特許第6230145号(P6230145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230145
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】マテリアルロックの消音装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/06 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   E02D23/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-33034(P2013-33034)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163068(P2014-163068A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513044050
【氏名又は名称】株式会社BUILD LIFE
(74)【代理人】
【識別番号】100062797
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 修一
(72)【発明者】
【氏名】持留 浩樹
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−173940(JP,A)
【文献】 特開2004−143735(JP,A)
【文献】 特開2005−068890(JP,A)
【文献】 特開2005−023757(JP,A)
【文献】 実開昭58−120240(JP,U)
【文献】 実開昭57−037185(JP,U)
【文献】 特開2006−070652(JP,A)
【文献】 米国特許第01780586(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/06
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部(5)の上部に両開きの防音ドア(1a),(1b)を設けて成る消音ドーム(A)を、マテリアルロック(7)の上部に載設するマテリアルロックの消音装置において、前記防音ドア(1a),(1b)にワイヤロープ(2)の挿通孔規正装置(B),(B)を設け、この挿通孔規正装置(B),(B)内にそれぞれ内側端部に鉛直方向にワイヤロープ(2)の半径より若干大きな円弧状の凹部(3c),(3d)を形成した挿通孔規正用摺動子(3a),(3b)を設け、且つ各挿通孔規正用摺動子(3a),(3b)を接合部(13)方向に移動させる駆動手段を設けたことを特徴とするマテリアルロックの消音装置。
【請求項2】
前記消音ドーム(A)の筒状部(5)の外側上部に、適数の消音マフラー(12)を接続したことを特徴とする請求項1記載のマテリアルロックの消音装置。
【請求項3】
前記消音ドーム(A)の両開きの防音ドア(1a),(1b)の接合端部をそれぞれ筒状部(5)に設けた軸(14a),(14b)に枢着して鋏のように開閉する構造とすると共に、各防音ドア(1a),(1b)の外側縁下部と前記筒状部(5)間にパッキン(6)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のマテリアルロックの消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニューマチックケーソン工法に用いるマテリアルロックの両開きの上部ドアに設けたワイヤロープ挿通孔と、該ワイヤロープ挿通孔内を昇降するアースバケット吊支用ワイヤロープ間の隙間から漏気する高圧空気流によって発生する騒音(漏気音)を低減する消音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ニューマチックケーソン工法は、掘削作業室への浸水等を防止するため、前記作業室を高圧にして掘削作業が行われる。従って気密性を維持するため、マテリアルシャフトの上部にはマテリアルロックが設けられているが、作業室で掘削した土砂をアースバケットによりマテリアルシャフト内を昇降させて、搬入出させる際、上部ドアに設けられたワイヤロープ挿通孔と、該ワイヤロープ挿通孔内を昇降するアースバケット吊支用ワイヤロープ間の隙間から高圧空気が漏出して騒音が発生する。そしてこの騒音は掘削した土砂を投入したアースバケットをクレーン等で繰り返し巻き上げ、巻き下ろしする過程で、ワイヤロープ挿通孔がワイヤロープと接触して磨耗して口径が拡大し、漏気量が増大して一層騒音が著しくなり、工事騒音として問題となっている。
【0003】
また、近年、ニューマチックケーソン工法によるケーソン構造物は、大深度化の傾向にあり、従って作業室の高圧化がなされ、高圧空気の漏気量が一段と増加するため、その消音対策が重要課題となっている。
【0004】
従来、上記騒音に対する消音対策として、マテリアルロックの上部ドアのワイヤロープ挿通孔から漏出する高圧空気の一部をバイパス排出する方法や、マテリアルロックの上部に消音装置(消音ドーム)を載設する方法或いはワイヤロープ挿通孔付近に消音装置を付加する方法等が提案されているが、それぞれ一長一短があり、必ずしも充分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−156030号公報
【特許文献2】特開平10−245851号公報
【特許文献3】特開2002−105965号公報
【特許文献4】特許第3380854号公報
【特許文献5】特許第2895478号公報
【特許文献6】特許第3816069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、これらの先行技術を種々検討の結果、マテリアルロックのアースバケット吊支用ワイヤロープと、該ワイヤロープの挿通孔との間隙から漏出する漏気音を低減させる構造が比較的簡単で、作業性の良い新しいタイプの消音装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、筒状部の上部に両開きの防音ドア1a,1bを設けて成る消音ドームを、マテリアルロックの上部に載設するマテリアルロックの消音装置において、前記防音ドア1a,1bにワイヤロープ2の挿通孔規正装置B,Bを設け、この挿通孔規正装置B,B内にそれぞれ内側端部に鉛直方向にワイヤロープ2の半径より若干大きな円弧状の凹部3c,3dを形成した挿通孔規正用摺動子3a,3bを設け、且つ各挿通孔規正用摺動子3a,3bを接合部13方向に移動させる駆動手段を設けたことを特徴とするマテリアルロックの消音装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、前記消音ドームの筒状部の外側上部に、適数の消音マフラー12を接続したことを特徴とするマテリアルロックの消音装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の構成に加え、前記消音ドームの両開きの防音ドア1a,1bの接合端部をそれぞれ筒状部に設けた軸14a,14bに枢着して鋏のように開閉する構造とすると共に、各防音ドア1a,1bの外側縁下部と前記筒状部間にパッキンを設けたことを特徴とするマテリアルロックの消音装置である。
【0010】
更に本発明を図1の説明図に基づいて説明すると、本発明は、マテリアルロックの上部に消音ドームを載設する形式の消音装置の改良に係るもので、図1に示すように、消音ドームAの両開きの防音ドア1a,1bにワイヤロープ2の挿通孔規正装置B,Bを設け、この挿通孔規正装置B,B内にそれぞれ挿通孔規正用摺動子3a,3bを設けたことを第1の改良点とし、消音ドームAの筒状部5の外側に、適数の消音マフラー12,12を排気管12aを介して接続したことを第2の改良点とし、筒状部5の上部に設けた両開きの防音ドア1a,1bを鋏のように開閉する構造としたことを第3の改良点とするものである。
【0011】
挿通孔規正用摺動子3a,3bは、ナイロン等の滑りの良いワイヤロープを傷付けない材料で構成することが好ましく、その接合部には鉛直方向にワイヤロープ2の半径より若干大きな円弧状の凹部3c,3dを形成し、それぞれ油圧シリンダー4,4やネジ杆等の駆動手段によって、防音ドア1a,1bの閉鎖時に適正なワイヤロープ挿通孔を形成するように位置決めされる構成とする。
【0012】
また、防音ドア1a,1bの外縁下部の内側と筒状部5間にパッキン6を設け、筒状部5との気密性を維持するように構成される。パッキン6は外縁下部の内側に取付けても良いし、筒状部5側に設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の改良構造によると、防音ドア1a,1bの閉合部に形成されるワイヤロープ挿通孔は、ワイヤロープ2との摩擦により磨耗して拡大した場合、挿通孔規正用摺動子3a,3bを油圧シリンダー4,4等の駆動手段により移動させることにより略一様な大きさに維持することができるので、漏気量の増大を略一定に維持することができ、高圧気流により騒音の増大を防ぐことができる。
【0014】
また、第2の改良構造とした場合、マテリアルロック7の上部防音ドア8a,8bのワイヤロープの挿通孔9から漏出する高圧気流10は、消音ドームAの防音ドア1a,1bの内面に添設された吸音材11bに衝突し、跳ね返った高圧気流は,筒状部5の外側に排気管12aを介して接続した消音マフラー12,12を経て外部に排出され、騒音源となる低周波音エネルギーは消音ドームAによって減衰し、高周波エネルギーの大部分は、前記消音マフラー12,12によって減衰すると共に、消音ドームA内の気圧は低下する。従って、従来の構造のように防音ドア1a,1bに形成されるワイヤロープ挿通孔のみから高圧気流を漏出させる場合よりも、ワイヤロープ挿通孔からの漏出空気量及び漏出気流の気圧は低下するので、前記消音作用と相俟って消音効果の高い消音装置を提供することができる。
【0015】
また、第3の改良構造とした場合、他の開披形式の両開き防音ドアのように、開閉時にパッキン6が摺動により毀損させられることがないため気密性良好な消音ドームを提供することができ、従来より優れた消音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の要部構成を示す説明図。
図2】本発明実施例の一部截断正面図。
図3】本発明実施例の一部截断平面図。
図4】本発明実施例の一部截断左側面図。
図5】両開き防音ドアを開披した状態の本発明実施例の一部切断平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図面に基づき説明する。しかし、本発明は開示した実施例のみに限定されるものではないことは勿論である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の要部構成を示す説明図、図2は、本発明実施例の一部截断正面図、図3は本発明実施例の一部截断平面図、図4は本発明実施例の一部截断左側面図で、Aは消音ドーム、Bは挿通孔規正装置である。
【0019】
消音ドームAは、内面に吸音材11aを添設した円筒状の筒状部5と、接合部13の一端を筒状部5の外側に設けた軸14a,14bにブラケット15a,15bを介して回動自在に枢着し且つ下面に吸着材11bを設けた両開き防音ドア1a,1bとから構成され、防音ドア1a,1bの外縁16a,16bの内側にはパッキン6,6が設けられている。このパッキン6,6は外縁16a,16bの内面に取り付けても良いし、筒状部3の外面に設けるようにしてもよい。
【0020】
そして筒状部5の上部には、図3に示すように、3箇の蛇口状の消音マフラー12,12,12がそれぞれ排気管12aを介して接続され、また防音ドア1a,1bの接合部13は図2に示すようにV字接合の構造を採っている。なお、消音マフラー12,12,12は排気管を介して筒状部の下部に接続することもできる。
【0021】
また各防音ドア1a,1bの開扉側は、それぞれ筒状部5の外側に回動自在に枢着された支持体17,17の先端に、軸18,18と連結片19,19を介して連繋支持されていて、筒状部5の外側に設けた油圧シリンダー20,20を作動させることにより軸21,21、リンク22,22、支持体17,17、軸18,18及び連結片19,19を介して、図5に示すように防音ドア1a,1bは軸14a,14bを回動中心として、水平に回動開扉するよう構成されている。
【0022】
また、防音ドア1a,1bの上部にはそれぞれワイヤロープ2の半径より若干大きな円弧状挿通孔を設けた挿通孔規正装置B,Bが設けられていて、各挿通孔規正装置B,B内には、それぞれガイド23内を油圧シリンダー4によって半径方向に移動する挿通孔規正用摺動子3a,3bが設けられている。
【0023】
この実施例では挿通孔規正用摺動子3a,3bの駆動手段として油圧シリンダー4,4を用いたが、他の自動装置や手動装置等の駆動手段を用いるようにしてもよい。
【0024】
挿通孔規正用摺動子3a,3bの内側端には鉛直方向に円弧状の凹部3c,3dが設けられていて、防音ドア閉鎖時にワイヤロープ2の挿通孔を形成するよう、挿通孔規正用摺動子3a,3bは駆動手段(実施例では油圧シリンダー4)によって位置決めされる。そして、ワイヤロープ2との接触により前記凹部3c,3dが磨耗して形成する挿通孔が拡大した場合には接合部13方向に挿通孔規正用摺動子3a,3bを前記駆動手段によって移動させて適正な挿通孔が形成されるよう操作する。
【0025】
本発明に係る消音装置は、既存のマテリアルロック7上に載設するものであるので、非常に使い勝手が良く、また先行技術のようにワイヤロープ2を囲繞して設ける消音装置が無いので、管理が容易であるばかりでなく、使用中故障することが少ない。
【0026】
工事期間の長いニューマチックケーソンの沈設工事においては、ワイヤロープとの接触によるマテリアルロック7の上部防音ドア8a,8bの挿通孔と、消音ドームAの防音ドア1a,1bの挿通孔の拡大による騒音悪化の問題は避けられないところであるが、本発明によると消音ドームAの挿通孔は略一定の大きさに維持管理することができるので、従来装置のように騒音が次第に激しくなることを防げる。
【0027】
そして、マテリアルロック7の上部防音ドア8a,8bのワイヤロープ挿通孔が磨耗により拡大して漏気気圧及び漏気空気量が拡大しても漏出高圧気流の大部分は防音ドア1a,1bより跳ね返った後、筒状部5の上部に排気管12aを介して接続された消音マフラー12,12,12を経て排気される構造であるため、防音ドア1a、1bに形成されるワイヤロープ挿通孔から噴出する空気圧は逓減され、しかも消音ドームAの消音効果と、消音マフラー12,12,12による消音効果とが相俟って、従来装置よりも低周波音は勿論のこと、高周波音を低下させることができる。また、排気管12aを実施例のように蛇口状とすることにより、装置全体をコンパクトのものとすることができる。また、排気管として長尺のホースを用い、消音マフラーを作業の邪魔にならない場所に設置してもよい。
【0028】
更に、本発明は防音ドアの開閉方式を挟み方式(仮称)、即ち防音ドア1a,1bの接合部13の一側を筒状部5に設けた軸に枢着して開扉する方式としたので、従来の左右に開くスライド方式や、被せ方式に比し、パッキンを開閉時に摺動により毀損させることがないので、防音ドア1a,1bと筒状部5との気密性が高く、上記消音作用と相俟って、従来の消音装置よりも、構造が比較的簡単であるにも拘らず従来装置以上の消音装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
A 消音ドーム
B 挿通孔規正装置
1a,1b 防音ドア
2 ワイヤロープ
3a,3b 挿通孔規正用摺動子
3c,3d 凹部
4 油圧シリンダー
5 筒状部
6 パッキン
7 マテリアルロック
8a,8b 上部ドア
9 ワイヤロープ挿通孔
10 高圧気流
11a,11b 吸音材
12 消音マフラー
12a 排気管
13 接合部
14a,14b 軸
15a,15b ブラケット
16a,16b 外縁
17 支持体
18、21 軸
19 連結片
20 油圧シリンダー
22 リンク
図1
図2
図3
図4
図5