであり、ここでコポリマーという用語は、2種類以上のアミドおよび/またはジアミド分子の繰り返し単位を有するポリアミドを意味する。ホモポリマーおよびコポリマーは、それらのそれぞれの繰り返し単位によって識別される。本明細書において開示されるコポリマーの場合、繰り返し単位は、コポリマー中に存在するモル%繰り返し単位が減少していく順序で列挙される。以下の一覧は、ホモポリマーおよびコポリマーのポリアミド中のモノマーおよび繰り返し単位の識別のために使用される略語を例示している。
HMD:ヘキサメチレンジアミン(または二酸と組み合わせて使用される場合は6)
T:テレフタル酸
AA:アジピン酸
DMD:デカメチレンジアミン
6:ε−カプロラクタム
DDA:デカン二酸
DDDA:ドデカン二酸
I:イソフタル酸
MXD:メタ−キシリレンジアミン
TMD:1,4−テトラメチレンジアミン
4T:TMDおよびTから形成されるポリマー繰り返し単位
6T:HMDおよびTから形成されるポリマー繰り返し単位
DT:2−MPMDおよびTから形成されるポリマー繰り返し単位
MXD6:MXDおよびAAから形成されるポリマー繰り返し単位
66:HMDおよびAAから形成されるポリマー繰り返し単位
10T:DMDおよびTから形成されるポリマー繰り返し単位
410:TMDおよびDDAから形成されるポリマー繰り返し単位
510:1,5−ペンタンジアミンおよびDDAから形成されるポリマー繰り返し単位
6:ε−カプロラクタムから形成されるポリマー繰り返し単位
610:HMDおよびDDAから形成されるポリマー繰り返し単位
612:HMDおよびDDDAから形成されるポリマー繰り返し単位
11:11−アミノウンデカン酸から形成されるポリマー繰り返し単位
12:12−アミノドデカン酸から形成されるポリマー繰り返し単位
【0094】
当技術分野において、用語「6」は、単独で使用される場合、ε−カプロラクタムから形成されるポリマー繰り返し単位を意味する。あるいは、「6」は、Tなどの二酸と組み合わせて使用される場合(たとえば6T)、「6」はHMDを意味する。ジアミンおよび二酸を含む繰り返し単位においては、ジアミンが最初に示される。さらに、「6」がジアミンと組み合わせ手使用される場合(たとえば66)、最初の「6」はジアミンのHMDを意味し、二つ目の「6」はアジピン酸を意味する。同様に、別のアミノ酸またはラクタムから誘導される繰り返し単位は、炭素原子数を示す1つの数字で示される。
【0095】
種々の実施形態において、ポリアミド組成物は以下のグループから選択される1種類以上のポリアミドを含む(ここでPAは、ポリアミドまたは「ナイロン−」の略記である):
グループIのポリアミドは、融点が210℃未満となる程度の半芳香族繰り返し単位を有することができ、一般にこのグループの半芳香族ポリアミドは40モルパーセント未満の半芳香族繰り返し単位を有する。半芳香族繰り返し単位は、8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンからなる群の1つ以上から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位として定義される。注目すべきグループIのポリアミドとしては、PA6/66、PA6/610、PA6/66/610、PA6/6T、PA1010、PA11、およびPA12が挙げられる。
【0096】
グループIIのポリアミドは、少なくとも210℃の融点を有し、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA46)、ポリ(ε−カプロラクタム)(PA6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/(ε−カプロラクタム)(PA66/6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA66/610)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA66/612)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA66/1010)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA612)、ポリ(ヘキサメチレンテトラデカンジアミド)(PA614)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサデカンジアミド)(PA616)、およびポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド)(PA46/D6)などの脂肪族ポリアミドを含む。注目すべきグループIIのポリアミドとしては、PA6、PA66、PA610、およびPA612が挙げられる。
【0097】
グループIIIのポリアミドは、少なくとも210℃の融点を有し、
(aa)8〜20個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから選択される1種類以上のモノマーから誘導される20〜35モルパーセントの半芳香族繰り返し単位と;
(bb)6〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン;ならびに4〜20個の炭素原子を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸から選択される1種類以上のモノマーから誘導される65〜80モルパーセントの脂肪族繰り返し単位とを含む。グループIIIのポリアミドとしては、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA46/4T)、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA46/6T)、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA46/D6/10T)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA66/6T)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドPA66/6I/6T、およびポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド(PA66/D6/6T)が挙げられる。好ましいグループIIIのポリアミドの1つはPA66/6Tである。
【0098】
グループIVのポリアミドは、融点を有さず、グループIVのポリアミドとしては、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA6I/6T)、およびポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6I/6T/66)が挙げられる。
【0099】
種々の実施形態において、ポリアミドは、それぞれグループIのポリアミド、グループIIのポリアミド、グループIIIのポリアミド、またはグループIVのポリアミドである。
【0100】
注目すべきは、メチレン単位対アミド基の比が小さいポリアミド、特にアミド基に対するメチレン単位の比が5以下であるポリアミドであり、たとえばPA6、PA66、PA6/66、特にPA6およびPA66である。また注目すべきは、メチレン単位対アミド基の比が5〜9であるポリアミドであり、たとえばPA612、PA610、PA612、PA6/610、およびPA6/66/610である。
【0101】
好ましいポリアミドとしては、PA6、PA66、PA610、PA612、PA6/66、PA6/610、PA6/66/610、PA6/6T、およびそれらの組み合わせが挙げられる。より好ましいポリアミドとしては、PA6、PA66、PA610、PA612、およびそれらの組み合わせが挙げられ、PA6が最も好ましい。
【0102】
ポリアミドは、2種類以上のポリアミドのブレンドであってもよい。好ましいブレンドとしては、グループIおよびグループIIのポリアミド、グループIおよびグループIIIのポリアミド、グループIおよびグループVIのポリアミド、グループIIおよびグループIIIのポリアミド、グループIIおよびグループIVのポリアミドからなる群から選択されるブレンドが挙げられる。
【0103】
ポリアミドおよびそれらの製造方法は当業者には周知であるので、その開示は簡潔にするため割愛する。
【0104】
好適なポリアミドまたはそれらのコポリマーは、PA6、PA66、PA610、PA6T、PA6.66、PA10、PA11、またはPA12などの脂肪族または半芳香族のポリアミドから選択することができる。注目すべきは、ナイロン−6およびナイロン−66/610のブレンドである。
【0105】
好適なポリエステルおよびそれらのコポリマーは、たとえばポリ乳酸またはポリ(3−ヒドロキシブチレート)などのポリヒドロキシアルカン酸などの脂肪族ポリエステル、あるいは、たとえばポリエチレンテレフタレート、およびPETGなどのそのコポリマー、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートなどの半芳香族ポリエステルから選択することができる。
【0106】
ポリエステルおよびそれらの製造方法は当業者には周知であるので、その開示は簡潔にするため割愛する。
【0107】
外層への使用に好適なポリオレフィンは、前述のような様々な種類のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびエチレンコポリマーから選択することができる。
【0108】
同時押出多層フィルム構造体の各層は、独立して、層の重量を基準にして、約0.0001〜約20%の改質剤および他の添加剤をさらに含むことができ、たとえば限定するものではないが、可塑剤、衝撃改質剤、粘度安定剤および加水分解安定剤などの安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、UV光安定剤、防曇剤、帯電防止剤、染料、顔料、または他の着色剤、フィラー、難燃剤、強化剤、グラフト剤、気泡剤および発泡剤、ならびにポリマー配合分野において周知の加工助剤;たとえばブロッキング防止剤および離型剤;ならびにそれら2種類以上が挙げられる。これらの添加剤は、各層ポリマー組成物中に独立して、最大20、たとえば0.01〜7、または0.01〜5重量%の量で存在することができる。
【0109】
本発明による代表的な構造体は、以下にまとめられるように同時押出多層構造体であってよい。これらの構造体において、層は、外層(包装材料または管状構造体の内側から最も離れている)から内層(包装材料または管状構造体の内側に最も近い)まで左から右に列挙される。これらの構造体において、外層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリアミド(PA)を含む。耐破壊性層は、環状オレフィンコポリマーとアイオノマーとのブレンド(COC+IO)、環状オレフィンコポリマーとポリプロピレンとのブレンド(COC+PP)、ならびに環状オレフィンコポリマーとポリエチレンとのブレンド(COC+PE)を含む。単層の障壁層はEVOHであってよい。多層の障壁層は、COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE、COC+IO/結合層/EVOH/結合層/COC+IO、COC+PP/結合層/EVOH/結合層/COC+PPおよびPA/EVOH/PAを含む。シーラント層は、ポリエチレン(PE)、およびアイオノマー(IO)を含む。ポリエチレンおよびポリブチレンのブレンド(PE+PB)によって、より容易な剥離性がシーラント層に付与される。
PET/結合層/PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/PE/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/PE
PA/結合層/PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/PE
PA/結合層/PE/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/PE
PA/結合層/PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/PE/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/IO
PA/結合層/PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/IO
PA/結合層/PE/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/IO
PA/結合層/PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+IO/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+IO/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+PP/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+PP/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+IO/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/PE
PET/結合層/COC+IO/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+PE/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+PE/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+PP/COC+IO/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+PP/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/IO
PET/結合層/COC+IO/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/結合層/PE
PET/結合層/COC+PP/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/PE
PET/結合層/PP/COC+PP/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/PE
PET/結合層/PE/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/PE
PET/結合層/COC+IO/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/COC+IO/IO
PET/結合層/COC+PP/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/COC+PP/IO
PET/結合層/COC+IO/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE
PET/結合層/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE
PET/結合層/COC+IO/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE
PET/結合層/COC+IO/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/IO
PET/結合層/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/IO
PET/結合層/COC+IO/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/IO
PET/結合層/PP/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE
PET/結合層/PE/COC+PE/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE
PET/結合層/PP/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/IO
PET/結合層/PE/COC+PE/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/IO
PET/結合層/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/COC+PP/IO
PET/結合層/COC+PE/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/COC+PE/IO
PET/結合層/COC+IO/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/COC+IO/IO
PET/結合層/COC+PP/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/COC+PP/IO
PET/結合層/PE/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/PE/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/PE+COC/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/PE+COC/PE+COC/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE/PE+PB
PET/結合層/Ion/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/Ion+COC/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/PP/PP+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE/PE+PB
PET/結合層/PP+COC/PE+COC/結合層/EVOH/結合層/PE+COC/PE+PB
PET/結合層/PP+COC/PE+COC/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE+COC/PE+PB
PET/結合層/PP+COC/PE+COC/結合層/PA/EVOH/PA/結合層/PE/PE+PB。
【0110】
特定の実施形態においては、アイオノマーシーラント層、ならびにCOC+IO、COC+PE、またはCOC+PP層の層は、耐破壊性および収縮性をさらに向上させ、同時押出多層フィルム構造体のカールする傾向を軽減することができる。
【0111】
好ましいフィルム構造体の1つは、PET/結合層/耐破壊性層/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/結合層/PEの層を含み、PETはポリエチレンテレフタレート外層を表し、耐破壊性層は、環状オレフィンコポリマーとアイオノマーとのブレンドまたは環状オレフィンコポリマーとポリプロピレンとのブレンドを含み、障壁層は、COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PEを含み、PEはポリエチレンシーラント層を表す。
【0112】
別の好ましいフィルム構造体は、PET/結合層/耐破壊性層/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/耐破壊性層/IOの層を含み、PETはポリエチレンテレフタレート外層を表し、各耐破壊性層は、独立して、環状オレフィンコポリマーとアイオノマーとのブレンドまたは環状オレフィンコポリマーとポリプロピレンとのブレンドを含み、COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PEは障壁層構造体であり、IOはアイオノマーシーラント層を表す。
【0113】
本発明者らは、同時押出による、および/またはトリプルバブルプロセスによる延伸による同時押出多層構造体の製造が可能であることを発見した。この方法は、少なくとも1つの耐破壊性層、少なくとも1つの結合層、および少なくとも1つのシーラント層を同時押出して管状同時押出多層フィルムを製造するステップと;同時押出した管状多層フィルム構造体を第1のバブル中で冷却するステップと;第2のバブル中、加熱下で、同時押出した管状多層フィルム構造体を延伸(たとえば、一軸または二軸)するステップと;第3のバブル中、加熱下で、延伸した同時押出管状多層フィルム構造体を緩和させるステップとを含むことができる。
【0114】
トリプルバブルプロセスにおいて、管状同時押出多層フィルム構造体は、第2のバブル中で、少なくとも1つの耐破壊性層のガラス転移温度と、少なくとも1つの耐破壊性層の融点との間の温度、たとえば60〜95℃、または75〜95℃の温度に加熱することができる。
【0115】
このプロセスにおいて、管状同時押出多層フィルム構造体は、第3のバブル中で、耐破壊性層のガラス転移温度と耐破壊性層の融点との間の温度、第2のバブル中の温度よりも低い温度に加熱することができ、または同時押出多層フィルム構造体は、第3のバブル中で65〜95℃、または75〜95℃の温度、またはLLDPEの場合は95〜125℃の温度、またはPPの場合は95〜136℃の温度に加熱することができる。
【0116】
このトリプルバブルプロセスによって、優れた障壁特性、ならびに良好な機械的性質、優れた熱収縮性能、および透明性を有する少なくとも1つの耐破壊性層を含む同時押出多層フィルム構造体を製造することができる。
【0117】
耐破壊性層、結合層、およびシーラント層の同時押出ステップは、一般に顆粒の形態である対応する材料を処理する複数のフィーダーを、円形または環状のダイに接続した押出機に接続して、当技術分野において周知の方法で管状多層フィルムを形成することによって行うことができる。
【0118】
耐破壊性層のCOC、および少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンを、当技術分野において周知の方法によって「ソルト・アンド・ペッパー(salt and pepper)ブレンド」の形態で押出機中に供給して、管状同時押出多層フィルム中の対応する層を形成することができる。
【0119】
結合層およびシーラント層を構成するポリマーを、当技術分野において周知の方法によって押出機中に供給して、管状同時押出多層フィルム構造体中の対応する層を形成することができる。
【0120】
同時押出多層フィルムが、同時押出多層フィルム構造体に機械抵抗および/または印刷適性を付与する外層を含む場合、あるいは障壁層および/または他の機能層などの1つ以上のさらなる機能層を含む場合、対応する材料は、当技術分野において周知の方法で、追加のフィーダーを押出機に接続することによって押出機に供給し、円形または環状のダイの所望の領域に再び供給することができる。
【0121】
図1を参照すると、トリプルバブルプロセスの概略図が示されている。第1のバブルB1は、押出機の円形または環状のダイを出る直径D1管状多層フィルム構造体による一方の端部と、第1のバブルB1の気密封止された端部を形成するロールの組R1に他方の端部との上に形成される。
【0122】
第1のバブルB1中、ダイを出て初期直径がD1である管状多層フィルムは、構造体の結晶化の量を最小限にするような方法で急速冷却、すなわち急冷される。
【0123】
上記の急速冷却、または急冷は、好ましくは、排出された管状同時押出多層フィルムを0.1℃〜50℃、より好ましくは0.1℃〜25℃の温度を有し、0.4〜5m、好ましくは1〜3mの長さを有する第1の水浴W1に通して急冷することで行われる。水浴W1中の滞留時間は1〜20秒、より好ましくは10〜20秒の範囲で調整することができる。
【0124】
冷却後、こうして固化した管状同時押出多層フィルム構造体は、次に、60〜95℃の温度を有する第2の水浴W2中に浸漬されるロールの組に通される。第2の水浴は、0.4〜5メートルの可変の長さを有し、フィルムラインの速度に依存するこの浴中の滞留時間は、1〜20秒、より好ましくは10〜20秒であってよい。
【0125】
第2の水浴W2は、通過する固化した管状同時押出多層フィルムを引き裂くことなく延伸可能な温度である60℃を超える温度、好ましくは60℃〜95℃、より好ましくは75℃〜95℃の温度に予備加熱する。より一般的には、固化した管状同時押出多層フィルムは、本発明の場合では少なくとも1つの耐破壊性層である最高ガラス転移温度を有する層のガラス転移温度よりも高い温度まで加熱される。
【0126】
第2の水浴W2は、たとえば熱風送風機、IRヒーター、または加熱コイルなどのあらゆる好適な加熱手段と交換しても、それらを追加してもよい。第2の水浴W2に熱風送風機が追加される場合、熱風送風機は140〜160℃の温度に設定することができ、それによって、空気の熱容量は低いため、管状同時押出多層フィルムは75℃〜95℃の温度に加熱され、熱風送風機は好ましくは、第2のバブルの上流(押出機に向かう)端をシールするニップロールの第2の組R2の直後に配置される。
【0127】
第2の水浴W2中で予備加熱された後、こうして軟化した管状同時押出多層フィルム構造体は膨張して第2のバブルが形成される。軟化した管状同時押出多層フィルム構造体を形成することで、第2のバブルB2中で、縦方向/軸方向(MD)および横方向/半径方向(TD)の両方に同時に引き延ばすことにより、構造体を延伸することができる。
【0128】
縦方向/軸方向(MD)の延伸は、第2のバブルの上流(押出機に向かう)端を形成するニップロールの第2の組R2の速度V2、および第2のバブルの下流(押出機から離れる)端を形成するニップロールの第3の組R3の速度V3を調整することによって行うことができる。一般に、V3は、V2よりも速く、好ましくはV2の2〜4倍である。言い換えると、V3/V2で与えられる比は延伸比に等しく、好ましくは2〜4である。
【0129】
横方向/半径方向(TD)の延伸は、第2のバブルB2中の圧力P1を調整することによって行うことができる。圧力P1を調整するために、第2のバブルB2の気密密封された上流(押出機に向かう)端を形成するニップロールの第1の組R2と、第2のバブルB2の気密密封された下流(押出機から離れる)端を形成するニップロールの第2の組R3との間の距離L1を調整することができる。ニップロールの2つの組(R2、R3)の間の距離L1を減少させると圧力P1を増加させることができ、一方、距離L1を増加させると第2のバブル内の圧力P1を低下させることができる。横方向/半径方向(TD)で延伸した後、軟化した管状同時押出多層フィルムの初期直径D1を直径D2まで増加させることができ、D2およびD1の間の比は2〜5、好ましくは2.5〜3.5である。
【0130】
ニップロールの第3の組R3を通過する間に、延伸された管状同時押出多層フィルム構造体は、より容易に運べるように平坦化される。
【0131】
ニップロールの組R3を通過した後、管状同時押出多層フィルム構造体は、第3のバブルB3の気密密封された上流(押出機に向かう)端を形成するニップロールの第4の組R4、および第3のバブルB3の気密密封された下流(押出機から離れる)端を形成するニップロールの第5の組R5に通される。
【0132】
ニップロールの第4および第5の組(R4およびR5)は、距離L2だけ離れており、これを調整することで、前に延伸した管状同時押出多層フィルム構造体を横方向/半径方向(TD)に緩和させるために、第3のバブルB3内の圧力P2を増加させたり低下させたりすることができる。
【0133】
一般に、これは、圧力P2が圧力P1よりも低くなるように第3のバブルB3内の圧力P2を調整することで行うことができる。第3のバブルB3ニップロールの第4および第5の組(R4およびR5)の間の距離L2を変更することによって調整され、この圧力調整によって直径D3が変化しうる。緩和比はD3/D2の比で与えられ、一方、D3は通常はD2よりも小さく、同時にD3/D2の比は1よりも小さい。通常、D3/D2の比は、0.8〜0.95であってよく、より好ましくは0.85〜0.9であってよい。
【0134】
ニップロールの第4の組R4の速度V4およびニップロールの第5の組の速度V5は、前に延伸した管状同時押出多層フィルムを縦方向/軸方向(MD)で緩和させるために調整することができる。
【0135】
一般に、これは、V5がV4よりも遅くなるようにニップロールの第5の組R5の速度V5を調整することによって実現できる。緩和比はV5/V4によって与えられ、一方、通常V5はV4よりも遅く、同時にV5/V4の比は1よりも小さい。通常V5/V4の比は0.8〜0.95であってよく、より好ましくは0.85〜0.9であってよい。
【0136】
85℃の温度の水浴中に10秒間サンプルを浸漬することで測定した場合に、縦方向/軸方向(MD)および/または横方向/半径方向(TD)で1〜60パーセント、より好ましくは30〜60パーセントの熱収縮範囲を示す管状同時押出多層フィルムを得るために、第3のバブル中の同時押出多層フィルム構造体の温度、圧力P2、およびV5/V4の比を個別にまたは並行して調整することができる。
【0137】
管状多層フィルムは、第3のバブルB3中、加熱下で緩和される。第2のバブル中で少なくとも1つの耐破壊性層のガラス転移温度と少なくとも1つの耐破壊性層の融点との間の温度に管状多層フィルムを維持するために、IRヒーター、蒸気、または熱風ヒーターなどの適切な加熱手段を使用することができる。
【0138】
好ましくは、第3のバブルB3中の同時押出多層フィルム構造体の温度は、第2のバブル中の温度よりも低いが、但し、少なくとも1つの耐破壊性層のガラス転移温度と少なくとも1つの耐破壊性層の融点との間の温度である。
【0139】
ニップロールの第5の組R5を通過した後、管状同時押出多層フィルムは、ロールの組に通され、平坦化され、ロールS上で保管される。
【0140】
場合により、ニップロールの第5の組R5を出た管状同時押出多層フィルムは、切断ナイフKによって一方の側で切断して、平面状同時押出多層フィルムを得ることができてもよく、これはロールS上で保管することができる。
【0141】
上記方法によって、少なくとも1つの、好ましくは一軸または二軸延伸された耐破壊性層、少なくとも1つの結合層、および少なくとも1つのシーラント層を含む同時押出多層フィルムが製造される。
【0142】
同時押出多層フィルム構造体は、シュリンク袋の製造などの包装用途に特に使用することができるが、たとえば、建築、造園、または衣料品用途のテープまたは生地の製造などの非包装用途に使用することもできる。
【0143】
本発明は、少なくとも1つの一軸または二軸延伸された耐破壊性層、少なくとも1つの結合層、および少なくとも1つのシーラント層を含む同時押出多層フィルム構造体を含む包装物品をさらに提供する。特に、この包装物品は、たとえばコーヒー、米、骨付き肉または骨の破片、あるいは乾麺などの鋭い、とがった、および/または鋭利な端部を有する食品成分の包装に使用することができる。
【0144】
同時押出多層フィルム構造体は、蓋材用フィルムまたはシュリンクフィルムとして包装物品中に使用することができる。
【実施例】
【0145】
以下に示す実施例で使用した材料は以下の通りであり、それぞれの商標および商品名で識別される。
PET:LighterよりLighter C93で市販されるポリエチレンテレフタレートポリエステル。
結合層1:メルトフローレート(MFR、ASTM D 1238に準拠して190℃/2.16kgで測定される)が2であり、DuPontよりBynel(登録商標)22E780で市販されるエチレンアクリレートコポリマー。
結合層2:DuPontよりBynel(登録商標)41E850で市販される無水マレイン酸で変性(グラフト)したLLDPE
結合層3:Admer(商標)SF730で市販される無水マレイン酸グラフトポリオレフィン。
PE:Dow Chemical CompanyよりLDPE 2420Fで市販される低密度ポリエチレン。
COC:MFR(230℃/2.16kgにおいてASTM D 1238に準拠)が6であり、ガラス転移温度(Tg)が65℃である、TICONAよりTopas(登録商標)9506F−500で市販されるエチレンおよびノルボルネンのCOCコポリマー。
PA:EMS ChemieよりGrilamid(登録商標)F40で市販されるナイロン−6。
CoPA:EMS ChemieよりGrilon(登録商標)G 20で市販されるナイロン−66/610コポリマー。
CoPP:Lyon−BassellよりAdsyl(登録商標)6C30Fで市販されるポリプロピレンコポリマー。
EVOH:EVALよりSP2904の名称で市販されるエチレンビニルアルコールコポリマー。
ION1:15%のメタクリル酸を有し、メルトフローインデックス(MFI)が0.7であり、Znで58%が中和されたエチレンのコポリマー。
mPE:ExxonMobil ChemicalよりExceed(商標)2018の名称で市販されるメタロセン触媒エチレン−ヘキセンコポリマー
AB:約10重量%の二酸化ケイ素を含有する二酸化ケイ素ブロッキング防止剤マスターバッチ。
【0146】
表1および2にまとめたような多層インフレーションフィルムは、異なる材料で画定されているが異なる長さ/直径を有するギヤポンプおよびスクリューを有する11の押出機が取り付けられたKuhne Anlagenbau製造のトリプルバブルインフレーションフィルム装置上で作製することができる。表1および2にまとめたような層のそれぞれの組成物を、トリプルバブル押出機のそれぞれの押出機に供給した。材料を別々のフィーダーから別々の押出機中に供給し、環状ダイから同時押出して、同時押出多層フィルムを得た。押出機は、層中に使用され材料に関して以下の温度プロファイルで運転した。
【0147】
【表1】
【0148】
ダイの中の溶融物の最終温度は250〜260℃であった。
【0149】
典型的な包装用インフレーションフィルムを作製し、比較例C1として表1にまとめている。この構造体は、ポリプロピレンコポリマーコアを含み、障壁層および耐破壊性層は有さなかった。
【0150】
【表2】
【0151】
このフィルムは比較的低い耐破壊性を有した。
【0152】
障壁層を含む構造体を表2に示す。本発明のフィルムである実施例1は、ポリエチレン−COCブレンドの耐破壊性組成物を、層3および4中のポリエチレンの代わりに使用したことを除けば、比較例C2と同一の構造を有する。押出機は、以下の出力関係:7/7/30/6/5/8/6/8/5/3/15(単位%)で運転するための設定を行った。
【0153】
【表3】
【0154】
得られたフィルムの耐破壊性を、DIN14477またはEN388試験に準拠して、1mm/分の速度で、先端に球状のボールを有するロッドであって、ロッドの直径が2mmであり、球状のボールの直径が2.5mmであるロッドを用いて試験した。これらの試験において、ロッドを内側の層(層11)とに接触させて配置した。結果を表1および2に示している。実施例1は良好な耐破壊性を有した。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 同時押出多層フィルム構造体であって、
少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーと少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含む少なくとも1つの耐破壊性層と;
少なくとも1つの結合層と;
少なくとも1つのシーラント層とをこの順序で含み;
前記フィルムは、一軸延伸または二軸延伸のいずれかが行われ、トリプルバブルプロセスによって得られ;前記フィルム構造体が少なくとも2J/mmの耐破壊性を有し、前記耐破壊性は、DIN14477に準拠して、1mm/分の速度の速度で、先端に球状のボールを有するロッドを使用して測定され、前記ロッドの直径は2mmであり、前記球状のボールの直径は2.5mmである、多層フィルム構造体。
2. 前記フィルム構造体の耐破壊性が2〜10J/mmである、上記1に記載の多層フィルム構造体。
3. 前記少なくとも1つの耐破壊性層が、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよび少なくとも1種類のアイオノマー、少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよびポリエチレン、あるいは少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーおよびポリプロピレンを含み、前記結合層が、オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマー、好ましくはポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー、あるいはそれらの混合物、あるいはエチレンコポリマー、好ましくはエチレンα−オレフィンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー、あるいは酸、無水物、またはエポキシドの官能基で変性されたポリマーまたはコポリマーを含み;前記シーラント層が、ポリエチレン、プロピレンホモポリマーおよびコポリマー、エチレンコポリマー、好ましくはエチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、およびそれらの対応するアイオノマー、および/またはそれらの混合物から選択されるオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む、上記1または2に記載の多層フィルム構造体。
4. 少なくとも1つの障壁層をさらに含み、前記障壁層が、前記少なくとも1つの耐破壊性層および前記少なくとも1つのシーラント層の間に存在し、好ましくは前記障壁層が、エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)、COC、ならびにそれらとポリエチレン、ポリビニルアルコール、およびポリアミドとのブレンドを含む、上記1〜3のいずれか一項に記載の多層フィルム構造体。
5. 前記少なくとも1つの障壁層が、それぞれが独立してポリアミド、または環状オレフィンコポリマーとポリエチレンまたはポリプロピレンまたはアイオノマーとのブレンドを含む少なくとも2つの層の間のエチレンビニルアルコールコポリマーの層から本質的になる、上記4に記載の多層フィルム構造体。
6. 前記少なくとも1つの障壁層が、環状オレフィンコポリマーとアイオノマー、ポリエチレン、またはポリプロピレンとのブレンドを含む2つの層の間のエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層からなり、EVOHの前記層と、環状オレフィンコポリマーとアイオノマー、ポリエチレン、またはポリプロピレンとのブレンドを含む前記層との間に結合層を有してもよい、上記5に記載の構造体。
7. 前記少なくとも1つの障壁層が、ポリアミドを含む2つの層に隣接しそれらの間に存在するエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)の層からなる、上記5に記載の構造体。
8. 少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマーと、少なくとも1種類のアイオノマーまたはポリオレフィンとを含み、好ましくは前記ポリオレフィンがポリエチレンまたはポリプロピレンである、少なくとも2つの耐破壊性層と;
少なくとも1つの障壁層であって、前記少なくとも1つの障壁層が前記少なくとも2つの耐破壊性層の間に存在する、少なくとも1つの障壁層と;
少なくとも1つの結合層と;
少なくとも1つのシーラント層と、
を含む、上記1〜7のいずれか一項に記載の多層フィルム構造体。
9. ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート、またはポリオレフィンを含む外層をさらに含む、上記1〜8のいずれか一項に記載の構造体。
10. PET/結合層/耐破壊性層/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/結合層/PEの層を含み、PETはポリエチレンテレフタレート外層を表し、前記耐破壊性層は、環状オレフィンコポリマーおよびアイオノマーのブレンド、あるいは環状オレフィンコポリマーおよびポリプロピレンのブレンドを含み、前記障壁層がCOC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PEを含み、PEがポリエチレンシーラント層を表す、上記1〜9のいずれか一項に記載の構造体。
11. PET/結合層/耐破壊性層/COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PE/耐破壊性層/IOの層を含み、PETはポリエチレンテレフタレート外層を表し、各耐破壊性層は独立して、環状オレフィンコポリマーおよびアイオノマーのブレンド、あるいは環状オレフィンコポリマーおよびポリプロピレンのブレンドを含み、前記COC+PE/結合層/EVOH/結合層/COC+PEは障壁層構造体であり、IOはアイオノマーシーラント層を表す、上記1〜9のいずれか一項に記載の構造体。
12. 前記耐破壊性層が、前記耐破壊性層の全重量を基準として10〜99重量パーセントの前記少なくとも1種類の環状オレフィンコポリマを含む、上記1〜11のいずれか一項に記載の構造体。
13. 上記1〜12のいずれか一項に記載の同時押出多層フィルム構造体を含む包装物品。
14. 同時押出多層フィルム構造体の製造方法であって、
多層フィルム構造体を同時押出して、同時押出管状フィルムを得るステップと;
第1のバブル中で前記同時押出管状フィルムを冷却するステップと;
第2のバブル中、加熱下で、前記同時押出管状フィルムを延伸して、延伸フィルムを得るステップと;
第3のバブル中、加熱下で、前記延伸フィルムを緩和させるステップとを含み;
前記管状多層フィルム構造体が、上記1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの耐破壊性層を含む、方法。
15. 前記延伸フィルムに対して一軸延伸または二軸延伸のいずれかが行われる、上記14に記載の方法。
図1