(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230156
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ライニング材及びこれを有する成形機用シリンダ
(51)【国際特許分類】
B22D 13/02 20060101AFI20171106BHJP
C22C 1/10 20060101ALI20171106BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20171106BHJP
C22C 29/08 20060101ALI20171106BHJP
B22F 3/22 20060101ALI20171106BHJP
B22F 7/02 20060101ALI20171106BHJP
B22D 17/20 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B22D13/02 501A
C22C1/10 G
C22C19/03 J
C22C29/08
B22F3/22
B22F7/02
B22D17/20 F
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-193046(P2014-193046)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-64417(P2016-64417A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 朗
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰祐
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−247212(JP,A)
【文献】
特開2002−282910(JP,A)
【文献】
特開平02−101139(JP,A)
【文献】
特開昭61−027165(JP,A)
【文献】
特開平07−290186(JP,A)
【文献】
特開2008−201080(JP,A)
【文献】
特開2002−282909(JP,A)
【文献】
特開2003−193172(JP,A)
【文献】
特開2000−239770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 13/02,17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内周面に設けられるニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散した外層と、ニッケル基合金からなる内層とを有するライニング材であって、
前記内層は、その厚さが前記ライニング材の厚さの5〜30%であり、
前記外層は、微細な炭化タングステン粒子が密集してなる炭化タングステン塊が、その微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に島状に点在した組織を有するライニング材。
【請求項2】
炭化タングステン塊は、微細な炭化タングステン粒子を結合させた素材として供給される球状造粒粉に由来する形状が崩壊した形態を有することを特徴とする請求項1に記載のライニング材。
【請求項3】
ニッケル基合金中に分散する微細な炭化タングステン粒子の平均自由行程は、3〜8μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のライニング材。
【請求項4】
球状造粒粉は、平均粒径が1〜3μmの微細な炭化タングステン粒子を粒径30〜100μmの球形状に造粒してなるものであることを特徴とする請求項2に記載のライニング材。
【請求項5】
外層における炭化タングステンが占める面積率は、30〜50%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のライニング材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のライニング材をシリンダ内周面に有する成形機用シリンダ。
【請求項7】
ライニング材は、質量%で、炭化タングステン:35〜55%、コバルト:5〜10%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、マンガン2%以下、鉄:5%以下、銅:2%以下、炭素:1%以下、残部ニッケルおよび不可避的不純物を含有することを特徴とする請求項6に記載の成形機用シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心鋳造法により成形されるニッケル基合金に炭化タングステン粒子が分散したライニング材及びこれを有する成形機用シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機により、種々の特性、形状、強度等を有する樹脂製品が、種々の材質・グレードの樹脂、またこれらにガラス繊維等を混合した樹脂組成物を用いて製造されている。そのような射出成形機に使用される成形機用シリンダには、高い硬度を有し、耐摩耗性、耐食性、耐久性等に優れ、しかも比較的安価に製造できることが要求される。その要求に応えて、シリンダ本体の内周面にシリンダライニングを遠心鋳造方法により形成した成形機用シリンダ又はその製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、遠心鋳造方法により製造される射出成形機のシリンダであって、シリンダ内面に、濃ニッケル又は濃コバルト合金マトリックス中に炭化タングステン粒子の実質的部分を分散混入せしめた内張層を有する射出成形機のシリンダが提案されている。この内張層において、炭化タングステン粒子は内張の容積の約40〜80%に分散しているのがよいとされ、炭化タングステンの粒子が内張層の80容積パーセント以上に分散しているとホーニングが困難になり、内張層表面はでこぼこしているとされる。また、使用される炭化タングステン粒子は比較的小粒子が望ましく、好ましくは100メッシュ、さらに好ましいのは200メッシュ又はそれより小粒子のものであるとされる。
【0004】
特許文献2に、重量%で、炭化タングステン:30〜45%、ニッケル+コバルト(合計量):35〜50%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、珪素:1〜3%、マンガン:2%以下、鉄:8〜25%、炭素:1%以下を含有する遠心鋳造用炭化タングステン複合ライニング材が提案されている。この遠心鋳造用炭化タングステン複合ライニング材においては、炭化タングステン粒子の平均粒径が6μm未満では炭化タングステン複合材のライニング層の耐摩耗性が低下し、50μmの粒径の炭化タングステンを用いた場合には耐摩耗性は優れているが切削性が悪くなるとされ、炭化タングステン粒子の平均粒径は6〜12μmに限定するのがよいとされる。そして、このように炭化タングステンを細粒化することにより切削時間を従来のNi基合金ライニング材と同等にすることができたとされる。
【0005】
特許文献3に、ライニング層に占める硬質粒子の体積率を上げた耐摩耗性および耐食性に優れるとともに、加工性および経済性に優れる成形機用シリンダが提案されている。すなわち、中空円筒形状のシリンダ母材の内面に耐摩耗耐食性合金を含有したライニング層を形成した成形機用シリンダにおいて、前記ライニング層に、硬質粒子を金属で結合した造粒粉が分散している成形機用シリンダが提案されている。この造粒粉は、体積率でライニング層の50〜70%を占め、球状化した状態でライニング層に保持されて密に分散しているとされる。そして、この造粒粉は、例えば平均粒径が1〜10μmの炭化タングステンをコバルト等の金属により強固に結合して球状化したものであり、平均粒径が50〜150μmであるものがよいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭54-32413号公報
【特許文献2】特開平7-290186号公報
【特許文献3】特開2002-161319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遠心鋳造法により成形されるニッケル基合金又はコバルト基合金に炭化タングステン粒子が分散したライニング材は、ニッケル基合金又はコバルト基合金に炭化タングステン粒子がほとんど分散していない内層と、炭化タングステン粒子が分散した外層とを有する。この内層は、硬度が低く耐摩性に劣るので機械加工により除去されるが、特許文献1によると、機械加工のためにある程度の厚さが必要であるから、内層の厚さはライニング材の厚さの20%以上が好ましいとされる。
【0008】
特許文献2には、炭化タングステン粒子の平均粒径が6〜12μであると切削性がよく、50μm程度の平均粒径では切削性は悪いが耐摩性は良いとされる。特許文献3に記載のライニング層は、平均粒径が1〜10μmの炭化タングステンがコバルト等の金属により強固に結合され平均粒径が50〜150μmに造粒された球状化造粒粉が分散した組織をしており、ライニング層に占める炭化タングステン粒子の体積率が高いほど耐摩性に優れるとされる。しかしながら、特許文献2又は3に記載のライニング材においては、内層の厚さがどの程度であるかについて記載はない。
【0009】
このような遠心鋳造法により成形されるライニング材において、機械加工により削除される内層は、より薄くすることができ、かつ切削性がよいものが好ましい。そして、使用に供される外層は、耐摩性に優れるものであるのが好ましい。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点又は要請に鑑み、シリンダ内周面に遠心鋳造法により成形される炭化タングステン粒子がニッケル基合金中に分散したライニング材であって、ニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散した外層が厚く、ほぼニッケル基合金からなる内層が薄い、均質で耐摩耗性に優れたライニング材及びこれを有する成形機用シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、遠心鋳造法により成形されるニッケル基合金に炭化タングステン粒子が分散したライニング材は、炭化タングステン粒子の平均粒径を小さくすると内層を薄くすることができるが、耐摩性が低下するという現象に着目して本発明を完成させた。
【0012】
本発明に係るライニング材は、遠心鋳造法によりシリンダ内周面に成形され、ニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散した外層と、ほぼニッケル基合金からなる内層とを有するライニング材であって、前記内層は、その厚さが前記ライニング材の厚さの5〜30%であり、前記外層は、微細な炭化タングステン粒子が密集してなる炭化タングステン塊が、その微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に島状に点在した組織を有している。
【0013】
上記ライニング材に係る発明において、炭化タングステン塊は、微細な炭化タングステン粒子を結合させた素材として供給される球状造粒粉に由来し、その球状造粒粉に近似した球形状を保ったものがなお存在するが、多くはその球形状が崩壊した形態を有するものであるのがよい。
【0014】
また、ニッケル基合金中に分散する微細な炭化タングステン粒子の平均自由行程は、3〜8μmであるのがよく、球状造粒粉は、平均粒径が1〜3μmの微細な炭化タングステン粒子を粒径30〜100μmの球形状に造粒してなるものがよい。そして、外層における炭化タングステンが占める面積率は、30〜50%であるのがよい。
【0015】
上記のライニング材をシリンダ内周面に有する成形機用シリンダは、ライニング材の内層を薄くすることができ、耐摩性に優れている。
【0016】
また、上記のライニング材は、質量%で、炭化タングステン:35〜55%、コバルト:5〜10%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、マンガン2%以下、鉄:5%以下、銅:2%以下、炭素:1%以下、残部ニッケルおよび不可避的不純物を含有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遠心鋳造法によって、ニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散してなる外層が厚く、分散した炭化タングステン粒子がほとんど存在せずほぼニッケル基合金からなる内層が薄いライニング材及びこれを有する成形機用シリンダを成形することができる。そして、本発明に係るライニング材は、表面硬度が高く、耐摩性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るライニング材の断面マクロ組織写真である。
【
図2】本発明に係るライニング材の外層部分のSEM写真である。
【
図3】
図2の炭化タングステン塊部分に白円板を重ねた図面である。
【
図4】実施例に係るライニング材(発明例)の外層部分のSEM写真である。
【
図5】実施例に係るライニング材(比較例)の外層部分のSEM写真である。
【
図6】実施例の砂摩耗試験結果を示すグラフである。
【
図7】実施例のすべり摩耗試験の結果を示すグラフである。
【
図8】実施例の抗折試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、遠心鋳造法によりシリンダ内周面に成形され、ニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散した外層と、ほぼニッケル基合金からなる内層とを有するライニング材に係る。すなわち、
図1のマクロ組織写真に示すように、ニッケル基合金中に炭化タングステン粒子が分散した層は比重が高いのでライニング材の外層を形成し、比重の低いほぼニッケル基合金からなる層はライニング材の内層を形成する。本発明において、この内層の厚さ(TS)は、ライニング材の厚さ(TS+TL)の5〜30%であり、20%以下にすることができる。
図1の例の内層は、ライニング材の厚さの19%である。そして、本発明において、外層は、微細な炭化タングステン粒子が密集してなる炭化タングステン塊が、その微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に島状に点在した組織を有している。
なお、上記のほぼニッケル基合金からなる内層とは、内層はニッケル基合金からなるものであるが、内層の一部に炭化タングステン粒子が観察されることを意味する。
【0020】
本発明に係るライニング材の外層部分の組織の例を
図2に示す。
図2は、外層部分の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、白く輝いて観察される部分は炭化タングステンを示す。
図2(a)は倍率が100倍のSEM写真である。
図2(b)は、
図2(a)の画面中心部分の500倍の倍率のSEM写真である。
図2(a)の画面中心部に観察される円形状の炭化タングステンは、外径が75μm程度で、1〜6μmの微細な炭化タングステンが密集して形成されている。このような円形状のものは、
図2(a)に示されるように、ほぼ同等の外径を有しているが、その数は少なく、円形状のものが崩壊した形態のものの方が多い。
【0021】
上記の1〜6μmの微細な炭化タングステンが密集して形成された円形状のもの又はその崩壊したものの周囲は、1〜6μmの微細な炭化タングステンが一面に均一に分散している。すなわち、微細な炭化タングステン粒子が密集してなる炭化タングステン塊が、その微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に島状に点在しているように観察される。このような組織を有するライニング材は、平均粒径が1〜3μmの微細な炭化タングステン粒子を粒径30〜100μmの球形状に造粒して成形した造粒粉とニッケル基合金粉を用いて公知の方法で遠心鋳造を行うことにより成形することができる。従って、上記の1〜6μmの微細な炭化タングステンが密集して形成された円形状のもの又はその崩壊したものは、素材として供給された球状造粒粉に由来するものである。そして、ニッケル基合金の海に散り敷かれた1〜6μmの微細な炭化タングステンは、上記球状造粒粉の崩壊により供給されたものであると解される。SEM写真で円形状に観察されるものは、三次元的に観察すると球形であると解される。
【0022】
上記1〜6μmの微細な炭化タングステンとして観察される微細粒子間の平均自由行程は3〜8μmである。また、外層を形成する炭化タングステンの面積率は、30〜50%である。
図3は、
図2(a)を利用して、円形状又は円形状が崩れているがなお球状造粒粉の一部であると認められる炭化タングステン塊に、外径60μmの白円板を重ねた図面である。画面中心部に円形状の炭化タングステン塊(A)が観察される。この炭化タングステン塊Aは、白円板(60μm)からはみ出す大きさ(75μm)を有している。炭化タングステン塊Bは、円形状が崩れて球状造粒粉の一部(1/4〜1/5)が残った形状をしている。炭化タングステン塊Cは、円形状が崩れているがなお球状造粒粉の多く(4/5〜5/6)が残った形状をしている。
図3の視野において、白円板部分の面積率は11%である。すなわち、外層を形成する炭化タングステンの面積率から判断して、球状造粒粉又はその一部であると認められる炭化タングステン塊は全体の炭化タングステン量の10〜40%であると解される。このような炭化タングステン塊によりライニング材の耐摩性が確保される。
【0023】
本発明に係るライニング材は、上述のように、外層が微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に炭化タングステン塊が点在する組織を有するので、内層の厚さを薄くすることができる。また、本発明に係るライニング材を有する成形機用シリンダを成形するためのボーリング又はホーニング加工の加工時間を短くすることができる。そして、ライニング材の摺動面が、微細な炭化タングステン粒子が散り敷かれたニッケル基合金の海に炭化タングステン塊が点在する組織になっているので、耐摩性に優れ、また、相手材の損傷を抑制することができる。
【0024】
本発明に係るライニング材は、以下の組成にすることができる。すなわち、質量%で、炭化タングステン:35〜55%、コバルト:5〜10%、モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、硼素:1〜3%、マンガン2%以下、鉄:5%以下、銅:2%以下、炭素:1%以下、残部ニッケルおよび不可避的不純物を含有するものとすることができる。
【0025】
ニッケルおよびコバルトは、上記炭化タングステン粒子を分散させるニッケルおよび/またはコバルト合金基地を形成する成分であり、合計質量で35〜50%とする。これにより、炭化タングステン粒子が均一に分散したニッケルおよび/またはコバルト合金基地を形成させることができる。ライニング材は、ニッケルのみの基地とすることができるが、耐食性、耐キャビテーション・エロージョン性を向上させるにはコバルトを添加したニッケル・コバルト合金基地とするのが好ましい。
【0026】
ライニング材の強度や硬度の向上を図るため、モリブデン、クロム、棚素が追加される。モリブデン:1%以下、クロム:10%以下、瑚素:1〜3%とすることができる。また、珪素、マンガン、鉄、炭素については、珪素:1〜3%、マンガン:2%以下、鉄:5%以下、炭素:1%以下とすることができる。なお、鉄は、耐食性を低下させるので5%以下とするのがよい。銅は耐食性を向上させるためライニング材に添加するのがよいが、その添加量は2%以下にするのがよい。
【実施例1】
【0027】
粒径が1〜3μmの微細な炭化タングステン粒子を粒径30〜100μmの球形状に造粒した造粒粉を用いて遠心鋳造により成形したライニング材(発明例)と、炭化タングステン粒子の平均粒径が8〜10μmの球状粉末を用いて遠心鋳造により成形したライニング材(比較例)の組織観察、摩耗試験及び強度試験を行った。上記発明例の造粒粉は、市販のCoを結合剤とする炭化タングステン造粒粉を用いた。比較例の球状粉末は、パラタングステン酸アンモニウムを還元、炭化して調製した。表1に、発明例のライニング材と比較例のライニング材の組成を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
組織観察は倍率100倍、200倍、500倍及び1000倍のSEM写真により行い、200倍のSEM写真を基に画像解析ソフトQuick Grain(株式会社イノテック)を利用して炭化タングステンの面積率及び平均自由行程の測定を行った。
図4に発明例の200倍のSEM写真を示す。
図5に比較例の500倍のSEM写真を示す。発明例の場合は、面積率43.8%、平均自由行程4.1μmであった。一方、比較例の場合は、面積率28.4%、平均自由行程14μmであった。なお、測定値は5点平均である。
【0030】
図5において、点在する粒子が炭化タングステンである。比較例のSEM写真によると、20μm以下の種々の大きさの炭化タングステンが均等に分散しており、発明例のように微細な炭化タングステンが密集した組織は見られない。
【0031】
摩耗試験は、ASTM G65に基づく砂摩耗試験と、大越式摩耗試験機によるすべり摩耗試験を行った。砂摩耗試験は、ホイール回転速度200rpm、荷重130N、試験時間10minであった。試験結果を試験片のロックウェル硬さ(HRC)と合わせて
図6に示す。すべり摩耗試験は、ライニング材を固定試験片とし、SKD11材を回転試験片とした。すべり速度2.34m/s、すべり距離200m、最終荷重185Nであった。試験結果を
図7に示す。
【0032】
図6に示すように、砂摩耗試験において発明例の摩耗体積は1.9mm
3であるのに対し、比較例の摩耗体積は6.6mm
3であり、発明例の摩耗体積は比較例の摩耗体積の30%以下になっている。また、発明例のロックウェル硬さはHRC65.1で、比較例のロックウェル硬さHRC60.7より高くなっている。
【0033】
図7に示すように、すべり摩耗試験において発明例のライニング材の摩耗体積は0.12 mm
3、比較例のライニング材の摩耗体積は0.13mm
3である。発明例の摩耗体積は、比較例の摩耗体積よりわずかに小さくなっている。一方、発明例のSKD11材の摩耗体積は0.54mm
3、比較例のSKD11材の摩耗体積は0.64mm
3である。すなわち、発明例のライニング材は、すべり摩耗試験において特に相手材への攻撃性が少ないという利点を有する。
【0034】
強度試験は、JIS R1601に準じた三点曲げ抗折試験により行った。発明例の曲げ強さは820MPa、比較例の曲げ強さは795MPaであった。発明例は、曲げ強度において比較例と同等以上の強度を有している。