特許第6230141号(P6230141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6230141ハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6230141
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   A23G1/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-45646(P2017-45646)
(22)【出願日】2017年3月10日
【審査請求日】2017年3月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591016839
【氏名又は名称】長岡香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】原田 一樹
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−523181(JP,A)
【文献】 特開2006−121958(JP,A)
【文献】 特開2001−095490(JP,A)
【文献】 特開2007−006787(JP,A)
【文献】 特開昭59−113868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00
A23G 1/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
TOXCENTER(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0005〜0.01質量部の割合で添加するハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法。
【請求項2】
チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、0.00002〜0.001質量部の割合で添加するハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法。
【請求項3】
前記チョコレート組成物に含まれるカカオ分が70質量%以上である請求項1または2に記載のマスキング方法。
【請求項4】
前記チョコレート組成物に含まれる非脂肪カカオ分が20質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のマスキング方法。
【請求項5】
チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0005〜0.01質量部の割合で含むハイカカオチョコレート製品。
【請求項6】
チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、0.00002〜0.001質量部の割合で含むハイカカオチョコレート製品。
【請求項7】
前記チョコレート組成物に含まれるカカオ分が70質量%以上である請求項5または6に記載のハイカカオチョコレート製品。
【請求項8】
前記チョコレート組成物に含まれる非脂肪カカオ分が20質量%以上である請求項5〜7のいずれかに記載のハイカカオチョコレート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法およびチョコレート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
古来、チョコレートは、おいしさ、栄養価、バラエティーの豊かさなどから、世界中の多くの人に好まれている。さらに、近年、チョコレート中に含まれるポリフェノール(カカオポリフェノール)は、血圧低下、動脈硬化予防、美容効果、脳の活性化などの効果が期待できることが報告されており、注目されている。例えば、特許文献1には、このようなカカオポリフェノールを多く含有するチョコレートが開示されている。
【0003】
しかし、有用な効果が期待できるとしても、カカオポリフェノールなどのポリフェノール類は苦味や渋味などを有している。そのため、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートは、一般的なチョコレートと比べて、苦味や渋味が強く摂取しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−158504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、カカオポリフェノールを多く含むチョコレート(ハイカカオチョコレート)が有する苦渋味のマスキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で添加するハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法。
(2)チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、0.00001〜0.002質量部の割合で添加するハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法。
(3)チョコレート組成物に含まれるカカオ分が70質量%以上である上記(1)または(2)に記載のマスキング方法。
(4)チョコレート組成物に含まれる非脂肪カカオ分が20質量%以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のマスキング方法。
(5)チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で含むハイカカオチョコレート製品。
(6)チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、0.00001〜0.002質量部の割合で含むハイカカオチョコレート製品。
(7)チョコレート組成物に含まれるカカオ分が70質量%以上である上記(5)または(6)に記載のハイカカオチョコレート製品。
(8)チョコレート組成物に含まれる非脂肪カカオ分が20質量%以上である上記(5)〜(7)のいずれかに記載のハイカカオチョコレート製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマスキング方法によれば、カカオの風味を損なわずに、後味として残るカカオポリフェノールに由来する苦渋味が緩和される。さらに、本発明のチョコレート製品は、カカオの風味が損なわれずに、後味として残るカカオポリフェノールに由来する苦渋味が緩和されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法は、チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で添加する。
【0009】
チョコレート組成物は、通常、カカオ分、砂糖などを含み、必要に応じて、ミルク、香料、油脂などが含まれている。カカオ分とは、カカオマス、ココアパウダー、ココアバターなどカカオ豆に由来する成分の総称である。本明細書において「ハイカカオ」とは、カカオ分が70質量%以上の割合で含まれていることを意味する。チョコレート組成物に含まれるカカオ分の割合は70質量%以上であれば特に限定されず、例えば、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0010】
一実施形態に係る苦渋味マスキング方法は、カカオポリフェノールに由来する苦渋味を緩和することが目的である。そのため、カカオポリフェノールをほとんど含有していないココアバターよりも、ココアバター以外のカカオポリフェノールを豊富に含有する非脂肪カカオ分をある程度の割合で含むチョコレート組成物を用いると、本発明の効果がより発揮される。例えば、非脂肪カカオ分を好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上の割合で含有するチョコレート組成物を用いる。
【0011】
さらに、チョコレート組成物には、油脂としてベヘン酸(BOB:1,3−ジベヘニル−2−オレイルグリセリン)が含まれていてもよい。BOBを添加すると、チョコレート製品が板チョコレートやキューブチョコレートの場合、製品の表面が白く変色する所謂「ファットブルーム」を抑制することができ、離型性や光沢に対しても有効である。
【0012】
一実施形態に係る苦渋味マスキング方法では、カカオポリフェノールに由来する苦渋味を緩和するために、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油(特定の精油)が使用される。
【0013】
ミント精油は、ハッカ属の植物から抽出される精油である。ミント精油の原料となるハッカ属の植物としては特に限定されず、例えば、ペパーミント(セイヨウハッカ、ニホンハッカなど)、スペアミント(オランダハッカなど)、アップルミント(マルバハッカなど)、ペニーロイヤル(メグサハッカ)、ベルガモットミントなどが挙げられる。抽出部位も特に限定されず、例えば、葉、茎、花、種子、根などが挙げられる。抽出方法も特に限定されず、原料となる部位を、例えば、水蒸気蒸留に供する方法、圧搾する方法などが挙げられる。ミント精油には、メントール、メントン、イソメントン、酢酸メンチル、カルボンなどが含まれている。ミント精油の中でも、ニホンハッカ(和種薄荷)に由来するハッカ精油が好ましい。
【0014】
ミント精油は、ハッカ属の植物から抽出された天然物由来の精油に限定されない。例えば、合成によって得られたメントール、メントン、イソメントンなどを適宜調合して得られる組成物であってもよい。
【0015】
ココナッツ精油は、ココヤシから抽出される精油である。抽出部位は特に限定されず、例えば、葉、花、種子、果実(果肉)、樹皮などが挙げられる。抽出方法も特に限定されず、原料となる部位を、例えば、水蒸気蒸留に供する方法、圧搾する方法などが挙げられる。ココナッツ精油には、例えば、エチルデカノエート、エチルオクタノエート、δ−オクタラクトン、δ−ヘキサラクトンなどが含まれている。
【0016】
ココナッツ精油は、ココヤシから抽出された天然物由来の精油に限定されない。例えば、合成によって得られたエチルデカノエート、エチルオクタノエート、δ−オクタラクトンなどを適宜調合して得られる組成物であってもよい。
【0017】
ユーカリ精油は、ユーカリ属の植物から抽出される精油である。ユーカリ精油の原料となるユーカリ属の植物としては特に限定されず、例えば、ユーカリプタス・ラディアータ、ユーカリプタス・グロブルスなどが挙げられる。抽出部位も特に限定されず、例えば、葉、花、種子、果実(果肉)、樹皮などが挙げられる。抽出方法も特に限定されず、原料となる部位を、例えば、水蒸気蒸留に供する方法、圧搾する方法などが挙げられる。ユーカリ精油には、例えば、1,8−シネオール、γ−テルピネン、p−サイメン、α−ピネンなどが含まれている。
【0018】
ユーカリ精油は、ユーカリ属の植物から抽出された天然物由来の精油に限定されない。例えば、合成によって得られた1,8−シネオール、γ−テルピネン、p−サイメンなどを適宜調合して得られる組成物であってもよい。
【0019】
特定の精油は、チョコレート組成物100質量部に対して、0.0001〜0.02質量部の割合で添加される。すなわち、チョコレート組成物中に、特定の精油は1〜200ppmの濃度で添加される。特定の精油の添加量が0.0001質量部未満の場合、カカオポリフェノールに由来する苦渋味を緩和する効果が十分に発揮されない。一方、特定の精油の添加量が0.02質量部を超える場合、精油の風味が強く感じられるため、カカオの風味が損なわれる。特定の精油は、チョコレート組成物100質量部に対して、好ましくは0.0005〜0.01質量部の割合で添加される。
【0020】
次に、本開示の別の実施形態に係るハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法について説明する。別の実施形態に係る苦渋味マスキング方法は、チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物(特定の化合物)を、0.00001〜0.002質量部の割合で添加する。
【0021】
上述の一実施形態に係る苦渋味マスキング方法では、特定の精油を使用しているのに対し、別の実施形態に係る苦渋味マスキング方法では、特定の化合物を使用している。すなわち、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油に含まれる成分のうち、特定の成分に限定して使用しているのが、別の実施形態に係る苦渋味マスキング方法である。チョコレート組成物については、上述のとおりであり、詳細な説明は省略する。
【0022】
メントンおよびイソメントンはミント精油に含まれる化合物であり、例えば、ハッカ精油などのミント精油から単離することによって得られる。メントンおよびイソメントンは天然物由来に限定されず、合成によって得られたものであってもよい。
【0023】
エチルデカノエートおよびδ−オクタラクトンはココナッツ精油に含まれる化合物であり、例えば、ココナッツ精油から単離することによって得られる。エチルデカノエートおよびδ−オクタラクトンは天然物由来に限定されず、合成によって得られたものであってもよい。
【0024】
1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンはユーカリ精油に含まれる化合物であり、例えば、ユーカリ精油から単離することによって得られる。1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンは天然物由来に限定されず、合成によって得られたものであってもよい。
【0025】
別の実施形態に係る苦渋味マスキング方法において、特定の化合物は、チョコレート組成物100質量部に対して、0.00001〜0.002質量部の割合で添加される。この添加量は、一実施形態に係る苦渋味マスキング方法で使用される特定の精油の添加量よりも少ない。その理由は、特定の化合物は、特定の精油に含まれる化合物の一部であり、特定の精油を上述の所定の割合で添加すると、この特定の化合物が0.00001〜0.002質量部程度の割合で添加されるためである。
【0026】
特定の化合物の添加量が0.00001質量部未満の場合、カカオポリフェノールに由来する苦渋味を緩和する効果が十分に発揮されない。一方、特定の化合物の添加量が0.002質量部を超える場合、特定の化合物の風味が強く感じられるため、カカオの風味が損なわれる。特定の化合物は、チョコレート組成物100質量部に対して、好ましくは0.00002〜0.001質量部の割合で添加される。
【0027】
これら特定の化合物のうち、カカオの風味を損ないにくく、カカオポリフェノールに由来する苦渋味の緩和効果をより向上させる点で、メントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトンおよびγ−テルピネンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、苦渋味の緩和効果をさらに向上させる点で、メントン、エチルデカノエートおよびγ−テルピネンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0028】
次に、本開示のハイカカオチョコレート製品について説明する。本開示の一実施形態に係るハイカカオチョコレート製品は、チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で含む。各成分については上述のとおりであり、詳細な説明は省略する。
【0029】
さらに、本開示の他の実施形態に係るハイカカオチョコレート製品は、チョコレート組成物100質量部に対して、メントン、イソメントン、エチルデカノエート、δ−オクタラクトン、1,8−シネオール、γ−テルピネンおよびp−サイメンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を、0.00001〜0.002質量部の割合で含む。各成分については上述のとおりであり、詳細な説明は省略する。
【0030】
本開示のハイカカオチョコレート製品の形態は特に限定されず、所望の形態に成形される。このような形態としては、例えば、板状のチョコレート、キューブ状のチョコレート、球状のチョコレート、アーモンドのようなナッツ類をチョコレートでコーティングした形態、ココア飲料のように流動性を有する形態などが挙げられる。さらに、このようなチョコレートを用いた洋菓子、パン類、アイスクリーム、ソフトクリーム、和菓子なども、本開示のハイカカオチョコレート製品に包含される。
【0031】
本開示のチョコレート製品は、チョコレート組成物に対して特定の割合で特定の精油または特定の化合物が添加されている。その結果、本開示のハイカカオチョコレート製品は、カカオの風味が損なわれずに、後味として残るカカオポリフェノールに由来する苦渋味が緩和されている。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
市販のハイカカオチョコレート(カカオ分86質量%)を加温して溶融させた。溶融させたチョコレート100質量部に対して、ミント精油としてハッカ精油を0.003質量部(30ppm)の割合で添加し、十分に撹拌した。次いで、溶融させたチョコレートを、1粒が3gとなるように型に流し込んで冷却し、ハイカカオチョコレートを得た。
【0034】
(実施例2)
ハッカ精油の代わりに、ココナッツ精油を0.003質量部(30ppm)の割合で添加した以外は、実施例1と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0035】
(実施例3)
ハッカ精油の代わりに、ユーカリ精油を0.003質量部(30ppm)の割合で添加した以外は、実施例1と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0036】
男女各5名(合計10名)のパネラーに、まず市販のハイカカオチョコレート(カカオ分86質量%)を試食してもらった(コントロール)。試食後に後味として残る苦渋味の強さを基準(5点)とした。次いで、実施例1〜3で得られたハイカカオチョコレートを試食してもらった。試食後に後味として残る苦渋味の強さを、1点〜7点で評価してもらった。点数が高いほど苦渋味が強いことを示す。各チョコレートを試食する前に、口の中を水で十分に洗い流してもらった。パネラー10名の平均点を表1に示す。
【0037】
さらに、苦渋味以外に、コントロールと比較してチョコレートの風味が変化しているか否かを、下記の基準で評価してもらった。A+、AおよびBであれば、コントロールの風味とほぼ同等と評価できる。各評価を選んだ人数を表1に示す。
+:コントロールの風味と同じ場合。
A:コントロールの風味と僅かに異なるものの、風味にほとんど影響がない場合。
B:精油の風味を僅かに感じるものの、コントロールの風味を損なっていない場合。
C:コントロールの風味と全く異なり、精油の風味を強く感じる場合。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、実施例1〜3で得られたハイカカオチョコレートは、市販品のハイカカオチョコレート(コントロール)と比べて、後味として残る苦渋味が緩和されていることがわかる。さらに、実施例1〜3で得られたハイカカオチョコレートは、コントロールとほぼ同等の風味を有していることがわかる。
【0040】
(実施例4)
ハッカ精油の代わりに、ハッカ精油に含まれる成分であるメントンを0.00005質量部(0.5ppm)の割合で添加した以外は、実施例1と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0041】
(実施例5)
ハッカ精油の代わりに、ハッカ精油に含まれる成分であるイソメントンを0.0004質量部(4ppm)の割合で添加した以外は、実施例1と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0042】
(実施例6)
ココナッツ精油の代わりに、ココナッツ精油に含まれる成分であるエチルデカノエートを0.00002質量部(0.2ppm)の割合で添加した以外は、実施例2と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0043】
(実施例7)
ココナッツ精油の代わりに、ココナッツ精油に含まれる成分であるδ−オクタラクトンを0.0002質量部(2ppm)の割合で添加した以外は、実施例2と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0044】
(実施例8)
ユーカリ精油の代わりに、ユーカリ精油に含まれる成分である1,8−シネオールを0.0015質量部(15ppm)の割合で添加した以外は、実施例3と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0045】
(実施例9)
ユーカリ精油の代わりに、ユーカリ精油に含まれる成分であるγ−テルピネンを0.00015質量部(1.5ppm)の割合で添加した以外は、実施例3と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0046】
(実施例10)
ユーカリ精油の代わりに、ユーカリ精油に含まれる成分であるp−サイメンを0.0002質量部(2ppm)の割合で添加した以外は、実施例3と同様の手順でハイカカオチョコレートを得た。
【0047】
実施例4〜10で得られたハイカカオチョコレートについて、実施例1〜3と同様の手順で後味として残る苦渋味および風味を、10名のパネラーに評価してもらった。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、実施例4〜10で得られたハイカカオチョコレートは、市販品のハイカカオチョコレート(コントロール)と比べて、後味として残る苦渋味が緩和されていることがわかる。さらに、実施例4〜10で得られたハイカカオチョコレートは、コントロールとほぼ同等の風味を有していることがわかる。
【0050】
特に、特定の精油よりも、特定の精油に含まれる特定の成分を使用すると、苦渋味のマスキング効果(緩和効果)が若干向上する傾向にあり、風味も損ないにくい傾向にある。
【要約】
【課題】カカオポリフェノールを多く含むチョコレート(ハイカカオチョコレート)が有する苦渋味のマスキング方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るハイカカオチョコレートの苦渋味マスキング方法は、チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で添加する。さらに、本発明に係るハイカカオチョコレート製品は、チョコレート組成物100質量部に対して、ミント精油、ココナッツ精油およびユーカリ精油からなる群より選択される少なくとも1種の精油を、0.0001〜0.02質量部の割合で含む。
【選択図】なし