(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230146
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】畜肉エキスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20171106BHJP
A23L 13/30 20160101ALI20171106BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20171106BHJP
【FI】
A23L27/10 B
A23L13/30
!A23L23/00
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-39826(P2013-39826)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-150796(P2014-150796A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505144588
【氏名又は名称】MCフードスペシャリティーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】得能 一成
(72)【発明者】
【氏名】柏原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】仲久木 裕子
【審査官】
吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−042955(JP,A)
【文献】
特開平08−242806(JP,A)
【文献】
特開2005−245267(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/063052(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/007667(WO,A1)
【文献】
牛テールスープ,楽しみてんこもり家事机,GMOインターネット株式会社,2009年 9月11日,URL,http://yaplog.jp/kajitukue/archive/1292
【文献】
久々の自作ラーメン2スープ編,ラーメン探究日記,FC2, Inc.,2012年 9月 1日,URL,http://yapparimengasuki.blog.fc2.com/blog-entry-70.html
【文献】
ふな乃家,鶏ガラスープで水炊き,株式会社サイバーエージェント,2011年 1月 8日,URL,http://ameblo.jp/funanoya/entry-10761947750.html
【文献】
圧力鍋で鶏ガラスープ,クックパッド株式会社,2006年12月11日,URL,http://cookpad.com/recipe/308947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A23L 23/00−27/40
A23L 27/60
A23L 35/00
CAplus/REGISTRY/WPIDS/WPIX/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛骨に抽出媒体を加えた後、0.12〜0.2MPaの加圧条件下、105〜120℃で0.5〜12時間加熱抽出処理し、常圧とした直後または常圧を保持後、そのまま再び0.12〜0.2MPaの加圧条件下、105〜120℃で0.5〜12時間加熱抽出処理する工程を含むことを特徴とする牛骨スープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料からの収率が高く、風味に優れた畜肉エキスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉エキスは、家畜類の筋肉組織または骨組織を含有する原料と抽出媒体とを接触させ、加熱、加圧、酵素分解、酸分解等の抽出処理を行って得られる、アミノ酸、タンパク質、核酸、無機酸、有機酸等の風味成分を含有する抽出物であり、食品分野で広く用いられている。
畜肉エキスを小規模で製造する場合は、常圧条件下で加熱処理されることが多いが、抽出効率が高くないため製造に時間がかかる。このため工業的規模での製造には適さない。
【0003】
そこで、工業的製造においては加圧釜等を用いて加圧条件下で抽出されることが多い。しかし、抽出効率を高めるために、加熱抽出の温度を高めたり時間を長くしたりすると、風味成分の消失や、不要な成分の抽出による異味や好ましくない臭いの生成等がおこり、風味が低下することがある。
【0004】
低下する風味を補うためにタンパク質加水分解物、酵母エキス、フラクトース等の糖の添加(特許文献1参照)等が行われることもあるが、これらの添加物を添加した場合、添加の量にもよるが、自然な風味とは異なるものとなることがある。
このため、風味を低下させずに高い抽出収率で畜肉エキスを効率よく製造できる方法の開発が望まれている。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2000−125805
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、原料からの収率が高く、風味に優れた畜肉エキスを効率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、動物の肉または骨を含む原料に抽出媒体を加えた後、加圧条件下で加熱抽出処理し、冷却して常圧とし、再び加圧条件下での加熱抽出処理を行う工程を含むことを特徴とする畜肉エキスの製造方法に関する
。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原料からの収率が高く、風味に優れた畜肉エキスを効率よく製造できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における畜肉エキスとは、動物の肉または骨を含む原料に、抽出媒体を加えて、該原料中の成分を該抽出媒体中に抽出して得られるものをいう。
本発明に用いられる動物は、いずれの動物であってもよいが、ウシ、ブタ、またはトリが好適に用いられる。原料としては骨または肉のいずれの部位を用いてもよいが、少なくとも骨を用いることが好ましい。用いる動物の種類およびその部位は、それぞれ1種類でもよいが、2種類以上併用してもよい。
【0011】
原料からの抽出は、水性媒体、有機溶媒等の抽出媒体を用いて行われるが、好ましくは水性媒体が用いられる。
水性媒体としては、水または無機塩水溶液があげられる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等があげられる。
【0012】
有機溶媒としては、飲食品への利用という点から、エタノールが好ましく用いられる。エタノールは含水エタノールであってもよく、含水率が10〜90%(v/v)のものが好ましく用いられる。
原料からの抽出に用いられる装置は、原料からタンパク質、ペプチド、その他の呈味成分等を加圧条件下で抽出できるものであればいずれの装置を用いてもよい。例えば、加圧釜等の加熱装置があげられる。
【0013】
原料と抽出媒体との量比は特に限定されず、通常、動物の骨、肉等から畜肉エキスを抽出する際に用いられる量比であればいずれでもよい。
原料に抽出媒体を添加した後に行う加圧条件下での加熱抽出処理(以下、加圧加熱抽出処理ともいう)は、加圧条件下であればいずれの温度で行ってもよいが、通常100〜150℃、好ましくは105〜130℃、さらに好ましくは105〜120℃で行う。
【0014】
加圧加熱抽出処理における圧力は特に限定されないが、通常0.101〜0.5MPa(メガパスカル)、好ましくは0.105〜0.2MPa、さらに好ましくは0.12〜0.2MPaである。
加圧加熱抽出処理する時間は特に限定されないが、通常0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、さらに好ましくは1〜3時間である。
【0015】
加圧加熱抽出処理を行なった後、常圧(0.1MPa)になるまで冷却する。冷却する方法は、自然冷却、冷媒を用いる冷却等いずれの方法でもよい。常圧の状態は必要に応じて保持すればよく、常圧とした直後に再び加圧加熱抽出処理してもよい。
常圧状態を保持する場合、温度および時間等に特に限定はないが、例えば30〜99℃、より好ましくは45〜95℃、さらに好ましくは50〜85℃で、0.5〜24時間、好ましくは、0.5〜12時間、さらに好ましくは0.5〜6時間保持する。
【0016】
常圧状態とした後に再び行う加圧加熱抽出処理の条件は上述の加圧加熱抽出処理条件の範囲内であれば、最初の加圧加熱抽出処理の条件と同じでもよく、また異なってもよい。
これらの加圧加熱抽出操作で得られる抽出物は、そのまま本発明の畜肉エキスとして用いることができるが、必要に応じて、ケークろ過、清澄ろ過、遠心ろ過、フィルタープレス、沈降分離、遠心沈降、圧搾分離、シフター分離、ストレナー分離等の固液分離方法で抽出液を取得し、これを本発明の畜肉エキスとして用いることもできる。
【0017】
本発明の畜肉エキスは、必要に応じて、乳化状態の畜肉エキス(以下、白湯スープという)であってもよい。白湯スープは、例えば以下の方法で調製することができる。
加圧加熱抽出処理により得られた抽出物を固液分離して抽出液を調製する。該抽出液を静置または遠心分離法により上層と下層とに分離し、それぞれを油相および水相として取得する。水相は、そのまま本発明の白湯スープの製造に用いてもよいが、さらに、加熱濃縮、凍結濃縮、逆浸透膜濃縮、減圧濃縮等の方法により濃縮して用いてもよい。
【0018】
水相に、油脂を添加、混合する。得られた混合液をさらに、攪拌式ホモミキサー、高圧ホモゲナイザー、回転式のコロイドミル、超音波発生装置、ボテーター等の装置、好ましくは攪拌式ホモミキサーまたは高圧ホモゲザイザーを用いて、乳化処理することにより白湯スープを製造することができる。
【0019】
水相に添加する油脂としては、骨油(ボーンオイル)、豚脂、鶏油、牛脂、乳脂等の動物油脂、なたね油、大豆油、パーム油、コーン油、米ぬか油、パーム核油、サフラワー油、ごま油、綿実油等の植物油脂等をあげることができ、好ましくは動物油脂、さらに好ましくは骨油が用いられる。また、畜肉エキスから水相と分離して得られる油相を油脂として用いてもよい。
【0020】
水相に添加する油脂の量に特に限定はないが、通常、白湯スープ中0.5〜60%(v/v)、好ましくは1〜50%(v/v)、より好ましくは5〜40%(v/v)となるように添加する。
乳化は、水相および油脂の混合物を乳化することができればいずれの条件で行ってもよい。該条件は用いる装置等により異なるが、例えば、水相および油脂の混合物を、30〜100℃、好ましくは40〜70℃に保ちながら、攪拌式ホモミキサーの場合は1,000〜10,000rpmで10分間〜8時間、高圧ホモゲナイザーの場合は10〜40Mpaの圧力で10分間〜8時間乳化処理を行う。
【0021】
本発明の畜肉エキスは、必要に応じて無機塩、酸、アミノ酸、核酸、糖類、調味料、香辛料等の飲食品に使用可能な各種添加物を含有してもよい。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等があげられる。酸としては、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、酢酸、脂肪酸等のカルボン酸およびそれらの塩等があげられる。該塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩があげられる。アミノ酸としては、グルタミン酸ナトリウム、グリシン等があげられる。核酸としては、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等があげられる。糖類としては、ショ糖、ブドウ糖、乳糖、果糖等があげられる。調味料としては醤油、味噌、野菜、魚介等のエキス等の天然調味料、香辛料としては各種の香辛料があげられる。これらの使用量は、使用目的に応じて適宜設定する。
【0022】
本発明の畜肉エキスは、そのまま容器に充填してもよいが、加熱滅菌処理を行い容器に充填することが好ましい。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1
(1)予め10cm程度に切断しておいた牛拳骨0.75kgおよび水道水5kgを10L容のステンレスビーカーに仕込み、高圧蒸気滅菌器(アドバンテック東洋社製、以下同じ)に入れ、加圧条件下(0.16〜0.18MPa、以下同じ)で加熱抽出処理(115℃で120分間)した。該加圧加熱抽出処理後、常圧となるまで冷却した。60℃となった後、再び先の加圧加熱抽出処理と同様な処理を行った(温度および時間は同じ)。
該加圧加熱抽出処理後、冷却して常圧とし、高圧蒸気滅菌器の内容物を取り出し、静置して上層と下層とに分離した。下層を抜き取り回収し、該下層を100メッシュの篩でろ過して骨等の固体を除去して抽出液1を得た。抽出液1の固形分を測定したところ3.0%であった。
【0024】
(2)(1)の抽出操作において、120分間の加圧加熱抽出処理を常圧への戻し操作を挟んで2回行う代わりに、連続して240分間の加圧加熱抽出処理を1回行う以外は同様の操作を行って抽出液2を得た。抽出液2の固形分を測定したところ2.0%であった。
【0025】
抽出液1および2をそれぞれエバポレーターで固形分が9%となるまで濃縮した。その結果、240分間連続して加圧加熱抽出処理を行って得た抽出液2の濃縮液(濃縮液2)の収量は約1.1kgであったのに対し、120分間の加圧加熱抽出処理を常圧への戻し操作を挟んで2回行って得た抽出液1の濃縮液(濃縮液1)の収量は約1.5kgであり、濃縮液2の約1.4倍の収量であった。
【0026】
(3)(2)で得た濃縮液1および2をそれぞれ3倍希釈して牛骨スープを調製した。該牛骨スープを60℃に保ち、10名のパネラーにより、「濃厚感」、「ゼラチン感」および「牛骨スープとしての好ましさ(嗜好性)」の評価を行った。
評価は7段階評点法で行い、評価が低い場合は点数を低く採点し、評価が高い場合は点数を高く採点した。各項目の評点の平均値を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示すとおり、120分間の加圧加熱抽出処理を常圧への戻し操作を挟んで2回行って得た抽出液1の濃縮液(濃縮液1)を用いて得られた牛骨スープは、240分間連続して加圧加熱抽出処理を行って得た抽出液2の濃縮液(濃縮液2)を用いて得られた牛骨スープと比較して、同じ固形分量であるにもかかわらず、有意に濃厚感、ゼラチン感および嗜好性の優れたものであった。
【0029】
実施例2
0.9kgの実施例1で調製した抽出液1および0.1kgのビーフボーンオイル(ゼンミ食品社製)を高圧ホモゲナイザー(SMT社製)に供し、10MPaで乳化処理した。
得られた溶液を1L容のレトルト袋に入れ、122℃で10分間レトルト滅菌処理してレトルト殺菌された白湯スープを得た。