(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体が床パンとともに設置面上に設置され、本体から床パン側に延設されたフランジ部と、該フランジ部と床パンとの間で支持されることにより本体と床パンとを水密に仕切るエプロン部とを備える浴槽であって、
前記エプロン部は、上側エプロンパーツと下側エプロンパーツとに分割されて成り、
前記上側エプロンパーツは、
入浴中の利用者が自らの手の平を前記フランジ部に宛がった状態でその手の指先が掛かる位置に設けられた凹部と、
前記フランジ部の裏側に差込まれ、前記凹部が連なる差込部と、
前記凹部に連なり、前記下側エプロンパーツの裏側に接触する接合部と、
前記凹部に連なり、前記接合部との間に前記下側エプロンパーツが嵌り込む隙間を形成する嵌合片とを備えて構成されることを特徴とする浴槽。
【背景技術】
【0002】
従来、介護用の浴槽として、入浴中の高齢者及び身体障害者などが入浴姿勢を保つため、手摺りが浴槽の内周側に取り付けられる浴槽が提案されている。
【0003】
しかし、浴槽の内周側に取り付けられた手摺りは、浴槽を跨ごうとする高齢者などの足を引っ掛けて転倒させるなど、利用者の安全性を損ねるとともに、浴槽の内部空間を狭めて入浴中の利用者の快適性を損ねる。
【0004】
そこで、近年、少なくとも、利用者が出入りする側について、手摺りが浴槽の外周側に後付けされるようにしてある浴槽(例えば、特許文献1)や、浴槽の外周側に面しているエプロン部に手掛け用の凹部を設けた浴槽(例えば、特許文献2)などが提案されている。その結果、近年、介護用の浴槽は、利用者の安全性及び快適性に配慮された設計がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案されている浴槽にあっては、後付けされた手摺りが突出しないように浴槽全体の形状を設計し直す必要があるため、開発費用が嵩む。また、手摺りを後付けすることが利用者にとって技能的に困難であるため、専門業者が代わりに取り付けることとなり取付費用が嵩む。更にまた、例えば、浴槽の側方に介護者が立つための介護スペースが設けられ、利用者が洗い場用床パン側からだけでなく介護スペース用床パン側から出入りすることができる場合、利用者がいずれか一つの方向から出入りする場合であっても、安全のために全ての方向に対して手摺りを複数取り付けるため、費用対効果が低くなる。
【0007】
また、特許文献2で提案されている浴槽は、上述した問題を有していない点で、特許文献1で提案されている浴槽より好適であるが、通常、手掛け用凹部を含むエプロン部とその他の部分とが同一色調で形成されているため、例えば、視力の衰えた高齢者などに対して、手掛け用凹部の位置を明確に視認させることができないという問題を有している。また、従来の浴槽は、繊維強化プラスチック(FRP)などの硬質材により形成され、そのエプロン部は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及び繊維強化プラスチック(FRP)などの硬質材により形成され、汚れに対する配慮から、その表面が鏡面仕上げとなっている。そのため、入浴中の利用者が手掛け用凹部に指先を引っ掛けようとしてその指先を滑らせ、転倒して負傷するおそれがある。
【0008】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、エプロン部に、入浴中の利用者が自らの手の平をフランジ部に宛がう状態でその手の指先が掛かる位置に設けられた凹部を設け、この凹部を、その表面の色調がこの凹部以外の部分についての表面の色調と異なるように形成するとともに、その表面に軟質材からなる表層を形成することにより、利用者の安全性及び快適性に配慮しつつ、視力の衰えた高齢者などに対して、手掛け用凹部の位置を明確に視認させて、入浴姿勢を確実に保持させることができる浴槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る浴槽は、本体が床パンとともに設置面上に設置され、本体から床パン側に延設されたフランジ部と、該フランジ部と床パンとの間で支持されることにより本体と床パンとを水密に仕切るエプロン部とを備える浴槽であって、前記エプロン部は、上側エプロンパーツと下側エプロンパーツとに分割されて成り、前記上側エプロンパー
ツは、入浴中の利用者が自らの手の平を前記フランジ部に宛が
った状態でその手の指先が掛かる位置に設けられた凹部
と、前記フランジ部の裏側に差込まれ、前記凹部が連なる差込部と、前記凹部に連なり、前記下側エプロンパーツの裏側に接触する接合部と、前記凹部に連なり、前記接合部との間に前記下側エプロンパーツが嵌り込む隙間を形成する嵌合片とを備え
て構成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る浴槽では、前記
接合部は、前記嵌合片より下
方に延びて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、入浴中の姿勢を補助する必要がある高齢者や身体障害者の安全性及び快適性を配慮しつつ、視力の衰えた高齢者などに対して、手掛け用凹部の位置を明確に視認させて、入浴姿勢を確実に保持させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る浴槽を、本実施の形態を示す図面に基づいて以下説明する。図面において、1は、浴槽であり、2は、浴槽パンであり、3は、洗い場用床パンであり、4は、介護スペース用床パンである。浴槽1と洗い場用床パン3と介護スペース用床パン4とは、設置面上に配置され、
図7に示すように、洗い場用床パン3が浴槽1の正面側に配置され、介護スペース用床パン4が浴槽2の側方に配置されている。
【0014】
浴槽パン2は、浴槽1の載置スペースを形成するパンであり、FRPなどで、平面視略長方形の板状となるように形成されている。
【0015】
洗い場用床パン3は、洗い場を形成する床パンであり、浴槽パン2と同一材料で、平面視略長方形の板状となるように形成されている。
【0016】
介護スペース用床パン4は、利用者を介護する介護者が立つための介護スペースを形成する床パンであり、上述する浴槽パン2及び洗い場用床パン3と同一材料で、平面視略長方形の板状となるように形成されている。
【0017】
浴槽1は、
図1〜
図3に示すように、浴槽本体10と、フランジ部11と、エプロン部12と、コーナピース部13とを備える。
【0018】
浴槽本体10は、FRPなどの硬質材で形成され、平面視略長方形の底部と、底部から上拡がりのテーパ状に立ち上がる周壁とを備える。また、浴槽本体10は、
図3に示すように、浴槽パン2に載置されることにより、設置面上に支持されている。
【0019】
フランジ部11は、浴槽本体10と同一材料及び同一色調で形成されている。ここで「色調」とは、色の明度と彩度とに分類することができる色の系統を意味する。また、フランジ部11は、
図3に示すように、浴槽本体10の周壁の上端部から床パン側に延び出た鍔部110と、鍔部110の外周縁から垂れ下がる垂下片111と、浴槽本体10と鍔部110と垂下片111との間に空間を形成する溝部112と、溝部112の溝底から突き出た複数のリブ113とを備える。また、フランジ部11は、利用者が浴槽1を跨ごうとするか又は浴槽1近傍のシャワー(図示せず)を利用するかのときにフランジ部11に腰掛けることができるよう、床パンから450mm程度の高さ位置に形成されていることが好ましい。
【0020】
エプロン部12は、フランジ部11と床パンとの間に取り付けられた支持柱(図示せず)に支えられ、浴槽本体10と床パンとの間を水密に仕切る部材である。また、エプロン部1は、ABS樹脂、HIPS及びFRPなどの硬質材で、側面視略長方形となるように形成されている。また、エプロン部12は、
図3に示すように、上下方向に分割した上側エプロンパーツ120と下側エプロンパーツ121とからなる。エプロン部12は、利用者の荷重がフランジ部11を介して伝わることにより撓むことがないよう、上端部とリブ113との間、及び、下端部と床パンとの間に僅かな隙間が設けられており、荷重を逃がすような構造になっている。
【0021】
上側エプロンパーツ120は、
図4に示すように、上端側から順番に、フランジ部11の溝部112に差し込む差込部122と、差込部122に連なる手掛け用の凹部123と、下側エプロンパーツ121が接触する接合部124と、下側エプロンパーツ121が嵌まり込む嵌合片125とを備える。
【0022】
差込部122は、上側エプロンパーツ120の上端部から延び出て先端で断面視略レの字状に折り曲げられた形状を有し、レの字の広がり寸法がフランジ部11の溝部112の溝幅より僅かに広くなるように形成されている。差込部122は、断面視略レの字状に形成されていることにより、材料が抑えられ、重量及び製造費用が抑えられている。また、差込部122は、フランジ部11の溝部112に差し込まれたとき、フランジ部11のリブ113により正確な位置に案内され、レの字の広がりがフランジ部11の溝部112の溝壁に接触して差し込み状態を保持する。
【0023】
手掛け用の凹部123は、差込部122に連なり、差込部122がフランジ部11の溝部112に差し込まれた状態でフランジ部11の垂下片111の下端付近に浴槽本体10側に凹むように湾曲している。この位置は、入浴中の利用者が自らの手の平をフランジ部11に宛がう状態でその手の指先(親指以外の指先)が掛かる位置に相当する。また、凹部123は、垂下片111の下端から遠くなるに従い、その曲率が小さくなるように断面視略C字形に湾曲することにより、入浴中の利用者の指先が掛かりやすい形状になっている。
【0024】
また、凹部123は、その表面に、例えば、軟質の塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂などの、凹部123以外の部分より軟質な材料からなる表層126が形成されている。凹部123は、その表面に軟質材層が形成されることにより、利用者の指先を滑らせることなく確実に引っ掛かるような構造になっている。また、表層126に覆われた凹部123は、その他の硬質材で形成された部分とは異なる触感を有するので、入浴中の利用者に対して、死角になって視認することができない凹部123を手探りで確認させることができる構造になっている。
【0025】
接合部124は、凹部123に連なり、差込部122と断面方向から見て一直線上となるように形成されている。また、接合部124は、嵌合片125との間に僅かな隙間を形成し、この隙間に下側エプロンパーツ121が嵌まり込む構造になっている。
【0026】
上側エプロンパーツ120は、差込部122及び凹部123等が断面方向から見て二次元的に複雑な形状をしているため、これらの断面が押し出されるように形成されること(押出成型)が好ましい。また、それに伴い、凹部123の表面に材料の異なる表層126が貼り合わさって同時成型されるためには、共押出成型が好適である。上側エプロンパーツ120は、共押出成型されることにより、1〜1.5mm程度の軟質材からなる表層126とその残りの必要肉厚部が硬質材となる2層構造となるように同時成型されるので、表面に軟質層が形成されつつエプロン材としての強度品質が保たれる構造になっている。
【0027】
上側エプロンパーツ120(表層126を含む)は、浴槽本体10、フランジ部11及び下側エプロンパーツ121とは異なる色調で形成されている。上側エプロンパーツ120は、異なる色調の樹脂着色剤が混ぜられた硬質材と、同じく異なる色調を有する軟質材(表層126)とが共押出成型されることにより、浴槽本体10などとは異なる色調で形成されている。ここで上側エプロンパーツ120で採用される色調は、浴槽本体10、フランジ部11及び下側エプロンパーツ121の色調に対して、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した「CIE1976(L*a*b*)表色系」における明度差(L*値)が4以上となるように形成されることが好ましく、視力の衰えた高齢者などに対して凹部123の位置を明確に視認させる構成になっている。なお、上側エプロンパーツ120で採用される色調は、浴室内壁に設置された手摺りの色調と同一の色調となるように形成されることにより、浴室内における姿勢保持のため部材を同一の色調で統一するような構成であってもよい。
【0028】
下側エプロンパーツ121は、
図3に示すように、上端側から順番に、上側エプロンパーツ120との接合部127と、上側エプロンパーツ120が嵌まり込む嵌合片128と、蹴込み部129とを備える。
【0029】
接合部127は、下側エプロンパーツ121が上側エプロンパーツ120と嵌合した状態で、凹部123の表層126との間に1mm程度の幅を有するノッチを介して連なるように形成されている。ノッチが設けられることにより、下側エプロンパーツ121の色調と凹部123の色調とが異なる境界線を目立たなくする構成となっている。接合部127は、裏面側に設けられた嵌合片128との間に僅かな隙間を形成し、この隙間に上側エプロンパーツ120が嵌まり込むとともに、上側エプロンパーツ120の接合部124と接触する。下側エプロンパーツ121と上側エプロンパーツ120とは、嵌合した状態で接着剤により固定され、一枚のエプロン部12を構成する。
【0030】
蹴込み部129は、下側エプロンパーツ121の下端部がエプロン部12の表面より浴槽本体10側に凹むように設けられている。蹴込み部129は、その深さが300mm以上にすることが好ましく、エプロン部12の下端部に設けられることにより、浴槽1を跨ごうとする利用者の足のつま先をエプロン部12に接触させることなく、転倒させて利用者を負傷させることがない構造になっている。また、蹴込み部129には、切り代が設けられており、エプロン部12の高さ寸法を調整することができるような構造になっている。また、蹴込み部129は、凹部123とともに、エプロン部12を取り付ける際に作業者が手を掛けることができる作業用手掛け部として兼用される構造になっている。
【0031】
また、エプロン部12は、フランジ部11の溝部112と洗い場用床パン3との間で支持されて洗い場用床パン3との間を水密に仕切るエプロン部12と、フランジ部11の溝部112と介護スペース用床パン4との間で支持されて介護スペース用床パン4との間を水密に仕切るエプロン部12とからなる(
図7参照)。これらのエプロン部12は、複数方向を向いて取り付けられるため、押出成型されて切断された小口が外部に目に触れることがないように、連結用且つ隠蔽用の部材としてコーナピース部13が用いられる(
図2及び
図7参照)。
【0032】
コーナピース部13は、
図6に示すように、エプロン部12の断面方向から見た形状に沿って屈曲した形状を有する本体部130と、本体部130から所定の角度に開いた状態で2方向に突き出た複数の取付片131と、取付片131に形成された切り欠き132と、本体部130に刻まれた溝部133と、溝部133に嵌め込み可能なコーナ緩衝部134と、凹部緩衝部135とを備える。
【0033】
取付片131を含む本体部130は、ABS樹脂などで形成されている。また、コーナ緩衝部134及び凹部緩衝部135は、エラストマーなどの弾力性を有する材質で形成されている。コーナ緩衝部134は、下側エプロンパーツ121と同一の色調で形成されている。凹部緩衝部135は、上側エプロンパーツ120と同一の色調で形成されている。
【0034】
コーナピース部13は、支持柱に取り付けられた状態の洗い場側エプロン部12の端面と介護スペース側エプロン部12の端面とに本体部130が挟み込まれ、且つ、取付片131が各エプロン部12の裏面に接触するように取り付けられる。そして、取付片131の切り欠き132にボルト(図示せず)が嵌め込まれ、各エプロン部12の裏面に埋め込まれた袋ナット(アウトサートナット)にねじ込まれることにより、コーナピース部13と各エプロン部12とが固定される。そして、コーナピース部13は、本体部130の溝部133にコーナ緩衝部134及び凹部緩衝部135が嵌め込まれる。コーナピース部13は、外側に緩衝部が嵌め込まれることにより、浴槽1を跨ごうとする利用者の足や体が接触した際の衝撃を緩衝して、負傷させることがない構造になっている。また、コーナピース部13は、三次元的に複雑な形状をしているため、押出成型でなく射出成型で形成されることが好ましい。
【0035】
浴槽1は、
図7に示すように、フランジ部11の縁が直線ラインとなる意匠を有するため、既存の姿勢保持具5を取り付けるための位置の自由度を高くすることができる構造になっている。また、浴槽1は、後付けされた既存の姿勢保持具5をエプロン部12で支えることとなるが、上側エプロンパーツ120と下側エプロンパーツ121とを貼り合わせるようにしてあることにより、製造費用を抑えつつ、偏肉不良することなく厚肉化することができる構造になっている。
【0036】
(実施例1)
以下実施例に従って説明する。実施例1に係る浴槽1は、上述する実施の形態において説明するように、上側エプロンパーツ120と、下側エプロンパーツ121と、コーナビース部13とが組み付けられることにより、フランジ部11の垂下片111の直下近傍が凹んで手掛け用の凹部123が形成されるので、入浴中の利用者がフランジ部11に手の平を宛がう状態で、その手の指先が凹部123に掛かる構造となっている。また、浴槽1は、凹部123のみの色調がその他部材の色調と異なるので、利用者の視認性を高める構造となっている。また、浴槽1は、凹部123の表面に軟質材層が形成されているので、利用者の指先が滑ることなく確実に引っ掛かり、入浴中の利用者が死角の位置にある凹部123を手探りで確認することができる構造となっている。
【0037】
そこで、このような構造を有する実施例1を、上述する特許文献1で提案されている浴槽を「比較例1」とし、特許文献2で提案されている浴槽を「比較例2」として比較検討する。
【0038】
利用者に対する安全性について、実施例1に係る浴槽1及び比較例2に係る浴槽は、良好を示す「○」であるのに対して、比較例1に係る浴槽は、後付けされた手摺りが邪魔をして既存の姿勢保持具5を取り付けることができない点で、不良を示す「×」である。
【0039】
また、利用者に対する視認性について、実施例1に係る浴槽1は、良好を示す「○」であり、比較例1に係る浴槽は、手摺りの形状に基づいて視認することができるので良好を示す「○」であるのに対し、比較例2に係る浴槽は、凹部とその他の部材が同一の色調であって視認しがたいため、不良を示す「×」である。
【0040】
また、製造費用及び取付費用について、実施例1に係る浴槽1は、エプロン部12が分割しているなどにより部品点数がやや増えて製造費用が嵩むため「△」であるのに対し、比較例1に係る浴槽は、手摺りを後付けする費用などが嵩むため、不良を示す「×」である。また、比較例2を示す浴槽は、エプロン部に凹部を設けるのみであるから製造費用及び取付費用が嵩むことがなく、良好を示す「○」となる。
【0041】
なお、上述した実施の形態においては、色調の異なる上側エプロンパーツ120と下側エプロンパーツ121とを個別に成型し、後で嵌め合わせてエプロン部12とする一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、上側エプロンパーツ120、下側エプロンパーツ121及び表層126を共押出成型で一体的に成型するようにしてもよい。