(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態にかかる張力制御装置の要部構成を表すブロック図である。
図2は、比較例にかかる張力制御装置の要部構成を表すブロック図である。
【0013】
本実施形態にかかる張力制御装置100は、比較例にかかる張力制御装置100aと比較して、加減速補償トルク係数自動測定装置20aを備える。つまり、本実施形態にかかる張力制御装置100は、加減速補償トルク係数自動測定装置20aを備える一方で、比較例にかかる張力制御装置100aは、加減速補償トルク係数自動測定装置を備えていない。
【0014】
図1に表した張力制御装置100のハードウェア構成は、一例であり、実施形態に係る張力制御装置100の一部、又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はIC(Integrated Circuit)チップセットとして実現してもよい。各機能ブロックについては、個別にプロセッサ化してもよいし、各機能ブロックの一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法については、LSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。実施形態では、複数の装置が有線又は無線で接続されたシステム構成を例示するが、その一部又は全部を備えた1つの装置として構成されてもよい。
【0015】
機械負荷1は、電動機2により回転駆動される。機械負荷1は、材料1cが巻かれたコイル1aと、スプール1bと、を有する。電動機2の実回転速度(回転数)W1は、速度検出器3により検出される。電動機2は、駆動回路としての電力変換器4により回転駆動される。
【0016】
コイル1aから繰り出される材料1cの実張力A1、またはコイル1a状に巻き取られる材料1cの実張力A1は、張力検出器5で測定されて張力制御部6へ送出(送信)される。張力制御部6には、張力設定器7から送信された設定張力ASが入力される。張力制御部6は、実張力A1と設定張力ASとに基づいて張力補正値ACを算出して出力する。
【0017】
第1の加算器8は、張力制御部6から送信された張力補正値ACと、張力設定器7から送信された設定張力ASと、を加算して基準張力AR(=AC+AS)を算出し、トルク変換部9へ印加(送信)する。
トルク変換部9は、外部から設定されたコイル1aの直径DCと、第1の加算器8から送信された基準張力ARと、に基づいて張力分トルクTAを算出して、第2の加算器10へ送信する。
【0018】
回転数変換部11は、外部から設定された材料1cの基準速度(ライン搬送速度)VRをコイル1aの直径DCに基づいて基準回転速度WRに変換する。
機械トルク関数発生回路12は、回転数変換部11から送信された基準回転速度WRに対応する機械負荷1の機械損失トルク(メカロストルク)TLを第2の加算器10へ送信する。
【0019】
微分回路13は、回転数変換部11から送信された基準回転速度WRを微分して基準加速度αRを算出し、スプール分加減速トルク算出部14へ送信する。
【0020】
スプール分加減速トルク算出部14は、微分回路13から送信された基準加速度αRにスプール分加減速補償トルクTMを得るために必要な係数(スプール分加減速補償トルク係数KM:第1の係数)を乗算してスプール分加減速補償トルクTMを算出し第2の加算器10へ送信する。スプール分加減速トルク算出部14の動作については、後述する。
【0021】
スプール分加減速補償トルクTMとは、材料1cの速度が加速する場合において、材料1cに設定された設定張力ASを発生させるために電動機2に加える張力分トルクTAに対して加算する補償トルクである。あるいは、スプール分加減速補償トルクTMとは、材料1cの速度が減速する場合において、材料1cに設定された設定張力ASを発生させるために電動機2に加える張力分トルクTAに対して減算する補償トルクである。具体的には、スプール分加減速補償トルクTMとは、コイル1aが装着されていないスプール1bの慣性モーメント(GD1)と、電動機2自体の慣性モーメント(GD2)と、を加算した合計の慣性モーメント(GD1+GD2)に基準加速度αRを乗算した値に比例する値である。
【0022】
コイル分加減速トルク算出部15は、微分回路13から送信された基準加速度αRにコイル分加減速補償トルクTBを得るために必要な係数(コイル分加減速補償トルク係数KB:第2の係数)を乗算してコイル分加減速補償トルクTBを算出し第2の加算器10へ送信する。コイル分加減速トルク算出部15の動作については、後述する。
【0023】
コイル分加減速補償トルクTBとは、材料1cの速度が加速する場合において、材料1cに設定された設定張力ASを発生させるために電動機2に加える張力分トルクTAに対して加算する補償トルクである。あるいは、コイル分加減速補償トルクTBとは、材料1cの速度が減速する場合において、材料1cに設定された設定張力ASを発生させるために電動機2に加える張力分トルクTAに対して減算する補償トルクである。具体的には、コイル分加減速補償トルクTBとは、直径(外径)DCを有するコイル1a(材料)自体の慣性モーメント(GD3)に基準加速度αRを乗算した値に比例する値である。
【0024】
第2の加算器10は、張力分トルクTA、機械損失トルクTL、スプール分加減速補償トルクTM、及びコイル分加減速補償トルクTBを加算し、設定トルクTS(=TA+TL+TM+TB)としてトルク制御部16へ送信する。
【0025】
回転速度制御部17には、限界速度設定器18から限界回転速度Wmが入力されている。これは、電動機2をトルク制御で駆動する場合において、材料破断時に、電動機2の回転速度が急激に上昇したり、電動機2が逆転することを未然に防止するためである。
【0026】
回転速度制御部17は、速度検出器3から帰還(送信)された実回転速度W1が限界回転速度Wm未満の場合には、実回転速度W1と基準回転速度WRとに基づいて基準トルクTRを算出してトルク制御部16へ送信する。
【0027】
トルク制御部16は、第2の加算器10から送信された設定トルクTSおよび回転速度制御部17から送信された基準トルクTRのうち、実回転速度W1をより抑える方のトルクを選択して、その選択したトルク(設定トルクTSまたは基準トルクTR)を制御用トルクTCとして電力変換器4へ送信する。電力変換器4は、トルク制御部16から送信された制御用トルクTCに基づいて電動機2を駆動制御する。その結果、材料1cの張力が設定張力ASに制御される。
【0028】
ここで、
図2に表した比較例にかかる張力制御装置100aでは、例えば張力制御装置100aの調整員などが、トルク制御部16へ入力される設定トルクTSを決定するために必要な機械損失トルクTLを事前に手動で測定する必要がある。また、調整員などは、スプール分加減速補償トルクTMを得るために必要な係数(スプール分加減速補償トルク係数KM)、およびコイル分加減速補償トルクTBを得るために必要な係数(コイル分加減速補償トルク係数KB)を調整する必要がある。
【0029】
なお、
図2に表した比較例にかかる張力制御装置100aでは、スプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBは、次のようにして算出される。すなわち、まず、スプール1bや電動機2などの機械設計データ値、および材料1cの理論比重データ値に基づいて慣性モーメントを算出する。これらの値に基づいて、理論的計算手法によりスプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBを算出する。
【0030】
図2に表した比較例にかかる張力制御装置100aでは、スプール分加減速トルク算出部14は、微分回路13から送信された基準加速度αRに理論的計算式より求めたスプール分加減速補償トルク係数KMを乗算してスプール分加減速補償トルクTMを算出して第2の加算器10へ送信する。コイル分加減速トルク算出部15は、理論的計算式より求めたコイル分加減速補償トルク係数KBを乗算してコイル分加減速補償トルクTBを算出して第2の加算器10へ送信する。
【0031】
しかし、張力制御を実際に行うと、理論的計算式により算出されたスプール分加減速補償トルク係数KMに基づいて算出されたスプール分加減速補償トルクTMが実際の値とは異なる。また、張力制御を実際に行うと、理論的計算式により算出されたコイル分加減速補償トルク係数KBに基づいて算出されたコイル分加減速補償トルク係数KBが実際の値とは異なる。そのため、スプール1bの回転速度が加速あるいは減速されると、材料1cにかかる張力が変動する。そのため、調整員などは、スプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBをより適した値に調整する必要がある。
【0032】
これに対して、本実施形態にかかる張力制御装置100は、加減速補償トルク係数自動測定装置20aを備える。
加減速補償トルク係数自動測定装置20aは、加速分張力補正算出部21aと、加速分トルク係数判定部22aと、減速分張力補正算出部21bと、減速分トルク係数判定部22bと、を有する。
【0033】
加速分張力補正算出部21aは、張力制御において、材料1cを装着したスプール1bが加速を開始した時点の張力補正値ACと、基準加速度αRが最大加速度となった時点の張力補正値ACと、の間の差(加速分張力補正値)AHaを算出し記憶する。張力補正値ACは、張力制御部6から送信される。
【0034】
加速分トルク係数判定部22aは、予め設定された制御係数判定径DJと、材料1cのコイル1aの直径DCと、に基づいて、係数を自動で測定する対象を、コイル分加減速補償トルク係数KBおよびスプール分加減速補償トルク係数KMのいずれに設定するかを判断する。言い換えれば、加速分トルク係数判定部22aは、予め設定された制御係数判定径DJと、材料1cのコイル1aの直径DCと、に基づいて、コイル分加減速補償トルク係数KBおよびスプール分加減速補償トルク係数KMのいずれを自動で更新するかを判断する。
【0035】
加速分トルク係数判定部22aは、係数を自動で測定する対象をスプール分加減速補償トルク係数KMに設定すると、加速分張力補正算出部21aから送信された加速分張力補正値AHaと、理論的計算式により求めたスプール分加減速補償トルクTMc(スプール分加減速補償トルクTMの理論的計算値)と、に基づいてスプール分加減速補償トルク係数KMを算出し記憶する。
一方で、加速分トルク係数判定部22aは、係数を自動で測定する対象をコイル分加減速補償トルク係数KBに設定すると、加速分張力補正算出部21aから送信された加速分張力補正値AHaと、理論的計算式により求めたコイル分加減速補償トルクTBc(コイル分加減速補償トルクTBの理論的計算値TBc)と、に基づいてコイル分加減速補償トルク係数KBを算出し記憶する。
【0036】
減速分張力補正算出部21bは、張力制御において、材料1cを装着したスプール1bが減速を開始した時点の張力補正値ACと、基準加速度αRが最大減速度となった時点の張力補正値ACと、の間の差(減速分張力補正値)AHbを算出し記憶する。張力補正値ACは、張力制御部6から送信される。
【0037】
減速分トルク係数判定部22bは、予め設定された制御係数判定径DJと、材料1cのコイル1aの直径DCと、に基づいて、係数を自動で測定する対象を、コイル分加減速補償トルク係数KBおよびスプール分加減速補償トルク係数KMのいずれに設定するかを判断する。言い換えれば、減速分トルク係数判定部22bは、予め設定された制御係数判定径DJと、材料1cのコイル1aの直径DCと、に基づいて、コイル分加減速補償トルク係数KBおよびスプール分加減速補償トルク係数KMのいずれを自動で更新するかを判断する。
【0038】
減速分トルク係数判定部22bは、係数を自動で測定する対象をスプール分加減速補償トルク係数KMに設定すると、減速分張力補正算出部21bから送信された減速分張力補正値AHbと、理論的計算式により求めたスプール分加減速補償トルクTMcと、に基づいてスプール分加減速補償トルク係数KMを算出し記憶する。
一方で、減速分トルク係数判定部22bは、係数を自動で測定する対象をコイル分加減速補償トルク係数KBに設定すると、減速分張力補正算出部21bから送信された減速分張力補正値AHbと、理論的計算式により求めたコイル分加減速補償トルクTBcと、に基づいてコイル分加減速補償トルク係数KBを算出し記憶する。
【0039】
このようにして、加速分トルク係数判定部22aは、係数を自動で測定する対象を判断すると、スプール分加減速トルク算出部14に対してスプール分加減速補償トルク係数KMを設定し、コイル分加減速トルク算出部15に対してコイル分加減速補償トルク係数KBを設定する。
【0040】
スプール分加減速トルク算出部14は、微分回路13から送信された基準加速度αRに加速分トルク係数判定部22aまたは減速分トルク係数判定部22bから送信されたスプール分加減速補償トルク係数KMを乗算してスプール分加減速補償トルクTMを算出する。
コイル分加減速トルク算出部15は、微分回路13から送信された基準加速度αRに加速分トルク係数判定部22aまたは減速分トルク係数判定部22bから送信されたコイル分加減速補償トルク係数KBを乗算してコイル分加減速補償トルクTBを算出する。
【0041】
次に、本実施形態の加減速補償トルク係数自動測定装置の動作について説明する。
図3は、材料の基準速度と時間との関係の一例を例示するグラフ図である。
【0042】
材料1cにかかる実張力A1が設定張力ASに精度よく制御されるためには、トルク制御部16に対して正確な設定トルクTSが印加される必要がある。正確な設定トルクTSを得るためには、機械損失トルクTLと、スプール分加減速補償トルクTMを得るために実際に必要なスプール分加減速補償トルク係数KMと、コイル分加減速補償トルクTBを得るために必要なコイル分加減速補償トルク係数KBと、を測定する必要がある。
【0043】
まず、加速時のスプール分加減速補償トルクTMに対する係数(スプール分加減速補償トルク係数KM)及び加速時のコイル分加減速補償トルクTBに対する係数(コイル分加減速補償トルク係数KB)の測定について説明する。
【0044】
図3に表した第1の時間T1のように、張力制御において、基準速度VRを一定の加速レートで上昇させる。加速分張力補正算出部21aは、加速開始時の張力補正値ACと、基準加速度αRが最大加速度となった時点の張力補正値ACと、を取り込み、最大加速度時の張力補正値ACと、加速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHaを算出する。
【0045】
加速分トルク係数判定部22aは、最大加速度時の張力補正値ACと、加速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHaを取り込み、材料1cのコイル1aの直径DCと、制御係数判定径DJと、を比較する。
【0046】
「コイル1aの直径DC>制御係数判定径DJ」の関係が成り立つ場合には、加速分トルク係数判定部22aは、最大加速度時の張力補正値ACと、加速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHaをコイル分加減速補償トルク係数KBの算出パラメータに設定する。コイル分加減速補償トルク係数KBの算出パラメータに設定された差AHaは、コイル分加減速補償トルク係数KBを算出する演算の係数に用いられる。
【0047】
一方で、「コイル1aの直径DC<制御係数判定径DJ」の関係が成り立つ場合には、加速分トルク係数判定部22aは、最大加速度時の張力補正値ACと、加速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHaをスプール分加減速補償トルク係数KMの算出パラメータに設定する。スプール分加減速補償トルク係数KMの算出パラメータに設定された差AHaは、スプール分加減速補償トルク係数KMを算出する演算の係数に用いられる。
【0048】
加速分トルク係数判定部22aは、最大加速度時の張力補正値ACと加速開始時の張力補正値ACとの間の差AHaと、スプール分加減速補償トルクTMの理論的計算値TMcと、に基づいて、スプール分加減速補償トルク係数KMを式(1)により算出する。また、加速分トルク係数判定部22aは、最大加速度時の張力補正値ACと加速開始時の張力補正値ACとの間の差AHaと、コイル分加減速補償トルクTBの理論的計算値TBcと、に基づいて、コイル分加減速補償トルク係数KBを式(2)により算出する。
KM=KMa−{(AHa/TMc)*10000} ・・・式(1)
KB=KBa−{(AHa/TBc)*10000} ・・・式(2)
式(1)中の「KMa」は、前回の測定値(前回のスプール分加減速補償トルク係数KM)である。式(2)中の「KBa」は、前回の測定値(前回のコイル分加減速補償トルク係数KB)である。スプール分加減速補償トルク係数KMは、スプール分加減速トルク算出部14においてスプール分加減速補償トルクTMに対する係数として設定される。コイル分加減速補償トルク係数KBは、コイル分加減速トルク算出部15においてコイル分加減速補償トルクTBに対する係数として設定される。
【0049】
続いて、減速時のスプール分加減速補償トルクTMに対する係数(スプール分加減速補償トルク係数KM)及び減速時のコイル分加減速補償トルクTBに対する係数(コイル分加減速補償トルク係数KB)の測定について説明する。
【0050】
図3に表した第3の時間T3のように、張力制御において、基準速度VRを一定の加速レートで下降させる。減速分張力補正算出部21bは、減速開始時の張力補正値ACと、基準加速度αRが最大減速度となった時点の張力補正値ACと、を取り込み、最大減速度時の張力補正値ACと、減速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHbを算出する。
【0051】
減速分トルク係数判定部22bは、最大減速度時の張力補正値ACと、減速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHbを取り込み、材料1cのコイル1aの直径DCと、制御係数判定径DJと、を比較する。
【0052】
「コイル1aの直径DC>制御係数判定径DJ」の関係が成り立つ場合には、減速分トルク係数判定部22bは、最大減速度時の張力補正値ACと、減速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHbをコイル分加減速補償トルク係数KBの算出パラメータに設定する。コイル分加減速補償トルク係数KBの算出パラメータに設定された差AHbは、コイル分加減速補償トルク係数KBを算出する演算の係数に用いられる。
【0053】
一方で、「コイル1aの直径DC<制御係数判定径DJ」の関係が成り立つ場合には、減速分トルク係数判定部22bは、最大減速度時の張力補正値ACと、減速開始時の張力補正値ACと、の間の差AHbをスプール分加減速補償トルク係数KMの算出パラメータに設定する。スプール分加減速補償トルク係数KMの算出パラメータに設定された差AHbは、スプール分加減速補償トルク係数KMを算出する演算の係数に用いられる。
【0054】
減速分トルク係数判定部22bは、最大減速度時の張力補正値ACと減速開始時の張力補正値ACとの間の差AHbと、スプール分加減速補償トルクTMの理論的計算値TMcと、に基づいて、スプール分加減速補償トルク係数KMを式(3)により算出する。また、減速分トルク係数判定部22bは、最大減速度時の張力補正値ACと減速開始時の張力補正値ACとの間の差AHbと、コイル分加減速補償トルクTBの理論的計算値TBcと、に基づいて、コイル分加減速補償トルク係数KBを式(4)により算出する。
KM=KMa−{(0−AHb/TMc)*10000} ・・・式(3)
KB=KBa−{(0−AHb/TBc)*10000} ・・・式(4)
式(1)中の「KMa」は、前回の測定値(前回のスプール分加減速補償トルク係数KM)である。式(2)中の「KBa」は、前回の測定値(前回のコイル分加減速補償トルク係数KB)である。スプール分加減速補償トルク係数KMは、スプール分加減速トルク算出部14においてスプール分加減速補償トルクTMに対する係数として設定される。コイル分加減速補償トルク係数KBは、コイル分加減速トルク算出部15においてコイル分加減速補償トルクTBに対する係数として設定される。
【0055】
本実施形態によれば、スプール1bにコイル1aを装着した状態で、実際に材料1cに対する張力制御を実施しながら、スプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBを測定することができる。つまり、スプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBを張力制御の動作中に自動的に測定することができる。
【0056】
そのため、調整員などがスプール分加減速補償トルク係数KMおよびコイル分加減速補償トルク係数KBを手動で測定したり、設定したり、調整したりする必要はない。これにより、調整員などの作業を削減することができる。また、調整員の個人差や誤設定等の人為的要因を排除することができる。
さらに、設計図や材料仕様等を用いて予め技術者が理論的に算出した理論的計算値TMc、TBcと比較して、実際の機械装置や材料1c(コイル1a)に対応したより正しいスプール分加減速補償トルクTMおよびコイル分加減速補償トルクTBを得ることができる。これにより、機械負荷1の加速時および機械負荷1の減速時において、スプール分加減速補償トルクTMの誤差およびコイル分加減速補償トルクTBの誤差に起因する張力の変動を抑制することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。