(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低温タンクが保冷層を有していることから、低温タンク内を昇温するには多くの熱量が必要であり、このことから作業員が入れる環境を作るためには多量の窒素ガスと外気を低温タンク内に供給する必要がある。窒素ガスの供給によりある温度まで昇温させた後に外気を供給するが、外気には季節や地域にもよるが一般的に多くの水分が含まれており、また水分の他にも様々な成分が含まれている。このような水分を多く含む外気を短時間に大量にタンク内に供給すると、外気がある温度及び湿度状態においては、低温タンク内で冷却されることによって外気に含まれる水分が凝縮し、低温タンクの内壁面に結露が生じる。ここで、外気中に窒素酸化物や硫黄酸化物が含まれていると、これらの成分が結露によって生じた水に溶込み硝酸や硫酸が発生するおそれがある。またLNGの残渣物にも窒素酸化物や硫黄酸化物が含まれている可能性があり、これらの成分が結露によって生じた水に溶込み硝酸や硫酸が発生するおそれがある。このような硝酸や硫酸によって低温タンクを構成する金属材料が腐食すると、腐食箇所の補修を行う必要が生じ、メンテナンスの作業量が増加しメンテナンス期間を長期化させることになる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、低温タンクを開放するときに、低温タンク内において硝酸や硫酸等の腐食成分が発生することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、低温タンクの開放方法であって、上記低温タンク内の残液を排出する残液処理工程と、上記残液処理後に上記低温タンク内に不活性ガスを供給することにより上記低温タンク内の燃焼性ガスをパージする燃焼性ガスパージ工程と、上記低温タンクの内壁面の温度が外気の導入により結露が生じる温度かの判定を行う結露判定工程と、上記結露判定工程において結露が生じるとの判定であるときに、上記低温タンク内に不活性ガスを供給して上記低温タンク内を昇温すると共に続いて再び上記結露判定工程に移行する不活性ガス昇温工程と、上記結露判定工程において結露が生じないとの判定であるときに、上記低温タンク内に外気を供給して上記低温タンク内を昇温する外気昇温工程とを有するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記結露判定工程において、上記外気の温度と、上記外気の湿度と、上記内壁面の温度と、結露の有無との関係を示す湿り線図に基づいて上記結露が生じる温度かの判定を行うという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記結露判定工程において結露が生じるとの判定であるときに、外気の汚染物質濃度が基準値以下であるかの判定を行い、上記汚染物質濃度が基準値より高いときに上記不活性ガス昇温工程に移行し、上記汚染物質濃度が基準値以下であるときに上記外気昇温工程に移行する汚染濃度判定工程を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃焼性ガスが窒素ガス等で低温タンク内から排出されると、低温タンクの内壁面に結露が生じるかの判定を行い、結露が生じると判断された場合には、外気ではなく不活性ガスを低温タンクに供給することで低温タンクを昇温する。このため、内壁面に結露が生じることを防止することができる。また、本発明によれば、不活性ガスによる昇温を行いつつ、再度低温タンクの内壁面に結露が生じるかの判定を行う。このため、低温タンクの内壁面に結露が生じないと判定されたときには、外気を低温タンクに供給することで低温タンクを昇温する。よって、低温タンクの昇温に用いられる不活性ガスの量を最小限に抑えることができ、低温タンクを開放するためのコストを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る低温タンクの開放方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の低温タンクの開放方法(タンク1の開放作業)を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態の低温タンクの開放方法によって開放される低温タンクは、後述する
図2及び
図3に示すタンク1であり、例えばLNG等の液化ガスXを貯蔵するLNGタンクである。このタンク1は、
図2及び
図3においては模式的に示されているが、例えば、9%ニッケル鋼やアルミニウム合金からなる内槽と、炭素鋼からなる外槽と、内槽と外槽との間に充填される保冷材からなる保冷層とを備える金属製二重殻タンクである。
【0014】
また、
図2及び
図3に示すようにタンク1には、各種センサ(温度計、液面計、圧力計)を備える監視制御部4が併設されており、この監視制御部4を用いてタンク1の開放工程が管理される。
【0015】
図1に示すように、タンク1を開放するときには、まず液抜き(ステップS1)を行う。
図2(a)に示すように、タンク1には、通常、液化ガスXが貯蔵されており、この液化ガスXを外部からの指示に基づいてタンク1から払い出す払出ポンプ2が接続されている(
図2参照)。液抜き(ステップS1)では、この払出ポンプ2を用いて、タンク1に貯蔵された液化ガスXの大部分をタンク1の外部に排出する。
【0016】
また、タンク1の天井部には、タンク1内で気化したガス(ボイルオフガス)を排出するためのボイルオフガス排出ライン3が接続されている。液抜き(ステップS1)を行うときには、タンク1内で発生したボイルオフガスは、ボイルオフガス排出ライン3からタンク1の外部に排出され、ボイルオフガスを圧縮するコンプレッサ等を備えるボイルオフガス処理部(不図示)に供給される。
【0017】
続いて、払出ポンプ2で排出しきれないタンク1の底部に溜った液化ガスXをタンク1の外部に排出する残液処理(ステップS2)を行う。ここでは、
図2(b)に示すように、タンク1の底部に対して仮設ポンプ5を接続し、仮設ポンプ5等を窒素ガスでパージした後、仮設ポンプ5を稼働させることによってタンク1の底部に溜った液化ガスXをタンク1の外部に排出する。また、仮設ポンプ5によってタンク1から排出された液化ガスXは、上述の払出ポンプ2から払い出される液化ガスXを輸送する配管に供給される。この残液処理(ステップS2)は、本発明において、低温タンク内の残液を排出する残液処理工程に相当する。なお、残液処理(ステップS2)の後に、必要に応じて、タンク1に残存する液化ガスXをタンク1への自然入熱によって気化させる。なお、仮設ポンプ5を用いずに残液処理することも可能である。この場合には、払出ポンプ2によって出来る限りの液化ガスXを排出し、その後は自然入熱または加熱された窒素ガスの供給による入熱によって、残液を処理する。
【0018】
残液処理(ステップS2)によりタンク1内の内部から液化ガスXが全て排出されると、続いて、
図1に示すように、燃焼性ガス排気及びホットアップ(ステップS3)が行われる。ここでは、
図3(a)に示すように、液体窒素を貯蔵するタンクローリ車Tから供給される液体窒素を気化器6によって気化させ、これによって発生した窒素ガスY(不活性ガス)をタンク1の底部または側部からタンク1の内部に供給する。なお、窒素ガスYは、タンクローリ車T以外から供給しても良い(例えば、基地内の窒素タンク等)。
【0019】
このように窒素ガスYがタンク1に供給されると、タンク1内に残存する燃焼性ガスM(例えばメタンガス)が当該燃焼性ガスMよりも重い窒素ガスYによってタンク1内部の上部に押し上げられ、燃焼性ガスMがボイルオフガス排出ライン3からタンク1の外部に排出される(パージされる)。なお、タンク1の外部に排出される燃焼性ガスMの濃度が高い場合には燃焼性ガスMはボイルオフガス排出ライン3から排出されるが、燃焼性ガスの濃度が低い場合(例えばメタンガスの場合は5%以下)には燃焼性ガスMは放散管7を介して大気放散される。
【0020】
また、気化器6からタンク1に供給される窒素ガスYは、気化器6において液体窒素が温水等で温められることによって生成される。このため、液体窒素を暖める温水の温度を調整することによって、窒素ガスYの温度を調整することができる。このような窒素ガスYは、タンク1内の温度を昇温させる温度に調整されてタンク1内に供給される。これによって、タンク1内が昇温(ホットアップ)される。
【0021】
この燃焼性ガス排気及びホットアップ(ステップS3)は、本発明において、残液処理後に低温タンク内に不活性ガスを供給することにより低温タンク内の燃焼性ガスをパージする燃焼性ガスパージ工程に相当する。
【0022】
燃焼性ガス排気及びホットアップ(ステップS3)によりタンク1内の燃焼性ガスMが爆発下限界以下の濃度となるまで排出されると、続いて、
図1に示すように、外気導入により結露が生じる温度であるかの判定を行う(ステップS4)。ここでは、監視制御部4が、タンク1に設置された温度計からタンク1の内壁面の温度を取得し、タンク1の外部に設置された温湿度計から外気の温度及び湿度を取得し、これらの内壁面の温度と外気の温度及び湿度とを予め記憶する湿り線図に当てはめることにより、外気がタンク1の内壁面に触れたときに水分が凝縮して結露が生じる内壁面の温度であるかの判定を行う。なお、湿り線図は、外気の温度と、外気の湿度と、内壁面の温度と、結露の有無との関係を示している。
【0023】
この外気導入により結露が生じる温度であるかの判定を行う工程(ステップS4)は、本発明において、低温タンクの内壁面の温度が外気の導入により結露が生じる温度かの判定を行う結露判定工程に相当する。
【0024】
ステップS4において、内壁面の温度が外気導入によって結露が生じる温度と判定されたときには、
図1に示すように、引き続いてタンク1内に窒素ガスYを供給する(ステップS5)。窒素ガスYは、水分を含んでいないと捉えることができる。このため、タンク1内に窒素ガスYが供給されることによって、タンク1の内壁面に結露が生じることなくタンク1内が昇温される。なお、一定時間の経過あるいは一定量の窒素ガスYの供給が完了すると、再び、外気導入により結露が生じる温度であるかの判定を行う工程(ステップS4)を行う。
【0025】
この窒素ガスYを供給する工程(ステップS5)は、本発明において、結露判定工程において結露が生じるとの判定であるときに、低温タンク内に不活性ガスを供給して低温タンク内を昇温すると共に続いて再び結露判定工程に移行する不活性ガス昇温工程に相当する。
【0026】
ステップS4において、内壁面の温度が外気導入によって結露が生じない温度と判定されたときには、
図1に示すように、タンク1に外気の導入を行う(ステップS6)。ここでは、
図3(b)に示すように、外気導入装置8をタンク1に接続し、この外気導入装置8からタンク1内に外気Zを供給する。この外気導入装置8は、外気Zを圧送する換気ファン8aと、タンク1に接続するためのエアロックチャンバ8bとを備えており、換気ファン8aで圧送する外気Zを、エアロックチャンバ8bを介してタンク1に供給する。なお、換気ファン8aはエアコンディショナでも良い。
【0027】
このような外気導入装置8によって供給される外気Zによってタンク1が昇温される。この外気Zは、大気であり、季節により水分量が変動するが、少なからず水分を含んでいる。このような外気Zは、タンク1の内壁面に触れることによって冷やされるものの、上述のように内壁面の温度が結露の生じない温度となっていることから、結露を生じさせることはない。なお、タンク1内に供給される外気Zが多量となることから、外気Zは上述の放散管7に加えて、タンク1の上部に設けられたノズル9からも大気放散される。
【0028】
このタンク1に外気の導入を行う(ステップS6)工程は、本発明において、結露判定工程において結露が生じないとの判定であるときに、低温タンク内に外気を供給して低温タンク内を昇温する外気昇温工程に相当する。
【0029】
外気Zのタンク1内への供給から一定時間が経過あるいは一定量の外気Zの供給が完了すると、タンク1内の温度及び酸素濃度が設定値となったかの判定を行う(ステップS7)。ここでは、放散管7やノズル9から排出される気体に含まれる酸素濃度を酸素濃度計から取得し、またタンク1内に設置された温度計からタンク1内の温度を取得し、これらの酸素濃度と温度とを設定値と比較することによって判定が行われる。なお、設定値は、タンク1内において作業者が作業可能な環境に必要な成分量に基づいて定められている。
【0030】
ステップS7において、タンク1内の温度及び酸素濃度が設定値となったと判定されたときには、タンク1内に作業員が入れる環境が形成されたとして本実施形態におけるタンク1の開放作業を終了する。
【0031】
一方、ステップS7において、タンク1内の温度及び酸素濃度が設定値となっていないと判定されたときには、再び、ステップS4に戻り、外気導入により結露が生じる温度であるかの判定を行う。つまり、本実施形態においては、タンク1内の温度及び酸素濃度が設定値となるまで、ステップS4とステップS6とを繰り返してタンク1内のモニタリングを続ける。このなかで、外気の温度変動や成分変動によって、結露が生じる環境となったときには、窒素ガスYの供給(ステップS5)に切り替える。
【0032】
以上のような本実施形態のタンク1の開放作業では、タンク1内の残液が排出され、残液処理後にタンク1内に窒素ガスYを供給することによりタンク1の燃焼性ガスMがパージされ、タンク1の内壁面の温度が外気Zの導入により結露が生じる温度かの判定が行われ、結露が生じるとの判定であるときに、タンク1内に窒素ガスYが供給されることでタンク1内が昇温され、結露が生じないとの判定であるときに、タンク1内に外気Zを供給してタンク1内が昇温される。
【0033】
このような本実施形態のタンク1の開放作業によれば、燃焼性ガスMがタンク1内から排出されると、タンク1の内壁面に結露が生じるかの判定を行い、結露が生じると判断された場合には、外気Zではなく窒素ガスYをタンク1内に供給することでタンク1を昇温する。このため、内壁面に結露が生じることを防止することができる。また、本実施形態のタンク1の開放作業によれば、窒素ガスYによる昇温を行いつつ、再度タンク1の内壁面に結露が生じるかの判定を行う。このため、タンク1の内壁面に結露が生じないと判定されたときには、外気Zをタンク1に供給することでタンク1を昇温する。よって、タンク1の昇温に用いられる窒素ガスYの量を最小限に抑えることができ、タンク1を開放するためのコストを抑えることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のタンク1の開放作業によれば、外気の温度と、外気の湿度と、内壁面の温度と、結露の有無との関係を示す湿り線図に基づいて結露が生じる温度かの判定を行う。このため、内壁面の温度が結露を生じる温度であるかを容易に判定することが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、液化ガスXの残渣物に水に溶けることによってタンク1を腐食させる物質が含まれていないことを前提とする。
図4は、本第2実施形態のタンク1の開放作業を説明するためのフローチャートである。この図に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態で説明した外気導入により結露が生じる温度であるかの判定(ステップS4)を行い、結露が生じるとの判定であるときに、外気Zの汚染物質濃度が基準値以下であるかの判定を行う(ステップS8)。
【0036】
図4のステップS8では、外気Z中の汚染物質である窒化酸化物や硫黄酸化物の濃度を、大気をサンプリングしてイオンクロマトグラフ法等で計測する。その計測値と基準値とを比較することによって判定が行われる。なお、基準値は、外気に含まれる窒化酸化物や硫黄酸化物が水に溶け込んだときに、タンク1を腐食させるような酸性度の高い硝酸や硫酸が生じさせないように定められた値であり、実験等に基づいて設定される。
【0037】
外気Zの汚染物質濃度が基準値よりも高いときには、上記第1実施形態で説明した窒素ガスYを供給する工程(ステップS5)に移行する。一方、外気Zの汚染物質濃度が基準値以下であるときには、上記第1実施形態で説明したタンク1に外気の導入を行う工程(ステップS6)に移行する。このようなときには、外気Zがタンク1の内壁面に触れることによって結露が生じるが、外気Z中の汚染物質の濃度が少ないことから、タンク1が腐食することはない。
【0038】
この外気Zの汚染物質濃度が基準値以下であるかの判定を行う(ステップS8)工程は、本発明において、外気の汚染物質濃度が基準値以下であるかの判定を行い、汚染物質濃度が基準値より高いときに不活性ガス昇温工程に移行し、汚染物質濃度が基準値以下であるときに外気昇温工程に移行する汚染濃度判定工程に相当する。
【0039】
このような本実施形態のタンク1の開放作業によれば、外気Zの導入により結露が生じる場合であっても、外気Z中の汚染物質の濃度が少ないときには、外気Zによってタンク1の昇温が行われる。このため、窒素ガスYの使用量をより低減させることができ、タンク1を開放するためのコストをより抑えることが可能となる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、LNGを貯蔵するタンク1の開放作業に本発明を適用した構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、LPG(Liquefied Petroleum Gas)を貯蔵するタンクの開放作業に適用することも可能である。このような場合には、本発明における燃焼性ガスは、プロパンガスやブタンガスとなる。
【0042】
また、上記実施形態においては、不活性ガスとして窒素ガスを用いる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の不活性ガスを用いても良い。