(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6230175
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】液体化粧料塗布容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
A45D34/04 515Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-81496(P2017-81496)
(22)【出願日】2017年4月17日
【審査請求日】2017年4月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501449702
【氏名又は名称】戎屋化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000114
【氏名又は名称】株式会社伊勢半
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井戸家 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】永留 和彦
(72)【発明者】
【氏名】辻井 宣博
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕美
(72)【発明者】
【氏名】西巻 仁史
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭61−014332(JP,Y2)
【文献】
実公昭63−022981(JP,Y2)
【文献】
実公平02−023202(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体化粧料を収容する内筒が外筒の内部に挿入され、該内筒を外筒に対して回動することにより、外筒及び内筒に設けられたねじ機構によって外筒の軸方向に移動可能とし、外筒の口部に設けるキャップに、内筒に挿脱される塗布体を備えた塗布具を設け、内筒の開口端に扱き部材を設け、外筒の口部の内部に、内筒を外筒の軸方向に移動させることによって扱き部材に対する当接状態を変化させて扱き部材の開口度を可変にする当接部材を形成した液体化粧料塗布容器において、前記扱き部材の扱き量が最小の無負荷状態のときに、扱き部材が、上に凸の曲面で、開口部の近傍が平面となる椀型形状をしてなるように形成して、環状扱き片の開口部が平面状となるようにし、かつ、該扱き部材の開口部が内筒の開口端より外方に位置するように、内筒の開口端に対する扱き部材の取付部から環状扱き片を延設して形成し、該環状扱き片の外面に、外筒に形成した当接部材が当接するようにし、該当接部材が当接することによって、環状扱き片の先端側が内筒の内側に押し込まれる方向に変形するようにしてなることを特徴とする液体化粧料塗布容器。
【請求項2】
前記扱き部材の環状扱き片による塗布具の軸部に対するシール状態が常に維持されることによって、外筒の口部とキャップとの間をシールするパッキンを設けない構造としたことを特徴とする請求項1に記載の液体化粧料塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、リップグロス等の液状化粧料を塗布する塗布具を備えた液状化粧料塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、リップグロス等の液状化粧料を塗布する塗布具を備えた液状化粧料塗布容器として、軸体の一端にブラシ、刷毛等の塗布体を備えた塗布具と、液状化粧料を収容した容器本体からなり、塗布体を容器本体に挿入可能とするとともに、塗布具が容器本体の開口部に着脱自在となるキャップを兼ねるようにした液状化粧料塗布容器が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0003】
このうち、特許文献1に開示されたものは、液状化粧料を収容する内筒の先端に、中心に扱き孔を空けた合成ゴム等の弾性材料からなる扱き部材を設け、この内筒を内蔵する容器本体に前記扱き部材の外面と当接可能な張り出し部材を備え、さらにこの容器本体の下端に回転自在に組み込まれた尾栓を有するものである。そして、尾栓を回転することにより内筒と尾栓の間に設けたねじ機構、及び内筒と容器本体との間に設けた長手方向のガイド溝機構等を介して内筒を非回転状態で長手方向に移動(変位)させるようにしている。これにより、内筒の長手方向の移動に伴って容器本体に設けた張り出し部材が扱き部材に当接して、扱き部材の扱き孔を強制的に拡げることにより、扱き孔の孔径を自由に連続的に変化させて刷毛の扱き量を調節することができるようにしている。また、尾栓と容器本体との間に目盛りを形成し、この目盛りを合わせることにより回転角度を調節して扱き孔の孔径の目安としている。
【0004】
また、特許文献2〜3に開示されたものは、内筒を外筒に対して回動し上昇させると、裏当て部材の扱き部材に対する食い込み量が徐々に大きくなり、扱き筒部が弾性変形して、その絞り径が徐々に拡径する。これとは逆に、内筒を外筒に対して回動し下降させると、裏当て部材の扱き部材に対する食い込み量が徐々に小さくなり、扱き筒部が弾性的に復元してその絞り径が徐々に縮径する。このように、扱き部材の絞り径を可変することにより、扱き強さを可変にできるようにしている。
【0005】
また、特許文献4に開示されたものは、開度調節リングを上下動させ、扱き部材の開口度を調節し、扱き量を調節することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平3−21691号公報
【特許文献2】特許第3390980号公報
【特許文献3】特許第3394314号公報
【特許文献4】特許第3410014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、リップグロス等の液状化粧料を塗布する塗布具を備えた液状化粧料塗布容器に用いられる容器本体は、一般的に、小さな開口部を備えた細長い容器からなり、その開口部を通してキャップの軸の端部に備えたブラシや刷毛等の塗布部に付着した化粧料を扱きつつ適量を取り出し使用するようにされている。
そして、上記従来の扱き部材の開口度調節機構では、扱き部材に連なる内筒を容器内で軸方向に移動させることにより、漏斗状に形成された扱き部材に対してその凹部空間に入り込むように配置された裏当て部材の当接状態を変化させて、扱き部材の開口度を調節できる構造が採用されている。
しかしながら、このような構造の扱き部材の開口度調節機構を採用した液状化粧料容器は、小さな開口部を備えた細長い容器内で扱き部材と裏当て部材とが重なり合う複雑な内部構造となることと相俟って、キャップを締める際や取り外す際に首部にかかる回動力により、扱き部材と裏当て部材とが狭い場所できつく重なり合って扱き部材の開口度が意図しない開口度に変わってしまったり、裏当て部材で扱き部材を捻って保管されることにより扱き部材に変形癖が付いてしまうことで開口度を変更しても扱き部材の戻りが遅く塗布量が大きくずれてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の液体化粧料塗布容器の有する問題点に鑑み、内部構造が簡易となる扱き部材及び裏当て部材の配置にすることにより、扱き部材の開口度(扱き量)を安定して調節、維持することができるようにした液体化粧料塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の液体化粧料塗布容器は、液体化粧料を収容する内筒が外筒の内部に挿入され、該内筒を外筒に対して回動することにより、外筒及び内筒に設けられたねじ機構によって外筒の軸方向に移動可能とし、外筒の口部に設けるキャップに、内筒に挿脱される塗布体を備えた塗布具を設け、内筒の開口端に扱き部材を設け、外筒の口部の内部に、内筒を外筒の軸方向に移動させることによって扱き部材に対する当接状態を変化させて扱き部材の開口度(扱き量)を可変にする当接部材を形成した液体化粧料塗布容器において、
前記扱き部材の扱き量が最小の
無負荷状態のときに、
扱き部材が、上に凸の曲面で、開口部の近傍が平面となる椀型形状をしてなるように形成して、環状扱き片の開口部が平面状となるようにし、かつ、該扱き部材の開口部が内筒の開口端より外方に位置するように、内筒の開口端に対する扱き部材の取付部から環状扱き片を延設して形成し、該環状扱き片の外面に、外筒に形成した当接部材が当接するようにし
、該当接部材が当接することによって、環状扱き片の先端側が内筒の内側に押し込まれる方向に変形するようにしてなることを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記扱き部材の環状扱き片による塗布具の軸部に対するシール状態が常に維持されることによって、外筒の口部とキャップとの間をシールするパッキンを設けない構造とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体化粧料塗布容器によれば
、内部構造が簡易となり、扱き部材の開口度(扱き量)を安定して調節、維持することができる。
【0013】
そして、前記扱き部材の環状扱き片が、椀型形状をしてなるようにすることにより、扱き部材の扱き量が最小のときに、環状扱き片の開口部が平面状となり、扱き部材の環状扱き片による塗布具の軸部に対するシール状態を確実に維持することができる。
【0014】
また、前記扱き部材の環状扱き片による塗布具の軸部に対するシール状態が常に維持されることによって、外筒の口部とキャップとの間をシールするパッキンを設けない構造とすることにより、部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の液体化粧料塗布容器の一実施例を示し、(a)は正面断面図(左半図は扱き部材の扱き量が最小のときを、右半図は扱き部材の扱き量が最大のときを、それぞれ示す。)、(b)は扱き部材の正面断面図である。
【
図2】同液体化粧料塗布容器を示し、(a)は平面図、(b)は中立状態の正面図、(c)は底面図、(d)は扱き部材の扱き量が最小のときの正面図、(e)は扱き部材の扱き量が最大のときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の液体化粧料塗布容器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜
図2に、本発明の液体化粧料塗布容器の一実施例を示す。
この液体化粧料塗布容器は、液体化粧料を収容する内筒2が外筒1の内部に挿入され、内筒2を外筒1に対して回動することにより、外筒1及び内筒2に設けられたねじ機構11、21によって、外筒1の軸方向に移動可能とし、外筒1の口部12に設けるキャップ3に、内筒2に挿脱される塗布体41を備えた塗布具4を設け、内筒2の開口端22に扱き部材5を設け、外筒1の口部12の内部に、内筒2を外筒1の軸方向に移動させることによって扱き部材5に対する当接状態を変化させて扱き部材5の開口度(扱き量)を可変にする当接部材13を形成するようにしている。
そして、この液体化粧料塗布容器は、少なくとも扱き部材5の扱き量が最小のときに(本実施例においては、扱き部材5の扱き量が最大のときを含めて)、扱き部材5の開口部52が内筒2の開口端22より外方に位置するように、内筒2の開口端22に対する扱き部材5の取付部53から環状扱き片51を延設して形成し、この環状扱き片51の外面に、外筒1に形成した当接部材13が当接するようにしている。
【0018】
扱き部材5は、従来と同様、合成ゴム等の弾性材料から構成されるようにする。
そして、
図1(b)に示すように、扱き部材5の環状扱き片51が、無負荷状態で、椀型形状、すなわち、上に凸の曲面で、開口部の近傍が平面となる形状をしてなるように形成し、この状態のときに、環状扱き片51の開口部52が平面状となり、扱き部材5の環状扱き片51による塗布具4の軸部42に対するシール状態を確実に維持することができるようにしている。
【0019】
外筒1の口部12とキャップ3とは、外筒1の口部12及びキャップ3に設けられたねじ機構14、31によって、締着できるようにするとともに、外筒1の口部12とキャップ3との間をシールするパッキン6を設けるようにしている。
ところで、本実施例の液体化粧料塗布容器においては、扱き部材5の環状扱き片51による塗布具4の軸部42に対するシール状態が常に維持されることから、外筒1の口部12とキャップ3との間をシールするパッキン6を設けない構造とすることができる。
これにより、部品点数を少なくすることができる。
なお、外筒1の口部12とキャップ3との間をシールするパッキン6を設ける場合は、扱き部材5の環状扱き片51による塗布具4の軸部42に対するシール状態が常に維持される必要はないため、例えば、扱き部材5の開口度の最大値が、塗布具4の軸部42の直径より大きくなるように設定することもできる。
【0020】
内筒2を外筒1に対して回動するために、内筒2の底部に、操作部7を取り付けるようにしている。
そして、
図2に示すように、中立状態(±0)を挟んで操作部7を回動操作することにより、扱き部材5の扱き量が最小の状態(
図1(a)の左半図及び
図2(d))と、扱き部材5の扱き量が最大の状態(
図1(a)の右半図及び
図2(e))との間の任意の位置に操作部7を位置させることによって、扱き部材5の開口度(扱き量)を調節し、扱き量を調節することができるようにしている。
【0021】
すなわち、内筒2が外筒1に対して軸方向に後退した状態(
図1(a)の左半図及び
図2(d))では、扱き部材5の環状扱き片51の外面に、外筒1に形成した当接部材13が軽く当接するだけのため、扱き部材5の扱き量が最小となる。
一方、内筒2が外筒1に対して軸方向に前進した状態(
図1(b)の右半図及び
図2(e))では、扱き部材5の環状扱き片51の外面に、外筒1に形成した当接部材13が強く当接し、環状扱き片51が内筒2の内側に押し込まれるように変形するため、扱き部材5の扱き量が最大となる。
ここで、扱き部材5の環状扱き片51に対する塗布具4の軸部42の摺動抵抗が大きい場合は、キャップ3を持って塗布具4の塗布体41を内筒2の内部から引き出すようにすると、
図1の仮想線で示すように、扱き部材5の環状扱き片51が、塗布具4の軸部42に引きずられて反転するが、塗布体41が通過すると、外筒1に形成した当接部材13の作用で、元の状態に復帰する。
【0022】
このように、本実施例の液体化粧料塗布容器においては、扱き部材5の椀型形状、すなわち、上に凸の曲面で、開口部の近傍が平面となる形状をしてなるように形成した環状扱き片51の外面に、外筒1に形成した当接部材13が環状に当接するようにしているので、内部構造が簡易となり、操作部7を回動操作することにより内筒2を外筒1に対して回動しても、扱き部材5に捻り力等の負荷がかからないため、扱き部材5の開口度(扱き量)を安定して調節、維持することができる。
【0023】
以上、本発明の液体化粧料塗布容器について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の液体化粧料塗布容器は、内部構造が簡易となる扱き部材及び裏当て部材の配置にすることにより、扱き部材の開口度(扱き量)を安定して調節、維持することができるという特性を有していることから、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、リップグロス等の液状化粧料を塗布する塗布具を備えた液状化粧料塗布容器の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 外筒
11 ねじ機構
12 口部
13 当接部材
14 ねじ機構
2 内筒
21 ねじ機構
22 開口端
3 キャップ
31 ねじ機構
4 塗布具
41 塗布体
42 軸部
5 扱き部材
51 環状扱き片
52 開口部
53 取付部
6 パッキン
7 操作部
【要約】
【課題】内部構造が簡易となる扱き部材及び裏当て部材の配置にすることにより、扱き部材の開口度を安定して調節、維持することができるようにした液体化粧料塗布容器を提供すること。
【解決手段】少なくとも扱き部材5の扱き量が最小のときに、扱き部材5の開口部52が内筒2の開口端22より外方に位置するように、内筒2の開口端22に対する扱き部材5の取付部53から環状扱き片51を延設して形成し、この環状扱き片51の外面に、外筒1に形成した当接部材13が当接するようにする。
【選択図】
図1