(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6230192
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
H04R25/00 Q
H04R25/00 P
H04R25/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-16508(P2014-16508)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-144337(P2015-144337A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】三宅 聡
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−507365(JP,A)
【文献】
実開平06−077382(JP,U)
【文献】
特表2012−520041(JP,A)
【文献】
特表2008−527867(JP,A)
【文献】
特開2013−150024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器本体(1)に、音声を音信号に変換する音声用のマイクロフォン(2)と、超音波を音信号に変換する超音波用のマイクロフォン(16)と、音声用のマイクロフォン(2)で変換された音声の音信号を増幅する増幅部(3)と、増幅部(3)で増幅された音信号を再生するイヤフォン(4)と、超音波用のマイクロフォン(16)で変換された超音波音信号を検知する超音波検知部(17)と、外部の通信機(13)と無線通信を行なう通信モジュール(14)と、電源用の電池(5)と、制御部(9)とが設けられており、
補聴器本体(1)の通信モジュール(14)と通信機(13)との間で無線通信を確立した状態において、通信機(13)から送信されて通信モジュール(14)が受信した情報信号に従って、制御部(9)が補聴器を構成する作動機器の作動状態を制御できるように構成されており、
通信機(13)のスピーカー(24)から補聴器本体(1)へ超音波が放射されて、超音波用のマイクロフォン(16)により変換された超音波音信号が超音波検知部(17)により検知されると、超音波検知部(17)の検知信号に基づき、制御部(9)がスリープ状態にあった通信モジュール(14)を作動させて、通信機(13)と通信モジュール(14)との間の電磁波を用いた無線通信が確立されるように構成されていることを特徴とする補聴器。
【請求項2】
補聴器本体(1)の通信モジュール(14)と通信機(13)との間で電磁波を用いた無線通信が確立された状態において、通信機(13)が受信した電話の音声信号を、通信機(13)から通信モジュール(14)へ伝送して増幅部(3)で増幅し、イヤフォン(4)で再生する請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
補聴器本体(1)に、増幅部(3)の信号増幅度を調整するボリューム部(19)と、電池(5)の給電状態をオン・オフする電源スイッチ部(18)とが設けられており、
予め通信機(13)に格納しておいた補聴器管理プログラムを起動し、補聴器本体(1)の通信モジュール(14)と通信機(13)との間で無線通信を確立した状態において、通信機(13)から通信モジュール(14)へ送信された補聴器管理プログラムに基づく要求指令に従って、制御部(9)でボリューム部(19)と電源スイッチ部(18)の作動状態を制御することができる請求項2に記載の補聴器。
【請求項4】
補聴器と通信機(13)とがNFC方式の通信方式で無線通信を確立している請求項1から3のいずれかひとつに記載の補聴器。
【請求項5】
補聴器と通信機(13)とがIEEE 802規格の通信方式で無線通信を確立している請求項1から3のいずれかひとつに記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補聴器に関し、携帯電話機やスマートフォンに代表される通信機で受信した音声信号を補聴器へ伝送して、補聴器のスピーカーで再生でき、あるいは、必要に応じて補聴器の作動状態などを通信機の側で制御できるようにした補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器における電池交換の手間とコストを省くために、駆動電源として2次電池を使用し、さらに、2次電池を非接触で充電することが特許文献1に公知である。そこでは、バッテリーケースの内部にコイン型の2次電池と、充電回路を構成する回路基板と、受電コイル(2次コイル)などを収容して電源ユニットを構成している。電源ユニットは、補聴器本体に設けた円形の凹部に収容してあり、補聴器本体に装着した状態のままで2次電池を充電装置で非接触充電することができる。
【0003】
本発明においては、スマートフォンなどの通信端末と補聴器との間で通信を確立して、スマートフォンで受信した音声信号を補聴器へ伝送し、補聴器の増幅部を介してイヤフォン(スピーカー)で音声に再生するが、このようにスマートフォンなどの通信機で受信した声信号を補聴器へ伝送することは、特許文献2に公知である。そこでは、携帯型電話機に信号中継用の補助装置をモジュラージャックを介して接続し、携帯型電話機で受信した音声信号をモジュラージャックを介して補助装置へ伝送し、さらに補助装置から補聴器へ音声信号を無線により伝送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−191448号公報(段落番号0055、
図6)
【特許文献2】特開平10−285696号公報(段落番号0074〜0077、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の補聴装置によれば、携帯型電話機で受信した音声信号を補助装置で補聴器へ伝送して、補聴器のイヤフォンで音声に再生するので、携帯型電話機で再生された音声を補聴器のマイクロフォンで取込んでイヤフォンで再生する場合に比べて、音声をよりクリアにできる利点がある。しかし、補助装置を常に携帯型電話機に接続しておく必要があるため、かさばりやすく携行しにくい不便がある。また、携帯型電話機にかかってきた電話を常に確実に受信するには、補聴器に設けた通信モジュールを作動させて、補助装置と補聴器との間の無線通信を確立し続ける必要がある。そのため、補聴器における電池の消耗が激しく、携帯型電話機を利用した電話通信を長時間にわたって連続して行なうことはできない。とくに、現状における2次電池のエネルギー密度は、補聴器用の電源として多用されている空気亜鉛電池のエネルギー密度に比べて低いため、頻繁に充電を行なう必要があり、この点でも実用性に欠ける。
【0006】
例えば、補聴器に通信モジュール用の起動スイッチを設けておき、携帯型電話機に電話が掛かってきた場合に限って、起動スイッチをオン操作して通信モジュールを作動させ、補助装置と補聴器との間の無線通信を確立すると、補聴器の電池の消耗をある程度は減少することができる。しかし、先のスイッチを切換えるには補聴器を耳から外し、スイッチを切換えたのち再び耳に装着しなければならないため、一連の操作に手間が掛かるうえ、ユーザーが高齢者や子供である場合に適切に対応しにくい。
【0007】
本発明の目的は、通信機から発せられた起動用の信号を補聴器に設けたマイクロフォンで取込んで補聴器の通信モジュールを起動し、必要時に限って通信機と補聴器との間で通信を確立することにより、電源用電池の消耗を大幅に軽減できる補聴器を提供することにある。
本発明の目的は、通信機と補聴器との間で通信を行なうことにより、通信機で受信した電話の音声信号を補聴器に伝送してイヤフォンで再生でき、あるいは補聴器の電源のオン・オフや、音声信号の増幅度の調整などの制御を、通信機の側で管理し調整できる補聴器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る補聴器は、
図1および
図2に示すように、補聴器本体1に、音声
を音信号に変換する
音声用のマイクロフォン
2と、
超音波を音信号に変換する超音波用のマイクロフォン16と、音声用のマイクロフォン2で変換された音声の音信号を増幅する増幅部3と、増幅部3で増幅された音信号を再生するイヤフォン4と、超音波用のマイクロフォン
16で変換された超音波音信号を検知する超音波検知部17と、外部の通信機13と
無線通信を行なう通信モジュール14と、電源用の電池5と、制御部9とが設けてある。補聴器本体1の通信モジュール14と通信機13との間で無線通信を確立した状態において、通信機13から送信されて通信モジュール14が受信した情報信号に従って、制御部9が補聴器を構成する作動機器の作動状態を制御できるように構成する。
通信機13のスピーカー24から補聴器本体1へ超音波が放射されて、超音波用のマイクロフォン16により変換された超音波音信号が超音波検知部17により検知されると、超音波検知部17の検知信号に基づき、制御部9がスリープ状態にあった通信モジュール14を作動させて、通信機13と通信モジュール14との間の
電磁波を用いた無線通信を確立する。
【0009】
補聴器本体1の通信モジュール14と通信機13との間で無線通信を確立した状態において、通信機13が受信した電話の音声信号を、通信機13から通信モジュール14へ伝送して増幅部3で増幅し、イヤフォン4で再生する。
【0010】
補聴器本体1に、増幅部3の信号増幅度を調整するボリューム部19と、電池5の給電状態をオン・オフする電源スイッチ部18とを設ける。予め通信機13に格納しておいた補聴器管理プログラムを起動し、補聴器本体1の通信モジュール14と通信機13との間で無線通信を確立した状態において、通信機13から通信モジュール14へ送信された補聴器管理プログラムに基づく要求指令に従って、制御部9でボリューム部19と電源スイッチ部18の作動状態を制御する。
【0011】
補聴器と通信機13とはNFC方式の通信方式で無線通信を確立する。
【0012】
補聴器と通信機13とはIEEE 802規格の通信方式で無線通信を確立する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る補聴器は、補聴器本体1にマイクロフォン2・16と、超音波音信号を検知する超音波検知部17と、外部の通信機13と通信を行なう通信モジュール14と、制御部9を設けるようにした。また、補聴器本体1の通信モジュール14と通信機13との間で無線通信を確立した状態において、通信モジュール14が通信機13から受信した情報信号に従って、制御部9が補聴器を構成する作動機器の作動状態を制御できるようにした。本発明では、上記のような補聴器において、通信機13のスピーカー24から補聴器本体1へ超音波を放射して、超音波検知部17の検知信号に基づき制御部9がスリープ状態にあった通信モジュール14を作動させて、通信機13と通信モジュール14との間の通信を確立できるようにした。
【0014】
上記のように、本発明に係る補聴器においては、必要時に限って補聴器側の通信モジュール14を作動させるので、補助装置と補聴器との間の無線通信を確立し続ける必要があった従来の通信形態に比べて、電源用の電池5の消耗を大幅に削減でき、電池5の交換間隔や充電間隔を大きくすることができる。また、人の可聴域を超えた超音波を通信機13から補聴器に放射して、放射された超音波をトリガーにして通信モジュール14を作動させるので、人ごみの中であっても周囲の人に迷惑を掛けることもなく通信機13を使用して補聴器の作動状態を制御できる。さらに、通信機13と通信モジュール14との間で、直接的に通信を確立するので、補助装置を常に携帯型電話機に接続しておく必要があった従来の通信形態に比べて、通信機13がかさばるのを解消して携行の便を向上できる。
【0015】
通信モジュール14と通信機13との間で無線通信を確立した状態において、通信機13が受信した電話の音声信号を、通信機13から通信モジュール14へ伝送して増幅部3で増幅しイヤフォン4で再生すると、イヤフォン4から送出される音声をよりクリアにすることができる。従って、通信機13を経由した電話のやり取りであるにも拘らず、明瞭で雑音の少ない会話を行うことができる。
【0016】
通信モジュール14と通信機13との間の無線通信を確立した状態において、通信機13から通信モジュール14へ送信された要求指令に従って、制御部9でボリューム部19と電源スイッチ部18の作動状態を制御すると、通信機13の側で補聴器の作動状態を管理し調整することができる。例えば、制御部9でボリューム部19の作動状態を制御することにより、増幅部3の増幅度合やイヤフォン4の音量の調整などを、通信機13の側で管理し調整できる。同様に、制御部9で電源スイッチ部18の作動状態を制御することにより電源のオン・オフを、通信機13の側で管理し調整できる。従って、ユーザーは耳から取外す必要もなく、補聴器の作動状態を通信機13の側で調整し管理することができるので、補聴器の使い勝手を向上することができる。
【0017】
補聴器と通信機13がNFC方式の簡易的な通信方式を介して相互通信を行なう形態によれば、通信モジュール14の構造を簡素化して補聴器が大形化するのを回避しながら、近接場通信を確立することができる。
【0018】
補聴器と通信機13とがIEEE 802規格の通信方式で相互通信を行なう形態によれば、NFC方式の通信形態に比べてより大量のデータを相互に伝送して、補聴器の管理および調整や、電池5の電池状態の管理をさらに綿密に行うことができる。さらに、通信機13にダウンロードしておいた音楽データを補聴器へ送信してイヤフォン4で聴取し、あるいは、通信機13で受信したテレビの映像をディスプレイ22で表示しながら、テレビの音声データを補聴器へ送信してイヤフォン4で聴取するなど、オーディオソースを補聴器で再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る補聴器の概略説明図である。
【
図2】本発明の実施例に係る補聴器の概略構造を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例に係る補聴器の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例)
図1ないし
図3は、本発明を耳掛け型の補聴器に適用した実施例を示す。
図1において、補聴器は補聴器本体1の内部に、音声用のマイクロフォン2と、マイクロフォン2で取込まれた音信号を増幅する増幅部3と、増幅部3で増幅された音信号を音声に再生するイヤフォン(スピーカー)4と、これらの機器の駆動電源となる2次電池(電池)5と、2次電池5の給電状態をオン・オフするメインスイッチ6などを組込んで構成してある。スピーカー4で再生された音声は軟質のチューブ7で案内され、チューブ7の先端に設けたイヤモールド8から外耳へ送出される。補聴器本体1の内部には、上記の増幅部3やノイズ除去回路あるいは制御部9が実装された基板が設けてあり、さらに、イヤフォン4で再生された音声の音量を調整するボリュームユニット10などが設けてある。制御部9は、増幅部3の増幅度を調整し、イヤフォン4の音量を調整し、後述する通信モジュール14の作動状態を制御するなど、補聴器を構成する各作動機器の作動状態を制御する。
【0021】
図2に示すように、補聴器本体1には、上記の補聴用の各機器以外に、外部のスマートフォン(通信機)13と通信を行なうための通信モジュール14およびアンテナ15と、超音波を取込むための超音波マイクロフォン(マイクロフォン)16と、超音波マイクロフォン16で変換された超音波の音信号を検知する超音波検知部17などが設けてある。また、メインスイッチ6およびボリュームユニット10とは別に、2次電池5の給電状態を電子的にオン・オフする電源スイッチ部18と、増幅部3の信号増幅度を電子的に調整するボリューム部19が設けてある。通信モジュール14と、電源スイッチ部18と、ボリューム部19などは、先の各機器や制御部9とともに先の基板に実装してある。
【0022】
図1において、スマートフォン13は市販品であり、その表面側にディスプレイ22が設けてあり、本体内部に電話通信網の基地局と通信を行なうメインアンテナ(図示していない)と、補聴器と近距離場通信を行なうためのアンテナ23と、スピーカー24と、送話用のマイクロフォン25などが設けてある。スマートフォン13には補聴器管理プログラムが予めダウンロードされて格納してある。この補聴器管理プログラムは、スマートフォン13に電話が掛かってきた場合に自動的に起動してディスプレイ22に動作メニューを表示でき、あるいは、必要に応じてユーザーがディスプレイ22のプログラムメニューを選択して起動することができる。
【0023】
補聴器を使用する場合には、
図1に示すように、補聴器本体1を耳裏に掛止め、イヤモールド8を外耳に差し込み、メインスイッチ6をオン操作して補聴器を起動する。補聴器を使用している状態において、予め補聴器とペアリングされたスマートフォン13に電話が掛かってきた場合には、先に説明したように、補聴器管理プログラムが自動的に起動してディスプレイ22に動作メニューを表示し、内部の起振構造を作動させてスマートフォン13の全体を振動させる。ユーザーは、先の着信状態で受信通話メニューを選択して、スマートフォン13を使用中の補聴器本体1の近傍にかざすことにより、スピーカー24から補聴器本体1へ向かって超音波が放射されて、スマートフォン13と補聴器との間で、Near Field Communication(以下、単にNFCと言う。)方式の近距離場通信を確立することができる。なお、近距離場通信を確立する場合には、必ずしもスマートフォン13を使用中の補聴器本体1の近傍にかざす必要はなく、例えば、補聴器本体1を耳裏に装着し、スマートフォン13を机やテーブルに載置した状態のままで受信通話メニューを選択することにより、近距離場通信を確立することができる。
【0024】
詳しくは、スピーカー24から超音波を補聴器本体1へ向かって放射すると、放射された超音波が超音波マイクロフォン16で取込まれて超音波音信号に変換される。さらに
図3に示すように、変換された超音波音信号は超音波検知部17によって検知され(S1)、超音波検知部17から制御部9へ出力される検知信号(開始信号)に基づき、制御部9がスリープ状態にあった通信モジュール14を作動させて(S2)、スマートフォン13のアンテナ23と、通信モジュール14のアンテナ15との間でNFC方式の無線通信を確立する(S3)。
【0025】
上記のように、補聴器本体1の通信モジュール14とスマートフォン13との間で無線通信が確立されて、通信モジュール14の受信準備が整った状態で、補聴器管理プログラムはスマートフォン13が受信した電話の音声信号を、スマートフォン13から通信モジュール14へ送信する(S4)。これにより、受信した音声信号が通信モジュール14から増幅部3へ出力され、増幅部3で増幅したのちイヤフォン4で再生される。従って、スマートフォン13のスピーカー24で再生された音声をマイクロフォン2で取込んで音声信号に変換する場合に比べて、イヤフォン4から送出される音声をよりクリアにすることができる。送話音声は、スマートフォン13のマイクロフォン25を介して取込まれて、電話通信網へ伝送される。通話を開始したのちの、制御部9は補聴器管理プログラムから終了信号が発せられたか否かを検知して、終了信号が検知されない場合(S5)には、電話の音声信号を通信モジュール14へ送信できる状態を維持する。
【0026】
通話が終了したら、ディスプレイ22に表示されている動作メニューから終了メニューを選択することにより、スマートフォン13から通信モジュール14へ終了信号が送信される。この終了信号は通信モジュール14を介して制御部9へ出力されるので、制御部9は終了信号に従って、通信モジュール14のスマートフォン13との無線通信を遮断し(S6)、さらに通信モジュール14の作動を終了させてスリープ状態に戻す(S7)。同時に、補聴器管理プログラムが終了してディスプレイ22を初期状態に戻す。必要があれば、通話終了と同時にスマートフォン13と補聴器の間の無線通信を遮断してもよい。
【0027】
上記のように、スマートフォン13に電話が掛かってきた場合に限って通信モジュール14を作動させ、通話が終了した時点で通信モジュール14をスリープ状態に戻すと、通信モジュール14による2次電池5の電力の消費を大幅に節約できる。従って、補助装置と補聴器との間の無線通信を確立し続ける必要があった従来の通信形態に比べて、2次電池5の消耗を大幅に軽減して充電間隔を拡大できる。また、人の可聴域を超えた超音波をスマートフォン13から補聴器に放射して、放射された超音波をトリガーにして通信モジュール14を作動させるので、人ごみの中であっても周囲の人に迷惑を掛けることもなくスマートフォン13を使用し、補聴器の作動状態を制御することができる。
【0028】
通話を開始したのち、イヤフォン4で再生された音声の音圧レベルを調整したい場合には、ディスプレイ22に表示されている動作メニューからボリューム調整メニューを選択して、ディスプレイ22に調整ボリュームを表示させる。ユーザーは、表示された調整ボリュームの増減ボタンを指先でタッチすることにより、音圧レベルを増加し、あるいは音圧レベルを減少するための要求指令が、スマートフォン13から通信モジュール14へと送信される。通信モジュール14が受信した要求指令信号は制御部9へ出力されるので、制御部9は要求指令信号に従ってボリューム部19を調整して、イヤフォン4における音声の音圧レベルをユーザーの好みに合わせることができる。
【0029】
例えば、2次電池5の電力状態を知りたい場合には、ユーザーがディスプレイ22のプログラムメニューから補聴器管理プログラムを起動して、ディスプレイ22に動作メニューを表示する。この状態で電池確認メニューを選択して、スマートフォン13を使用中の補聴器本体1の近傍にかざすことにより、スピーカー24から補聴器本体1へ向かって超音波が放射され、先と同様にして制御部9がスリープ状態にあった通信モジュール14を作動させて、スマートフォン13と補聴器との間でNFC方式の近距離場通信を確立する。
【0030】
上記の状態で、ディスプレイ22に表示された電力確認ボタンや、残り使用時間ボタンなどを、ユーザーが選択し指先でタッチすることにより、2次電池5の電圧データや、残り使用時間を知るための電力データを要求する指令が、スマートフォン13から通信モジュール14へと送信される。通信モジュール14が受信した要求指令信号は制御部9へ出力されるので、制御部9は要求指令信号に従って必要な電力データを取込んだのち、通信モジュール14とアンテナ15を介して先の電圧データや電力データをスマートフォン13へ送信する。電力データ等を受信したスマートフォン13の補聴器管理プログラムは、必要に応じて電力データ等を加工して、ユーザーが見やすい状態でディスプレイ22に表示する。補聴器管理プログラムの終了は、先に説明した要領で行う。なお、電力確認の結果、残り使用時間が予め設定してある所定の時間より少ない場合には、ディスプレイ22に警告表示を表示し、スピーカー24から警告音声を発して、すぐにでも充電処理を行なう必要があることをユーザーに報知する。以上のように、通話機能を備えているスマートフォン13や携帯電話などの通信機の場合には、通信機を補聴器(耳)の近傍にかざすという自然な受話動作を行うことで、スマートフォン13と補聴器との間の通信を確立し、あるいは通信を終了させることができるので、第3者からみて違和感のない状態で通信の確立と終了を行なえる。同様に、通話開始時や通話終了時の2次電池5の電池状態の把握も、自然な受話動作で行うことができる。
【0031】
就寝時や起床時には、スマートフォン13の側から2次電池5の給電状態を切換えて、補聴器の作動を停止させ、あるいは補聴器を起動させることができる。例えば、就寝時に補聴器の作動を停止させる場合には、先と同様にして、スマートフォン13と補聴器との間でNFC方式の近距離場通信を確立したのち、補聴器管理プログラムの動作メニューに含まれている電源メニューをディスプレイ22に表示させて、そのオフボタンを指先でタッチする。これにより、スマートフォン13から通信モジュール14へ終了信号が送信されるので、制御部9は電源スイッチ部18を切換えて、2次電池5の給電状態を強制的に停止させる。以上のように、スマートフォン13を経由して補聴器の作動状態を制御するのは、補聴器本体1にメインスイッチ6が設けてない場合や、メインスイッチ6の切換え操作が煩わしい場合に有効である。しかし、ユーザーによる補聴器の使用形態によっては、メインスイッチ6を切換えて補聴器の作動を停止あるいは起動させてもよい。
【0032】
また、起床時に補聴器を起動させる場合には、スマートフォン13と補聴器との間でNFC方式の近距離場通信を確立したのち、補聴器管理プログラムの動作メニューに含まれている電源メニューをディスプレイ22に表示させて、そのオンボタンを指先でタッチする。これにより、スマートフォン13から通信モジュール14へ起動信号が送信されるので、制御部9で電源スイッチ部18を切換えて、2次電池5の給電路を給電状態に切換えることができる。なお、この場合には、少なくとも制御部9と電源スイッチ部18と通信モジュール14に対して、それぞれが作動可能な最低電力を2次電池5から供給し続ける必要がある。
【0033】
上記の実施例では、スマートフォン13と補聴器との間でNFC方式の無線通信を確立したが、その必要はなく、NFC方式以外にIEEE 802.15.1規格に係るブルートゥース(BLUETOOTH:登録商標)や、IEEE 802.11規格に係るWi−Fiや、IEEE 802.15.4規格に係るZigBee(ZIGBEE:登録商標)などの無線通信を確立して、スマートフォン13が受信した通話データを補聴器に伝送することができる。その場合の通信モジュール14およびアンテナ15は、ブルートゥース(BLUETOOTH:登録商標)などの各規格の通信規格に適合する構造に構成しておき、超音波をスマートフォン13のスピーカー24から補聴器に放射して、放射された超音波をトリガーにして通信モジュール14を作動させることができる。ブルートゥース(BLUETOOTH:登録商標)方式の無線通信を確立した状態では、NFC方式の無線通信を確立した場合に比べて、より大量のデータをスマートフォン13から補聴器へ送信できるので、例えば、スマートフォン13にダウンロードしておいた音楽データを補聴器へ送信してイヤフォン4で聴取することができる。また、スマートフォン13で受信したテレビの映像をディスプレイ22で表示しながら、テレビの音声データを補聴器へ送信してイヤフォン4で聴取することができる。
【0034】
また、上記の実施例では、補聴器本体1に音声用のマイクロフォン2と超音波マイクロフォン16を個別に設けたが、その必要はなく、可聴域から超音波域の音まで取込むことが可能なマイクロフォンであれば、1個のマイクロフォンのみで音声と超音波を取込むようにしてもよい。通信機としては、スマートフォン13以外に、携帯電話機や、通信機能を備えたタブレット端末等のパーソナル・データ・アシスタント(PDA)であってもよく、要は通信機能と、表示機能と、補聴器管理プログラムを格納し実行できる仕様を備えている携帯機器であればよい。電源用の電池5としては、リチウムイオン電池などの2次電池以外に空気亜鉛電池などの1次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 補聴器本体
2 音声用のマイクロフォン
3 増幅部
4 イヤフォン(スピーカー)
5 2次電池(電池)
9 制御部
13 スマートフォン(通信機)
14 通信モジュール
15 アンテナ
16 超音波マイクロフォン(マイクロフォン)
17 超音波検知部